(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082028
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240612BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240612BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F27/29 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195709
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
(72)【発明者】
【氏名】福岡 玲
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BB03
5E070CB06
5E070CB12
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】コイルに関する特性の向上が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1においては、基板30の厚さ方向において、第1コイル部42Aの厚さT
1と第2コイル部42Bの厚さT
2とが異なっており(T
1≠T
2)、それにより、自己共振周波数や放熱性といった特性の向上が実現されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の内部に配置された基板と、
前記基板の一方面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の他方面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有するコイル導体と、
前記素体の表面に設けられ、前記コイル導体の前記第1巻回部および前記第2巻回部とそれぞれ接続された一対の端子電極と
を備え、
前記基板の厚さ方向における前記第1巻回部の厚さを第1の厚さとして前記第2巻回部の厚さを第2の厚さとしたときに、前記第1厚さと前記第2の厚さとが異なっている、コイル部品。
【請求項2】
前記基板の厚さ方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記基板の厚さ方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置において延在している、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記素体が、前記基板に対して直交するとともに互いに対面する一対の端面と、前記基板の他方面側において前記基板の厚さ方向に対して直交する実装面とを有し、
前記一対の端子電極は、前記一対の端面にそれぞれ設けられている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記各端子電極が、前記端面と前記実装面とを連続的に覆うL字状を有する、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2の厚さが前記第1の厚さより小さい、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記素体が、金属粉と樹脂とを含む材料で構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板の両面にそれぞれ平面渦巻状に形成された一対の巻回部を含むコイル導体が、素体の内部に設けられたコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、上記構成(すなわち、素体の内部に、基板の両面にそれぞれ平面渦巻状に形成された一対の巻回部を含むコイル導体が設けられた構成)について研究を重ね、その結果、コイルに関する特性をより高めることができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明の一側面は、コイルに関する特性の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、素体と、素体の内部に配置された基板と、基板の一方面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、基板の他方面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、基板を貫通するとともに第1巻回部と第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有するコイル導体と、素体の表面に設けられ、コイル導体の第1巻回部および第2巻回部とそれぞれ接続された一対の端子電極とを備え、基板の厚さ方向における第1巻回部の厚さを第1の厚さとして第2巻回部の厚さを第2の厚さとしたときに、第1厚さと第2の厚さとが異なっている。
【0007】
他の側面に係るコイル部品では、基板の厚さ方向に関し、基板は、素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している。
【0008】
他の側面に係るコイル部品では、基板の厚さ方向に関し、基板は、素体の中間の高さ位置において延在している。
【0009】
他の側面に係るコイル部品では、素体が、基板に対して直交するとともに互いに対面する一対の端面と、基板の他方面側において基板の厚さ方向に対して直交する実装面とを有し、一対の端子電極は、一対の端面にそれぞれ設けられている。
【0010】
他の側面に係るコイル部品では、各端子電極が、端面と実装面とを連続的に覆うL字状を有する。
【0011】
他の側面に係るコイル部品では、第2の厚さが第1の厚さより小さい。
【0012】
他の側面に係るコイル部品では、素体が、金属粉と樹脂とを含む材料で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面によれば、コイルに関する特性の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るコイル部品を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品の分解斜視図である。
【
図3】基板とコイル導体の構成を示した分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したコイル部品のIV-IV線断面図である。
【
図5】基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【
図6】コイル部品を製造する際の一部の工程を示した図である。
【
図7】比較例に係るコイル部品の基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【
図9】異なる態様の基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0016】
一実施形態にコイル部品1について、
図1~4を参照しつつ説明する。コイル部品1は、
図1、2に示すように、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子電極20A、20B(端子電極)とを備えて構成されている。
【0017】
素体10は、略直方体形状の外形を有し、対面する一対の主面10a、10bと、対面する一対の端面10c、10dと、対面する一対の側面10e、10fを有する。一対の端面10c、10dおよび一対の側面10e、10fは、一対の主面10a、10bをつないでいる。本実施形態において、一対の主面10a、10bの対面方向が素体10の高さ方向、一対の端面10c、10dの対面方向が素体10の長辺方向、一対の側面10e、10fの対面方向が素体10の短辺方向となっている。本実施形態においては、主面10bが、コイル部品1が実装される基材と面する実装面となっている。コイル部品1は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ1.0mmの寸法で設計される。
【0018】
一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第1の外部端子電極20Aは、素体10の端面10c側に設けられている。第1の外部端子電極20Aは、端面10cを覆う部分20aと端面10c側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10cと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第2の外部端子電極20Bは、素体10の端面10d側に設けられている。第2の外部端子電極20Bは、第1の外部端子電極20A同様、端面10dを覆う部分20aと端面10d側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10dと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。本実施形態において、一対の外部端子電極20A、20Bのそれぞれの端面10c、10dを覆う部分20aは、端面10c、10dの上端に達する高さ位置まで延びている。
【0019】
素体10は、磁性体12の内部に、
図3に示した基板30とコイル導体40とが設けられた構成を有する。
【0020】
基板30は、素体10の内部に配置されており、素体10の一対の端面10c、10dの間にわたって延在しており、各端面10c、10dから露出する端部30a、30bを有する。基板30は、素体10の主面10a、10bに対して平行に延在する平板状の形状を有し、主面10a側に位置する上面30cおよび主面10b側に位置する下面30dを有する。基板30は、その厚さ方向から見て略楕円環状の形状を有している。基板30の中央部分には、楕円形の貫通孔32が設けられている。
【0021】
基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。基板30としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm~60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。基板30の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。基板30の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0022】
コイル導体40は、基板30の上面30cに設けられた平面空芯コイル用の第1導体パターン43Aが絶縁被覆された第1コイル部42Aと、基板30の下面3dに設けられた平面空芯コイル用の第2導体パターン43Bが絶縁被覆された第2コイル部42Bと、第1導体パターン43Aと第2導体パターン43Bとを接続するスルーホール導体48とを有する。
【0023】
第1導体パターン43A(第1巻回部)は、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第1導体パターン43Aは、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第1導体パターン43Aは、より詳しくは、
図3に示すように、上方向(Z方向)から見て外側に向かって右回りに3ターン分だけ巻回されている。
【0024】
第1導体パターン43Aの外側の端部40aは、素体10の端面10cにおいて露出し、端面10cを覆う外部端子電極20Aと接続されている。第1導体パターン43Aの内側の端部40cは、スルーホール導体48に接続されている。
【0025】
第2導体パターン43B(第2巻回部)も、第1導体パターン43A同様、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第2導体パターン43Bも、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第2導体パターン43Bは、より詳しくは、上方向(Z方向)から見て外側に向かって左回りに3ターン分だけ巻回されている。すなわち、第2導体パターン43Bは、上方向から見て、第1導体パターン43Aとは反対の方向に巻回されている。
【0026】
第2導体パターン43Bの外側の端部40bは、素体10の端面10dにおいて露出し、端面10dを覆う外部端子電極20Bと接続されている。第2導体パターン43Bの内側の端部40dは、第1導体パターン43Aの内側の端部40cと、基板30の厚さ方向において位置合わせされており、スルーホール導体48に接続されている。
【0027】
スルーホール導体48(貫通部)は、基板30の貫通孔32の縁領域に貫設されており、第1導体パターン43Aの端部40cと第2導体パターン43Bの端部40dとを接続する。スルーホール導体48は、基板30に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。スルーホール導体48は、たとえば基板30の厚さ方向に延びる柱状(円柱状や角柱状等)の外形を有する。
【0028】
図4に示すように、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bはそれぞれ樹脂壁44A、44Bを有する。第1コイル部42Aの樹脂壁44Aは、第1導体パターン43Aの線間、内周および外周に位置している。同様に、第2コイル部42Bの樹脂壁44Bは、第2導体パターン43Bの線間、内周および外周に位置している。本実施形態では、導体パターン43A、43Bの内周および外周に位置する樹脂壁44A、44Bは、導体パターン43A、43Bの線間に位置する樹脂壁44A、44Bよりも厚くなるように設計されている。
【0029】
樹脂壁44A、44Bは、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成する前に基板30上に設けることができ、この場合には樹脂壁44A、44Bにおいて画成された壁間において第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bがめっき成長される。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成した後に基板30上に設けることができ、この場合には第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bに樹脂壁44A、44Bが充填や塗布等により設けられる。
【0030】
第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bには、第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bと樹脂壁44A、44Bとを上面側から一体的に覆う絶縁層45がそれぞれ設けられている。絶縁層45は、絶縁樹脂または絶縁磁性材料で構成され得る。
【0031】
磁性体12は、基板30およびコイル導体40を一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体12は、基板30およびコイル導体40を上下方向から覆うとともに、基板30およびコイル導体40の外周を覆っている。また、磁性体12は、基板30の貫通孔32の内部およびコイル導体40の内側領域を充たしている。磁性体12は、素体10の全ての表面、すなわち、主面10a、10b、端面10c、10d、側面10e、10fを構成している。
【0032】
磁性体12は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。磁性体26を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
続いて、基板30、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bの位置関係および厚さについて、
図5の側面図を参照しつつ説明する。
【0034】
基板30は、素体10の主面10a、10bの対面方向に対して直交するように延在している。本実施形態では、基板30は、素体10の主面10a、10bの対面方向に関する素体の長さ(すなわち、高さ)をHとしたとき、素体10の中間の高さ位置(H/2)と同じ高さ位置hにおいて延在している(h=H/2)。基板30は、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さtを有する。基板30の厚さtは一例として50μmである。素体10の高さHは一例として500μmである。
【0035】
基板30の上面30cに設けられた第1コイル部42Aも、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さT1を有する。厚さT1は一例として115μmである。第1コイル部42Aにおいて、第1導体パターン43Aおよび樹脂壁44Aは均一な厚さT1を有しており、第1導体パターン43Aの上端面と樹脂壁44Aの上面端とで平坦面を構成している(すなわち、面一となっている)。
【0036】
基板30の下面30dに設けられた第2コイル部42Bも、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さT2を有する。厚さT2は、厚さT1とは異なっており、本実施形態では、厚さT1より小さくなるように設計されている(T2<T1)。厚さT2は一例として85μmである。第2コイル部42Bにおいて、第2導体パターン43Bおよび樹脂壁44Bは均一な厚さT2を有しており、第2導体パターン43Bの下端面と樹脂壁44Bの下面端とで平坦面を構成している(すなわち、面一となっている)。
【0037】
第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bは、
図6(a)~(c)に示した工程により形成することができる。
【0038】
図6(a)に示すように、基板30の両面30c、30dに第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが設けられた状態では、導体パターン43A、43Bおよび樹脂壁44A、44Bのそれぞれの高さが揃わずに凹凸が生じることがあり得る。このように導体パターン43A、43Bおよび樹脂壁44A、44Bの高さが不揃いである第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが設けられた基板30に対し、両面30c、30d側から一対のレジストフィルム50(剥離型ドライフィルムレジスト(DFR))を貼付する。それにより、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが、基板30とともに一対のレジストフィルム50間に挟まれて、
図6(b)に示すようにレジストフィルム50内に埋設された状態となる。
【0039】
次に、研磨機を用いた研磨をおこなう。具体的には、研磨機のチャックテーブル60上に、粘着テープ62(たとえばUVテープ)を介して、レジストフィルム50内に埋設された基板30、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを、基板30がチャックテーブル60に対して平行になる姿勢で載置する。そして、バイト70(たとえばダイヤモンドバイト)を用いたバイト研磨により、レジストフィルム50から第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを露出させる。上記研磨は、基板30の上面30c側および下面30d側のそれぞれについておこなう。
【0040】
それにより、
図6(c)に示すように、基板30の上面30cでは第1コイル部42Aの第1導体パターン43Aと樹脂壁44Aとが面一となり、同様に、基板30の下面30dでは第2コイル部42Bの第2導体パターン43Bと樹脂壁44Bとが面一となる。研磨の際、基板30とバイト70との相対高さ位置を調整することで、研磨後の第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bのそれぞれの厚さを調整することができる。本実施形態では、第2コイル部42Bの厚さT
2が第1コイル部42Aの厚さT
1より小さくなるように厚さ調整されている。
【0041】
研磨後はレジストフィルム50を除去し、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bに絶縁層45を設けるとともに、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを磁性体12で一体的に覆うことで、上述した素体10が得られる。
【0042】
発明者らは、第1コイル部42Aの厚さT1と第2コイル部42Bの厚さT2との関係がコイルに関する特性に及ぼす影響を、以下に示す実験により確認した。
【0043】
実験には、
図5に示すように第2コイル部42Bの厚さT
2が第1コイル部42A第1導体パターンの厚さT
1より小さい試料(実施例)と、
図7に示すように第2コイル部42Bの厚さT
2と第1コイル部42Aの厚さT
1とが同じ試料(比較例)を用意し、各周波数におけるインピーダンスの値を求めた。
図8は、その結果を示したグラフである。
【0044】
図8のグラフから、実施例に係る試料は、比較例に係る試料に比べてピークが高周波側に移っており、自己共振周波数(SRF)が高周波側に改善されることが確認できた。これは、第2コイル部の厚さT
2が小さくなった結果、第2コイル部から素体の実装面までの距離Dが長くなり、実装面上に位置する部分(すなわち、
図2に示した外部端子電極20A、20Bの部分20b)の端子電極と第2コイル部の第2導体パターンとの間の浮遊容量が低減されたためであると考えられる。
【0045】
上記結果のとおり、第2コイル部42Bの厚さT2を、第1コイル部42Aの厚さT1より小さくすることで、コイル特性の一種である自己共振周波数の改善を図ることができる。
【0046】
コイル部品1は、その使用時に、一対の外部端子電極20A、20B間に所定の電圧が印加される。たとえば、コイル部品1が電源系の回路に用いられる場合には比較的大きな電圧が印加され、コイル導体40が高熱を発する発熱体となり得る。この場合、コイル部品1には、特性の一つとして、素体10内において生じたコイル導体40の熱についての放熱性が求められる。
【0047】
第1導体パターン43Aと第2導体パターン43Bとでは、より厚さが小さい方が断面寸法が小さくなり、より発熱しやすくなると考えられる。この場合、素体10の主面10a側より実装面10b側のほうが高温になり得るため、実装面10bからの放熱を促すことが好ましい。コイル部品1においては、コイル部品1が実装される実装基板と素体10の実装面10bとが対面するようにして、コイル部品1が実装基板に実装されるため、素体10内において生じた熱は実装面10bから実装基板へ伝達しやすく、素体10の実装面10bにおける放熱性の向上が図られている。
【0048】
素体10の実装面10bにおける放熱性をより高めるために、
図9に示すように、基板30を実装面10b側に近づけることができる。
図9に示した態様では、基板30は、その厚さ方向に関し、素体10の中間の高さ位置(H/2)より低い高さ位置hにおいて延在している(h<H/2)。この場合、
図5に示した態様(すなわち、h=H/2)に比べて、基板30が実装面10b側に近づいているため、素体10内において生じた熱は実装面10bから実装基板へさらに伝達しやすくなっており、素体10の実装面10bにおける放熱性のさらなる向上が図られている。
【0049】
一方、第1コイル部42Aの厚さT1のほうが第2コイル部42Bの厚さT2より小さい場合(T1<T2)には、素体10の実装面10b側より主面10a側のほうが高温になり得るため、主面10aからの放熱を促すことが好ましい。素体10の主面10aにおける放熱性を高めるために、基板30を主面10a側に近づけることができる。
【0050】
以上において説明したとおり、コイル部品1においては、第1コイル部42Aの厚さT1と第2コイル部42Bの厚さT2とが異なっており(T1≠T2)、それにより、自己共振周波数や放熱性といった特性の向上が実現されている。
【0051】
上述したコイル部品は、上述した形態に限らず、様々な形態を採用することができる。
【0052】
たとえば、コイル導体を構成する導体パターンの平面形状は、楕円形に限らず、たとえば真円形状や多角形状であってもよい。外部端子電極の形状は、端面および実装面の2面を連続的に覆う形状に限らず、端面のみを覆う形状であってもよく、端面と端面側の両主面および両側面の5面を連続的に覆う形状であってもよい。
【0053】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
素体と、
前記素体の内部に配置された基板と、
前記基板の一方面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の他方面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有するコイル導体と、
前記素体の表面に設けられ、前記コイル導体の前記第1巻回部および前記第2巻回部とそれぞれ接続された一対の端子電極と
を備え、
前記基板の厚さ方向における前記第1巻回部の厚さを第1の厚さとして前記第2巻回部の厚さを第2の厚さとしたときに、前記第1厚さと前記第2の厚さとが異なっている、コイル部品。
[付記2]
前記基板の厚さ方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している、付記1に記載のコイル部品。
[付記3]
前記基板の厚さ方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置において延在している、付記1に記載のコイル部品。
[付記4]
前記素体が、前記基板に対して直交するとともに互いに対面する一対の端面と、前記基板の他方面側において前記基板の厚さ方向に対して直交する実装面とを有し、
前記一対の端子電極は、前記一対の端面にそれぞれ設けられている、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記各端子電極が、前記端面と前記実装面とを連続的に覆うL字状を有する、付記4に記載のコイル部品。
[付記6]
前記第2の厚さが前記第1の厚さより小さい、付記4または5に記載のコイル部品。
[付記7]
前記素体が、金属粉と樹脂とを含む材料で構成されている、付記1~6のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0054】
1…コイル部品、10…素体、12…磁性体、20A、20B…外部端子電極、30…基板、40…コイル導体、42A…第1コイル部、42B…第2コイル部、43A…第1導体パターン、43B…第2導体パターン、44A、44B…樹脂壁。