(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082030
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240612BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240612BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01F27/29 Q
H01F27/29 125
H01F17/00 D
H01F27/28 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195711
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043EA01
5E043EA05
5E043EB05
5E070AA01
5E070AB03
5E070AB07
5E070BB03
5E070CB06
5E070EA02
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】インピーダンス特性の調整が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1においては、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置より、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置のほうが低くなっており、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さが低減されており、上述した近接領域Sが形成されないため、浮遊容量が効果的に低減されている。このように浮遊容量の低減が図られたコイル部品1では、高周波帯域において高いインピーダンスを維持することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、該底面に対して直交する第1の側面および第2の側面を有する素体と、
前記素体の内部に設けられ、前記素体の第1の側面に露出する第1の端部および前記素体の第2の側面に露出する第2の端部を有するコイル導体と、
前記素体の前記第1の側面と前記底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、前記第1の側面に露出する前記コイル導体の前記第1の端部と電気的に接続された第1の端子電極と、
前記素体の前記第2の側面と前記底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、前記第2の側面に露出する前記コイル導体の前記第2の端部と電気的に接続された第2の端子電極と
を備え、
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置と前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置とが異なっており、かつ、前記第1の側面を覆う部分の前記第1の端子電極の高さ位置と前記第2の側面を覆う部分の前記第2の端子電極の高さ位置とが異なっている、コイル部品。
【請求項2】
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、前記第1の側面を覆う部分の前記第1の端子電極の高さ位置より前記第2の側面を覆う部分の前記第2の端子電極の高さ位置が低い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、前記コイル導体の上端の高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記素体の内部において前記底面に対して平行に延在し、前記素体の底面側とは反対側に位置する上面および前記底面側に位置する下面を有する基板をさらに備え、
前記コイル導体が、前記基板の上面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の下面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有し、
前記第1巻回部が前記第1の端部を含むとともに前記第2巻回部が前記第2の端部を含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記第1巻回部の長さより前記第2巻回部の長さが短い、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記コイル導体の上方に位置する部分の素体の長さが、前記コイル導体の長さより短い、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記素体の底面に対して前記コイル導体のコイル軸が直交している、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、素体の内部に設けられたコイル導体の両端部が素体の一対の端面にそれぞれ引き出され、各端面に設けられた一対の端子電極に各端部がそれぞれ接続された構成を有するコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、コイル部品の端子電極の構成について研究を重ね、インピーダンス特性を調整することができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明の一側面は、インピーダンス特性の調整が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、底面と、該底面に対して直交する第1の側面および第2の側面を有する素体と、素体の内部に設けられ、素体の第1の側面に露出する第1の端部および素体の第2の側面に露出する第2の端部を有するコイル導体と、素体の第1の側面と底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、第1の側面に露出するコイル導体の第1の端部と電気的に接続された第1の端子電極と、素体の第2の側面と底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、第2の側面に露出するコイル導体の第2の端部と電気的に接続された第2の端子電極とを備え、底面を基準とする高さ位置に関し、コイル導体の第1の端部が第1の側面に露出する高さ位置とコイル導体の第2の端部が第2の側面に露出する高さ位置とが異なっており、かつ、第1の側面を覆う部分の第1の端子電極の高さ位置と第2の側面を覆う部分の第2の端子電極の高さ位置とが異なっている。
【0007】
上記コイル部品においては、コイル導体の第1の端部が第1の側面に露出する高さ位置とコイル導体の第2の端部が第2の側面に露出する高さ位置とが異なっている。第1の側面を覆う部分の第1の端子電極の高さ位置と第2の側面を覆う部分の第2の端子電極の高さ位置とを異ならせることで、コイル部品の駆動時に、第1の端子電極および第2の端子電極のそれぞれとコイル導体との間に生じる浮遊容量を調整することができ、それによりコイル部品のインピーダンス特性を調整することができる。
【0008】
他の側面に係るコイル部品では、底面を基準とする高さ位置に関し、コイル導体の第1の端部が第1の側面に露出する高さ位置よりコイル導体の第2の端部が第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、第1の側面を覆う部分の第1の端子電極の高さ位置より第2の側面を覆う部分の第2の端子電極の高さ位置が低い。
【0009】
他の側面に係るコイル部品では、底面を基準とする高さ位置に関し、コイル導体の第1の端部が第1の側面に露出する高さ位置よりコイル導体の第2の端部が第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、コイル導体の上端の高さ位置よりコイル導体の第2の端部が第2の側面に露出する高さ位置が低い。
【0010】
他の側面に係るコイル部品では、素体の内部において底面に対して平行に延在し、素体の底面側とは反対側に位置する上面および底面側に位置する下面を有する基板をさらに備え、コイル導体が、基板の上面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、基板の下面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、基板を貫通するとともに第1巻回部と第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有し、第1巻回部が第1の端部を含むとともに第2巻回部が第2の端部を含む。
【0011】
他の側面に係るコイル部品では、素体の底面に対して直交する方向に関し、第1巻回部の長さより第2巻回部の長さが短い。
【0012】
他の側面に係るコイル部品では、素体の底面に対して直交する方向に関し、基板は、素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している。
【0013】
他の側面に係るコイル部品では、素体の底面に対して直交する方向に関し、コイル導体の上方に位置する部分の素体の長さが、コイル導体の長さより短い。
【0014】
他の側面に係るコイル部品では、素体の底面に対してコイル導体のコイル軸が直交している。
【発明の効果】
【0015】
本発明の種々の側面によれば、インピーダンス特性の調整が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るコイル部品を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品の分解斜視図である。
【
図3】基板とコイル導体の構成を示した分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したコイル部品のIV-IV線断面図である。
【
図5】基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【
図6】コイル部品を製造する際の一部の工程を示した図である。
【
図8】異なる態様の基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【
図9】異なる態様の基板とコイル導体の構成を示した側面図である。
【
図10】異なる態様のコイル導体を示した斜視図である。
【
図11】異なる態様のコイル部品を示した側面図である。
【
図12】異なる態様のコイル部品を示した側面図である。
【
図13】異なる態様のコイル部品を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0018】
一実施形態にコイル部品1について、
図1~4を参照しつつ説明する。コイル部品1は、
図1、2に示すように、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子電極20A、20B(端子電極)とを備えて構成されている。
【0019】
素体10は、略直方体形状の外形を有し、対面する一対の主面10a、10bと、対面する一対の端面10c、10dと、対面する一対の側面10e、10fを有する。一対の端面10c、10dおよび一対の側面10e、10fは、一対の主面10a、10bをつないでいる。本実施形態において、一対の主面10a、10bの対面方向が素体10の高さ方向、一対の端面10c、10dの対面方向が素体10の長辺方向、一対の側面10e、10fの対面方向が素体10の短辺方向となっている。本実施形態においては、主面10bが、コイル部品1が実装される基材と面する実装面となっており、実装されたときには素体10の底面となる。コイル部品1は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ1.0mmの寸法で設計される。
【0020】
一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第1の外部端子電極20Aは、素体10の端面10c側に設けられている。第1の外部端子電極20Aは、端面10cを覆う部分20aと端面10c側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10cと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aは、端面10cの上端に達する高さ位置まで延びている。一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第2の外部端子電極20Bは、素体10の端面10d側に設けられている。第2の外部端子電極20Bは、第1の外部端子電極20A同様、端面10dを覆う部分20aと端面10d側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10dと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aは、端面10dの上端に達する高さ位置まで延びておらず、端面10dの途中で終端している。
【0021】
素体10は、磁性体12の内部に、
図3に示した基板30とコイル導体40とが設けられた構成を有する。
【0022】
基板30は、素体10の内部に配置されており、素体10の一対の端面10c、10dの間にわたって延在しており、各端面10c、10dから露出する端部30a、30bを有する。基板30は、素体10の主面10a、10bに対して平行に延在する平板状の形状を有し、主面10a側に位置する上面30cおよび主面10b側に位置する下面30dを有する。基板30は、その厚さ方向から見て略楕円環状の形状を有している。基板30の中央部分には、楕円形の貫通孔32が設けられている。
【0023】
基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。基板30としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm~60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。基板30の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。基板30の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0024】
コイル導体40は、基板30の上面30cに設けられた平面空芯コイル用の第1導体パターン43Aが絶縁被覆された第1コイル部42Aと、基板30の下面3dに設けられた平面空芯コイル用の第2導体パターン43Bが絶縁被覆された第2コイル部42Bと、第1導体パターン43Aと第2導体パターン43Bとを接続するスルーホール導体48とを有する。コイル導体40のコイル軸は、素体10の主面10a、10bの対面方向(実装面10bに対して直交する方向)に延在している。
【0025】
第1導体パターン43A(第1巻回部)は、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第1導体パターン43Aは、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第1導体パターン43Aは、より詳しくは、
図3に示すように、上方向(Z方向)から見て外側に向かって右回りに3ターン分だけ巻回されている。
【0026】
第1導体パターン43Aの外側の端部40aは、素体10の端面10cにおいて露出し、端面10cを覆う外部端子電極20Aと接続されている。第1導体パターン43Aの内側の端部40cは、スルーホール導体48に接続されている。
【0027】
第2導体パターン43B(第2巻回部)も、第1導体パターン43A同様、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第2導体パターン43Bも、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第2導体パターン43Bは、より詳しくは、上方向(Z方向)から見て外側に向かって左回りに3ターン分だけ巻回されている。すなわち、第2導体パターン43Bは、上方向から見て、第1導体パターン43Aとは反対の方向に巻回されている。
【0028】
第2導体パターン43Bの外側の端部40bは、素体10の端面10dにおいて露出し、端面10dを覆う外部端子電極20Bと接続されている。第2導体パターン43Bの内側の端部40dは、第1導体パターン43Aの内側の端部40cと、基板30の厚さ方向において位置合わせされており、スルーホール導体48に接続されている。
【0029】
スルーホール導体48(貫通部)は、基板30の貫通孔32の縁領域に貫設されており、第1導体パターン43Aの端部40cと第2導体パターン43Bの端部40dとを接続する。スルーホール導体48は、基板30に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。スルーホール導体48は、たとえば基板30の厚さ方向に延びる柱状(円柱状や角柱状等)の外形を有する。
【0030】
図4に示すように、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bはそれぞれ樹脂壁44A、44Bを有する。第1コイル部42Aの樹脂壁44Aは、第1導体パターン43Aの線間、内周および外周に位置している。同様に、第2コイル部42Bの樹脂壁44Bは、第2導体パターン43Bの線間、内周および外周に位置している。本実施形態では、導体パターン43A、43Bの内周および外周に位置する樹脂壁44A、44Bは、導体パターン43A、43Bの線間に位置する樹脂壁44A、44Bよりも厚くなるように設計されている。
【0031】
樹脂壁44A、44Bは、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成する前に基板30上に設けることができ、この場合には樹脂壁44A、44Bにおいて画成された壁間において第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bがめっき成長される。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成した後に基板30上に設けることができ、この場合には第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bに樹脂壁44A、44Bが充填や塗布等により設けられる。
【0032】
第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bには、第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bと樹脂壁44A、44Bとを上面側から一体的に覆う絶縁層45がそれぞれ設けられている。絶縁層45は、絶縁樹脂または絶縁磁性材料で構成され得る。
【0033】
磁性体12は、基板30およびコイル導体40を一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体12は、基板30およびコイル導体40を上下方向から覆うとともに、基板30およびコイル導体40の外周を覆っている。また、磁性体12は、基板30の貫通孔32の内部およびコイル導体40の内側領域を充たしている。磁性体12は、素体10の全ての表面、すなわち、主面10a、10b、端面10c、10d、側面10e、10fを構成している。
【0034】
磁性体12は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。磁性体26を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
続いて、基板30、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bの位置関係および厚さについて、
図5の側面図を参照しつつ説明する。
【0036】
基板30は、素体10の主面10a、10bの対面方向に対して直交するように延在している。本実施形態では、基板30は、素体10の主面10a、10bの対面方向に関する素体の長さ(すなわち、高さ)をHとしたとき、素体10の中間の高さ位置(H/2)と同じ高さ位置hにおいて延在している(h=H/2)。基板30は、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さtを有する。基板30の厚さtは一例として50μmである。素体10の高さHは一例として500μmである。
【0037】
基板30の上面30cに設けられた第1コイル部42Aも、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さT1を有する。厚さT1は一例として115μmである。第1コイル部42Aにおいて、第1導体パターン43Aおよび樹脂壁44Aは均一な厚さT1を有しており、第1導体パターン43Aの上端面と樹脂壁44Aの上面端とで平坦面を構成している(すなわち、面一となっている)。
【0038】
基板30の下面30dに設けられた第2コイル部42Bも、主面10a、10bの対面方向において長さ(すなわち、厚さ)が均一であり、均一な厚さT2を有する。厚さT2は、厚さT1とは異なっており、本実施形態では、厚さT1より小さくなるように設計されている(T2<T1)。厚さT2は一例として85μmである。第2コイル部42Bにおいて、第2導体パターン43Bおよび樹脂壁44Bは均一な厚さT2を有しており、第2導体パターン43Bの下端面と樹脂壁44Bの下面端とで平坦面を構成している(すなわち、面一となっている)。
【0039】
第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bは、
図6(a)~(c)に示した工程により形成することができる。
【0040】
図6(a)に示すように、基板30の両面30c、30dに第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが設けられた状態では、導体パターン43A、43Bおよび樹脂壁44A、44Bのそれぞれの高さが揃わずに凹凸が生じることがあり得る。このように導体パターン43A、43Bおよび樹脂壁44A、44Bの高さが不揃いである第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが設けられた基板30に対し、両面30c、30d側から一対のレジストフィルム50(剥離型ドライフィルムレジスト(DFR))を貼付する。それにより、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bが、基板30とともに一対のレジストフィルム50間に挟まれて、
図6(b)に示すようにレジストフィルム50内に埋設された状態となる。
【0041】
次に、研磨機を用いた研磨をおこなう。具体的には、研磨機のチャックテーブル60上に、粘着テープ62(たとえばUVテープ)を介して、レジストフィルム50内に埋設された基板30、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを、基板30がチャックテーブル60に対して平行になる姿勢で載置する。そして、バイト70(たとえばダイヤモンドバイト)を用いたバイト研磨により、レジストフィルム50から第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを露出させる。上記研磨は、基板30の上面30c側および下面30d側のそれぞれについておこなう。
【0042】
それにより、
図6(c)に示すように、基板30の上面30cでは第1コイル部42Aの第1導体パターン43Aと樹脂壁44Aとが面一となり、同様に、基板30の下面30dでは第2コイル部42Bの第2導体パターン43Bと樹脂壁44Bとが面一となる。研磨の際、基板30とバイト70との相対高さ位置を調整することで、研磨後の第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bのそれぞれの厚さを調整することができる。本実施形態では、第2コイル部42Bの厚さT
2が第1コイル部42Aの厚さT
1より小さくなるように厚さ調整されている。
【0043】
研磨後はレジストフィルム50を除去し、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bに絶縁層45を設けるとともに、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bを磁性体12で一体的に覆うことで、上述した素体10が得られる。
【0044】
上述したとおり、コイル導体40の一方の端部は第1導体パターン43Aの外側の端部40aによって構成され、かつ、コイル導体40の他方の端部は第2導体パターン43Bの外側の端部40bによって構成されている。また、第1導体パターン43Aと第2導体パターン43Bとは、素体10の実装面10bを基準とする高さ位置が異なるため、
図5に示すように、コイル導体40の一方の端部40a(第1の端部)と他方の端部40b(第2の端部)の高さ位置も異なっている。本実施形態においては、
図5に示すように、コイル導体40の一方の端部40aの高さ位置より他方の端部40bの高さ位置のほうが低くなっている。
【0045】
コイル部品1では、素体10の実装面10bを基準とする高さ位置に関し、素体10の端面10c(第1の側面)を覆う部分20aの第1の外部端子電極20Aの高さ位置H1と、素体10の端面10d(第2の側面)を覆う部分20aの第2の外部端子電極20Bの高さ位置H2とが異なっている。本実施形態においては、
図5に示すように、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置H1は素体10の主面10aの高さ位置と略一致しており、一方、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置H2は基板30の下面30dの高さ位置と略一致している。そのため、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置H1より、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置H2のほうが低くなっている。特に、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置H2は、コイル導体40の上端の高さ位置より低くなっている。
【0046】
上述したコイル部品1においては、浮遊容量の低減が図られている。すなわち、
図7に示すように、もし仮に、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置が、素体10の主面10aの高さ位置と略一致しており、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置と同じである場合には、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aと第1導体パターン43Aとが近接する近接領域Sが生じる。本実施形態では、近接領域Sにおいて、第1導体パターン43Aの最外周ターンと、基板30の上面30cより高い位置にある部分20aとが近接する。第1導体パターン43Aの最外周ターンは第1の外部端子電極20Aと同程度の電位となるため、第1導体パターン43Aの最外周ターンと第2の外部端子電極20Bとの間には大きな電位差が生じ、そのため、近接領域においては比較的大きな浮遊容量が生じ得る。
【0047】
コイル部品1においては、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さが低減されており、上述した近接領域Sが形成されないため、浮遊容量が効果的に低減されている。このように浮遊容量の低減が図られたコイル部品1では、高周波帯域(たとえば70~80MHz)において高いインピーダンスを維持することができる。
【0048】
なお、コイル部品1では、素体10の端面10cを覆う部分20aの第1の外部端子電極20Aの高さ位置、および、素体10の端面10dを覆う部分20aの第2の外部端子電極20Bの高さ位置は、互いに異なっていれば、上述した高さでなくてもよい。たとえば、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置より、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置のほうが低くなっていてもよい。第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さ位置、および、第1の外部端子電極20Aの端面10cを覆う部分20aの高さ位置のいずれも、素体10の主面10aの高さ位置まで達していなくてもよい。このような高さ位置の関係となるように調整することで、外部端子電極20A、20Bと導体パターン43A、43Bとの間に生じる浮遊容量を調整することができ、それにより、コイル部品1のインピーダンス特性が調整される。
【0049】
上述した実施形態では、第2導体パターン43Bの厚さT
2が第1導体パターン43Aの厚さT
1より小さい態様について説明したが、
図7に示すように、第2導体パターン43Bの厚さT
2と第1導体パターン43Aの厚さT
1とが同じ態様であってもよい。このような態様であっても、第2の外部端子電極20Bの端面10dを覆う部分20aの高さを下げて上述した近接領域Sが形成されないようにすることで、浮遊容量が効果的に低減され、高周波帯域において高いインピーダンスを維持することができる。
【0050】
上述した実施形態では、基板30は、素体10の主面10a、10bの対面方向に関する素体の長さをHとしたとき、素体10の中間の高さ位置(H/2)と同じ高さ位置hにおいて延在しているが、素体10の中間の高さ位置(H/2)とは異なる高さ位置において延在していてもよい。たとえば、
図9に示すように、基板30を主面10a側に近づけて、基板30が、素体10の中間の高さ位置(H/2)から主面10a側にズレた高さ位置hにおいて延在していてもよい。
図9に示した態様では、基板30は、その厚さ方向に関し、素体10の中間の高さ位置(H/2)より高い高さ位置hにおいて延在している(h>H/2)。このとき、素体10の主面10aからコイル導体40までの距離Dが相対的に短くなり、この距離Dは、コイル導体40の上方に位置する部分の素体10の長さに対応する。距離Dは、コイル導体40の長さT(たとえば、T=T
1+T
2+t)より短くなり得る。この場合、
図5に示した態様(すなわち、h=H/2)に比べて、基板30が実装面10b側から遠ざかっているため、実装面10bを覆う部分20bの外部端子電極20A、20Bとコイル導体40(特に、第2導体パターン)との間の浮遊容量が低減され、高周波帯域において高いインピーダンスを維持することができる。
【0051】
なお、素体10の内部に設けられるコイル導体40は、上述したコイル導体の形態に限らず、様々な形態を採用することができる。たとえば、コイル導体40は、
図10、11に示すように、1本の平角線状の導線を複数段に巻回した構成であってもよい。コイル導体40は、両端部40a、40bが最外周となるように2段の外外巻きに巻回され得る。このような形態であっても、
図11に示すように、コイル導体40の一方の端部40aの高さ位置と他方の端部40bの高さ位置とが異なり、一方の端部40aの高さ位置より他方の端部40bの高さ位置のほうが低くなる。また、コイル導体40は、
図12に示すように、1本の平角線状の導線をエッジワイズ巻き(縦巻き)で複数段に巻回した構成であってもよい。コイル導体40の巻き方は、エッジワイズ巻きに限らず、α巻きや横巻き等であってもよい。さらに、コイル導体40は、
図13に示すように、積層コイルの形態であってもよい。
図13に示した形態では、コイル導体40は、積層構造を有する素体10の内部に設けられた複数の内部電極層41を備えて構成されている。各内部電極層41は、コイルターンの一部を構成するようにパターニングされている。隣り合う内部電極層41同士は図示しないビア導体により電気的に接続されている。複数の内部電極層41のうちの最上段の内部電極層41aが端面10cまで引き出されてコイル導体40の端部40aを構成しており、最下段の内部電極層が端面10dまで引き出されてコイル導体40の端部40bを構成している。
図10~13に示したコイル導体40のいずれも、そのコイル軸は実装面10bに対して直交する方向に延在している。
【0052】
上述したコイル部品は、上述した形態に限らず、様々な形態を採用することができる。たとえば、コイル導体を構成する導体パターンの平面形状は、楕円形に限らず、たとえば真円形状や多角形状であってもよい。
【0053】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
底面と、該底面に対して直交する第1の側面および第2の側面を有する素体と、
前記素体の内部に設けられ、前記素体の第1の側面に露出する第1の端部および前記素体の第2の側面に露出する第2の端部を有するコイル導体と、
前記素体の前記第1の側面と前記底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、前記第1の側面に露出する前記コイル導体の前記第1の端部と電気的に接続された第1の端子電極と、
前記素体の前記第2の側面と前記底面とを連続的に覆うようにL字状に屈曲しており、前記第2の側面に露出する前記コイル導体の前記第2の端部と電気的に接続された第2の端子電極と
を備え、
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置と前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置とが異なっており、かつ、前記第1の側面を覆う部分の前記第1の端子電極の高さ位置と前記第2の側面を覆う部分の前記第2の端子電極の高さ位置とが異なっている、コイル部品。
[付記2]
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、前記第1の側面を覆う部分の前記第1の端子電極の高さ位置より前記第2の側面を覆う部分の前記第2の端子電極の高さ位置が低い、付記1に記載のコイル部品。
[付記3]
前記底面を基準とする高さ位置に関し、前記コイル導体の前記第1の端部が前記第1の側面に露出する高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低く、かつ、前記コイル導体の上端の高さ位置より前記コイル導体の前記第2の端部が前記第2の側面に露出する高さ位置が低い、付記1に記載のコイル部品。
[付記4]
前記素体の内部において前記底面に対して平行に延在し、前記素体の底面側とは反対側に位置する上面および前記底面側に位置する下面を有する基板をさらに備え、
前記コイル導体が、前記基板の上面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の下面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有し、
前記第1巻回部が前記第1の端部を含むとともに前記第2巻回部が前記第2の端部を含む、付記1に記載のコイル部品。
[付記5]
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記第1巻回部の長さより前記第2巻回部の長さが短い、付記4に記載のコイル部品。
[付記6]
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記基板は、前記素体の中間の高さ位置からズレた高さ位置において延在している、付記4または5に記載のコイル部品。
[付記7]
前記素体の底面に対して直交する方向に関し、前記コイル導体の上方に位置する部分の素体の長さが、前記コイル導体の長さより短い、付記4~6のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記8]
前記素体の底面に対して前記コイル導体のコイル軸が直交している、付記1~7のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0054】
1…コイル部品、10…素体、12…磁性体、20A、20B…外部端子電極、30…基板、40…コイル導体、42A…第1コイル部、42B…第2コイル部、43A…第1導体パターン、43B…第2導体パターン、44A、44B…樹脂壁。