(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082052
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195754
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】岡林 晃司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730EE59
(57)【要約】
【課題】複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の素子寿命を改善できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数の半導体素子の動作により、電源側から負荷側への電力の変換、及び負荷側から電源側への電力の変換の双方向の電力の変換が可能な複数の電力変換回路と、複数の電力変換回路のそれぞれの電力の変換の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、負荷に供給する電力が所定値以上の時には、電源側から負荷側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路のそれぞれを動作させ、負荷に供給する電力が所定値未満の時には、電源側から負荷側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路の一部を動作させ、負荷側から電源側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路の残りの一部を動作させることにより、負荷パターンに応じた大きさの電力を負荷に供給する電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列に接続されるとともに、電源に接続され、複数の半導体素子を有し、前記複数の半導体素子の動作により、前記電源側から前記負荷側への電力の変換、及び前記負荷側から前記電源側への電力の変換の双方向の電力の変換が可能な複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路のそれぞれの電力の変換の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が所定値以上の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路のそれぞれを動作させ、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の一部を動作させ、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の残りの一部を動作させることにより、前記負荷の負荷パターンに応じた大きさの電力を前記負荷に供給する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、の一方の電力の大きさを、前記負荷に供給する電力が前記所定値以上の時と同じ値とし、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、の他方の電力の大きさを変化させることにより、前記負荷に供給する電力の大きさを調整する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、を定期的に入れ替える請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数の電力変換回路のそれぞれは、前記電源に対して並列に接続される請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に対して並列に接続された複数の電力変換回路を備え、複数の電力変換回路のそれぞれを用いて電力の変換を行うことにより、負荷への電力の供給を行う電力変換装置がある。複数の電力変換回路は、例えば、スイッチング素子や整流素子などの複数の半導体素子を有し、複数の半導体素子の動作により、電力の変換を行う。
【0003】
このような電力変換装置では、電圧や電流を複数の電力変換回路で分担することができ、複数の電力変換回路の複数の半導体素子に必要となる電流や電圧の許容値の増加を抑制しつつ、比較的高い電圧や大きな電流に対応することができる。このような電力変換装置は、例えば、鉄道車両のき電システムなど、比較的大きな電力を扱う電力システムに用いられている。
【0004】
こうした電力変換装置において、負荷パターンが変動する場合がある。換言すれば、電力変換装置から負荷に供給する電力の大きさが変動する場合がある。各半導体素子の損失は、負荷パターンに応じて変動する。そして、各半導体素子の損失が変動すると、各半導体素子の温度も変動する。従って、負荷パターンが変動すると、各半導体素子の温度の変化幅も大きくなり、各半導体素子の劣化を早め、各半導体素子の素子寿命が短くなってしまう可能性がある。このため、複数の電力変換回路を備えた電力変換装置では、負荷パターンが変動する場合にも、複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の素子寿命を改善できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の素子寿命を改善できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、負荷に対して並列に接続されるとともに、電源に接続され、複数の半導体素子を有し、前記複数の半導体素子の動作により、前記電源側から前記負荷側への電力の変換、及び前記負荷側から前記電源側への電力の変換の双方向の電力の変換が可能な複数の電力変換回路と、前記複数の電力変換回路のそれぞれの電力の変換の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記負荷に供給する電力が所定値以上の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路のそれぞれを動作させ、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の一部を動作させ、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の残りの一部を動作させることにより、前記負荷の負荷パターンに応じた大きさの電力を前記負荷に供給する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の素子寿命を改善できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【
図2】電力変換回路の一例を模式的に表すブロック図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(e)は、実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(e)は、電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、複数の電力変換回路11、12と、制御部14と、を備える。
【0012】
複数の電力変換回路11、12は、負荷2に対して並列に接続される。また、複数の電力変換回路11、12は、電源4に接続される。複数の電力変換回路11、12は、例えば、電源4に対しても並列に接続される。複数の電力変換回路11、12は、電源4から供給された電力を負荷2に応じた電力に変換し、変換後の電力を負荷2に供給する。また、複数の電力変換回路11、12は、負荷2側の電力を電源4に応じた電力に変換し、変換後の電力を電源4側に供給する機能をさらに有する。このように、複数の電力変換回路11、12は、電源4側から負荷2側への電力の変換、及び負荷2側から電源4側への電力の変換の双方向の電力の変換を可能とする。
【0013】
電力変換装置10では、負荷2又は電源4に供給する電力を複数の電力変換回路11、12で分担することができる。これにより、例えば、複数の電力変換回路11、12に設けられる半導体素子に必要となる電流や電圧の許容値の増加を抑制しつつ、比較的高い電圧や大きな電流に対応することができる。
【0014】
負荷2の電力は、例えば、直流電力である。電源4の電力は、例えば、直流電力である。複数の電力変換回路11、12は、例えば、電源4から供給された直流電力を負荷2に応じた別の直流電力に変換し、変換後の直流電力を負荷2に供給する。但し、負荷2の電力及び電源4の電力は、直流電力に限ることなく、交流電力などでもよい。負荷2の電力及び電源4の電力は、任意の電力でよい。複数の電力変換回路11、12の電力変換は、負荷2の電力及び電源4の電力に応じた任意の電力変換でよい。
【0015】
この例において、電力変換装置10は、2つの電力変換回路11、12を備えている。但し、電力変換装置10に設けられる電力変換回路の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。電力変換回路の数は、任意の数でよい。
【0016】
電源4は、例えば、交流の電力系統に接続され、電力系統の交流電力を直流電力に変換して電力変換装置10に供給する別の電力変換装置である。電源4は、例えば、直流電力を蓄積する蓄電装置などでもよい。電源4は、複数の電力変換回路11、12に電力を供給可能な任意の電源でよい。
【0017】
電力変換回路11は、一対の端子11a、11bを有する。電力変換回路12は、一対の端子12a、12bを有する。電力変換回路11の一方の端子11a及び電力変換回路12の一方の端子12aは、直流負荷である負荷2の高電位側の端子と接続される。電力変換回路11の他方の端子11b及び電力変換回路12の他方の端子12bは、直流負荷である負荷2の低電位側の端子と接続される。これにより、電力変換回路11、12が、負荷2に対して並列に接続される。
【0018】
また、電力変換回路11は、一対の端子11c、11dを有する。電力変換回路12は、一対の端子12c、12dを有する。電力変換回路11の一方の端子11c及び電力変換回路12の一方の端子12cは、直流電源である電源4の正極と接続される。電力変換回路11の他方の端子11d及び電力変換回路12の他方の端子12dは、直流電源である電源4の負極と接続される。これにより、電力変換回路11、12が、電源4に対して並列に接続される。
【0019】
なお、複数の電力変換回路11、12の電源4側は、並列接続に限定されるものではない。あるいは、複数の電力変換回路11、12のそれぞれに対応する複数の電源4を設け、複数の電力変換回路11、12のそれぞれを複数の電源4のそれぞれに個別に接続してもよい。例えば、複数の電力変換回路11、12のそれぞれに対応する複数の蓄電装置を電源4として設け、各蓄電装置に蓄積された電力の負荷2への供給、及び負荷2側の電力による各蓄電装置の充電を、複数の電力変換回路11、12のそれぞれで任意に行えるようにしてもよい。
【0020】
制御部14は、複数の電力変換回路11、12のそれぞれの電力の変換の動作を制御する。制御部14は、例えば、複数の電力変換回路11、12から負荷2に対して出力する電力の大きさを表す出力指令値の入力を受ける。制御部14は、例えば、上位のコントローラなどから出力指令値の入力を受ける。制御部14は、入力された出力指令値に応じた大きさの電力を負荷2に供給するように、複数の電力変換回路11、12の動作を制御する。
【0021】
出力指令値は、例えば、負荷2の負荷パターンの変動に応じて変化する。これにより、負荷2の負荷パターンに応じた大きさの電力を複数の電力変換回路11、12から負荷2に供給することができる。
【0022】
但し、負荷2の負荷パターンに応じた大きさの電力を複数の電力変換回路11、12から負荷2に供給する構成は、上記に限定されるものではない。例えば、予め設定された負荷パターンを制御部14に記憶させておき、記憶した負荷パターンに応じて複数の電力変換回路11、12から負荷2に供給する電力の大きさを変化させてもよい。例えば、負荷2で必要な電力の大きさを測定し、測定結果に応じた大きさの電力を負荷2の負荷パターンに応じた大きさの電力として複数の電力変換回路11、12から負荷2に供給してもよい。
【0023】
図2は、電力変換回路の一例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電力変換回路11は、例えば、スイッチング素子21、22と、整流素子23、24と、インダクタ25と、コンデンサ26、27と、を有する。なお、電力変換回路12の構成は、電力変換回路11の構成と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0024】
スイッチング素子21、22は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。また、スイッチング素子21、22は、オン状態と、オフ状態と、を有する。オン状態は、一対の主端子間に電流を流す状態である。オフ状態は、一対の主端子間の電流の流れを遮断する状態である。スイッチング素子21、22のそれぞれは、一対の主端子間の電圧、及び制御端子の電圧に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。なお、オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、電力変換回路11の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。
【0025】
スイッチング素子21、22は、例えば、IGBTやMOSFETなどの自励式の半導体スイッチング素子である。但し、スイッチング素子21、22は、これに限ることなく、オン状態及びオフ状態を任意に切り替えることが可能な任意の素子でよい。
【0026】
スイッチング素子21の一方の主端子は、端子11aと電気的に接続される。スイッチング素子21の他方の主端子は、スイッチング素子22の一方の主端子と電気的に接続される。スイッチング素子22は、スイッチング素子21と直列に接続される。スイッチング素子22の他方の主端子は、端子11bと電気的に接続される。スイッチング素子21、22は、端子11a、11bの間に直列に接続される。換言すれば、スイッチング素子21は、端子11a、11bの間に設けられ、スイッチング素子22は、スイッチング素子21と端子11bとの間に設けられる。
【0027】
整流素子23は、スイッチング素子21に対して逆並列に接続される。整流素子24は、スイッチング素子22に対して逆並列に接続される。整流素子23、24は、例えば、ダイオードである。整流素子23、24のアノードは、スイッチング素子21、22の低電位側の主端子と電気的に接続され、整流素子23、24のカソードは、スイッチング素子21、22の高電位側の主端子と電気的に接続される。整流素子23、24に流れる電流の向き(整流の向き)は、スイッチング素子21、22に流れる電流の向きと逆向きである。
【0028】
インダクタ25の一端は、スイッチング素子21、22の接続点と電気的に接続されている。インダクタ25の他端は、端子11cと電気的に接続されている。端子11dは、端子11bと電気的に接続されている。
【0029】
コンデンサ26は、端子11a、11bの間に設けられている。コンデンサ26は、例えば、電力変換回路11から負荷2に供給される直流電力の変動を抑制する。コンデンサ27は、端子11c、11dの間に設けられている。コンデンサ27は、例えば、電源4から電力変換回路11に供給される直流電力の変動を抑制する。
【0030】
電力変換回路11は、スイッチング素子21、22を有し、スイッチング素子21、22のスイッチングによって直流電力の変換を行う。この例において、電力変換回路11は、双方向チョッパ回路である。電力変換回路11は、スイッチング素子22のスイッチングにより、電源4から供給された直流電力を負荷2に応じた別の直流電力に変換し、変換後の直流電力を負荷2に供給する。そして、電力変換回路11は、スイッチング素子21のスイッチングにより、負荷2側の直流電力を別の直流電力に変換し、変換後の直流電力を電源4側に供給する。これにより、電力変換回路11は、電源4側から負荷2側への電力の変換、及び負荷2側から電源4側への電力の変換の双方向の電力の変換を可能とする。
【0031】
制御部14は、例えば、電力変換回路11のスイッチング素子21、22のそれぞれに対応する複数の制御信号を生成し、各制御信号を各スイッチング素子21、22の制御端子に入力し、各スイッチング素子21、22のスイッチングを制御することにより、電力変換回路11による電力の変換の動作を制御する。
【0032】
このように、電力変換回路11は、スイッチング素子21、22や整流素子23、24などの複数の半導体素子を有し、複数の半導体素子の動作により、電力の変換を行う。但し、複数の電力変換回路11、12の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、交流電力と直流電力との間の変換を行う場合には、複数の電力変換回路11、12は、複数のスイッチング素子をフルブリッジ接続したフルブリッジ回路などでもよい。例えば、複数の電力変換回路11、12の扱う電力は、三相交流電力などでもよい。この場合、複数の電力変換回路11、12は、三相交流電力の各相に対応する3つの端子を有する。
【0033】
複数の電力変換回路11、12の構成は、扱う電力の種類や電源4の構成などに応じて適宜設定すればよい。複数の電力変換回路11、12の構成は、複数の半導体素子を有し、複数の半導体素子の動作により、電源4側から負荷2側への電力の変換、及び負荷2側から電源4側への電力の変換の双方向の電力の変換が可能な任意の構成でよい。複数の電力変換回路11、12に設けられる半導体素子は、スイッチング素子21、22や整流素子23、24に限ることなく、電力の変換に必要な任意の半導体素子でよい。複数の電力変換回路11、12に設けられる半導体素子の数は、回路構成に応じた任意の数でよい。
【0034】
図3(a)~
図3(e)は、実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図3(a)は、負荷2に供給する電力が大きい時の電力変換回路11、12の動作の一例を模式的に表す。
図3(b)は、負荷2に供給する電力が小さい時の電力変換回路11、12の動作の一例を模式的に表す。
図3(c)は、負荷パターンの一例を模式的に表す。負荷パターンは、換言すれば、電力変換回路11、12から負荷2に供給する装置全体の電力の大きさである。
図3(d)は、各電力変換回路11、12の1つあたりの分担する電力の大きさの一例を模式的に表す。
図3(e)は、各電力変換回路11、12に設けられる半導体素子(例えば、スイッチング素子21、22)の素子温度の一例を模式的に表す。
【0035】
図3(a)に表したように、制御部14は、負荷2に供給する電力が所定値以上の時には、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12のそれぞれを動作させる。
【0036】
そして、
図3(b)に表したように、制御部14は、負荷2に供給する電力が所定値未満の時には、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12の一部を動作させ、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12の残りの一部を動作させる。制御部14は、負荷2に供給する電力が所定値未満の時には、例えば、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に電力変換回路11を動作させ、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に電力変換回路12を動作させる。
【0037】
図4(a)~
図4(e)は、電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図4(a)~
図4(e)のそれぞれの内容は、
図3(a)~
図3(e)のそれぞれの内容と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0038】
図4(a)及び
図4(b)に表したように、参考の動作では、負荷2に供給する電力が所定値以上の時及び所定値未満の時のいずれにおいても、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12のそれぞれを動作させている。このため、参考の動作では、1つの電力変換回路から出力する電力の大きさの変化の幅が、負荷2に供給する電力の大きさの変化に応じて大きくなる。
【0039】
例えば、
図4(c)に表したように、負荷2の定格電力を100%とする時に、負荷パターンが100%と5%とに定期的に変化するパターンであるとする。この際、参考の動作では、
図4(d)に表したように、100%の時には各電力変換回路11、12から50%ずつを出力し、5%の時には各電力変換回路11、12から2.5%ずつを出力することとなる。従って、各電力変換回路11、12から出力する電力の大きさの変化の幅は、47.5%となる。
【0040】
各電力変換回路11、12に設けられた各半導体素子の損失は、負荷パターンに応じて変動する。そして、各半導体素子の損失が変動すると、各半導体素子の温度も変動する。従って、
図4(e)に表したように、参考の動作においては、負荷パターンが変動すると、各半導体素子の温度の変化幅も大きくなり、各半導体素子の劣化を早め、各半導体素子の素子寿命が短くなってしまう可能性が生じてしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御部14が、負荷2に供給する電力が所定値未満の時には、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12の一部を動作させ、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に、複数の電力変換回路11、12の残りの一部を動作させる。
【0042】
例えば、負荷パターンが100%と5%とに定期的に変化する場合に、制御部14は、100%の時には、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、各電力変換回路11、12から50%ずつを出力させる。そして、制御部14は、5%の時には、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に、電力変換回路11から50%を出力させ、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に、電力変換回路12から45%を出力させる。
【0043】
これにより、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を反対の方向としつつ、負荷2の負荷パターンに応じた大きさの電力を複数の電力変換回路11、12から負荷2に供給することができる。この例では、電力変換回路11の出力と電力変換回路12の出力との差分の5%分を負荷2に供給することができる。
【0044】
この例では、負荷パターンが100%と5%とに変化する場合においても、各電力変換回路11、12から出力する電力の大きさ(電力の絶対値)の変化を電力変換回路12の5%分に抑えることができる。従って、
図3(e)に表したように、負荷パターンが変動した際にも、
図4に表した参考の動作と比べて、各半導体素子の温度の変化幅を小さくすることができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る電力変換装置10では、負荷パターンが変動する場合においても、各電力変換回路11、12に設けられた複数の半導体素子の温度変化を抑制し、各半導体素子の温度変化に起因して各半導体素子の素子寿命が短くなってしまうことを抑制することができる。本実施形態に係る電力変換装置10では、参考の動作を行う場合と比べて、複数の電力変換回路11、12のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の素子寿命の改善を図ることができる。
【0046】
また、電力変換装置10では、制御部14が、負荷2に供給する電力が所定値未満の時に、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を反対の方向とすることで、各半導体素子の温度変化を抑制している。このため、部品点数の増加などを抑制しつつ、各半導体素子の温度変化を抑制することができる。例えば、各半導体素子の放熱手段の増強を行って各半導体素子の温度変化を抑制する場合などと比べて、各半導体素子の素子寿命の改善を行う際にも、装置の大型化や製造コストの増加などを抑制することができる。
【0047】
所定値は、例えば、負荷2に供給する電力の定格電力の50%程度に設定される。換言すれば、所定値は、例えば、各電力変換回路11、12の定格電力の50%程度に設定される。制御部14は、例えば、負荷2に供給する電力の大きさが定格電力の50%以上の時に、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を同じ方向とし、負荷2に供給する電力の大きさが定格電力の50%未満の時に、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を異なる方向とする。但し、所定値は、上記に限ることなく、負荷パターンなどに応じて適宜設定すればよい。所定値は、各半導体素子の温度変化を抑制可能な任意の値に設定すればよい。
【0048】
また、所定値は、例えば、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を同じ方向としている状態から異なる方向に切り替える場合と、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を異なる方向としている状態から同じ方向に切り替える場合と、で異なる値としてもよい。例えば、異なる方向から同じ方向に切り替える場合の所定値は、同じ方向から異なる方向に切り替える場合の所定値よりも高い値に設定する。これにより、例えば、負荷パターンが所定値付近で変動している際に、各電力変換回路11、12の電力の出力方向が頻繁に変化してしまうことを抑制し、各電力変換回路11、12の動作をより安定させることができる。
【0049】
この例では、制御部14は、負荷2に供給する電力が所定値以上の時も所定値未満の時も電力変換回路11から出力する電力の大きさを50%の同じ値としている。そして、制御部14は、負荷2に供給する電力が所定値以上の時と所定値未満の時とで、電力変換回路12から出力する電力の方向を変化させるとともに、電力変換回路12から出力する電力の大きさを50%と45%とに変化させている。
【0050】
このように、電力変換回路11から出力する電力の大きさは、負荷2に供給する電力が所定値以上の時も所定値未満の時も同じ値とする。これにより、電力変換回路11に設けられた複数の半導体素子の温度変化をより抑制し、電力変換回路11に設けられた各半導体素子の素子寿命をより改善することができる。
【0051】
また、上記のように、負荷2に供給する電力が所定値以上の時も所定値未満の時も電力変換回路11から出力する電力の大きさを同じ値とする場合には、電力変換回路11の機能と電力変換回路12の機能とを定期的に入れ替えることがより好適である。例えば、所定時間の経過に応じて、電力変換回路12から出力する電力の大きさを、負荷2に供給する電力が所定値以上の時も所定値未満の時も同じ値とし、電力変換回路11から出力する電力の方向及び大きさを、負荷2に供給する電力が所定値以上の時と所定値未満の時とで変化させる。これにより、各電力変換回路11、12のそれぞれに設けられた各半導体素子の劣化具合をバランスさせ、各半導体素子の素子寿命をより改善することができる。
【0052】
なお、上記と反対に、電力の出力方向を変化させる電力変換回路の電力の大きさを同じ値とし、電力の出力方向を同じ方向とする電力変換回路において負荷2に供給する電力の大きさを調整してもよい。
【0053】
制御部14は、例えば、負荷2に供給する電力が所定値未満の時に、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の一部と、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の残りの一部と、の一方の電力の大きさを、負荷2に供給する電力が所定値以上の時と同じ値とする。そして、制御部14は、例えば、負荷2に供給する電力が所定値未満の時に、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の一部と、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の残りの一部と、の他方の電力の大きさを変化させることにより、負荷2に供給する電力の大きさを調整する。
【0054】
これにより、上記のように、電力の大きさを同じ値とした電力変換回路に設けられた複数の半導体素子の温度変化をより抑制し、電力の大きさを同じ値とした電力変換回路に設けられた各半導体素子の素子寿命をより改善することができる。
【0055】
制御部14は、例えば、負荷2に供給する電力が所定値未満の時に、電源4側から負荷2側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の一部と、負荷2側から電源4側へ電力を供給する方向に動作させる複数の電力変換回路11、12の残りの一部と、を定期的に入れ替える。
【0056】
これにより、上記のように、複数の電力変換回路11、12のそれぞれに設けられた複数の半導体素子の劣化具合をバランスさせ、複数の半導体素子の素子寿命をより改善することができる。
【0057】
但し、負荷2に供給する電力が所定値未満の時に複数の電力変換回路11、12の一部から出力する電力の大きさは、必ずしも負荷2に供給する電力が所定値以上の時と同じ値でなくてもよい。負荷2に供給する電力が所定値未満の時に複数の電力変換回路11、12から出力する電力の大きさは、負荷パターン及び各電力変換回路11、12から出力する電力の大きさの変化の幅などに応じて適宜設定すればよい。
【0058】
また、この例では、各電力変換回路11、12の負荷2側及び電源4側のそれぞれが、並列に接続されている。このため、例えば、電力変換回路11の端子11a、11b側(負荷2側)から出力された電力の一部を、電力変換回路12を介して電力変換回路11の端子11c、11d側(電源4側)に戻すことができる。換言すれば、各電力変換回路11、12の間で電力を循環させるようにすることができる。これにより、各電力変換回路11、12の電力の供給する方向を反対の方向とした際にも、各電力変換回路11、12による消費電力の増加などを抑制することができる。例えば、電源4から電力変換装置10に供給する電力の増加などを抑制することができる。但し、前述のように、各電力変換回路11、12の電源4側は、必ずしも並列に接続されていなくてもよい。
【0059】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
負荷に対して並列に接続されるとともに、電源に接続され、複数の半導体素子を有し、前記複数の半導体素子の動作により、前記電源側から前記負荷側への電力の変換、及び前記負荷側から前記電源側への電力の変換の双方向の電力の変換が可能な複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路のそれぞれの電力の変換の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が所定値以上の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路のそれぞれを動作させ、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時には、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の一部を動作させ、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に、前記複数の電力変換回路の残りの一部を動作させることにより、前記負荷の負荷パターンに応じた大きさの電力を前記負荷に供給する電力変換装置。
【0060】
(付記2)
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、の一方の電力の大きさを、前記負荷に供給する電力が前記所定値以上の時と同じ値とし、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、の他方の電力の大きさを変化させることにより、前記負荷に供給する電力の大きさを調整する付記1記載の電力変換装置。
【0061】
(付記3)
前記制御部は、前記負荷に供給する電力が前記所定値未満の時に、前記電源側から前記負荷側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記一部と、前記負荷側から前記電源側へ電力を供給する方向に動作させる前記複数の電力変換回路の前記残りの一部と、を定期的に入れ替える付記2記載の電力変換装置。
【0062】
(付記4)
前記複数の電力変換回路のそれぞれは、前記電源に対して並列に接続される付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
2…負荷、 4…電源、 10…電力変換装置、 11、12…電力変換回路、 14…制御部、 21、22…スイッチング素子、 23、24…整流素子、 25…インダクタ、 26、27…コンデンサ