IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ VIE STYLE株式会社の特許一覧 ▶ ロート製薬株式会社の特許一覧

特開2024-82053情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082053
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 5/00 20060101AFI20240612BHJP
   A61B 5/375 20210101ALI20240612BHJP
   A61B 10/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
A61H5/00 Z
A61B5/375
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195755
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】515059979
【氏名又は名称】VIE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】茨木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 孝弘
【テーマコード(参考)】
4C046
4C127
【Fターム(参考)】
4C046AA31
4C046BB12
4C046CC04
4C046DD01
4C046DD36
4C046EE11
4C046EE23
4C046EE25
4C046EE32
4C046EE33
4C127AA03
4C127DD01
4C127GG03
4C127LL08
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】視覚機能の改善を図るトレーニングを効率良く行う。
【解決手段】情報処理方法は、情報処理装置に含まれるプロセッサが、ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行うこと、視能訓練に利用される所定画像を出力することにより前記ユーザに対する視能訓練処理を行うこと、第1所定時間のニューロフィードバック処理と、第2所定時間の視能訓練処理とを1セットとし、1セットを所定回数繰り返す処理を行うこと、を実行する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置に含まれるプロセッサが、
ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行うこと、
視能訓練に利用される所定画像を出力することにより前記ユーザに対する視能訓練処理を行うこと、
第1所定時間の前記ニューロフィードバック処理と、第2所定時間の前記視能訓練処理とを1セットとし、前記1セットを所定回数繰り返す処理を行うこと、
を実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記繰り返す処理を行うことは、
前記ニューロフィードバック処理において、前記第1所定時間が経過する前に前記脳波信号に基づくα波を示す値が閾値を超えると、前記視能訓練処理に移行することを含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、
前記視能訓練処理における結果を、次の前記ニューロフィードバック処理の前までに前記ユーザに出力すること、をさらに実行する請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記視能訓練処理の際に測定される脳波信号に基づき、α波を示す値に関する情報を前記ユーザに出力すること、をさらに実行する請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記出力することは、
前記視能訓練処理の際に測定される脳波信号に基づくα波を示す値が、前記視能訓練処理の開始時における脳波信号に基づくα波を示す値よりも大きい場合、前記α波に関する所定通知を前記ユーザに出力することを含む、請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記視能訓練処理を行うことは、
ゲーム要素を含む前記所定画像を出力することを含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、
目薬の点眼タイミングを前記ユーザに報知することをさらに実行する請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記点眼タイミングは、1回目の前記ニューロフィードバック処理の前、又は最後の前記視能訓練処理の後である、請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記視能訓練処理は、近視又は遠視を改善する訓練処理を含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記視能訓練処理は、ガボールパッチを含む所定画像を出力することにより前記近視又は遠視を改善する訓練処理を含む、請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
情報処理装置に含まれるプロセッサに、
ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行うこと、
視能訓練に利用される所定画像を出力することにより前記ユーザに対する視能訓練処理を行うこと、
第1所定時間の前記ニューロフィードバック処理と、第2所定時間の前記視能訓練処理とを1セットとし、前記1セットを所定回数繰り返す処理を行うこと、
を実行させるプログラム。
【請求項12】
プロセッサを含む情報処理装置であって、
前記プロセッサが、
ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行うこと、
視能訓練に利用される所定画像を出力することにより前記ユーザに対する視能訓練処理を行うこと、
第1所定時間の前記ニューロフィードバック処理と、第2所定時間の前記視能訓練処理とを1セットとし、前記1セットを所定回数繰り返す処理を行うこと、
を実行する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神経活動のデコーディング方法を使用して、ユーザ自身の行動により所定の脳機能を亢進することを支援する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。また、視覚機能を改善するため、ガボールパッチテストを行う技術が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5320543号公報
【特許文献2】特表2007-527738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、近視又は遠視等による視覚機能の低下が多数報告され、社会問題となっている。特許文献1では、視覚を含む脳機能の亢進を支援するが、視覚機能の改善に着目したものではない。特許文献2では、視覚機能の改善を図るためにガボールパッチテストを行うが、ガボールパッチテストは単調なテストを長時間行う必要があった(特許文献2の場合、連続的な30分間のセッションを週2,3回、全部で30回)。
【0005】
そこで、開示技術の一態様は、視覚機能の改善を図るトレーニングを効率良く行うことを可能にする情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示技術の一態様における情報処理方法は、情報処理装置に含まれるプロセッサが、ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行うこと、視能訓練に利用される所定画像を出力することにより前記ユーザに対する視能訓練処理を行うこと、第1所定時間の前記ニューロフィードバック処理と、第2所定時間の前記視能訓練処理とを1セットとし、前記1セットを所定回数繰り返す処理を行うこと、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
開示技術の一態様によれば、視覚機能の改善を図るテストを効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】ガボールパッチトレーニング画面のイメージを示す図である。
図1B】近視改善の実験結果を示す図である。
図2A】実施形態にかかるニューロフィードバックによってα波のパワー値を上げるトレーニングの一例を示す図である。
図2B】実施形態に係る視能訓練のトレーニングの一例を示す図である。
図2C】実施形態に係るトレーニングごとの刺激の傾きと空間周波数の例を示す図である。
図3】実施形態に係る被験者の実験回数を示す図である。
図4A】被験者Bの各周波数及び各角度におけるターゲットコントラストの一例を示す図である。
図4B】被験者Fの各周波数及び各角度におけるターゲットコントラストの一例を示す図である。
図5】実施形態に係る初回と最後とでターゲットコントラストの差分を比較した図である。
図6】実施形態に係るニューロフィードバックの訓練効果の一例を示す図である。
図7A】実施形態に係る近見視力の改善を示す図である。
図7B】実施形態に係る遠見視力の改善を示す図である。
図8】実施形態に係るシステム1の概要例を説明する図である。
図9】実施形態に係るイヤホンセットの一例を示す図である。
図10】実施形態に係るイヤホンの断面の概略の一例を示す図である。
図11】実施例に係る情報処理装置の一例を示すブロック図である。
図12】実施例に係る情報処理装置の一例を示すブロック図である。
図13】実施形態に係る処理端末の訓練処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0010】
<前提1>
まず、開示の実施形態について説明する前に、本開示技術の前提について説明する。前提1として、ガボールパッチテストによって近視の視力が改善したことを報告する論文を紹介する(Camilleri, R. et al. al.,2014, Improving myopia via perceptual learning: is training with lateralmasking the only (or the most) efficacious technique, Attention, Perception, &Psychophysics)。
【0011】
上記論文において近視改善を研究するために行われた実験内容は、以下のとおりである。
(実験内容)
・参加者:10名(平均24.2歳 -0.75D~-2D)
(小数視力換算:0.5~0.2)
・トレーニングプロトコル
連続して2枚の画像を提示
フランカーとターゲット、及びフランカーのみ
前後どちらにターゲットがあるか回
閾値:1up/3down階段法で決定
・週3セッション×8週間=全24セッション(各約40min)
1セッション8ブロック:1ブロック60試行
・SF(空間周波数)
1セッション1SF
日ごとにSFを増加(3,7,11cpd 又は3,5,7cpd)
SFの系はコントラスト視力の高低で決定
・傾き(方向)
1週間1方向、4週間4種 (0°, 45°, 90°,135°)×2サイクル
【0012】
(ガボールパッチ)
・ガウス窓関数の標準偏差=コサイン波長
SFによって刺激の大きさが変化
・線対象
・フランカー:0.6マイケルソンコントラスト
(マイケルソンコントラスト=最大輝度変化量/平均輝度)
図1Aは、ガボールパッチトレーニング画面のイメージを示す図である。図1Aに示す例では、まず、点を1000ms凝視し、次にガボールパッチトレーニングを200ms行い、次に点を500ms凝視し、次に2回目のガボールパッチトレーニングを200ms行うようなトレーニングである。
【0013】
(実験結果)
図1Bは、近視改善の実験結果を示す図である。図1Bに示すように、視力が有意に回復した。
0.427→0.267LogMAR(小数視力換算:0.37→0.54)
さらに、2か月後も効果が維持された(トレーニング直後と2か月後で有意差なし)。
以上の実験結果から、ガボールパッチトレーニングは、近視改善に効果があることが示された。なお、ガボールパッチトレーニングによる近視の改善が実証された研究結果は他にも報告されている(Uri Polat et al. (2012) “Training thebrain to overcome the effect of aging on the human eye”, scientificreports2(278):278等)。
【0014】
<前提2>
体性感覚学習における個人差の原因として、 脳の状態の重要性を明らかにしたFreyerらの研究結果がある(Freyer, F., Becker, R., Dinse , H. R., & Ritter, P. (2013). State dependentperceptual learning. Journal of Neuroscience, 33(7), 2900 2907.)。この研究により学習前と学習中の脳波記録から、学習前の頭頂α振動と、学習中の刺激誘発性対側中心α変化とが、学習結果を予測することが明らかになった。
【0015】
この2つの異なるαリズムは、観察された学習変動の64%を予測した。1つは後頭頂に焦点を当てたアイドリング状態であり、デフォルトモードネットワークとの関連が考えられる。もう1つは感覚運動μリズムで、その非同期化は学習刺激の適用中に感覚運動ニューロン集団の関与の程度を示唆するものである。本結果は、ヒトの知覚学習の成功は脳の状態に依存することを示唆している。
【0016】
Freyerらの研究結果の概要を以下に記載する。
・学習成功の個人差は、学習前の安静時頭頂葉αリズムと、学習中の中枢αリズムERD(Event Related Desynchronization)によって大きく説明されることが示された。
・知覚学習前の安静時頭頂αリズムパワー(8-12Hz)と学習中の中枢αリズムERDは、知覚学習の個人間分散の64%を占めた。
・本データは、知覚学習前の安静時αリズムパワーと、学習過程による行動パフォーマンスの上昇との間に正の相関を示した。
・本結果は、αリズムが高い=入ってくる学習刺激を処理するための高い反応性と準備性を備えたアイドリング状態であることを示す可能性がある。
・知覚学習時の中心α(またはμ)リズムのERDと行動の改善との正の相関については、「学習上手」な人ほど学習に関連する脳領域が活性化されるという考え方を支持するデータであるといえる。
以上の結果から、人の学習能力は、知覚学習前と学習中の脳状態に依存することが明らかになった。
【0017】
そこで、発明者らは、上記の前提1及び2の結果による検討を進め、ニューロフィードバックによって個人のαパワーを操作し、知覚学習、特に視覚機能(視能)の改善を促進させることができるようになることを期待し、以下の実験を行った。視能として、近眼、老眼を例にして実験が行われた。
【0018】
<実験の概要>
発明者らは、知覚学習による視能の向上をニューロフィードバックでさらに高めることが可能かを調べるために以下の実験を行った。実験概要は、ニューロフィードバックによるα波のパワー値を増加させるトレーニングと、知覚学習を行うトレーニングとを1セットとして、このセットを繰り返し行い、所定期間後の近視、老眼の視力を測定して、視力がアップしたかどうかを実証する。
【0019】
(ニューロフィードバックによる知覚学習)
ニューロフィードバックによって視覚野のα波のパワー値を上げるトレーニングが行われる。図2Aは、実施形態にかかるニューロフィードバックによってα波のパワー値を上げるトレーニングの一例を示す図である。図2Aに示す例では、脳波測定中の被験者は、画面内のバーについて、色を明るくすること、及び上に上げることを念じる。
【0020】
脳波の測定条件は次のとおりである。
8-12Hz
バンドパス
ヒルベルド変換
エンベロープの絶対値を取得
ペースライン30秒のデータを0.5秒の異動平均化
平均と標準偏差を求め、3SD(Standard Deviation)カット
フィードバックは10Hz、1秒時間窓、60秒間実施
ベースラインの2標準偏差を両端に画面の色でフィードバック
ベースラインの標準偏差を基準に5SDをカット
【0021】
図2Aに示す実験により、画面内のバーを明るくすること、及びバーを上に上げることにより、被験者のα値の向上を図る。
【0022】
(視能訓練)
図2Bは、実施形態に係る視能訓練のトレーニングの一例を示す図である。図2Bに示す例では、ガボールパッチトレーニングとして、以下の条件で視能訓練が行われた。
・2区間強制選択法(2IFC)
1.注視点(1000ms)
2.第1区間(200ms)
3.注視点(500ms)
4.第2区間(1000ms)
第1区間又は第2区間にターゲットなし又はターゲットを表示
どちらの区間にターゲットがあったかを回答
・ガボールパッチ
ガウス関数の標準偏差=コサイン波長(λ)
空間周波数(SF):3、7、11 cycle per degree(CPD)
傾き:0°(垂直)、45°、90°(水平)
・その他条件
距離:近眼の場合は150cm(1°=2.62cm)
老眼の場合は40cm
【0023】
(訓練スケジュール)
・週3セッション×4週間=12セッション
・1トライアル約4秒
・1ブロック(視能訓練)=50試行(約3分)
・ニューロフィードバック(α値の向上訓練)(約2分)
・1セッション=5ブロック(「α値向上訓練+視能訓練」×5)
すなわち、1日約30分弱の訓練であり、視能訓練自体は約15分である。
【0024】
(刺激スケジュール)
図2Cは、実施形態に係るトレーニングごとの刺激の傾きと空間周波数の例を示す図である。図2Cに示すように、本実験では、1週間につき1種の傾きが使用され、1週間のうち日々空間周波数(SF)を高めた。
【0025】
(ターゲットのコントラスト)
1up/3down階段法でコントラストを変化(検出確率が80%になるように、3回連続正答したらコントラストを下げる。)
・マイケルソンコントラスト(0.1logunitずつ変化)
・マイケルソンコントラスト(範囲0~1)
=(最高輝度-最低輝度)/(最高輝度+最低輝度)
【0026】
(視力検査方法)
A.近眼の場合
・遠見視力検査:視力検査器(ランドルト環)を使用して、眼鏡やコンタクトをつけない視力(裸眼視力)を測定する。
・眼底検査:細隙灯顕微鏡などを用いて網膜の状態を調べる。
B.老眼の場合
・遠見視力検査:視力検査器(ランドルト環)を使用して、眼鏡やコンタクトをつけない視力(裸眼視力)を測定する。
・眼圧検査:眼球の形を維持するために必要な目の中の圧力を調べる。
・近見視力検査:近見視力の検査表を使用して、30cm離れた距離から裸眼で見た視力(裸眼視力)と、レンズで矯正した視力(矯正視力)の両方を調べる。
【0027】
(ラドルト環を用いた視力検査の概要)
視力0.1以上の場合、環を提示し、向きを判断(初期視力値0.1)
・正答時、1段階小さい環を提示
・誤答時、同じ大きさの環を提示
・誤答後、正当数が過半数を超えれば、1段階小さい環を提示
・誤答誤、正答数が過半数を下回ったか同じならば、1段階大きい環を提示
・過半数を超えて正答した最も小さな指標が視力とする
以上のとおり、開示の実験では、1日で、約2分のα値向上訓練と、約3分の視能訓練との1セットが5セット行われる。
【0028】
<実験結果>
図3~7は、上述した実験の結果を説明するための図である。図3は、実施形態に係る被験者の実験回数を示す図である。図3に示す例では、10名の被験者が各空間周波数、各角度における実験回数を示す。図3に示す例では、被験者A、B、D、F、Gは比較的多く実験を行っている。
【0029】
図4Aは、被験者Bの各周波数及び各角度におけるターゲットコントラストの一例を示す図である。図4Bは、被験者Fの各周波数及び各角度におけるターゲットコントラストの一例を示す図である。図4に示す各グラフは、各トレーニング日時を横軸にし、ターゲットコントラストを縦軸にする。
【0030】
図5は、実施形態に係る初回と最後とでターゲットコントラストの差分を比較した図である。図5に示す例では、横軸を各周波数及び各角度の組み合わせとし、縦軸をコントラストの変化量とし、初回と最終回のターゲットコントラストの差分を比較(one sample t‐test:一標本t検定)する。図5に示す結果によれば、ほぼすべての角度・空間周波数で学習効果が見られた。
【0031】
図6は、実施形態に係るニューロフィードバックの訓練効果の一例を示す図である。図6に示す例では、ニューロフィードバックによりα波を増強するトレーニング効果が観察された。具体的には、最終2回のαパワーの平均値が、最初2回のαパワーの平均値よりも大きく、ベースラインに比べて、0.3571の標準偏差となった(one sample t‐test)。
【0032】
図7Aは、実施形態に係る近見視力の改善を示す図である。図7Aに示す結果において、近見視力を測定した8人の被験者(N=8)に対し、トレーニング数による選別は行われない。この場合のトレーニング期間の視力の変化量は、+0.0625となり、有意に近見視力を回復することができた。
one sample t test,t(7)=-2.38,p=0.049
【0033】
図7Bは、実施形態に係る遠見視力の改善を示す図である。遠見視力を測定した10人の被験者(N=8)に対し、トレーニング数による選別は行われない。この場合のトレーニング期間の視力の変化量は、+0.135となり、有意に遠見視力を回復することができた。
one sample t test,t(9)=-2.63,p=0.027
【0034】
<実験のまとめ>
知覚学習を促進するα波増強ニューロフィードバックとガボールパッチトレーニングとを組み合わせることで、従来の先行研究と比べてかなり少ない学習量(50試行×5セッション×2回繰り返し ×2角度×3空間周波数)でも、以下のことが実証できた。
・知覚学習が成立
・ニューロフィードバックのトレーニングの有効性(ただし被験者ごとのばらつきはある)
・視力が回復(遠見+0.0625/近見+0.135)
【0035】
以上のとおり、知覚学習を促進するニューロフィードバックを行うことで、少ない学習量でも有意な視力回復効果を得られることが分かった。そこで、発明者らは、上記実験を汎用化して実現させるべく、以下のシステムを構築する。
【0036】
[実施形態]
以下、実施形態におけるシステムの概要を、図面を用いて説明する。
<システムの概要>
図8を用いて、実施形態に係るシステム1の概要例を説明する。システム1では、脳波を測定するユーザは、脳波測定デバイスとして、外耳道や後頭部周辺に生体電極が設けられるイヤホンセット10を装着する。
【0037】
図8に示す例は、首掛け式のイヤホンセット10であるが、外耳道から脳波信号がセンシング可能であり、後頭部付近から脳波信号をセンシング可能であれば、いずれの脳波測定デバイスを用いてもよい。例えば、リファレンス信号を耳たぶから取得するようなイヤホンセットや、その他の位置(外耳道の他の位置)からリファレンス信号やアース信号を取得するようなイヤホンや、完全ワイヤレスのイヤホンなどが利用可能である。
【0038】
また、ユーザは、例えば、脳波測定デバイスとして、国際式10/20法を用いて脳波を測定するヘッドギアを装着してもよい。また、脳波測定デバイスは、頭皮電極を用いる測定器、頭蓋内電極を用いて脳活動を測定する測定器、磁気共鳴機能画像法(functionalmagnetic resonance imaging:fMRI)を用いて脳活動を測定する測定器、近赤外光分光法(Near-InfraredSpectroscopy : NIRS)を用いて脳活動を測定する測定器などの脳波を測定可能な装置を含む。
【0039】
図8に示す例の場合、イヤホンセット10は、外耳道又は後頭部近辺から脳波信号を取得し、ネットワークNを介して脳波信号を情報処理装置30又は情報処理装置50に送信する。また、イヤホンセット10は、脳波信号に所定の処理を実行し、情報処理装置30又は情報処理装置50に送信してもよい。所定の処理は、増幅処理、サンプリング、フィルタリング、差分演算などを含む。
【0040】
情報処理装置30は、例えばサーバであり、各ユーザの脳波測定デバイスにより測定される脳波信号を用いて知覚学習によるニューロフィードバックを行い、視能訓練に対する準備を行ってから視能訓練を行うためのトレ―ニングアプリケーションを生成する。例えば、情報処理装置30は、生成したアプリケーション(以下「アプリ」ともいう。)を、各ユーザの情報処理装置50に送信してもよい。
【0041】
情報処理装置50は、例えば、ユーザが保持する携帯端末などの処理端末であり、イヤホンセット10から脳波信号を順次取得する。情報処理装置50は、順次取得される脳波信号をトレーニングアプリに入力し、ニューロフィードバックを用いて脳領域を活性化した状態で視能トレーニングを行うことにより、視能トレーニングを効率よく行うことができる。
【0042】
<イヤホンセットの構成>
図9~10は、実施形態におけるイヤホンセット10の概要について説明する。なお、イヤホンセット10は、図9~10に示す例に限られず、外耳道や後頭部周辺から脳波をセンシングすることが可能であり、外部装置に出力可能であれば、いずれのイヤホンでも本開示の技術に適用することができる。
【0043】
図9は、実施形態に係るイヤホンセット10の一例を示す図である。図9に示すイヤホンセット10は、一対のイヤホン100R、100Lと、首掛け部110とを有する。各イヤホン100R、100Lは、首掛け部110と信号通信可能なケーブルを用いて接続されるが、無線通信を用いて接続されてもよい。以下、左右を区別する必要がない場合はRLを省略する。
【0044】
首掛け部110は、首の後方に沿う中央部材と、首の両サイドに沿って湾曲した形状を有する棒状部材(アーム)112R、112Lとを有する。中央部材の背中側の首に接触する表面には、脳波信号をセンシングする電極122、124が設けられる。電極122、124は、例えば、一方が後頭部Ozの脳波信号をセンシングする電極であり、他方はアース接続される電極、又はリファレンス電極である。また、首掛け部110は、脳波信号を処理する処理部や外部と通信を行う通信装置を有してもよいが、これらの処理部や通信部はイヤホン100に設けられてもよい。
【0045】
また、首掛け部110の両サイドの棒状部材112R、112Lは、その先端側が、付け根側(中央部材側)よりも重くなっており、これにより電極122、124は、装着者の首に適切に圧着するようになる。例えば、棒状部材112R、112Lの先端側には重りが設けられる。なお、電極122、124の位置はこの位置に限られない。
【0046】
図10は、実施形態に係るイヤホン100Rの断面の概略の一例を示す図である。図10に示すイヤホン100Rは、例えば、スピーカ102とノズル104との間に弾性部材(例えばウレタン)108を設けてもよい。この弾性部材108を設けることにより、スピーカ102の振動がイヤーチップ106の弾性電極に伝わりにくくなり、イヤーチップ106の弾性電極とスピーカ102とが音について干渉することを防ぐことができる。
【0047】
さらに、弾性電極を含むイヤーチップ106は、音導口に位置しているが、弾性電極自身の弾性により、音振動による干渉を防ぐことが可能である。また、ハウジングには弾性部材を採用することで、この弾性部材により、音振動をイヤーチップ106の弾性電極に伝えにくく、音振動による干渉を防ぐことが可能である。
【0048】
イヤホン100は、オーディオ・サウンド・プロセッサを含み、このオーディオ・サウンド・プロセッサを使用して、脳波信号に相当する所定の周波数(例えば50Hz)以下の音信号をカットしてもよい。特にオーディオ・サウンド・プロセッサは、脳波信号として特徴が出やすい周波数帯域の30Hz以下の音信号をカットするが、ベース音を損なわないようにするため、70Hz周辺の周波数の音信号を増幅してもよい。
【0049】
これにより、音信号と脳波信号とが干渉することを防ぐことができる。また、オーディオ・サウンド・プロセッサは、脳波信号のセンシングがなされている場合にのみ、所定の周波数をカットするようにすればよい。
【0050】
また、イヤーチップ106は、外耳道からセンシングする脳波信号を、ノズル104に設けられる電極の接点に伝導させる。脳波信号は、イヤーチップ106から接点を介してイヤホン100内部の生体センサ(不図示)に伝えられる。生体センサは、順次取得する脳波信号を、ケーブルを介して首掛け部110に設けられる処理装置に出力したり、外部の装置に送信したりする。また、イヤーチップ106と、生体センサやオーディオ・サウンド・プロセッサを含むハウジングとは、絶縁されていてもよい。
【0051】
<サーバの構成例>
図11は、実施例に係る情報処理装置30の一例を示すブロック図である。情報処理装置30は、例えばサーバであり、1又は複数の装置により構成されてもよい。また、情報処理装置30は、各ユーザ端末から脳波信号又は脳波情報を取得して処理し、例えば、知覚学習を促進するニューロフィードバックを生成したり、支援したりする。また、サーバ10は、ユーザ端末側で実行される視能訓練処理を生成したり、支援したりしてもよい。情報処理装置30は、サーバ30とも表記する。なお、情報処理装置30は、必ずしもサーバでなくてもよく、汎用コンピュータでもよい。
【0052】
サーバ30は、1つ又は複数のプロセッサ(CPU:Central Processing Unit))310、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース320、メモリ330、ユーザインタフェース350、及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス370を含む。
【0053】
サーバ30は、例えば、場合によりユーザインタフェース350を含んでもよい。ユーザインタフェース350は、ディスプレイ装置(図示せず)、及びキーボード及び/又はマウス(又は他の何らかのポインティングデバイス等の入力装置。図示せず)を含んでもよい。
【0054】
メモリ330は、例えば、SSD、DRAM、SRAM、DDR RAM又は他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリであり、また、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリでもよい。メモリ330は、コンピュータにより読取可能な非一時的記録媒体でもよい。
【0055】
また、メモリ330の他の例として、プロセッサ310から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置でもよい。ある実施例において、メモリ330は次のプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
【0056】
1つ又は複数のプロセッサ310は、メモリ330から、必要に応じてプログラムを読み出して実行する。例えば、1つ又は複数のプロセッサ310は、メモリ330に格納されているプログラムを実行することで、訓練制御部312、取得部313、生成部314、出力部315を構成してもよい。訓練制御部312は、順に取得される脳波信号を制御したり、処理したりし、以下の各処理を制御する。
【0057】
取得部313は、脳波測定デバイス、例えばイヤホンセット10に含まれる生体電極で測定される脳波信号を取得する。脳波測定デバイスは、イヤホンセット10に限定されない。
【0058】
生成部314は、各ユーザ端末から脳波信号を取得して、各訓練モデルを生成したり、支援したりする。各訓練モデルには、α波を向上させるための訓練モデルや、視能を訓練する訓練モデルを生成又は支援する。
【0059】
出力部315は、生成部314により生成されたアプリケーションを、アプリストア等から所定の情報処理装置50に向けて、ネットワーク通信インタフェース320を介して出力する。
【0060】
以上、サーバ30によれば、外耳道及び後頭部周辺における脳波信号を測定可能な脳波測定デバイスを装着するユーザ個人の脳波信号を用いて、リアルタイムに知覚学習を促進するニューロフィードバックを行ってから知能訓練を行うアプリケーションを生成することができる。
【0061】
<処理端末の構成例>
図12は、実施例に係る情報処理装置50の一例を示すブロック図である。情報処理装置50は、例えば、携帯端末(スマートフォンなど)、コンピュータ、タブレット端末などのユーザ端末である。情報処理装置50は、処理端末50とも表記する。
【0062】
処理端末50は、1つ又は複数のプロセッサ(例、CPU)510、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース520、メモリ530、ユーザインタフェース550及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス570を含む。
【0063】
ユーザインタフェース550は、ディスプレイ装置551及び入力装置(キーボード及び/又はマウス又は他の何らかのポインティングデバイス等)552を備える。また、ユーザインタフェース550は、タッチパネルでもよい。
【0064】
メモリ530は、例えば、SSD、DRAM、SRAM、DDR RAM又は他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリであり、また、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリでもよい。メモリ530は、コンピュータにより読取可能な非一時的記録媒体でもよい。
【0065】
また、メモリ530の他の例は、プロセッサ510から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置を挙げることができる。ある実施例において、メモリ530は次のプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
【0066】
1つ又は複数のプロセッサ510は、メモリ530から、必要に応じてプログラムを読み出して実行する。例えば、1つ又は複数のプロセッサ510は、メモリ530に格納されているプログラムを実行することで、アプリケーションの制御部(以下「アプリ制御部」とも称す。)512を構成してもよい。このアプリ制御部512は、脳波を処理したり視能訓練を処理したりするアプリケーションである。例えば、アプリ制御部512は、取得部513、フィードバック部514、視能訓練部515、出力部516を有する。
【0067】
取得部513は、ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号を取得する。例えば、脳波測定デバイスは、図9に示すイヤホンセット10のように少なくとも2点の脳波信号を取得でき、視覚野を有する後頭葉の脳活動を表す後頭部周辺の脳波信号を取得できることが望ましい。
【0068】
フィードバック部514は、取得部513により取得される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行う。例えば、フィードバック部514は、脳波測定デバイスを装着したユーザの脳波信号を用いてリアルタイムにニューロフィードバックを行うことで、知覚学習を促進するα値(例、α派のパワー値)の増加を図るトレーニングする。具体例としては、フィードバック部514は、図2Aに示すような処理を行い、α値を増加させるためのニューロフィードバック処理を行う。これにより、視能訓練前の適切なアイドル状態をつくることができる。
【0069】
視能訓練部515は、視能訓練に利用される所定画像を出力することにより、ユーザに対する視能訓練処理を実行する。例えば、視能訓練部515は、視能訓練に用いられる所定画像をディスプレイ551に出力することにより、ユーザに対して視能訓練を実行する。具体例として、視能訓練部515は、図2Bを用いて説明した視能訓練を実行する。これにより、フィードバック部514により視能訓練前の適切なアイドル状態から視能機能を高める訓練を行うことができるため、視能訓練の効果を増加させることが可能になる。視能訓練処理に用いられ画像データは、公知の画像データが用いられてもよい。
【0070】
アプリ制御部512は、フィードバック部514による第1所定時間のニューロフィードバック処理と、視能訓練部515による第2所定時間の視能訓練処理とを1セットとし、この1セットを所定回数繰り返す処理を行う。図2を用いた例によれば、第1所定時間は約2分、第2所定時間は約3分の処理であるが、これらの時間に限られない。アプリ制御部512は、フィードバック部514によりα波増強トレーニング後に視能訓練を行うため、従来よりも短い時間のトレーニングで済み、さらに、このサイクルを繰り返すことで、さらなるトレーニング時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0071】
以上の処理によれば、視覚機能の改善を図るトレーニングを効率良く行うことが可能になる。具体的には、知覚学習を促進するニューロフィードバックを行うことで、少ないトレーニング量でも有意な視能回復効果を得ることが可能である(例えば図7A及びB参照)。
【0072】
アプリ制御部512は、フィードバック部514によるニューロフィードバック処理において、第1所定時間が経過する前に脳波信号に基づくα波を示す値(α値)が閾値を超えると、視能訓練部515による視能訓練処理に移行することを含んでもよい。また、アプリ制御部512は、ユーザごとにα値の閾値を決定してもよい。例えば、アプリ制御部512は、α値の増強トレーニングの前後のα値から閾値を設定してもよい。また、アプリ制御部512は、視能訓練結果に応じてα値の閾値を設定してもよい。例えば、アプリ制御部512は、視能訓練結果が所定条件を満たす場合(例えば正答率が閾値以上)に、その直前に行われたα値の増強トレーニング時のα値を用いて閾値を設定してもよい。
【0073】
以上の処理により、α値の増強トレーニングが上手くいった場合は、その時点で視能訓練を開始することができるため、時間の短縮、かつ、視能改善効果をさらに増強させることが可能になる。
【0074】
出力部516は、視能訓練部515による視能訓練処理における結果を、次のニューロフィードバック処理の前までにユーザに出力してもよい。出力部516は、例えば、ディスプレイ551やスピーカ(不図示)を介して、視能訓練の結果を出力してもよい。具体例としては、出力部516は、2サイクル目以降のニューロフィードバック処理の前に、直前の視能訓練結果をディスプレイ551に表示する。
【0075】
以上の処理により、α値の増強トレーニング前に、直前の視能訓練結果をユーザは知ることができるので、結果が良くない場合でも良い場合でも、α値の増強トレーニングに対するユーザの集中力を高めることが可能になる。
【0076】
また、出力部516は、視能訓練処理の際に測定される脳波信号に基づき、α波を示す値に関する情報をユーザに出力してもよい。例えば、フィードバック部514は、視能訓練中でも、脳波信号からα波を示す値を算出し、出力部516は、このα値に関する情報を視能訓練中にディスプレイ551に出力してもよい。
【0077】
以上の処理により、視能訓練中でも引き続き脳波信号を取得して処理することで、ユーザに対して、視能訓練中のα値の状態を知らせることができる。
【0078】
また、出力部516は、視能訓練処理の際に測定される脳波信号に基づくα波を示す値が、視能訓練処理の開始時における脳波信号に基づくα波を示す値よりも大きい場合、α波に関する所定通知をユーザに出力してもよい。例えば、出力部516は、視能訓練中にα値が高いままだと、刺激が脳に入ってきていないことを示し、視能訓練に集中していないことを示すため、α値を下げるような(視能訓練に集中するような)通知をディスプレイ551に表示するよう出力する。
【0079】
以上の処理により、視能訓練前はα値を増強させると良いが、視能訓練中はα値を下げた方がよいので、α値が増強されたままの状態の場合は、α値を下げて視能訓練に集中するような通知を行うことができる。
【0080】
また、視能訓練部515は、ゲーム要素を含む所定画像を出力してもよい。視能訓練に利用される画像は単調で面白くないと言われている。そこで、視能訓練部515は、視能訓練に利用される画像にゲーム要素を加えて、例えば「〇〇を探せ」という要素を加えて、ユーザにターゲットを楽しく見つけてもらうようにする。また、視能訓練部515は、正答した場合にポイントを付与して、ポイント数に応じて所定の景品に交換可能にしたりしてもよい。
【0081】
以上の処理により、単調でつまらなくなりがちな視能訓練処理に対して、ユーザに楽しく視能訓練処理を行わせることができ、視能訓練の離脱率を減らすことが可能になる。
【0082】
出力部516は、目薬の点眼タイミングをユーザに報知することをさらに実行してもよい。例えば、出力部516は、実際の目薬を点眼するタイミングをディスプレイ551に表示するようにしてもよい。具体例として、目薬の点眼タイミングを開示のトレーニング開始前の何分後、又はトレーニング終了後の何分後にした場合の実験結果に基づいて点眼タイミングが決定されればよい。すなわち、上述した点眼タイミングは、1回目のニューロフィードバック処理の前、又は最後の視能訓練処理の後でもよい。なお、目薬の種類も変えて実験されてもよい。
【0083】
以上の処理により、実際の目薬の点眼効果と、デジタルの視能訓練の効果との相乗効果を高めることができ、ユーザの視能改善効果をさらに増加させることが可能になる。
【0084】
また、視能訓練部515は、近視又は遠視を改善する訓練処理を含んでもよい。例えば、視能訓練部515は、近眼、老眼を改善することが報告されている公知の画像を用いて視能訓練処理を実行してもよい。
【0085】
以上の処理により、視能訓練の中でも特に視力向上を図る訓練を実行することができ、例えば近年の社会問題となっている若年層の近視の増加を防ぐための一翼を担うことが可能になる。
【0086】
また、視能訓練部515は、ガボールパッチを含む所定画像を出力することにより近視又は遠視を改善する訓練処理を含んでもよい。ガボールパッチテストは、視力が回復する研究報告が多数なされている。
【0087】
以上の処理により、視力回復に関するエビデンスが豊富にある画像を用いることで、ユーザに対してより安心して本開示のトレーニングを行ってもらうことが可能になる。
【0088】
<動作>
次に、実施形態に係るシステム1の動作について説明する。図13は、実施形態に係る処理端末50の訓練処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
ステップS102において、フィードバック部514は、ユーザに装着された脳波測定デバイスから測定される脳波信号に基づき、知覚学習を促進するニューロフィードバック処理を行う。例えば、取得部513は、図9に示すようなデバイスを用いて測定された脳波信号を取得し、フィードバック部514は、取得部513により取得された脳波信号を用いて、α値を増加させるようなニューロフィードバック処理を行う。
【0090】
ニューロフィードバック処理は、予め設定された所定時間行われてもよいし、α値が閾値を超えたらステップS104の処理に移行してもよい。α値を増加させるニューロフィードバック処理は、公知の技術が用いられてもよい。
【0091】
ステップS104において、視能訓練部515は、視能訓練に利用される所定画像を出力することにより、ユーザに対する視能訓練処理を行う。視能訓練処理は、例えば、ガボールパッチテストを含み、さらに、ゲーム要素を加えてもよい。
【0092】
ステップS106において、アプリ制御部512は、第1所定時間のニューロフィードバック処理と、第2所定時間の視能訓練処理とを1セットとし、1セットを所定回数繰り返す処理を行う。すなわち、アプリ制御部512は、繰り返し回数が所定回数に到達したか否かを判定する。繰り返し回数が所定回数と同じであれば(ステップS106がYES)処理は終了し、繰り返し回数が所定回数未満であれば(ステップS106がNO)であれば処理はステップS102に戻る。所定回数は例えば5回であるが、この回数に限られない。
【0093】
なお、ステップS106の後であって処理が終了する前の間に、出力部516は、ニューロフィードバック処理の結果や、視能訓練処理の結果をユーザに報知してもよい。また、出力部516は、視能訓練処理の結果を、ニューロフィードバック処理が繰り返される前にユーザに報知してもよい。また、視能訓練処理中は、脳波信号は処理されなくてもよいが、脳波信号が処理されてα値が算出されることにより、視能訓練中のα値に関する情報をユーザに報知することが可能になる。
【0094】
<適用例>
上述したアプリケーションは、視力を回復したいユーザに対して提供され、眼科等により提供されてもよい。例えば、視力が落ちたユーザが、処理端末を用いて上述したアプリケーションを実行して所定期間トレーニングを実施することで、視力の回復を見込むことができる。さらに、視能訓練の前に知覚学習を促進する訓練を行っているので、視能訓練を効率よく行い、この訓練による効果を高めることが可能になる。
【0095】
また、視能訓練は、視力だけではなく、視野、乱視、動体視力、弱視等の視覚機能を改善することが可能な公知のトレーニングを適用することで、目的の視覚機能を改善することが可能になる。本開示の技術では、視能訓練の前に、知覚学習を促進するニューロフィードバックを行っているため、上述した視力回復の実験結果のように、視力以外の視覚機能の改善も見込むことができる。
【0096】
<変形例>
以上、上述した実施形態及び実施例は、本開示の技術を説明するための例示であり、本開示の技術をその実施形態及び実施例のみに限定する趣旨ではなく、本開示の技術は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 システム
10 イヤホンセット
30、50 情報処理装置
100 イヤホン
104 ノズル
106 イヤーチップ(弾性電極)
310 プロセッサ
312 訓練制御部
313 取得部
314 生成部
315 出力部
330 メモリ
310 プロセッサ
512 アプリ制御部
513 取得部
514 フィードバック部
515 視能訓練部
516 出力部
530 メモリ
550 ユーザインタフェース
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13