(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082065
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195781
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】倉富(小嶋) 燿太
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
(72)【発明者】
【氏名】石田 直輝
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BC47
3D131BC51
3D131GA01
3D131GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バルジデント等の外観不良をより目立たなくしてサイドウォール部の外観性能を向上しつつ、金型の成形面の強度等を高める。
【解決手段】サイドウォール部3の外表面に、装飾領域9が形成された空気入りタイヤである。装飾領域9は、基準面10と、基準面10から突出する複数の微小突起11とを含んでいる。基準面10の平面視において、複数の微小突起11は、複数の第1微小突起列12と、複数の第2微小突起列13とが第1方向f1に交互に配置されたパターン部15を含む。パターン部15を、互いに直接隣接する3つの微小突起11を頂点vとする複数の三角形状領域tに仮想区分したときに、複数の三角形状領域tは、基準面10から微小突起11よりも小さい高さで突出する隆起部20が設けられた少なくとも1つの第1三角形状領域t1を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型で加硫された空気入りタイヤであって、
トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部とを含み、
前記一対のサイドウォール部の少なくとも一方の外表面には、装飾領域が形成されており、
前記装飾領域は、基準面と、前記基準面から突出する複数の微小突起とを含み、
前記基準面の平面視において、前記複数の微小突起は、複数の第1微小突起列と、複数の第2微小突起列とが第1方向に交互に配置されたパターン部を含み、
前記第1微小突起列は、複数の前記微小突起が、第1方向と直交する第2方向に、第1ピッチで配列されており、
前記第2微小突起列は、複数の前記微小突起が、前記第2方向に、前記第1ピッチで配列され、かつ、前記第1微小突起列とは前記第2方向に位置ずれしており、
前記パターン部を、互いに直接隣接する3つの前記微小突起を頂点とする複数の三角形状領域に仮想区分したときに、前記複数の三角形状領域は、前記基準面から前記微小突起よりも小さい高さで突出する隆起部が設けられた少なくとも1つの第1三角形状領域を含む、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1三角形状領域において、前記隆起部は、前記隣接する3つの前記微小突起の少なくとも一つに接続されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1三角形状領域において、前記隆起部は、前記隣接する3つの前記微小突起の全てに接続されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数の三角形状領域は、前記隆起部を備えない第2三角形状領域を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数の三角形状領域は、互いに隣接して配された複数の前記第1三角形状領域のグループを少なくとも1つ含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記複数の三角形状領域は、前記グループの複数が規則的に配置されている、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記複数の三角形状領域のそれぞれは、前記3つの前記微小突起同士をそれぞれ結ぶ3つの仮想辺部を有し、
前記3つの仮想辺部のそれぞれは、前記複数の三角形状領域のいずれかと隣接し、
前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの少なくとも1つに、他の前記第1三角形状領域が隣接する、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記基準面の平面視において、前記グループの端に位置する前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの1つの仮想辺部に、他の前記第1三角形状領域が隣接する、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記基準面の平面視において、前記グループの端を除いて位置する前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの2つの仮想辺部に、他の前記第1三角形状領域が隣接する、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記複数の三角形状領域の20%~80%は、前記第1三角形状領域である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記微小突起は、円錐台状である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記微小突起の頂部の直径は、0.05~0.5mmであり、
前記微小突起の前記基準面からの突出高さは、0.1~1.0mmであり、
前記微小突起の母線と底面とのなす角度は、5~75度である、請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記隆起部の突出高さは、0.05mm以上、1.0mm未満である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、サイドウォール部の表面に装飾帯を具えたタイヤが記載されている。前記装飾帯は、非途切れリッジと、途切れ部を有する途切れリッジとを含むリッジがタイヤ周方向に並列したセレーション領域を具えている。このような装飾体は、タイヤの外観を低下させがちなバルジデントを目立たなくする効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バルジデント等の外観不良をより目立たなくして、サイドウォール部の外観性能をさらに向上するために、サイドウォール部に複数の微小突起が密に形成されることがある。このような微細突起は、通常、サイドウォール部を加硫成形するサイドウォール金型の成形面に加工された複数の微小凹部によって成形される。ところが、複数の微小凹部が加工された金型は、前記成形面の強度が低い他、加硫中のゴム流れが悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、サイドウォール部の外観性能を向上しつつ、金型の成形面の強度等を高めることができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金型で加硫された空気入りタイヤであって、トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部とを含み、前記一対のサイドウォール部の少なくとも一方の外表面には、装飾領域が形成されており、前記装飾領域は、基準面と、前記基準面から突出する複数の微小突起とを含み、前記基準面の平面視において、前記複数の微小突起は、複数の第1微小突起列と、複数の第2微小突起列とが第1方向に交互に配置されたパターン部を含み、前記第1微小突起列は、複数の前記微小突起が、第1方向と直交する第2方向に、第1ピッチで配列されており、前記第2微小突起列は、複数の前記微小突起が、前記第2方向に、前記第1ピッチで配列され、かつ、前記第1微小突起列とは前記第2方向に位置ずれしており、前記パターン部を、互いに直接隣接する3つの前記微小突起を頂点とする複数の三角形状領域に仮想区分したときに、前記複数の三角形状領域は、前記基準面から前記微小突起よりも小さい高さで突出する隆起部が設けられた少なくとも1つの第1三角形状領域を含む、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用することで、バルジデント等の外観不良をより目立たなくしてサイドウォール部の外観性能を向上しつつ、金型の成形面の強度等を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示すタイヤ子午線断面図である。
【
図2】
図1のサイドウォール部の部分断面図である。
【
図4】(A)は、隆起部を形成する形成面を有する金型の断面図、(B)は、微小突起のみを形成する形成面を有する金型の断面図である。
【
図8】(A)及び(B)は、第1三角形状領域及び第2三角形状領域を説明するための基準面の平面図である。
【
図9】(A)は、本実施形態の微小突起の斜視図、(B)は、他の実施形態の微小突起の斜視図、(C)は、さらに他の実施形態の微小突起の斜視図である。
【
図10】(A)は、他の実施形態の装飾領域の正面図、(B)は、(A)のB-B線断面図である。
【
図11】(A)は、さらに他の実施形態の装飾領域の正面図、(B)は、さらに他の実施形態の装飾領域の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
図1は、本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある)1の一実施形態のタイヤ子午線断面図である。
図1には、好ましい態様として、乗用車用のタイヤ1が示される。但し、本発明は、例えば、自動二輪車用や重荷重用のタイヤ1に採用されても良い。タイヤ1は、周知構造の金型T(
図4にその一部が示される)内で生タイヤ1aを加硫することで形成される。
【0011】
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定されたものである。「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。
【0012】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0013】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0014】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3とを含んでいる。また、タイヤ1は、例えば、各サイドウォール部3のタイヤ半径方向の内側に配され、かつ、ビードコア5が埋設されたビード部4を含んでいる。
【0015】
一対のサイドウォール部3の少なくとも一方の外表面3Aには、装飾領域9が形成されている。装飾領域9は、例えば、一対のサイドウォール部3の両方に形成されている。装飾領域9を含むサイドウォール部3は、カーボンブラックの配合により黒色に形成されている。
【0016】
図2は、装飾領域9を概念的に説明するためのサイドウォール部3の断面図である。
図1及び
図2に示されるように、装飾領域9は、基準面10と、基準面10から突出する複数の微小突起11とを含んでいる。微小突起11に当たった入射光は、反射角を変えて他の微小突起11に反射するとともに、この反射を繰り返しすることで吸収される。したがって、装飾領域9は、他の領域に比べて、相対的に低い光反射率を有する。サイドウォール部3が黒色で形成されているので、装飾領域9は、他の部分に比して相対的に高い黒色度を有する。
【0017】
図3は、基準面10(サイドウォール部3)の平面図である。
図3に示されるように、基準面10の平面視において、複数の微小突起11は、複数の第1微小突起列12と、複数の第2微小突起列13とが第1方向f1に交互に配置されたパターン部15を含んでいる。
【0018】
第1微小突起列12は、複数の微小突起11が、第1方向f1と直交する第2方向f2に、第1ピッチP1で配列されている。第2微小突起列13は、複数の微小突起11が、第2方向f2に、第1ピッチP1で配列され、かつ、第1微小突起列12とは第2方向f2に位置ずれしている。第1微小突起列12の微小突起11は、本実施形態では、第2微小突起列13の微小突起11と第1ピッチP1の50%で第2方向f2に位置ずれしている。
【0019】
本発明では、パターン部15は、互いに直接隣接する3つの微小突起11を頂点vとする複数の三角形状領域tに仮想区分される。そして、この仮想区分において、複数の三角形状領域tは、基準面10から微小突起11よりも小さい高さで突出する隆起部20が設けられた少なくとも1つの第1三角形状領域t1を含んでいる。第1三角形状領域t1は、隆起部20が形成されない三角形状領域tに比して、照射された光が他の微小突起11に反射して吸収される機会を小さくするので、相対的に明るく見える。これにより、装飾領域9全体では、黒色度に差(グラデーション)が生じる。このため、ユーザーは、装飾領域9のグラデーションに目が奪われ、バルジデントが目立たなくなる。したがって、サイドウォール部3の外観性能がさらに向上する。
図3では、便宜上、隆起部20が着色して示される。
【0020】
図4(A)及び
図4(B)は、生タイヤ1aを加硫するための金型Tの断面図である。
図4(A)には、微小突起11と隆起部20とを成形するための金型Tの成形面Taが示される。成形面Taでは、第1三角形状領域t1(
図3に示す)が形成される。
図4(A)に示されるように、成形面Taは、微小突起11を成形するための微細凹部R1と、2つの微細凹部R1、R1の間に、隆起部20を成形するための浅底凹部R2とを含んでいる。このように、浅底凹部R2の設けられた成形面Taは、金型Tの強度を向上する他、加硫中のゴムが微細凹部R1、R1間を行き来し易くする。このため、本発明のタイヤ1を加硫するための金型Tは、高い強度を有するとともに、スムーズなゴム流れを生じさせる。なお、
図4(B)には、微小突起11のみを成形するための金型Tの成形面Tbが示される。
図4(B)に示されるように、成形面Tbは、微細凹部R1のみが形成されている。
【0021】
図1に示されるように、タイヤ1の内部には、カーカス6が配されている。カーカス6は、例えば、両側のビードコア5、5間を延びる本体部6aと、本体部6aに繋がりかつビードコア5でタイヤ軸方向の内側から外側に折り返される一対の折返し部6bとを含んでいる。折返し部6bのタイヤ半径方向の外端6eは、サイドウォール部3に位置している。本実施形態では、折返し部6bの外端6eは、装飾領域9とタイヤ半径方向で重複している。折返し部6bの外端6eは、タイヤ1の製造時に、バルジデントが生じやすい箇所である。このため、本実施形態のタイヤ1は、外端6eによって形成されるバルジデントを目立たなくすることができる。
【0022】
基準面10は、本実施形態では、タイヤ子午線断面において、タイヤ1の断面幅(JATMA参照)を特定しうるサイドウォール部3の外表面3aと一致する。なお、基準面10は、このような態様に限定されるものではなく、外表面3aからタイヤ軸方向の外側へステップ状に突出する面でもよい。
【0023】
図5は、サイドウォール部3の部分正面図である。
図5に示されるように、装飾領域9は、本実施形態では、タイヤ周方向で連続するように形成されている。装飾領域9は、例えば、タイヤ周方向で途切れるように形成されていても良い。装飾領域9は、例えば、ビードベースラインBL(
図1に示す)からタイヤ半径方向の外側へタイヤ断面高さHBの40%~90%の位置に配されるのが望ましい。前記「ビードベースラインBL」は、本明細書では、タイヤ1が基づく規格で定まるリム径位置を通るタイヤ軸方向線である。
図5では、装飾領域9が着色して示される。
【0024】
特に限定されるものではないが、装飾領域9の面積A1は、例えば、100mm2以上が望ましく、200mm以上がさらに望ましい。装飾領域9の面積A1が200mm2以上であるので、相対的に高い黒色度となる部分が大きくなり、サイドウォール部3の外観性能を確実に向上することができる。このような装飾領域9において、微小突起11は、7個以上が望ましく、50個以上がさらに望ましい。微小突起11が装飾領域9の1つ当たり7個以上であるので、微小突起11同士の光の反射による光量の低減効果が維持され黒色度が高められる。
【0025】
図3に示されるように、本明細書では、第1方向f1は、タイヤ半径方向であり、第2方向f2は、タイヤ周方向である。第1方向f1がタイヤ半径方向である場合、図の下側がタイヤ半径方向の内側であり、図の上側がタイヤ半径方向の外側とされる。
図3では、便宜上、第1方向f1は、図の上下方向と平行であり、第2方向f2は、図の横方向と平行で示される。なお、第1方向f1がタイヤ周方向であり、第2方向f2がタイヤ半径方向であってもよい。また、第1方向f1は、タイヤ半径方向と傾斜する方向でも良い。
【0026】
三角形状領域tのそれぞれは、本実施形態では、3つの微小突起11同士をそれぞれ結ぶ3つの仮想辺部17を有している。そして、3つの仮想辺部17のそれぞれは、例えば、複数の三角形状領域tのいずれかと隣接している。3つの仮想辺部17のそれぞれは、本実施形態では、複数の三角形状領域tのいずれかの仮想辺部17と隣接(共通)している。基準面10の正面視において、本実施形態の三角形状領域tのそれぞれは、正三角形状に形成されている。これにより装飾領域9の見栄えが良くなり、外観性能が向上する。なお、三角形状領域tの形状は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、二等辺三角形や直角二等辺三角形でもよい。
【0027】
第1三角形状領域t1は、例えば、3つの仮想辺部17のうちの少なくとも1つに、他の第1三角形状領域t1が隣接している。これにより、装飾領域9は、第1三角形状領域t1によって相対的に明るく見える領域、ひいてはグラデーションの面積が大きくなるので、外観性能がより高められる。
【0028】
複数の三角形状領域tは、本実施形態では、隆起部20を備えない第2三角形状領域t2を含んでいる。第2三角形状領域t2は、第1三角形状領域t1よりも高い黒色度を有する。このように、本実施形態の装飾領域9では、第1三角形状領域t1と第2三角形状領域t2とが形成されることで、装飾領域9のグラデーションが明瞭に形成されることになり、外観性能が向上する。
【0029】
図6は、本実施形態の装飾領域9の部分平面図(基準面10の平面図)である。
図7は、
図6のA-A線断面図である。
図6及び
図7に示されるように、装飾領域9の複数の三角形状領域tは、例えば、互いに隣接して配された複数の第1三角形状領域t1のグループ21を少なくとも1つ含む。グループ21は、例えば、複数の第1三角形状領域t1が、第1方向f1に対して傾斜して配されるように延びている。グループ21は、本実施形態では、複数の第1三角形状領域t1が、タイヤ半径方向に対して傾斜して配されるように延びている。グループ21は、例えば、複数の第1三角形状領域t1が、タイヤ半径方向に対して同じ向きに連続して傾斜するように配されている。本実施形態のグループ21は、装飾領域9のタイヤ半径方向の外端9e(
図1に示す)及び内端9i間を連続して延びている。このような態様は、グラデーションを大きくするので、バルジデントを目立たなくする効果を高める。
図6では、隆起部20が着色して示される。
【0030】
複数の三角形状領域tは、本実施形態では、グループ21の複数が規則的に配置されている。これにより、バルジデントを目立たなくする効果がさらに高められる。本実施形態では、グループ21がタイヤ周方向に離隔して配置されている。
【0031】
基準面10の平面視において、グループ21の端21eに位置する第1三角形状領域t1aは、3つの仮想辺部17のうちの1つの仮想辺部17に、他の第1三角形状領域t1が隣接している。本実施形態では、グループ21の両端21e、21eに位置する第1三角形状領域t1aのそれぞれは、3つの仮想辺部17のうちの1つの仮想辺部17に、他の第1三角形状領域t1が隣接している。グループ21の両端21e、21eは、本実施形態では、装飾領域9の外端9eと内端9iとを形成している。
【0032】
基準面10の平面視において、グループ21の端21eを除いて位置する第1三角形状領域t1bは、3つの仮想辺部17のうちの2つの仮想辺部17に、他の第1三角形状領域t1が隣接している。本実施形態のグループ21は、タイヤ周方向に第1三角形状領域t1が4つ連なる複数のグループ部21Aがタイヤ半径方向に並べられて形成される。各グループ部21Aは、例えば、第2方向f2に位置ずれしている。そして、1つのグループ部21aの第1タイヤ周方向の端の第1三角形状領域t1xと、このグループ部21aとタイヤ半径方向で隣接するグループ部21bの第2タイヤ周方向の端の第1三角形状領域t1yとが、仮想辺部17を介して接続されている。第1タイヤ周方向は、図では左側であり、第2タイヤ周方向は、図では右側である。第1三角形状領域t1yは、本実施形態では、第1三角形状領域t1xのタイヤ半径方向の内側に位置している。このようなグループ21は、その長さを大きくして、バルジデントを目立たなくする効果を向上することができる。
【0033】
本実施形態の装飾領域9は、第1三角形状領域t1のグループ21のタイヤ周方向の両側に、複数の第2三角形状領域t2が互いに隣接して配されて形成された副グループ22を含んでいる。副グループ22は、本実施形態では、グループ21と同じ形状で形成されている。換言すると、本実施形態の副グループ22は、タイヤ周方向に第2三角形状領域t2が4つ連なる副グループ部22Aがタイヤ半径方向に並べられて形成される。そして、1つの副グループ部22aの第1タイヤ周方向の端の第2三角形状領域t2xと、副グループ部22aとタイヤ半径方向で隣接する副グループ部22bの第2タイヤ周方向の端の第2三角形状領域t2yとが、仮想辺部17を介して接続されている。
【0034】
第1三角形状領域t1において、隆起部20は、例えば、隣接する3つの微小突起11の少なくとも一つに接続されている。これにより、金型Tの強度をさらに高めることができるとともに、加硫中のゴム流れを有効に改善することができる。また、このような隆起部20は、微小突起11の剛性を高めて、千切れや欠け等を抑制し、サイドウォール部3の外観性能の向上効果を長期間に亘って発揮する。第1三角形状領域t1において、隆起部20は、本実施形態では、隣接する3つの微小突起11の全てに接続されている(
図3に示す)。
【0035】
複数の三角形状領域tの20%~80%は、第1三角形状領域t1であるのが望ましい。換言すると、基準面10の平面視において、全ての隆起部20の合計面積Aw(図示省略)は、装飾領域9の面積Ax(図示省略)の20%以上、かつ、80%以下であるのが望ましい。隆起部20の合計面積Awが装飾領域9の面積Axの20%以上及び80%以下であるので、ユーザーは、黒色のグラデーションを明瞭に認識することができる。このような作用を効果的に発揮させるために、隆起部20の合計面積Awは、装飾領域9の面積Axの30%以上及び70%以下であるのがより望ましい。装飾領域9の面積Axは、本明細書では、基準面10の平面視における、全ての三角形状領域t(微小突起11を含む)の合計面積である。
【0036】
図8(A)及び
図8(B)は、第1三角形状領域t1と第2三角形状領域t2とを説明するための基準面10の平面図である。
図8(A)に示されるように、本明細書では、第1三角形状領域t1とは、隆起部20が、三角形状領域tの図心Ceに位置し、かつ、三角形状領域t内に位置する隆起部20の面積Apが、三角形状領域tから微小突起11を除いた面積Asの60%以上のものをいう。また、
図8(B)に示される左側の三角形状領域tは、隆起部20が、三角形状領域tの図心Ceに位置し、かつ、面積Apが面積Asの60%以上であるので、第1三角形状領域t1とされる。また、
図8(B)に示される右側の三角形状領域tは、領域内に形成された隆起部20が、三角形状領域tの図心Ceに位置していないので、第2三角形状領域t2とされる。面積Asは、
図6に示される。
【0037】
図9(A)は、微小突起11の斜視図である。
図9(A)に示されるように、微小突起11は、本実施形態では、円錐台状である。微小突起11は、例えば、突出高さ方向に対して傾斜する側面11aと、突出高さ方向の最も外側に位置する円形の頂部11bとを含んでいる。側面11aは、照射される光を多方向、かつ、より多くの微小突起11に反射させるので、装飾領域9の黒色度をさらに高める。頂部11bは、本実施形態では、平らな面として形成される。このような頂部11bは、微小突起11の剛性を高めて、微小突起11の折れや欠けを抑制するので、外観性能を高く維持する。また、微小突起11は、側面11aと基準面10との境界で形成される底面11cを含んでいる。底面11cは、本実施形態では、頂部11bに平行とされる。前記「突出高さ」は、本明細書では、微小突起11の底面11cの法線n(
図7に示す)の方向の高さである。
【0038】
図7に示されるように、微小突起11の基準面10からの突出高さh1は、0.1mm以上が望ましく、0.2mm以上がさらに望ましく、1.0mm以下が望ましく、0.8mm以下がさらに望ましい。また、微小突起11の頂部11bの直径dは、0.05mm以上が望ましく、0.15mm以上がさらに望ましく、0.5mm以下が望ましく、0.35mm以下がさらに望ましい。さらに、微小突起11の母線(側面11aで形成される)mと底面11cとのなす角度θは、5度以上が望ましく、10度以上がさらに望ましく、75度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。
【0039】
隆起部20は、例えば、最もタイヤ軸方向の外側に突出する隆起頂面20aを含んでいる。隆起頂面20aは、例えば、基準面10と平行に形成されている。なお、隆起部20は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、隆起頂面20aが突起高さ方向の外側に向かってテーパー状に形成されていてもよい(図示省略)。
【0040】
特に限定されるものではないが、隆起部20の突出高さh2は、0.05mm以上が望ましく、0.1mm以上がさらに望ましく、1.0mm未満が望ましく、0.8mm以下がさらに望ましい。
【0041】
この実施形態では、装飾領域9に配された全ての微小突起11の突出高さh1は、同等である。また、装飾領域9に配された全ての隆起部20の突出高さh2は、同等である。本明細書では、前記「同等」は、突出高さが同一の場合は勿論、タイヤ製造時の精度誤差によって突出高さが異なるものも「同等」に含まれる。また、突出高さの最大値ha(図示省略)と突出高さの最小値hbとの差(ha-hb)が、最小値hbの10%以下の場合も「同等」に含まれる。
【0042】
図10(A)は、他の実施形態の装飾領域9の正面図(基準面10の平面図)である。
図10(B)は、
図10(A)のB-B線断面図である。
図10に示されるように、この実施形態の装飾領域9は、隆起部20が、第1隆起部20A、第2隆起部20B及び第3隆起部20Cを含んでいる。この実施形態では、第1隆起部20Aは、第2隆起部20Bよりも突出高さが小さく、第2隆起部20Bは、第3隆起部20Cよりも突出高さが小さい。第1隆起部20A、第2隆起部20B及び第3隆起部20Cは、それぞれ、1つの第1三角形状領域t1を形成している。第1隆起部20Aの設けられた第1三角形状領域t1は、第2隆起部20Bの設けられた第1三角形状領域t1に比して、低い光反射率を有して高い黒色度を有する。第2隆起部20Bの設けられた第1三角形状領域t1は、第3隆起部20Cの設けられた第1三角形状領域t1に比して、低い光反射率を有して高い黒色度を有する。このように、この実施形態では、装飾領域9は、黒色度の明暗が4段階に区分されるので、高いバルジデントを目立たなくする効果が発揮される。
【0043】
図11(A)は、さらに他の実施形態の装飾領域9の正面図(基準面10の平面図)である。
図11(A)に示されるように、この実施形態の装飾領域9は、グループ21が第1方向f1に対して傾斜して延びるように形成されている。この実施形態では、各グループ21は、平行四辺形状に形成されている。また、副グループ22は、グループ21と同じ形状で形成されている。
【0044】
図11(B)は、さらに他の実施形態の装飾領域9の正面図(基準面10の平面図)である。
図11(B)に示されるように、この実施形態の装飾領域9は、グループ21が第2方向f2と平行に延びるように形成されている。この実施形態では、各グループ21は、タイヤ1の側面視において、円環状に形成されている。また、副グループ22は、グループ21と同じ形状で形成されている。
【0045】
図9(B)は、他の実施形態の微小突起11の斜視図である。
図9(B)に示されるように、この実施形態の微小突起11は、六角錐台状で形成されている。このような微小突起11も、本発明の効果を奏し得る。なお、微小突起11は、三角錐台を含む多角錐台状で形成されても良い。
【0046】
図9(C)は、さらに他の実施形態の微小突起11の斜視図である。
図9(C)に示されるように、この実施形態の微小突起11は、頂部11bから突出高さ方向の下方に延びる凹部24を含んでいる。これにより、凹部24内に照射された光は、凹部24内での反射を繰り返し、その光量をより一層低減するので、装飾領域9の黒色度を高めるのに役立つ。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0048】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0049】
[本発明1]
金型で加硫された空気入りタイヤであって、
トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部とを含み、
前記一対のサイドウォール部の少なくとも一方の外表面には、装飾領域が形成されており、
前記装飾領域は、基準面と、前記基準面から突出する複数の微小突起とを含み、
前記基準面の平面視において、前記複数の微小突起は、複数の第1微小突起列と、複数の第2微小突起列とが第1方向に交互に配置されたパターン部を含み、
前記第1微小突起列は、複数の前記微小突起が、第1方向と直交する第2方向に、第1ピッチで配列されており、
前記第2微小突起列は、複数の前記微小突起が、前記第2方向に、前記第1ピッチで配列され、かつ、前記第1微小突起列とは前記第2方向に位置ずれしており、
前記パターン部を、互いに直接隣接する3つの前記微小突起を頂点とする複数の三角形状領域に仮想区分したときに、前記複数の三角形状領域は、前記基準面から前記微小突起よりも小さい高さで突出する隆起部が設けられた少なくとも1つの第1三角形状領域を含む、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記第1三角形状領域において、前記隆起部は、前記隣接する3つの前記微小突起の少なくとも一つに接続されている、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記第1三角形状領域において、前記隆起部は、前記隣接する3つの前記微小突起の全てに接続されている、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記複数の三角形状領域は、前記隆起部を備えない第2三角形状領域を含む、本発明1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記複数の三角形状領域は、互いに隣接して配された複数の前記第1三角形状領域のグループを少なくとも1つ含む、本発明1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記複数の三角形状領域は、前記グループの複数が規則的に配置されている、本発明5に記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記複数の三角形状領域のそれぞれは、前記3つの前記微小突起同士をそれぞれ結ぶ3つの仮想辺部を有し、
前記3つの仮想辺部のそれぞれは、前記複数の三角形状領域のいずれかと隣接し、
前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの少なくとも1つに、他の前記第1三角形状領域が隣接する、本発明6に記載の空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記基準面の平面視において、前記グループの端に位置する前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの1つの仮想辺部に、他の前記第1三角形状領域が隣接する、本発明7に記載の空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記基準面の平面視において、前記グループの端を除いて位置する前記第1三角形状領域は、前記3つの仮想辺部のうちの2つの仮想辺部に、他の前記第1三角形状領域が隣接する、本発明7又は8に記載の空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記複数の三角形状領域の20%~80%は、前記第1三角形状領域である、本発明1ないし9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明11]
前記微小突起は、円錐台状である、本発明1ないし10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明12]
前記微小突起の頂部の直径は、0.05~0.5mmであり、
前記微小突起の前記基準面からの突出高さは、0.1~1.0mmであり、
前記微小突起の母線と底面とのなす角度は、5~75度である、本発明11に記載の空気入りタイヤ。
[本発明13]
前記隆起部の突出高さは、0.05mm以上、1.0mm未満である、本発明1ないし12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0050】
1 空気入りタイヤ
3 サイドウォール部
3A 外表面
9 装飾領域
10 基準面
11 微小突起
12 第1微小突起列
13 第2微小突起列
f1 第1方向
15 パターン部
20 隆起部
t 三角形状領域
t1 第1三角形状領域
v 頂点