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特開2024-8207揺動生成機構、揺動生成方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008207
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】揺動生成機構、揺動生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240112BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240112BHJP
   G03B 5/08 20210101ALI20240112BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G03B5/00 C
G03B5/08
G02B7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109887
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳和
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AC03
2H044BE03
(57)【要約】
【課題】部材の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、部材を機械的に揺動させる機構を実現する。
【解決手段】揺動生成機構は、凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材(340)と、第1摺動面に当接する、第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材と、第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の第2部材に対する傾角を変更する少なくとも1つの傾角変更部材(321,322,323)と、傾角変更部材と係合し、回転することによって傾角変更部材の第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材(330)と、を備え、第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、回転部材と傾角変更部材とが組み合わされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材と、
前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材と、
前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更する少なくとも1つの傾角変更部材と、
前記傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材と、を備え、
前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている、
揺動生成機構。
【請求項2】
前記傾角変更部材として、3つの移動ピンを備え、
前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円筒状のカム筒を備え、前記カム筒の円筒面に、前記3つの移動ピンをそれぞれ前記所定の軸方向に誘導する3つの誘導孔が設けられている、請求項1に記載の揺動生成機構。
【請求項3】
少なくとも1つの駆動モータと、
前記駆動モータの回転力を前記カム筒に伝達するギア機構を更に備える、請求項2に記載の揺動生成機構。
【請求項4】
前記傾角変更部材として、1つの移動ピンを備え、
前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円板状の第1カム板を備え、前記第1カム板には、前記1つの移動ピンを誘導する、円周方向に渦状の1つの誘導孔が設けられており、
前記第1部材の前記移動ピンと当接する面に、前記平面と前記所定の軸との交点からの距離に応じた傾斜が設けられている、
請求項1に記載の揺動生成機構。
【請求項5】
前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円板状の第2カム板を備え、前記第2カム板には、前記1つの移動ピンを誘導する、半径方向に直線状の1つの誘導孔が設けられており、
前記第1カム板と前記第2カム板との回転速度の比率が、前記移動ピンが渦状に誘導されるように決定されている、請求項4に記載の揺動生成機構。
【請求項6】
少なくとも1つの駆動モータと、
前記回転速度の比率に対応するように、前記駆動モータの回転力を前記第1カム板と前記第2カム板の両方に伝達するギア機構を更に備える、請求項5に記載の揺動生成機構。
【請求項7】
前記平面は初期位置の撮像素子を含む平面であり、前記第1部材は、前記撮像素子を保持する撮像素子保持部材、又は前記撮像素子に光を結像させるレンズ本体を保持するレンズ保持枠であり、前記第1部材と前記第2部材の凸球面と凹球面の中心点は、前記撮像素子の中央を通りかつ当該撮像素子の撮像面に垂直な線分上に存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の揺動生成機構。
【請求項8】
前記単調関数は、前記投影ベクトルの長さをr、角度をθとしたときに、r=aθ(aは定数)、r=aθ0.5(aは定数)又はr=sin(φ(θ))のうちのいずれかである、請求項1から6のいずれか1項に記載の揺動生成機構。
【請求項9】
凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材を、前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材に対して揺動させる方法であって、
少なくとも1つの傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材を回転させるステップと、
前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更するステップと、を含み、
前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている、
揺動生成方法。
【請求項10】
請求項1に記載された前記回転部材を回転させる駆動部を制御する駆動制御サブプログラムと、
請求項1に記載された前記第1部材の前記第2部材に対する傾角の程度を検出する検出部を制御する検出制御サブプログラムと、
を含む揺動生成機構制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の揺動生成機構制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動生成機構、揺動生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等の撮像装置において、光学系の光軸と撮像素子との成す角度を変更する、いわゆるチルト装置が知られている。光軸と撮像素子との成す角度を変更する目的は、光軸と撮像素子との成す角度を微調整するため、あるいは、撮影上の効果を得るためのいずれでもよい。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズとカメラハウジングとの相対旋回をビデオに適した速度で実行可能とされる傾斜アダプタが開示されている。また、特許文献2には、固体撮像素子の結像位置調整と光軸傾角調整とを独立して行うことができ、しかも十分な冷却・放熱効果が得られるとされる光軸傾角調整部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-537755号公報
【特許文献2】特開2002-77699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、アーチ形シリンダを摺動させることにより角度を変更するものであるため、1方向の角度しか変更することができない。また、特許文献2に開示された技術は、直交するX軸とY軸のそれぞれの軸回りの回転角度を調節することができるが、調整自体はX軸上とY軸上のネジをそれぞれ手動で緩締することにより行う。つまり、X軸回りとY軸回りの角度を個別に設定して調整する必要がある。そのため、角度を調整するための作業が複雑であり、また調整を機械的に行うことが難しいという問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、部材の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、部材を機械的に揺動させる機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る揺動生成機構は、凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材と、前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材と、前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更する少なくとも1つの傾角変更部材と、前記傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材と、を備え、前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る揺動生成方法は、凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材を、前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材に対して揺動させる方法であって、少なくとも1つの傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材を回転させるステップと、前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更するステップと、を含み、前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る揺動生成機構制御プログラムは、上記回転部材を回転させる駆動部を制御する駆動制御サブプログラムと、上記第1部材の第2部材に対する傾角の程度を検出する検出部を制御する検出制御サブプログラムと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1部材の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、第1部材を機械的に揺動させる機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係るチルト角調整機構付きの光学製品ユニットの全体斜視図である。
図2】実施形態1に係る光学製品ユニットの分解斜視図である。
図3】撮像素子アセンブリの詳細構造を示す分解図である。
図4】筐体、撮像素子アセンブリ及びステッピングモータのYZ断面をX軸方向から見た断面図である。
図5】カム筒の斜視図である。
図6】カム筒の円筒面に形成されたコマ誘導孔を展開した図である。
図7】撮像素子アセンブリをZ軸の+側方向から見た図である。
図8】3つのピンの位置を正三角形ABCに配置した場合の座標を示す図である。
図9】従来技術で調整するチルト範囲と、本実施形態でチルト調整する範囲を示す図である。
図10】コマ誘導孔で誘導される3つのコマのZ軸方向の変位量を示す図である。
図11】カム筒の回転角がθ、チルト量がφの法線ベクトルとその投影ベクトルを示す図である。
図12】ステッピングモータの駆動力が撮像素子ホルダに伝達されるまでの流れを示す図である。
図13】実施形態2に係る光学ユニットの分解斜視図である。
図14】実施形態2に係る光学ユニットを図13の反対方向から見た分解斜視図である。
図15】実施形態2に係るギアユニットの分解図である。
図16】筐体及び撮像素子アセンブリのYZ断面をX軸方向から見た断面図である。
図17】ピンの動きと撮像素子ホルダの動きを説明する図である。
図18】光軸の-側から見た渦カム、直線カム、ピンの動きを説明する図である。
図19】ピンと傾斜面とが当接する箇所の断面模式図である。
図20】従来技術で調整するチルト範囲と、本実施形態でチルト調整する範囲を示す図である。
図21】実施形態3に係るあおり機構を備えるレンズユニットの分解斜視図である。
図22】レンズユニットのYZ断面図である。
図23】実施形態1に係る揺動生成方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
(光学ユニット1の構成)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る、チルト角調整機構付きの光学ユニット1の全体斜視図である。また、図2は、その光学製品ユニットの分解斜視図である。以下では、図1に示すように、光学ユニット1の光軸OAをZ軸とし、光軸OAに直交する2つの軸をX軸とY軸とする直交座標系を用いて構成を説明する。光軸OAの対物方向をZ軸の+方向、反対側をZ軸の-方向とする。X軸とY軸の+方向はそれぞれ矢印で示す方向とする。また、光学ユニット1の対物方向を前方とも称し、その反対方向を後方とも称する。
【0013】
図1図2に示すように、光学ユニット1は、光軸OAを有するレンズ本体100、筐体200、撮像素子アセンブリ300、ステッピングモータ(駆動部)500、撮像素子アセンブリ300とステッピングモータ500とを接続するギアホルダ400を備えている。レンズ本体100、筐体200、撮像素子アセンブリ300、ギアホルダ400及びステッピングモータ500は、光軸OAに沿ってこの順に配置されている。光学ユニット1は、揺動生成機構を含む。本実施形態における「揺動」の意味については後述する。揺動生成機構は、第1部材、第2部材、傾角変更部材、及び回転部材を含む。これらの部材については、光学ユニット1に組み込まれているので、光学ユニット1の全体構成を説明する中で順次詳細に説明する。
【0014】
図1図2に示すように、レンズ本体100は筐体200の前方側に保持され、撮像素子アセンブリ300は筐体200の後方側に保持される。撮像素子アセンブリ300、ギアホルダ400、及びステッピングモータ500は、カバー600の内部に収容されている。なお、図中のレンズマウントにはCマウントを例示しているが、レンズマウントの規格は限定されない。また、フレキシブル基板やコネクタ等の、本実施形態で説明する構成とは直接関連のない部材は割愛している。
【0015】
(撮像素子アセンブリ300の構成)
次に、撮像素子アセンブリ300の構成を図3図4を用いて説明する。図3は、撮像素子アセンブリ300の詳細構造を示す分解図である。また、図4は、筐体200、撮像素子アセンブリ300及びステッピングモータ500のYZ断面をX軸方向から見た断面図である。ただし、図4の上下方向がZ軸方向(下側が+方向)、左右方向がY軸方向(左側が+方向)である。図3に示すように、撮像素子アセンブリ300は、ピンブロック310、カム筒330、撮像素子ホルダ340、撮像素子基板350、及びギア機構360を含む。
【0016】
ピンブロック310は、3つのピン収容部321a,322a,323aを備えている。ピン収容部321a,322a,323aは、それぞれピン321,322,323を、Z軸方向に摺動可能に収容する。ピン321,322,323は、後述するように、撮像素子ホルダ340に対する位置を変更することにより、撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角を変更する。撮像素子ホルダ340に対するピン321,322,323の位置とは、撮像素子ホルダ340に対する光軸方向(Z軸方向)のピン321,322,323の位置である。ピン321,322,323には、光軸OAに略垂直な方向にコマ保持孔がそれぞれ設けられており、そのコマ保持孔にはそれぞれコマ324,325,326が挿入され保持されている。ピンブロック310は、その内側が円筒形の空間となっており、そこには後述するカム筒330が収容されている。
【0017】
(回転部材)
カム筒330は円筒状であり、撮像素子の中央を通りかつ当該撮像素子に垂直な線分(つまり光軸又はZ軸)を中心に回転可能である。カム筒330は、回転することによってピン321,322,323の位置を変更する機能を有する。以下、この機能を発揮するための構成の一例を説明する。カム筒330は、その円筒面に3本のコマ誘導孔P,Q,Rが設けられている。コマ誘導孔P,Q,Rは、それぞれカム筒330の円筒面を周回するように細長く設けられている。コマ誘導孔P,Q,Rは、カム筒330の円筒面を貫通する貫通孔として設けられてもよく、非貫通の溝として設けられてもよい。コマ誘導孔P,Q,Rは、特許請求の範囲に記載した誘導孔の一形態である。カム筒330は、特許請求の範囲に記載した回転部材の一形態である。
【0018】
3本のコマ誘導孔P,Q,Rには、それぞれコマ324,325,326が係合している。コマがコマ誘導孔に係合するとは、コマの端部がコマ誘導孔に挿入されていることを意味する。コマ324,325,326は、コマ誘導孔P,Q,Rに固定されているわけではなく、細長いコマ誘導孔P,Q,Rを移動可能である。カム筒330とコマ誘導孔P,Q,Rの構造の詳細については後述する。カム筒330の内面には内歯ギア361が固定されている。内歯ギア361は、後述するギア機構360の連結ギアと噛み合っており、連結ギアの回転に伴ってカム筒330が回転する。
【0019】
(傾角変更部材)
図4に示すように、ピン321,322,323は、その後端部(Z軸方向の-側)が半球状に形成され、撮像素子ホルダ340と当接している。ピン321,322,323にそれぞれ保持されたコマ324,325,326は、それぞれがコマ誘導孔Q,R,Pに係合している。つまり、ピン321,322,323は、コマ324,325,326を介して間接的にカム筒330に係合している。なお、ピン321,322,323は、カム筒330に直接的に係合していてもよい。カム筒330は、コマ324,325,326を介してピン321、322、323をそれぞれ撮像素子の撮像面に垂直な方向(光軸方向又はZ軸方向)に誘導する。ピン321、322、323は、移動ピンであり、特許請求の範囲に記載した傾角変更部材の一形態である。
【0020】
コマ誘導孔P,Q,Rとピン321,322,323の動きを具体的に説明する。カム筒330が回転することにより、コマ誘導孔P,Q,RのZ軸上の位置が前後に変化する。この変化に伴い、コマ誘導孔P,Q,Rに係合したコマ324,325,326がZ軸方向に沿って前後し、これに伴ってピン321,322,323がZ軸方向に沿って前後する。ピン321,322,323の位置がZ軸の-方向に移動することにより、撮像素子ホルダ340をZ軸の-方向に押圧する。これにより、撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角が変化する。
【0021】
(第1部材)
撮像素子ホルダ340は、撮像素子351を保持する撮像素子保持部材である。撮像素子ホルダ340は、特許請求の範囲に記載した第1部材の一形態である。撮像素子ホルダ340は、撮像素子351の撮像面の中央が光軸OAと概ね直交するように撮像素子351を保持するように設計されている。しかし、組立直後(初期位置)又は長期間の使用後の光学ユニット1では、撮像素子351が光軸OAと必ずしも直交していない。本実施形態では、光学ユニット1は、撮像素子351が光軸OAと直交するように調整する揺動生成機構を含んでいる。
【0022】
以下、撮像素子351の撮像面の中央を撮像素子351の中央とも称する。撮像素子ホルダ340は、図4に示すように、凸球面状の第1摺動面352を備えている。第1摺動面352は、所定の半径を有する凸球面の一部である。第1摺動面352は凸球面352とも称する。凸球面352の幾何学的な中心点は、撮像素子351の中央を通りかつ撮像素子351の撮像面に垂直な線分(光軸)上に存在する。また、凸球面352の幾何学的な中心点は、撮像素子351の中央に存在することがより好ましい。凸球面352の半径は、撮像素子351を所定の傾角範囲に調整するために好ましい所定の半径に設定されている。
【0023】
撮像素子基板350は、撮像素子351を制御する制御基板を含み、撮像素子ホルダ340の後方に配置されている。撮像素子基板350は公知の制御基板を用いることができ、本実施形態に係る揺動生成機構と直接関連しないため、詳細な説明は省略する。
【0024】
ギア機構360は、ステッピングモータ500の回転力を内歯ギア361、即ちカム筒330に伝達するための機構である。具体的には、ギア機構360は、ステッピングモータギア365と、連結ギア362,363,364とを含む。ステッピングモータギア365は、ステッピングモータ500の回転軸に装着されている。ステッピングモータギア365は連結ギア362,363,364と噛み合っており、連結ギア362,363,364は内歯ギア361と噛み合っている。このようなギア構成により、ステッピングモータ500の回転力がカム筒330に伝達され、カム筒330がZ軸を中心として回転する。ステッピングモータ500は、特許請求の範囲に記載した駆動モータ(又は駆動部)の一形態である。駆動モータはステッピングモータに限られず、その個数も1つに限られない。また、ギア機構360の機構は上述の構成に限られず、ステッピングモータ500の回転をカム筒330に伝達可能な構成であれば、その構成は任意である。
【0025】
(第2部材)
図2図4に示すように、筐体200はピンブロック310に固定されており、筐体200にはレンズマウントを介してレンズ本体100が取り付けられている。図4に示すように、筐体200は、凹球面状の第2摺動面201を備えている。第2摺動面201は、所定の半径を有する凹球面の一部である。第2摺動面201は凹球面201とも称する。凹球面201の半径は、凸球面352の半径と同等である。そして、凸球面352と凹球面201とが当接している。つまり、凹球面201と凸球面352とは、互いに相補的な形状を有して摺動可能に当接している。筐体200は、特許請求の範囲に記載した第2部材の一形態である。
【0026】
図3図4に示す付勢部材371,372,373は、ばねを有するネジにより構成されている。付勢部材371,372,373は、ピンブロック310にネジ止めされており、ばね371a,372a,373aにより撮像素子ホルダ340を筐体200に向けて付勢している。この構成により、撮像素子ホルダ340の凸球面352と、筐体200の凹球面201とが当接して摺動することができる。なお、凸球面352と凹球面201は摺動摩擦を低減するため、表面にDLC(Diamond Like Carbon)薄膜等の低摩擦材料層を形成することが好ましい。
【0027】
上述の実施形態では、撮像素子ホルダ340が凸球面352を備え、筐体200が凹球面201を備え、両者が当接する構成を説明した。しかし、凸球面と凹球面の組み合わせを逆にしてもよい。例えば、撮像素子ホルダ340に凹球面を備え、筐体200に凸球面を備えてもよい(図示せず)。このような構成を、撮像素子ホルダ340の凸球面又は凹球面の一部が、筐体200の凹球面又は凸球面の一部と摺動可能に構成されている、という。
【0028】
(カム筒330の構成)
次にカム筒330について、図面を参照して詳細に説明する。カム筒(回転部材)330は、コマ(傾角変更部材)324、325、326と協働して、撮像素子ホルダ340を歳差運動的に揺動させるための回転部材である。
【0029】
歳差運動とは、例えば地面の上で回転する独楽の回転軸が、回転軸の下端(地面と接する点)の位置は変わらずに上端が回転する運動である。そのため、歳差運動は独楽の首振り運動とも称される。そして、独楽の回転軸の鉛直方向に対する角度は、時間の経過とともに大きくなる。つまり、首振りの振れ幅が次第に大きくなる。この場合に、回転軸を上方から地面に投影した投影ベクトルは、回転軸の下端を中心とする極座標で表すと、投影ベクトルの角度が大きくなるにつれて、投影ベクトルの長さが大きくなる。
【0030】
本実施形態では、ある部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるような部材の動きを、歳差運動的な揺動と称する。例えば、ある部材を独楽と考えた場合に、独楽の回転軸(法線に相当)のベクトルを地面(重力方向に垂直な平面)に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表される。単調関数とは、角度が増加すると長さも増加する、あるいは角度が増加すると長さは減少する関数である。このような単調関数として、投影ベクトルの長さをr、角度をθとしたときに、r=aθ(aは定数)又はr=aθ0.5(aは定数)で表される関数が挙げられる。これらの関数は、極座標で表すと螺旋状になるため、前者はアルキメデスの螺旋(渦)、後者は放物螺旋とも言われる。また、後述する実施形態2で説明する機構では、関数式r=sin(φ(θ))で表される単調関数となる。
【0031】
本実施形態では、独楽に相当する部材(第1部材)が撮像素子ホルダ340である。撮像素子ホルダ340の法線ベクトルを光軸(所定の軸に対応)に垂直な平面(例えば、光軸に垂直になるように調整した初期位置の撮像素子351を含む平面)に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、カム筒330とコマ324、325、326とが組み合わされている。カム筒330は、コマ324、325、326を誘導して、撮像素子ホルダ340を独楽の首振り運動のように揺動させる。
【0032】
図5は、カム筒330の斜視図である。図5に示すように、カム筒330には、その円筒面に3本のコマ誘導孔P、Q、Rが設けられている。コマ誘導孔P、Q、Rは、それぞれが独立して周方向に形成されている。
【0033】
図6は、カム筒330の円筒面に形成されたコマ誘導孔P、Q、Rを展開した図である。コマ誘導孔P、Q、Rは、後述するように図の上下方向にわずかに湾曲を繰り返している。図6ではこの湾曲を誇張して描いているが、実際の湾曲はごくわずかである。この湾曲に沿ってコマ324、325、326が光軸の前後方向に誘導される。また、コマ誘導孔P、Q、Rは、それぞれカム筒330の一周未満の長さであるが、この長さは限定されない。例えば、カム筒330の一周以上の長さであってもよい。また、コマ誘導孔P、Q、Rの湾曲の高低差も限定されない。後述するように、この高低差と長さによって、投影ベクトルの軌跡の密度が規定される。撮像素子ホルダ340の傾きと方向をどの程度の精度で調整するかにより、コマ誘導孔P、Q、Rの湾曲の程度と長さが設計される。
【0034】
次に、コマ誘導孔P、Q、Rの設計方法について説明する。本実施形態では、一例として、法線の投影ベクトルの終点の軌跡がアルキメデスの渦を描く場合について、図7から図10を用いて説明する。図7は、撮像素子アセンブリ300をZ軸の+側から見た図である。
【0035】
図の中央に撮像素子351が配置されており、その周囲にピン321、322、323が正三角形の頂点位置に配置されている。撮像素子351の中央とピン321、322、323で規定される正三角形の重心GはX軸とY軸の交点に一致し、光軸(Z軸)にも重なる。図8は、ピン321の位置をA、ピン322の位置をB、ピン323の位置をCとする正三角形ABCの座標を示す図である。正三角形ABCの1辺の長さを2aとし、高さをl(エル)とすると、各頂点A、B、Cの座標は下記式(1)で表される。ここで、h、h、hはそれぞれ点A、B、CのZ座標である。
【0036】
【数1】
ここで、ベクトルCAとベクトルCBの成分は下記式(2)のように表される。
【数2】
【0037】
撮像素子351のチルト量は三角形ABCの法線ベクトルと同義であるから、ベクトルCAとベクトルCBの外積から撮像素子351のチルト量を算出することが可能となり、その成分は下記式(3)で与えられる。
【0038】
【数3】
【0039】
ところで、重心Gの座標は下記式(4)によって与えられることが知られており、Z座標は常に0である必要があるから、下記式(5)によりhが算出される。
【数4】
【0040】
さて、本実施形態では、XY平面へ投影した単位法線の投影ベクトルの終点の軌跡が、極座標において、長さ、即ち投影ベクトルの原点からの距離(r)が、角度(θ)の滑らかな単調関数で記述される式で表される。前述のように、ここではアルキメデスの渦の場合について説明する。アルキメデスの渦は一般的に極座標形式で表記されるが、デカルト座標系で表した場合の成分(x,y)は下記式(6-1)のように与えられる。式(6-1)は、無次元の係数μ、νを用いて式(6-2)のように表すことができる。
【数5】
【0041】
それぞれの座標は、先述した外積の成分と一致する必要があるため,式(5)と式(6-2)より次の連立方程式(7)が導出される。
【数6】
【0042】
式(7)を計算すると、h,h,hは下記式(8)のように与えられ、θを変数とした非線形関数となることが分かる。
【数7】
【0043】
ここで、従来技術での調整精度を参考にする。図9は、従来技術で調整するチルト範囲と、本実施形態でチルト調整する範囲を示す図である。前述したように、従来技術でのチルト調整にはワッシャやネジ部材が用いられる場合があり、ワッシャ又はネジ部材を用いて3点の高さを調整することによりチルト調整を実施する。ここでは、点A,B,Cにおいてワッシャを用いて±0.05の範囲で高さを調整して、平面ABCをチルトさせた場合を仮定する。その場合、XY平面へ投影した法線ベクトルの終点は図9の三角(△)に示すようにプロットされる。そこで、本実施形態においても、アルキメデスの渦がこの範囲をカバーする場合を考え、それを実現するようなμ、ν及びθの範囲を決めることとする。この数値は部材の加工性、調整精度、製品サイズ等に応じて適宜変更することができる。本実施形態では下記の値に設定する。
a=24
μ=4.2×10-5
ν=0.1
0≦θ≦300
【0044】
図10は、コマ誘導孔で誘導される3つのコマのZ軸方向の変位量を示すプロファイル図である。この図では、横軸はカム筒330の回転角度(度)、縦軸は各点のZ軸方向の変位量である。つまり、A,B,Cの各点を図10の縦軸で示す変位量で同時に変位させることで、法線ベクトルの終点は図9の黒丸(●)に示すような軌跡を描く。例えば、図9の原点をOとして、投影ベクトルOSで示される揺動位置からカム筒330を角度αだけ回転させると投影ベクトルOTで示される揺動位置となる。なお、図9の黒丸は離散的に示しているが、非線形プロファイルは連続な関数であるため、実際のアルキメデスの渦は連続な軌跡となる。
【0045】
次に、チルト量に応じたカム筒330の回転角算出方法について説明する。図11は、カム筒330の回転角がθ、撮像素子ホルダ340のチルト量(Z軸に対するチルト角度)がφの法線ベクトルとその投影ベクトルを示す図である。X軸を基準とした時のカム筒330の回転角をθ、撮像素子ホルダ340の法線ベクトルをXY平面へ投影した投影ベクトルの原点からの距離をL、チルト量をφとした時、法線ベクトルの成分(x,y)は下記式(9)で与えられる。
【数8】
【0046】
また,式(3)より法線ベクトルのz成分は一意に決まるので、φは下記式(10)で与えられる。
【数9】
【0047】
従って,式(9)と式(10)より法線ベクトルの成分(x,y)は下記式(11)のように表される。
【数10】
【0048】
ここで求めたベクトル成分を図9の分布図にプロットし,アルキメデスの渦に一番近いポイントを求め,そこから最終的なカム筒の回転角が算出される。例えば、4時方向に6分だけ撮像素子351をチルトさせる場合、式(11)よりベクトル成分は下記式(12)のように与えられる。
【0049】
【数11】
図10の分布で式(12)に最も近い値を実現するθを計算するとθ=214となり、カム筒を基準点から214°回転させれば4時方向に6分のチルトが実現できることを意味する。
【0050】
以上のように計算された、図10に示す変位量を撮像素子ホルダ340に与えるように、カム筒330のコマ誘導孔P、Q、Rを加工する。つまり、図10に示す変位量に対応してZ軸方向にコマ324、325、326を誘導するようにコマ誘導孔P、Q、Rを加工する。そして、ステッピングモータ500を用いてカム筒330を回転させることにより、撮像素子ホルダ340が図9に示すように揺動する。
【0051】
図12は、ステッピングモータ500の駆動力が撮像素子ホルダ340に伝達されるまでの流れを示す図である。図中の数字は、以下の括弧付きの数字で示すステップに対応する。まず、(1)ステッピングモータ500が反時計回り(Counter Clockwise、CCW)に回転すると、(2)ステッピングモータ500に連結されたステッピングモータギア365が反時計回りに回転する。(3)すると、ステッピングモータギア365と外歯で噛み合う連結ギア362,363,364が時計回り(Clockwise、CW)に回転する。(4)すると、連結ギア362,363,364と内歯で噛み合う内歯ギア361が時計回りに回転する。(5)すると、内歯ギア361に固定されているカム筒330も時計回りに回転する。(6)カム筒330が時計回りに回転すると、コマ324,325,326がコマ誘導孔P、Q、Rに誘導されてZ軸に沿って交互して前後に移動し、同時にピン321,322,323がZ軸に沿って交互して前後に移動する。(7)これにより、撮像素子ホルダ340がピン321,322,323に押圧されてチルト(揺動)する。なお、ピン321,322,323が前方に移動した場合は、撮像素子ホルダ340は付勢部材371,372,373によって前方に付勢されて移動する。
【0052】
本実施形態における揺動生成機構は、組立後の光学ユニット1で傾角調整用チャートを撮像し、そのチャートの画像からチルトさせる方向と角度を算出し、撮像素子ホルダ340の傾角を調整する際に用いられる。あるいは、レンズ本体100の前方に傾角調整用チャートを配置しておき、揺動生成機構を用いて撮像素子ホルダ340を連続的にチルトさせていって、チャートが最も適正に撮像される位置に撮像素子ホルダ340を調整してもよい。このように構成すれば、画像判定装置を用いて、適正な角度に撮像素子ホルダ340を調整するように揺動生成機構をプログラム制御することができる。つまり、プログラム制御により撮像素子ホルダ340の傾角を調整することができる。
【0053】
(揺動生成方法)
次に、本実施形態に係る揺動生成方法S1について説明する。揺動生成方法S1は、凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材(撮像素子ホルダ340)を、当該第1摺動面に当接する、第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材(筐体200)に対して揺動させる方法である。図23は、本実施形態に係る揺動生成方法S1の流れを示すフローチャートである。図に示すように、揺動生成方法S1は、ステップS11とステップS12とを含む。
【0054】
ステップS11は、少なくとも1つの傾角変更部材と係合し、回転することによって傾角変更部材の第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材を回転させる。回転部材を回転させる方法は、モータ等の駆動装置(駆動部)を用いてもよく、ユーザが手動で回転させてもよい。一例として、回転部材は上述したカム筒330であり、傾角変更部材はカム筒330に係合したピン321,322,323である。
【0055】
ステップS12は、傾角変更部材の第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の第2部材に対する傾角を変更する。ただし、第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、回転部材と傾角変更部材とが組み合わされている。一例として、第1部材は上述した撮像素子ホルダ340であり、第2部材は撮像素子ホルダ340と摺動可能に当接する筐体200である。
【0056】
上記の実施形態は、撮像素子の向きを初期位置(又は長期間の使用でずれた向き)から最適な方向に調整する、撮像素子のチルト調整のために揺動生成機構を用いる例を説明した。しかし、本実施形態に係る揺動生成機構はそのような目的のみでなく、傾角を微調整する必要がある部材全般に適用することができる。つまり、ある部材を任意の方向に任意の角度で傾けてデータを取得し、最適な方向と角度を探索又は調整する場合に一般的に用いることができる。対象となる部材の種類と大きさはいずれも限定されない。これは以下の実施形態においても同様である。
【0057】
一例として、揺動生成機構は、(1)光学顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope)などに用いられる試料ステージ、(2)レーザーを用いた機器における光軸調整機構、(3)眼底検査のような走査機構などに適用可能である。(1)について、試料が傾いた状態の場合、被写界深度の関係から焦点ボケを有する領域が発生する虞がある。これを試料の注目したい領域にチルトを合わせることで、全体的にピントが合った画像を得られるようにすることができる。(2)についてはレーザーを用いた機器全般に適用可能である。例えばレーザーカッターであれば、光軸の状態が裁断の精度や品質に影響するため、適切な光軸に調整することが求められる。
【0058】
他にも、薄膜の形成に用いられるPLD(Pulsed Laser Deposition)装置であれば、ターゲットに照射されるレーザー光の状態により堆積する薄膜の結晶構造が変化する可能性があるため、薄膜の特性に影響を与える虞がある。これらの光軸調整に、上記の揺動生成機構を用いることができる。また、(3)については(1)や(2)の調整よりも探索の要素が強い。一般的にスキャニング(走査)では直線状の検知器を一定方向に動かして情報を得ているが、円状や球状の対象面では不要な領域までスキャンすることになる。しかし、本揺動生成機構の特性上、円や球面に対して効率よくスキャンできることが期待されるため、眼底撮影装置等での応用も考えられる。
【0059】
なお、光学ユニット1は、上記の揺動生成機構をプログラム制御する揺動生成機構制御プログラムを備えていてもよい。例えば、揺動生成機構制御プログラムは、ステッピングモータ500を駆動制御する駆動制御サブプログラムと、撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角の程度を検出する検出部(図示せず)を制御する検出制御サブプログラムを含んでもよい。検出部は傾角そのものを検出する必要はなく、画像判定部等でもよい。例えば、検出制御サブプログラムは、撮像素子351によって撮像された画像を取得し、取得した画像を基準となるチャート画像と比較し、画面周辺の焦点ボケ等が最も小さくなる傾角、即ち撮像素子351の法線が光軸方向と最も近くなる傾角を探索するように検出部を制御するプログラムでもよい。このような駆動制御サブプログラムと検出制御サブプログラムを含む揺動生成機構制御プログラムを用いることにより、プログラム制御で撮像素子ホルダ340の傾角を調整することができる。
【0060】
以上の実施形態に係る光学ユニット1に含まれる揺動生成機構、又はこの揺動生成機構を用いた揺動生成方法によれば、撮像素子ホルダ340の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、撮像素子ホルダ340を機械的に揺動させることができる。さらに、揺動生成機構と検出部(画像判定部等)を組み合わせることにより、撮像素子ホルダ340の傾角をプログラム制御で調整することができる。
【0061】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0062】
実施形態1では、3つのピンを用いて撮像素子ホルダ340を揺動させる構成について説明した。しかし、ピンの数は3つに限定されない。本実施形態では、ピンが1つの場合について説明する。
【0063】
(光学ユニット2の構成)
図13は、本実施形態に係る光学ユニット2の分解斜視図、図14は、反対方向(光軸の後方)から見た光学ユニット2の分解斜視図である。図13図14に示すように、光学ユニット2は、筐体200、撮像素子ホルダ340、撮像素子基板350、付勢部材371,372,373、カム駆動ギア410,420、渦カム710、直線カム720、ピン730、ギアユニット800、ステッピングモータ500を備える。レンズ本体は記載していないが、実施形態1と同様に筐体200に取り付けられる。筐体200、撮像素子ホルダ340、ステッピングモータ500等はレンズ本体の光軸OA上に配置されている。
【0064】
光学ユニット2のうち、筐体200、撮像素子ホルダ340、撮像素子基板350、付勢部材371,372,373、ステッピングモータ500の機能については、実施形態1で説明した各部材と同等であるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
ピン730は、実施形態1のピン321,322,323に対応する部材であり、ピン730の位置を変更することにより撮像素子ホルダ340を押圧して撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角を変更する部材である。ピン730は、特許請求の範囲に記載した移動ピンの一形態である。本実施形態では、1本のピン730を用いて撮像素子ホルダ340を押圧するため、ピン730の位置はZ軸方向ではなくXY平面内で変更される。
【0066】
渦カム710と直線カム720は、ピン730の位置を2次元的に(XY平面内で)移動させるための部材である。渦カム710と直線カム720は、光軸OAを中心として回転可能に構成されている。渦カム710は、ピン730を半径方向に誘導し、直線カム720は、ピン730を円周方向に誘導する。
【0067】
渦カム710は円板状の部材であり、円周方向に渦状のピン誘導孔711が設けられている。ピン誘導孔711には、ピン730の後端部が係合する。ピン誘導孔711は、渦カム710を貫通せずに溝状に形成されている。溝の深さは一定である。渦カム710は、特許請求の範囲に記載した第1カム板の一形態である。
【0068】
直線カム720は円板状の部材であり、半径方向に直線状のピン誘導孔721が設けられている。ピン誘導孔721は、ピン730が貫通する貫通孔である。直線カム720は、特許請求の範囲に記載した第2カム板の一形態である。
【0069】
渦カム710と直線カム720は、ステッピングモータ500によって駆動される。ステッピングモータ500の駆動力は、ギアユニット800を介して渦カム710と直線カム720に伝達される。渦カム710と直線カム720は、異なる回転数で駆動される。具体的には、渦カム710と直線カム720との回転速度の比率が、ピン730が渦状に誘導されるように決定されている。ギアユニット800は、1つのステッピングモータ500から上記の比率を有する2つの回転数を出力するように構成されている。
【0070】
図15は、ギアユニット800の分解図である。ギアユニット800は、回転速度の比率に対応するように、ステッピングモータ500の回転力を渦カム710と直線カム720の両方に伝達する。図15に示すように、ステッピングモータ500の回転力は歯車810と遊星歯車820に伝達される。歯車810に伝達された回転力は歯車811と歯車812を介して直線カム駆動ギア420に伝達される。一方、遊星歯車820に伝達された回転力は歯車830に出力され、歯車831と歯車832を介して渦カム駆動ギア410に伝達される。なお、渦カム710と直線カム720の回転数の比率は、後述する方法で設定される。そして所望の回転数の比率に変更するギア構成は公知の構成を適用可能であり、図15に示した構成に限定されない。また、ステッピングモータ500を複数設けてもよい。
【0071】
次に、撮像素子ホルダ340を揺動させる構成について説明する。図16は、筐体200及び撮像素子アセンブリ300のYZ断面をX軸方向から見た断面図である。撮像素子ホルダ340には凸球面352が形成され、筐体200には凹球面201が形成されている。凸球面352と凹球面201の球中心は重なっており、光軸OA上にある。凸球面352と凹球面201の半径は同等に構成されており、凸球面352と凹球面201は摺動可能に当接している。
【0072】
撮像素子ホルダ340には、撮像素子351の中央(光軸OAとの交点)からの距離に応じた傾斜が設けられている。具体的には、撮像素子ホルダ340には、傾斜面341が設けられている。傾斜面341は、光軸OAから離れるにしたがってZ軸の座標が小さくなるように構成されている。この傾斜は、すべての半径方向に共通である。傾斜面341には、ピン730の半球状の前端部が当接する。
【0073】
ピン730は、渦カム710と直線カム720の両方で誘導される。渦カム710と直線カム720が所定の回転比で回転することで、ピン730は撮像素子ホルダ340を渦状の軌跡で押圧する。これにより、撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角が変更される。この動きを図17図18を用いて説明する。図17は、ピン730の動きと撮像素子ホルダ340の動きを説明する図である。ピン730は初期状態で渦カム710の最も外周の端部に存在しているとする。この状態から渦カム710が回転すると、図17に示すようにピン730は渦カム710の中心方向に移動(shift)する。ピン730の前端部は撮像素子ホルダ340の傾斜面341に当接しているため、図中の矢印で示すように撮像素子ホルダ340のチルト(tilt)角度が次第に大きくなる。
【0074】
図18は、光軸の-側から見た渦カム710、直線カム720、ピン730の動きを説明する図である。本実施形態では、ピン730はアルキメデスの渦状に移動する。まず、直線カム駆動ギア420からの回転力を受けて直線カム720は時計回り(図中に1で示す方向)に回転する。一方、渦カム駆動ギア410からの回転力を受けて渦カム710も時計回りに回転する。渦カム710と直線カム720のギア比を1.5:1とする。この場合、渦カム710は直線カム720よりも回転速度が速いため、ピン730は中心方向(図中に2で示す方向)へも移動する。つまり、ピン730はアルキメデスの渦状に移動する。この場合、直線カム720が7回転する間にピン730は渦カム710のピン誘導孔711の始点から終点まで移動することになる。つまり、ピン730は、7回巻きの渦状の軌跡を描く。この軌跡は、製品のサイズ、調整量等に応じてカムの形状とギア比を変えることにより設計することができる。
【0075】
次に、このようにピン730を移動させる渦カム710と直線カム720の設計方法について具体的に説明する。以下、ピン730がアルキメデスの渦状に移動する場合における法線ベクトルの軌跡について計算する。図19は、ピン730と傾斜面341とが当接する箇所の断面模式図である。初期位置におけるピン730の先端と傾斜面341との接点をA、半径Rの球形状を有するピンの先端部の中心をBとする。また、ピン730が光軸方向にμθだけ移動した場合のAとBの移動後の点をそれぞれA’、B’とする。このとき、角AOC即ち初期位置における斜面角をω、チルト角をφ、角COB’がなす角をλとする。なお、θはピン730がアルキメデスの渦状に回転した時の位相、即ち直線カム720の回転角を表す。
【0076】
まず、三角形OB’O’に着目する。OO’とO’B’は垂直であり、かつ角OB’O’は錯角であるλと同じになる。従って、λは下記式(13)で与えられる。
【数12】
【0077】
また、三平方の定理から、lは下記式(14)で与えられる。
【数13】
【0078】
次に、円と接線の特性から、OA’とA’B’が直角であることは、φとωがいかなる角度でも成り立つ。従って、三角形A’OB’に着目すると、角A’OB’は下記式(15)で与えられる。
【数14】
【0079】
(式13)、(式14)、(式15)から、φは下記式(16)で与えられる。
【数15】
【0080】
式(16)は、φがθを変数とする関数で表されることを示しており、これはチルト角がピン730の位相で一意に決まることを表している。以降、θの関数であることから便宜的にφ(θ)と表記する。これから、法線ベクトルのノルムを1としたとき、即ち単位法線ベクトルについて、XY平面上に投影されるベクトルの軌跡は極座標形式で下記式(18)のように表される。
【数16】
【0081】
この軌跡が、従来技術のワッシャで調整される範囲をカバーできるような係数を決定する。本実施形態では、図8に示す三角形ABCの頂点が半径Rの円周上にある場合について係数を決定する。三角形ABCの1辺の長さを2aとしたから、aとRの関係は下記式(18)で与えられる。
【数17】
【0082】
従って、式(1)、(3)、(5)より、法線ベクトルをXY平面上にプロットする式は下記式(19)で与えられる。
【数18】
【0083】
従って、単位法線ベクトルは下記式(20)で与えられる。
【数19】
【0084】
式(20)は、渦カム710の始点半径Rとワッシャ厚を変数とする式であるため、製品サイズとチルトの調整幅で係数が決まる。本実施形態では、Rが30、調整幅が±0.1とした場合を計算する。その結果、各係数は以下のように設定できる。
=2mm
=30mm
d=1.85mm
μ=4.9×10-3
ω=0.2865°
【0085】
図20は、従来技術で調整するチルト範囲(白丸印)と、本実施形態でチルト調整する範囲(渦巻線)を示す図である。上記の係数を用いた場合、単位法線ベクトルは図20に示すような渦を描き、ワッシャによる調整範囲を概ねカバーしていることがわかる。本実施形態に係る揺動生成機構を用いた傾角調整方法は、実施形態1で説明した方法と同様である。なお、図20で表される渦は関数式r=sin(φ(θ))で表すことができる。この式で、rは極座標で表した投影ベクトルの長さであり、φ(θ)は直線カム720の回転角θで表される関数である。尚、φ(θ)の範囲は図19より微小な角度であることが自明であるから、rは単調関数であると言える。
【0086】
上記の実施形態では、渦カム710と直線カム720とを組み合わせてピン730を螺旋状に誘導した。しかし、図20に示すような投影ベクトルが得られるように1つのピン730を螺旋状に誘導することができるカムであれば、その組み合わせと形状は限定されない。
【0087】
なお、本実施形態においても、光学ユニット2は、揺動生成機構をプログラム制御する揺動生成機構制御プログラムを備えていてもよい。揺動生成機構制御プログラムは、ステッピングモータ500を駆動制御する駆動制御サブプログラムと、撮像素子ホルダ340の筐体200に対する傾角の程度を検出する検出部(図示せず)を制御する検出制御サブプログラムを含んでもよい。これらのサブプログラムの機能は実施形態1で説明した機能と同等である。このような駆動制御サブプログラムと検出制御サブプログラムを含む揺動生成機構制御プログラムを用いることにより、プログラム制御で撮像素子ホルダ340の傾角を調整することができる。
【0088】
以上の構成によれば、撮像素子ホルダ340の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、撮像素子ホルダ340を機械的に揺動させることができる。さらに、揺動生成機構と検出部(画像判定装置)を組み合わせることにより、撮像素子ホルダ340の傾角をプログラム制御により調整することができる。
【0089】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0090】
本実施形態は、揺動生成機構を、カメラ等の撮像装置を用いてチルト撮影を行うためのあおり機構に適用する一例である。あおり機構とは、レンズ本体の光軸と撮像素子との角度をユーザが意図的に直角から傾ける機構である。あおり機構は、ジオラマ風の撮影を行う場合、又は建築写真等の高さがある対象物の歪みを補正する場合等に用いられる。本実施形態は、実施形態1の構成をあおり機構に適用したものである。
【0091】
図21は、あおり機構を備えるレンズユニット3の分解斜視図である。図22は、レンズユニット3のYZ断面図である。レンズ本体100Aは凸球面152を有するレンズ保持枠(第1部材)150に取り付けられている。レンズ本体100Aは、図示しない撮像素子に光を結像させるためのレンズ群である。凸球面152は、保持枠受け160の凹球面161と摺動可能に当接している。筐体(第2部材)200Aにも凸球面201Aが設けられており、レンズ保持枠150の凹球面151と摺動可能に当接する。これにより、レンズ保持枠150はXY方向の位置は勿論のこと、Z軸方向の位置決めの役割を果たす。レンズ保持枠150の3箇所にはピン321A,322A,323Aと接する面が設けられており、ピン321A,322A,323Aがこの面を押すことでレンズ本体100Aは凸球面152の球中心を軸としてチルトする。ピン321A,322A,323Aにはコマ324A,325A,326Aが組付けられている。コマ324A,325A,326Aはカム筒330Aに設けられたコマ誘導孔PA,QA,RAの形状に従って光軸方向の位置が変化する。これに合わせて、ピン321A,322A,323Aの光軸方向の位置が変化する。カム筒330Aは操作リング380と連結されており、操作リング380をユーザが回転させることでレンズ本体100Aの法線が渦形状を描きながらチルトする。本実施形態では、カム筒330Aはユーザが操作リング380で回転させるため、ステッピングモータ等の駆動部は設けられていない。なお、あおり機構の場合はチルト角が実施形態1の場合よりも大きいため、カム筒330Aのコマ誘導孔PA,QA,RAの湾曲も大きい。このように、コマ誘導孔の形状と湾曲の程度を変更することにより、チルト角の大きさと調整範囲を変更することができる。以上の実施形態によれば、あおり機構を機械的に実現させることができ、ユーザはあおり角度を機械的に変更して適切な角度を探索することができる。
【0092】
〔まとめ〕
以上に説明した実施形態は以下のように記載することができる。
(態様1)
凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材と、前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材と、前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更する少なくとも1つの傾角変更部材と、前記傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材と、を備え、前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている、揺動生成機構。
【0093】
このような構成により、第1部材の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、第1部材を機械的に揺動させることができる。
【0094】
(態様2)
前記傾角変更部材として、3つの移動ピンを備え、前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円筒状のカム筒を備え、前記カム筒の円筒面に、前記3つの移動ピンをそれぞれ前記所定の軸方向に誘導する3つの誘導孔が設けられている、態様1に記載の揺動生成機構。
【0095】
このような構成により、第1部材を機械的に揺動させることができる。
【0096】
(態様3)
少なくとも1つの駆動モータと、前記駆動モータの回転力を前記カム筒に伝達するギア機構を更に備える、態様2に記載の揺動生成機構。
【0097】
このような構成により、第1部材を駆動モータによって揺動させることができる。
【0098】
(態様4)
前記傾角変更部材として、1つの移動ピンを備え、前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円板状の第1カム板を備え、前記第1カム板には、前記1つの移動ピンを誘導する、円周方向に渦状の1つの誘導孔が設けられており、前記第1部材の前記移動ピンと当接する面に、前記平面と前記所定の軸との交点からの距離に応じた傾斜が設けられている、態様1に記載の揺動生成機構。
【0099】
このような構成により、第1部材を機械的に揺動させることができる。
【0100】
(態様5)
前記回転部材として、前記所定の軸を中心に回転可能な円板状の第2カム板を備え、前記第2カム板には、前記1つの移動ピンを誘導する、半径方向に直線状の1つの誘導孔が設けられており、前記第1カム板と前記第2カム板との回転速度の比率が、前記移動ピンが渦状に誘導されるように決定されている、態様4に記載の揺動生成機構。
【0101】
このような構成により、第1部材を機械的に揺動させることができる。
【0102】
(態様6)
少なくとも1つの駆動モータと、前記回転速度の比率に対応するように、前記駆動モータの回転力を前記第1カム板と前記第2カム板の両方に伝達するギア機構を更に備える、態様5に記載の揺動生成機構。
【0103】
このような構成により、第1部材を駆動モータによって揺動させることができる。
【0104】
(態様7)
前記平面は初期位置の撮像素子を含む平面であり、前記第1部材は、前記撮像素子を保持する撮像素子保持部材、又は前記撮像素子に光を結像させるレンズ本体を保持するレンズ保持枠であり、前記第1部材と前記第2部材の凸球面と凹球面の中心点は、前記撮像素子の中央を通りかつ当該撮像素子の撮像面に垂直な線分上に存在する、態様1から6のいずれか1つに記載の揺動生成機構。
【0105】
このような構成により、撮像素子の光軸に対する傾角を連続的に変化させるように、撮像素子を機械的に揺動させることができる。
【0106】
(態様8)
前記単調関数は、前記投影ベクトルの長さをr、角度をθとしたときに、r=aθ(aは定数)、r=aθ0.5(aは定数)又はr=sin(φ(θ))のうちのいずれかである、態様1から7のいずれか1つに記載の揺動生成機構。
【0107】
このような構成により、第1部材を歳差運動的に揺動させることができる。
【0108】
(態様9)
凸球面状又は凹球面状の第1摺動面を備える第1部材を、前記第1摺動面に当接する、前記第1摺動面と相補的な形状を有する凹球面状又は凸球面状の第2摺動面を備える第2部材に対して揺動させる方法であって、少なくとも1つの傾角変更部材と係合し、回転することによって前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更する少なくとも1つの回転部材を回転させるステップと、前記傾角変更部材の前記第1部材に対する位置を変更することにより、当該第1部材の前記第2部材に対する傾角を変更するステップと、を含み、前記第1部材の法線ベクトルを所定の軸に垂直な平面に投影した場合に、極座標で表した投影ベクトルの長さが角度の単調関数で表されるように、前記回転部材と前記傾角変更部材とが組み合わされている、揺動生成方法。
【0109】
このような構成により、第1部材の法線ベクトルの方向と角度を連続的に変化させるように、第1部材を機械的に揺動させることができる。
【0110】
(態様10)
態様1に記載された前記回転部材を回転させる駆動部を制御する駆動制御サブプログラムと、態様1に記載された前記第1部材の前記第2部材に対する傾角の程度を検出する検出部を制御する検出制御サブプログラムと、を含む揺動生成機構制御プログラム。
【0111】
このような構成により、第1部材をプログラム制御によって揺動させることができる。
【0112】
(態様11)
態様10に記載の揺動生成機構制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1,2…光学ユニット
3…レンズユニット
100,100A…レンズ本体
150…レンズ保持枠(第1部材)
160…保持枠受け
200,200A…筐体(第2部材)
201…第2摺動面(凹球面)
300…撮像素子アセンブリ
310…ピンブロック
321,321A,322,322A,323,323A,730…ピン(傾角変更部材)
321a,322a,323a…ピン収容部
324,325,326…コマ
330…カム筒(回転部材)
340…撮像素子ホルダ(第1部材)
341…傾斜面
350…撮像素子基板
351…撮像素子
352…第1摺動面(凸球面)
361…内歯ギア
362,363,364…連結ギア
365…ステッピングモータギア
371,372,373…付勢部材
400…ギアホルダ
410…渦カム駆動ギア
420…直線カム駆動ギア
500…ステッピングモータ
600…カバー
710…渦カム(第1カム板)
711…ピン誘導孔
720…直線カム(第2カム板)
800…ギアユニット
810,811,812,830,831,832…歯車
820…遊星歯車
P、Q、R…コマ誘導孔
図1
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