(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008208
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】動作補助作業着
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240112BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240112BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D13/12 136
A61H1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109890
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】593168798
【氏名又は名称】株式会社Asahicho
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】尹 智樂
(72)【発明者】
【氏名】児玉 賢士
(72)【発明者】
【氏名】石岡 利文
(72)【発明者】
【氏名】神田 千秋
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4C046
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA02
3B011AB01
3B011AC17
3B211AA01
3B211AA02
3B211AB01
3B211AC17
4C046AA35
4C046AA49
4C046BB01
4C046CC01
4C046DD06
4C046DD36
4C046DD40
4C046FF12
(57)【要約】
【課題】 補助開始するタイミングを調整可能とし、補助強度変化のタイミングを任意に調整できるようにしつつ、補助を必要としないときには予張力を受けず拘束感が低く、補助を必要としているときには十分に補助できると共に動き易くかつ疲れ難い動作補助作業着を提供する。
【解決手段】 動作補助作業着1は、左腕及び右腕夫々の腕支持部11を支えて吊り上げ可能に繋ぎ、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体10aである腕補助帯部10と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部31に繋がり、腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体30aである腰背脚補助帯部30とを有する補助帯部が備えられており、自然長で伸びずに緊張した第一弾性布地51aと、第二弾性布地51bと、第三弾性布地51cとを有している多段階弾性布地複数層50が、設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋ぎ、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がり、腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部とを有する補助帯部が備えられた動作補助作業着であって、
自然長で伸びずに緊張した第一弾性布地と、自然長で弛んだ第二弾性布地と、自然長で弛んだ第三弾性布地とを有している多段階弾性布地複数層が、設けられており、
順次、前記第一弾性布地のみ弾性的に伸びる段階と、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地が共に弾性的に伸びる段階と、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地とが共に弾性的に伸びる段階とを有する各段階となるように、多段階弾性布地複数層が構成されていることを特徴とする動作補助作業着。
【請求項2】
前記多段階弾性布地複数層が、背側と、左膝側及び/又は右膝側と、左大腿側及び/又は右大腿側と、左腕側及び/又は右腕側との少なくとも何れかに、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項3】
前記多段階弾性布地複数層が、前記背・膝・大腿に対し前屈を大きくするにつれて、及び/又は前記左腕と前記右腕とに対し曲げ伸ばしを大きくするにつれて、前記各段階となるように、配置されていることを特徴とする請求項2に記載の動作補助作業着。
【請求項4】
前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との各上下端の何れか一端同士が一緒に繋げられ、
前記第二弾性布地の他端が、第二弾性布地用バックルに繋げられ、
前記第三弾性布地の他端が、第三弾性布地用バックルに繋げられ、
非伸縮性の連結ベルトが、その一端部を前記動作補助作業着の後ろ身頃に繋げられて固定され、前記第二弾性布地用バックルを介して手繰り寄せ可能に及び手繰り戻し可能に、その他端部を前記第三弾性布地の他端と共に前記第三弾性布地用バックルに繋げられ、
前記第一弾性布地の他端が、前記連結ベルトの前記一端部側に繋げられ、
前記第三弾性布地用バックルが、手繰り寄せ可能に及び手繰り戻し可能に、多段階弾性調整ベルトに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項5】
前記多段階弾性調整ベルトが、一端部位で、前記連結ベルトの前記一端部に繋げられて固定されており、
前記第二弾性布地用バックルが、上側で前記第二弾性布地の他端を第二弾性布地用バックルに繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であり、
前記第三弾性布地用バックルが、上側で前記連結ベルトの他端部と前記第三弾性布地の他端とを共に繋げて固定し、中側で前記連結ベルトを反転させ、下側で反転した前記連結ベルトを緊締させる日字型形状であることを特徴とする請求項4に記載の動作補助作業着。
【請求項6】
前記多段階弾性調整ベルトが、一端部位で、前記連結ベルトの前記一端部に繋げられて固定されており、他端部に前記動作補助作業着の後ろ身頃へ着脱可能な面ファスナを設けており、
前記第二弾性布地用バックルが、上側で前記第二弾性布地の他端を第二弾性布地用バックルに繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であり、
前記第三弾性布地用バックルが、上側で前記連結ベルトの他端部と前記第三弾性布地の他端とを共に繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であることを特徴とする請求項4に記載の動作補助作業着。
【請求項7】
前記多段階弾性調整ベルトが、前記第三弾性布地用バックルへ係止できるベルト長調製機構バックルを有していることを特徴とする請求項4に記載の動作補助作業着。
【請求項8】
前記多段階弾性調整ベルトが、前記連結ベルトの前記一端部側で、前記多段階弾性調整ベルトを手繰り戻し可能に、手繰り寄せ補助ベルトに接続していることを特徴とする請求項4に記載の動作補助作業着。
【請求項9】
前記第二弾性布地用バックルが、前記連結ベルトごと前記第一弾性布地を手繰り寄せできる口径を有していることを特徴とする請求項4~8の何れかに記載の動作補助作業着。
【請求項10】
前記第二弾性布地用バックルと前記第三弾性布地用バックルとが、背中の形状に合わせ、又は脚の形状に合わせて、湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項11】
第二弾性布地用バックル及び/又は第三弾性布地用バックルが、複数であることを特徴とする請求項4に記載の動作補助作業着。
【請求項12】
前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との各上下端の何れか一端同士が、後ろ身頃の襟首部、袖肩口部、又は大腿付け根部に、繋がれていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項13】
前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との少なくとも何れかが、経編生地を有していることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項14】
前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地とが、この順で、人体側から順次重なっていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項15】
前記補助帯部が、前記腕補助帯部と前記腰背脚補助帯部を、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されているものであることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両腕や両脚を左右同様に又は別々に動作しつつ、前屈みや中腰で又は腰を下ろしてから人荷を胸や腹の前に持ち上げたり、目前や頭上で腕を上げて長期間にわたって作業し続けたりする際に使用されるもので、必要なときに必要なだけ補助する動作補助作業着に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送時に前屈みや中腰で又は腰を下ろして屈んでから荷物を持ち上げたり腰を捻ったりして荷物を移動させたり取り扱ったりする流通現場や、前屈みや中腰又は背筋を伸ばした同じ姿勢又は背筋の曲げ伸ばしを繰り返しながら前で腕を上げてベルトコンベアー上に次々と流れてくる製品部品から製品を組み立てる製造現場や、腰を下ろしたり腕を上げたりして苗付け・収穫をする農業現場や、介護・治療すべき患者を移動させる介護・医療現場のように重労働を強いられる作業現場での労働者は、腕、肩、腰背、又は脚とりわけ腕や腰背や脚の肉体的負担が大きく、短時間で疲労がたまり易い。
【0003】
そのような肉体的負担を軽減するため、腰背、脚の筋肉の動作を補助して作業負担を軽減しつつ作業効率を向上させる補助具が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1に、装着時において、少なくとも右肩部から背中、左腰部、左臀部、及び左大腿部を通って左膝部に至るように設けられる伸張性を有する第1ベルトと、装着時において、少なくとも左肩部から背中、右腰部、右臀部、及び右大腿部を通って右膝部に至るように設けられる伸張性を有する第2ベルトと、を備える腰部負担軽減具が、開示されている。
【0005】
また、特許文献2に、左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋ぎ、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がり、腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部とが、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されている動作補助作業着が開示されている。
【0006】
これらの腰部負担軽減具や動作補助作業着は、ゴムベルトや伸縮布を用いて動作を補助して腰などへの負担を軽減するというものである。装着者は,より強い補助力を得たいときはあらかじめゴムベルトや伸縮布を引っ張り、予張力を与えてさらに伸ばしたときの反力をより強く得ようとする。このとき、何もしていない起立姿勢時にすでに予張力を受けるため、拘束感が高く、動きにくく、疲れやすいというパッシブ式共通の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-153928号公報
【特許文献2】特開2020-059938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、補助開始するタイミングを調整可能とし、補助強度変化のタイミングを任意に調整できるようにしつつ、補助を必要としないときには予張力を受けず拘束感が低く、補助を必要としているときには十分に補助できると共に動き易くかつ疲れ難い動作補助作業着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた動作補助作業着は、左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋ぎ、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がり、腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部とを有する補助帯部が備えられた動作補助作業着であって、
自然長で伸びずに緊張した第一弾性布地と、自然長で弛んだ第二弾性布地と、自然長で弛んだ第三弾性布地とを有している多段階弾性布地複数層が、設けられており、
順次、前記第一弾性布地のみ弾性的に伸びる段階と、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地が共に弾性的に伸びる段階と、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地とが共に弾性的に伸びる段階とを有する各段階となるように、多段階弾性布地複数層が構成されていることを特徴とする。
【0010】
この動作補助作業着は、例えば、前記多段階弾性布地複数層が、背側と、左膝側及び/又は右膝側と、左大腿側及び/又は右大腿側と、左腕側及び/又は右腕側との少なくとも何れかに、設けられているというものである。
【0011】
この動作補助作業着は、例えば、前記多段階弾性布地複数層が、前記背・膝・大腿に対し前屈を大きくするにつれて、及び/又は前記左腕と前記右腕とに対し曲げ伸ばしを大きくするにつれて、前記各段階となるように、配置されているものであってもよい。
【0012】
この動作補助作業着は、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との各上下端の何れか一端同士が一緒に繋げられ、前記第二弾性布地の他端が、第二弾性布地用バックルに繋げられ、前記第三弾性布地の他端が、第三弾性布地用バックルに繋げられ、非伸縮性の連結ベルトが、その一端部を前記動作補助作業着の後ろ身頃に繋げられて固定され、前記第二弾性布地用バックルを介して手繰り寄せ可能に及び手繰り戻し可能に、その他端部を前記第三弾性布地の他端と共に前記第三弾性布地用バックルに繋げられ、前記第一弾性布地の他端が、前記連結ベルトの前記一端部側に繋げられ、前記第三弾性布地用バックルが、手繰り寄せ可能に及び手繰り戻し可能に、多段階弾性調整ベルトに接続されているというものであることが好ましい。
【0013】
この動作補助作業着は、例えば、前記多段階弾性調整ベルトが、一端部位で、前記連結ベルトの前記一端部に繋げられて固定されており、前記第二弾性布地用バックルが、上側で前記第二弾性布地の他端を第二弾性布地用バックルに繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であり、前記第三弾性布地用バックルが、上側で前記連結ベルトの他端部と前記第三弾性布地の他端とを共に繋げて固定し、中側で前記連結ベルトを反転させ、下側で反転した前記連結ベルトを緊締させる日字型形状であるというものであってもよい。
【0014】
この動作補助作業着は、前記多段階弾性調整ベルトが、一端部位で、前記連結ベルトの前記一端部に繋げられて固定されており、他端部に前記動作補助作業着の後ろ身頃へ着脱可能な面ファスナを設けており、前記第二弾性布地用バックルが、上側で前記第二弾性布地の他端を第二弾性布地用バックルに繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であり、前記第三弾性布地用バックルが、上側で前記連結ベルトの他端部と前記第三弾性布地の他端とを共に繋げて固定し、下側で前記連結ベルトを反転させる口字型形状であるというものであってもよい。
【0015】
この動作補助作業着は、前記多段階弾性調整ベルトが、前記第三弾性布地用バックルへ係止できるベルト長調製機構バックルを有しているというものであってもよい。
【0016】
この動作補助作業着は、前記多段階弾性調整ベルトが、前記連結ベルトの前記一端部側で、前記多段階弾性調整ベルトを手繰り戻し可能に、手繰り寄せ補助ベルトに接続しているというものであってもよい。
【0017】
この動作補助作業着は、好ましくは、前記多段階弾性調整ベルトが、前記連結ベルトの前記一端部側で、前記多段階弾性調整ベルトを手繰り戻し可能に、手繰り寄せ補助ベルトに接続しているというものである。
【0018】
この動作補助作業着は、前記第二弾性布地用バックルと前記第三弾性布地用バックルとが、背中の形状に合わせ湾曲していることが好ましい。
【0019】
この動作補助作業着は、第二弾性布地用バックル及び/又は第三弾性布地用バックルが、複数であるというものであってもよい。
【0020】
この動作補助作業着は、前記第二弾性布地用バックルが、前記連結ベルトごと前記第一弾性布地を手繰り寄せできる口径を有しているというものであってもよい。
【0021】
この動作補助作業着は、前記第二弾性布地用バックルと前記第三弾性布地用バックルとが、背中の形状に合わせ、又は脚の形状に合わせて、湾曲しているものであってもよい。
【0022】
この動作補助作業着は、第二弾性布地用バックル及び/又は第三弾性布地用バックルが、複数であるというものであってもよい。
【0023】
この動作補助作業着は、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との各上下端の何れか一端同士、後ろ身頃の襟首部、袖肩口部、又は大腿付け根部に、繋がれていることが好ましい。
【0024】
この動作補助作業着は、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地との少なくとも何れかが、経編生地を有しているものであってもよい。
【0025】
この動作補助作業着は、前記第一弾性布地と前記第二弾性布地と前記第三弾性布地とが、この順で、背側から順次重なっているというものであることが好ましい。
【0026】
この動作補助作業着は、前記補助帯部が、前記腕補助帯部と前記腰背脚補助帯部を、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されているものであると一層好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の動作補助作業着によれば、補助すべき背や腕を曲げたり伸ばしたりするほどより強く十分に補助できる。また、補助を必要としないときには予張力を受けず拘束感が低いために動き易く、補助を必要としているときには十分に補助できると共に動き易くかつ疲れ難くすることができる。この動作補助作業着は、補助を開始するタイミングを簡便かつ簡易に調整可能とし、補助強度変化のタイミングを補助すべき動作に応じ任意に調整できる。
【0028】
即ち、この動作補助作業着によれば、多段階弾性布地複数層、例えば3層の弾性布地の一端を縫い合わせ等によって固定し、他端を非伸縮性の連結ベルトで連結し、各層で引っ張られ始めるタイミングを自由に調整できる機構を取るような多段階弾性布地複数層が、所望の補助力の強さに応じて、全体のばね定数を変更することができる。これにより、拘束感の原因である予張力を与えずとも、必要に応じてばね定数を高めて強い反力を得られることができる。
【0029】
この動作補助作業着は、多段階弾性布地複数層により第一弾性布地が伸びた途中で第二弾性布地が伸びまた第二弾性布地が伸びた途中で第三弾性布地が伸びるので段階的な弾性付与が可能となる。しかも連結ベルトを備えていると、体形、筋量、体重、身長、男女差などの個体差があっても、個体毎に適切に付与した欲しい所望の時期、屈伸状態に応じ、順次、第一~第三弾性布地へ段階的に弾性を付与することができ、予張力による過剰で不要な拘束がないので、極めて使い勝手がよく、拘束による過剰な筋緊張がない。
【0030】
しかも、この動作補助作業着は、多段階弾性布地複数層を、背側や左腕側・右腕側や左大腿側・右大腿側に設置することにより、電動器や重い金属製の補助器を使用しなくとも、簡易な構造で軽量な布帛を用いてなる多段階弾性布地複数層を備えただけで、十分な補助動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明を適用する動作補助作業着の一態様の前後ろを示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用する動作補助作業着の多段階弾性布地複数層の概要を示す模式概要図である。
【
図3】本発明を適用する動作補助作業着の多段階弾性布地複数層の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明を適用する動作補助作業着の多段階弾性布地複数層の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明を適用する動作補助作業着の多段階弾性布地複数層に用いられる第二弾性布地用バックルと第三弾性布地用バックルとの別な一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明を適用する動作補助作業着の一態様の使用状態を示す概要図と、その状態及び反力の相関関係を模式的に示すグラフである。
【
図7】本発明を適用する動作補助作業着の別な一態様(最弱設定)の使用状態を示す概要図と、その状態及び反力の相関関係を模式的に示すグラフである。
【
図8】本発明を適用する動作補助作業着の別な一態様(中間設定)の使用状態を示す概要図と、その状態及び反力の相関関係を模式的に示すグラフである。
【
図9】本発明を適用する動作補助作業着の別な一態様(最強設定;予張力なし)の使用状態を示す概要図と、その状態及び反力の相関関係を模式的に示すグラフである。
【
図10】本発明を適用する動作補助作業着の別な一態様(最強設定;予張力あり)の使用状態を示す概要図と、その状態及び反力の相関関係を模式的に示すグラフである。
【
図11】本発明を適用する動作補助作業着における反力と伸長長さとの伸縮-収縮ヒステリシスを示すグラフである。
【
図12】本発明を適用する動作補助作業着の別な一態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0033】
本発明の動作補助作業着1の一態様は、
図1に示すように、作業者が前屈みや中腰や蹲踞のような姿勢又は背筋を伸ばした姿勢にて前で腕を上げ又はそのままで作業したり、屈み、腰を下ろし又は腰を捻った後に立ち上がる動作を繰り返したりして、荷物や患者を移動したり商品や製品や作物の生産・加工のような重労働をしたりする際に、装着するものである。
【0034】
腕補助帯部10は、両腕夫々の腕支持部11を支えて吊り上げ可能に繋ぎ肩越しに背にかけて夫々伸びて、一部が弾性体10aとなっている。腕補助帯部10は、長さ調節可能なアジャスタを有することにより長さを調節してもよい(不図示)。腕補助帯部10の長さは、腰背脚補助帯部30が有する長さ調節可能なアジャスタ36により調節してもよい。
図1では、腕補助帯部10は、袖17のおもて面に露出した状態で図示してあるが、袖17の内部に収められていてもよく、袖17のおもて面又は裏面の鞘18に滑りやすいように一部通されて、収められていてもよい。腰背脚補助帯部30は、両足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部31に繋がり、腰・臀を経て背にかけて夫々伸びて、一部が弾性体30aとなっている。
【0035】
動作補助作業着1には、背、腕、及び/又は大腿を補助するように多段階弾性布地複数層50が設けられる。多段階弾性布地複数層50は、
図2(a)の模式概略図に示すように、自然長で伸びずに緊張した第一弾性布地51aと自然長で弛んだ第二弾性布地51bと、自然長で弛んだ第三弾性布地51cとを有している。また、
図2(b)に示すように、背中と共に、又は背中に代えて、多段階弾性布地複数層50として、腕の内側の上腕二頭筋側に第一弾性布地51a’・第二弾性布地51b’・第三弾性布地51c’からなる多段階弾性布地複数層50’を設けてもよく、及び/又は腕の外側の上腕三頭筋側に第一弾性布地51a”・第二弾性布地51b”・第三弾性布地51c”からなる多段階弾性布地複数層50”を設けてもよい。さらに図示はしないが、多段階弾性布地複数層50は、太腿おもて側の大腿四頭筋側に設けてもよく、及び/又は太腿うら側の大腿二頭筋(ハムストリングス)側に設けてもよい。
【0036】
一例として、
図1に示すように、多段階弾性布地複数層50は腰背脚補助帯部30の一部を覆って背にかけて設けられている。具体的には、多段階弾性布地複数層50は、自然長で伸びずに緊張した第一弾性布地51aと自然長で弛んだ第二弾性布地51bと、自然長で弛んだ第三弾性布地51cとを有している(
図3(a)参照)。
【0037】
第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとの上端が、後ろ身頃48の首後ろ付近で一体に繋げられて縫製されている。
【0038】
第一弾性布地51aの下端が、連結ベルト54の途中に縫製されている。
【0039】
連結ベルト54の下端には、段階弾性調整ベルト55の基端が縫製されて一体化している。連結ベルト54の下端は、段階弾性調整ベルト55の基端と共に、後ろ身頃48の下端に繋がる腰当て部47に縫製されている。
【0040】
第二弾性布地51bの下端は、折り返されて向きを反転させるために、口字型形状の第二弾性布地用バックル52の上軸に巻き込むように通されて、縫製されて固定されている。連結ベルト54は、中程で折り返されて、口字型形状の二弾性布地用バックル52の下軸に通されている。連結ベルト54は、他端が、第三弾性布地51cの下端近傍に縫製されている。
【0041】
第三弾性布地51cの下端は、折り返されて向きを反転させるために、日字型形状の第三弾性布地用バックル53の上軸に巻き込むように通されて、縫製されて固定されている。
【0042】
段階弾性調整ベルト55は、中程で折り返されて、日字型形状の第三弾性布地用バックル53の中軸に内側で巻き込むように通され、その他端側でさらに第三弾性布地用バックル53の下軸に外側で巻き込むように通されている。これにより、段階弾性調整ベルト55は、他端側を手繰り寄せると第三弾性布地用バックル53を引き寄せ、不必要に緩まないように、なっている。逆に、段階弾性調整ベルト55は、基端側へ手繰り戻すと第三弾性布地用バックル53を引き離し、緩めることができるようになっている。これにより、第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとの動作開始位置を調整して動作開始長を制御することができる。連結ベルト54の長さは、所期の所定長のままは、変える必要はない。
【0043】
即ち、動作開始位置の調整は、
図6を併せて参照しながら説明すると、例えば段階弾性調整ベルト55を引張って、連結ベルト54と縫い合わせ部位から第三弾性布地用バックル53に至るまでの段階弾性調整ベルト55の長さl
grn)を短くしていくと、
図6の長さx1~x3が短くなり、第二弾性布地51bや第三弾性布地51cの伸び始めを早くすることができる。段階弾性調整ベルト55を引張って行けば一層強くすることができる。逆に、第三弾性布地用バックル53を上向きに捻ったり、繰り寄せ補助ベルトを引張ったりすることにより、第二弾性布地51bや第三弾性布地51cの伸び始めを遅くするように調整することも可能である。
【0044】
段階弾性調整ベルト55は、他端部に前記動作補助作業着の後ろ身頃48の腰当て部47へ着脱可能な面ファスナ(不図示)を有していてもよい。
【0045】
多段階弾性布地複数層50は、上述したように、背中に設けていてもよいし、背中と共に、又は背中に代えて、腕の内側の上腕二頭筋側に設けてもよく、及び/又は腕の外側の上腕三頭筋側に設けてもよい。また、多段階弾性布地複数層50は、太腿おもて側の大腿四頭筋側に設けてもよく、及び/又は太腿うら側の大腿二頭筋(ハムストリングス)側に設けてもよい。このとき、上腕二頭筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋・大腿二頭筋の動きに応じて多段階弾性布地複数層50・50’・50”がずれてしまわないように、カバー被覆を設け、中を通すようにしてもよい。
【0046】
連結ベルト54及び第二弾性布地用バックル52と、段階弾性調整ベルト55及び第三弾性布地用バックル53とが、夫々一つずつである例を示したが、
図3(b)に示すように、連結ベルト54a・b及び第二弾性布地用バックル52a・bとが複数例えば二つずつ、また段階弾性調整ベルト55a・b及び第三弾性布地用バックル53a・bとが複数例えば二つずつであってもよい。
【0047】
段階弾性調整ベルト55は、
図3(c)に示すように、連結ベルト54の一端部側で、多段階弾性調整ベルト55を手繰り戻し可能に、分岐するように、手繰り寄せ補助ベルト56に接続しているものであってよい。繰り寄せ補助ベルト56を引っ張ることにより、段階弾性調整ベルト55の緊締を緩めることができる。
図3(d)に示すように、多段階弾性調整ベルト55a・bと繰り寄せ補助ベルト56a・bとが複数例えば二つずつであってもよい。
【0048】
多段階弾性調整ベルト55が、
図4に示すように、第三弾性布地用バックル53へ係止できるベルト長調製機構バックル57を有していてもよい。ベルト長調製機構バックル57の着脱、及びそれへのベルトの長さの調節により、多段階弾性調整ベルト55に位置を調整するものであってもよい。
【0049】
多段階弾性布地複数層50が背中に設けられ、第二弾性布地用バックル52と第三弾性布地用バックル53とがそれぞれ一つずつで平坦である場合、多段階弾性布地複数層50の動作に応じ、第二弾性布地用バックル52と第三弾性布地用バックル53と背骨に当たって痛みを感じることがある。そこで、第二弾性布地用バックル52と第三弾性布地用バックル53とが、
図5(a)及び(b)に示すように、背中の形状に合わせて湾曲していてもよい。
【0050】
多段階弾性布地複数層50は、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとが、この順で重なっていることが好ましく、背側から外側へ向け順次重なっていると、背中側から順次緊張するので未だ緊張していない弾性布地を阻害しないから、より一層このましい。
【0051】
また、多段階弾性布地複数層50が左膝側と右膝側、左大腿側と右大腿側、及び/又は左腕側と右腕側に設けられる場合、背中に用いられる場合と同様に、膝や脚、腕の形状に合わせて湾曲していてもよい。
【0052】
多段階弾性布地複数層50は、背側に配置されている例を示したが、背側と共に又は背側に代えて、左膝側と右膝側、左大腿側と右大腿側、及び/又は左腕側と右腕側に配置されていてもよい。腕の場合、腕の内側の上腕二頭筋側に設けてもよく、腕の外側の上腕三頭筋側に設けてもよい(
図2(b)参照)。その膝の場合、膝頭側に設けてもよく、ひかがみ(膝の裏)側に設けてもよい。大腿の場合、太腿おもて側の大腿四頭筋側に設けてもよく、太腿うら側の大腿二頭筋(ハムストリングス)側にも設けてもよい(不図示)。
【0053】
このような多段階弾性布地複数層50の構成により、背・膝・大腿に対し前屈を大きくするにつれて、及び/又は左腕と右腕とに対し曲げ伸ばしを大きくするにつれて、第一弾性布地51aのみ弾性的に伸びる段階と、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bが共に弾性的に伸びる段階と、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとが共に弾性的に伸びる段階とを有するように、動作するように、構成されている。
【0054】
次に、多段階弾性布地複数層50の動作について、説明する。
図1のような動作補助作業着1を用いた場合、多段階弾性布地複数層50の典型的な第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとの動作と、反力Fとの概要を、
図6に示す。同図(a)は、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとの何れも動作していない状態を示し、同図(b)~(d)は順次動作している状態を示している。
【0055】
第一弾性布地51aはばね力k1、第二弾性布地51bはばね力k2、第三弾性布地51cはばね力k3を有している。
【0056】
同図の状態(a)は、ばね力k1~k3が働いていない状態であり、そのときの反力FはF0である。
【0057】
同図の状態(b)のように、上体をやや倒し荷物(不図示)を持ち上げた場合、自然長であった第一弾性布地51aが先ず伸び、ばね力k1が働くが、第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとは自然長のままであるので、そのときの反力Fは、ばね力k1に基づきF1である。
【0058】
同図の状態(c)のように、上体をより一層倒し荷物を持ち上げた場合、第一弾性布地51aの伸びに伴い連結ベルト54に引っ張られて、自然長であった第二弾性布地51bが伸びるが、第三弾性布地51cは自然長のままであるので、そのときの反力Fは、ばね力k1及びk2に基づきF2である。
【0059】
同図の状態(d)のように、上体をより深く倒し荷物を持ち上げた場合、第一弾性布地51aの伸びに伴い連結ベルト54に引っ張られて、第二弾性布地51bと共に自然長であった第三弾性布地51cが伸びるので、そのときの反力Fは、ばね力k1、k2及びk3に基づきF3である。
【0060】
同図のグラフから明らかな通り、状態(a)から(d)へ移行するにつれ、反力Fの勾配は順次変化し、より強い反力を得ることができるようになる。
【0061】
連結ベルト54がなく単に第一弾性布地51a、第二弾性布地51b及び第三弾性布地51cが並列しているのみの態様に比べ、この動作補助作業着1は、段階弾性調整ベルト55により第二弾性布地51b及び第三弾性布地51cの動作開始長を調整することによって、反力Fの勾配を順次変化させつつ、かつ所望の補助力を所望の時期(上体の傾倒程度)に応じて調製できるので、その点について、さらに詳細に説明する。
【0062】
連結ベルトの長さを調整することにより、様々な強弱状態に調整可能であるが、便宜的に、最弱設定の状態を示す
図7、中間設定の状態を示す
図8、予張力なしの最強設定の状態を示す
図9、予張力ありの最強設定の状態を示す
図10について、順次説明する。
【0063】
最弱状態から、予張力あり/なしの最強状態の設定を決定するパラメータは以下の通りである。
(1)設定が必要な値の定義
l1:多段階弾性布地複数層50中の最も長い第一弾性布地51aの自然長
e:腰の最大屈曲時の背中表面長さの増加量
c:日常生活で腰を曲げた時の増加量
d(d0=l3―l2-h):軽い作業を行った時のさらなる追加量
Re:第一弾性布地51a・第二弾性布地51b・第三弾性布地51cを、最大に伸ばした時の増加率
(2)上記5値から誘導される定数
l3:多段階弾性布地複数層50中の最外側の第三弾性布地51cの自然長
l2:多段階弾性布地複数層50中の最短である第二弾性布地51bの自然長(最大増加量から、l2=e/(Rs×Re)により計算)
lred:連結ベルト54の長さ(折り返した全長)
l=l1-l2-h:l1とl2の長さの差(第二弾性布地51bと連結ベルト54までの距離を補正)
Rs:多段階弾性布地複数層50中の第一弾性布地51a・第二弾性布地51b・第三弾性布地51cに使用している生地を最大伸ばした時を100%としてそれ対する安全を考慮して使用する率
h:第二弾性布地51bの端と連結ベルト54までの距離
(3)変数
lgrn:段階弾性調整ベルト55の縫製した一端部から第三弾性布地用バックル53の中軸までの長さ。この段階弾性調整ベルト55の長さを変えることにより、最弱から最強までばね定数を変化させる。
【0064】
動作補助作業着1の使用者の体形、体重、身長、性別、筋骨格などに応じて、設定するものであるが、動作補助作業着1の使用者に対し設定した時の一例により、さらに具体的に説明する。
【0065】
[A(1) 最弱設定Aの設定]
この動作補助作業着1中の段階弾性調整ベルト55は、最弱設定時の状態を元に、設計される。従って、中間設定や最強設定の状態は、最弱時を設計することにより決まるものである。最弱状態では,l
grn≧l
redである。
最弱設定Aの設計及び使用状態の概要を
図7に示す。
(i)l
1の決定:使用者の背中を計測 この使用者の場合はl
1=41cm
(ii)l
2の算出:l
2=e/(R
s×R
e) この使用者の場合はl
2=11/(70%×75%)=20.95=約21cm
(iii)日常生活と軽い作業時とからcとdとを計測 c=c
0=5cm h=2.5cm d=d
0=l
3-l
2-h=3cm
(iv)l
2とdとよりl
3を決定: 最弱時l
3=l
2+d
0+h=26.5cm
(v)l=l
1-l
2-h及びl
red=c+lの導出(但し、l
grn≧l
red):l=l
1-l
2-h=41-21-2.5=17.5cm及びl
red=c+l=5+17.5=22.5cm
なお、第二弾性布地51bの自然長:l
2=x
0-l-h=l
1-l-h=(l
1+c)-(l+c)-h=x
1-l
red-h(即ち、h=2.5cmであるので、それを減ずると17.5cm)
【0066】
[A(2) 最弱設定Aの使用状態]
図7は、最弱設定Aで、第一弾性布地51aと、第二弾性布地51bと、第三弾性布地51cとの動作を模式化した図である。動作補助作業着1を装着しただけの場合、同図(a)に示すように、第一弾性布地51a(それのばね力はk
1)と、第二弾性布地51b(それのばね力はk
2)と、第三弾性布地51c(それのばね力はk
3)とが自然長である場合、多段階弾性布地複数層50全体は長さx
0となるが、ばね力k
1、k
2及びk
3のよる反力F
0はかかっていない。
【0067】
動作補助作業着1の使用によって、上体をやや倒し荷物を持ち上げて(
図6(b)参照)、多段階弾性布地複数層50が伸びると、
図7(b)に示すように、先ず第一弾性布地51aが引っ張られ多段階弾性布地複数層50全体は長さx
1となり、ばね力k
1による反力F
1がかかるが、段階弾性調整ベルト55が緩んだままであり、かつ連結ベルト54が緊張するまで、第二弾性布地51bと、第三弾性布地51cとが自然長となっており、ばね力k
2及びばね力k
3の反力はゼロのままである。
【0068】
上体をより一層倒し荷物を持ち上げて(
図6(c)参照)、多段階弾性布地複数層50がより伸びると、段階弾性調整ベルト55が緩んだまま、かつ連結ベルト54が緊張して引っ張られ多段階弾性布地複数層50全体は長さx
2となることに伴い、第一弾性布地51aと共に第二弾性布地51bが引っ張られ、ばね力k
1・k
2による反力F
2がかかるが、第三弾性布地51cが自然長となっており、ばね力k
3の反力はゼロのままである。
【0069】
上体をより深く倒し荷物を持ち上げて(
図6(d)参照)、多段階弾性布地複数層50がさらに一層伸びると、連結ベルト54が緊張したまま、多段階弾性布地複数層50全体は長さx
3となることに伴い、第一弾性布地51aや第二弾性布地51bと共に第三弾性布地51cが引っ張られ、ばね力k
1・k
2・k
3による反力F
3がかかる。
【0070】
このとき、
図7のグラフに示したように、多段階弾性布地複数層50全体の長さx
0、x
1、x
2、x
3と、反力Fの各F
0、F
1、F
2、F
3との相関関係の通り、段階的に反力Fが生じる。
【0071】
[B(1) 中間設定Bの設定]
前記の最弱設定Aよりも、早期の段階で強い反力の段階的な発生をもたらすために、段階弾性調整ベルト55を引っ張ってl
grnの長さの範囲が2l-l
red<l
grn<l
redとなるように、調整して、中間設定Bとなるように設定した。
[B(2) 中間設定Bの使用状態]
図8(a)~(d)のように、
図7(a)~(d)と同様、順次、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cが引っ張られることは同様であるが、c、dが小さくなって、x
0~x
1の距離とx
1~x
2の距離とが縮まり、第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとがより早い段階で動作するようになる。
【0072】
このとき、
図8のグラフに示したように、多段階弾性布地複数層50全体の長さx
0、x
1、x
2、x
3と、反力Fの各F
0、F
1、F
2、F
3との相関関係の通り、段階的に反力Fが生じるが、長さx
1、x
2が短くなるので、第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとがより早い段階で動作するから、同じ伸びであれば、より強く動作するようになる。
【0073】
[C(1) 最強設定(予張力なし)Cの設定]
第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとが、前記の中間設定Bのように順次動作する代わりに、全て動作しないか動作するかの択一的な設定にするために、
図9に示すように、段階弾性調整ベルト55を引っ張って、l
grn=2l-l
redとなるように、調整して、最強設定Cとなるように設定した。
【0074】
[C(2) 最強設定(予張力なし)Cの使用状態]
図7や
図8の各(a)~(d)のように、順次、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cが引っ張られるのと異なり、
図9に示すように、c、dがゼロになって、x
1、x
2が無くなり、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cが、何れも引っ張られずに動作しないか、何れも引っ張られて全て動作するかとなるので、引っ張られ始めれば、より早く強く動作するようになる。
【0075】
このとき、
図9のグラフに示したように、多段階弾性布地複数層50全体の長さx
0、x
3と、反力Fの各F
0、F
3との相関関係の通り、ばね力k1~k3が全てかかるか、かからないかの何れかしかないから、反力Fと長さとのゼロ値(即ち原点)を通る一次関数で示されるように、何れもの動作と同時に強く作動するようになる。
【0076】
[D(1) 最強設定(予張力あり)Dの設定]
前記の最強設定(予張力あり)Cと異なり、初期段階で強い反力の段階的な発生をもたらすために、
図10に示すように、段階弾性調整ベルト55をさらに引っ張って、連結ベルト54、又は必要であればさらに第一弾性布地51aを、日字型形状の第三弾性布地用バックル53の中軸に巻き込むようにl
grn<2l-l
redとなるように、調整して、最強設定(予張力あり)となるように設定した。
【0077】
[D(2) 最強設定(予張力あり)の使用状態]
図7や
図8や
図9の各(a)のように、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cが当初引っ張られずに反力Fがゼロとなっているのと異なり、
図10の(a
-Δx)に示すように、仮想x
-1位置がΔxだけマイナス側になることにより、初期状態の長さx
0で、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cともに動作し、反力FであるF
0が正の値(即ち予張力)を示している。
【0078】
ここで、
図10中、仮想x
-1位置は、初期状態の長さx
0(a:MAX)に至る前の仮想状態である。仮想x
-1位置は第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、第三弾性布地51cが何れも引っ張られずに動作しないために長さx
-1がΔxだけマイナスとなっているというものであり(仮想:a
-Δx)、一方、仮想x
-1位置とx
0位置との中間位置は第一弾性布地51a、第二弾性布地51bが何れも引っ張られずに動作しないが第三弾性布地51cが動作しているために仮想x
-1位置とx
0位置との中間での長さがΔx/2だけマイナスとなっているというものである(仮想:a
-Δx/2)。それに対し、
図10中、現実状態(a:MAX)の初期状態の長さx
0で、第一弾性布地51aが引っ張られずに動作しないが、最強設定(予張力あり)の状態(d:OVER-MAX)では第二弾性布地51b及び第三弾性布地51cが何れも引っ張られているために動作し反力Fが予張力F
0となって動作しているというものである。
【0079】
このとき、
図10のグラフに示したように、多段階弾性布地複数層50全体の長さx
0、x
3と、反力Fの各F
0、F
3との相関関係の通り、既にばね力k
1~k
2がかかるか、ばね力k
1~k
3が全てかかるかの何れかしかないから、反力Fの切片F
0を通る一次関数で示されるように、何れもの動作と同時に強く作動するようになる。
【0080】
図11は、動作確認のため、
図6~
図10に示す動作補助作業着1やそれの多段階弾性布地複数層50を用い、多段階弾性布地複数層50をモデルとして、ゴムベルトで作製した試験部材を用いて測定した結果を示すものである。
図11に、最弱設定A、中間設定B、最強設定(予張力なし)Cでの伸縮-収縮ヒステリシスを示す。最弱設定A、中間設定B、最強設定(予張力なし)Cの順にオフセットとなるl
grnの長さ,つまり段階弾性調整ベルト55の縫製した一端部から第三弾性布地用バックル53の中軸までの長さを変化させるため、段階弾性調整ベルト55を順次引っ張って調整するに従い、より短いストロークでより強い反力が得られることが示された。
【0081】
なお、動作補助作業着1は、
図1,2のように、第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、及び第三弾性布地51cからなる多段階弾性布地複数層50を有するのに加え、
図12に示すように、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とが夫々、何れも左右で互いに交差することなく、背の中央で、変形性で平面状の集束部材20によって、集束されているという構成を併せ持っていてもよい。左右の腕補助帯部10と左右の腰背脚補助帯部30とは、それらの端部が変形性で平面状の集束部材20の四隅に接続されているものであってもよい。
【0082】
この場合、変形性で平面状の集束部材20は、矩形であって、背中中央に位置するように調整されている。この変形性で平面状の集束部材20は、胸幅方向と体軸方向とよりもそれらの斜め方向に伸びる異方性の織物を有して形成されており、両腕夫々への左右の腕補助帯部10と、両脚夫々への左右の腰背脚補助帯部30とが、その四隅に接続することにより、それら4本の帯部10L・10R・30L・30Rの動きに連動して変形するようになっている。
【0083】
変形性で平面状の集束部材20は、平面状とは矩形に限らず、多角形や、円形、楕円形でも構わない。このような集束部材20は、胸幅方向と体軸方向とよりもそれらの斜め方向に伸びる異方性の織物21のみからなっていてもよく、クッション材例えばスポンジ、海綿、発泡ウレタンのような多孔質材が袋状のその織物21で覆われたパッド部材でもよい。
【0084】
この織物21は、異方性の変形性を有するが、殆ど弾性を有していないことが好ましい。例えば、この織物21は、ポリエステルやナイロンのような合成繊維製のものが挙げられる。
【0085】
変形性の集束部材20は、捻じれることなく上下に又は捻じれて斜めに変形するようにできている。変形性の集束部材20を成す織物21は、平織物の布帛である。これらの織物21は、例えば、緯糸(よこ糸)・経糸(たて糸)で繰り返し、互いに糸1本ごとに交差する織物組織又は織物である。
【0086】
その変形性の集束部材20の織物21は、平織の場合であれば、緯糸の方向が作業者の胸幅方向と略平行な方向に向き、経糸の方向が作業者の体軸方向と略平行な方向に向くように、配置されている。
【0087】
その変形性の集束部材20は、両腕夫々への左右の腕補助帯部10と、両脚夫々への左右の腰背脚補助帯部30とに、四隅近傍で、例えば縫製によって繋がっている。具体的には、その肩側である上辺側の両端近傍に左右の腕補助帯部10L・10Rの夫々の端部が縫製によって縫製部位22で繋がり、その腰側である下辺側の両端近傍に左右の腰背脚補助帯部30L・30Rの夫々の端部が縫製によって縫製部位22で繋がっている。
【0088】
その変形性の集束部材20は、作業者が前屈していない時には、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とで引っ張られていない。そのため、織物21の緯糸が作業者の体軸方向に向き、経糸の方向が作業者の体軸方向に向いたままであり、その結果、集束部材20は、変形していない。
【0089】
一方、その変形性の集束部材20は、作業者が左右に身体を捩じることなく前屈したときや、左右両腕を同様に上げたときや、左右両脚を同様に曲げた時には、左右の腕補助帯部10と左右の腰背脚補助帯部30とで同等に引っ張られる。そのため、織物21の緯糸が作業者の体軸方向に向いたまま殆ど伸びず、また経糸の方向が作業者の体軸方向に向いたまま殆ど伸びず、その結果、集束部材20は、変形しない。
【0090】
他方、その変形性の集束部材20は、作業者が左右別々に動作して、身体を左右に例えば左に捩じった時や、身体を左右に例えば左に捩じりながら前屈した時や、片腕例えば右腕のみを上げた時や、両脚を前後に例えば右脚を前に左脚を後ろにした時には、右の腕補助帯部10Rと左の腰背脚補助帯部30Lとで強く引っ張られ左の腕補助帯部10Lと右の腰背脚補助帯部30Rとで殆ど又は弱くしか引っ張られない。そのため、織物21の緯糸が右上がりに傾いて歪み、経糸が右寄りに傾いて歪み、その結果、変形性の集束部材20は、右の腕補助帯部10の縫製部位と左の腰背脚補助帯部30の縫製部位との対角線上に向いて引き伸ばされ、それに伴って右の腕補助帯部10の縫製部位と左の腰背脚補助帯部30の縫製部位との向きに対角線上に向いて歪んで縮む。このような変形のために、左右の腕補助帯部10と左右の腰背脚補助帯部30との夫々に設定した所期の張力がバランスよく適切に維持され、安定して、腕・背・腰・脚・膝を補助することとなる。
【0091】
なお、左右逆に動作した場合も対称に、同様な動きをする。
【0092】
また、腰当て部47は、少なくとも一部が弾性体である脚補助帯部37が膝取巻き部34を経て踏付け部31に接続し、腰背脚補助帯部30と共に、前屈や腕上げ等によって、引っ張られるようになっている。
【0093】
また、腰当て部47とベスト40の後ろ身頃48の裾とが、位置調整可能に面ファスナ46を介して連結されていると、装着時や装着後の位置調整を容易く行うことができる。従って、腕・腰背・脚の取るべき姿勢・補助位置・補助角度・補助強度の補助程度を、適宜、簡便かつ任意に自分で自在に調整できる。
【0094】
この動作補助作業着1は、ベスト40が背面の後ろ身頃48を兼ねているものであってもよい。
【0095】
ベスト40が、前面で線ファスナにより開閉可能な前開きの前身頃43をなしていてもよく、胸ベルトを有していてもよい。さらに、前身頃43から延び脇を経て腰当て部47に至る脇締め部49を有していてもよい。これにより、腕補助帯部10の作用を確実に腕支持部11に伝え腕を補助することができ、腰背脚補助帯部30の作用を逃がさないように確実に伝えて脚・腰・背を補助することができる。
【0096】
第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、及び第三弾性布地51cは、体軸方向に選択的に伸び得るが胸幅方向に殆ど伸びない弾性体布帛であると一層好ましい。これら弾性布地51a・51b・51cは、例えば生地の経方向又は緯方向の何れか一方向に伸縮性を持たせた1ウェイストレッチ生地、例えばサテンネットが挙げられ、具体的には、経編生地を有しているというものである。経編生地は、トリコット編機、ラッセル編機、又はミラニーズ編機を用いて製造されたトリコット、ラッセル、又はミラニーズである。とりわけ、編組織がラッセル網のもので、ポリウレタン弾性糸とポリエステルの交編使いのものでポリウレタン弾性糸が真っすぐに編まれている所謂パワーネットが好ましい。同一の素材であってもよく、ゴム弾性が異なる素材であってもよい。
【0097】
この動作補助作業着1は、装着した作業者が前屈していない状態、例えば直立状態のとき、誇張して示す
図6(a)のように、第一弾性布地51aが弛まず伸長せず丁度緊張し弾性機能が利いていない形状となり、第二弾性布地51bが弛んだまま弾性機能が利いていない形状となっている。
【0098】
ベスト40の前身頃43は、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とが引っ張られたときに、伸びないように、経糸方向と横糸方向とが体軸方向と胸幅方向とに向いた平織であってもよく、体軸方向に伸びないが胸幅方向に伸び得る織物、例えば第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、及び第三弾性布地51cに用いられる織物を、それら弾性布地51a・51b・51cの向きとは直行する糸筋方向にして配置したものであってもよい。
【0099】
ばねは、一般的に、F=kx(式中、Fはばねによる反力、kはばね定数(Spring Constant:S.C.)、xは自然長からの伸び量)で示される弾性の法則(フックの法則)中のばね定数が伸び量に応じ高くなるというものであり、反力と伸び量とが非線形の相関性を示すものである。第一弾性布地51a、第二弾性布地51b、及び第三弾性布地51c、並びには弾性体30aについてもこの式が成り立つ。
【0100】
多段階弾性布地複数層50は、外側の第三弾性布地51cが内側の第二弾性布地51bを覆いつつ重なり、第二弾性布地51bがより内側の第一弾性布地51aを覆いつつ重なっている三層にした例を好ましい一例として示したが、内外逆順にしてもよい。段階的に緊締から弛んだ四層以上、例えば四層から五層にしてもよく、その場合、同様に連結ベルト54でパラマストーナメント(ステップラダー)状に繋いでいてもよい。
【0101】
次に、これらの動作補助作業着1の態様に共通する部材、即ち両腕夫々の腕支持部11を支えて吊り上げ可能に繋ぎ肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体10aである腕補助帯部10と、両足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部31に繋がり腰を経て背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体30aである腰背脚補助帯部30とについて、説明する。
【0102】
腕支持部11は、手、手首、前腕、肘及び/又は上腕を支持する帯、手袋、及び/又はベスト40に接続された袖17に設けられていてもよい。腕支持部11は、前腕、肘、上腕を支持するものである。腕支持部11は、手首を取り巻き絞めて支持する手首支持具12と、肘よりも手先側で前腕付け根を取り巻き絞めて支持する前腕側肘支持具13と、肘よりも肩側で上腕付け根を取り巻き絞めて支持する上腕側肘支持具15とからなっている。手首支持具12、前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15は、帯で形成され、長さ調節可能な面ファスナ例えばフック状係合子を有する面とそれを係合するループ状係合子を有する面とからなる面ファスナ14で多少の遊びを有しつつ締め付けている。例えば前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15は、夫々端部が接続されて、面ファスナとなっており、手首支持具12は、端部が面ファスナとなっている。
【0103】
この動作補助作業着1は、肘の上で取り巻く上腕側肘支持具15を腕補助帯部10と連結させていると、上腕での肘の角度が約90°以上になっても連結部により上腕側肘支持具の引張りに応じて容易く上腕を容易く持ち上げることができるようになる。
【0104】
なお、
図1では、腕支持部11が、手首支持具12、前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15であり、袖17に設けられた例を示したが、袖17でそれらの少なくとも何れかを兼用するようにしてもよく、手首支持具12、前腕側肘支持具13が接続支持部(不図示)で前腕内側又は外側にて接続されていてもよい。
【0105】
また、面ファスナに代えて、又はそれと共に、帯の長さを調節できるアジャスタ、ホック及びホックハンガー、ボタン及びボタン穴、突起及び突起係止リング、帯及びそれを係止するバックル、磁石及び磁石受け、ロック解放機能付き締めつけバンド、紐のような係止具で、締め付けてもよい。腕支持部11は、指先を露出させていてもよい手袋及びその手首側根元で縫製されて繋がる手袋支持具を有する手首支持具にしてもよい(何れも不図示)。
【0106】
腕補助帯部10を調整して、腕支持部11から集束部材20までの長さを、短くすると腕を高く上げて作業し易くなり、一方幾分か長くすると腕を比較的低く上げて作業し易くなる。腕補助帯部10は任意の長さへの調整がスムーズであるから、作業の中断・再開や腕の高さの調整を、適宜、速やか且つ簡便かつ容易く行うことができる。
【0107】
左右の前腕側肘支持具13と上腕側肘支持具15とは、夫々、肘内側で、左右の腕支持部11を夫々吊り上げ可能に繋ぎつつ、左右の腕補助帯部10に例えば縫製によって接続されている。左右の腕補助帯部10は夫々交差することなく左右の肩越しに背中に至り、集束部材20に繋がっている。前腕側肘支持具13と上腕側肘支持具15とは、夫々端部が接続されて、面ファスナとなって袖に取り付けられている場合、前腕と上腕とを締め付けて、肘窩にて面ファスナで袖へ係合するものであることが好ましい。
【0108】
腕支持部11から集束部材20に至るまでの左右の腕補助帯部10は、全体が弾性体であってもよいが、少なくとも一部を弾性体とすることにより、腕を上げたままの動作のために前腕や上腕の筋肉の補助を効果的に行うことができる。腕支持部11から集束部材20に至るまでの左右の腕補助帯部10は、腕から肩にかけて腕補助帯部10の一部が弾性体となっていることが好ましい。
【0109】
腕補助帯部10は、その一部として弾性体10a例えばシリコーンゴム製帯の両端を布帛片と熱融着しその布帛片によって腕補助帯部10の他の部位である非弾性の繊維帯10bに確りと縫製されているものであってもよく、腕補助帯部10の一部として弾性体10aを直に腕補助帯部10の他の部位である繊維帯10bに熱融着及び/又は縫製されているものであってもよい。熱溶着は例えばシリコーンゴム製帯を厚さ方向に裂きその間に布帛片や繊維帯を挟み込んでから加熱によって熱融着するというものである。
【0110】
弾性体10aの素材は、例えば、シリコーンゴムの他、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムのような合成ゴムや、天然ゴムが挙げられる。天然ゴムは、室温のような常温の環境で使用する場合には何ら問題を生じないが、温度依存性がある。そこで、高温多湿や低温の環境で使用する場合には、合成ゴムを用いることが好ましい。中でも、耐熱性に優れ低温から高温まで物性が殆ど変化せず、アレルギー症状を惹起せず、表面張力が小さくて摺動し易い、シリコーンゴムが一層好ましい。弾性体10aは、帯状の合成ゴム製や天然ゴム製ものもであってもよく、ポリエステルやレーヨンなどの糸で織る紐の中に天然ゴム又は合成ゴム(例えばポリウレタンなど)の弾性素材を織り込んだいわゆる織ゴムであってもよい。弾性体10aは、平帯状、柱状又は紐状のシリコーンゴム製帯であるとなお一層好ましい。
【0111】
また、この動作補助作業着1は、腕補助帯部10の弾性体10aが温度や湿度で弾性特性を変化させないシリコーンゴム等のような環境非依存性で耐久性に長けたゴムであると、夏場や煮沸処理場のような高温多湿環境や、冷蔵室・冷凍倉庫のような低温環境であっても周囲の環境やその変化・変動に影響されずに、またアレルギー症状を惹起することなく体調・健康を阻害せずに、動作補助をすることができる。特に、シリコーンゴムは、装着者の肌に直接触れても健康被害を生じず、かつ滑らかに動作する加工が施し易く、物理的強度や化学的強度が高く、容易く破断せず、特性を保つことができる。
【0112】
弾性体10aは、平帯状、柱状又は紐状の何れのゴムであってもよく、単数のゴムを直列に繋ぎ若しくは並列に束ね、並べ又は重ね、或いは複数束ねたゴムを直列に繋いたものであってもよい。
【0113】
弾性体10aは、作業者の自力で十分に作業できるため補助を然程必要としない多少軽度な動作時にはその動作を阻害せず、負荷が過剰にかかる重労働となり補助を必要とする比較的大きな動作を行い、腕補助帯部10及び/又は腰背脚補助帯部30を大きく引っ張ったときに補助効果を発揮するようにしていることが好ましい。
【0114】
反力と伸び量とが非線形の相関性を示す弾性体の好ましい別な一例として、材質、架橋度、太さ、幅、厚み等の構造、又はそれらの何れかを組み合わせて調整することにより高弾性となっている平帯状、柱状又は紐状のゴム製帯例えば高弾性シリコーンゴム製帯と、幾分弛んだ繊維製の非弾性リミッタ紐を並列させ同様に材質、架橋度、太さ、幅、厚み等の構造、又はそれらの何れかを組み合わせて調整することにより低弾性となっている平帯状、柱状又は紐状のゴム製帯例えば低弾性シリコーンゴム製帯とを、前記と同様に熱溶着及び/又は縫製によって直列に、単数ずつ又は複数繋いでいるものであってもよい。交互に繋いでもよい。これにより、弾性体が伸びる際に、先ず低弾性のゴム製帯が伸びるが伸び過ぎると非弾性リミッタ紐でもはや伸びられなくなってしまい、高弾性のゴム製帯が伸びることによりそこが閾値となって強い伸び性を示すようになる。そのため、その閾値未満で軽い荷物を持ち上げる際に低弾性のゴム製帯によって比較的軽く補助されるが、その閾値を超えて重い荷物を持ち上げる際に、弾性体が必然的に過剰に伸びることに伴い、高弾性のゴム製帯によって一層動作が強く補助されるようになる。材質、架橋度、太さ、幅、厚みを段階的に又は徐々に変化させて、反力と伸び量とが非線形の相関性を示すようにしてもよい。例えば太さ、幅、厚みを弾性体の一端から他端に向けて段階的に又は徐々に増加させたり減少させたりすることにより、その非線形の相関性を示すようにできる。
【0115】
腕補助帯部10は、弾性体10a部位を除き、繊維製例えば天然繊維や化学繊維のような各種繊維製で5~45mm幅、好ましくは10~38mm幅、より好ましくは25mm幅の繊維帯10bからなっている。細過ぎると身体に食い込み苦痛を感じるようになり、太過ぎると身体やインナーウェアとの摩擦や動作補助作業着1との摩擦が大きくなって摺動し難くなり、十分な動作補助ができなくなってしまう。このような繊維の素材として、滑り易いナイロンのようなポリアミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0116】
動作補助作業着1は、両腕を別々に夫々支える一対の腕補助帯部10が、独立して両腕の前腕や上腕の動作を補助するので、正面側の操作のみならず斜め前方や左右側面側での複雑な動作であっても補助することができる。なお、動作補助作業着1は、作業内容に応じて、左右一対の腕補助帯部10で別々に補助位置や補助角度や補助強度を調整するものであってもよい。
【0117】
動作補助作業着1は、つなぎ服、制服、白衣の外装又は内部に、実装されていてもよい。
【0118】
腕補助帯部10が腕側から肩越しに背側へ曲がるため肩で身体又はインナーウェア等の腕補助帯部10との間に強い摩擦が生じ易くなっている。そこで、その摩擦係数を低減し、肩で腕補助帯部10が摺動し易くなるように、表面張力の小さなフッ素樹脂製やシリコーン樹脂製の肩当てパット44がインナーウェア等の着衣に貼付され又は縫製されていてもよい。なお、肩当てパット44に代えて、又はそれと共に、鞘18を用いてもよい。また、肩当てパット44に代えて、ベスト40の内側で肩口に縫製され又は面ファスナで取り付けられた樹脂製の布帛で形成された平筒又は円筒のような筒部又はループであってもよい(不図示)。このような鞘18や筒部は、滑り易い材質の樹脂、例えばナイロンのようなポリアミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂で形成されていることが好ましい。
【0119】
また、腕補助帯部10は、摺動し易いように、フッ素樹脂コーティング又はシリコーン樹脂コーティングされているものであってもよい。
【0120】
一方、左右の腰背脚補助帯部30は、
図1に示すように、踏付け部31から膝と大腿と腰とを経て背にかけて、夫々伸びている。腰背脚補助帯部30は、膝及び/又はその上下を取り巻き又は開閉可能に取り巻く膝取巻き部と、踏付け部31とを、有している。
【0121】
踏付け部31は、足裏で踏み付けられるもので、腰背脚補助帯部30の足側起点となり足裏で支持されて引きずられないよう足裏に固定するものである。踏付け部31は、足裏で接触する環下部32と、そこから膝下まで伸びた膝下環帯部33とからなる。それに繋がり膝下を取り巻く膝下環状部34a及び膝上環状部34bである膝取巻き部34が、腰背脚補助帯部30の途中にて、膝裏の位置で、縫製されている。膝下環状部34aは、膝下をベルト状に取り巻き、膝前で線ファスナにより前開き可能に閉じられている。膝上環状部34bは、膝上をベルト状に取り巻き、膝前で面ファスナにより開閉可能に閉じられている。必要に応じ脛に脛当てや踏付け部31の長さを調整可能なアジャスタ又は面ファスナ(不図示)が設けられていてもよい。
【0122】
この動作補助作業着1は、膝取巻き部が腰背脚補助帯部30に連結されていると、膝頭の上部・下部で膝をホールドして補助することとなり、膝の屈伸を容易くするようになる。
【0123】
踏付け部31は、膝裏、臀から腰を経て背中へかけて伸びた腰背脚補助帯部に、膝下環状部34aで縫製されて繋がっている。
【0124】
腰背脚補助帯部30は、アジャスタ36により、踏付け部31から集束部材20までの長さを短くすると、背中を起立させ易くなって背中を曲げた時や屈んだ時の補助を増強して作業し易くなり、一方幾分か長くすると背中を大きく曲げた時や低く屈んだ時の補助の増強が弱くなる反面、背中を小さく曲げた時や僅かに屈んだ時の軽作業での補助を促進し長期間継続して作業し易くなる。腰背脚補助帯部30で、その長さの調整がスムーズとなるから、作業の中断・再開や腰背膝の補助程度の調整を速やか且つ簡便かつ容易く行う事ができる。
【0125】
踏付け部31から集束部材20に至るまでの左右の腰背脚補助帯部30の少なくとも一部を弾性体30aとすることにより、前屈みや中腰の姿勢で又は蹲踞の姿勢で荷物を持ち上げたり左右へ移動させたりする動作のために膝や腰や背中の筋肉の補助を効果的に行うことができる。踏付け部31から集束部材20に至るまでの左右の腰背脚補助帯部30は、臀から大腿にて一部が弾性体30aとなっていることが好ましい。このような弾性体30aは、腕補助帯部10の弾性体10aと同様な材質・構造であってもよい。
【0126】
この構成により、腰をかがめただけでなく膝を曲げて蹲踞した姿勢でも腰背脚補助帯部30を引っ張り、脚・腰のみならず背中全体を補助する。
【0127】
腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とは、集束部材20で集束されているから、互いに腕と背・腰・脚とを補助するのであるが、左右の腕と、左右の両脚特に両膝、腰、背中までとの動作を、別々に夫々、独立して又は協同して補助するので、腕や脚や腰や背の屈伸動作や上下動作や捻り動作のような複雑な動作であっても確実に補助することができる。
【0128】
腰背脚補助帯部30は、臀又は大腿で身体又はインナーウェア等の着衣との間で強い摩擦が生じ易くなっている。そこで、その摩擦係数を低減するため、臀又は大腿で腰背脚補助帯部30が摺動し易くその動作がスムーズとなるように、フッ素樹脂製やシリコーン樹脂製の鞘35に通されていてもよい。
【0129】
動作補助作業着1は、柔軟で可撓性素材で形成されているから、着心地が良い。また、洗濯可能であるから、衛生的である。
【0130】
図1のように
図1のように、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとを有する多段階弾性布地複数層50を備えた動作補助作業着1は、以下のようにして装着して使用される。この動作補助作業着1について、腹乃至胸の前程度の高さに持ち上げたりその高さで手作業し続けたりする際を例にして説明する。
【0131】
先ず、作業者が、動作補助作業着1のベスト40を羽織り、両腕を袖17に通し、ベスト40の線ファスナを閉じる。次に、踏付け部31の環下部32を足裏で踏み付ける。膝下環状部34aを膝下でベルト状に取り巻き、膝前でそれの線ファスナを閉じる。膝上環状部34bを膝上でベルト状に取り巻き、膝前でそれの面ファスナを閉じ、膝取巻き部で膝を包む。踏付け部31から膝下環状部34aの長さを調整可能なアジャスタ(不図示)で、きつくない程度に調整する。
【0132】
次に、装着した作業者が前屈していない直立状態のとき、左右の腰背脚補助帯部30が弛まず伸長せず丁度緊張し弾性機能が利いていない形状となるように、左右の腰背脚補助帯部30の長さを調整可能なアジャスタで、適宜調整する。その後、手首支持具12、前腕側肘支持具13、上腕側肘支持具15のアジャスタ36で、両腕を夫々締めて、腕支持部11ごと腕を腹乃至胸の前程度の高さに持ち上げたりその高さで手作業し続けたりする際に、腕とりわけ前腕や上腕に対する所望の補助位置や補助角度や補助強度となって腕が補助されるように、腰背脚補助帯部30の長さを調整可能なアジャスタ36で、調整する。
【0133】
次いで、
図7のような最弱設定の場合を例にすると、
図7(a)の通り装着した作業者が前屈していない直立状態のとき(
図6(a)参照)、第一弾性布地51aが弛まず伸長せず丁度緊張し弾性機能が利いていない形状となるようにしつつ、
図7(b)の通り装着した作業者が上体をやや倒したとき(
図6(b)参照)、自然長であった第一弾性布地51aが先ず伸び、ばね力k
1が働くが、第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとは自然長のままとなり、さらに
図7(c)の通り装着した作業者が上体をより一層倒したときとき(
図6(c)参照)、第一弾性布地51aの伸びに伴い連結ベルト54に引っ張られて、自然長であった第二弾性布地51bが伸びるが、第三弾性布地51cは自然長のままとなり、かつ
図7(d)の通り装着した作業者が上体を深く倒したとき、第一弾性布地51aの伸びに伴い連結ベルト54に引っ張られて、第二弾性布地51bと共に自然長であった第三弾性布地51cが伸びるように、段階弾性調整ベルト55を引張って調整する。最後に、靴を履くと、装着が完了する。
【0134】
この動作補助作業着1は、調整後、
図7~
図10のようにして、使用時に所望の筋肉を補助する。
【0135】
なお、
図8のような中間設定、
図9のような最強設定(予張力あり)、
図10のような最強設定(予張力あり)の場合には、夫々所期の強度となるように、段階弾性調整ベルト55を引張って調整するが、
図7を参照して調整すればよいので、詳細を割愛する。
【0136】
必要に応じ、アジャスタ36や、ベスト40の後ろ身頃48の裾と腰当て部47との面ファスナ46で、再調整してもよい。最終調整した後でも、任意にその程度を再調整できるので、作業現場から歩行して移動したり階段や梯子で他の階に移動したりするときなど、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30を適宜解放し、作業現場に戻ったら腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30を自在に再度調整できる。
【0137】
また、必要に応じ、繰り寄せ補助ベルト56を引っ張ることにより、段階弾性調整ベルト55の緊締を緩めて、多段階弾性布地複数層50による発現強度を自在に再度調整できる。
【0138】
通常、一旦調整したら再調整し難い従来の補助具で長時間締め付けられていると身体的・精神的疲労がたまるが、この動作補助作業着1は、補助程度をいつでも自在に調整したり解放したりできるので疲労がたまり難い。
【0139】
この動作補助作業着1は、蹲踞のような姿勢の際にも補助できるが、腰だけを曲げて持ち上げ等の動作をして腰を痛めやすい危険な姿勢の際にも十分に補助できる。
【0140】
この動作補助作業着1は、上体を倒して荷物を持ち上げるために、多段階弾性布地複数層50を背側に設置した例で説明したが、腕を引き寄せて荷物を持ち上げたり、逆に腕を押し出して荷重を押し戻したりする場合に、多段階弾性布地複数層50を、腕の内側の上腕二頭筋側、又は腕の外側の上腕三頭筋側に設けてもよく、脚を屈めて荷物を持ち上げたり、逆に脚を伸ばして荷重を押し戻したりする場合に、多段階弾性布地複数層50を、左膝側と右膝側、左大腿側と右大腿側との大腿四頭筋側や大腿二頭筋(ハムストリングス)側に設けてもよい。それらの場合、多段階弾性布地複数層50は、背側で説明したのと同様にして、調整することができる。この動作補助作業着1は、背側の補助を説明した
図7~
図10と同様に、使用時に所望の腕や膝や大腿の筋肉を補助する。
【0141】
図6(a)のように、何も持っていない直立状態では、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30と、第一弾性布地51a・第二弾性布地51b・第三弾性布地51cは、自然長であり、引っ張られておらず、伸びていない。
【0142】
図6(b)のように、両腕と両脚とを同様に動かしながら両手で軽い荷物や製品(不図示)を胸や腹の前程度の高さに持ち上げるような軽作業の際に使用をする場合、上体を小さく傾け両脚を幾分曲げて、やや前屈み乃至やや中腰の姿勢になると、荷物等の重みと上体を傾けたり両脚を曲げたりすることにより、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とが左右対称に多少引っ張られ、第一の弾性布地51aが体軸方向に多少引っ張られ、幾分伸びる。第一弾性布地51aは引っ張られて伸びるが、第二弾性布地51b・第三弾性布地51cは、伸びていない。
【0143】
第一弾性布地51aが、弾性反発を伴いながら幾分伸びると、縮む反力が復元力として生じる。その結果、第一弾性布地51aの復元力によって、それによって背(特に背筋)が延びるように補助される。
【0144】
さらに、腕補助帯部10が、両腕の腕補助部材を引き上げつつ肩で摺動しながら、その一部の弾性体10aによって弾性反発を伴いながら幾分伸びる。すると、両腕の上腕二頭筋が、腕補助部材の弾性反発によって補助される。その結果、腕補助帯部10の弾性体の復元力によって、腕が、下がるのを防いで上がるように、補助される。また、腰背脚補助帯部30が、一部の弾性体30aによって弾性反発を伴いながら幾分伸びる。すると、両脚の筋肉、特に大殿筋やハムストリングスが、腰背脚補助帯部30の弾性反発によって補助される。さらに、第一弾性布地51aが、弾性機能によって弾性反発を伴いながら幾分伸びる。すると、腰や背の筋肉、特に脊柱起立筋が、第一弾性布地51aの弾性反発によって補助される。その結果、腰背脚補助帯部30と第一弾性布地51aとの弾性体の復元力によって前屈みや中腰の姿勢から起立する姿勢へ戻るように、脚・腰・背・膝が補助される。
【0145】
このとき、第一弾性布地51aが背骨に沿って背中の中心で、左右均等に、引っ張られている。また、左右の腕補助帯部10と左右の腰背脚補助帯部30とで同等に引っ張られている。
【0146】
なお、集束部材20を有する場合、集束部材20の織物21の緯糸が作業者の体軸方向に向いたまま殆ど伸びず、また経糸の方向が作業者の体軸方向に向いたまま殆ど伸びず、その結果、集束部材20は、変形しないので、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とは、左右で均等にバランスが取れている。その後、作業者が左右別々に動作して、身体を左右何れかに捩じった時や、左右両腕の何れかを上げたり前に伸ばしたりした時や、両脚を夫々前後にした時には、変形性の集束部材20は、一方の対角線方向に歪んで引き伸ばされ、それに伴って他方の対角線方向に歪んで縮む。その結果、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30との左右の張力の差をバランスよく分散し、補助が必要な一方側の腕や脚や背や腰を、より安定して動作補助できる。このようにして、持ち上げ動作を緩くサポートする。
【0147】
次に、
図6(c)のように、上体をより一層倒し、両腕と両脚とを同様に動かしながら重い荷物や製品や患者(不図示)を胸又は腹の前程度の高さに持ち上げるような重作業の際に使用をする場合、上体を幾分大きく傾け両脚を相当に曲げて、確りと前屈み乃至中腰又は蹲踞の姿勢になると、荷物等の重みと上体を傾けたり両脚を曲げたりすることにより、第一弾性布地51aがさらに伸びると共に連結ベルト54に引っ張られて、自然長であった第二弾性布地51bが伸び、加えて腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とが左右対称に強く引っ張られるが、第三弾性布地51cは、伸びておらず、一方、腕補助帯部10は、弾性反発を伴いながらさらに伸びる。
【0148】
すると、両腕の上腕二頭筋が、腕補助部材の弾性反発によって一層強く補助される。両腕が、下がらずに上がるように、さらに強く補助される。
【0149】
また、腰背脚補助帯部30が、弾性反発を伴いながらさらに伸びる。すると、両脚の大殿筋やハムストリングスが、腰背脚補助帯部30の弾性反発によって一層強く補助される。それに加えて、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bとが、体軸方向に強く引っ張られ、さらに伸びることに伴い、腰や背の筋肉、特に脊柱起立筋が、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bとの弾性反発によって、さらに強く補助される。その結果、前屈みや中腰や蹲踞の姿勢から起立する姿勢へ戻るように、脚・腰・背・膝が、一層強く補助される。
【0150】
なお、集束部材20を有する場合であれば、その後、作業者が身体を捩じった時や、片腕のみを上げたり伸ばしたりした時や、両脚前後に広げた時には、変形性の集束部材20は、一方の対角線方向に歪んで一層大きく引き伸ばされ、それに伴って他方の対角線方向に歪んで一層縮む。その結果、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30との左右の張力の差をバランスよく分散し、補助が必要な一方側の腕や脚や背や腰を、より安定して動作補助できる。
【0151】
次に、
図6(d)のように、上体を一層深く倒し、両腕と両脚とを同様に動かしながらさらに重い荷物や製品(不図示)を胸又は腹の前程度の高さに持ち上げるような重作業の際に使用をする場合、上体を幾分大きく傾け両脚を相当に曲げて、確りと前屈み乃至中腰又は蹲踞の姿勢になると、荷物等の重みと上体を傾けたり両脚を曲げたりすることにより、第一弾性布地51aがさらに伸びると共に連結ベルト54に引っ張られて第二弾性布地51bが伸び、しかも第三弾性布地51cが伸び、加えて腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30とが左右対称に一層強く引っ張られ、一方、腕補助帯部10は、弾性反発を伴いながらさらに一層伸びる。
【0152】
すると、両腕の上腕二頭筋が、腕補助部材の弾性反発によってより一層強く補助される。両腕が、下がらずに上がるように、さらに強く補助される。
【0153】
また、腰背脚補助帯部30が、弾性反発を伴いながらさらに伸びる。すると、両脚の大殿筋やハムストリングスが、腰背脚補助帯部30の弾性反発によって一層強く補助される。それに加えて、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとが、体軸方向により強く引っ張られ、さらに伸びることに伴い、腰や背の筋肉、特に脊柱起立筋が、第一弾性布地51aと第二弾性布地51bと第三弾性布地51cとの弾性反発によって、さらにより強く補助される。その結果、前屈みや中腰や蹲踞の姿勢から起立する姿勢へ戻るように、脚・腰・背・膝が、より一層強く補助される。
【0154】
なお、集束部材20を有する場合であれば、その後、作業者が身体を捩じった時や、片腕のみを上げたり伸ばしたりした時や、両脚前後に広げた時には、変形性の集束部材20は、一方の対角線方向に歪んで一層大きく引き伸ばされ、それに伴って他方の対角線方向に歪んで一層縮む。その結果、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30との左右の張力の差をバランスよく分散し、補助が必要な一方側の腕や脚や背や腰を、より安定して動作補助できる。
【実施例0155】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0156】
(実施例1、比較例1~2)
図1及び
図12示すように、腕補助帯部と腰背脚補助帯部、並びに多段階弾性調整ベルト50を用いた動作補助作業着1を試作し、健常男性60代4名、50代3名、20代7名に装着し、筋電位計を用いて脊柱起立筋の筋活動を評価した。筋電位は、重さ10キロの箱を床から腰高さまで5秒かけて持ち上げたときの計測値を全波整流し,積分筋電図(iEMG)を算出した。各人それぞれ筋力が異なり、また出せる筋電位が異なるため、最大随意筋力(Maximum voluntary contraction:MVC,その筋力の出せる最大電位)を計測し,MVCに対する積分筋電図のピーク値との比率(%MVC)にて集計、分析した。
【0157】
本発明を適用外の対照として、比較例1は、何も装着しない場合、比較例2は、多段階弾性調整ベルトではなく従来(特許文献2)の2層のものを試作して用い、かつ最大限予張力をかけた場合とした。一方、本発明を適用する態様である実施例1は、多段階弾性ベルトを有する動作補助作業着1用いた場合であって、起立した状態で最大設定とし、予張力を一切かけなかった場合とした。これら比較例1及び2、並びに実施例1の3通りで、評価を行った。
【0158】
その結果を、全平均、年齢別(60代、50代、20代)、身長別(170cm以上/未満)、体重別(60kg以上/未満)で、分析した。
【0159】
全平均では,比較例1と比べ、比較例2及び実施例1で共に筋活動が低下し、T検定でp<0.01と有意であった。
【0160】
身長別では、170cm以上の場合、比較例1と比べ、比較例2及び実施例1で共に、大きな補助効果が得られ、p<0.01と有意であった。試作した実施例1の動作補助作業着1と、特許文献2に従い試作した比較例2の作業着とは、何れも身長170cmの成人男性を対象としたサイズに適合させるようにして作製した作業着であることから、身長の影響が、顕著に表れた結果であると考えられる。
【0161】
一方、体重別では、比較例1と比べ、比較例2は体重に関係なくp<0.05と有意であったが、実施例1では60kg以上のときのみp<0.05と有意であった。実施例1のように予張力がない場合は、体重60kg以上という比較的がっしりとした体型の方がより体表面の変化が大きいことから、体重の違いによって結果に差が出たとものと考えられる。このようなときに、予張力を与えると、大きな作業着でも拘束感を我慢すれば補助力が得やすくなるともいえる。
【0162】
それに対し、比較例2及び実施例1を比べると、全ての分析結果において比較例2よりも実施例1の平均値が下がったが、統計学的有意性は確認できなかった。つまりほぼ比較例2と実施例1とでは少なくとも同程度の効果があるといえる。しかし、実施例1であれば予張力がなく、拘束感がなく、同程度の効果が得られることから、着心地が向上したといえる。
【0163】
実施例1の動作補助作業着1は、比較例2の動作補助作業着に比べ、作業前に補助を必要としないときには予張力を受けず拘束感がより低く動き易いと感じられ、また作業時に補助すべき背や腕を曲げたり伸ばしたりするほどより強く十分に補助できたことが実感された。
【0164】
実施例1の動作補助作業着1は、比較例2の動作補助作業着に比べ、作業前に補助を必要としないときには予張力を受けず拘束感がより低く動き易いと感じられ、また作業時に補助すべき背や腕を曲げたり伸ばしたりするほどより強く十分に補助できたことが実感された。
【0165】
実施例1の動作補助作業着1に代え又は加えて、
図2(b)のように腕の内側の上腕二頭筋側に多段階弾性布地複数層50’及び/又は腕の外側の上腕三頭筋側に多段階弾性布地複数層50”を設け、背筋と腕筋を補助するようにしても、さらに図示していないが太腿おもて側の大腿四頭筋側に多段階弾性布地複数層50及び/又は太腿うら側の大腿二頭筋(ハムストリングス)に多段階弾性布地複数層50を設け大腿筋を補助するようにしても、同等以上の効果が得られる。
【0166】
また、
図12のように背の中央で、変形性で平面状の集束部材20を併せて設けると、両腕又は両脚の動きが左右で異なるとき、若しくは上半身や下半身を捻ったときに、腕補助帯部や腰背脚補助帯部の左右別々な動きに追従して変形性の集束部材が変形し、腕補助帯部や腰背脚補助帯部での左右の張力の差をバランスよく分散し、補助を必要とする左右の何れか一方の腕や脚や背や腰を、より強く安定して動作補助でき、左右の補助の違いに違和感を感じさせない。
本発明の動作補助作業着は、介護、福祉、物流、工場、農作業、漁業などの様々な作業現場における作業従事者の持ち上げ動作、保持動作、腕を上げ続けた姿勢維持などの必要時に広く使用可能である。特に、どこまで腕を上げる動作を行うかによって任意に容易に補助度合いを容易に変更設定可能であるので、これら現場でのニーズに合わせ、調整できる。
またこの動作補助作業着は、立った姿勢、寝た姿勢での読書、キーボード、タブレット操作などの上腕および前腕補助など、健常者のADL(日常生活動作)補助にも使用可能である。
さらにこの動作補助作業着は、健常者だけでなく、筋疾患患者、神経疾患患者など、指先は動くが自身で腕を持ち上げられない方のADL補助、例えば、食事、洗顔、化粧等に福祉用具としても使用可能である。