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特開2024-82090車両用合わせガラス、及び車両用合わせガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082090
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両用合わせガラス、及び車両用合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240612BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195807
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 元気
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA18
4G061AA20
4G061BA02
4G061CA01
4G061CA05
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
4G061DA36
4G061DA38
4G061DA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遮光層の情報取得装置用の開口部内の透過領域の歪みが少なく、量産性を考慮した車両用合わせガラス、及び前記車両用合わせガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】車両の外側に面するS1面とS2面とを有する第一ガラス板と、車両の室内側に面するS4面とS3面とを有する第二ガラス板と、中間膜とを備える、車両用合わせガラスであって、前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの上辺に沿うように前記上辺の一部または全部に設けられた幅10mm以上100mm以下の帯状の着色セラミック層4を有し、前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、着色樹脂層5を有し、前記着色樹脂層は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部6を少なくとも1つ有し、前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が10mm以上である、車両用合わせガラスとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外側に面するS1面と、前記S1面の反対側のS2面とを有する第一ガラス板と、
車両の室内側に面するS4面と、前記S4面の反対側のS3面とを有する第二ガラス板と、
前記第一ガラス板と前記第二ガラス板との間に配置され、前記S2面と、前記S3面とに面する中間膜と、
を備える、車両用合わせガラスであって、
前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの上辺に沿うように前記上辺の一部または全部に設けられた幅10mm以上100mm以下の帯状の着色セラミック層を有し、
前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、着色樹脂層を有し、
前記着色樹脂層は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部を少なくとも1つ有し、
前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が10mm以上である、
車両用合わせガラス。
【請求項2】
前記合わせガラスの平面視において、前記着色セラミック層と前記着色樹脂層は一部が重なっている、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項3】
前記合わせガラスの平面視において、前記着色樹脂層は、前記合わせガラスの上辺の中点と下辺の中点を結ぶ中心線と重なっており、前記合わせガラスの長手方向の前記着色樹脂層の長さが前記合わせガラスの上辺の長さの75%以下である、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項4】
前記合わせガラスの前記着色樹脂層がある領域の可視光透過率が3%以下である、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項5】
前記着色樹脂層は、前記開口部の周囲の60%以上を囲っている、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項6】
前記着色樹脂層は、前記開口部の周囲の全てを囲っている、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項7】
前記着色樹脂層の面積が50cm以上である、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項8】
前記着色樹脂層の面積と前記開口部の面積との和に対する、前記開口部の面積の割合が、25%以上75%以下である、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項9】
前記着色樹脂層が、前記情報取得装置を取り付けるためのブラケットの接着領域より大きい、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項10】
前記S3面上に前記着色樹脂層を有する、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項11】
前記着色樹脂層が光硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項12】
前記着色樹脂層が熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項13】
前記着色樹脂層が熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項14】
前記中間膜が紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項15】
前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が30mm以上である、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項16】
さらに、前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの下辺及び側辺に沿うように前記下辺及び側辺の一部または全部に設けられた帯状の着色セラミック層を有する、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項17】
前記第一ガラス板の厚さが、前記第二ガラス板の厚さより厚い、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項18】
さらに、前記着色樹脂層の周囲にドット状着色樹脂層を有する、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項19】
前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に前記着色セラミック層を形成し、
前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に前記着色樹脂層を形成し、
前記第一ガラス板と前記中間膜と前記第二ガラス板を積層する、請求項1に記載の車両用合わせガラスの製造方法。
【請求項20】
前記着色樹脂層を形成する際に、前記着色樹脂層を形成するガラス板を500℃以上には加熱しない、請求項19に記載の車両用合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用合わせガラス、及び車両用合わせガラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスなどには、衝突時のガラスの飛散を防止するために、二枚のガラス板の間に中間膜を有する合わせガラスが用いられている。
車両の内側に取り付けられる情報取得装置は、例えば車両の自動運転モード中の安全性能や快適性の改善のために、ますます普及してきている。情報取得装置としては、種々の電気的センサーやカメラを使用した、画像化システム、衝突防止システム、ブレーキアシストシステム、運転支援システム、自動運転システム、などを含む。
【0003】
情報取得装置(例えば車載カメラ)の周囲には、外光を遮断するための遮光層が設けられる。すなわち、情報取得装置は、遮光層に設けられた開口部内の透過領域を通じて車外から情報を取得する。遮光層は、ガラス板の上に着色セラミック層を設ける方法や、中間膜を着色する方法により形成される(特許文献1~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10710340号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/059837号
【特許文献3】特表2020-514216号公報
【特許文献4】特許第7024618号公報
【特許文献5】特表2021-511275号公報
【特許文献6】特表2021-513473号公報
【特許文献7】国際公開第2022/057951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮光層を着色セラミック層で形成すると、着色セラミック層の境界付近で歪みが生じることがある。これは、通常は、合わせガラスを構成するガラス板を加熱して曲げるのと同時に、着色セラミック層の焼成を行っているが、着色セラミック層がある領域とない領域で加熱時の温度の上がり方が異なるため、着色セラミック層がある領域とない領域の境界付近で歪みが生じると考えられている。
【0006】
また、中間膜は、二枚のガラス板を接着させるために、通常は加熱により柔らかくなる樹脂で形成されており、中間膜の加工時の応力や、中間膜とガラス板との接着の際の熱などにより伸びたり縮んだりする。このため、中間膜を着色して遮光層を形成した場合は、中間膜が伸びたり縮んだりすることで、遮光層の寸法が安定しないことがある。特に、特許文献3のように、合わせガラスの周縁部に設ける遮光層を中間膜に形成すると、車両用合わせガラスの大きさは比較的大きいため、製造時に周縁部の遮光層の寸法が安定しないことがある。また、中間膜に遮光層を形成する場合、2枚のガラス板の間に中間膜を置く際に遮光層がガラス板上の意図した箇所に配置されるよう、中間膜の位置をガラス板上に高い精度で置く必要があった。以上のように、中間膜に遮光層を形成すると、合わせガラスの量産性が低下する恐れがある。
【0007】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、遮光層の情報取得装置用の開口部内の透過領域の歪みが少なく、量産性を考慮した車両用合わせガラスを提供することを目的とする。また、上記車両用合わせガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成により上記課題を解決することができる。
【0009】
[1]
車両の外側に面するS1面と、前記S1面の反対側のS2面とを有する第一ガラス板と、
車両の室内側に面するS4面と、前記S4面の反対側のS3面とを有する第二ガラス板と、
前記第一ガラス板と前記第二ガラス板との間に配置され、前記S2面と、前記S3面とに面する中間膜と、
を備える、車両用合わせガラスであって、
前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの上辺に沿うように前記上辺の一部または全部に設けられた幅10mm以上100mm以下の帯状の着色セラミック層を有し、
前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、着色樹脂層を有し、
前記着色樹脂層は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部を少なくとも1つ有し、
前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が10mm以上である、
車両用合わせガラス。
[2]
前記合わせガラスの平面視において、前記着色セラミック層と前記着色樹脂層は一部が重なっている、[1]に記載の車両用合わせガラス。
[3]
前記合わせガラスの平面視において、前記着色樹脂層は、前記合わせガラスの上辺の中点と下辺の中点を結ぶ中心線と重なっており、前記合わせガラスの長手方向の前記着色樹脂層の長さが前記合わせガラスの上辺の長さの75%以下である、[1]又は[2]に記載の車両用合わせガラス。
[4]
前記合わせガラスの前記着色樹脂層がある領域の可視光透過率が3%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[5]
前記着色樹脂層は、前記開口部の周囲の60%以上を囲っている、[1]~[4]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[6]
前記着色樹脂層は、前記開口部の周囲の全てを囲っている、[1]~[5]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[7]
前記着色樹脂層の面積が50cm以上である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[8]
前記着色樹脂層の面積と前記開口部の面積との和に対する、前記開口部の面積の割合が、25%以上75%以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[9]
前記着色樹脂層が、前記情報取得装置を取り付けるためのブラケットの接着領域より大きい、[1]~[8]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[10]
前記S3面上に前記着色樹脂層を有する、[1]~[9]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[11]
前記着色樹脂層が光硬化性樹脂を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[12]
前記着色樹脂層が熱可塑性樹脂を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[13]
前記着色樹脂層が熱硬化性樹脂を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[14]
前記中間膜が紫外線吸収剤を含む、[1]~[13]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[15]
前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が30mm以上である、[1]~[14]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[16]
さらに、前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの下辺及び側辺に沿うように前記下辺及び側辺の一部または全部に設けられた帯状の着色セラミック層を有する、[1]~[15]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[17]
前記第一ガラス板の厚さが、前記第二ガラス板の厚さより厚い、[1]~[16]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[18]
さらに、前記着色樹脂層の周囲にドット状着色樹脂層を有する、[1]~[17]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
[19]
前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に前記着色セラミック層を形成し、
前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に前記着色樹脂層を形成し、
前記第一ガラス板と前記中間膜と前記第二ガラス板を積層する、[1]~[18]のいずれか1つに記載の車両用合わせガラスの製造方法。
[20]
前記着色樹脂層を形成する際に、前記着色樹脂層を形成するガラス板を500℃以上には加熱しない、[19]に記載の車両用合わせガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、遮光層の情報取得装置用の開口部内の透過領域の歪みが少なく、量産性を考慮した車両用合わせガラスを提供することができる。また、上記車両用合わせガラスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用合わせガラスの一例の平面模式図である。
図2】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図3】車両用合わせガラスの製造方法の一例を説明するための模式図である。
図4】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図5】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図6】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図7】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図8】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図9】第二ガラス板の一例の平面模式図である。
図10】第二ガラス板の一例の平面模式図である。
図11】車両用合わせガラスの一例の平面模式図である。
図12】車両用合わせガラスの一例の平面模式図である。
図13】ガラス板の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図14】ガラス板の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図15】車両用合わせガラスの一例の平面模式図である。
図16】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
図17】車両用合わせガラスの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは例であり、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、置換及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0013】
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
[車両用合わせガラス]
本開示の車両用合わせガラスは、
車両の外側に面するS1面と、前記S1面の反対側のS2面とを有する第一ガラス板と、
車両の室内側に面するS4面と、前記S4面の反対側のS3面とを有する第二ガラス板と、
前記第一ガラス板と前記第二ガラス板との間に配置され、前記S2面と、前記S3面とに面する中間膜と、
を備える、車両用合わせガラスであって、
前記S2面及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、前記合わせガラスの上辺に沿うように前記上辺の一部または全部に設けられた幅10mm以上100mm以下の帯状の着色セラミック層を有し、
前記S2面、前記S3面、及び前記S4面の少なくとも1つの面上に、着色樹脂層を有し、
前記着色樹脂層は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部を少なくとも1つ有し、
前記開口部と前記着色セラミック層との最も近い距離が10mm以上である、
車両用合わせガラスである。
【0015】
図1は、車両用合わせガラスの一例の平面模式図であり、図2図1の車両用合わせガラス10のA-A断面の模式図である。
車両用合わせガラス10は、第一ガラス板1と、中間膜3と、第二ガラス板2とを、この順に有する。第一ガラス板1は、車両の外側に面するS1面と、S1面の反対側のS2面とを有する。第二ガラス板2は、車両の室内側に面するS4面と、S4面の反対側のS3面とを有する。中間膜3は、第一ガラス板1と第二ガラス板2との間に配置され、S2面とS3面とに面している。車両用合わせガラス10は、車両の外側に凸、すなわち車両の室内側に凹になるように湾曲していてもよい。
【0016】
(着色セラミック層)
本開示の車両用合わせガラスは、S2面及びS4面の少なくとも1つの面上に、合わせガラスの上辺に沿うように上辺の一部または全部に幅10mm以上100mm以下の帯状の着色セラミック層を有する。図1及び図2の車両用合わせガラス10は、S4面上に着色セラミック層4を有する。上辺とは車両用合わせガラスを車両に搭載した際に、最も上に位置する辺である。図1では辺Uが上辺である。車両用合わせガラス10は、上辺Uに沿うように上辺Uの一部または全部に幅Wが10mm以上100mm以下である帯状の着色セラミック層4を有する。すなわち、車両用合わせガラス10は、上辺Uから、上辺Uと対向する下辺に向かって10mm以上100mm以下の領域に帯状の着色セラミック層を有する。すなわち、上辺Uに設けられた帯状の着色セラミック層は、上辺Uから100mm超離れた領域には形成されない。また、本開示の着色セラミック4には、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部が設けられない。
【0017】
図10は、図2の車両用合わせガラス10の第二ガラス板2の着色樹脂層5を形成する前の第二ガラス板2Aの平面模式図である。
図9は、図8の車両用合わせガラス15の第二ガラス板2の着色樹脂層5を形成する前の第二ガラス板2Aの平面模式図である。
図10では第二ガラス板2Aの上辺Uの全体を含む周縁部の全体に帯状の着色セラミック層4が設けられているが、図9では上辺Uの中央部には着色セラミック層を有しておらずに上辺の両端部にのみ帯状の着色セラミック層4が設けられている。なお、図1及び図2の車両用合わせガラス10は上辺のみならず、周縁部全体に帯状の着色セラミック層4を有する。
【0018】
本開示の車両用合わせガラスは、ガラス板の下辺や側辺などの周縁部に着色セラミック層4を形成できるため、合わせガラス製造時のオートクレーブ工程において加熱しても、着色セラミック層4の形状は安定して変化することはない。中間膜の周縁部に着色樹脂層を設ける場合に比べて、合わせガラス周縁部の遮光層の寸法安定性に優れる。
【0019】
着色セラミック層の幅は、10mm以上100mm以下であり、20mm以上80mm以下が好ましく、30mm以上70mm以下がより好ましい。着色セラミック層の幅が、10mm以上であると、合わせガラスを車両に取り付ける際に接着剤を塗布する面積を十分とることができる。また、着色セラミック層の幅が、100mm以下であると、車両用合わせガラスの、着色セラミック層がなく乗員が車外を見るための透過領域を確保することができる。
本開示の車両用合わせガラスは、図2のようにS4面上のみに着色セラミック層を有していてもよいし、S2面上のみに着色セラミック層を有していてもよいし(図4参照)、S2面上及びS4面上に着色セラミック層を有していてもよい(図5参照)。
着色セラミック層の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0020】
着色セラミック層は、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)とガラス板の軟化点温度よりも低い軟化点温度を有するガラス材料とを有するセラミック組成物からなることが好ましい。セラミック組成物として、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末が、ビヒクルと共に混練され形成されたセラミックペーストがスクリーン印刷法によってガラス板の表面に塗布され、その塗布物が焼成されて形成されたものを用いることができる。
【0021】
耐熱性顔料は、セラミック層に目的の色を付与するために配合される。その粒径は、セラミックペーストへの分散性や発色性を考慮して適宜決定され、メディアン径D50において、0.1~10μm、好ましくは0.2~5μm程度のものを使用することができる。
【0022】
耐熱性顔料としては、慣用の耐熱性顔料を使用できる。黒色を呈するための顔料の例としては、銅-クロム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、コバルト-鉄-クロム複合酸化物、マグネタイト等が挙げられる。また、茶色を呈するための顔料の例としては、亜鉛-鉄複合酸化物、亜鉛-鉄-クロム複合酸化物等が挙げられる。
さらに、青色系顔料の例として、コバルトブルー、緑色系顔料の例として、クロムグリーン、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物等が挙げられる。
【0023】
これら顔料の他にも、白色系顔料(チタン白、酸化亜鉛等)、赤色系顔料(ベンガラ等)、黄色系顔料(チタンイエロー、チタン-バリウム-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-クロム複合酸化物等)を使用することもできる。
【0024】
ガラスフリットは、ガラスの微粒子のことであり、セラミックをガラス板に結着させ、セラミック層を形成する機能を有する。ガラスフリットとしては、セラミックにおいて慣用的に使用されているガラスフリットを使用できる。そのようなガラスフリットの例として、ホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラスなどが挙げられる。これらのガラスフリットは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
ガラスフリットの軟化点温度は、ガラス板の曲げ成形温度(例えば、600~750℃)より低いものが好ましく、好ましくは380~600℃であり、より好ましくは400~580℃であり、更に好ましくは410~550℃である。
ガラスフリットの粒径は、スクリーン印刷時のセラミックペーストの塗布性を考慮して適宜決定され、例えば、メディアン径D50において、0.1~10μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~4μm程度のものを使用できる。
【0026】
セラミック層において、ガラス材料(ガラスフリットが焼成されたもの)の含有量は、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~80質量%とすることができる。この含有量は、セラミック層のガラス板への結着性、セラミック層の色調を考慮して、適宜調整することができる。
【0027】
ビヒクルは、無機成分である耐熱性顔料(金属酸化物)の粉末、およびガラス材料であるガラスフリットの粉末を、ペースト化し、スクリーン印刷などの塗布工程に適用するために配合されるもので、分散媒とバインダーとを有するものである。ビヒクルは、印刷性(塗布性)を考慮して適宜配合され、例えば、セラミックペースト全体に対して、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~45質量%含有させることができる。
【0028】
分散媒は、常温での揮発性が低く、ガラスフリットが軟化する温度よりも低い温度で揮発する程度の沸点を有するものが好ましく、例えば、沸点が50~250℃程度のものを使用できる。
【0029】
分散媒の例としては、脂肪族アルコール(例えば、2-エチルー1-ヘキサノール、オクタノール、デカノール等の飽和又は不飽和脂肪族アルコール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブ類等)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブアセテート類)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルカルビトール類等)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキル基の炭素数1-4のアルキルセロソルブアセテート類)、脂肪族多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリン等)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール類(例えば、モノテルペンアルコール等)等]、芳香族力ルボン酸エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1-10)、ジブチルベンジルフタレート等のフタル酸ジアルキルアラルキルエステル(アルキル基の炭素数1-10)等)、これら混合物等が挙げられる。
【0030】
バインダーとしては、セラミックペーストに適度な粘度を与え、200~550℃、好ましくは220~400℃程度で分解できるものであればよい。
その例としては、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等)、これらの混合物等などが挙げられる。これらの中ではアクリル系樹脂が好ましい。バインダーのビヒクル全体に対する割合は、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは15~40質量%としてもよい。
【0031】
(着色樹脂層)
本開示の車両用合わせガラスは、S2面、S3面、及びS4面の少なくとも1つの面上に、着色樹脂層を有する。着色樹脂層は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部を少なくとも1つ有する。なお、着色樹脂層の開口部においても、少なくとも第一ガラス板と中間膜と第二ガラス板とを有する。着色樹脂層は、情報取得装置にノイズの原因となり得る不要な光などが当たるのを防ぐ効果がある。また、車外から見た際に、情報取得装置を隠ぺいするという効果もある。図1及び図2の車両用合わせガラス10は、S3面上に着色樹脂層5を有する。着色樹脂層5は、車内に配置される情報取得装置が車外から情報を取得するための開口部6を有する。また、合わせガラスの平面視において、合わせガラスの周縁部に遮光層のない箇所が形成されないように、着色セラミック層と着色樹脂層は一部が重なっているとよい。
【0032】
本開示の車両用合わせガラスでは、着色樹脂層に設けられている開口部と着色セラミック層との最も近い距離は10mm以上である。すなわち、開口部の任意の点と、着色セラミック層の任意の点との距離のうち最も短い距離が10mm以上である。開口部と着色セラミック層との最も近い距離が10mm未満であると、開口部と着色セラミック層とが近いため、開口部内に歪みが生じやすい。開口部と着色セラミック層との最も近い距離は30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。なお、開口部と着色セラミック層との最も近い距離は、一般的には1m以下である。
【0033】
本開示の車両用合わせガラスは、着色樹脂層に開口部が設けられ、開口部と着色セラミック層とが10mm以上離れているため、着色セラミック層のある領域とない領域の境界に生じる歪みの影響を受けにくく、開口部内の光学歪みを抑制することができる。
【0034】
本開示の車両用合わせガラスは、合わせガラスの平面視において、着色樹脂層は、S2面、S3面、及びS4面の少なくとも1つの面上の上辺の中点を覆っており、上辺に沿う方向の着色樹脂層の長さが上辺の長さの75%以下であることが好ましい。着色樹脂層の長さは上辺の長さの50%以下であってもよい。なお、上辺に沿う方向の着色樹脂層の長さは、一般的には5cm以上である。
【0035】
合わせガラスの着色樹脂層のある領域での可視光透過率は3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
可視光透過率は、JIS R3212:2021(自動車用安全ガラスの試験方法)に規定される可視光線透過率を意味する。前記の規格では、可視光とは波長380nm~780nmの光を意味する。
【0036】
着色樹脂層は、開口部の周囲の60%以上を囲っていることが好ましい。着色樹脂層は、図1のように開口部の周囲の全てを囲っていてもよいし、開口部の周囲の一部を囲っていてもよい(図11参照)。
【0037】
着色樹脂層の面積は50cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、200cm以上であることが特に好ましい。また、着色樹脂層の面積は400cm以下であることが好ましく、300cm以下であることがより好ましい。
【0038】
着色樹脂層の面積と開口部の面積との和に対する、開口部の面積の割合は、25%以上75%以下であることが好ましく、25%以上50%以下であることがより好ましい。
【0039】
着色樹脂層は、情報取得装置を取り付けるためのブラケットの接着領域より大きいことが好ましい。ブラケットとは、その内部に情報取得装置を収容するように、開口部周辺のガラス面に固定される部品であり、主には樹脂製である。
【0040】
本開示の車両用合わせガラスは、S3面上のみに着色樹脂層を有していてもよいし(図2、4、5、8参照)、S2面上のみに着色樹脂層を有していてもよいし(図6参照)、S4面上のみに着色樹脂層を有していてもよい(図7参照)。図7の車両用合わせガラス14は、S4面上に着色セラミック層4と着色樹脂層5とを有する。
本開示の車両用合わせガラスは、S3面上に着色樹脂層を有することが好ましい。
【0041】
また、図1のA-A断面において、平面視で着色樹脂層と着色セラミック層とが重なっていてもよいし(図2参照)、重ならなくてもよい(図8参照)。図8の車両用合わせガラス15の第二ガラス板2の着色樹脂層5を形成する前の第二ガラス板2Aの平面模式図を図9に示す。図8の車両用合わせガラス15は、図9のように上辺に着色セラミック層のない領域を持つ第2ガラス板を用いる。図9において、第二ガラス板2AのS4面上の上辺の中央部の、長さLが15cm以上60cm以下の領域には着色セラミック層を有していない。第二ガラス板2AのS3面上に着色樹脂層5が形成される。そのため、平面視で着色樹脂層5が着色セラミック層4のない領域を覆うように形成され、着色樹脂層5と着色セラミック層4の間に隙間はないが、着色樹脂層5の大部分は着色セラミック層4と重ならない。このようにすることで、着色セラミック層4をより開口部6から離すことができ、開口部6には着色セラミック層4に由来する歪みが生じにくくなる。なお、図8のように、合わせガラスの上辺に着色セラミック層のない領域を持ったとしても、着色樹脂層はS3面以外にS2面やS4面に設けられてもよいし、着色セラミック層はS4面以外にS2面に設けられてもよい。
【0042】
着色樹脂層は光硬化性樹脂を含んでいてもよい。光硬化性樹脂がアクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂であってもよく、紫外線硬化型でも可視光硬化型でもよい。さらに、光重合開始剤を含んでいてもよい。
着色樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂がポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、又はシクロオレフィンポリマー(COP)であってもよい。
着色樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂又はフェノール樹脂であってもよい。
また、着色樹脂層は前述した樹脂を複数含んでいてもよい。
【0043】
着色樹脂層の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0044】
着色樹脂層は、着色成分とそれを含有する樹脂からなることが好ましい。樹脂としては前述に列挙した樹脂を使用することができる。着色成分と樹脂を含む樹脂組成物がスクリーン印刷法によってガラス板の表面に塗布され、硬化等されて形成されたものを用いることができる。樹脂組成物の塗布方法としては、インクジェット法なども使用できる。
【0045】
着色成分としては、染料、顔料などの可視光線を吸収する材料を使用することができる。顔料の例としては、カーボンブラック、鉄顔料、コバルト顔料、カドミウム顔料、クロム顔料、チタン顔料、亜鉛顔料、鉛顔料、マグネシウム顔料、マンガン顔料、バナジウム顔料を含む顔料が挙げられる。染料の例としては、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のフタロシアニン染料; ジスアゾイエロー等のアゾ染料; アントラキノンまたはジブロモアントラキノン等の多環式キノン染料; ジオキサンバイオレット等のジオキサン染料; スチルベン染料、クマリン染料、ナフタルイミド染料、ピリジン染料、ローダミン染料、及びオキサジン染料などが選択される。
【0046】
樹脂組成物には、シランカップリング剤などその他の添加剤を含んでもよい。ガラスとの密着性を向上させるためのシランカップリング剤としては、官能基としてアクリロキシ基またはメタクリロキシ基を有するシランカップリング剤(3―トリメトキシシリルプロピルメタクリレート等)、官能基としてアミノ基を有するシランカップリング剤(3-(2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン等)、官能基としてビニル基を有するシランカップリング剤(7-オクテニルトリメトキシシラン等)、官能基としてエポキシ基を有するシランカップリング剤(8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、又は信越化学工業株式会社製X-12-984S等)、官能基としてメルカプト基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製X-12-1154等)、官能基として酸無水物基を有するシランカップリング剤(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等)等が挙げられる。
【0047】
本開示の車両用合わせガラスは、着色樹脂層の周囲に着色樹脂からなるドット状着色樹脂層を有していてもよい。図12の車両用合わせガラス17は、着色樹脂層5の周囲に複数のドット状の着色樹脂層7が配列している。ドット状着色樹脂層7の形状は、直径又は長径が0.5~2mm、好ましくは1~1.5mmである円又は楕円形であることが好ましい。ドット状着色樹脂層7は配列する範囲は特に限定されないが、着色樹脂層5から1cm~10cm程度の範囲に設けることができる。ドット状着色樹脂層7は、着色樹脂層5の形成と同時に作成することが好ましい。また、ドット状着色樹脂層7を、着色樹脂層5に近い部分でドットの大きさと密度を高くなるように配列し、着色樹脂層5に遠い部分でドットの大きさと密度を低くなるように配列してもよい。
【0048】
(中間膜)
中間膜は、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等から構成することができる。
中間膜は、1つの層から構成されていても、2つ以上の層から構成されていてもよいが、1つの層から構成される中間膜(単層構成の中間膜)であることが好ましい。
中間膜の厚さは特に限定されないが、0.3mm~3.0mmであることが好ましく、0.3~1.0mmであることがより好ましい。
中間膜の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、中間膜用原料樹脂の膜化方法としては、常法の型押し出し法又はカレンダーロール法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
中間膜は紫外線吸収剤を含んでいてもよい。中間膜が紫外線吸収剤を含み、中間膜を持つ合わせガラスの紫外線透過率が1%以下であることが好ましい。紫外線透過率は、ISO 9050:2003によって規定される。
【0050】
(第一ガラス板)
第一ガラス板は、特に限定されず、車両用合わせガラスに用いられている公知のガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等)を用いることができる。特に、ISO 16293-1:2008で規定されているソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを用いることが好ましい。また、ガラス板の光学特性を調整するために、Fe、CeO、TiO、CoO、Cr、NiO、Seなどの着色成分を5質量%までであれば含有させても構わない。
第一ガラス板の厚さは、0.5~4mmであることが好ましく、1~3mmであることがより好ましい。
第一ガラス板の形状は特に限定されず、平板であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0051】
なお、ガラス板として、強化処理を施されていないガラス(すなわち、非強化ガラス)を用いることができる。ここで、強化処理とは、ガラス板の表面に圧縮応力を付与して強度を高める処理(物理強化及び化学強化の両方、またはいずれか一方)である。尚、本開示で言う非強化ガラスとは、表面に圧縮応力を備えないガラス板だけでなく、炉内での加熱によって曲げ加工されたガラス板が炉内での温度プロファイルに従って冷却されることで、ガラス板の表面に圧縮応力を備えることになったものも含む。非強化のガラス板の表面が備える圧縮応力は50MPa以下であることが好ましく、強化処理を施されたガラス板の表面が備える圧縮応力は50MPaを超えることが好ましい。
【0052】
(第二ガラス板)
第二ガラス板は、特に限定されず、第一ガラス板と同様のガラス板を使用することができる。
【0053】
第一ガラス板及び第二ガラス板の製造方法(成型方法)は特に限定されず、公知の製造方法(例えば、フロート法など)を用いることができる。
【0054】
第一ガラス板の厚さが、第二ガラス板の厚さより厚いことが好ましい。
【0055】
[車両用合わせガラスの製造方法]
本開示の車両用合わせガラスの製造方法は、
S2面及びS4面の少なくとも1つの面上に着色セラミック層を形成し、
S2面、S3面、及びS4面の少なくとも1つの面上に着色樹脂層を形成し、
第一ガラス板と中間膜と第二ガラス板を積層する、車両用合わせガラスの製造方法である。
例えば、図3に示すように、第二ガラス板2のS4面上に着色セラミック層4を形成し、S3面上に着色樹脂層5を形成し、第一ガラス板1と中間膜3と第二ガラス板2を積層して、車両用合わせガラスを製造してもよい。
【0056】
本開示の車両用合わせガラスの製造方法の各工程の具体例を説明する。まず、所定の形状に切り出された第一ガラス板のS2面及び第二ガラス板のS4面の少なくとも1つの面に着色セラミック層を形成する。具体的には、着色セラミック層の原料となるセラミックペーストを塗布し、セラミックペーストが乾燥したのち、焼成して着色セラミック層を形成する。第一ガラス板と第二ガラス板を湾曲させる際の加熱により、着色セラミック層を形成してもよい。また、着色セラミック層の原料となるセラミックペーストだけでなく、導電層の原料となる銀ペーストも塗布し、着色セラミック層と導電層の両方を同時に形成してもよい。
【0057】
ガラス板の曲げ方法には、自重曲げ法とプレス曲げ法がある。本開示ではいずれの方法も使用することができる。自重曲げ法では、離型剤を介して重ねた2枚の平板ガラスを、所定の形状を持つ金型の上に置いた状態で、加熱して柔らかくすることでガラス板を曲げる。プレス曲げ法では、加熱して柔らかくした状態の平板ガラスを、一枚ずつ所定の形状を持つ金型に押し付けてガラス板を曲げる。ガラス板の曲げ成形温度は、例えば、550~750℃である。また、ガラス板を曲げる前に、セラミックペーストと着色セラミック層を、ガラス板の曲げ成型温度より低い温度、例えば400~650℃にて仮焼成をしてもよい。
【0058】
その後、第一ガラス板のS2面、第2ガラス板のS3面、及びS4面の少なくとも1つの面上に着色樹脂層を形成する。具体的には、着色樹脂層の原料となる樹脂組成物をガラス面上に塗布する。塗布方法は特に限定はされない。その後、樹脂組成物を硬化させるなどして着色樹脂層を形成する。
【0059】
着色樹脂層を形成する際に、着色樹脂層を形成するガラス板をガラスの軟化温度以上には加熱しないことが好ましく、500℃以上には加熱しないことが好ましく、400℃以上に加熱しないことが好ましく、300℃以上に加熱しないことが好ましい。ガラスを高温に加熱すると、着色樹脂層を損傷する恐れがある上に、熱でガラスが変形し、開口部の歪みが増す場合があるからである。
【0060】
着色樹脂層が光硬化性樹脂を含む場合は、塗布時の樹脂組成物は液体であるが、乾燥後に光の照射により樹脂が硬化する。塗布、乾燥、光の照射時に、樹脂及びガラス板は300℃以上に加熱されることはない。
【0061】
着色樹脂層が熱可塑性樹脂を含む場合は、樹脂組成物に熱可塑性樹脂が溶媒に溶けた状態で塗布され、乾燥後に着色樹脂層が形成される。塗布、乾燥時に300℃以上には加熱されない。
【0062】
着色樹脂層が熱硬化性樹脂を含む場合は、樹脂組成物に熱硬化性樹脂が溶媒に溶けた状態で塗布され、乾燥後に100~250℃への加熱により樹脂を硬化させ、着色樹脂層を形成する。
【0063】
第一ガラス板及び/又は第二ガラス板への着色樹脂層の形成が終わると、第一ガラス板と中間膜と第二ガラス板を積層する。具体的には、第一ガラス板と第二ガラス板の間に中間膜を挟み込む。その後、100℃以上300℃以下に加熱して中間膜を軟化させて、第一ガラス板と中間膜と第二ガラス板を一体化して、合わせガラスを製造する。中間膜を軟化させてガラス板を一体化する工程は、一般的にはオートクレーブ工程と呼ばれており、例えば、110~160℃、1~1.5MPaの高温高圧環境で中間膜を軟化させてガラス板と密着させる。第一ガラス板と第二ガラス板の間に中間膜を挟み込んだ後、オートクレーブ工程を行う前、脱気工程を行い、ガラス板と中間膜の間にある空気を除くことが好ましい。また、脱気を容易にするために、中間膜にはエンボス加工により凹凸が形成されているとよい。
【0064】
本開示の製造方法では、加熱により軟化する中間膜ではなくガラス板上に着色樹脂層を形成するため、製造時のオートクレーブ工程における加熱により、着色樹脂層の形状が変化することがなく、製造時の不良品率を下げることができて量産性に優れる。特に中間膜にエンボス加工がある場合、凹凸のある表面に着色樹脂層を形成すると、オートクレーブ工程において凹凸が解消される際に着色樹脂層も変形して、着色樹脂層がない欠陥部分が形成される可能性があるが、本開示ではガラス板上に形成するため着色樹脂層の変形は抑制される。
【0065】
また、中間膜には着色樹脂層がないため、中間膜の精密な位置合わせを行わずに中間膜を第一ガラス板と第二ガラス板に挟み込むことができ、量産性に優れる。
【0066】
図1の車両用合わせガラス10に用いる第二ガラス板2の製造工程の一例を図13及び14に示す。まず、図13の第二ガラス板2Aのように、S4面上に着色セラミック層4を形成する。図10は、第二ガラス板2Aの平面図である。その後、図14のように、S3面上に着色樹脂層5を形成して、車両用合わせガラス10に用いる第二ガラス板2を製造する。
【実施例0067】
以下、本開示の実施例について説明するが、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0068】
以下の実施例1及び比較例1において、図15に平面図を示す合わせガラス20(実施例1は図16の合わせガラス20a、比較例1は図17の合わせガラス20b)を作製した。合わせガラス20は、ガラス板21上に、透過領域と遮光層22とを有する。遮光層22は開口部23を有する。透過領域は、ガラス板の遮光層22がない部分である。
実施例1では、着色樹脂層5に相当するように、黒色樹脂インクにより遮光層22を構成し、比較例1では黒色セラミックペーストにより遮光層22を形成した。
【0069】
(実施例1)
まず、横300mm、縦300mm、厚さ2mmのフロートガラス板(ソーダライムガラス)を2枚準備した。2枚の内の1枚のガラス板(車内側ガラス板25)に離型剤として芒硝水溶液(比重1.08)をガラス表面に散布し、150℃で乾燥させた。その後、離型剤を塗布した面を挟むように、2枚のガラス板を積層した。その後、積層状態のまま焼成炉に車外側ガラスが下側になるようにセットし、5分間ガラス板が630℃になるまで加熱した(自重曲げ工程を想定した加熱)。冷却後、車内側ガラス25の車外に近い方の面(S3面)に遮光層22aを図15に示した所定のパターンにて形成した。遮光層22aは、黒色樹脂インクをスクリーン印刷により塗布し、紫外線照射で硬化して形成した。黒色樹脂インクには、帝国インキ製造製のUV BUL(アクリル系紫外線硬化性樹脂、カーボンブラック含有)を用いた。また、紫外線照射は、ピーク照度400mJ/cm、積算光量800mW/cmの条件により硬化を行った。
次に、図16の構成となるように車外側ガラス板24と車内側ガラス板25との間に中間膜26(ポリビニルブチラール、PVB、30mil)を配置して積層体とした。該積層体を真空バッグに入れ、脱気処理を行った(脱気工程)後、約90℃、0.25MPaで、約10分間、加圧・加熱処理(予備接着工程)を施した。次に、該積層体をオートクレーブに入れ、約135℃、1.3MPaで、約30分間、加圧・加熱処理を施し、合わせガラス20aを得た。
【0070】
(比較例1)
離型剤散布・乾燥までは実施例1と同様の工程で行った。その後、車内側ガラス板25の車内面側(S4面)に、遮光層22bを図15に示した所定のパターンにて形成した。具体的には、顔料とガラスフリットを含む黒色セラミックスペーストを、実施例1の遮光層22に相当する部分にスクリーン印刷により塗布し、150℃にて乾燥した。その後、セラミックスペーストを塗布したS4面が上になるように、車内側ガラス25を上にして、離型剤を塗布した面を挟むように、2枚のガラス板を積層した状態で、焼成炉で5分間ガラス板が630℃になるまで加熱した(自重曲げ工程を想定した加熱。セラミックペーストの焼付も行われる)。冷却後、図17の構成となるように積層し、実施例1と同様にして合わせガラス20bを得た。
【0071】
(光学歪評価)
次に、実施例1及び比較例1の合わせガラスについて、光学歪を評価した。光学歪は、凸レンズ/凹レンズの焦点距離の逆数として定義でき、一般にミリダイオプタ―(mdpt)として表される。この光学歪の値は正または負の値を取り、光学歪が小さいほどゼロに近い値となる。光学歪はISRA VISION社製LABSCAN-Screen2D(製品名)を用いて測定を行った。測定は以下の条件にて実施した。ガラス傾斜角は26.3°(水平を0°とする)とした。なお、透視歪の評価には水平方向の光学歪(horizontal distortion)を評価対象として用いた。評価対象範囲は図15に示した開口部23の内部の透過領域とした。また、サンプル作製上生じるスポット歪の影響を除外するため、ピクセルごとに出力される光学歪から、外れ値を除いた最大絶対値を算出し得られた値を評価に使用した。ここで、外れ値とは箱ひげ図における外れ値である。つまり、以下で定義される最大閾値及び最小閾値の範囲を超える値である。
最大閾値=第三四分位数+1.5×四分位範囲
最小閾値=第一四分位数―1.5×四分位範囲
その結果、比較例1の合わせガラスは、415mdptと光学歪の値が大きくなることが認められた。一方、実施例1の合わせガラスは、光学歪が175mdptと抑制されていることが確認された。このような違いは、セラミックスペーストの焼き付けに起因すると考えられる。実施例1の合わせガラスは遮光層の焼き付けを行う必要がないことから、曲げ加工時の温度ムラが解消されることで歪みの発生が抑制されたと考えられる。
【0072】
以上のことから、情報取得装置用の開口部を持つ遮光層を、着色樹脂層5で作成すれば、開口部内の透過領域の光学歪が少なくなることが分かる。
【0073】
(参考例)
黒色セラミックスペーストにより、開口部を持たない帯状パターンの着色セラミック層を形成する以外は、比較例1と同じ条件で合わせガラスを製造した。着色セラミック層周辺の透視歪の分布を評価した結果、着色セラミック層の端部からの距離が遠くなるほど、急激に透視歪みが改善していることが分かった。特に、着色セラミック層の端部からの距離が10mmの箇所では、距離が1mmの箇所の透視歪の3分の1程度にまで減少し、距離が30mmの箇所では着色セラミック層の影響は完全になくなっていた。
【0074】
そのため、着色樹脂層の開口部が、着色セラミック層から10mm以上離れていると、開口部内に着色セラミックス層に由来する透視歪の影響を軽減でき、開口部内の透過領域の歪みを抑えることができる。
【符号の説明】
【0075】
1、24 第一ガラス板
2、2A、25 第二ガラス板
3、26 中間膜
4、22b 着色セラミック層
5、22a 着色樹脂層
6、23 開口部
7 ドット状着色樹脂層
S1 S1面
S2 S2面
S3 S3面
S4 S4面
U 上辺
W 着色セラミック層の幅
L 着色セラミック層がない領域の長さ
10、11、12、13、14、15、16、17、20、20a、20b 車両用合わせガラス
21 ガラス板
22 遮光層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17