(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082094
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】切梁装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
E02D17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195812
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】393022506
【氏名又は名称】丸紅建材リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】石井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 義英
(57)【要約】
【課題】腹起の間に据え付けた状態のもとで山留壁に押付力を確実に伝達し得るようにする。
【解決手段】相互に対向する腹起11a、11b間に配置される切梁装置20であって、複数の切梁部材22、23を相互に連結して形成される切梁本体24と、隣り合う他の切梁部材に突き当てられる上端部、および隣り合う他の切梁部材との間で隙間38を形成する下端部が形成された連結端面33、34と、隣り合う切梁部材の上面に取り付けられる上側カバープレート41と、隣り合う切梁部材の下面に取り付けられる下側カバープレート42と、少なくとも1つの切梁部材に設けられ、切梁本体の全長を伸縮するジャッキと26、を有し、切梁本体24が腹起の間に真っ直ぐに配置された状態もとで、ジャッキ26により切梁本体24に軸方向の締め付け力を加えるようにしたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する腹起の間に配置される切梁装置であって、
複数の切梁部材を相互に連結して形成される切梁本体と、
前記切梁部材に設けられ、隣り合う他の切梁部材に突き当てられる上端部、および隣り合う他の切梁部材との間で隙間を形成する下端部が形成された連結端面と、
隣り合う前記切梁部材の上面に前記連結端面を横切って取り付けられる上側カバープレートと、
隣り合う前記切梁部材の下面に前記連結端面を横切って取り付けられる下側カバープレートと、
少なくとも1つの前記切梁部材に設けられ、前記切梁本体の全長を伸縮するジャッキと、を有し、
前記切梁本体が前記腹起の間に真っ直ぐに配置された状態もとで、前記ジャッキにより前記切梁本体に軸方向の締め付け力を加えるようにしたこと、
を特徴とする切梁装置。
【請求項2】
相互に隣り合う前記切梁部材の一方の連結端面の上端部と他方の前記連結端面の上端部との間に挟み込まれる肉厚部、および前記連結端面の間に隙間を形成する肉薄部を有するテーパ形状のキャンバーを前記連結端面の間に配置し、一方の前記切梁部材は前記肉厚部を介して他方の前記切梁部材に突き当てられるようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の切梁装置。
【請求項3】
前記切梁部材は角形鋼管と当該角形鋼管の端面に接合されて前記連結端面を形成する端面板とからなり、前記キャンバーを取り付けるねじ部材を前記端面板に装着したこと、
を特徴する請求項2記載の切梁装置。
【請求項4】
前記ねじ部材を着脱操作する操作窓を前記角形鋼管に形成したこと、
を特徴とする請求項3記載の切梁装置。
【請求項5】
前記腹起に前記切梁本体を取り付ける継手部材を前記切梁本体の両端部に設けたこと、
を特徴とする請求項1記載の切梁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削面が崩壊するのを防ぐための山留支保工に適用される切梁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削する際に周りの地盤が崩れないようにしたり、建物が倒れないようにしたりするために、山留壁が仮設される。また、この山留壁だけで地盤の崩壊を止めることができない場合には、山留壁を支えるために山留支保工が設けられる。山留支保工は、山留壁の内側面に水平に配置される腹起と、相互に水平方向に対向する各腹起の間に取り付けられる切梁つまり切梁装置とからなる。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されているように、複数のシートパイルを打ち込むことにより地盤に山留壁が仮設される。山留壁により直方体形状の作業空間となる領域を確保するために、山留壁により囲まれた領域を掘削しながら、各山留壁の内側面に複数のH形鋼からなる腹起が水平に取り付けられる。相互に水平方向に対向する腹起の間には、切梁つまり切梁装置が取り付けられる。特許文献1の切梁装置は、角形鋼管からなる切梁本体と、切り梁本体の端部に取り付けられる長さ調整部材と、長さ調整部材の端部に取り付けられる継手とを備えている。この切梁装置においては、切り梁本体が角形鋼管により形成されており、切り梁本体の断面形状を小さくすることができ、鋼材の使用量を削減することができる。
【0004】
また、特許文献2には、複数の切梁を連結することにより形成される切梁が記載されており、全体の切梁は上向きに凸となるように弧状に湾曲している。相互に連結される2つの切梁の連結端面の間には、テーパ形状のシムプレートが両方の連結端面に密着して取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-175226号公報
【特許文献2】特開2018-199908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
山留支保工の切梁つまり切梁装置は、水平方向に対向する腹起の間に取り付けられ、山留壁を垂直に保持するための部材であり、切梁に設けられたジャッキによって、対向する山留壁に向けて押付力つまり締結力を付勢する。このとき、切梁の長さが比較的短い場合や、切梁に剛性の高い部材を使用すれば、クレーンで切梁を吊り下げて腹起に据え付ける際には、切り梁の撓みを小さく押さえることができる。
【0007】
しかしながら、切梁の長さを長くしなければならない場合には、腹起の間に切梁を据え付けると、切梁は長手方向中央部が下方に撓むことがある。このように切梁が撓むと、切梁が破損する恐れがある。そのため、特許文献2においては、複数の切梁を連結することにより形成される切梁全体を予め上向きに凸となるように弧状に湾曲させている。
【0008】
このように、切梁全体を弧状に湾曲させると、ジャッキにより切梁に軸方向の押付力を付加しても、腹起を介して確実に押付力を山留壁に伝達することができなくなる。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、切梁の全長を長くしても、腹起の間に据え付けた状態のもとで山留壁に押付力を確実に伝達し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の切梁装置は、相互に対向する腹起の間に配置される切梁装置であって、複数の切梁部材を相互に連結して形成される切梁本体と、前記切梁部材に設けられ、隣り合う他の切梁部材に突き当てられる上端部、および隣り合う他の切梁部材との間で隙間を形成する下端部が形成された連結端面と、隣り合う前記切梁部材の上面に前記連結端面を横切って取り付けられる上側カバープレートと、隣り合う前記切梁部材の下面に前記連結端面を横切って取り付けられる下側カバープレートと、少なくとも1つの前記切梁部材に設けられ、前記切梁本体の全長を伸縮するジャッキと、を有し、前記切梁本体が前記腹起の間に真っ直ぐに配置された状態もとで、前記ジャッキにより前記切梁本体に軸方向の締め付け力を加えるようにしたこと、を特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の本発明の切梁装置は、請求項1記載の切梁装置において、相互に隣り合う前記切梁部材の一方の連結端面の上端部と他方の前記連結端面の上端部との間に挟み込まれる肉厚部、および前記連結端面の間に隙間を形成する肉薄部を有するテーパ形状のキャンバーを前記連結端面の間に配置し、一方の前記切梁部材は前記肉厚部を介して他方の前記切梁部材に突き当てられるようにしたこと、を特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の本発明の切梁装置は、請求項2記載の切梁装置において、前記切梁部材は角形鋼管と当該角形鋼管の端面に接合されて前記連結端面を形成する端面板とからなり、前記キャンバーを取り付けるねじ部材を前記端面板に装着したこと、を特徴する。
【0013】
請求項4に記載の本発明の切梁装置は、請求項3記載の切梁装置において、前記ねじ部材を着脱操作する操作窓を前記角形鋼管に形成したこと、を特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の本発明の切梁装置は、請求項1記載の切梁装置において、前記腹起に前記切梁本体を取り付ける継手部材を前記切梁本体の両端部に設けたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切梁本体を構成する切梁部材は連結部が上側カバープレートと下側カバープレートにより連結されており、切梁本体が腹起の間に配置されると、切梁本体は真っ直ぐな状態となるので、ジャッキにより切梁本体に締め付け力を加えると、切梁本体には軸方向の締め付け力が加えられるので、山留壁に押付力を確実に伝達することができる。
【0016】
一方の切梁部材の端面と他方の切梁部材の端面との間にキャンバーを配置すると、キャンバーの肉厚部としての上端部が連結端面の上端部との間に挟み込まれて、締め付け力がキャンバーの上端部を介して伝達される。
【0017】
切梁部材の端面に端面板を接合すると、端面板に取り付けられるねじ部材によりキャンバーを切梁部材に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施の形態である切梁装置を備えた山留支保工により山留壁を支えている状態を示す平面図である。
【
図2】(A)は基台の上で地組された状態の切梁装置を示す平面図であり、(B)は(A)の正面図である。
【
図3】
図2(A)におけるA部を示す拡大正面図である。
【
図4】
図2(B)におけるB部を示す拡大断面図である。
【
図5】相互に隣り合う切梁部材の連結端部を示す分解斜視図である。
【
図6】切梁本体を腹起に連結するための継手部材を示す斜視図である。
【
図7】クレーンで吊り下げている状態の切梁装置を示す正面図である。
【
図8】(A)は相互に対向する腹起の間に据え付けられた状態の切梁装置を示す平面図であり、(B)は(A)の正面図である。
【
図9】他の実施の形態である切梁装置を示す正面図である。
【
図10】他の実施の形態である切梁装置における
図4と同様の部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は山留壁10が地盤に仮設された状態を示している。山留壁10は複数のシートパイルを地盤に打ち込むことにより形成される。この山留壁10は長辺の山留壁10aと短辺の山留壁10bとからなり平面視で四辺形に仮設され、山留壁10によりその内側に直方体形状の作業空間となる領域が確保される。そして、その領域を地表から掘削しながら、山留壁10の内面側にそれぞれH形鋼からなる複数の腹起11a、11bが取り付けられる。
図1において、腹起11aは長辺の山留壁10aに取り付けられた腹起を示し、腹起11bは短辺の山留壁10bに取り付けられた腹起を示す。
【0021】
それぞれの腹起11a、11bの端部間には、複数の火打梁12が継手13により水平に取り付けられる。また、水平方向に相互に対向し合う腹起11aの間には、切梁装置20が配置されている。そして、切梁装置20と腹起11a、11bとにより山留支保工21が構成される。
【0022】
切梁装置20は、
図2に示すように、2本の切梁部材22、23を連結することにより形成される切梁本体24を備えており、それぞれの切梁部材22、23は横断面が正方形状の角形鋼管により形成されている。切梁本体24の一端部には継手部材25が取り付けられ、他端部には油圧ジャッキ26を介して継手部材27が取り付けられている。継手部材25、27は、
図1に示すように、腹起11aに取り付けられている。すなわち、切梁装置20は、両方の継手部材25、27により腹起11a、11bの間に取り付けられている。なお、継手部材25、27の形状は、図示する場合には台形ブロックであるが、これの形状に限定されるものではない。
【0023】
このように、切梁本体24と継手部材25、27と油圧ジャッキ26とを備えた切梁装置20は、
図2に示すように、図示しない支持基盤面に配置されたH形鋼からなる架台28の上で組み立てられてから、
図1に示すように、腹起11a、11bに据え付けられる。
【0024】
それぞれの切梁部材22、23は横断面が四辺形の角形鋼管であり、
図3~
図5に示すように、切梁部材22は上面部22aと下面部22bと側面部22c、22dとを有し、切梁部材23は上面部23aと下面部23bと側面部23c、23dとを有している。2つの切梁部材22、23の端面には端面板31、32が溶接により接合されており、それぞれの端面板31、32の外面は相互に対向し合う連結端面33、34を形成している。端面板31、32は切梁部材22、23の横断面形状に対応させてほぼ正方形となっている。また、端面板31、32の外周面は切梁部材22、23の外周面にほぼ一致しており、外方には突出していない。ただし、端面板31、32としては、側面が切梁部材22、23の側面
図23c、23dから外方に突出するようにしてもよい。
【0025】
相互に隣り合う2つの切梁部材22、23の連結端面33、34の間にはキャンバー35が配置されており、キャンバー35は上部から下部に向けて肉厚が薄くなるように両面が傾斜したテーパ形状となっている。キャンバー35の上端部36は最も肉厚が厚い肉厚部であり、下端部37は上端部36よりも肉厚が薄い肉薄部である。キャンバー35の上下方向の寸法は、連結端面33、34の上下寸法よりも短く設定されている。なお、キャンバー35としては、一方面のみが他方面に対して傾斜した板材により形成することもできる。
【0026】
両方の切梁部材22、23の連結端面33、34の上端部は、キャンバー35を介して相互に突き当てられ、キャンパー35の肉厚部は連結端面33、34の上端部に挟み込まれる。切梁部材22、23が突き当てられる上端部よりも下側の部分におけるキャンバー35の両面と連結端面33、34との間には隙間38が形成され、隙間38はキャンバー35の下方における連結端面33、34の間にまで延びている。
【0027】
隣り合う2つの切梁部材22、23の上面部22a、23aには、連結端面33、34およびキャンバー35を横切って上側カバープレート41が取り付けられており、下面部22b、23bには、連結端面33、34および隙間38を横切って下側カバープレート42が取り付けられている。上側カバープレート41と下側カバープレート42は、それぞれボルトとナットからなる複数本のねじ部材43により切梁部材22、23に締結されており、両方の切梁部材22、23は上側カバープレート41と下側カバープレート42により相互に連結されて、一直線状に真っ直ぐに延びている。
【0028】
図4に示すように、キャンバー35を両方の切梁部材22、23の間に装着するために、端面板31,32に形成された取付孔にねじ部材44が取り付けられており、ねじ部材44はキャンバー35に形成されたスリット45(
図5)を貫通している。両方の端面板31、32には、ねじ部材46が取り付けられており、ねじ部材46により端面板31、32は相互に締結されている。
【0029】
切梁部材22の側面部22c、22dには操作窓47が形成されており、同様に切梁部材23の側面部23c、23dには操作窓47が形成されている。上述したねじ部材43、44、46を作業者が切梁部材22、23に取り付けるときには、それぞれの操作窓47から手を挿入することにより、ねじ止め作業を行うことができる。切梁部材22、23を分離させるために、ねじ部材を取り外すときにも操作窓47が利用される。このように、操作窓47はねじ部材の着脱操作のために使用される。操作窓47よりもそれぞれの切梁部材22、23の長手方向中央寄りには、仕切り板48が取り付けられている。
【0030】
図6は継手部材25を示す拡大斜視図である。継手部材25は切梁本体24を腹起11aに連結するために設けられている。継手部材25は腹起11aに取り付けられる取付板51と、切梁本体24に取り付けられる先端板52と、屈曲した側板53,54とを有し、それぞれは水平方向の基板55により連結されている。また、上面板56が先端板52と取付板51との間に、上側に位置して取り付けられており、同様のサイズの図示しない下面板が下側に位置して取り付けられている。さらに、複数の補強用のリブ57が基板55に取り付けられている。継手部材25は、上面板56と切梁部材22の上面部22aとにねじ結合される連結板58により切梁部材22の端部に取り付けられる。同様の連結板58が継手部材25の下面板と切梁部材22の下面部との間にも取り付けられている。
【0031】
継手部材27も同様の構造であり、継手部材27は連結板59により油圧ジャッキ26に取り付けられる。油圧ジャッキ26は切梁部材23の端面に取り付けられており、油圧ジャッキ26により切梁装置20の全長を伸縮させることができるとともに、切梁装置20が腹起11a、11bの間に配置された状態のもとで、切梁本体24には腹起に対する締め付け力が加えられる。
【0032】
山留支保工21を構成する切梁装置20の上下方向については、
図1および
図2に示すように、架台28に支持された状態を基準としている。
【0033】
図2に示すように、切梁装置20を架台28の上で組み立てた状態においては、切梁装置20は一直線状に真っ直ぐとなっている。
図7はクレーンにより切梁装置20を吊り上げている状態を示しており、切梁装置20はワイヤWを介して図示しないクレーンにより架台28から吊り上げられる。ワイヤWを切梁装置20に引っ掛けるために、切梁部材22、23の上側には複数のフック29が設けられている。
【0034】
図7に示すように、切梁装置20をクレーンで吊り上げると、切梁装置20は長手方向の中央部が凸となるように、僅かに湾曲する。
図7おいては湾曲した状態を誇張して示すために、湾曲前の真っ直ぐな状態が破線で示している。2つの切梁部材22、23は上側カバープレート41と下側カバープレート42とにより連結されており、上側カバープレート41には引っ張る方向の応力が加えられ、下側カバープレート42には圧縮方向の応力が加えられる。これにより、見た目で湾曲状態が観察される程ではないが、切梁部材22、23の自重の弾性変形もあり、僅かに上側に凸形状に湾曲する。
【0035】
図8は相互に対向する腹起11a、11aの間に据え付けられた状態の切梁装置20を示しており、切梁装置20は全体的に一直線状に真っ直ぐとなった状態で据え付けられる。据え付ける前の切梁装置20は、油圧ジャッキ26により全長が、水平方向に対向し合う腹起11a、11aの間の距離よりも短く設定されている。これにより、容易に切梁装置20を腹起11a、11aの間に配置することができ、継手部材25、27を腹起11a、11bに取り付けることができる。取り付ける際には、油圧ジャッキ26を駆動して切梁装置20の両端を腹起11a、11bに押し付ける。この押し付け操作時には、切梁本体24、切梁装置20は真っ直ぐとなっているので、油圧ジャッキ26による締付力は切梁装置20を全て軸方向に圧縮する押付力となる。
【0036】
切梁装置20上側に凸形状となるように湾曲していると、油圧ジャッキによる締付力は切梁装置を圧縮する方向のみならず、切梁装置を上側にさらに湾曲させる方向の分力に一部が変換されるので、油圧ジャッキにより発生する締付力を有効に利用することができないが、上側カバープレート41と下側カバープレート42により切梁部材22、23が連結されているので、切梁装置20を腹起11a、11aの間に据え付けると、切梁装置20は真っ直ぐに延びた状態となり、油圧ジャッキ26により大きな締付力を発揮することなく、所望の押付力を軸方向に加えることができる。
【0037】
図9は他の実施の形態である切梁装置20を示す正面図であり、地組されて架台28の上に組み立てられた状態の切梁装置20を示している。
【0038】
この切梁装置20の切梁本体24は、3本の切梁部材22、22a、23により組み立てられている。切梁部材22、23は上述したものと同一であり、切梁部材22aは、その両端部に端面板が取り付けられており、それぞれの外面が連結端面を構成している。このように、切梁本体24は、2本の切梁部材に限られず、据え付けられる腹起11a、11bの間に距離に応じて、複数の切梁部材を相互に連結することにより組み立てることができる。
【0039】
図10は他の実施の形態である切梁装置における
図4と同様の部分を示す断面図である。この切梁本体24における切梁部材22、23に取り付けられた端面板31、32は、下端部が後退する方向に傾斜しており、端面板31、32の外面により形成される切梁部材22、23の連結端面33、34は、上端部において直接突き当てられている。上端部よりも下側の部分においては、連結端面33、34により形成される隙間38は、下側に向けて隙間寸法が大きくなるようにテーパ形状となっている。この形態の切梁装置20においても、上述した切梁装置20と同様に、腹起11a、11aの間に据え付けると、全体的に一直線状なる。2本の切梁部材22、23のうち一方の端面板のみを傾斜させて、他方の端面板を切梁部材に対して直角に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、土木建築現場において配置される山留壁を保持するために適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 山留壁
11a、11b 腹起
20 切梁装置
21 山留支保工
22、23 切梁部材
24 切梁本体
25 継手部材
26 油圧ジャッキ
27 継手部材
28 架台
31、32 端面板
33、34 連結端面
35 キャンバー
36 上端部
37 下端部
38 隙間
41 上側カバープレート
42 下側カバープレート
45 スリット
47 操作窓
48 仕切り板
W ワイヤ