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  • 特開-積層体及びタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082095
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】積層体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/16 20060101AFI20240612BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240612BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240612BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240612BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240612BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B32B25/16
C08L15/00
C08K5/09
C08K5/14
B60C1/00 A
B60C11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195814
(22)【出願日】2022-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小谷 享平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 英幸
【テーマコード(参考)】
3D131
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3D131BA07
3D131BA18
3D131BB03
3D131BB05
3D131BB18
3D131BC31
3D131BC36
3D131LA28
4F100AH08A
4F100AH08B
4F100AH08H
4F100AK73A
4F100AK73B
4F100AL06A
4F100AL06B
4F100AN02A
4F100AN02B
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA02B
4F100CA02H
4F100CA03A
4F100CA03H
4F100EJ062
4F100GB31
4F100JK01
4F100JL11
4F100JL16
4J002AC111
4J002DD046
4J002DD076
4J002EG046
4J002EK007
4J002EK017
4J002EK027
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002EK087
4J002FD146
4J002FD147
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴム層同士が十分な接着強度で接合されており、且つ十分な強度を有する積層体を提供する。
【解決手段】ゴム層(A)2とゴム層(B)3との積層体1であって、ゴム層(A)が、ゴム成分と、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩とを含むゴム組成物からなり、前記ゴム成分が、ジエン系ゴムを式(1):

[X及びXは、独立してピリジル基又はピリミジニル基;Y及びYは、独立して単結合又は二価の炭化水素基である。]で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、該変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されており、前記ゴム組成物中の前記金属塩の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して10~60質量部であることを特徴とする、積層体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層(A)と、該ゴム層(A)に積層されたゴム層(B)と、を具える積層体であって、
前記ゴム層(A)が、ゴム成分(a)と、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)と、を含むゴム組成物からなり、
前記ゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを下記一般式(1):
【化1】
[式中、X及びXは、それぞれ独立してピリジル基又はピリミジニル基であり、Y及びYは、それぞれ独立して単結合又は二価の炭化水素基である。]で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、
前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されており、
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記金属塩(b)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して10~60質量部であることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物が、有機過酸化物(c)を含み、
該有機過酸化物(c)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して3質量部以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記金属塩(b)が、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記有機過酸化物(c)が、ジクミルパーオキサイド(DCP)である、請求項2に記載の積層体。
【請求項5】
前記変性ジエン系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が10,000~3,000,000である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーが、70kJ/mol以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記ゴム層(B)は、ゴム成分(a)を含むゴム組成物からなり、
前記ゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、硫黄(d)及び/又は有機過酸化物(c)を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1に記載の積層体を含むことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用タイヤ、トラック・バス用タイヤ等の大型タイヤにおいては、トレッドゴムが摩耗した場合、該トレッドゴムを除去して台タイヤを得、該台タイヤに対して、摩耗したトレッドゴムの代わりに更生ゴムを貼り付けてタイヤを更生することが一般に行われている(特許文献1)。
タイヤの更生(リトレッド)方法としては、コールド方式(プレキュア方式)と、ホット方式(リモールド方式)が知られているが、台タイヤの過加硫を抑制する観点からは、コールド方式が好ましい。ここで、コールド方式のリトレッドで重要となるのが、加硫ゴム同士の接着性であり、加硫ゴム同士の接着性を確保するには、通常、更生ゴムへのセメンティング処理や、台タイヤに未加硫状態のクッションゴムを巻き付ける等の前処理が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-112010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなセメンティング処理や、未加硫状態のクッションゴムの巻き付け作業は、タイヤのリトレッド作業の生産性を低下させてしまう。そのため、タイヤのリトレッドをより効率的に行うためには、セメンティング処理や、未加硫状態のクッションゴムの巻き付け等の前処理を行わずとも、ゴム層同士を十分に接着できる技術の確立が極めて重要である。また、更生ゴム(ゴム層)についても、ゴム自体としての十分な強度(破断強度等)の担保も重要である。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、ゴム層同士が十分な接着強度で接合されており、且つ十分な強度(破断強度等)を有する積層体を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる積層体を具え、十分な耐久性を有するタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の積層体及びタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
[1] ゴム層(A)と、該ゴム層(A)に積層されたゴム層(B)と、を具える積層体であって、
前記ゴム層(A)が、ゴム成分(a)と、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)と、を含むゴム組成物からなり、
前記ゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを下記一般式(1):
【化1】
[式中、X及びXは、それぞれ独立してピリジル基又はピリミジニル基であり、Y及びYは、それぞれ独立して単結合又は二価の炭化水素基である。]で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、
前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されており、
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記金属塩(b)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して10~60質量部であることを特徴とする、積層体。
上記[1]に記載の本発明の積層体は、ゴム層(A)とゴム層(B)とが十分な接着強度で接合されており、且つ十分な強度(破断強度等)を有する。
【0008】
[2] 前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物が、有機過酸化物(c)を含み、
該有機過酸化物(c)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して3質量部以下である、[1]に記載の積層体。
上記[2]に記載の積層体は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上しており、また、ゴム層(A)が十分なゴム弾性を有し易い。
【0009】
[3] 前記金属塩(b)が、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)である、[1]又は[2]に記載の積層体。
上記[3]に記載の積層体は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)と、ゴム層(A)とゴム層(B)の間の接着強度が向上している。
【0010】
[4] 前記有機過酸化物(c)が、ジクミルパーオキサイド(DCP)である、[2]に記載の積層体。
上記[4]に記載の積層体は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が更に向上している。
【0011】
[5] 前記変性ジエン系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が10,000~3,000,000である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[5]に記載の積層体は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上しており、また、ゴム層(A)を構成するゴム組成物の混練における作業性が良好である。
【0012】
[6] 前記金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーが、70kJ/mol以上である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[6]に記載の積層体は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上している。
【0013】
[7] 前記ゴム層(B)は、ゴム成分(a)を含むゴム組成物からなり、
前記ゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[7]に記載の積層体は、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易い。
【0014】
[8] 前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含む、[7]に記載の積層体。
上記[8]に記載の積層体は、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易い。
【0015】
[9] 前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含む、[7]又は[8]に記載の積層体。
上記[9]に記載の積層体は、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易い。
【0016】
[10] 前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含む、[7]~[9]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[10]に記載の積層体は、ゴム層(B)中に架橋構造を特に形成し易い。
【0017】
[11] 前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、硫黄(d)及び/又は有機過酸化物(c)を含む、[7]~[10]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[11]に記載の積層体は、ゴム層(B)の強度(破断強度等)が向上している。
【0018】
[12] [1]~[11]のいずれか一つに記載の積層体を含むことを特徴とする、タイヤ。
上記[12]に記載の本発明のタイヤは、十分な耐久性を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゴム層同士が十分な接着強度で接合されており、且つ十分な強度(破断強度等)を有する積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる積層体を具え、十分な耐久性を有するタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の積層体及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0022】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0023】
<積層体>
本実施形態の積層体は、ゴム層(A)と、該ゴム層(A)に積層されたゴム層(B)と、を具える。そして、本実施形態の積層体においては、前記ゴム層(A)が、ゴム成分(a)と、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)と、を含むゴム組成物からなり、
前記ゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを下記一般式(1):
【化2】
[式中、X及びXは、それぞれ独立してピリジル基又はピリミジニル基であり、Y及びYは、それぞれ独立して単結合又は二価の炭化水素基である。]で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、
前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されており、
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記金属塩(b)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して10~60質量部であることを特徴とする。
【0024】
本実施形態の積層体においては、ゴム層(A)が、上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムと、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含み、金属塩(b)が変性ジエン系ゴムの一般式(1)のテトラジン誘導体部分と錯化し易いため、変性ジエン系ゴムの一般式(1)のテトラジン誘導体部分に、金属塩(b)が配位結合して、錯体を形成する。そして、金属塩(b)が、複数の配位結合を形成することで、複数の変性ジエン系ゴムが架橋されることとなる。ここで、前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上の量で配合して変性されており、また、前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物においては、前記金属塩(b)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して10質量部以上であるため、ゴム組成物中に、変性ジエン系ゴムのテトラジン誘導体部分と、金属塩(b)とが十分な量で存在する。そして、ゴム層(A)中で、変性ジエン系ゴムのテトラジン誘導体部分と、金属塩(b)とから、十分な量の架橋構造が形成されるため、本実施形態の積層体は、十分な強度(破断強度等)を有する。
また、本実施形態の積層体において、ゴム層(A)は、変性ジエン系ゴムと金属塩(b)とを含み、隣接ゴム部材と十分な接着性を有する。そのため、本実施形態の積層体においては、従来のコールド方式のリトレッド技術で用いられていたセメンティング処理や、未加硫状態のクッションゴムの巻き付け等の前処理を行わずとも、ゴム層(A)とゴム層(B)とを十分な接着強度で接合することができる。
従って、本実施形態の積層体は、ゴム層(A)とゴム層(B)とが十分な接着強度で接合されており、且つ十分な強度(破断強度等)を有する。
【0025】
次に、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る積層体を説明する。図1は、本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。図1に示す積層体1は、ゴム層(A)2と、ゴム層(B)3と、を具え、ゴム層(A)2とゴム層(B)3とが接合されている。例えば、積層体1は、ゴム層(A)2にゴム層(B)3を積層し、所望により、加熱及び/又は加圧することで製造できる。ここで、ゴム層(A)2にゴム層(B)3は、事前に架橋された架橋ゴムから構成されていても、未架橋のゴムから構成されていてもよいが、本発明の一実施形態に係る積層体は、事前に架橋された架橋ゴムから構成されている。
なお、図1に示す積層体1は、ゴム層(A)2と、ゴム層(B)3と、の二層からなるが、本発明の積層体は、三層以上であってもよい。
【0026】
-ゴム層(A)-
本実施形態の積層体において、前記ゴム層(A)は、ゴム成分(a)と、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)と、を含むゴム組成物からなる。
【0027】
--ゴム成分(a)--
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記ゴム成分(a)は、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含む。なお、該ゴム成分(a)は、更に、前記テトラジン誘導体で変性されていないジエン系ゴムや非ジエン系ゴムを含んでもよい。なお、ゴム成分(a)中の、一般式(1)のテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムの含有率は、10質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましく、80質量%以上がより一層好ましく、100質量%でもよい。
【0028】
前記ジエン系ゴムは、ジエン系モノマー由来の単位(ジエン系単位)を含むゴムであり、更に、共重合可能なコモノマー由来の単位を含んでもよい。
前記ジエン系モノマー由来の単位は、ジエン系ゴムの架橋を可能とし、また、ゴムの様な伸びや強度を発現することができる。なお、架橋ゴム中においてジエン系ゴムは、通常は架橋された状態で存在するが、一部が架橋されていなくてもよい。ジエン系モノマー(ジエン系化合物)として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
一方、前記共重合可能なコモノマーとしては、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。該芳香族ビニル化合物として、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。
【0029】
前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、一種単独で使用してもよいし、二種以上のブレンドとして使用してもよい。
【0030】
前記非ジエン系ゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体は、前記ジエン系ゴムとのディールス・アルダー反応が進行し易く、金属塩(b)と組み合わさって、配位結合による架橋を形成し易い。また、一般式(1)で表されるテトラジン誘導体と金属塩(b)とは、錯化し易く、結合解離エネルギーが高くなり易く、強度の高い架橋構造を形成できる。
【0032】
上記一般式(1)中、X及びXは、それぞれ独立してピリジル基又はピリミジニル基である。合成容易性の観点から、X及びXは、ピリジル基であることが好ましい。前記ピリジル基は、2-ピリジル基でも、3-ピリジル基でも、4-ピリジル基でもよいが、2-ピリジル基が好ましい。また、前記ピリミジニル基は、2-ピリミジニル基でも、4-ピリミジニル基でも、5-ピリミジニル基でもよい。
【0033】
上記一般式(1)中、Y及びYは、それぞれ独立して単結合又は二価の炭化水素基である。ここで、二価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等が挙げられる。より具体的には、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。合成容易性の観点から、Y及びYは、単結合であることが好ましい(即ち、テトラジン環にX及びXが直接結合していることが好ましい)。
【0034】
ここで、上記一般式(1)中のX及びXが、ピリジル基であり、Y及びYが、単結合であることが好ましい。この場合、式(1)のテトラジン誘導体の入手が容易であり、また、金属塩(b)と特に錯化し易く、結合解離エネルギーが特に高くなり易く、より一層強度の高い架橋構造を形成できる。
【0035】
上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体としては、3,6-ジ(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(3-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(2-ピリジルメチル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(2-ピリジルエチル)-1,2,4,5-テトラジン、3-(2-ピリジルメチル)-6-(2-ピリジルエチル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(2-ピリミジニル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(4-ピリミジニル)-1,2,4,5-テトラジン、3,6-ジ(5-ピリミジニル)-1,2,4,5-テトラジン等が挙げられ、これらの中でも、3,6-ジ(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジンが好ましい。
【0036】
前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されている。前記テトラジン誘導体を、ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上の量で配合して得られる変性ジエン系ゴムを用いることで、配位結合架橋の網目密度が高くなり、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上する。前記変性ジエン系ゴムは、ゴム層(A)の強度(破断強度等)の観点から、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して2mol%以上の量で配合して変性されていることが好ましく、また、ゴム層(A)のゴム弾性の観点から、4mol%以下の量で配合して変性されていることが好ましい。
【0037】
前記変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体の結合量が、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して0.7mol%以上であることが好ましく、また、4.0mol%以下であることが好ましい。前記テトラジン誘導体の結合量が、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して0.7mol%以上であると、配位結合架橋の網目密度が高くなり、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上する。また、前記テトラジン誘導体の結合量が、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して4mol%以下であると、ゴム層(A)が十分なゴム弾性を有し易い。
【0038】
前記変性ジエン系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が10,000~3,000,000であるであることが好ましい。変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)が10,000以上であると、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上し、また、3,000,000以下であると、ゴム組成物の混練における作業性が良好である。変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)の観点から、100,000以上が更に好ましく、120,000以上がより一層好ましい。また、ゴム組成物の混練における作業性の観点から、2,000,000以下が更に好ましく、1,800,000以下がより一層好ましい。
【0039】
--金属塩(b)--
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物は、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含む。該金属塩(b)は、前記テトラジン誘導体部位と結合を形成し易い(錯化し易い)。金属塩(b)が、複数の前記テトラジン誘導体部位と配位結合を形成することで、複数の変性ジエン系ゴムが架橋されることとなる。
【0040】
前記金属塩(b)は、周期表第3族~第12族の元素を含む。
具体的には、周期表第3族の元素としては、スカンジウム、イットリウム等が挙げられる。
また、周期表第4族の元素としては、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。
また、周期表第5族の元素としては、バナジウム、ニオブ等が挙げられる。
また、周期表第6族の元素としては、クルム、モリブデン、タングステン等が挙げられる。
また、周期表第7族の元素としては、マンガン、レニウム等が挙げられる。
また、周期表第8族の元素としては、鉄、ルテニルム、オスミウム等が挙げられる。
また、周期表第9族の元素としては、コバルト、ロジウム、イリジウム等が挙げられる。
また、周期表第10族の元素としては、ニッケル、パラジウム、白金等が挙げられる。
また、周期表第11族の元素としては、銅等が挙げられる。
また、周期表第12族の元素としては、亜鉛等が挙げられる。
周期表第3族~第12族の元素は、前記テトラジン誘導体との結合が強くなり易い。また、金属塩(b)が、周期表第8族、第10族、第11族、第12族の元素を含む場合、前記テトラジン誘導体との結合が更に強くなり易い。
なお、金属塩(b)中の金属イオンに関して、イオンの価数は特に限定されず、各元素の取り得る任意の価数をとることができるが、好ましくは2価以上である。
【0041】
前記金属塩(b)は、鉄、銅、ニッケル、又は亜鉛を含むことが特に好ましい。鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、及び亜鉛イオンは、前記テトラジン誘導体との結合が特に強くなり易く、より強度の高い架橋構造を形成できる。なお、鉄イオンの価数は、2価(Fe2+)又は3価(Fe3+)であることが好ましい。
【0042】
前記金属塩(b)としては、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ハロゲン化金属塩、硫酸金属塩、硝酸金属塩、酢酸金属塩等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ハロゲン化金属塩及び酢酸金属塩が好ましい。アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ハロゲン化金属塩及び酢酸金属塩は、取り扱い易く、また、前記テトラジン誘導体部位と結合を形成し易い。なお、前記金属塩(b)の形態は、特に限定されず、例えば、水和物等であってもよい。
【0043】
また、前記ハロゲン化金属塩としては、フッ化金属塩、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等が挙げられ、これらの中でも、塩化金属塩が好ましい。塩化金属塩は、取り扱い易く、また、前記テトラジン誘導体部位と結合を更に形成し易い。
【0044】
前記金属塩(b)として、具体的には、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)、FeCl、FeCl・4HO、FeCl、FeCl・6HO、CuCl、CuCl、CuBr、Ni(CHCOO)・4HO等が挙げられる。また、金属塩(b)は、1種のみでも、2種以上の組み合わせでもよい。
これらの中でも、前記金属塩(b)としては、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)が好ましい。前記金属塩(b)がジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)であると、ゴム層(A)の強度(破断強度等)と、ゴム層(A)とゴム層(B)の間の接着強度が向上する。
【0045】
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記金属塩(b)の含有量は、前記ゴム成分(a)100質量部に対して10~60質量部である。金属塩(b)の含有量が、ゴム成分(a)100質量部に対して、10質量部以上であると、配位結合架橋の網目密度が高くなり、ゴム層(A)が十分な強度(破断強度等)を確保できる。また、金属塩(b)の含有量が、ゴム成分(a)100質量部に対して、60質量部以下であると、ゴム層(A)が十分なゴム弾性(エラストマー性)を有し易い。また、前記金属塩(b)の含有量は、ゴム層(A)の強度(破断強度等)の観点から、前記ゴム成分(a)100質量部に対して20質量部以上が好ましく、また、ゴム層(A)のゴム弾性の観点から、40質量部以下が好ましい。
【0046】
前記金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーは、70kJ/mol以上であることが好ましい。該結合解離エネルギーが、70kJ/mol以上であることで、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上する。また、前記金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーは、90kJ/mol以上であることが更に好ましく、110kJ/mol以上であることがより一層好ましく、また、500kJ/mol以下であることが好ましい。該結合解離エネルギーが、500kJ/mol以下であると、ゴム層(A)の接着性が向上し、また、リサイクルし易くなる。
【0047】
ここで、前記金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーは、M06/6-31G(d,p)//B3PW91-D3/6-31G(d,p) レベルまたはM06/6-31G(d,p)レベル, 真空中で計算された値であり、前記テトラジン誘導体がジエン系ゴムと結合した構造における計算値である。なお、金属塩(b)と前記テトラジン誘導体とは、イオン性の凝集体を形成しているものと考えられる。該結合解離エネルギーの計算には、Gaussian09やGRRM14を使用できる。
【0048】
例えば、前記変性ジエン系ゴムと、前記金属塩(b)とを混合(混練)することで、配位結合による架橋を形成できる。ここで、混練において、温度、時間等の条件は、使用するジエン系ゴム、テトラジン誘導体、金属塩(b)の種類、反応性に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0049】
一例として、前記テトラジン誘導体として、3,6-ジ(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジンを使用し、金属塩(b)として、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA、Zn(MA)、ここで、MAは-OCO-C(CH)=CHである。)を使用した場合の、ジエン系ゴムの変性と、変性ジエン系ゴムの配位結合架橋(錯化)と、の反応スキームを以下に示す。なお、ここに示す変性ジエン系ゴムの構造は、想定される一つの例であり、これに限られるものではなく、例えば、互変異性による異性体や、酸化した形態等であってもよい。
【化3】
【0050】
上記反応スキームの上段に記載のように、本発明の一実施態様においては、ジエン系ゴムと、テトラジン誘導体と、のディールス・アルダー反応により、変性ジエン系ゴムを生成させる。なお、本実施形態では、ディールス・アルダー反応の際に、窒素が脱離するが、変性反応には、その他の任意の反応を利用してもよい。
【0051】
また、上記反応スキームの下段に記載のように、本発明の一実施態様においては、変性ジエン系ゴムと、金属塩(b)と、が錯化することで、配位結合により架橋されたジエン系ゴム(錯化ジエン系ゴム)が生成する。なお、上記反応スキームにおいては、テトラジン残基中の窒素原子と、テトラジン残基に結合するピリジル基の窒素原子と、亜鉛イオンと、が錯化する態様を示したが、配位結合により架橋されたジエン系ゴムは、種々の架橋態様を取ることができる。
【0052】
--有機過酸化物(c)--
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物は、有機過酸化物(c)を含んでもよい。該ゴム組成物が前記金属塩(b)と共に有機過酸化物(c)を含むことで、架橋後のゴム組成物中に、金属塩(b)による配位結合による架橋と、有機過酸化物(c)に起因する架橋構造(C-C結合等)とが存在することとなり、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が向上する。
【0053】
前記有機過酸化物(c)としては、特に限定されるものではないが、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、過安息香酸、過酸化ベンゾイル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これら有機過酸化物(c)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
前記有機過酸化物(c)としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)が好ましい。前記有機過酸化物(c)が、ジクミルパーオキサイド(DCP)であると、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が更に向上する。
【0055】
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物において、前記有機過酸化物(c)の含有量は、前記ゴム成分(a)100質量部に対して3質量部以下であることが好ましい。有機過酸化物(c)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して3質量部以下であると、ゴム層(A)が十分なゴム弾性(エラストマー性)を有し易い。
なお、前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物は、有機過酸化物(c)を含まいことも好ましいが、有機過酸化物(c)を含む場合、前記ゴム組成物中の前記有機過酸化物(c)の含有量は、前記ゴム成分(a)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上が更に好ましい。有機過酸化物(c)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して、0.1質量部以上であると、有機過酸化物(c)に起因する架橋構造の網目密度が向上し、ゴム層(A)の強度(破断強度等)が更に向上する。
【0056】
--その他--
前記ゴム層(A)を構成するゴム組成物には、上述したゴム成分、金属塩、有機過酸化物の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)、軟化剤、ステアリン酸、ワックス、老化防止剤、シランカップリング剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0057】
--ゴム組成物の製造方法--
前記ゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、既述のゴム成分及び金属塩に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0058】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
【0059】
前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
【0060】
前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
【0061】
例えば、混練の第一段階において、ジエン系ゴムと、テトラジン誘導体と、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練することで、ジエン系ゴムにテトラジン誘導体が結合した変性ジエン系ゴムを含む混合物を形成し、混練の第二段階以降において、金属塩と、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練することで、テトラジン誘導体で変性されたジエン系ゴムを錯化して、配位結合による架橋構造を形成することができる。かかるゴム組成物の製造方法は、ゴム組成物の製造(ゴム組成物の混練)中に配位結合による架橋構造を形成できるため、生産性に優れる。
【0062】
また、例えば、ジエン系ゴムにテトラジン誘導体が結合した変性ジエン系ゴムを予め調製し、混練の第一段階において、予め調製しておいた該変性ジエン系ゴムと、任意の配合剤と、を混練し、混練の第二段階以降において、金属塩と、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練することで、テトラジン誘導体で変性されたジエン系ゴムを錯化して、配位結合による架橋構造を形成してもよい。かかるゴム組成物の製造方法によっても、配位結合による架橋構造を簡便に形成でき、また、生産性にも優れる。
【0063】
-ゴム層(B)-
本実施形態の積層体において、前記ゴム層(B)は、ゴム弾性を有する限り、特に限定されない。なお、ゴム層(B)は、上述したゴム層(A)に適用するゴム組成物と同じゴム組成物から構成することもできるし、異なるゴム組成物から構成することもできる。
【0064】
--ゴム成分(a)--
前記ゴム層(B)は、ゴム成分(a)を含むゴム組成物からなることが好ましい。ここで、ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)は、ジエン系ゴムを含むことが好ましい。該ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられ、これらジエン系ゴムは、一種単独で使用してもよいし、二種以上のブレンドとして使用してもよい。ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)がジエン系ゴムを含む場合、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易く、ゴム層(B)の強度(破断強度等)を確保し易い。
【0065】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)は、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含むことが好ましい。該変性ジエン系ゴムは、上述の「ゴム層(A)」について説明した変性ジエン系ゴムと同様である。ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が前記変性ジエン系ゴムを含む場合、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易い。
【0066】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)は、非ジエン系ゴムを含んでもよい。ここで、非ジエン系ゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられ、これら非ジエン系ゴムは、一種単独で使用してもよいし、二種以上のブレンドとして使用してもよい。
【0067】
なお、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)は、上述したゴム層(A)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)と同じでも、異なってもよく、また、ゴム層(A)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)について説明した実施態様、好適態様、変性ジエン系ゴムの含有率の好適範囲、ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対するテトラジン誘導体の配合量等は、ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)にも適用できる。例えば、ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含む場合、ゴム成分(a)中の、一般式(1)のテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムの含有率は、10質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましく、80質量%以上がより一層好ましく、100質量%でもよく、また、該変性ジエン系ゴムは、前記テトラジン誘導体を、前記ジエン系ゴムのジエンモノマー単位に対して1mol%以上配合して変性されていることが好ましく、また、該変性ジエン系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が10,000~3,000,000であることが好ましい。
【0068】
--金属塩(b)--
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物は、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含むことが好ましい。該金属塩は、上述の「ゴム層(A)」について説明した金属塩と同様である。ゴム層(B)を構成するゴム組成物が金属塩(b)を含む場合、ゴム層(B)中に架橋構造を形成し易い。
【0069】
一実施形態においては、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物のゴム成分(a)が、ジエン系ゴムを上記一般式(1)で表されるテトラジン誘導体で変性してなる変性ジエン系ゴムを含み、且つ、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、周期表第3族~第12族の元素を含む金属塩(b)を含むことが特に好ましい。ゴム層(B)を構成するゴム組成物が前記変性ジエン系ゴムと金属塩(b)を含む場合、ゴム層(B)中に架橋構造を特に形成し易く、ゴム層(B)の強度(破断強度等)が向上する。
【0070】
なお、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が金属塩(b)を含む場合、該ゴム層(B)を構成するゴム組成物の金属塩(b)は、上述したゴム層(A)を構成するゴム組成物の金属塩(b)と同じでも、異なってもよく、また、ゴム層(A)を構成するゴム組成物の金属塩(b)について説明した実施態様、好適態様、含有量の好適範囲等は、ゴム層(B)を構成するゴム組成物の金属塩(b)にも適用できる。例えば、ゴム層(B)を構成するゴム組成物が金属塩(b)を含む場合、金属塩(b)としては、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)が好ましく、また、金属塩(b)の含有量は、ゴム成分(a)100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、また、金属塩(b)と前記テトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーは、70kJ/mol以上であることが好ましい。
【0071】
--硫黄(d)及び/又は有機過酸化物(c)--
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物は、硫黄(d)及び/又は有機過酸化物(c)を含むことが好ましい。ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、硫黄(d)及び/又は有機過酸化物(c)を含む場合、ゴム層(B)の強度(破断強度等)が向上する。
【0072】
前記有機過酸化物(c)は、上述の「ゴム層(A)」について説明した有機過酸化物(c)と同様である。なお、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が有機過酸化物(c)を含む場合、該ゴム層(B)を構成するゴム組成物の有機過酸化物(c)は、上述したゴム層(A)を構成するゴム組成物が含み得る有機過酸化物(c)と同じでも、異なってもよく、また、ゴム層(A)を構成するゴム組成物が含み得る有機過酸化物(c)について説明した実施態様、好適態様、含有量の好適範囲等は、ゴム層(B)を構成するゴム組成物の有機過酸化物(c)についても適用できる。例えば、ゴム層(B)を構成するゴム組成物が有機過酸化物(c)を含む場合、有機過酸化物(c)としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)が好ましく、また、有機過酸化物(c)の含有量は、ゴム成分(a)100質量部に対して3質量部以下であることが好ましい。
【0073】
一方、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、硫黄(d)を含む場合、架橋後のゴム組成物中には、硫黄架橋が存在することとなる。硫黄架橋が存在することにより、ゴム組成物(「架橋されたゴム組成物」、「架橋ゴム」とも呼ぶ。)の強度(破断強度等)が向上する。
【0074】
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物中の前記硫黄(d)の含有量は、前記ゴム成分(a)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、また、30質量部以下が好ましく、10質量部以下が更に好ましい。硫黄(d)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して、0.1質量部以上であると、硫黄による網目密度が向上し、ゴム層(B)の強度(破断強度等)が更に向上する。また、硫黄(d)の含有量が、前記ゴム成分(a)100質量部に対して、30質量部以下であると、ゴム層(B)が十分なゴム弾性を有し易い。
【0075】
--その他--
前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物には、上述したゴム成分、金属塩、有機過酸化物、硫黄の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)、軟化剤、ステアリン酸、ワックス、老化防止剤、シランカップリング剤、密着防止剤(脂肪酸金属塩)、加硫促進剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0076】
--ゴム組成物の製造方法--
前記ゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0077】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
【0078】
前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
【0079】
前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
【0080】
なお、前記ゴム層(B)を構成するゴム組成物が、テトラジン誘導体で変性された変性ジエン系ゴムや、金属塩を含む場合は、上述の「ゴム層(A)」について説明したゴム組成物の製造方法と同様にして、ゴム組成物を製造することができる。
【0081】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の積層体を含むことを特徴とする。本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の積層体を含むため、十分な耐久性を有する。
【0082】
本実施形態のタイヤにおける積層体の適用部位としては、トレッド層(トレッドゴム)と、タイヤケース(又は台タイヤ)のトレッド部の最表層(ベルト層、ベルト補強層、クッションゴム等)との組み合わせが好ましい。
【0083】
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを架橋させることにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【0084】
また、使用後のタイヤから、トレッド層(トレッドゴム)を取り除いて、台タイヤを得、該台タイヤの最表層をゴム層(B)とし、一方、ゴム層(A)として更生ゴムを準備し、ゴム層(B)にゴム層(A)を積層することでも、所望の更生タイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例0085】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<変性ジエン系ゴムの合成>
スチレン-ブタジエンゴム(*1)に対して、表1に示す配合量の3,6-ジ(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン(DPT、東京化成工業社製、一般式(1)のテトラジン誘導体)を配合し、ラボプラストミルを用い、開始温度120℃、回転数70rpmで3分間混錬して、変性ジエン系ゴムを合成した。
得られた変性ジエン系ゴムに対して、下記の方法でブタジエン単位、スチレン単位、テトラジン誘導体単位の各含有率と、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(1)ブタジエン単位、スチレン単位、テトラジン誘導体単位の各含有率の測定方法
得られた変性ジエン系ゴムに対して、H-NMR分析を行い、ブタジエン単位、スチレン単位と、テトラジン誘導体単位の各含有率を測定した。
また、テトラジン誘導体の配合量と、変性ジエン系ゴム中のテトラジン誘導体単位の含有率から変性率を算出した。
【0088】
(2)重量平均分子量(Mw)の測定方法
重量平均分子量は、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算の値として求めた。
GPC:東ソー社製HLC-8320GPC、カラム:東ソー社製TSKgel G4000HXL×2本(カラム温度40℃)、移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)、検出器:示差屈折計(なお、多波長検出器(検出波長:254nm)をさらに連結させた。)、標準物質:東ソー社製TSK標準ポリスチレン。
【0089】
【表1】
【0090】
*1 旭化成社製、「タフデン2000R」、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)
*2 スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のブタジエン単位に対する、テトラジン誘導体の配合量
【0091】
<ゴム組成物の調製と評価>
表2に示す配合処方で、通常のオープンロール機を用いて、ゴム組成物を製造した。得られたゴム組成物に対し、下記の方法で、接着剥離抗力と、破断強度(Tb)を測定した。結果を表2に示す。
また、配合した金属塩(b)とテトラジン誘導体との間の結合解離エネルギーは、下記の方法で測定した。
【0092】
(3)接着剥離抗力の測定方法
前記ゴム組成物を、145℃で、30分間加硫して、加硫ゴムシート(厚さ0.8~1.0mm程度)を作製した。得られた加硫ゴムシート二枚を積層して積層体を作製し、該積層体を145℃で、30分間、圧力15MPaで熱圧着した後、幅10mmに打ち抜いて試験片を作製した。得られた試験片に対して、Instron社製の万能材料試験機を使用して、T型剥離試験を実施して、接着剥離抗力を求め、比較例3の値を100として、値が大きい程良好であることを示すように各サンプルの値を指数化した。
【0093】
(4)破断強度(Tb)の測定方法
前記ゴム組成物からJIS 7号試験片を作製し、Instron社製の万能材料試験機を使用して、引張試験を行い、ゴム組成物の破断強度(Tb)を求め、比較例3の値を100として、値が大きい程良好であることを示すように各サンプルの値を指数化した。
【0094】
(5)結合解離エネルギーの計算方法
金属塩(b)(具体的には、金属塩(b)の金属イオン)とテトラジン誘導体(具体的には、テトラジン誘導体の官能基)との結合解離エネルギーは、M06/6-31G(d,p)//B3PW91-D3/6-31G(d,p)レベルまたはM06/6-31G(d,p)レベル,真空中で計算された値であり、テトラジン誘導体がジエン系ゴムと結合した構造における計算値である。なお、金属イオンと官能基とは、イオン性の凝集体を形成しているものと考えられる。該結合解離エネルギーの計算には、Gaussian09やGRRM14を使用できる。ここでは、M06/6-31G(d,p) level of theory, gas phase条件のもと、中心金属とテトラジン誘導体との配位結合の解離エネルギーを求めた。
【0095】
実施例で製造したゴム組成物に関して、金属塩(b)[ZDMA:ジメタクリル酸亜鉛]とテトラジン誘導体[3,6-ジ(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン]との間の結合解離エネルギーは、111.9kJ/molである。
【0096】
【表2】
【0097】
*1 SBR: スチレン-ブタジエンゴム、旭化成社製、「タフデン2000R」
*3 変性SBR1: 上記で合成した変性スチレン-ブタジエンゴム、表1参照
*4 変性SBR2: 上記で合成した変性スチレン-ブタジエンゴム、表1参照
*5 変性SBR3: 上記で合成した変性スチレン-ブタジエンゴム、表1参照
*6 ZDMA: ジメタクリル酸亜鉛、CRAY VALLEY社製、商品名「DYMALINK 708」
*7 DCP: ジクミルパーオキサイド、SIGMA-ALDRICH社製
【0098】
表2から、本発明に従う実施例の積層体は、ゴム層同士が十分な接着強度で接合されており、且つ十分な破断強度(Tb)を有することが分かる。
また、表2中、同一量の金属塩及び有機過酸化物を含む比較例2と、実施例2、5及び8との比較や、比較例3と、実施例3との比較から、ジエン系ゴムがテトラジン誘導体で変性されていることで、破断強度が向上することが分かる。
また、表2中、同種の変性ジエン系ゴムと同一量の有機過酸化物を含む比較例4と、実施例2及び4の比較から、金属塩を配合することで、破断強度(Tb)が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の積層体は、タイヤに利用することができる。
【0100】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は、「No.12_つくる責任、つかう責任」及び「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0101】
1:積層体、 2:ゴム層(A)、 3:ゴム層(B)
図1