(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082106
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20240612BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240612BHJP
G06T 7/50 20170101ALI20240612BHJP
G06V 20/64 20220101ALI20240612BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G06T7/70 A
G06T7/00 350B
G06T7/50
G06V20/64
G07G1/00 331B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195834
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 諒
(72)【発明者】
【氏名】内田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 康洋
【テーマコード(参考)】
3E142
5L096
【Fターム(参考)】
3E142AA01
3E142AA03
3E142BA16
3E142EA04
3E142EA25
3E142FA25
3E142GA41
3E142JA01
3E142KA01
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA03
5L096FA69
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】会計機における、ユーザの誤りまたは不正を検出することを課題とする。
【解決手段】情報処理装置は、商品のコードを会計機にスキャンする人物の映像データを取得する。情報処理装置は、取得した映像データを分析することで、映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別する。情報処理装置は、識別された商品の全体の領域に対する商品が有するコードの位置に基づいて、会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
商品のコードを会計機にスキャンする人物の映像データを取得し、
取得した前記映像データを分析することで、前記映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別し、
識別された前記商品の全体の領域に対する前記商品が有するコードの位置に基づいて、前記会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、
処理を実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記識別する処理は、
取得した前記映像データを分析することで、2次元画像における前記商品の面のパターンを認識し、
前記パターンに対するコードの位置を特定し、
前記生成する処理は、
特定された前記パターンに対するコードの位置が、パターンごとに予め設定された位置と異なるときには、前記会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記識別する処理は、
取得した前記映像データを機械学習モデルに入力することで、商品の3次元モデルを生成し、
前記アラートを生成する処理は、
生成された前記3次元モデルでのコードの位置が、予め設定された位置と異なるときには、会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記識別する処理は、
個々にコードを有する複数の商品を1つの商品として設定されるとともに前記1つの商品としてのコードを有するセット商品の全体の領域と、前記セット商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別し、
前記生成する処理は、
前記会計機に商品を登録する位置に、前記セット商品内のいずれかの商品のコードが位置する場合に、前記アラートを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記識別する処理は、
商品毎にコードの位置が学習された機械学習モデルに対して、取得した前記映像データを入力することで、前記映像データ内の商品が有するコードの位置を推定し、
前記生成する処理は、
推定された前記商品が有するコードの位置と、前記会計機に商品を登録する位置に位置する商品のコードの位置とが一致しない場合に、前記アラートを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記アラートを生成する処理は、
前記会計機に商品を登録する行動の異常に関連するアラートとして、前記人物が前記会計機に登録していない商品があること、または、前記人物が前記会計機に登録した商品が異常であることを示すアラートを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記会計機に商品を登録する行動の異常に関するアラートが生成されたときに、店員の有する端末に対して、前記会計機の識別情報と生成された前記アラートとを対応づけて通知する、処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記アラートを生成する処理は
前記会計機に商品を登録する行動の異常に関するアラートが生成された場合に、前記会計機に位置する前記人物に前記商品の登録漏れを促す音声または画面を、前記会計機から出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
前記会計機に商品を登録する行動の異常に関するアラートが生成されたときに、前記会計機の有するカメラにて、人物を撮影させ、
撮影された前記人物の画像データと、前記アラートを対応づけて記憶部に記憶する、処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項10】
前記セット商品は、複数の缶の集合を包装する包装材と、前記包装材に包装された缶とのそれぞれにバーコードが付されており、
前記生成する処理は、
前記包装材のバーコードではなく、前記缶のバーコードが前記会計機にスキャンされたときに、前記アラートを通知する、処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項4に記載の情報処理プログラム。
【請求項11】
前記会計機は、セルフレジ端末であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項12】
コンピュータが、
商品のコードを会計機にスキャンする人物の映像データを取得し、
取得した前記映像データを分析することで、前記映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別し、
識別された前記商品の全体の領域に対する前記商品が有するコードの位置に基づいて、前記会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、
処理を実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
商品のコードを会計機にスキャンする人物の映像データを取得し、
取得した前記映像データを分析することで、前記映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別し、
識別された前記商品の全体の領域に対する前記商品が有するコードの位置に基づいて、前記会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗において、セルフレジが普及している。セルフレジは、商品を購入するユーザ自身が、商品のバーコードの読み取りから精算までを行うPOS(Point Of Sale)レジシステムである。たとえば、セルフレジを導入することで、人口減少による人手不足の改善、人件費を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、不正を検出することが難しい。例えば、セルフレジなどの会計機では、ユーザによる不可抗力の誤りや故意の不正などがあり、未払い金などが発生する。
【0005】
不可抗力の誤りとしては、商品のスキャンを忘れてカゴからレジ袋に商品を移動させてしまうスキャン漏れ、などがある。また、故意の不正としては、ユーザがバーコードだけを指で隠しながら商品をスキャンするフリをするバーコード隠しや、例えば6缶で1セットのビール箱にはビール箱と各缶にバーコードがついており誤って缶のバーコードを読み取らせる読み取り誤りなどがある。
【0006】
なお、各セルフレジに重量センサなどを導入することで、自動で商品数を計数して不正を検出することも考えられるが、コストが過大であり、特に大型店舗や全国展開する店舗にとっては現実的ではない。
【0007】
また、セルフレジでは、商品コードのスキャンや精算がユーザ自身に委ねられるので、不正行為を検出することが困難である側面がある。たとえば、上記の不正行為を検出する側面から画像認識AI(Artificial Intelligence)を適用しようにも、画像認識AIの訓練には大量の訓練データが必要となる。ところが、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗では、多数の種類の商品が存在する上、個々の商品のライフサイクルも短いので、商品の入れ替えが頻繁に起こる。このような商品のライフサイクルに合わせて画像認識AIをチューニングしたり、あるいは新たな画像認識AIを訓練したりすることは困難である。
【0008】
一つの側面では、会計機における、ユーザの誤りまたは不正を検出することができる情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の案では、情報処理プログラムは、コンピュータに、商品のコードを会計機にスキャンする人物の映像データを取得し、取得した前記映像データを分析することで、前記映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別し、識別された前記商品の全体の領域に対する前記商品が有するコードの位置に基づいて、前記会計機に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、会計機における、ユーザの誤りまたは不正を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1にかかるセルフレジシステムの全体構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1にかかる不正検出の例を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施例1にかかる情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、機械学習モデルの機械学習を説明する図である。
【
図7】
図7は、位置関係による不正検知の例を説明する図である。
【
図8】
図8は、検出される不正の例を説明する図である。
【
図9】
図9は、セット商品の不正の例を説明する図である。
【
図13】
図13は、実施例2にかかる情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、パターンDBに記憶される情報の例を示す図である。
【
図15】
図15は、生成モデルの機械学習を説明する図である。
【
図18】
図18は、セルフレジのハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【実施例0013】
<セルフレジシステムの説明>
図1は、実施例1にかかるセルフレジシステム5の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、セルフレジシステム5は、カメラ30と、セルフレジ50と、管理者端末60と、情報処理装置100とを有する。
【0014】
情報処理装置100は、カメラ30およびセルフレジ50に接続されるコンピュータの一例である。情報処理装置100は、有線や無線を問わず様々な通信網を採用できるネットワーク3を介して、管理者端末60に接続される。カメラ30およびセルフレジ50は、ネットワーク3を介して、情報処理装置100に接続されてもよい。
【0015】
カメラ30は、セルフレジ50を含む領域の映像を撮影するカメラの一例である。カメラ30は、映像のデータを、情報処理装置100に送信する。以下の説明では、映像のデータを「映像データ」または単に「映像」と表記する場合がある。
【0016】
映像データには、時系列の複数の画像フレームが含まれる。各画像フレームには、時系列の昇順に、フレーム番号が付与される。1つの画像フレームは、カメラ30があるタイミングで撮影した静止画像の画像データである。
【0017】
セルフレジ50は、商品を購入するユーザ2が、商品のバーコードの読み取りから精算までを行うPOSレジシステムや会計機の一例である。例えば、ユーザ2が、購入対象の商品を、セルフレジ50のスキャン領域に移動させると、セルフレジ50は、商品のバーコードをスキャンして、購入対象の商品として登録する。
【0018】
なお、セルフレジ50は、上述したように、お客様自身が購入商品の登録(レジ作業)および支払いを行うセルフレジの一例であり、例えばSelf checkout、automated checkout、self-checkout machineやself-check-out registerなどと呼ばれる。バーコードとは、縞模様状の線の太さによって数値や文字を表す識別子の一種であり、セルフレジ50がスキャンする(読み込む)ことで、商品の金額や種別(例えば食品)などを特定することができる。バーコードは、コードの一例であり、バーコード以外にも、同じ機能を有するQR(Quick Response)コードなどの2次元コードを用いることもできる。
【0019】
ユーザ2は、上記商品登録の動作を繰り返し実行し、商品のスキャンが完了すると、セルフレジ50のタッチパネル等を操作し、精算要求を行う。セルフレジ50は、精算要求を受け付けると、購入対象の商品の数、購入金額等を提示し、精算処理を実行する。セルフレジ50は、ユーザ2がスキャンを開始してから、精算要求を行うまでの間にスキャンした商品の情報を、記憶部に格納しておき、セルフレジデータ(商品情報)として、情報処理装置100に送信する。なお、ユーザは、買い物カゴや商品カートなどの運搬道具に、店内で選択した購入対象の商品を入れてセルフレジ50まで商品を運ぶ。
【0020】
管理者端末60は、店舗の管理者が利用する端末装置の一例である。管理者端末60は、情報処理装置100から、商品の購入に関して不正が行われたことを示すアラートの通知等を受け付ける。
【0021】
このような構成において、情報処理装置100は、商品のバーコードをセルフレジ50にスキャンする人物の映像データを取得する。情報処理装置100は、取得した映像データを分析することで、映像データの中から、商品の全体の領域と、商品が有するバーコードの位置とをそれぞれ識別する。情報処理装置100は、識別された商品の全体の領域に対する商品が有するバーコードの位置に基づいて、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する。
【0022】
図2は、実施例1にかかる不正検出の例を説明する図である。
図2に示すように、情報処理装置100は、映像データから商品Aを特定するとともに、商品A全体の領域および商品Aのバーコードの位置A1を識別する。そして、情報処理装置100は、セルフレジ50に商品Aをスキャンさせて登録するスキャン位置で、商品Aのバーコード位置A1とは異なる別の位置A2を検出した場合に、不正な行動の可能性が高いと判定し、アラートを生成して報知する。
【0023】
一般的に、商品名や商品の柄などを表すラベルと商品のバーコードとの相対位置は、例えばラベルの真ん中にバーコードはないなど、予め想定して対応付けておくことができる。そこで、情報処理装置100は、映像データからラベルや柄など商品の特徴を表す位置を特定し、特徴を表す位置とスキャンさせようとする商品の位置との位置関係(相対位置)により、正常なスキャン動作か異常なスキャン動作かを判定する。
【0024】
この結果、情報処理装置100は、複雑な装置を用意することなく、映像データを解析することで、セルフレジにおける不正を検出することができる。
【0025】
<機能構成>
図3は、実施例1にかかる情報処理装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、情報処理装置100は、通信部101、記憶部102、制御部110を有する。
【0026】
通信部101は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部101は、カメラ30から映像データを受信し、制御部110による処理結果を管理者端末60に送信する。
【0027】
記憶部102は、各種データや制御部110が実行するプログラムなどを記憶する処理部であり、メモリやハードディスクなどにより実現される。記憶部102は、訓練データDB103、機械学習モデル104、映像データDB105を記憶する。
【0028】
訓練データDB103は、機械学習モデル104の訓練に使用されるデータを記憶するデータベースである。例えば、訓練データDB103に記憶される訓練データは、説明変数として「商品の画像データ」、目的変数として「商品のバーコード位置」とを有する教師有りデータである。
【0029】
機械学習モデル104は、映像データの入力に応じて、映像データ内の商品が有するバーコードの位置を推定する機械学習モデルである。例えば、機械学習モデル104は、映像データ内の各画像データ(各フレーム)に対して、商品が有するバーコードの位置を推定した推定結果を出力する。
【0030】
なお、機械学習モデル104には、映像データの入力に応じて映像データ内の商品の全体の領域と商品のバーコード位置とを出力するように訓練された機械学習モデルを用いることもできる。
【0031】
映像データDB105は、セルフレジ50に設置されるカメラ30により撮像された映像データを記憶するデータベースである。例えば、映像データDB105は、セルフレジ50ごと、または、カメラ30ごとに、映像データを記憶する。
【0032】
制御部110は、情報処理装置100全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。この制御部110は、機械学習部111、映像取得部112、識別部113、不正検知部114、警告制御部115を有する。なお、機械学習部111、映像取得部112、識別部113、不正検知部114、警告制御部115は、プロセッサが有する電子回路やプロセッサが実行するプロセスなどにより実現される。
【0033】
(機械学習)
機械学習部111は、訓練データDB103に記憶される各訓練データを用いて、機械学習モデル104の機械学習を実行する処理部である。
図4は、機械学習モデル104の機械学習を説明する図である。
図4に示すように、機械学習部111は、「画像データ」を説明変数、「バーコード位置」を目的変数とする訓練データを機械学習モデル104に入力し、機械学習モデル104の出力結果「バーコード位置」と目的変数「バーコード位置」との誤差情報を算出する。そして、機械学習部111は、誤差が小さくなるように、誤差逆伝播により機械学習モデル104のパラメータ更新を行う機械学習を実行する。
【0034】
(映像取得)
映像取得部112は、カメラ30から映像データを取得する処理部である。例えば、映像取得部112は、セルフレジ50に設置されるカメラ30から映像データを随時取得し、映像データDB105に格納する。
【0035】
(識別)
識別部113は、映像取得部11により取得された映像データを、機械学習モデルなどを用いて分析することで、映像データの中から、商品の全体の領域と商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別する処理部である。
【0036】
図5は、識別処理を説明する図である。
図5に示すように、識別部113は、機械学習モデル104や画像解析で用いられるパターンマッチングなどを用いて、映像データ内の各画像データについて商品の全体の領域と商品のバーコードの位置とを識別する。そして、識別部113は、識別結果を記憶部102に格納し、不正検知部114に出力する。
【0037】
ここで、識別部113により得られる識別結果について説明する。
図6は、識別結果を説明する図である。
図6では、包装された板形状のチョコレートがスキャンされる画像を示している。
図6に示すように、識別部113は、板形状のチョコレートの全体を含む領域Bと、板形状のチョコレートのバーコードの位置B1とを識別する。
【0038】
また、識別部113は、個々にコードを有する複数の商品を1つの商品として設定されるとともに、1つの商品としてのコードを有するセット商品の全体の領域と、セット商品が有するコードの位置とをそれぞれ識別する。例えば、識別部113は、6本セットの缶ビールセットの商品の全体領域と、缶ビールセットに付与されているバーコード位置とを識別する。
【0039】
(不正検知)
不正検知部114は、識別部113により識別された商品の全体の領域に対する商品が有するバーコードの位置に基づいて、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常を検知する処理部である。具体的には、不正検知部114は、商品の商品名や商品の特徴が表す特徴領域(特徴位置)と、映像データから識別された商品のバーコードとの位置関係により、不正な行動を検知する。
【0040】
すなわち、不正検知部114は、セルフレジ50のスキャン位置に位置する商品の所定領域が、商品のバーコードが含まれない領域である場合に、不正な行動と検知する。そして、不正検知部114は、不正な行動を検知した場合に、警告制御部115に通知する。
【0041】
図7は、位置関係による不正検知の例を説明する図である。
図7に示すように、不正検知部114は、商品の特徴領域(特徴位置)と、映像データから識別された商品のバーコードとの位置関係により、不正なスキャン動作を検知する。例えば、
図7に示すように、商品がカップラーメンの場合、上面にカップラーメンの名前、特徴的な図形、特徴的な言葉などの記載があるのが一般的であり、商品のバーコードはこのような上面に記載されていない。したがって、不正検知部114は、画像データを分析することで、スキャン位置にカップラーメンの側面や底面が位置する場合は、正常なスキャン動作と判定し、スキャン位置にカップラーメンの上面が位置する場合は、不正なスキャン動作と判定する。
【0042】
図7で検出される不正は、高額な商品を購入する際に、低額な商品のバーコードを代わりにスキャンさせて低額で購入を図る不正(例えばラベルスイッチ)に該当する。
図8は、検出される不正の例を説明する図である。
図8に示すように、高額な商品Cの上面がスキャン位置に位置するにも関わらず、正常に商品がスキャンされた場合(購入商品として登録された場合)、ユーザが、高額な商品Cの上面に低額な商品Dを乗せて、商品Cの代わりに商品Dのバーコードをスキャンさせたと考えられる。そこで、不正検知部114は、
図7に示した位置関係により不正を検知するので、
図8に示す不正な行動を検知できる。
【0043】
また、不正検知部114は、識別部113により、セット商品とセット商品のバーコード位置とが識別された後、セルフレジ50に商品を登録するスキャン位置に、セット商品内のいずれかの商品のコードが位置する場合に、不正なスキャン動作と検知する。
【0044】
図9は、セット商品の不正の例を説明する図である。
図9に示すように、ユーザは、セット商品Eに付与されたバーコードの位置ではなく、セット商品に含まれる単品の商品に付与されているバーコードをスキャンさせて、単品の低額領域でセット商品Eを購入したことにする不正が考えられる。そこで、不正検知部114は、セット商品に対しても識別部113によりバーコード位置が識別でき、識別されたバーコード位置とは異なる位置でスキャンされた場合に不正を検知できるので、
図9に示す不正な行動を検知できる。
【0045】
例えば、セット商品は、アルコール飲料入りの缶を6本纏めて持ち運べるように、包装材によって、3本ずつ2列に並んだ状態で集合包装する。このとき、アルコール飲料入りの複数の缶の集合を包装する包装材と、包装材に包装されたアルコール飲料入りの缶とのそれぞれにバーコードが付されている。情報処理装置100は、包装材のバーコードではなく、包装材に包装されたアルコール飲料のバーコードが会計機にスキャンされたときに、アラートを通知する。
【0046】
また、不正検知部114は、商品の全体領域と商品バーコード位置が識別されたにも関わらず、スキャン動作を検出することなく、セルフレジ50に商品が登録された場合に、不正な動作と検知する。
【0047】
図10は、不正な動作の例を説明する図である。
図10に示すように、ユーザは、商品にバーコードがあるにも関わらず、セルフレジ50のタッチパネルで少額の商品を選択して、商品を購入したことにする不正が考えられる。そこで、不正検知部114は、識別された商品のバーコード位置がスキャン位置にないにも関わらず商品が登録された場合に不正を検知できるので、
図10に示す不正な行動を検知できる。
【0048】
(アラート報知)
警告制御部115は、不正検知部114により不正な行動(不正な動作)が検知された場合に、アラートを生成して、アラートの報知制御を実行する処理部である。例えば、警告制御部115は、人物がセルフレジ50に登録していない商品があること、または、人物がセルフレジ50に登録した商品が異常であることを示すアラートを生成して、セルフレジ50や管理者端末60に出力する。
【0049】
また、警告制御部116は、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常に関するアラートを生成した場合に、セルフレジ50に位置する人物に商品の登録漏れを促す音声または画面を、セルフレジ50から出力する。
【0050】
図11は、アラートの報知例を説明する図である。
図11に示すように、警告制御部115は、セルフレジ50のタッチパネルなどの表示画面に、「スキャン忘れの商品がありませんか?再度、商品のスキャンをお願いします。」などのメッセージを表示させる。
【0051】
また、警告制御部115は、セルフレジ50に設置されている警告灯を点灯させたり、管理者端末60に該当セルフレジ50の識別子と不正発生の可能性があるメッセージとを表示させたり、店内にいる店員の端末に該当セルフレジ50の識別子と不正発生と確認の必要性を示すメッセージとを送信させたりする。
【0052】
また、警告制御部115は、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常に関するアラートを生成した場合に、セルフレジ50が有するカメラ30にて人物を撮影させ、撮影された人物の画像データと、アラートを対応づけて記憶部に記憶する。このようにすることで、不正な行動を行う不正な人物の情報を収集することができるので、店舗の入り口で不正な行動を行ったことがある来店者を検知するなど、不正行動を未然に防ぐための各種施策に役立てることができる。また、警告制御部115は、不正な人物の画像データを用いた教師あり学習により、機械学習モデルを生成することで、セルフレジ50を使用する人物の画像データから不正な人物の検出や店舗の入り口での不正な人物の検出などを行うことができる。また、警告制御部115は、不正な行動を行った人物のクレジットカードの情報をセルフレジ50から取得して保持することもできる。
【0053】
<処理の流れ>
図12は、処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示すように、情報処理装置100は、映像データを随時取得する(S101)。
【0054】
続いて、情報処理装置100は、不正検知の処理開始が指示されると(S102:Yes)、映像データ内のフレームを取得する(S103)。ここで、情報処理装置100は、映像データが存在しない場合は、処理を終了する。一方、情報処理装置100は、映像データが存在する場合は、機械学習モデル104やパターンマッチングにより、商品の全体とバーコードの位置を識別する(S104)。
【0055】
ここで、情報処理装置100は、商品の全体におけるバーコードの位置により、異常な行動が検知されない場合(S105:No)、S103以降を繰り返す。一方、情報処理装置100は、異常な行動が検知された場合(S105:Yes)、不正を検知し(S106)、アラート報知を実行し(S107)、処理を終了する。
【0056】
<効果>
上述したように、情報処理装置100は、商品の全体の領域と、商品が有するバーコードの位置とをそれぞれ識別し、識別された商品の全体の領域に対する商品が有するバーコードの位置に基づいて、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する。したがって、情報処理装置100は、セルフレジ50における不正を検出することができる。
【0057】
また、情報処理装置100は、個々にコードを有する複数の商品を1つの商品として設定されるとともに1つの商品としてのコードを有するセット商品の全体の領域と、セット商品が有するバーコードの位置とをそれぞれ識別する。そして、情報処理装置100は、セルフレジ50に商品を登録する位置に、セット商品内のいずれかの商品のコードが位置する場合に、アラートを生成する。したがって、情報処理装置100は、セット商品を単品の値段で購入する不正を検知することができる。
【0058】
また、情報処理装置100は、商品毎にコードの位置が学習された機械学習モデルに対して、映像データを入力することで、映像データ内の商品が有するバーコードの位置を推定する。そして、情報処理装置100は、推定された商品が有するバーコードの位置と、セルフレジ50に商品を登録する位置に位置する商品のコードの位置とが一致しない場合に、アラートを生成する。したがって、情報処理装置100は、高額商品と低額商品を重ねて把持し、低額商品をスキャンさせて高額商品を購入したふりをする不正を検知することができる。
【0059】
また、情報処理装置100は、人物がセルフレジ50に登録していない商品があること、または、人物がセルフレジ50に登録した商品が異常であることを示すアラートを生成する。したがって、店員等は、情報処理装置100を用いることで、不正な行動を起こした人物が店外に出るまでに事情を聞くなどの対応を行うことができる。
【0060】
また、情報処理装置100は、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常に関するアラートが生成された場合に、セルフレジ50に位置する人物に商品の登録漏れを促す音声または画面を、セルフレジ50から出力する。したがって、情報処理装置100は、不可抗力のミスであっても故意の不正であっても、スキャン中の人物に直接注意を促すことができるので、ミスや故意の不正を削減することができる。
【0061】
また、情報処理装置100は、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常に関するアラートが生成されたときに、セルフレジ50の有するカメラにて、人物を撮影させ、撮影された人物の画像データと、アラートを対応づけて記憶部に記憶する。したがって、情報処理装置100は、不正な行動を行う不正な人物の情報を収集して保持することができるので、来店者を撮像するカメラの撮像データから不正な人物の来店を検出することで、不正行動を未然に防ぐための各種施策に役立てることができる。また、情報処理装置100は、不正な行動を行った人物のクレジットカードの情報をセルフレジ50から取得して保持することもできるので、不正な行動が確定した場合、クレジットカード会社を介して料金を請求することができる。
ところで、情報処理装置100は、映像データを分析して2次元画像や商品の3次元モデルを生成し、商品のバーコード位置の識別制度を向上させることで、異常行動の検出精度を向上させることができる。
生成モデル107は、映像データの入力に応じて、映像データに写っている商品の3次元モデルを生成する機械学習モデルである。例えば、生成モデル107は、映像データ内の各画像データ(各フレーム)に対して、商品の3次元モデルを生成して出力する。
識別部113は、映像データを分析することで、2次元画像における商品の面のおけるパターンを認識し、パターンに対するコードの位置を特定する。例えば、識別部113は、映像データ内の画像データから商品の2次元画像を取得し、2次元画像に対してパターンマッチング等を実行して、商品のラベルの位置と商品のバーコード位置を識別する。
不正検知部114は、識別部113の識別結果を用いて不正な行動を検知する。具体的には、不正検知部114は、識別部113から「商品のラベルの位置と商品のバーコード位置」を取得し、パターンDB106に記憶されているパターンに該当するか否かにより、不正な行動を検知する。
具体例を挙げると、不正検知部114は、識別部113から「商品のラベル位置=上面」と「商品のバーコード位置=上面」を取得したとする。この場合、不正検知部114は、パターンDB106を参照して、「商品のラベル位置=上面」に対応する「パターン1」を特定し、パターン1に対応する「ラベルとは反対の位置」を特定する。そして、不正検知部114は、商品から識別されたバーコード位置「上面」と、パターン1の「ラベルとは反対の位置」とが異なることから、不正な行動と判定する。
また、不正検知部114は、映像データを機械学習モデルに入力することで、商品の3次元モデルを生成し、3次元モデルでのバーコードの位置が、予め設定された位置と異なるときに不正な行動を検知することもできる。
また、情報処理装置100は、映像データを生成モデル107に入力することで、商品の3次元モデルを生成する。そして、情報処理装置100は、生成された3次元モデルでのコードの位置が、予め設定された位置と異なるときには、セルフレジ50に商品を登録する行動の異常を示すアラートを生成する。したがって、情報処理装置100は、相対位置やパターン比較の精度を向上させることができるので、不正な行動の検出精度も向上させることができる。また、3Dモデルにより視覚的にバーコード位置を特定できるので、店員が、映像データを閲覧しつつ、スキャン位置にバーコード位置があるかを視覚的に判断することができる。