(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082126
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/02 20060101AFI20240612BHJP
A01B 33/08 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A01B33/02 A
A01B33/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195867
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】富久 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正男
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AB11
(57)【要約】
【課題】
メンテナンス性を向上させる取付機構を備える歩行型管理機を提供する。
【解決手段】
動力部(E)と、前記動力部(E)に前記動力部(E)を駆動するためのエネルギーを供給する動力供給源(N)と、前記動力供給源(N)を支持する支持部材(NB)を備え、前記動力供給源(N)は前記支持部材(NB)に備えられる機体左右方向の横軸心を中心に回動するように取り付けられることを特徴とする歩行型管理機。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力部(E)と、前記動力部(E)に前記動力部(E)を駆動するためのエネルギーを供給する動力供給源(N)と、前記動力供給源(N)を支持する支持部材(NB)を備え、前記動力供給源(N)は前記支持部材(NB)に備えられる機体左右方向の横軸心を中心に回動するように取り付けられることを特徴とする歩行型管理機。
【請求項2】
前記支持部材(NB)上に前記動力供給源(N)の回動によって作動するリンク機構(R)を備え、前記リンク機構(R)は、前記動力供給源(N)の回動角が一定値に達した場合、前記リンク機構(R)は回動しなくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記リンク機構(R)は、第1リンク部材(R1)と第2リンク部材(R2)と第3リンク部材(R3)を各々独立して回動可能に連結して構成され、前記第1リンク部材(R1)と前記第2部材(R2)と前記第3部材(R3)が略直線状になった場合にはそれ以上回動しないように構成したことを特徴とする請求項2に記載の歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機の伝動機構と伝動機構への動力供給部の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術のように、従来、圃場を耕耘し、畝立作業等を行う歩行型管理機が知られている。
【0003】
従来の歩行型管理機においては、エンジンへの動力供給を行う燃料タンクはフード後方部分に備えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の歩行型管理機の構成によれば、燃料タンクを傾けての作業や燃料タンクを取り外さずにエンジン上部のメンテナンスをすることができず、点検や注油の際には燃料タンクを着脱する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の歩行型管理機のこの様な課題に鑑みて、メンテナンス性を向上させる取付機構を備える歩行型管理機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0008】
請求項1に係る発明は、動力部(E)と、前記動力部(E)に前記動力部(E)を駆動するためのエネルギーを供給する動力供給源(N)と、前記動力供給源(N)を支持する支持部材(NB)を備え、前記動力供給源(N)は前記支持部材(NB)に備えられる機体左右方向の横軸心を中心に回動するように取り付けられることを特徴とする歩行型管理機である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記支持部材(NB)上に前記動力供給源(N)の回動によって作動するリンク機構(R)を備え、前記リンク機構(R)は、前記動力供給源(N)の回動角が一定値に達した場合、前記リンク機構(R)は回動しなくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の歩行型管理機である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記リンク機構(R)は、第1リンク部材(R1)と第2リンク部材(R2)と第3リンク部材(R3)を各々独立して回動可能に連結して構成され、前記第1リンク部材(R1)と前記第2部材(R2)と前記第3部材(R3)が略直線状になった場合にはそれ以上回動しないように構成したことを特徴とする請求項2に記載の歩行型管理機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、動力供給源(N)の支持部材(NB)を横軸回動可能に構成することで、動力供給源(N)の開閉を干渉無くスムーズに動かすことができ、機体の振動による影響を低減させることができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、リンク機構(R)を回動させても一定角度に達するとそれ以上回動しなくなることから、必要以上に回動してしまってリンク機構(R)が破損することや、燃料が零れだしてしまうことを防止できる。
【0013】
請求項3に記載の本発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、リンク機構(R)を第1リンク部材(R1)と第2リンク部材(R2)と第3リンク部材(R3)を各々回動自在に連結して構成することにより、簡素な構成でロック機構を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の歩行型管理機の要部を拡大した左側面図。
【
図3】本発明の歩行型管理機のタンクブラケットの斜視図。
【
図4】本発明の歩行型管理機のタンクブラケットの斜視図。
【
図5】本発明の歩行型管理機のタンクブラケットの側面図。
【
図6】本発明の歩行型管理機のタンクブラケットの平面図。
【
図7】本発明の歩行型管理機の燃料タンクの側面図。
【
図8】本発明の歩行型管理機の燃料タンクの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、1実施の形態である歩行型管理作業機の機体1の基本構成について、その構成と動作を具体的に説明する。
【0016】
なお、実施例の説明においては、機体1の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、本発明の構成を限定するものではない。
【0017】
【0018】
歩行型管理機の機体1は機体フレーム3を備え、機体フレーム3上にエンジンE(請求項における動力部E)を備え、エンジンEより下方側にはエンジンEの駆動を各部に伝える伝動ケースDを備え、伝動ケースDの下方側には走行装置2を備える。エンジンE付近には、エンジンEに燃料を供給する燃料タンクN(請求項における動力供給源N)を備える。
【0019】
本発明の実施例の1形態では
図1の機体ではエンジンEと燃料タンクNを有する機体としているが、エンジンEと燃料タンクNの代わりに、モータEとバッテリーNに置換しても良く、ハイブリット式であっても良い。
【0020】
伝動ケースDの上部には、作業者が機体1の操作をする操作ハンドル5を備える。より詳細には、伝動ケースDの上部に、操作ハンドル5を機体1に取り付けるハンドルフレームHを取り付け、ハンドルフレームHの上部に操作ハンドル5を取り付ける。操作ハンドル5には、機体1の操作に関するクラッチレバー6等の操作装置を備える。
【0021】
エンジンEの駆動は、駆動部Kから各部に伝わる。エンジンEの出力軸K1に備えられる出力プーリP1が回転する。出力プーリP1と、伝動ケースDへの入力軸K2に備えられる入力プーリP2にベルトVが巻きかけられており、ベルトVを介して動力が入力軸K2に伝わり、入力軸K2から、伝動ケースD内で変速されて耕耘装置2に動力を伝える。駆動部Kは伝動部の一部であり、駆動部Kの下方に伝動ケースDを備える。
【0022】
前述した、エンジンE周辺の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、機体1の左側には、エンジンEからの排気を大気中に放出する排気装置Mを備えている。排気装置Mのうち機体左側方にはみ出す部分は、マフラーカバーMCによって覆われている。
【0024】
図2に示すように、エンジンEの上部には、燃料タンクNと、機体に燃料タンクNを取り付けるタンクブラケットNB(請求項における支持部材NB)を備えている。詳細には、エンジンEの上方に取り付けられ、燃料タンクNを下方から支持するための部材として備えられている。
【0025】
タンクブラケットNBは、
図3から
図6に示すように、複数の部材から構成される。詳細には、複数の金属板を溶接やボルト留めによって一体化させていることでタンクブラケットNBとしている。
【0026】
タンクブラケットNBには、平面視において台形状となるブラケットNB1を備える。
【0027】
ブラケットNB1は、エンジンEを上方から覆う部材であり、機体左側には下方向きに折り曲げられる折曲部NB10を備える。
【0028】
折曲部NB10には、ブラケットNB1をエンジンEに取り付けるための取付穴NB11を備える。エンジンEとの接続は取付穴NB11にボルトを左右方向から留める。
【0029】
また、ブラケットNB1の右側には、エンジンEへ取り付ける取付穴NB60を備えるブラケットステーNB6を溶接している。この取付穴NB60は長穴形状とし、組付けの調整や誤差に対応できるようにしておくことが望ましい。
【0030】
ブラケットNB1の左側には、マフラーカバーステーNB5を備え、マフラーカバーMCを取り付け可能にしている。
【0031】
ブラケットNB1の上面は、マフラーカバーステーNB5との取り付けを強固に保つため、右側後部より左側後部のほうが長く形成されている。平面視において重なる、ブラケットNB1と、マフラーカバーステーNB5の折曲部NB50とを溶接することで接続する。
【0032】
タンクブラケットNBの後方左側において、ブラケットNB1と折曲部NB50が平面視において重なる部分の上方に、さらにL字型のプレートNB8を重ねる。プレートNB8を重ねて溶接することで、ブラケットNB1とマフラーカバーステーNB5の強度と耐震性を向上させる。
【0033】
マフラーカバーステーNB5の後部左側面には、L字形状のプレートであるプレートNB9を備え、マフラーカバーMCを取り付けた際に発生する空間を塞ぎ、高温部への侵入防止と排気漏れを防止する。
【0034】
ブラケットNB1の前方には、燃料タンクNの開閉時の支点部となるステーNB2を備える。
【0035】
ステーNB2は、後部にはブラケットNB1と平行に重なる平面NB2aを持ち、前方にはNB2aから下方向きに傾斜した面NB2bを左右それぞれに持つ。
【0036】
図7は燃料タンクNを横軸心を中心に一定角度まで回転させた開状態を示しており、
図8は機体1を走行可能な状態に燃料タンクNを取り付けた状態である閉状態を示している。
【0037】
図6に示すように、平面視においてステーNB2はコの字形状に近く、左右それぞれの面NB2bの左側端部には側面NB2cを備え、側面Nb2cには、燃料タンクNを取り付ける取付穴NB20備える。この取付穴NB20は長穴形状であることが望ましい。
【0038】
タンクブラケットNBには、燃料タンクNが閉状態の際、燃料タンクNを下方から支持する支持ステーNB3と支持ステーNB4を備える。
【0039】
支持ステーNB3の左側部には、燃料タンクNの開閉におけるストッパーも兼ねるL字形状のステーNB9を備える。
【0040】
燃料タンクNは、リンク機構Rによって横軸回動可能に取り付けられる。
【0041】
燃料タンクNの前方には、ステーNB2の取付穴NB20と接続する部材である取付部材R4を備える。
【0042】
取付部材R4に備える取付穴と、取付穴NB20を重ね、ボルトやピン等の留具を挿入し、この留具を支点に燃料タンクNは横軸回動可能に接続されている。
【0043】
リンク機構Rは、各々独立して回動可能に連結される複数の部材から構成される。
【0044】
図7と
図8に示すように、リンク機構RはステーNB9の取付穴NB90に取り付けられ機体前後方向に回動する第1リンク部材R1と、第1リンク部材R1に追従して前後方向に回動する第2リンク部材R2と、燃料タンクN側に取り付けられる第3リンク部材R3から構成される。
【0045】
第1リンク部材R1と、第2リンク部材R2と、第3リンク部材R3はそれぞれの取付穴をピン等で連結していることで、各々のピンを支点に独立回動可能となっている。
【0046】
詳細には、第1リンク部材R1は開状態から閉状態になる際は機体前方に回動し、ブラケットNB1と略平行になる。第2リンク部材R2は、機体前方から後方に向かって回動し、第1リンク部材R1とは「く」の字状になる。第3リンク部材R3は燃料タンクN側に固定されている部材であるため回動しないが、閉状態においては第1リンク部材R1に対して略垂直になるように位置する。
【0047】
図7と
図8に示すリンク機構Rは、第1リンク部材R1と、第2リンク部材R2と、第3リンク部材R3から構成されているが、それ以外の連結構成や部材点数のリンク機構を構成しても良い。
【0048】
閉状態において、リンク機構Rは、燃料タンクNの閉状態においては、第1リンク部材R1は機体前後方向に略平行となり、第2リンク部材R2は機体後方側に回動していることで収納されている。
【0049】
リンク機構Rは、燃料タンクNの開状態においては、第1リンク部材R1と第2リンク部材R2と第3リンク部材R3が略直線状になり、燃料タンクNを下方から支持する。
【0050】
また、リンク機構RはブラケットNB1と垂直になった場合、それ以上後方にリンク機構Rが回動しないようにロックがかかる構成としても良い。このロック機構によって、燃料タンクNは所定の位置で停止するため、回動しすぎてリンク機構Rが破損したり燃料タンクが脱落する、燃料の零れを予防することができる。なお、燃料タンクではなくバッテリーを搭載する場合においても、バッテリーの液漏れ防止や劣化防止の効果を奏する。
【0051】
ステーNB9は、燃料タンクNを開閉する際にマフラーカバーステーNB5とリンク機構Rが干渉しないように取り付けられ、スムーズに燃料タンクNを開閉でき、燃料タンクNより下方のメンテナンスが可能であるように構成する。
【0052】
ブラケットNB1の折曲部NB10の前方には、排気装置Mから機外に流れる排気の方向を指定するための排気指定パイプを取り付けるための取付穴NB12を複数備える。
【0053】
図示していないが、機体を構成する機体フレーム3の左前方部分に切り欠きを備えることで、エンジンEからのエンジンオイル排出を効率的に行える構成としても良い。従来の構成では、エンジンオイルを排出した際、機体フレーム上にかかってしまい、拭き取るのに手間がかかる、清掃が不十分な状態にしておくと汚れや錆びが発生する等の恐れがあった。この構成によって、エンジンオイルが機外に落下するため、清掃等の手間が省ける。
【0054】
図示していないが、伝動ケースDの裏側に、インシュレータを備えても良い。
【0055】
図示していないが、伝動ケースDの前方にゴム垂れ等の可撓性部材や弾性体を備えても良い。このゴム垂れ等は着脱可能にしておくのが望ましい。
【0056】
図9と
図10は、
図1から
図9に示す機体1とは別機体1iの図である。燃料タンクやタンクブラケットの構成も異なるため、
図11においては燃料タンクNiとタンクブラケットNBiと表記しておく。
【0057】
図9に示すように、ハンドルブラケットHiには、変速レバー7iの位置を示す変速ラベルが貼り付けられた変速パネルHc(請求項における変速表示部Hc)を備える。詳細には、ハンドルブラケットHには変速パネルHcを取り付けるための取付ステーHaを備え、取付ステーHaにスペーサーHbを取り付け、スペーサーHbに変速パネルHcを取り付ける。
【0058】
従来の構成では、変速パネルを直接ハンドルブラケットHの後部に取り付けており、操作ハンドルの向きを変更すると、変速パネルがフード後部に遮られて視認性が悪かった。
【0059】
本発明の構成では、変速パネルの位置が従来より上方かつ後方に位置しており、操作ハンドル5の向きを変更して機体前方側から変速パネルHcを確認する場合においても、容易に視認できる。また、スペーサーHbには複数の取付穴を備え、取付位置を調整できるものとしても良く、他機種と互換性を持たせるものであっても良い。
【0060】
変速パネルHcを取り付ける留め具は、他の留め具と同じ形状・色にしておくと組み立て時の確認が容易で、誤組を防止できる。
【0061】
燃料タンクNiは、前方側でタンクブラケットNBiに接続されており、後方側で変速パネルHcの前方にあるタンクステーTSに接続される。
【0062】
フード取付部F1とタンク固定部F2は、平面視において略平行に見えるが、側面視では高さが異なる。
【0063】
また、タンクステーTSにコントローラや通信装置、位置情報測位装置を取り付け可能な構成としても良い。容易に着脱できる構成であると、メンテナンス等が容易になる。
【符号の説明】
【0064】
1 機体
2 耕耘装置
3 機体フレーム
5 操作ハンドル
6 クラッチレバー
E エンジン(動力部)
N 燃料タンク(動力供給減)
NB タンクブラケット(動力源支持部材)
NB1 ブラケット
NB2 ステー
NB3 支持ステー
NB4 支持ステー
NB5 マフラーカバーステー
NB6 ブラケットステー
NB7 プレート
NB8 プレート
NB9 ステー
NB10 折曲部
R リンク機構
R1 第1リンク部材
R2 第2リンク部材
R3 第3リンク部材
R4 取付部材