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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082133
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240612BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240612BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B32B27/18 G
B32B27/32 C
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195881
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA05B
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100GB07
4F100GB81
4F100JA09A
4F100JA09B
4F100JL09
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】オレフィン系樹脂層と表面保護層との間の密着性を十分に保持することができると共に、表面保護層の耐候性の向上を図ることができる化粧シートを提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂層14と、オレフィン系樹脂層14上に設けられて2液硬化型ウレタン系樹脂からなる表面保護層15とを備えている化粧シート10であって、オレフィン系樹脂層14が、ヒドロキシル基を有して250以上400未満の分子量の化合物からなる第一の紫外線吸収剤を含有し、表面保護層15が、ヒドロキシル基を有して400以上800以下の分子量の化合物からなる第二の紫外線吸収剤を含有し、第二の紫外線吸収剤のヒドロキシル基が、2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基に反応結合していると共に、イソシアネート基が残存している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂からなるオレフィン系樹脂層と、
前記オレフィン系樹脂層上に設けられて2液硬化型ウレタン系樹脂からなる表面保護層と
を備えている化粧シートであって、
前記オレフィン系樹脂層は、ヒドロキシル基を有して250以上400未満の分子量の化合物からなる第一の紫外線吸収剤を含有し、
前記表面保護層は、ヒドロキシル基を有して400以上800以下の分子量の化合物からなる第二の紫外線吸収剤を含有し、前記第二の紫外線吸収剤の前記ヒドロキシル基が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基に反応結合していると共に、前記イソシアネート基が残存しているものである
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第一の紫外線吸収剤は、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第二の紫外線吸収剤は、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記オレフィン系樹脂層は、400以上800以下の分子量の化合物からなる第三の紫外線吸収剤をさらに含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記第三の紫外線吸収剤は、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内で含有されている
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記表面保護層は、ヒドロキシル基のない第四の紫外線吸収剤を含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記第四の紫外線吸収剤は、250以上400未満の分子量の化合物である
ことを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記第四の紫外線吸収剤は、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されている
ことを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層は、ヒドロキシル基を有する光安定剤を含有し、前記光安定剤の前記ヒドロキシル基が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基に反応結合しているものである
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記光安定剤は、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されている
ことを特徴とする請求項9に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面や床面、家具の表面等に利用される化粧シートに関し、特に、建築物の外壁等の屋外環境下での利用に有効なものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面や床面、家具の表面等に利用される化粧シートは、環境への配慮から、近年、塩化ビニル系樹脂からオレフィン系樹脂の利用に切り替わりつつある。化粧シートに利用されるオレフィン系樹脂層は、耐傷性向上のために結晶化度を高くすると、耐候性の低下を引き起こしてしまうため、紫外線吸収剤が添加されると共に、表面保護層が設けられている。
【0003】
このような紫外線吸収剤を含有するオレフィン系樹脂層に表面保護層を設けた化粧シートにおいては、成形時の加熱や経時変化等によって、紫外線吸収剤がオレフィン系樹脂層からブリードアウトして白化や接着性の低下を引き起こしてしまう場合があった。そのため、例えば、下記特許文献1においては、分子中にヒドロキシル基を有する紫外線吸収剤を適用すると共に、イソシアネート基を残存させた2液硬化型ウレタン系樹脂を表面保護層に適用することにより、オレフィン系樹脂層からの紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することを提案している。すなわち、オレフィン系樹脂層からの紫外線吸収剤のヒドロキシル基を表面保護層中のイソシアネート基と反応させてしまうことにより、紫外線吸収剤を固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-154186号公報
【特許文献2】特開2003-276133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている従来の化粧シートにおいては、オレフィン系樹脂層からの紫外線吸収剤が、オレフィン系樹脂層と表面保護層との間の界面に滞留し易いことから、オレフィン系樹脂層と表面保護層との間の密着性を十分に保持することが難くなってしまうと共に、表面保護層の表面側に少ないため、表面保護層の耐候性の向上に十分に活用できていなかった。
【0006】
このようなことから、本発明は、オレフィン系樹脂層と表面保護層との間の密着性を十分に保持することができると共に、表面保護層の耐候性の向上を図ることができる化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧シートは、オレフィン系樹脂からなるオレフィン系樹脂層と、前記オレフィン系樹脂層上に設けられて2液硬化型ウレタン系樹脂からなる表面保護層とを備えている化粧シートであって、前記オレフィン系樹脂層が、ヒドロキシル基を有して250以上400未満の分子量の化合物からなる第一の紫外線吸収剤を含有し、前記表面保護層が、ヒドロキシル基を有して400以上800以下の分子量の化合物からなる第二の紫外線吸収剤を含有し、前記第二の紫外線吸収剤の前記ヒドロキシル基が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基に反応結合していると共に、前記イソシアネート基が残存しているものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第一の紫外線吸収剤が、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。
【0009】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第二の紫外線吸収剤が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。
【0010】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記オレフィン系樹脂層が、400以上800以下の分子量の化合物からなる第三の紫外線吸収剤をさらに含有していると好ましい。
【0011】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第三の紫外線吸収剤が、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。
【0012】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記表面保護層が、ヒドロキシル基のない第四の紫外線吸収剤を含有していると好ましい。
【0013】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第四の紫外線吸収剤が、250以上400未満の分子量の化合物であると好ましい。
【0014】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第四の紫外線吸収剤が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。
【0015】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記表面保護層が、ヒドロキシル基を有する光安定剤を含有し、前記光安定剤の前記ヒドロキシル基が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基に反応結合しているものであると好ましい。
【0016】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記光安定剤が、前記2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る化粧シートによれば、密着性及び耐候性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る化粧シートの第一の実施形態の概略構造を表す断面図である。
図2】本発明に係る化粧シートの第二の実施形態の概略構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る化粧シートの実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、実施形態で説明した各種技術的事項を必要に応じて適宜置き換えることや組み合わせすることが可能なものである。
【0020】
[第一の実施形態]
本発明に係る化粧シートの第一の実施形態を図1に基づいて説明する。
【0021】
〈化粧シートの全体構成〉
図1に示すように、ベースとなる基材層11(厚さ:約20μm以上150μm以下)上には、印刷された絵柄からなる絵柄層12(厚さ:約1μm以上3μm以下)が設けられている。絵柄層12上には、接着性を有する接着層13(厚さ:約1μm以上20μm以下)が設けられている。接着層13上には、透明なオレフィン系樹脂からなるオレフィン系樹脂層14(厚さ:約20μm以上200μm以下)が設けられている。オレフィン系樹脂層14上には、表面を保護する表面保護層15(厚さ:約3μm以上20μm以下)が設けられている。なお、19は下地層(厚さ:約1μm前後)である。このような本実施形態に係る化粧シート10の各層11~15,19について、さらに説明する。
【0022】
〈基材層11〉
基材層11は、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいは、これら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機系もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意で選定可能である。また、基材層11は、オレフィン系樹脂層14と同じ材料とすることも可能である。
【0023】
また、基材層11は、切削性を向上させるために、フィラを含有することも可能である。このフィラとしては、有機物フィラや無機物フィラを挙げることができる。有機物フィラとしては、ウレタン架橋粒子、アクリル架橋粒子、メラミン樹脂、天然コラーゲン等を挙げることができ、無機フィラとしては、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ、水酸化アルミ、炭酸カルシウム等を挙げることができる。また、基材層11に透明樹脂が適用されている場合には、隠蔽性を出すために、顔料等を含有させることも可能である。
【0024】
〈絵柄層12〉
絵柄層12は、各種絵柄をインキで印刷されたものであり、インキが単層で印刷されたものや、隠蔽を出すためにベタでインキが印刷された上に各種絵柄のインキが印刷された複層のものとすることも可能である。
【0025】
インキは、バインダとして、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変成物の中から適宜選択することが可能である。これらは、水系、溶剤系、エマルジョン系等を適用することができ、一液型でも、硬化剤を利用する2液型でも適用することができる。また、紫外線や電子線等の活性エネルギ線照射によりインキを硬化させることも可能である。ここで、着色インキが適用される場合は、紫外線による硬化よりも、電子線による硬化の方が、厚み方向へ有効に硬化させることができるので好ましい。
【0026】
インキは、バインダの他に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤等を含有している。顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等を挙げることができる。
【0027】
また、ベタ用のインキは、基本的には、絵柄用のインキと同様な材料が使用されるが、隠蔽性を有する必要があるため、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等が顔料に使用されると好ましい。さらに、隠蔽性を発現させるために、金、銀、銅、アルミ等の金属を含有することも可能であり、一般的にはフレーク状のアルミを含有することが多い。なお、インキを印刷して意匠性を付与するだけでなく、各種金属を蒸着やスパッタリングすることにより、意匠性をより高めるようにすることも可能である。
【0028】
絵柄層12は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷等により、基材層11に直接印刷して設けることができる。さらに、隠蔽性を高める場合には、コンマコータ、ナイフコータ、リップコータ、金属蒸着又はスパッタ法等を用いることも可能である。なお、インキは、絵柄層12と接触する基材層11や接着層13との接着性も考慮して、材料が選定される。
【0029】
〈接着層13〉
接着層13は、絵柄層12とオレフィン系樹脂層14との密着を向上させるためのものである。そのため、絵柄層12とオレフィン系樹脂層14との間に接着層13を介在させることなく必要な接着強度を発現できる場合には、接着層13を省略することも可能である。
【0030】
接着層13は、絵柄層12とオレフィン系樹脂層14との間の接着強度を向上させるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の材料を挙げることができる。一般的には、塗膜凝集力の高い2液硬化型のポリウレタン系接着剤を使用されることが多い。
【0031】
また、接着層13は、接着強度、コスト等を勘案して適宜選定され得るが、可能な限り薄い方が好ましい。また、接着層13の布設方法は、材料液の粘度等に応じて適宜選定され得るが、一般的には、低塗布量管理の観点から、グラビア版によるドライコートが好ましい。
【0032】
〈オレフィン系樹脂層14〉
オレフィン系樹脂層14は、通常の透明なポリプロピレンが好ましく、単独重合体すなわちホモポリマや、エチレンやブテン等と共重合された2元、3元のランダムポリマ共重合体を適用することができる。
【0033】
オレフィン系樹脂層14は、表面強度を高める場合、高結晶化ポリプロピレンが使用されると好ましい。さらに、他の樹脂を混合することにより、表面硬度等を始めとして、その他の物性を向上させることも可能である。このとき、高結晶化ポリプロピレンの物性に悪影響を及ぼさないように考慮する必要がある。特に、折り曲げ等の後加工を施す必要がある場合には、高結晶化ポリプロピレン樹脂と相溶性のよい樹脂であると好ましい。
【0034】
オレフィン系樹脂層14は、初期曲げ弾性率が10000kgf/cm以上22000kgf/cm以下、引張破断伸びが200%以上、分子量分布MWDが4以下の高結晶化ポリプロピレンや、mmmm分率(ペンタッド分率)が96%以上、230℃におけるMFR(メルトフローレート)が5g/10分以上40g/10分以下、分子量分布MWDが4以下の高結晶化ポリプロピレンを、90%以上含有していると、優れた表面硬度を発現し得ると共に、優れた折り曲げ性(Vカット)等の後加工性を発現し得るので、非常に好ましい。
【0035】
オレフィン系樹脂層14は、ヒドロキシル基(OH基)を有して250以上400未満の分子量の化合物からなる第一の紫外線吸収剤を含有している。第一の紫外線吸収剤は、上記範囲の分子量であると、オレフィン系樹脂層14の加熱溶融成形の際に揮発して消失してしまうことを大きく抑制できると共に、オレフィン系樹脂層14の内部から表面保護層15の内部へ移行し易くすることができる。
【0036】
このようなヒドロキシル基(OH基)を有する第一の紫外線吸収剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)326(品番)」(分子量316)(下記[化2]参照)、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)P(品番)」(分子量225)(下記[化3]参照)株式会社ADEKA製ベンゾフェノン系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-1413(品番)」(分子量326)(下記[化1]参照)、等を挙げることができる。なかでも、「326(品番)」,「LA-1413(品番)」であると特に好ましい。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
第一の紫外線吸収剤は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。0.1質量部未満であると、表面保護層15との密着性が低下し易くなってしまい、好ましくない。他方、15質量部を超えると、耐候性や密着性のさらなる向上が見られずに、押出成形時にブリードを起こし易くなってしまい、好ましくない。
【0041】
また、オレフィン系樹脂層14は、さらに、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒補捉剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等を含有することも可能である。
【0042】
酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系等や、これらの組み合わせを挙げることができる。このとき、表面のブリードや、着色、紫外線吸収剤や光安定剤等との相乗や拮抗等を考慮して、含有量や組み合わせを選定する。
【0043】
熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系、肥土レジン系等を挙げることができる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を挙げることができる。具体的な光安定剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製光安定剤「チヌビン(登録商標)XT850(品番)」等を挙げることができる。クエンチャとしては、Niキレート系等を挙げることができる。これらの各種調整剤は、任意に適宜組み合わされて利用される。
【0044】
また、オレフィン系樹脂層14は、切削性やその他の物性等の向上の観点から、フィラを含有することも可能である。フィラとしては、有機フィラ、無機フィラを挙げることができる。有機フィラとしては、ウレタン架橋粒子、アクリル架橋粒子、メラミン樹脂、天然コラーゲン等を挙げることができる。無機フィラとしては、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ、水酸化アルミ、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0045】
フィラは、平均粒径が、オレフィン系樹脂層14の厚さと同等又はそれより小さいものを使用して、含有量が、オレフィン系樹脂100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下であると好ましい。フィラは、種類によって比重が大きく異なり、樹脂との体積比が大きく変わってしまうことから、その含有量の幅が大きくなる。そのため、フィラは、樹脂との馴染み性や樹脂の押出成形性への影響、その時の切削性等を考慮して、含有量が適宜選択される。また、フィラは、1種類だけではなく、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0046】
オレフィン系樹脂層14は、フィラの含有量によって、表面硬度を増加させることや、降伏点までの伸度を小さくすることができる。オレフィン系樹脂層14は、伸びが小さく、さらに若干の脆性を有することによって、後加工の切削加工の際に、ヒゲやバリ等の毛羽立ちの発生が大幅に抑制され、切削性が向上する。したがって、フィラは、オレフィン系樹脂層14に上述したような性質を発現させ得るものであれば、無機、有機を問わず、様々なタイプを適用することが可能である。
【0047】
〈表面保護層15〉
表面保護層15は、表面の保護を目的とし、表面硬度の維持性向上、耐候性及び耐汚染性向上、表面艶調節等に使用され、2液硬化型ウレタン系樹脂からなっている。2液硬化型ウレタン系樹脂は、作業性、価格、凝集力等の観点からも望ましい。
【0048】
2液硬化型ウレタン系樹脂は、ポリオール化合物を主剤とし、イソシアネート化合物を硬化剤として架橋反応したものである。ポリオール化合物は、分子中に2個以上のヒドロキシル基(OH基)を有しており、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を挙げることができる。
【0049】
他方、イソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する多価イソシアネートが用いられ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソイアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等を挙げることができる。耐候性を考慮すると、ダブルボンドタイプよりもシングルボンドタイプであると好ましく、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)であると、非常に好ましい。
【0050】
表面保護層15は、ヒドロキシル基(OH基)を有して400以上800以下の分子量の化合物からなる第二の紫外線硬化剤を含有している。第二の紫外線吸収剤は、上記範囲の分子量であると、表面保護層15の内部から表面へのブリードアウトを抑制し易くすることができると共に、2液硬化型ウレタン系樹脂との相溶性を高めることができ、表面保護層15中にまんべんなく分散させ易くすることができる。
【0051】
このようなヒドロキシル基(OH基)を有する第二の紫外線吸収剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製トリアジン系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)479(品番)」(分子量677)(下記[化4]参照)、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)900(品番)」(分子量447)(下記[化5]参照)、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)234(品番)」(分子量448)(下記[化6]参照)、ソルベイジャパン株式会社製トリアジン系紫外線吸収剤「サイアソーブ(登録商標)1164(品番)」(分子量509)(下記[化7]参照)、株式会社ADEKA製トリアジン系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-F70(品番)」(分子量700)(下記[化8]参照)、株式会社ADEKA製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-31(品番)」(分子量659)(下記[化6]参照)等を挙げることができる。なかでも、「479(品番)」,「900(品番)」であると特に好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
そして、表面保護層15は、2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基(NCO基)に対して、第二の紫外線吸収剤のヒドロキシル基(OH基)が反応結合している。つまり、2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物と共に第二の紫外線吸収剤が硬化剤のイソシアネート化合物とウレタン結合しているのである。
【0059】
このような表面保護層15は、主剤のポリオール化合物に第二の紫外線吸収剤を混合して、硬化剤のイソシアネート化合物と混合することにより、硬化剤のイソシアネート基(NCO基)にヒドロキシル基(OH基)を反応結合させた第二の紫外線吸収剤を内部にまんべんなく存在させることが確実にできる。
【0060】
このとき、硬化剤の混合量は、イソシアネート基(NCO基)と反応させる主剤のポリオール化合物及び第二の紫外線吸収剤のヒドロキシル基(OH基)に対して、イソシアネート基(NCO基)が残存するように、過剰に設定される。イソシアネート基(NCO基)の残存量は、2液硬化型ウレタン系樹脂の主鎖構造や架橋密度等を考慮しつつ、オレフィン系樹脂層14内の第一の紫外線硬化剤の含有量に応じて適宜設定される値である。
【0061】
ここで、第二の紫外線吸収剤は、2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。0.1質量部未満であると、十分な紫外線吸収能を発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、15質量部を超えると、ブリードアウトを生じ易くなってしまい、好ましくない。
【0062】
また、表面保護層15は、光安定剤を含有すると好ましい。光安定剤は、特に、ヒドロキシル基(OH基)を有していると、第二の紫外線吸収剤と同様に、2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物と共に硬化剤のイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO基)とウレタン結合するので、非常に好ましい。
【0063】
このような光安定剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製光安定剤(OH基無)「チヌビン(登録商標)123(品番)」(下記[化10]参照)、台湾GO YEN CHEMICAL INDUSTRIAL社製光安定剤(OH基有)「GOYENCHMEUV-1152(グレード)」(下記[化11]参照)等を挙げることができる。
【0064】
【化10】
【0065】
【化11】
【0066】
このような表面保護層15は、光安定剤を主剤のポリオール化合物に第二の紫外線吸収剤と共に混合して、硬化剤のイソシアネート化合物と混合することにより、内部にまんべんなく分散させることが容易にできる。特に、ヒドロキシル基(OH基)を有する光安定剤であると、硬化剤のイソシアネート基(NCO基)にヒドロキシル基(OH基)を反応結合させて内部にまんべんなく分散させることが確実にできる。
【0067】
このとき、硬化剤の混合量は、イソシアネート基(NCO基)と反応させる主剤のポリオール化合物及び第二の紫外線吸収剤と共に光安定剤のヒドロキシル基(OH基)に対して、イソシアネート基(NCO基)が残存するように、過剰に設定される。イソシアネート基(NCO基)の残存量は、先に説明したように、2液硬化型ウレタン系樹脂の主鎖構造や架橋密度等を考慮しつつ、オレフィン系樹脂層14内の第一の紫外線硬化剤の含有量に応じて適宜設定される値である。
【0068】
ここで、光安定剤は、2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。0.1質量部未満であると、十分なラジカル消失能を発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、5質量部を超えると、ブリードアウトを生じ易くなってしまい、好ましくない。
【0069】
さらに、表面保護層15は、難燃剤、抗菌剤、防かび剤等の各種機能を向上させるための調整剤を含有することも可能である。くわえて、耐摩耗性向上や表面の意匠性から艶調節のために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の無機フィラを含有することも可能である。
【0070】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。クエンチャとしては、Niキレート系等を挙げることができる。これらの各種調整剤は、任意に適宜組み合わされて利用される。
【0071】
〈下地層19〉
下地層19は、木質等の化粧板用基板との接着性を向上させるために、基材層11の裏面側に設けられる。下地層19は、基材層11が化粧板用基板と十分に密着可能である場合、省略することも可能である。
【0072】
下地層19は、化粧板用基材に接着させる接着剤層との密着性を高められるようにするのはもちろんのこと、化粧シート10がロール状に巻き取られて保管や搬送されることから、表面保護層15との接触に伴うブロッキングの発生も抑制できるようにする必要がある。そのため、下地層19は、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を含有すると好ましい。また、下地層19は、密着性をさらに向上させるため、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面処理が施されてから、接着剤層を介して化粧板用基板に接着されると好ましい。
【0073】
〈化粧シート10の製造方法〉
このような本実施形態に係る化粧シート10は、以下のようにして製造することができる。まず、表裏両面にコロナ処理を施した隠蔽性のある基材層11を用意して、裏面に下地層19を設ける。次に、基材層11の表面にインキを用いて絵柄を印刷して絵柄層12を設けた後、接着剤を塗布して接着層13を設ける。
【0074】
他方、オレフィン系樹脂100質量部に対して、第一の紫外線吸収剤を0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で混合すると共に、光安定剤や酸化防止剤等の他の機能性向上剤も混合して溶融押出機を用いて加熱溶融押出成形することにより、オレフィン系樹脂層14を得る。続いて、オレフィン系樹脂層14の表裏両面にコロナ処理を施した後、接着層13上に積層して熱ラミネートすることにより、オレフィン系樹脂層14を設ける。
【0075】
また、ポリオール化合物100質量部に対して、第二の紫外線吸収剤を0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で混合すると共に、光安定剤を0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で混合して主剤を調整する。そして、イソシアネート基(NCO基)と反応させる主剤及び第二の紫外線吸収剤並びに光安定剤のヒドロキシル基(OH基)に対して、イソシアネート基(NCO基)が残存するように、主剤に硬化剤を過剰に混合した2液硬化ウレタン系樹脂をオレフィン系樹脂層14上に塗布して固化させることにより、表面保護層15を設ける。これにより、本実施形態に係る化粧シート10を製造することができる。
【0076】
〈化粧シート10の作用効果〉
このようにして得られた本実施形態に係る化粧シート10においては、オレフィン系樹脂層14が、ヒドロキシル基(OH基)を有して250以上400未満の分子量の化合物からなる第一の紫外線吸収剤を含有している。そのため、第一の紫外線吸収剤がオレフィン系樹脂層14の内部からブリードすると、第一の紫外線吸収剤のヒドロキシル基(OH基)が、表面保護層15に残存するイソシアネート基(NCO基)と反応結合する。これにより、第一の紫外線吸収剤は、表面保護層15にトラップされる。
【0077】
このとき、第一の紫外線吸収剤が250以上400未満の分子量であるので、第一の紫外線吸収剤は、オレフィン系樹脂層14と表面保護層15との間の界面に滞留することなく表面保護層15の内部にまで移行する。しかしながら、第一の紫外線吸収剤は、表面保護層15にトラップされているので、表面保護層15の表面からブリードアウトすることを抑制される。
【0078】
くわえて、表面保護層15が、ヒドロキシル基(OH基)を有して400以上800以下の分子量の化合物からなる第二の紫外線吸収剤を含有し、第二の紫外線吸収剤のヒドロキシル基(OH基)が、2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基(NCO基)に反応結合している。そのため、第二の紫外線吸収剤が表面保護層15の内部にまんべんなく分散した状態でトラップされるようになる。これにより、第二の紫外線吸収剤は、表面保護層15の内部にまんべんなく存在しつつ表面保護層15の表面からブリードアウトすることを抑制される。
【0079】
したがって、本実施形態に係る化粧シート10によれば、オレフィン系樹脂層14と表面保護層15との密着性を十分に保持することができると共に、表面保護層15の耐候性の向上を図ることができる。
【0080】
また、表面保護層15が、ヒドロキシル基(OH基)を有する光安定剤を含有し、光安定剤のヒドロキシル基(OH基)が、2液硬化型ウレタン系樹脂のイソシアネート基(NCO基)に反応結合している。そのため、光安定剤が表面保護層15の内部にまんべんなく分散した状態でトラップされるようになる。これにより、光安定剤も、表面保護層15の内部にまんべんなく存在しつつ表面保護層15の表面へのブリードアウトが抑制される。
【0081】
[第二の実施形態]
本発明に係る化粧シートの第二の実施形態を図2に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0082】
〈化粧シートの全体構成〉
図2に示すように、接着層13上には、透明なオレフィン系樹脂からなるオレフィン系樹脂層24が設けられている。オレフィン系樹脂層24上には、表面を保護する表面保護層25が設けられている。このような本実施形態に係る化粧シート20の各層24,25について、さらに説明する。
【0083】
〈オレフィン系樹脂層24〉
オレフィン系樹脂層24は、前述した実施形態に係る化粧シート10のオレフィン系樹脂層14と同様な樹脂材料となっている。オレフィン系樹脂層24は、前述した実施形態に係る化粧シート10と同様に第一の紫外線吸収剤を含有している。
【0084】
オレフィン系樹脂層24は、400以上800以下の分子量の化合物からなる第三の紫外線吸収剤をさらに含有している。第三の紫外線吸収剤は、第二の紫外線吸収剤と異なっていると好ましい。第三の紫外線吸収剤は、ヒドロキシル基(OH基)を有していると好ましい。第三の紫外線吸収剤は、上記範囲の分子量であると、オレフィン系樹脂層24からのブリードアウトを抑制し易くすることができると共に、オレフィン系樹脂との相溶性を高めることができ、オレフィン系樹脂層24中にまんべんなく分散させ易くすることができる。
【0085】
このような第三の紫外線吸収剤としては、前述した実施形態に係る化粧シート10の第二の紫外線吸収剤と同様なものを挙げることができる。中でも、「1164(品番)」,「LA-F70(品番)」,「LA-31(品番)」,「234(品番)」であると特に好ましい。
【0086】
第三の紫外線吸収剤は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。0.1質量部未満であると、十分な紫外線吸収能を発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、10質量部を超えると、ブリードアウトを生じ易くなってしまい、好ましくない。
【0087】
また、オレフィン系樹脂層24は、前述した実施形態に係る化粧シート10のオレフィン系樹脂層14と同様に、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒補捉剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等をさらに含有することも可能である。
【0088】
〈表面保護層25〉
表面保護層25は、前述した実施形態に係る化粧シート10の表面保護層15と同様な樹脂材料となっている。表面保護層25は、前述した実施形態に係る化粧シート10と同様に第二の紫外線吸収剤を含有している。
【0089】
表面保護層25は、ヒドロキシル基(OH基)のない第四の紫外線吸収剤を含有している。第四の紫外線吸収剤は、250以上400未満の分子量の化合物であると好ましい。上記範囲の分子量であると、加熱成形の際に揮発して消失してしまうことを大きく抑制できると共に、表面保護層25の表面へ移行し易くすることができる。
【0090】
このようなヒドロキシル基(OH基)のない第四の紫外線吸収剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製シアノアクリレート系紫外線吸収剤「ユビナール(登録商標)3039(品番)」(分子量361)(下記[化12]参照)等を挙げることができる。
【0091】
【化12】
【0092】
第四の紫外線吸収剤は、2液硬化型ウレタン系樹脂の主剤のポリオール化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で含有されていると好ましい。0.1質量部未満であると、十分な紫外線吸収能を発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、5質量部を超えると、ブリードアウトを生じて色相等の外観の変化をさせ易くなってしまい、好ましくない。
【0093】
また、表面保護層25は、前述した実施形態に係る化粧シート10の表面保護層15と同様に、難燃剤、抗菌剤、防かび剤等の各種機能を向上させるための調整剤を含有することも可能である。くわえて、耐摩耗性向上や表面の意匠性から艶調節のために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の無機フィラを含有することも可能である。
【0094】
〈化粧シート20の製造方法〉
このような本実施形態に係る化粧シート20は、基本的には前述した実施形態に係る化粧シート10と同様にして製造することができる。具体的には、前述した実施形態と同様に、基材層11の裏面に下地層19を設ける一方、基材層11の表面に絵柄層12を設けた後、接着層13を設ける。
【0095】
そして、オレフィン系樹脂100質量部に対して、第一の紫外線吸収剤を0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で混合すると共に、第三の紫外線吸収剤を0.1質量部以上10質量部以下の範囲内で混合し、光安定剤や酸化防止剤等の他の機能性向上剤も混合して溶融押出機を用いて加熱溶融押出成形することにより、オレフィン系樹脂層24を得る。続いて、オレフィン系樹脂層24の表裏両面にコロナ処理を施した後、接着層13上に積層して熱ラミネートすることにより、オレフィン系樹脂層24を設ける。
【0096】
また、ポリオール化合物100質量部に対して、第二の紫外線吸収剤を0.1質量部以上15質量部以下の範囲内で混合すると共に、第四の紫外線吸収剤を0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で混合し、さらに、光安定剤を0.1質量部以上5質量部以下の範囲内で混合して主剤を調整した後、主剤と硬化剤とを混合した2液硬化ウレタン系樹脂をオレフィン系樹脂層24上に塗布して固化させることにより、表面保護層25を設ける。これにより、本実施形態に係る化粧シート20を製造することができる。
【0097】
〈化粧シート20の作用効果〉
このようにして得られた本実施形態に係る化粧シート20においては、オレフィン系樹脂層24が、400以上800以下の分子量の第三の紫外線吸収剤をさらに含有している。そのため、第三の紫外線吸収剤をオレフィン系樹脂層24中にまんべんなく分散させることがより確実にできると共に、オレフィン系樹脂層24の内部に留まり易くすることができる。これにより、オレフィン系樹脂層24の耐候性をより顕著に向上させることができる。
【0098】
さらに、万が一、オレフィン系樹脂層24から第三の紫外線吸収剤がブリードしてしまったとしても、第三の紫外線吸収剤がヒドロキシル基(OH基)を有していると表面保護層25のイソシアネート基(NCO基)と反応結合する。これにより、第三の紫外線吸収剤は、表面保護層25にトラップされ、表面保護層25の表面へのブリードアウトが抑制される。
【0099】
くわえて、表面保護層25が、ヒドロキシル基(OH基)のない250以上400未満の分子量の第四の紫外線吸収剤をさらに含有している。そのため、第四の紫外線吸収剤が表面保護層25の内部から表面にブリードし易くなる。これにより、表面保護層25は、第四の紫外線吸収剤が表面に存在し易くなり、表面劣化がより確実に抑制される。
【0100】
したがって、本実施形態に係る化粧シート20によれば、前述した実施形態に係る化粧シート10と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した実施形態に係る化粧シート10よりも、耐候性の向上をさらに図ることができる。
【0101】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、オレフィン系樹脂層14,24を絵柄層12に接着層13を介して接着するようにしたが、他の実施形態として、例えば、オレフィン系樹脂層14,24と接着層13との接着性をさらに向上させるようにすることも可能である。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施した接着性樹脂層を非極性のオレフィン系樹脂層14,24と接着層13との間に介在させるのである。
【0102】
この接着性樹脂層は、厚さが2μm以上20μm以下であると好ましい。厚さが2μm未満であると、接着性向上の観点から、あまり好ましくない。厚さが20μmを超えると、柔軟性が低下して表面硬度に影響を及ぼす可能性があると共に、凝集力や耐熱性の観点から接着強度が低下してしまうおそれを生じるため、あまり好ましくない。また、接着性樹脂層は、接着強度向上の観点から、オレフィン系樹脂層14,24との共押出ラミネートによって形成されると好ましい。
【0103】
また、他の実施形態として、例えば、意匠性向上の為に、表面保護層15,25に凹凸のエンボス模様をオレフィン系樹脂層14,24と共に形成することも可能である。このエンボス模様は、表面保護層15,25を設ける前に、オレフィン系樹脂層14,24に直接形成される。具体的には、エンボス模様は、凹凸模様を有するエンボス版によって熱及び圧力が加えられてシートに形成されたり、押し出し機によって加熱成形されたシートに凹凸模様を有する冷却ロールで冷却されながら形成されたりすることで得られる。
【0104】
また、表面保護層15,25上から熱及び圧力を加えてオレフィン系樹脂層14,25と共にエンボス模様を形成することも可能である。くわえて、エンボス模様の凹部に印刷インキや塗料や各種樹脂等を埋め込むことにより、意匠性や耐候性のさらなる向上を図ることも可能である。
【実施例0105】
本発明に係る化粧シートの効果を確認するために行った実施例を具体的に説明するが、本発明は具体的に説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0106】
[試験体及び比較体の作製]
〈試験体1〉
表裏両面にコロナ処理を施した隠蔽性のあるポリエチレン原反(約70μm)を基材層として用意し、裏面に下地層(厚さ:約2μm)を設けた。次に、2液硬化型ウレタンインキ(東洋インキ株式会社製「V180(品番)」)を用いて基材層の表面に木目柄を印刷して絵柄層(厚さ:約3μm)を形成した後、絵柄層の上にドライラミネート用接着剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A540(品番)」)を塗布して接着層(厚さ:約2μm)を設けた。
【0107】
次に、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、第一の紫外線吸収剤(UVA1)として、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)326(品番)」0.5質量部と、光安定剤(HALS)として、BASFジャパン株式会社製光安定剤「チヌビン(登録商標)XT850(品番)0.5質量部と、BASFジャパン株式会社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス(登録商標)1010(品番)」0.5質量部とを添加し、溶融押出機で加熱溶融(温度:220℃)しながらシート形状に押出成形することにより、オレフィン系樹脂層(厚さ:90μm)を得た。得られたオレフィン系樹脂層の表裏両面にコロナ処理を施した後、接着層上に積層して熱ラミネート(温度:120℃)した。
【0108】
続いて、メチルメタクリレートと2-ヒドロキシメタクリレートとの共重合体からなるアクリルポリオールの主剤100質量部に対して、第二の紫外線吸収剤(UVA2)として、BASFジャパン株式会社製トリアジン系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)479(品番)」5質量部と、光安定剤(HALS)として、BASFジャパン株式会社製光安定剤「チヌビン(登録商標)123(品番)」3質量部とを添加して、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体からなる硬化剤3質量部を混合した2液硬化型ウレタン樹脂をオレフィン系樹脂層上に塗布して硬化させることにより、表面保護層(厚さ:約10μm)を設けた。これにより、化粧シートの試験体1を得た。
【0109】
〈試験体2〉
ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、第三の紫外線吸収剤(UVA3)として、ソルベイジャパン株式会社製トリアジン系紫外線吸収剤「サイアソーブ(登録商標)1164(品番)」0.5質量部をさらに添加した以外は、試験体1と同様にすることにより、化粧シートの試験体2を得た。
【0110】
〈試験体3〉
アクリルポリオールの主剤100質量部に対して、第四の紫外線吸収剤(UVA4)として、BASFジャパン株式会社製シアノアクリレート系紫外線吸収剤「ユビナール(登録商標)3039(品番)」3質量部をさらに添加した以外は、試験体2と同様にすることにより、化粧シートの試験体3を得た。
【0111】
〈試験体4〉
第三の紫外線吸収剤(UVA3)を株式会社ADEKA製トリアジン系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-F70(品番)」に置き換えた以外は、試験体3と同様にすることにより、化粧シートの試験体4を得た。
【0112】
〈試験体5〉
第三の紫外線吸収剤(UVA3)を株式会社製ADEKA製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-31(品番)」に置き換えた以外は、試験体3と同様にすることにより、化粧シートの試験体5を得た。
【0113】
〈試験体6〉
第一の紫外線吸収剤(UVA1)を株式会社ADEKA製ベンゾフェノン系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-1413(品番)」に置き換えた以外は、試験体3と同様にすることにより、化粧シートの試験体6を得た。
【0114】
〈試験体7〉
アクリルポリオールの主剤に対して添加する光安定剤(HALS)を台湾GO YEN CHEMICAL INDUSTRIAL社製光安定剤「GOYENCHMEUV-1152(グレード)」に置き換えた以外は、試験体6と同様にすることにより、化粧シートの試験体7を得た。
【0115】
〈試験体8〉
第二の紫外線吸収剤(UVA2)をBASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)900(品番)」に置き換えると共に、第四の紫外線吸収剤(UVA4)を省略し、さらに、アクリルポリオールの主剤に対して添加する光安定剤(HALS)を台湾GO YEN CHEMICAL INDUSTRIAL社製光安定剤「GOYENCHMEUV-1152(グレード)」に置き換えた以外は、試験体5と同様にすることにより、化粧シートの試験体8を得た。
【0116】
〈比較体1〉
第一の紫外線吸収剤(UVA1)を省略すると共に第二の紫外線吸収剤(UVA2)を省略する以外は、試験体1と同様にすることにより、化粧シートの比較体1を得た。
【0117】
〈比較体2〉
第一の紫外線吸収剤(UVA1)を省略すると共に第三の紫外線吸収剤(UVA3)を省略する以外は、試験体2と同様にすることにより、化粧シートの比較体2を得た。
【0118】
〈比較体3〉
第一の紫外線吸収剤(UVA1)を省略すると共に第三の紫外線吸収剤(UVA3)を省略し、さらに、第二の紫外線吸収剤(UVA2)をBASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)P(品番)」に置き換える以外は、試験体3と同様にすることにより、化粧シートの比較体3を得た。
【0119】
〈比較体4〉
第一の紫外線吸収剤(UVA1)を省略すると共に第二の紫外線吸収剤(UVA2)を省略する以外は、試験体7と同様にすることにより、化粧シートの比較体4を得た。
【0120】
〈比較体5〉
ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、第三の紫外線吸収剤(UVA3)として、株式会社製ADEKA製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「アデカスタブ(登録商標)LA-31(品番)」0.5質量部をさらに添加した以外は、比較体2と同様にすることにより、化粧シートの比較体5を得た。
【0121】
〈比較体6〉
ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、第三の紫外線吸収剤(UVA3)として、ソルベイジャパン株式会社製トリアジン系紫外線吸収剤「サイアソーブ(登録商標)1164(品番)」0.5質量部をさらに添加した以外は、比較体4と同様にすることにより、化粧シートの比較体6を得た。
【0122】
[試験方法]
〈耐候性試験〉
試験体1~8及び比較体1~6のサンプルをダイプラ・ウィンテス株式会社製超促進耐候性試験機(メタルウェザ)にそれぞれセットし、ライト条件(照度:60mW/cm、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%RH)20時間、結露条件(照度:0mW/cm、ブラックパネル温度30℃、槽内湿度98%RH)4時間、水噴霧条件(ライト条件と結露条件との間に水を噴霧)前後10秒(合計20秒)として、480時間の耐候性試験を行った。試験終了後、試験機から上記サンプルを取り出して、ブリードアウトや表面劣化等の外観を目視確認した。その結果を下記表1に示す。なお、表1において、「◎」は、外観の変化がまったくなかったことを示し、「○」は、外観の変化がほとんどなかったことを示し、「△」は、外観の変化が実用上問題のない程度だったことを示し、「×」は、外観の変化が大きく生じたことを示す。
【0123】
〈密着性試験〉
試験体1~8及び比較体1~6のサンプルに対して、試験時間を240時間とする以外は、上述した耐候性試験と同じ試験機及び条件の耐候性試験を行った。耐候性試験終了後、25℃で50%RHの条件下に2日間放置した。そして、日本工業規格「JIS K5600-5-6」に準拠して、各サンプルの表面にクロスカット試験を実施した。このときの各層の剥離状態を目視確認した。その結果を表1に示す。なお、表1において、「◎」は、層の剥離がまったくなかったことを示し、「○」は、層の剥離がほとんどなかったことを示し、「△」は、層の剥離が実用上問題のない程度だったことを示し、「×」は、層の剥離が大きく生じたことを示す。
【0124】
[試験結果]
耐候性試験及び密着性試験の結果を下記表1に示す。なお、表1において、「総合」は、耐候性試験結果及び密着性試験結果を点数化して総合評価した結果である。具体的には、各試験結果の「◎」を3点、「○」を2点、「△」を1点、「×」を0点とし、各試験結果の点数を合計して評価した。「◎」は6点、「○」は4点以上6点未満、「△」は2点以上4点未満、「×」は0点以上2点未満を示し、「◎」及び「○」を合格とし、「△」及び「×」を不合格とした。
【0125】
【表1】
【0126】
表1からわかるように、比較体1においては、第一~四の紫外線吸収剤(UVA1~4)を含有していないことから、耐候性及び密着性共に「×」となり、総合評価も「×」となって、不合格となった。比較体2においては、第二の紫外線吸収剤(UVA2)を含有するが、第一,三,四の紫外線吸収剤(UVA1,3,4)を含有していないことから、耐候性を「△」とすることができたものの、密着性が「×」となってしまい、総合評価が「×」となって、不合格となった。
【0127】
また、比較体3,4においては、第二,四の紫外線吸収剤(UVA2,4)を含有するが、第一,三の紫外線吸収剤(UVA1,3)を含有していないことから、耐候性を「△」とすることができたものの、密着性が「×」となってしまい、総合評価が「×」となって、不合格となった。
【0128】
そして、比較体5においては、第二の紫外線吸収剤(UVA2)だけでなく、第三の紫外線吸収剤(UVA3)を含有するが、第一,四の紫外線吸収剤(UVA1,4)を含有していないことから、耐候性を「○」とすることができたものの、密着性が「△」となってしまい、総合評価が「△」となって、不合格となった。
【0129】
さらに、比較体6においては、第二の紫外線吸収剤(UVA2)及び第四の紫外線吸収剤(UVA4)と共に、第三の紫外線吸収剤(UVA3)を含有するが、第一の紫外線吸収剤(UVA1)を含有していないことから、耐候性を「○」とすることができたものの、密着性が「△」となってしまい、総合評価が「△」となって、不合格となった。
【0130】
これに対し、試験体1においては、第三,四の紫外線吸収剤(UVA3,4)を含有していないものの、第一,二の紫外線吸収剤を含有していることから、耐候性を「○」とすることができると共に、密着性を「◎」とすることができ、総合評価が「○」となって、合格となった。また、試験体2,8においては、第四の紫外線吸収剤(UVA4)を含有していないものの、第一~三の紫外線吸収剤(UVA1~3)を含有していることから、耐候性を「○」とすることができると共に、密着性を「◎」とすることができ、総合評価が「○」となって、合格となった。
【0131】
そして、試験体3~7においては、第一~四の紫外線吸収剤(UVA1~4)を含有していることから、耐候性及び密着性の両方共に「◎」とすることができ、総合評価が「◎」となって、合格となった。
【0132】
以上により、本発明に係る化粧シートは、密着性及び耐候性を向上できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る化粧シートは、密着性及び耐候性の向上を図ることができるので、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0134】
10,20 化粧シート
11 基材層
12 絵柄層
13 接着層
14,24 オレフィン系樹脂層
15,25 表面保護層
19 下地層
図1
図2