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特開2024-82139高所作業車における熱中症リスクの監視方法及び監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082139
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】高所作業車における熱中症リスクの監視方法及び監視装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240612BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240612BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B25/04 C
G08B21/02
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195891
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 功
(72)【発明者】
【氏名】松岡 亮磨
【テーマコード(参考)】
3F333
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB03
3F333AC01
3F333AC07
5C086AA06
5C086AA09
5C086BA17
5C086BA22
5C086CB01
5C086CB07
5C086DA08
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA02
5C086FA11
5C087AA19
5C087AA23
5C087AA32
5C087DD03
5C087DD13
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG22
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱中症の発症リスクの判定に際し,身体作業強度の高い作業を行っている作業時間の積算値(積算作業時間)を考慮する熱中症リスク監視方法及び装置を提供する。
【解決手段】高所作業車と接続する熱中症リスク監視装置は,配置場所において暑さ指数(WBGT)Aの算出の基礎とする情報である基礎情報を検出して暑さ指数Aを算出する暑さ指数算出処理と,暑さ指数Aを所定の基準値Wと比較して基準値Wを超えているか否かを判定する比較・判定処理と,暑さ指数Aが基準値Wを超えていると判定したとき,熱中症の発症リスクが生じていることを報知する報知処理を含み,作業床が所定の上昇状態にある時間を積算してカウントして得た時間値を積算作業時間tとして取得する積算作業時間取得処理を実行し,取得した積算作業時間tの増加に応じて増加する所定の補正値を,暑さ指数Aに加算し,基準値Wより減算する補正を行う補正処理を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備えた車台と,該車台上を昇降する作業床と,該作業床を昇降させる昇降機構を備えた高所作業車における熱中症リスク監視方法において,
前記高所作業車が配置された作業現場において暑さ指数の算出の基礎とする情報である基礎情報を検出し,検出された前記基礎情報に基づき暑さ指数を予め設定された対応関係に従い算出する暑さ指数算出処理と,
算出された前記暑さ指数を所定の基準値と比較して前記基準値を超えているか否かを判定する比較・判定処理と,
前記暑さ指数が前記基準値を超えていると判定されたとき,熱中症の発症リスクが生じている状態であることを報知する報知処理を含み,
前記作業床が所定の上昇状態にある時間を積算カウントすることにより得た時間値を積算作業時間として取得する積算作業時間取得処理と,
取得した前記積算作業時間の増加に応じて増加する所定の補正値を定めて,前記暑さ指数算出処理で算出される前記暑さ指数に前記補正値を加算する補正を行い,及び/又は,前記比較・判定処理で使用する前記基準値より前記補正値を減算する補正を行う補正処理を実行することを特徴とする高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項2】
前記所定の上昇状態が,前記作業床が最下降位置を除く上昇位置で停止している状態であることを特徴とする請求項1記載の高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項3】
前記暑さ指数算出処理と前記比較・判定処理を,所定の時間隔毎に間欠的に実行することを特徴とする請求項1記載の高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項4】
前記暑さ指数算出処理及び前記比較・判定処理をそれぞれ連続して実行することを特徴とする請求項1記載の高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項5】
前記積算作業時間取得処理を,前記比較・判定処理の実行時点から一定時間遡った期間の範囲内で行うことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項6】
前記積算作業時間取得処理を,熱中症リスクの監視作業の開始から前記比較・判定処理の実行時点までの全期間の範囲内で行うことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の高所作業車における熱中症リスク監視方法。
【請求項7】
熱中症リスクの監視作業の開始条件が,
前記高所作業車の主電源のON,熱中症リスク監視装置に設けた監視開始スイッチのON,又は,前記作業床の最下降位置において前記主電源がONとなったときのいずれかであって,
熱中症リスクの監視作業の終了条件が,
前記高所作業車の主電源のOFF,前記熱中症リスク監視装置に設けた監視開始スイッチのOFF,又は,前記作業床の最下降位置において前記主電源がOFFとなったときのいずれかであることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の熱中症リスク監視方法。
【請求項8】
走行装置を備えた車台と,該車台上を昇降する作業床と,該作業床を昇降させる昇降機構を備えた高所作業車の熱中症リスク監視装置において,
暑さ指数の算出の基礎とする情報である基礎情報を検出する基礎情報検出手段と,制御装置,及び,熱中症の発症リスクが生じていることを警告する報知装置を備え,
前記制御装置が,
前記基礎情報検出手段が検出した前記基礎情報に基づいて前記暑さ指数を算出する暑さ指数算出手段と,
前記暑さ指数算出手段が算出した前記暑さ指数を所定の基準値と比較して前記基準値を超えているか否かを判定する比較・判定手段と,
前記比較・判定手段が,前記暑さ指数が前記基準値を超えたと判定したとき,前記報知装置を作動させる報知処理手段と,
前記高所作業車より取得した動作情報に基づいて前記作業床が所定の上昇状態となっている時間を積算カウントすることにより得た時間値を積算作業時間として取得する積算作業時間取得手段と,
取得した前記積算作業時間の増加に応じて増加する所定の補正値を定めて,前記暑さ指数算出手段で算出される前記暑さ指数に前記補正値を加算する補正を行い,及び/又は,前記比較・判定手段で使用する前記基準値より前記補正値を減算する補正を行う補正手段と,
を備えることを特徴とする高所作業車における熱中症リスク監視装置。
【請求項9】
通信ネットワークに接続可能な無線通信手段を更に備え,該通信ネットワークに接続された外部機器に対し信号を送信可能としたことを特徴とする請求項8記載の高所作業車における熱中症リスク監視装置。
【請求項10】
前記無線通信手段を,前記通信ネットワークを介して外部機器からの信号を受信可能に構成すると共に,前記制御装置に,前記無線通信手段を介して該外部機器から受信した指令信号に基づいて該制御装置で実現する各手段の設定を変更する設定変更手段を更に設けたことを特徴とする請求項9記載の高所作業車における熱中症リスク監視装置。
【請求項11】
通信ネットワークに接続可能な無線通信手段と,前記通信ネットワークに接続された外部機器を更に備え,
前記制御装置を,前記外部機器によって実現したことを特徴とする請求項8記載の高所作業車における熱中症リスク監視装置。
【請求項12】
少なくとも前記基礎情報検出手段を前記作業床上に設けたことを特徴とする請求項8~11いずれか1項記載の高所作業車における熱中症リスク監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高所作業車に搭乗して作業を行う作業員に熱中症の発症リスクが生じているか否かを監視する,高所作業車における熱中症リスク監視方法及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温多湿の環境で作業を行う場合,体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり,体内の調整機能が破綻したりし易く,熱中症を発症するリスクが高まる。
【0003】
そのため,このような熱中症から作業員を守るべく,事業者には作業員の熱中症発症を予防する熱中症予防対策を講じることが求められている。
【0004】
特に,高所作業車に搭乗して高所作業を行う作業員にとって,熱中症の症状がめまいや立ちくらみといった比較的軽度のものであったとしても,車上からの転落等のような生命にかかわる事故につながるおそれもあることから,高所作業車上での作業に従事する作業員に対する熱中症の予防対策を講じる必要性は大きい。
【0005】
このような熱中症予防対策の一環として,後掲の特許文献1には,作業現場で生じ得る資材の盗難等を防止することを目的として人感センサが検出した不審者の侵入に対し威嚇音を発報するように構成された作業現場監視装置に,更に,温湿度センサを設け,該温湿度センサが検出した温度及び湿度が所定の閾値を超えた場合に熱中症の発症確率が一定値に達したと判断して熱中症警報を発報する機能を追加することが提案されている(特許文献1の請求項1,段落[0018],[0019]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-63548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱中症の発症リスクは,作業現場の温度と湿度の上昇に対応して高くなることから,温湿度センサが検出した温度と湿度に基づいて警報を発報する特許文献1に記載の作業現場監視装置は,熱中症の予防に一定の効果を発揮するものと考えられる。
【0008】
しかしながら熱中症の発症リスクは,作業現場の温度と湿度のみで決まるものではなく作業員が行っている作業の身体的強度(身体作業強度;代謝率レベル)によって変化する。
【0009】
例えば,同じ作業現場,従って,温度と湿度が同一の環境で作業を行っている場合であっても,ボタン操作等の身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業を行っている作業員と,重量物を持ち上げる等の身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を行っている作業員とでは,身体作業強度の高い作業を行っている作業員の方が熱中症を発症するリスクが高くなる。
【0010】
また,同じ作業環境で同程度の身体作業強度の作業を行っている作業員であっても,短時間しか作業を行っていない作業員に対し,作業時間の積算値(積算作業時間)が長くなって疲労が蓄積した作業員の方が熱中症の発症リスクは高くなる。
【0011】
そのため,温度と湿度といった環境的な要因にのみ基づいて熱中症の発症リスクを判定する場合には,作業員の作業状況によっては既に熱中症の発症リスクが高まっていたとしても,これを警告することなく見落としてしまうおそれがある。
【0012】
そのため,より正確に熱中症の発症リスクの判定を行おうとすれば,作業現場の温度や湿度等といった環境的な要因のみならず,作業員が行っている作業の身体作業強度や,積算作業時間等についても考慮して熱中症の発症リスクを判定することが望ましい。
【0013】
しかしながら,作業員が行っている作業の身体作業強度(代謝率レベル)や積算作業時間に関する情報を簡単に取得する有効な手段が存在せず,その結果,作業員が従事する作業の身体作業強度や積算作業時間が熱中症の発症リスクに大きな影響を与えるものであることは知られているにも拘わらず,熱中症の発症リスクの判定にこれらを十分に反映することはされていない。
【0014】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消すべくなされたものであり,比較的簡単な方法で作業員が身体作業強度の高い作業を行っている作業時間の積算値(積算作業時間)に関する情報を取得して,これを熱中症の発症リスクが発生しているか否かの判定に際し考慮できるようにすることで,より正確に熱中症の発症リスクの有無を判定すると共に監視することができる高所作業車における熱中症リスク監視方法及び監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0016】
上記目的を達成するために,本発明の高所作業車における熱中症リスク監視方法は,
走行装置11を備えた車台10と,該車台10上を昇降する作業床30と,該作業床30を昇降させる昇降機構20を備えた高所作業車1における熱中症リスク監視方法において,
前記高所作業車1が配置された作業現場,例えば,高所作業車1の作業床30上面において暑さ指数(WBGT)Aの算出の基礎とする情報(実施形態において温度と相対湿度)である基礎情報を検出し,検出された前記基礎情報に基づき暑さ指数Aを予め設定された対応関係に従い算出する暑さ指数算出処理と,
算出された前記暑さ指数Aを所定の基準値Wと比較して前記基準値Wを超えているか否かを判定する比較・判定処理と,
前記暑さ指数Aが前記基準値Wを超えていると判定されたとき,熱中症の発症リスクが生じている状態であることを警告音の発報や警告灯の点灯等によって報知する報知処理を含み,
前記作業床30が所定の上昇状態にある時間を積算カウントすることにより得た時間値を積算作業時間tとして取得する積算作業時間取得処理と,
取得した前記積算作業時間tの増加に応じて増加する所定の補正値〔α(α0,α1,α2)又はα’(α’0,α’1,α’2)〕を定めて,前記暑さ指数算出処理で算出される前記暑さ指数Aに前記補正値〔α(α0,α1,α2)を加算する補正を行い,及び/又は,前記比較・判定処理で使用する前記基準値Wより前記補正値α’(α’0,α’1,α’2)を減算する補正を行う補正処理を実行することを特徴とする(請求項1)。
【0017】
前記所定の上昇状態は,前記作業床30が最下降位置を除く上昇位置で停止している状態とすることが好ましい(請求項2)。
【0018】
前記暑さ指数算出処理と前記比較・判定処理は,所定の時間隔(監視期間T)毎に間欠的に実行するものとしても良く(請求項3),又は,
前記暑さ指数算出処理及び前記比較・判定処理は,それぞれ連続して実行するものとしても良い(請求項4)。
【0019】
更に,前記積算作業時間取得処理は,
前記比較・判定処理の実行時点から一定時間遡った期間の範囲内で行うものとしても良く(請求項5),又は,
熱中症リスクの監視作業の開始から前記比較・判定処理の実行時点までの全期間の範囲内で行うものとしても良い(請求項6)。
【0020】
熱中症リスクの監視作業の開始条件が,
前記高所作業車の主電源のON,熱中症リスク監視装置60に設けた図示せざる監視開始スイッチのON,又は,前記作業床30の最下降位置において主電源がONとなったときのいずれかであって,
熱中症リスクの監視作業の終了条件が,
前記高所作業車の主電源のOFF,前記熱中症リスク監視装置60に設けた図示せざる監視開始スイッチのOFF又は,前記作業床の最下降位置において前記主電源がOFFとなったときのいずれかであるものとしても良い(請求項7)。
【0021】
また,本発明の高所作業車における熱中症リスク監視装置60は,
走行装置11を備えた車台10と,該車台10上を昇降する作業床30と,該作業床30を昇降させる昇降機構20を備えた高所作業車1の熱中症リスク監視装置60において,
暑さ指数(WBGT)Aの算出の基礎とする情報(実施形態において温度と相対湿度)である基礎情報を検出する基礎情報検出手段(実施形態において温湿度センサ)61と,制御装置62,及び,熱中症の発症リスクが生じていることを警告する警音器63aや警告灯63b等の報知装置63を備え,
前記制御装置62が,
前記基礎情報検出手段61が検出した前記基礎情報に基づいて暑さ指数(WBGT)Aを算出する暑さ指数算出手段621と,
前記暑さ指数算出手段621が算出した前記暑さ指数Aを所定の基準値Wと比較して前記基準値Wを超えているか否かを判定する比較・判定手段622と,
前記比較・判定手段622が,前記暑さ指数Aが前記基準値Wを超えたと判定したとき,前記報知装置63を作動させる報知処理手段623と,
前記高所作業車1(実施形態において高所作業車1のメインコントローラ12)より取得した作動情報に基づいて,前記作業床30が所定の上昇状態にある時間を積算カウントすることにより得た時間値を積算作業時間tとして取得する積算作業時間取得手段624と,
取得した前記積算作業時間tの増加に応じて増加する所定の補正値〔α(α0,α1,α2)又はα’(α’0,α’1,α’2)〕を定めて,前記暑さ指数算出手段621で算出される前記暑さ指数Aに前記補正値α(α0,α1,α2)加算する補正を行い,及び/又は,前記比較・判定手段で使用する前記基準値Wより前記補正値α’(α’0,α’1,α’2)を減算する補正を行う補正手段625と,
を備えることを特徴とする(請求項8)。
【0022】
上記構成の熱中症リスク監視装置60に,更に通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65を設け,該通信ネットワーク70に接続された外部機器80(例えば管理サーバ80aやユーザ端末80b)に対し信号を送信可能とするものとしても良い(請求項9)。
【0023】
この場合には,前記無線通信手段65を,前記通信ネットワーク70を介して例えば管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80からの信号を受信可能に構成すると共に,前記制御装置62に,前記無線通信手段65を介して外部機器80から受信した指令信号に基づいて該制御装置62で実現する各手段の設定を変更する設定変更手段626を更に設けた構成とするものとして良い(請求項10)。
【0024】
なお,通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65と,前記通信ネットワーク70に接続された管理サーバ80b等の外部機器80を更に備えた構成では,前記制御装置62を,前記管理サーバ80a等の外部機器80によって実現するものとしても良い(請求項11)。
【0025】
また,前記熱中症リスク監視装置60の構成要素のうち,少なくとも前記基礎情報検出手段(温湿度センサ)61については,これを前記作業床30上に設けることが望ましい(請求項12)。
【発明の効果】
【0026】
以上で説明した本発明の高所作業車1における熱中症リスク監視方法及び監視装置60では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0027】
高所作業車1を使用して行う高所作業としては,コンクリートの吹付,溶接,石膏ボードの取り付け等の身体作業強度(代謝率レベル)の高い作業が想定されるが,これらの高所作業は,高所作業車1の作業床30を上昇させた状態で行われる。
【0028】
そのため,作業床30が所定の上昇状態にある時間を積算カウントすることで,カウントされた積算時間値は,これを作業床30に搭乗している作業員が身体作業強度(代謝率レベル)の高い作業を行った作業時間の積算値(積算作業時間t)と同一視することができる。
【0029】
従って,基礎情報検出手段(一例として温湿度センサ)61が検出した基礎情報(一例として温度と相対湿度)に基づいて算出された暑さ指数(WBGT)Aを,予め設定した基準値Wと単純に比較するだけでなく,作業床30の作動状況に基づいて取得した積算作業時間tの増加に応じて,前記暑さ指数算出処理で算出される暑さ指数(WBGT)Aに所定の補正値α(α0,α1,α2)を加算する補正,及び/又は,前記基準値Wより所定の補正値α’(α’0,α’1,α’2)を減算する補正を行う補正処理を実行することで,作業員が身体作業強度(代謝率レベル)の高い作業に従事した積算時間,従って,作業員の疲労の蓄積の程度が熱中症の発症リスクの判定に加味されることでより正確な判定を行うことが可能となった。
【0030】
特に,高所作業車1上で行う高所作業は,作業床30が昇降動作している間には行われず,作業床30を上昇位置に停止させた状態で行われることから,前記作業床30が上昇位置で停止している状態にある時間をカウントして前記積算作業時間tを取得することで,作業床30が例えば所定の閾値よりも高い位置にあったとしても,このうちの作業員が身体作業強度の高い作業を行っていない時間(作業床30が昇降動作中の時間)を積算作業時間tから除外することで,より正確に熱中症の発症リスクを判定することができた。
【0031】
暑さ指数Aの算出と基準値Wとの比較・判定は,これを所定期間(監視期間T)毎に間欠的に行うことで,熱中症リスク監視装置60が消費する電力を低く抑えることができた。
【0032】
一方,暑さ指数Aの算出と基準値Wとの比較・判定を常時連続してリアルタイムで行う構成では,熱中症リスク監視装置60の電力消費量は増大するものの,より正確な熱中症リスクの判定が可能であった。
【0033】
なお,前記積算作業時間tの取得を,前記比較・判定処理の実行時点から一定時間(例えば20分間)遡った期間内において行う場合には,比較・判定時点から例えば直近20分間の作業状態(疲労の蓄積状態等)を熱中症リスクの判定に反映させることができ,また,熱中症リスクの監視作業の開始から前記比較・判定処理の実行時点までの全期間内で行う場合には,監視作業開始からのトータルの作業状態(疲労の蓄積状態等)を熱中症リスクの判定に反映させることができ,高所作業車1を使用して行う作業の内容や,作業の実施状況等に応じてこれらのいずれか,又は双方を組み合わせて使用可能である。
【0034】
なお,熱中症リスク監視装置60に通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65を設けた構成では,該通信ネットワーク70に接続された管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80に対し,基礎情報検出手段61が検出した基礎情報(温度や相対湿度),高所作業車1のコントローラ(メインコントローラ12)より取得した作業床30等の作動状態,及び,制御装置62で得た暑さ指数A,積算作業時間t,補正の有無,及び適用した補正値α(α0,α1,α2),α’(α’0,α’1,α’2)等の各種の情報を,警報の報知等が行われた際に報知が行われた時刻等の情報と関連付けて送信して記録・管理等させる等ことも可能である。
【0035】
また,このような無線通信手段65に受信機能を持たせると共に,制御装置62に管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80からの指令信号を受信して該制御装置62で実現される各手段(621~625)の設定を変更する設定変更手段626を設けた構成では,比較・判定の際に使用する基準値Wの設定,補正値α(α0,α1,α2),α’(α’0,α’1,α’2)の設定,暑さ指数Aの算出を行う時間隔(監視期間T)や積算作業時間tの取得を行う期間の設定変更等を,管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80より遠隔操作によって行うことが可能であり,複数台の高所作業車1に搭載された複数台の熱中症リスク監視装置60を共通の管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80で収集して管理することも可能である。
【0036】
なお,熱中症リスク監視装置60に通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65と,該通信ネットワーク70に接続された管理サーバ80a等の外部機器80を設けた構成では,管理サーバ80a等の外部機器80によって前述の制御装置62を実現するものとしても良く,これにより,制御装置62のサイズ等に関する制約がなくなることで,より処理能力の高い制御装置62を実現できるようにしても良い。
【0037】
このような熱中症リスク監視装置60の少なくとも基礎情報取得手段(実施形態において温湿度センサ)61を高所作業車1の作業床30上,例えば作業床30に設けた防護柵31に取り付けた構成では,実際に作業員が作業に従事している場所で基礎情報(温度や相対湿度等)を測定することで,より正確に該作業員の熱中症の発症リスクを評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の熱中症リスク監視装置を搭載した高所作業車の説明図。
図2】高所作業車と接続した状態における本発明の熱中症リスク監視装置の機能ブロック図。
図3】本発明の熱中症リスク監視装置の一例を示す(A)は正面図,(B)は分解斜視図。
図4】暑さ指数(WBGT)と気温,及び相対湿度の相関関係を示した表。
図5】「身体作業強度に応じたWBGT基準値」を示した表(厚生労働省のホームページで提供するパンフレット「熱中症を防ごう!」からの抜粋 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/necchusho_syokuba.pdf)。
図6】高所作業車と接続した状態における本発明の熱中症リスク監視装置の機能ブロック図(無線通信手段を備えたもの)。
図7】間欠監視型の熱中症リスク監視装置の動作を示したフローチャート。
図8】連続(リアルタイム)監視型の熱中症リスク監視装置の動作を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に,添付図面を参照しながら,本発明の熱中症リスク監視装置60及びこれを搭載した高所作業車1の構成例について説明する。
【0040】
〔高所作業車〕
図1に,本発明の熱中症リスク監視装置60を搭載した高所作業車1の構成例を示す。
【0041】
この高所作業車1は,幅方向の両側にそれぞれ車輪や無限軌道等の走行装置(図示の例では無限軌道)11や,この走行装置11を駆動する走行用モータやエンジン等の駆動源,電源バッテリ等(いずれも図示せず)を備えた車台10と,該車台10上にシザースリンク21や該シザースリンクを動作させる油圧機構(図示せず)等からなる昇降機構20,該昇降機構20によって昇降される作業床30を備えている。
【0042】
この作業床30には防護柵31が設けられる等して作業床30上に搭乗した作業員や荷物等の落下が防止されていると共に,作業床30の一端側における防護柵31の上端付近には上部操作盤32が設けられ,この上部操作盤32に設けられた各種レバーやスイッチを操作して,高所作業車1の走行,操舵,作業床30の昇降,及び非常停止(主電源のOFF)等の各操作を指令することができるように構成されている。
【0043】
一方,前述の車台10には,下部操作盤(図示せず)が設けられ,この下部操作盤10に設けられた各種スイッチ類を操作することで,例えばキースイッチの操作による高所作業車1の主電源のON,OFF操作,非常停止ボタンの操作による非常停止(主電源のOFF),昇降スイッチの操作による作業床30の昇降操作等の各種操作を行うことができるように構成されている。
【0044】
前記高所作業車1の昇降機構20には,作業床30の昇降高さを検出する,床高検出手段(図示せず)が設けられており,例えば,昇降機構20のシザースリンク21のうちのいずれか1つのリンクの回動角を検出するポテンショメータを前述した床高検出手段として設け,該ポテンショメータからの検出信号に基づいて,作業床30の昇降高さを検出することができるようになっている。
【0045】
上部操作盤32に設けられたスイッチやレバーの操作信号は,上部操作盤32内に設けられた電子制御装置である上部コントローラ32a(図2参照)に入力されるだけでなく,車台10側に設けたメインコントローラ12にも入力され,メインコントローラ12によって主電源や走行用モータ,昇降機構等の動作制御が行われるように構成されていると共に,走行用モータ,昇降機構の動作状況,及び床高検出手段が検出した作業床30の高さ等の高所作業車1の作動状態を示す情報がメインコントローラ12に送信されるように構成されている。
【0046】
また,本実施形態の高所作業車では,メインコントローラ12に送信された主電源,走行用モータ,昇降機構の動作状況,及び床高検出手段が検出した作業床30の高さ等の高所作業車1の作動状態の情報は上部制御盤32にも送信されて共有されており,上部制御盤32に設けたモニタ(図示せず)に各部の動作状況を表示することができるように構成されている。
【0047】
このように,本実施形態の高所作業車1では,車台10に設けたメインコントローラ12と作業床30上に設けた上部操作盤32の上部コントローラ32aは,高所作業車1の動作状態に関する情報を共有しており,メインコントローラ12と上部操作盤32(上部操作盤32の上部コントローラ32a)は,図2に示すように電気配線40によって図示せざるバッテリと接続可能とされているだけでなくメインコントローラ12と通信可能に接続されている。
【0048】
本実施形態ではこの電気配線40に有線通信ケーブル50を介して接続することで,熱中症リスク監視装置60は高所作業車1のバッテリ(図示せず)からの給電を受けることができるように構成されていると共に,高所作業車1に設けたメインコントローラ12や上部コントローラ32a等のコントローラ(実施形態においてメインコントローラ12)を介して高所作業車1の動作情報の中から必要な情報を取得することができるように構成されている。もっとも,高所作業車1に設けたコントローラ(メインコントローラ12及び/又は上部コントローラ32a)から必要な情報を取得することができるものであれば,図示の構成に限定されず高所作業車1のコントローラ(12及び/又は32a)と熱中症リスク監視装置60を無線によって接続するものであっても良い。
【0049】
この場合,熱中症リスク監視装置60に高所作業車1のバッテリとは別に独自の電源を搭載するものとしても良い。
【0050】
高所作業車1のバッテリを熱中症リスク監視装置60の電源としても使用する場合,高所作業車1に設けたキースイッチの操作による主電源のON,OFFに連動して熱中症リスク監視装置60もON,OFFするように構成するものとしても良いが,本実施形態では,高所作業車1の主電源のON,OFFに拘わらず,熱中症リスク監視装置60が高所作業車1のバッテリから電気配線40を介して常時給電を受けることができるようにした。
【0051】
高所作業車1の使用実態として,消費電力の低減や誤作動の防止などを目的として作業床30を一旦上昇させた後は,高所作業車1の主電源をOFFにして高所作業が行われる場合があるが,前述したように熱中症リスク監視装置60に対する常時の給電を可能とすることで,高所作業車1の主電源をOFFにした状態でも熱中症リスク監視装置60を継続して作動させて熱中症の発症リスクを監視することが可能となる。
【0052】
〔熱中症リスク監視装置〕
(1)熱中症リスク監視装置の全体構成
前述した高所作業車1における熱中症リスクを監視する本発明の熱中症リスク監視装置60は,暑さ指数(WBGT)の算出の基礎とする情報である基礎情報を検出するための基礎情報検出手段61と,制御装置62,及び,警音器63aや警告灯63b等の報知装置63を備えている。
【0053】
図3に示す実施形態では,各構成要素を同一のケーシング64内に収容して一体的にパッケージ化して熱中症リスク監視装置60を構成し,このように構成した熱中症リスク監視装置60を高所作業車1の作業床30に設けた防護柵31に取り付けることができるようにした。
【0054】
しかしながら,図示の実施形態に限定されることなく,熱中症リスク監視装置60の構成要素の全部又は一部を独立して設け,有線又は無線により各構成要素間を接続することで全体として熱中症リスク監視装置60を構成するものとする等しても良い。
【0055】
この場合,少なくとも基礎情報検出手段61については作業床30上(例えば作業床30に設けた防護柵31)に取り付けて,高所作業車1に搭乗する作業員が実際に作業を行う位置で基礎情報を取得できるようにすることが望ましい。
【0056】
(2)基礎情報検出手段
本発明の熱中症リスク監視装置60の構成要素の1つである前述の基礎情報検出手段61は,既知の暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature/湿球黒球温度)を算出するための基礎となる情報(本発明において「基礎情報」という。)を取得することができるものであれば,既知の各種装置が採用可能である。
【0057】
本実施形態では,この基礎情報検出手段61として温湿度センサを設け,温湿度センサ61で検出した温度(気温)と相対湿度を前述の基礎情報として取得できるようにした。
【0058】
ここで,暑さ指数(WBGT)と温度(気温)及び相対湿度との間には,図4に示す相関関係があることから,温湿度センサ61によって作業現場の温度(気温)と相対湿度を検出することで図4の相関関係に基づいて暑さ指数(WBGT)を算出することができる。
【0059】
なお,基礎情報検出手段61としては,前述した温湿度センサに代えて,黒球温度検出装置,湿球温度検出装置,及び,乾球温度検出装置から成る基礎情報検出手段61を設けるものとしても良い。
【0060】
ここで,黒球温度(GT : Globe Temperature)を検出する黒球温度検出装置としては,黒色に塗装された薄い銅板の球(中は空洞,直径約15cm)の中心に温度計(温度センサ)を入れたものを使用することができ,この黒球温度検出装置によって測定された球の中心温度を黒球温度として取得する。
【0061】
また,湿球温度(NWB: Natural Wet Bulb temperature)を検出する湿球温度検出装置は,水で湿らせたガーゼ等を温度検出部に巻き付けた温度計(温度センサ)を使用することができ,これにより温度検出部の表面にある水分が蒸発した時の冷却熱と平衡した時の温度を湿球温度として取得する。
【0062】
更に,乾球温度(NDB : Natural Dry Bulb temperature)を検出する乾球温度検出装置は,通常の温度計(温度センサ)を使用することができ,これを使用して作業現場の温度(気温)を乾球温度として測定する。
【0063】
暑さ指数(WBGT)と黒球温度,湿球温度,及び乾球温度は,下記の式1及び式2に示す関係があり,黒球温度検出装置,湿球温度検出装置,及び,乾球温度検出装置が検出した黒球温度,湿球温度,及び乾球温度に基づき,下記の式1又は式2の関係式に基づいて暑さ指数(WGBT)を算出することができる。
・屋外における暑さ指数(℃)の算出式
暑さ指数(WBGT)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 (式1)
・屋内における暑さ指数(℃)の算出式
暑さ指数(WBGT)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度 (式2)
【0064】
(3)制御装置
熱中症リスク監視装置に設けられる前述の制御装置62は,マイクロコントローラ等の電子制御装置によって実現されるもので,この制御装置62が予め記憶している所定のプログラムを実行することによりそれぞれ下記の手段が実現されるように構成されている。
【0065】
(3-1) 暑さ指数算出手段
暑さ指数算出手段621は,前記基礎情報検出手段61から受信した基礎情報に基づいて暑さ指数(WBGT)Aを算出する。
【0066】
基礎情報検出手段61として温湿度センサを設けた本実施形態の熱中症リスク監視装置60の構成では,制御装置62に予め図4に示した暑さ指数(WBGT)と温度(気温),及び相対湿度の相関関係を記憶させておき,この相関関係に基づいて暑さ指数算出手段621が温湿度センサ61より受信した温度(気温)と相対湿度に基づいて暑さ指数(WBGT)A(後述する補正が行われる前の暑さ指数A)を算出する。
【0067】
なお,熱中症リスク監視装置60に前述した黒球温度検出装置,湿球温度検出装置,及び,乾球温度検出装置から成る基礎情報検出手段61を設けた構成では,予め制御装置62に前掲の式1,式2として示した暑さ指数(WBGT)と黒球温度,湿球温度,及び乾球温度の関係式を記憶させておき,暑さ指数算出手段621に基礎情報検出手段61が検出した黒球温度,湿球温度,及び乾球温度に基づいて暑さ指数(WBGT)A(後述する補正が行われる前の暑さ指数A)を算出させるようにしても良い。
【0068】
なお,暑さ指数検出手段621による暑さ指数Aの算出は,常時,連続して行うものとしても良く,又は,消費電力の低減等を考慮して所定の時間隔(監視期間T:一例として20分)毎に間欠的に行うようにしても良い。
【0069】
(3-2) 比較・判定手段
比較・判定手段622は,前述の暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数A(後述の補正手段625により補正値αを加算する補正がされた場合には補正後の暑さ指数A+α)を,所定の基準値W(後述する補正手段625により補正値α’を減算する基準値Wの補正が行われる場合には補正後の基準値W-α’)と比較して,暑さ指数(A又はA+α)が前記基準値(W又はW-α’)を超えているか否かを判定する,比較・判定処理を実行する。
【0070】
このような比較・判定処理の実行を可能とすべく,制御装置には予め比較・判定を行う際の基準と成す前述の基準値Wを記憶させておく。
【0071】
図5に身体作業強度等に応じた暑さ指数の基準値の一例を示す。
【0072】
本実施例では,一例として図5に示した基準値のうち,安静な状態にある作業員(熱に順化している場合)に熱中症の発症リスクが生じる暑さ指数の基準値である「33℃」を基準値Wとして設定した。
【0073】
なお,前述の暑さ指数算出処理を所定の時間隔(監視期間T)毎に間欠的に行う場合,比較・判定手段621による比較と判定についても同じ時間隔(監視期間T)毎に間欠的に行うことができ,また,前述の暑さ指数算出処理を常時連続して行う場合,比較・判定処理は常時連続して,又は,所定の時間隔(監視期間T)毎に間欠的に行う構成のいずれとしても良い。
【0074】
(3-3) 報知処理手段
報知処理手段623は,前記比較・判定手段622が,前記暑さ指数(A又はA+α)が前記基準値(W又はW-α’)を超えたと判定したとき,警音器63aや警告灯63b等の報知装置63に対しこれらの作動を指令する指令信号を出力して作動させる報知処理を実行する。
【0075】
これにより,警音器63aによる警告音の発報や警告灯63bの点灯が行われることで,作業床30上で作業する作業員に対し熱中症の発症リスクが生じていることを警告することができる。
【0076】
(3-4) 積算作業時間取得手段
積算作業時間取得手段624は,高所作業車1に設けたメインコントローラ12や上部コントローラ32a等のコントローラ(本実施形態ではメインコントローラ12)より取得した高所作業車1の作動情報に基づいて,作業床30が所定の上昇状態にある時間を,該作業床上の作業員が作業を行っている時間として積算カウントし,ここで得られた時間値を積算作業時間tとして取得する。
【0077】
本実施形態では,予め制御装置62に作業床30の高さに関する閾値(一例として2m)を記憶させておき,作業床30がこの閾値(一例として2m)を超える高さで停止している状態を,前述した「所定の上昇状態」とし,作業床30がこのような上昇状態となっている時間の積算時間を積算作業時間tとしてカウントすると共に取得する。
【0078】
高所作業車1の作業床30上で作業を行う作業員は,作業床30を上昇させて停止した状態でコンクリートの吹付,溶接,石膏ボードの取り付け等の身体作業強度(代謝率レベル)の高い作業を行うことから,作業床30が最下降位置を除く所定の上昇位置,本実施形態では2m以上の上昇位置で停止した前述の上昇状態にある時間の積算値は,作業員が身体作業強度(代謝率レベル)の高い作業を行っている時間の積算値と同一視することができる。
【0079】
なお,高所作業車1が作業床30を上昇させた状態で走行可能に設定されている場合,一般に走行中には作業員はコンクリートの吹付,溶接,石膏ボードの取り付け等の作業を行わないことから,このような場合には,積算作業時間取得手段624は更に高所作業車1のメインコントローラ12から高所作業車1の走行情報についても取得して,作業床30が閾値を超えて上昇した位置で停止している状態であっても,走行装置11による走行が行われている時間を積算作業時間tのカウントより除外するようにするものとしても良い。
【0080】
一方,高所作業車1が作業床30を上昇させた状態で主電源をOFFにしても作業床30の上昇状態を保持できるように構成されている場合,積算作業時間取得手段624は,一旦,所定の上昇状態となっていることを判定すると,その後,作業床30が下降を開始したことを示す動作情報を受信する迄の間,動作情報出力手段(メインコントローラ12)からの動作情報の取得ができなくなってもこの期間中積算カウントを継続して,積算作業時間tのカウントに含めるようにする。
【0081】
このように構成することで,高所作業車1の作業員が,消費電力の低減や誤作動の防止等を目的として作業床30を一旦上昇させた後は,高所作業車1の主電源をOFFにして高所作業を行うような使用方法をしている場合であっても,正確な積算作業時間tを取得することができる。
【0082】
この場合,作業床30を上昇させた後には常に主電源をOFFとして高所作業を行う作業員の使用を考慮して,作業床30が上昇状態で高所作業車1の主電源がOFFとなったことを「所定の上昇状態」の判定条件として設定できるようにしても良く,また,作業床30が上昇状態で高所作業車1の主電源がONに復帰したことを,「所定の上昇状態」が解除されたことの判定条件として設定できるようにしても良い。
【0083】
このような積算作業時間tのカウントは,熱中症リスクの監視作業を開始してから比較・判定の実行時点まで連続して行うものとしても良く,又は,所定の期間(一例として20分間)内でカウントするものとしても良い。
【0084】
積算作業時間tの取得を所定の測定期間内で行う場合,カウントを開始してから所定時間(一例として20分)毎にカウントされた積算時間を取得すると共にリセットして新たなカウントを開始するものとしても良く,又は,監視作業の開始時点からの積算作業時間を連続して記憶しておき,比較・判定の実行時点から所定時間(一例として20分)遡った期間を切り出して,この期間内より積算作業時間tを取得するものとしても良く,比較・判定が行われる時点からその前の一定期間の積算作業時間tを取得できるものであればその取得方法は特に限定されない。
【0085】
なお,前述した比較・判定処理を行う時間隔(監視期間T)と積算作業時間tを取得する期間は,これを一致させるものとしても良く,又は異なる時間隔に設定しても良く,例えば積算作業時間tの測定期間を一例として比較・判定時点より前の20分間としつつ,暑さ指数の算出や比較・判定を,常時連続して行い,又は,例えば数分程度の比較的短い間隔で間欠的に行う構成とするものとしても良い。
【0086】
(3-5) 補正手段
補正手段625は,前述した積算作業時間取得手段624が取得した積算作業時間tの増加に応じて増加する所定の補正値〔α(α0,α1,α2)又はα’(α’0,α’1,α’2)〕を,暑さ指数算出手段621が算出する暑さ指数Aに加算する補正を行い,及び/又は,前記比較・判定手段622で使用する前記基準値Wより減算する補正を行う,補正処理を実行する。
【0087】
本実施形態では,取得された積算作業時間tが一例として5分未満のときの補正値αとして「α=α0=0(℃)」,5分以上10分未満のときの補正値αとして「α=α1=3(℃)」,10分以上のときの補正値αとして「α=α2=5(℃)」を予め制御装置62に記憶させておき,取得した積算作業時間tに応じて,補正手段625により暑さ指数算出手段621が算出する暑さ指数Aに前述した補正値α(α0,α1,α2)を加算する補正を行うように構成した。
【0088】
もっとも,補正処理の方法はこの構成に限定されず,取得した積算作業時間tに応じて比較・判定処理で使用する基準値Wより前述の補正値α’(α’0,α’1,α’2)を減算するように構成するものとしても良く,又は,例えば前述した補正値の例えば1/2の値を補正値α(α0,α1,α2),α’(α’0,α’1,α’2)として設定しておき,取得された積算作業時間tに応じて暑さ指数Aにこの補正値α(α0,α1,α2)を加算すると共に,基準値Wより補正値α’(α’0,α’1,α’2)を減算するものとしても良い。
【0089】
このように補正処理を行うことで,積算作業時間tが熱中症の発症リスクの判定に考慮されることで,より正確に熱中症の発症リスクの判定を行うことが可能となる。
【0090】
〔変形例〕
本発明の熱中症リスク監視装置60の変形例を図6に示す。
【0091】
図6に示す熱中症リスク監視装置60は,図2を参照して説明した熱中症リスク監視装置60の構成に,更に,通信ネットワーク70と接続可能な無線通信手段65を設けたもので,これにより通信ネットワーク70に接続された外部機器80,図示の例では管理サーバ80a及び該管理サーバ80aに接続されたユーザ端末80bに対し信号を送信可能に構成されている。
【0092】
このように構成することで,無線通信手段65と通信ネットワーク70を介して基礎情報検出手段(温湿度センサ)61,高所作業車1のコントローラ(メインコントローラ12),及び前記制御装置62からの情報を管理サーバ80a等の外部機器に送信して管理等することができ,また,管理サーバ80aに接続(図示の例では直接接続しているが通信ネットワーク等を介した接続であっても良い)されたユーザ端末80bに対しても警報の通知等を行うことにより,ユーザ端末80bの使用者(現場管理者等)に対し熱中症の発症リスクが生じていることを報知できるようにしても良い。
【0093】
無線通信手段65に送信機能のみならず受信機能を持たせた場合には,制御装置62に,管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80からの指令信号を受信して,該制御装置62に設けた各部の設定を変更する設定変更手段626を更に設けるものとしても良い。
【0094】
このように構成することで,管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80側からの操作によって比較・判定処理時に使用する基準値W(補正前)や,補正値α(α0,α1,α2),α’(α’0,α’1,α’2),暑さ指数Aの算出や比較・判定処理を間欠的に行う場合の時間隔(監視期間T),積算作業時間tをカウントする期間の設定等を遠隔操作によって変更することも可能となる。
【0095】
なお,図示の実施形態では一台の管理サーバ80aで一台の熱中症リスク監視装置60を管理する構成例を示したが,この構成に限定されず,一台の管理サーバ80aで複数台の熱中症リスク監視装置60を同時に集中管理することができるようにしても良い。
【0096】
また,図示は省略するが,図6に示したように熱中症リスク監視装置60に通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65を設ける場合,制御装置62の機能(制御装置62において実現される,暑さ指数算出手段621,比較・判定手段622,報知処理手段623,積算作業時間取得手段624,補正手段625,設定変更手段626)の全部又は一部を,通信ネットワーク70に接続された外部機器80,例えば管理サーバ80aにおいて実現するように構成するものとしても良い。
【0097】
〔動作等〕
(1)動作パターン1:間欠監視型
以上のように構成された熱中症リスク監視装置60の動作の一例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
図7のフローチャートに示した動作を行う熱中症リスク監視装置60は,基礎情報検出手段61として温湿度センサを備えたもので,所定の監視期間T(一例として20分)毎に間欠的に暑さ指数Aの算出と,基準値Wとの比較・判定を行うように構成したものである。
【0099】
また,積算作業時間tの取得を,比較・判定の実行時点より所定時間(一例として20分)遡った期間の範囲内で行うようにして前述した監視期間Tと一致させている。
【0100】
以上のように構成された熱中症リスク監視装置60を搭載した高所作業車1において,熱中症リスク監視装置60に対し監視作業の開始指令がされると,熱中症リスク監視装置60は監視作業を開始する(図7のStep1)。
【0101】
高所作業車1の主電源のON,OFFに拘わらず熱中症リスク監視装置60に対し高所作業車1のバッテリから常時給電が行われるようにした本実施形態の構成では,熱中症リスク監視装置60が待機状態にあるときに監視作業の開始指令がされることで監視作業を開始するように構成した。
【0102】
このような監視作業の開始は,一例として,高所作業車1を起動させるための下部操作盤に設けたキースイッチのON信号を前述の開始指令として行うものとしても良く,熱中症リスク監視装置60に設けた図示せざる監視開始スイッチの操作を開始指令とし行うものとしても良く,高所作業車1の所定の動作状態(例えば待機中,最初の走行,最初の作業床の上昇が行われたこと等)を開始指令としても良く,又は,これらの組合せ(例えば,作業床が最下降位置にある状態でキースイッチがON操作されたこと等)を開始指令とするものとしても良く,更には,図6を参照して説明したように熱中症リスク監視装置60が通信ネットワーク70を介して外部機器80と通信可能とした構成では,外部機器80(例えば管理サーバ80aやユーザ端末80b)から監視作業開始の指令を受信することによって監視作業を開始するものとしても良く,高所作業車1の用途や使用状態等に応じて監視作業の開始条件を設定可能である。
【0103】
監視作業が開始されると,熱中症リスク監視装置60の制御装置62は予め記憶しているプログラムの実行により積算作業時間取得手段624を起動し,高所作業車1のメインコントローラ12より取得した高所作業車1の動作情報に基づいて,作業床30が所定の閾値(一例として2m)を越える高さに上昇しており,かつ,該上昇位置で停止した状態(所定の上昇状態)となっている時間の積算カウントを開始する(図7のStep2)。
【0104】
本実施形態において,積算作業時間取得手段624は,一旦,作業床30が所定の上昇状態となっていることを判定して積算カウントを開始すると,高所作業車1の主電源がOFFとなってメインコントローラ12からの動作情報を受信できなくなった場合であっても作業床30が下降を開始したことを示す情報を受信する迄の間,積算カウントを継続するように構成されている。
【0105】
このように構成することで,高所作業車1の作業員が,作業床30を一旦上昇させた後は,高所作業車1の主電源をOFFにして高所作業を行うといった使い方をしている場合であっても,積算作業時間tを正確にカウントすることができる。
【0106】
また,作業床30の上昇状態で高所作業車1の主電源をOFFにすることができるように構成されている場合,作業床30を上昇させた状態で常に主電源をOFFにして高所作業を行う作業員の使用を考慮して,作業床30が上昇状態で高所作業車1の主電源がOFFとなったことを「所定の上昇状態」の判定条件として設定できるようにし,また,作業床30が上昇状態で高所作業車1の主電源がONに復帰したことを,「所定の上昇状態」の判定を解除する条件として設定できるようにしても良い。
【0107】
そして,監視作業の開始より所定時間(監視期間)Tが経過すると,制御装置62は暑さ指数算出手段621を起動して,監視期間Tの経過時点において温湿度センサ61が検出した温度と相対湿度に基づいて暑さ指数(WBGT)Aを算出する(図7のStep2)。
【0108】
また,前述の積算作業時間取得手段624は,監視を開始してから所定の監視期間Tが経過した時点までの間に積算カウントされた,作業床が所定の閾値(一例として2m)を越える高さに上昇して停止した状態となっている時間を,積算作業時間tとして取得する(図7のStep2)。
【0109】
制御装置62によって実現される補正手段625は,積算作業時間取得手段624が取得した積算作業時間tに基づき,暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数Aに対し,以下の補正値α(α0,α1,α2)を加算する補正を行う(図7のStep3-6)。
・積算作業時間tが5分未満の場合,補正値α=α0=0℃(図7のStep4)
・積算作業時間tが5分以上10分未満の場合,補正値α=α1=3℃(図7のStep5)
・積算作業時間tが10分以上の場合,補正値α=α2=5℃(図7のStep6)。
【0110】
このようにして,補正手段625によって補正された後の暑さ指数(A+α)は,制御装置62において実現される比較・判定手段622によって所定の基準値W(一例として本実施例では33℃)と比較される(図7のStep7)。
【0111】
比較の結果,補正された暑さ指数(A+α)が基準値W以下(W≧A+α)である場合(図7のStep7のNo),現監視期間Tで取得された積算作業時間t値がリセットされ,積算作業時間取得手段624は次の監視期間Tの作業時間のカウントを開始して,図7のStep2以降の処理が繰り返される。
【0112】
一方,比較・判定手段622による比較の結果,補正された暑さ指数(A+α)が基準値Wを越えている(W<A+α)と判定されると(図7のStep7のYes),報知処理手段が警音器63aや警告灯63b等の報知手段63を作動させる指令信号を出力し,この指令信号を受信した警音器63aが警告音を発報すると共に警告灯63bが点灯して,熱中症の発症リスクが生じていることを作業床30上の作業員に対し報知して(図7のStep8),監視作業を終了し(図7のStep10),熱中症リスク監視装置60は積算作業時間tのカウントをリセットする等して次の監視作業の開始指令がされるまで待機状態となる。
【0113】
なお,図6を参照して説明したように,熱中症リスク監視装置60に通信ネットワーク70に接続可能な無線通信手段65を設け,該通信ネットワーク70に接続された管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80と通信可能とした例では,監視作業を終了(図7のStep10)させる前に,制御装置62で行われた判定結果等を管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80に出力して管理させると共に,ユーザ端末80b(ユーザ端末80bを使用する管理者)に熱中症の発症リスクが生じていることを通知するようにしても良い(図7のStep9)。
【0114】
また,図示は省略するが,高所作業車1の使用中,熱中症の発症リスクが生じていることの報知が行われなかった場合には,例えば高所作業車1の下部操作盤に設けたキースイッチがOFF操作されることで,熱中症リスク監視装置60が監視作業を停止すると共に,積算作業時間のカウント等をリセットして次回の監視作業の開始を待機する前述の待機状態となるように構成するものとしても良い。
【0115】
このような監視作業の停止と待機状態への移行は,前述したキースイッチのOFF操作に限定されず,例えば熱中症リスク監視装置60に別途,監視作業の開始を指令する監視開始スイッチを設けこの監視開始スイッチがOFF操作された場合に監視作業の停止と待機状態への移行を行うものとしても良く,また,外部機器80からの停止指令を受信した場合に待機状態に移行するようにしても良い。
【0116】
また,作業床30を上昇させた後,高所作業車1の主電源をOFFにして高所作業を行うような使用が想定される場合には,例えば,作業床が最下降位置にある状態でキースイッチがOFF操作されたことを監視作業の停止と待機状態へ移行の条件とするものとしても良く,このようにすることで作業員が高所作業の開始前に主電源をOFFにする度に積算作業時間tのカウントがリセットされて正確な積算作業時間tが取得できなくなることを防止できる。
【0117】
図7を参照して説明した熱中症監視システム60では,所定時間(監視期間T)毎に暑さ指数Aの算出と,基準値Wとの比較・判定を行うものとしたことから,常時リアルタイムで監視や通信を行うように構成した場合に比較して熱中症リスク監視装置60の消費電力を低減させる事が可能である。
【0118】
(2)動作パターン2:連続(リアルタイム)監視型
以上,図7を参照して動作を説明した熱中症リスク監視装置60では,暑さ指数Aの算出や基準値Wとの比較・判定を所定の監視期間T(一例として20分)毎に間欠的に行うように構成した。
【0119】
これに対し,図8を参照して以下に動作説明を行う熱中症リスク監視装置60では,暑さ指数Aの算出と,基準値Wとの比較・判定を連続してリアルタイムで行うように構成した。
【0120】
監視作業の開始指令が行われ,図8に示すように熱中症リスク監視装置60が熱中症リスクの監視作業を開始すると(図8のStep1),熱中症リスク監視装置60の制御装置62は,暑さ指数算出手段621,積算作業時間取得手段624,補正手段625,及び比較・判定手段622を起動する。
【0121】
そして,暑さ指数算出手段621により温湿度センサ61が検出した温度及び湿度からリアルタイムで暑さ指数Aを算出すると共に,積算作業時間取得手段624により作業床が閾値(一例として2m)を越える高さに上昇して停止した状態となっている時間を監視作業の開始以降連続して積算カウントして積算作業時間tを取得し,補正手段625によって暑さ指数算出手段621がリアルタイムで算出した暑さ指数Aを,積算作業時間取得手段624が起動以降連続してカウントした積算作業時間tの長さに応じて所定の補正値α(α0,α1,α2)で補正する(図8のStep2)。
【0122】
そして,比較・判定手段622が,補正後の暑さ指数(A+α)と基準値Wとのリアルタイムでの比較を開始する(図8のStep3)。
【0123】
暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数Aに対し,補正手段625が加算する補正値αは,一例として積算作業時間tが5分未満の場合には0℃(α=α0=0;補正なし),5分以上10分未満の場合には3℃(α=α1=3),10分以上の場合には5℃(α=α2=5)に設定されている。
【0124】
従って,監視を開始した直後から積算作業時間tが5分以上となるまでは,基準値Wと暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数Aが直接比較され(図8のStep3),算出された暑さ指数Aが基準値Wを越えている(W<A)場合には(図8のStep3のYes),報知処理手段623が警音器63aや警告灯63b等の報知装置63を作動させる制御信号を出力して,熱中症の発症リスクが生じた状態にあることを作業員に対し報知する(図8のStep9)。
【0125】
そして,熱中症リスク監視装置60が無線通信手段65を備え,管理サーバ80aやユーザ端末80b等の外部機器80と通信可能とした構成では,ユーザ端末80bに対し警告が報知されたことを通知した後(図8のStep10),監視作業を終了し(図8のStep11),熱中症リスク監視装置60はカウントされた積算作業時間tをリセットする等して次の監視作業の開始指令がされるまで待機状態となる。
【0126】
一方,暑さ指数Aが基準値W未満(W>A)の場合(図8のStep3のNo)には監視作業が継続される。
【0127】
監視の開始後,時間の経過と共に積算作業時間取得手段624が取得する積算作業時間tが増加して,積算作業時間tが5分以上10分未満になると,補正手段625は暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数Aに補正値α(α=α1=3)を加算する補正を行い(図8のStep4),比較・判定手段622はこの補正後の暑さ指数(A+α1)を基準値Wと比較する(図8のStep5)。
【0128】
そして,補正後の暑さ指数(A+α1)が基準値Wを越えている(W<A+α1)場合には(図8のStep5のYes),報知処理手段623が警音器63aと警告灯63bを作動させて作業員に熱中症の発症リスクが生じていることを報知すると共に(図8のStep9),ユーザ端末80bに対し警告が報知されたことを通知して(図8のStep10),その後,監視作業を終了し(図8のStep11),熱中症リスク監視装置60は前述の待機状態へと移行する。
【0129】
一方,補正後の暑さ指数(A+α1)が基準値W未満(W>A+α1)の場合(図8のStep5のNo)には,熱中症リスクの監視が更に継続される。
【0130】
監視の更なる継続により,積算作業時間取得手段624が取得する積算作業時間tが増加して10分以上になると,補正手段625は暑さ指数算出手段621が算出した暑さ指数Aに補正値α(α=α2=5)を加算する補正を行い(図8のStep6),比較・判定手段622はこの補正後の暑さ指数(A+α2)を基準値Wと比較し(図8のStep7),補正後の暑さ指数(A+α2)が基準値Wを越えている(W<A+α2)場合には(図8のStep7のYes),熱中症の発症リスクが発生していることを作業員に警告すると共に,ユーザ端末80bに通知し(図8のStep9,10),監視作業を終了する(図8のStep11)。
【0131】
一方,補正後の暑さ指数(A+α2)が基準値W未満(W>A+α2)の場合(図8のStep7のNo)には,更に熱中症リスクの監視が継続される。
【0132】
本実施例では,積算作業時間tが所定の上限作業時間(一例として60分)を越えると,補正された暑さ指数(A+α)が基準値Wを越えているか否かに拘わらず,報知処理手段623が警音器63aや警告灯63b等の報知装置63に対し作動指令信号を出力すると共にユーザ端末80bに通知して(図8のStep9,10),監視作業を終了し(図8のStep11),熱中症リスク監視装置60は前述した待機状態となる。
【0133】
なお,図示は省略するが熱中症の発症リスクが生じていることの報知が行われず,かつ,積算作業時間tが所定の上限時間に達する前に高所作業車1の使用が終了した場合には,例えば高所作業車1の下部操作盤に設けたキースイッチのOFF操作により監視作業を停止して前述の待機状態に移行するように構成するものとしても良い。
【0134】
このような監視作業の停止と待機状態への移行は,前述したキースイッチのOFF操作に限定されず,例えば熱中症リスク監視装置60に別途監視開始スイッチを設けてこの監視開始スイッチがOFF操作された場合に行うものとしても良く,外部機器80からの停止指令を受信した場合に行うものとしても良く,各種条件を待機状態へ移行条件とすることができる。
【0135】
なお,作業床30を上昇させた後,高所作業車1の主電源をOFFにして高所作業を行うような使用が想定される場合には,例えば,作業床が最下降位置にある状態でキースイッチがOFF操作されたことを監視作業の終了と待機状態への移行条件とすることで,作業員が主電源をOFFにする度に積算作業時間tのカウントがリセットされることで正確な積算作業時間tが取得できなくなる不都合の発生を防止することができる。このように,本実施例では熱中症の発症リスクをリアルタイムで常時監視する構成としたことで,作業員や管理者はより正確かつ確実に熱中症の発症リスクを把握することができる。
【0136】
また,この構成では,監視の開始比較,積算作業時間tのカウントをリセットすることなく継続して実行することから,前述したように,積算作業時間tが上限作業時間(一例として60分)に至った場合には,補正後の暑さ指数(A+α)が基準値Wを越えているか否かとは無関係に作業員に休憩を促す警報等を行う処理が可能となる。
【符号の説明】
【0137】
1 高所作業車
10 車台
11 走行装置(無限軌道)
12 メインコントローラ
20 昇降機構
21 シザースリンク
30 作業床
31 防護柵
32 上部操作盤
32a 上部コントローラ
40 電気配線
50 有線通信ケーブル
60 熱中症リスク監視装置
61 基礎情報検出手段(温湿度センサ)
62 制御装置
621 暑さ指数算出手段
622 比較・判定手段
623 報知処理手段
624 積算作業時間取得手段
625 補正手段
626 設定変更手段
63 報知装置
63a 警音器
63b 警告灯
64 ケーシング
65 無線通信手段
70 通信ネットワーク
80 外部機器
80a 管理サーバ
80b ユーザ端末
A 暑さ指数(WBGT)
W 基準値
T 監視期間
t 積算作業時間
α(α0,α1,α2),α’(α’0,α’1,α’2) 補正値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8