(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008214
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109904
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 光児
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB03
3D203CA07
3D203CA82
3D203CB09
3D203CB24
3D203CB34
(57)【要約】
【課題】遮音性能と保守性とを兼ね備えた車両用アンダーカバーを提供をする。
【解決手段】車両用アンダーカバー10は、例えば繊維体や発泡体などの多孔質体で構成されている板状体12と、板状体12を支持する支持体14とを備えている。また、車両用アンダーカバー10は、車両用アンダーカバー10の厚さ方向に透視可能な透明部材26を備えている。透明部材26は、支持体14に接続して配置しても、板状体12に接続して配置しても、支持体14及び板状体12の両方に接続して配置しても、何れであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の板状体と、前記板状体を支持する支持体と、を備える車両用アンダーカバーであって、
前記車両用アンダーカバーの厚さ方向に透視可能な透明部材を備えている
ことを特徴とする車両用アンダーカバー。
【請求項2】
前記透明部材が、前記支持体に接続されている請求項1記載の車両用アンダーカバー。
【請求項3】
前記透明部材の縁部が、前記支持体に挟まれている請求項2記載の車両用アンダーカバー。
【請求項4】
前記透明部材が、前記板状体に接続されている請求項1記載の車両用アンダーカバー。
【請求項5】
前記透明部材の樹脂が、前記板状体に含浸している請求項4記載の車両用アンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用アンダーカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両におけるエンジンの下側には、エンジン音を低減するために、アンダーカバーが設置されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアンダーカバーは、メンテナンス用の開口部を塞ぐ蓋部材に孔部を設けることで、蓋部材を取り外すことなく孔部を介してドライブシャフトの接続箇所等を目視可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンダーカバーは、視認用の孔部が比較的大きく開口しているので、孔部から音が車外へ漏れてしまう難点がある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、保守性及び遮音性能を兼ね備える車両用アンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用アンダーカバーの第1態様は、
多孔質の板状体と、前記板状体を支持する支持体と、を備える車両用アンダーカバーであって、
前記車両用アンダーカバーの厚さ方向に透視可能な透明部材を備えていることを要旨とする。
【0007】
本発明の車両用アンダーカバーの第2態様は、前記第1態様において、
前記透明部材が、前記支持体に接続されていてもよい。
【0008】
本発明の車両用アンダーカバーの第3態様は、前記第2態様において、
前記透明部材の縁部が、前記支持体に挟まれていてもよい。
【0009】
本発明の車両用アンダーカバーの第4態様は、前記第1態様において、
前記透明部材が、前記板状体に接続されていてもよい。
【0010】
本発明の車両用アンダーカバーの第5態様は、前記第4態様において、
前記透明部材の樹脂が、前記板状体に含浸していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用アンダーカバーの第1態様によれば、保守性及び遮音性能を兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンアンダーカバーを示す平面図である。
【
図2】第1実施形態のエンジンアンダーカバーの一部を上側(車両内側)から示す概略斜視図である。
【
図3】第1実施形態のエンジンアンダーカバーの一部を下側(車両外側)から示す概略斜視図である。
【
図4】(a)は
図1のA-A線に対応する位置で切断した端面図であり、(b)は(a)のB部拡大図であり、(c)は(a)のC部拡大図である。
【
図5】(a)は
図1のD-D線に対応する位置で切断した端面図であり、(b)は(a)のE部拡大図であり、(c)は(a)のF部拡大図である。
【
図6】第1実施形態のエンジンアンダーカバーの製造過程を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態のエンジンアンダーカバーの製造過程を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態に係るエンジンアンダーカバーを示す平面図である。
【
図9】(a)は
図8のG-G線に対応する位置で切断した端面図であり、(b)は(a)のH部拡大図である。
【
図10】第2実施形態のエンジンアンダーカバーの製造過程を示す説明図である。
【
図11】第3実施形態に係るエンジンアンダーカバーを示す端面図であり、(a)は透明部材の取り付け前であり、(b)は透明部材を取り付けた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る車両用アンダーカバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本発明に係る車両用アンダーカバーは、エンジンアンダーカバー、フロアアンダーカバー、フェンダーライナーなどの車両外装部材やその他の車両構成部材として好適に用いることができる。なお、実施例では、車両用アンダーカバーとして、車両におけるエンジンルームの下側に取り付けられるエンジンアンダーカバーを例示して説明する。以下の実施例で説明するエンジンアンダーカバーでは、車両内側が上であり、車両外側が下になる。
【実施例0014】
(第1実施形態)
図1~
図4に示すように、第1実施形態のエンジンアンダーカバー(車両用アンダーカバー)10は、多孔質材料を主体として構成された板状体12と、板状体12を支持する支持体14とを備えている。エンジンアンダーカバー10は、エンジンアンダーカバー10の厚み方向(実施例では上下方向)に透視可能な透明部材26を備えている。なお、
図1において、判り易くするため、透明部材26に斜線を付して表示している。エンジンアンダーカバー10は、板状体12と合成樹脂製の支持体14とが接合されている。エンジンアンダーカバー10は、支持体14に設けられた取付部16を用いて、自動車等の車両の車体に取り付けられる。なお、実施例では、孔形状の取付部16に、ボルトやリベットなどの締結部材を通して、エンジンアンダーカバー10を車体に取り付ける。符号18は、板状体12および支持体14を上下へ貫通する水抜き孔である。
【0015】
板状体12の主体となる層を構成する多孔質材料としては、例えば、繊維体や発泡体などを用いることができる。板状体12は、多孔質材料に由来する特性によって、吸音や断熱などの所要の機能を発揮するものである。エンジンアンダーカバー10は、エンジン音や、走行音などの車外騒音を、板状体12によって抑えている。板状体12を構成する繊維体としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維などからなる不織布や織布などを用いることができる。また、板状体12を構成する発泡体としては、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの発泡体を用いることができる。なお、板状体12は、吸音性の観点から通気性を有する多孔質材料が好ましい。
【0016】
板状体12は、1層で構成してもよいが、2層以上で構成してもよい。例えば、板状体12は、エンジンアンダーカバー10の下側(車両外側)に臨むように配置されて、板状体12に求められる主機能(実施例では吸音)を担保するための第1層と、第1層に重ねて配置されて、板状体12に付加する補助機能(実施例では撥水)を担保するための第2層とを含む複層構造にすることができる。この場合、第2層を第1層よりも密度を高く設定したり、第2層をシリコーン樹脂やフッ素樹脂などの撥水材料を付与することで撥水性を確保したりするなどができる。このように、板状体12において車両外側となる第2層に撥水性を付与することで、板状体12に水が浸入したり、板状体12に雪が付いたり、板状体12に着氷したりすることを防止できるので好ましい。なお、エンジンアンダーカバー10の上側(車両内側)の一部または全面に重ねて、例えば、不織布等の繊維体や発泡体などのシートを重ねて配置してもよい。
【0017】
支持体14は、合成樹脂の射出成形等による成形品である。合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン (ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0018】
図1に示すように、支持体14は、互いに交差する複数の枠部20,22を有している。具体的には、支持体14は、車両における前後方向に延びる第1枠部20と、第1枠部20と交差する方向(車両における横方向)に延びる第2枠部22とを備えている。また、支持体14は、エンジンアンダーカバー10の外縁部を構成する外枠部24を備えている。第1枠部20および第2枠部22が、外枠部24の内側に連ねて格子状に配置されている。そして、第1枠部20および第2枠部22、あるいは第1枠部20、第2枠部22および外枠部24で前後左右に並んで構成される複数の区画の内側に、板状体12が配置されている。なお、支持体14は、第1枠部20、第2枠部22よび外枠部24を一体的に形成した成形品である。
【0019】
図2及び
図3に示すように、第1枠部20は、横板20aと、横板20aにおける左右の縁からそれぞれ延びる縦板20bとを有する溝形状に形成されている。
図5に示すように、第1枠部20は、縦板20bの下端部に板状体12が接続されており、横板20aが板状体12の上面よりも上側に位置するように張り出している。換言すると、第1枠部20は、下側(車両外側)から上側(車両内側)へ向けて凹み、左右の縦板20b,20bの間が下側に開口している。実施例では、前後方向に亘って1本の第1枠部20が延びているが、複数の第1枠部20を前後方向に直列配置してもよい。
【0020】
図1に示すように、第2枠部22は、左右に隣り合う第1枠部20,20の間に設けられている。なお、実施例において、第2枠部22は、第1枠部20よりも剛性が低くなるように構成されている。例えば、第2枠部22は、第1枠部20よりも上側(車両内側)への突出寸法が小さく形成されている。より具体的には、第2枠部22は、基部22aと、基部22aから上側(車両内側)へ立ち上がる立部22bとを備えている(
図4参照)。実施例の第1枠部20が、横板20a及び左右の縦板20b,20bによる断面「U」字形状であるのに対して、実施例の第2枠部22が、板状の基部22a及び板状の立部22bによる断面「T」字形状である。立部22bの上下方向の寸法が、第1枠部20における縦板20bの上下方向の寸法よりも小さく、立部22bの上端が横板20aよりも低い位置にある。なお、実施例では、エンジンアンダーカバー10の側縁部を構成する車両横側の外枠部24に、立部22bと同様のリブ形状が設けられている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、第2枠部22において、基部22aが、第1枠部20の縦板20bの下端に繋がり、立部22bが縦板20bに繋がっている。また、基部22aが、板状体12に繋がっている(
図4参照)。実施例では、基部22aが板状体12に含浸して一体化されており、板状体12に重ねて立部22bが設けられている。第1枠部20が、互いに分かれている左右の板状体12,12の間に設けられて、左右に隣り合う板状体12を第1枠部20で支持している(
図5参照)。一方、第2枠部22が、前後に連続する板状体12に重ねて設けられて、板状体12を第2枠部22で支持している(
図4参照)。
【0022】
エンジンアンダーカバー10において、透明部材26は、透明部材26を介して視認したい対象(例えば、エンジンアンダーカバー10よりエンジン側に取り付けられた部品やドライブシャフトの接続部分など)に合わせて配置されている。透明部材26は、板状である。なお、透明部材26に、水抜き孔18を設けてもよい。
【0023】
透明部材26は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、シリコーン樹脂などの透明樹脂や、その他の透明な材料で構成できる。この中でも、透明部材26としては、耐衝撃性に優れたアクリル樹脂やポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0024】
図1、
図4及び
図5に示すように、第1実施形態の透明部材26は、支持体14に接続されている。透明部材26は、左右に隣り合う第1枠部20,20に左右の縁部が支持されて、前後に隣り合う第2枠部22,22に前後の縁部が支持されている。第1実施形態では、第1枠部20及び第2枠部22によって区画される窓部分を、板状体12から透明部材26に置き換えて塞いでいる。
図5(c)に示すように、第1枠部20は、縦板20bの下端部に、横向きに開口する第1接続溝部21を有している。透明部材26の縁部が、第1接続溝部21を構成する上下の溝壁に挟まれている。
図4(c)に示すように、第2枠部22は、基部22aの縁部に、横向きに開口する第2接続溝部23を有している。透明部材26の縁部が、第2接続溝部23を構成する上下の溝壁に挟まれている。このように、第1実施形態において、透明部材26の縁部が、枠部20,22にくわえ込まれて、支持体14に接続される。
【0025】
第1実施形態のエンジンアンダーカバー10は、板状体12となるシートSと、透明部材26とをセットした成形型30で支持体14を成形する所謂インサート成形によって得られる(
図6~
図7参照)。インサート成形によって得られるエンジンアンダーカバー10は、合成樹脂を硬化して形成される支持体14が多孔質の板状体12内に含浸固化することで、板状体12と支持体14とが一体化されている。
【0026】
具体的には、以下のように第1実施形態のエンジンアンダーカバー10を製造することができる。まず、板状体12となるシートSを用意する。例えば、シートSは、外枠部24の内縁よりも一回り大きく設定された1枚ものであり、第1枠部20に対応する位置に、開口や切れ目等による脆弱部Saが形成されている(
図7(a)参照)。また、シートSには、透明部材26に対応する位置が切り欠かれて、開口Sbが形成されている(
図6(a)及び
図7(a)参照)。なお、別の方法として、左右に隣り合う第1枠部20,20間の寸法よりもわずかに幅広に形成したシートSを複数用意し、短冊状のシートSを型開きした成形型30にセットするようにしてもよい。シートSは、例えばトムソン刃などによって、打ち抜き加工することで形成することができる。なお、脆弱部Saは、外形のカットに合わせて形成すればよい。
【0027】
シートSを、第1型32において第1枠部20の下面を形作る第1型凸部32aに脆弱部Saを合わせてセットする(
図7(a)参照)。このとき、第1型32において第2枠部22の下面を形作る部分にシートSが重なって配置されている(
図6(a)参照)。成形型30を型閉じすることで、第1型凸部32aに押されると共に、第2型34において第1枠部20の上面を形作る第2型凹部34aの開口縁に押されることで、脆弱部Saが破断し、第1型凸部32aを挟んでシートSが分割される(
図7(b)参照)。そして、分割されたシートSの端部が、第2型凹部34aの開口縁と第1型32との間で圧縮されて保持される。成形型30を型閉じすることで、第2型34において第2枠部22の上面を形作る第2枠成形部34bにシートSが圧縮されて保持される(
図6(b)参照)。また、透明部材26を、第1型32と第2型34とで挟んでセットする(
図6(b)及び
図7(b))。
【0028】
型閉じによって、第1型凸部32aと第2型凹部34aとの間に、第1枠部20に対応するキャビティ36が形成され、このキャビティ36にシートSの端部が入っている。また、第2枠成形部34bとシートSとの間に、第2枠部22の立部22bに対応するキャビティ36が形成される。更に、成形型30にセットされた透明部材26の縁部が、第1枠部20に対応するキャビティ36及び第2枠部22に対応するキャビティ36に入っている(
図6(b)及び
図7(b)参照)。
【0029】
複数箇所に設けられた図示しないゲートから樹脂材料をキャビティ36に注入し、支持体14を射出成形する(
図6(c)および
図7(c)参照)。第1型凸部32aと第2型凹部34aとの間のキャビティ36において、板状体12(シートS)の端部が入り込んだ状態で第1枠部20が成形される。このとき、板状体12(シートS)における第1枠部20の近傍が、第2型凹部34aの開口縁で圧縮されているので、板状体12への樹脂材料の含浸を抑制することができる。第2枠成形部34bとシートSとの間のキャビティ36において、第2枠部22の立部22bが成形されると共に、シートSに樹脂材料が含浸して基部22aが成形される。このとき、板状体12(シートS)における第2枠部22の近傍が、基部22aに対応する部分よりも圧縮されているので、板状体12への樹脂材料の含浸を抑制することができる。このように、左右方向に隣り合う板状体12の間に第1枠部20が成形されると共に、板状体12に重ねて第2枠部22が成形される。
【0030】
第1型凸部32aと第2型凹部34aとの間のキャビティ36において、透明部材26の縁部が入り込んだ状態で第1枠部20が成形される(
図7(c)参照)。第2枠成形部34bと第1型32との間のキャビティ36において、透明部材26の縁部が入り込んだ状態で第2枠部22が成形される(
図6(c)参照)。これにより、透明部材26の縁部が第1枠部20及び第2枠部22に接続される。
【0031】
そして、得られたエンジンアンダーカバー10を、型開きした成形型30から取り出す(
図6(d)及び
図7(d)参照)。このように前述した製造方法によれば、透明部材26を有するエンジンアンダーカバー10を簡単に得ることができる。なお、透明部材26をセットした成形型30において支持体14を成形して、透明部材26の全周を支持体14で接続することで、透明部材26と支持体14とを強固な接続状態にできる。
【0032】
エンジンアンダーカバー10は、透明部材26を介して、エンジンアンダーカバー10の外側から、エンジンアンダーカバー10の内側を見通すことが可能である。エンジンアンダーカバー10は、透明部材26が厚み方向へ透視可能であるので、エンジンアンダーカバー10や透明部材26を取り外すことなく、エンジンアンダーカバー10の内側にある機器や部品等の取り付け状態を確認したりするなどが可能である。これにより、エンジンアンダーカバー10による騒音対策を行っても、各種の確認作業を簡単に行うことができる。しかも、エンジンアンダーカバー10を貫通する確認用開口を形成する場合と異なり、透明部材26が存在しているので、透明部材26によって音漏れを抑えることができる。このように、エンジンアンダーカバー10は、保守性及び遮音性能を兼ね備えている。
【0033】
第1実施形態のエンジンアンダーカバー10は、透明部材26が、板状体12を支持する支持体14に接続されているので、透明部材26が適切に支持される。また、透明部材26の縁部が、支持体14に挟まれていると、透明部材26のより確実な支持を図ることができる。このように、透明部材26を、エンジンアンダーカバー10において骨格となる支持体14に接続することで、透明部材26のガタつきを抑えることができる。しかも、板状体12よりも剛性を有する透明部材26を枠部20,22の間に架け渡すと、支持体14の剛性を向上できるメリットもある。
【0034】
(第2実施形態)
図8及び
図9に示すように、第2実施形態のエンジンアンダーカバー40は、板状体12に接続された透明部材26を備えている。なお、
図8において、判り易くするため、透明部材26に斜線を付して表示している。透明部材26の周囲が、板状体12に囲まれている。第2実施形態のように、透明部材26の樹脂が、多孔質の板状体12に含浸して、両者が接続されていてもよい(
図9(b)参照)。第2実施形態では、板状体12の一部を透明部材26に置き換えている。そして、第1枠部20及び第2枠部22によって区画される窓部分を、板状体12と透明部材26とで塞いでいる。第2実施形態において特に説明していない事項は、第1実施形態やその他の記載を適用してもよい。
【0035】
第2実施形態のエンジンアンダーカバー40は、板状体12となるシートSをセットした成形型30で支持体14を成形する所謂インサート成形を行った後、透明部材26を成形する所謂二色成形によって得られる(
図10参照)。第2実施形態のエンジンアンダーカバー40は、合成樹脂を硬化して形成される透明部材26が多孔質の板状体12内に含浸固化することで、透明部材26と板状体12とが一体化されている。
【0036】
具体的には、以下のように第2実施形態のエンジンアンダーカバー40を製造することができる。まず、板状体12となるシートSを用意する。シートSは、第1実施形態と同様に、外枠部24の内縁よりも一回り大きく設定された1枚ものであり、第1枠部20に対応する位置に、開口や切れ目等による脆弱部Saが形成されている。また、シートSには、透明部材26を形成する位置が切り欠かれて、開口Sbが形成されている(
図10(a)参照)。
【0037】
シートSを、第1型32と第2型34との間にセットし(
図10(b)参照)、第1実施形態と同様に、支持体14を射出成形し、板状体12と支持体14とを接続する(
図10(c)参照)。次に、板状体12の開口Sbに、透明部材26となる樹脂を供給し、透明部材26を成形する(
図10(d)参照)。このとき、透明部材26となる樹脂が板状体12に含浸した状態となり、この樹脂が硬化することで、板状体12に接続された透明部材26が形成される。
【0038】
そして、得られたエンジンアンダーカバー40を、型開きした成形型30から取り出す。このように前述した製造方法によれば、透明部材26を有するエンジンアンダーカバー40を簡単に得ることができる。なお、板状体12がインサートされた成形型30において透明部材26を成形して、透明部材26と板状体12を接続することで、透明部材26と板状体12とを、強固な接続状態にできる。第2実施形態のエンジンアンダーカバー40は、第1実施形態と同様に、保守性及び遮音性能を兼ね備えている。
【0039】
(第3実施形態)
図11(b)に示すように、第3実施形態のエンジンアンダーカバー50は、別途成形した透明部材26を取り付けている。第3実施形態では、エンジンアンダーカバー50において透明部材26を配置したい位置に開口を設けて、この開口を塞ぐように透明部材26が取り付けられている。透明部材26の取り付け方法は、接着剤による接着や熱溶着やその他を用いることができるが、
図11では、支持体14に設けたボス28を透明部材26の孔26aに通して、ボス28の先端を潰す熱カシメを例示している。第3実施形態のエンジンアンダーカバー50は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、保守性及び遮音性能を兼ね備えている。第3実施形態において特に説明していない事項は、第1実施形態及び第2実施形態やその他の記載を適用してもよい。
【0040】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)透明部材は、1箇所に限らず、複数箇所に配置してもよい。
(2)透明部材は、支持体のみ、あるいは板状体のみに接続する構成に限らず、透明部材を支持体と板状体との両方に接続してもよい。
(3)透明部材は、枠部に囲まれる窓部分又は板状体の開口を塞ぐように配置することに限らず、第1枠部、第2枠部又は外枠部の一部を切り欠いて設けた開口を塞ぐように、透明部材を配置し、透明部材が支持体の一部を形成するようにしてもよい。