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特開2024-82143異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082143
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20240612BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20240612BHJP
【FI】
H02P29/00
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195896
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】391008515
【氏名又は名称】株式会社アイエイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 圭二
(72)【発明者】
【氏名】井田 雄久
【テーマコード(参考)】
2G014
5H501
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB33
2G014AC19
5H501AA22
5H501BB08
5H501HA08
5H501HB16
5H501JJ03
5H501LL22
5H501LL52
5H501MM01
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電力供給線の断線のみならず昇圧回路の故障の検出を可能とすることができる異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステムを提供する。
【解決手段】異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Ioutに応じた第1の信号Sを出力する第1の比較器11と、昇圧回路20の出力電圧Voutに応じた第2の信号Sを出力する第2の比較器12と、第1の信号S及び第2の信号Sに基づいて、昇圧回路20の出力電圧Voutの異常及び昇圧回路20の出力電流Ioutの異常を識別可能に示す第3の信号Sを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧回路の出力電流に応じた第1の信号を出力する第1の比較器と、
前記昇圧回路の出力電圧に応じた第2の信号を出力する第2の比較器と、
前記第1の信号及び第2の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を識別可能に示す第3の信号を出力する信号出力回路と、
を有する異常検出回路。
【請求項2】
前記昇圧回路の出力電流及び出力電圧の双方に異常がない第1の状態、前記昇圧回路の出力電流に異常がある第2の状態及び前記昇圧回路の出力電圧に異常がある第3の状態が、前記第3の信号において互いに異なる形態で示される
請求項1に記載の異常検出回路。
【請求項3】
前記昇圧回路は、所定の周波数でオンオフするスイッチング素子を含む昇圧チョッパ回路であり、
前記異常検出回路は、前記第1の状態において、前記スイッチング素子のオンオフの周波数と同じ周波数のパルス信号を前記第3の信号として出力し、前記第2の状態において、ローレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力し、前記第3の状態において、ハイレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力する
請求項2に記載の異常検出回路。
【請求項4】
前記第1の比較器は、前記スイッチング素子がオン状態のときに前記スイッチング素子に流れる電流に応じた電流検出電圧のレベルと第1の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第1の信号として出力し、
前記第2の比較器は、前記昇圧回路の出力電圧のレベルと第2の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第2の信号として出力する
請求項3に記載の異常検出回路。
【請求項5】
前記第1の信号及び前記第2の信号がワイヤードOR結合されて前記信号出力回路に入力される
請求項1に記載の異常検出回路。
【請求項6】
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて単一の前記第3の信号を生成する
請求項1に記載の異常検出回路。
【請求項7】
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に応じて発光する発光素子を含む
請求項6に記載の異常検出回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の異常検出回路と、
前記昇圧回路と、
前記第3の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧及び出力電流について異常の有無を判定し、異常有りと判定した場合、異常を示す情報を報知する制御を行う制御回路と、
を含む制御装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を、識別可能に示す情報を報知する制御を行う
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項8に記載の制御装置と、
モーターにより駆動される可動部と、
前記昇圧回路から供給される電力によって前記可動部に作用する制動力を解除するブレーキ装置と、
を含むアクチュエーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエーターに搭載されるブレーキ装置における断線を検出する技術として以下の技術が知られている。例えば、特許文献1には、電圧供給線を介してブレーキ装置にブレーキ解除電圧を供給するブレーキ解除電圧供給手段と、ブレーキ解除電圧供給手段が電圧供給線にブレーキ解除電圧を供給していることを検出するブレーキ解除信号検出手段と、ブレーキ解除信号検出手段により検出されたブレーキ解除信号の電圧値が所定値未満である場合に電圧供給線の断線を検出する断線検出手段と、を備えた断線検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-090446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無励磁作動形のブレーキ装置においては、ソレノイドに電力が供給されないときにブレーキが作動し、ソレノイドに電力が供給されたときにブレーキが解除される。ブレーキ解除を行う際に、ソレノイドには昇圧回路によって昇圧された電圧が電力供給線を介して供給される。
【0005】
昇圧回路及びブレーキ装置を含むシステムにおいて想定される故障モードは、電力供給線の断線のみならず、昇圧回路の故障も挙げられる。例えば、昇圧回路の出力電圧が目標値よりも顕著に低い場合には、ブレーキ装置においてブレーキ解除が不完全な状態でアクチュエーターの可動部が動作する、所謂「ブレーキの引きずり」を生じた状態となるおそれがある。特許文献1に記載の技術によれば、電力供給線の断線の検出は可能であるものの、昇圧回路の出力電圧の異常を検出することはできない。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、電力供給線の断線のみならず昇圧回路の故障の検出を可能とすることができる異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術に係る異常検出回路は、昇圧回路の出力電流に応じた第1の信号を出力する第1の比較器と、前記昇圧回路の出力電圧に応じた第2の信号を出力する第2の比較器と、前記第1の信号及び第2の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を識別可能に示す第3の信号を出力する信号出力回路と、を有する。
【0008】
前記昇圧回路の出力電流及び出力電圧の双方に異常がない第1の状態、前記昇圧回路の出力電流に異常がある第2の状態及び前記昇圧回路の出力電圧に異常がある第3の状態が、前記第3の信号において互いに異なる形態で示されてもよい。
【0009】
前記昇圧回路は、所定の周波数でオンオフするスイッチング素子を含む昇圧チョッパ回路であってもよい。前記異常検出回路は、前記第1の状態において、前記スイッチング素子のオンオフの周波数と同じ周波数のパルス信号を前記第3の信号として出力し、前記第2の状態において、ローレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力し、前記第3の状態において、ハイレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力してもよい。
【0010】
前記第1の比較器は、前記スイッチング素子がオン状態のときに前記スイッチング素子に流れる電流に応じた電流検出電圧のレベルと第1の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第1の信号として出力してもよい。前記第2の比較器は、前記昇圧回路の出力電圧のレベルと第2の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第2の信号として出力してもよい。
【0011】
前記第1の信号及び前記第2の信号がワイヤードOR結合されて前記信号出力回路に入力されてもよい。
【0012】
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて単一の前記第3の信号を生成してもよい。
【0013】
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に応じて発光する発光素子を含んでいてもよい。
【0014】
開示の技術に係る制御装置は、前記異常検出回路と、前記昇圧回路と、前記第3の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧及び出力電流について異常の有無を判定し、異常有りと判定した場合、異常を示す情報を報知する制御を行う制御回路と、を含む。
【0015】
前記制御回路は、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を、識別可能に示す情報を報知する制御を行ってもよい。
【0016】
開示の技術に係るアクチュエーターシステムは、前記制御装置と、モーターにより駆動される可動部と、前記昇圧回路から供給される電力によって前記可動部に作用する制動力を解除するブレーキ装置と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
開示の技術によれば、電力供給線の断線のみならず昇圧回路の故障の検出を可能とすることができる異常検出回路、制御装置及びアクチュエーターシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】開示の技術の実施形態に係る異常検出回路の構成の一例を示す図である。
図2】昇圧回路の出力電流及び出力電圧の双方に異常がない場合における、異常検出回路の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。
図3】昇圧回路の出力電圧に異常がある場合における、異常検出回路の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。
図4】昇圧回路の出力電流に異常がある場合における、異常検出回路の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。
図5】開示の技術の第2の実施形態に係るアクチュエーターシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、開示の技術の実施形態に係る異常検出回路10の構成の一例を示す図である。図1には、異常検出回路10による異常検出の対象である昇圧回路20が、異常検出回路10と共に示されている。
【0021】
昇圧回路20は、昇圧チョッパ回路を構成するものであり、インダクター21、スイッチング素子22、抵抗素子23、ダイオード24、キャパシター25及び昇圧制御回路26を含んで構成されている。スイッチング素子22は、例えばMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であり、昇圧制御回路26から供給される所定の周波数(例えば、80kHz)のパルス信号Sに応じてオンオフする。スイッチング素子22がオンオフを繰り返すことで、出力端子27からは入力電圧Vinよりも高いレベルの出力電圧Voutが出力される。昇圧回路20は、電力供給線28を介して負荷29に電力を供給する。負荷29として、例えば、後述するブレーキ装置41(図5参照)が想定される。なお、電力供給線28は、出力端子27から負荷28に向かって延びている。
【0022】
抵抗素子23は、スイッチング素子22に直列に接続されている。スイッチング素子22がオン状態となることにより、スイッチング素子22及び抵抗素子23にオン電流が流れる。抵抗素子23は、シャント抵抗として機能し、スイッチング素子22と抵抗素子23との接続点である接続ノードn1には、オン電流に応じた電流検出電圧Vsenseが発生する。電流検出電圧Vsenseは、スイッチング素子22のオンオフ動作に応じて電圧レベルが変動する鋸歯状波の電圧である。電流検出電圧Vsenseの振幅(ピークレベル)は、昇圧回路20の出力端子27から出力される出力電流Ioutの大きさに応じた大きさとなる。例えば、電力供給線28が断線した場合、出力電流Ioutはゼロとなり、これに伴って、電流検出電圧Vsenseの振幅(ピークレベル)は、電力供給線28が断線していない場合と比較して小さくなる。
【0023】
異常検出回路10は、昇圧回路20における出力電流Ioutの異常及び出力電圧Voutの異常を検出する機能を有する。異常検出回路10は、第1の比較器11、第2の比較器12及び信号出力回路16を含んで構成されている。
【0024】
第1の比較器11の反転入力端子(-入力端子)は、昇圧回路20の接続ノードn1に接続されている。すなわち、第1の比較器11の反転入力端子(-入力端子)には、電流検出電圧Vsenseが入力される。第1の比較器11の非反転入力端子(+入力端子)には、第1の閾値電圧Vref1が入力される。第1の比較器11は、電流検出電圧Vsenseのレベルが第1の閾値電圧Vref1のレベルよりも高い場合にローレベルの出力信号Sを出力し、電流検出電圧Vsenseのレベルが第1の閾値電圧Vref1のレベルよりも低い場合にハイレベルの出力信号Sを出力する。すなわち、第1の比較器11の出力信号Sは、昇圧回路20の出力電流Ioutに応じた信号である。出力信号Sは開示の技術における「第1の信号」の一例である。
【0025】
第2の比較器12の非反転入力端子(+入力端子)は、昇圧回路20の出力端子27に接続されている。すなわち、第2の比較器12の非反転入力端子(+入力端子)には、昇圧回路20の出力電圧Voutが入力される。第2の比較器12の反転入力端子(-入力端子)には、第2の閾値電圧Vref2が入力される。第2の比較器12は、昇圧回路20の出力電圧Voutのレベルが第2の閾値電圧Vref2のレベルよりも高い場合にハイレベルの出力信号Sを出力し、昇圧回路20の出力電圧Voutのレベルが第2の閾値電圧Vref2のレベルよりも低い場合にローレベルの出力信号Sを出力する。すなわち、第2の比較器12の出力信号Sは、昇圧回路20の出力電圧Voutに応じた信号である。出力信号Sは開示の技術における「第2の信号」の一例である。
【0026】
信号出力回路16は、発光素子14及び受光素子15を含むフォトカプラーによって構成されている。信号出力回路16は、発光素子14が発光するとき、ハイレベルの出力信号Sを出力し、発光素子14が発光しないときローレベルの出力信号Sを出力する。信号出力回路16の出力信号Sは、異常検出回路10の最終的な出力信号であり、開示の技術における「第3の信号」の一例である。
【0027】
発光素子14のアノードは電源ラインに接続され、発光素子14のカソードは抵抗素子13を介して第1の比較器11の出力端に接続されるとともに、第2の比較器12の出力端に接続されている。すなわち、第1の比較器11の出力信号S及び第2の比較器12の出力信号Sは、ワイヤードOR結合されて信号出力回路16に入力される。
【0028】
第1の比較器11において、ハイレベルの出力信号Sが出力されているとき、第1の比較器11の出力端はハイインピーダンスとなり、ローレベルの出力信号Sが出力されているとき、第1の比較器11の出力端の電位はグランド電位となる。第2の比較器12についても同様である。したがって、第1の比較器11及び第2の比較器12の双方がハイレベルの出力信号を出力している場合、発光素子14には電流が流れず、発光素子14は発光しないので、信号出力回路16の出力信号Sはローレベルとなる。一方、第1の比較器11及び第2の比較器12の少なくとも一方がローレベルの出力信号を出力している場合、発光素子14に電流が流れ、発光素子14が発光するので、信号出力回路16の出力信号Sはハイレベルとなる。このとき、発光素子14に流れる電流は、抵抗素子13によって制限されるため、第1の比較器11及び第2の比較器12のうち、ローレベルの出力信号を出力している比較器に過大な電流が流れ込むことはない。
【0029】
図2は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutの双方に異常がない場合における、異常検出回路10の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。第1の比較器11の反転入力端子(-入力端子)には、電流検出電圧Vsenseが入力される。電流検出電圧Vsenseの波形は鋸歯状波である。この鋸歯状波の周波数は、昇圧回路20のスイッチング素子22のゲートに入力されるパルス信号Sの周波数と一致する。昇圧回路20の出力電流Ioutに異常がない場合、電流検出電圧Vsenseの振幅は、第1の閾値電圧Vref1より大きくなる。この場合、第1の比較器11は、電流検出電圧Vsenseが第1の閾値電圧Vref1を超える期間にローレベルを呈し、それ以外の期間にハイレベルを呈するパルス信号を出力信号Sとして出力する。出力信号Sの周波数は、昇圧回路20のスイッチング素子22のゲートに入力されるパルス信号Sの周波数と一致する。
【0030】
第2の比較器12の非反転入力端子(+入力端子)には、昇圧回路20の出力電圧Voutが入力される。昇圧回路20の出力電圧Voutに異常がない場合、出力電圧Voutのレベルは、第2の閾値電圧Vref2より大きくなる。この場合、第2の比較器12はハイレベルを維持する出力信号Sを出力する。
【0031】
出力信号S及びSはワイヤードOR結合されて信号出力回路16に入力される。信号出力回路16は、出力信号S及びSの少なくとも一方がローレベルである期間にハイレベルを呈し、それ以外の期間はローレベルを呈する出力信号Sを出力する。したがって、信号出力回路16からは、出力信号Sを論理反転させたパルス信号が出力信号Sとして出力される。すなわち、異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutの双方に異常がない状態において、スイッチング素子22のオンオフの周波数と同じ周波数のパルス信号を出力信号Sとして出力する。
【0032】
図3は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutのうち、出力電圧Voutのみに異常がある場合における、異常検出回路10の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。昇圧回路20が故障して、昇圧回路20の出力電圧Voutのレベルが第2の閾値電圧Vref2のレベルを下回ると、第2の比較器12はローレベルを維持する出力信号Sを出力する。信号出力回路16は、出力信号Sがローレベルを呈する期間はハイレベルの出力信号Sを出力する。すなわち、異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電圧Voutに異常がある状態において、ハイレベルを維持する出力信号Sを出力する。
【0033】
図4は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutのうち、出力電流Ioutのみに異常がある場合における、異常検出回路10の各部の電圧波形又は信号波形の一例を示す図である。昇圧回路20と負荷29とを接続する電力供給線28の断線等により、昇圧回路20の出力電流Ioutに異常が生じた場合、電流検出電圧Vsenseの振幅(ピークレベル)は、第1の閾値電圧Vref1より小さくなる。この場合、第1の比較器11は、ハイレベルを維持する出力信号Sを出力する。昇圧回路20の出力電圧Voutに異常がない場合には、第2の比較器12の出力信号Sもハイレベルに維持される。信号出力回路16は、出力信号S及びSの双方がハイレベルを呈する期間はローレベルの出力信号Sを出力する。すなわち、異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Ioutに異常がある状態において、ローレベルを維持する出力信号Sを出力する。
【0034】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Ioutに応じた出力信号Sを出力する第1の比較器11と、昇圧回路20の出力電圧Voutに応じた出力信号Sを出力する第2の比較器12と、出力信号S及びSに基づいて、昇圧回路20の出力電圧Voutの異常及び昇圧回路20の出力電流Ioutの異常を識別可能に示す出力信号Sを出力する信号出力回路16と、を有する。
【0035】
異常検出回路10において、電力供給線28の断線は昇圧回路20の出力電流Ioutの異常として検出され、昇圧回路20の故障は昇圧回路20の出力電圧Voutの異常として検出される。したがって、開示の技術の実施形態に係る異常検出回路10によれば、電力供給線28の断線のみならず昇圧回路20の故障の検出が可能である。
【0036】
また、信号出力回路16は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutの双方に異常がない第1の状態、昇圧回路20の出力電流Ioutに異常がある第2の状態及び昇圧回路20の出力電圧Voutに異常がある第3の状態が、出力信号Sにおいて互いに異なる形態で示される。より具体的には、異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Iout及び出力電圧Voutの双方に異常がない第1の状態において、スイッチング素子22のオンオフの周波数と同じ周波数のパルス信号を出力信号Sとして出力する。異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電流Ioutに異常がある第2の状態において、ローレベルを維持する出力信号Sを出力する。異常検出回路10は、昇圧回路20の出力電圧Voutに異常がある第3の状態において、ハイレベルを維持する出力信号Sを出力する。このように、本実施形態に係る異常検出回路10によれば、出力信号Sの状態によって、昇圧回路20の状態が、第1から第3の状態のうちのいずれの状態であるかを特定することが可能となる。
【0037】
また、第1の比較器11の出力信号S及び第2の比較器12の出力信号SがワイヤードOR結合されて信号出力回路16に入力される。これにより、昇圧回路20の出力電流Ioutの異常及び出力電圧Voutの異常を、単一の出力信号Sによって識別可能に示すことが可能となり、信号出力回路16を、例えば単一のフォトカプラーによって構成することが可能となる。その結果、異常検出回路10の回路規模を小さくすることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は、開示の技術の第2の実施形態に係るアクチュエーターシステム100の構成の一例を示すブロック図である。アクチュエーターシステム100は、制御装置30及びアクチュエーター40を含んで構成されている。
【0039】
アクチュエーター40は、例えばスカラロボット又は直交ロボットに組み込まれる機械装置であり、モーター43、可動部42及びブレーキ装置41を含んで構成されている。可動部42はモーター43によって駆動される。モーター43は、制御装置30のドライバー32から供給される駆動信号Sによって駆動される。ブレーキ装置41は、制御装置30が備える昇圧回路20に、電力供給線28及びスイッチ35を介して接続されている。スイッチ35は、例えば、トランジスター等のスイッチ素子である。なお、本実施形態では、電力供給線28は制御装置30(その出力端子27)からブレーキ装置41に延びる電力供給用のケーブルである。
【0040】
ブレーキ装置41は、ソレノイド(図示せず)を含んで構成される無励磁作動形ブレーキ装置である。ブレーキ装置41は、昇圧回路20から電力が供給されない状態においてモーター43の出力シャフトの回転を規制することで可動部42に制動力を作用させ、昇圧回路20から供給される電力によって可動部42に作用する制動力を解除する。
【0041】
制御装置30は、第1の実施形態に係る異常検出回路10及び昇圧回路20を有する。制御装置30は更に、制御回路31、ドライバー32、表示部33、OR回路34及びスイッチ35を有する。
【0042】
制御回路31は、例えばマイクロコンピューターによって構成される。制御回路31は、可動部42を動作させるタイミングでブレーキ解除指令S及びモーター駆動指令Sを出力する。制御回路31から出力されるブレーキ解除指令SはOR回路34の一方の入力端に入力される。ブレーキ解除指令Sは、制御装置30の外部から入力することも可能である。制御装置30の外部から入力されたブレーキ解除指令Sは、OR回路34の他方の入力端に入力される。ブレーキ解除指令Sは、OR回路34を介してスイッチ35に供給される。スイッチ35がブレーキ解除指令Sに応じてオン状態となると、昇圧回路20からブレーキ装置41のソレノイド(図示せず)に電力が供給され、モーター43の出力シャフトの回転の規制が解除されることで、可動部42に作用している制動力が解除される。ドライバー32は、モーター駆動指令Sに応じて駆動信号Sをモーター43に供給する。これによりモーター43が駆動され、可動部42が動作する。
【0043】
電力供給線28に断線が生じた場合、異常検出回路10からは、昇圧回路20の出力電流Ioutが異常であることを示す(すなわちローレベルに維持された)出力信号Sが出力される。また、昇圧回路20が故障して昇圧回路20の出力電圧Voutが低下した場合、出力電圧Voutが異常であることを示す(すなわちハイレベルに維持された)出力信号Sが出力される。異常検出回路10の出力信号Sは、制御回路31に供給される。
【0044】
制御回路31は、異常検出回路10からの出力信号Sに基づいて、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについて異常の有無を判定する。例えば、出力信号Sは、制御回路31が備えるカウンター(図示せず)のリセット信号として用いられる。昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutの双方に異常がない場合、出力信号Sはハイレベルとローレベルが交互に切り替わるパルス信号となる(図2参照)。そのような出力信号Sがリセット信号としてカウンターに入力された場合には、カウンターは、オーバーフローする前にリセットされる。一方、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutの少なくとも一方に異常がある場合、出力信号Sはハイレベル又はローレベルを維持する(図3及び図4参照)。そのような出力信号Sがリセット信号としてカウンターに入力された場合には、カウンターはリセットされずオーバーフローする。制御回路31は、カウンターがオーバーフローしている場合に、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutの少なくとも一方に異常があるものと判定してもよい。つまり、制御回路31は、出力信号Sがローレベルを維持した状態が、所定時間継続したときは出力電流Ioutに異常があると判定し、出力信号Sがハイレベルを維持した状態が、所定時間継続したときは出力電圧Voutに異常があると判定する。ここで、所定時間は、昇圧制御回路26から供給される所定の周波数(例えば、80kHz)に基づいて設定される。例えば、所定時間は、所定の周波数に応じた周期(1/80kHz=12.5マイクロ秒)に所定のマージンを加えた時間であってよい。
【0045】
制御回路31は、出力信号Sに基づいて、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについて異常有りと判定した場合、異常判定信号Sを表示部33に供給することにより、異常を示す情報を表示部33に表示させる制御を行う。表示部33は、例えば、複数桁の数字を表示することが可能な7セグメントディスプレイである。制御回路31は、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについて、異常有りと判定した場合、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについての異常を示すエラーコードを表示部33に表示させる制御を行う。
【0046】
制御回路31は、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについて、異常有りと判定した時点における出力信号Sのレベルに基づいて、その異常が、出力電圧Voutの異常であるのか、出力電流Ioutの異常であるのかを特定してもよい。この場合、制御回路31は、出力電圧Voutの異常及び出力電流Ioutの異常を識別可能に示す情報を表示部33に表示させる制御を行ってもよい。すなわち、制御回路31は、出力信号Sが出力電流Ioutの異常を示す場合、出力電流Ioutの異常に対応するエラーコードを表示部33に表示させる制御を行い、出力信号Sが出力電圧Voutの異常を示す場合、出力電圧Voutの異常に対応するエラーコードを表示部33に表示させる制御を行ってもよい。なお、異常を示す情報の提示の形態はエラーコードに限定されない。エラーコードの表示による報知の他、例えば、ランプの点灯、音声を含む音又はテキストによる報知によって、異常を示す情報を提示してもよい。
【0047】
制御回路31は、昇圧回路20の出力電圧Vout及び出力電流Ioutについて、異常有りと判定した場合、モーター43への駆動信号Sの供給を停止させるべくドライバー32を制御する。これにより可動部42の動作が停止するので、可動部42に制動力が作用している状態で、可動部42が動作することが防止される。
【0048】
本実施形態に係るアクチュエーターシステム100において想定される故障モードは、電力供給線28の断線のみならず、昇圧回路20の故障も挙げられる。例えば、昇圧回路20の出力電圧Voutが目標値よりも顕著に低い場合には、ブレーキ装置41においてブレーキ解除が不完全な状態で行われ、所謂「ブレーキの引きずり」を生じた状態となるおそれがある。本実施形態に係るアクチュエーターシステム100によれば、電力供給線28の断線のみならず昇圧回路20の故障の検出が可能である。なお、ブレーキ装置41のソレノイドが断線した場合も電力供給線28に断線が生じた場合と同様である。したがって、本実施形態に係るアクチュエーターシステム100によれば、電力供給線28の断線のみならずブレーキ装置41のソレノイドの断線も検出することが可能である。
【0049】
以上の第1及び第2の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
昇圧回路の出力電流に応じた第1の信号を出力する第1の比較器と、
前記昇圧回路の出力電圧に応じた第2の信号を出力する第2の比較器と、
前記第1の信号及び第2の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を識別可能に示す第3の信号を出力する信号出力回路と、
を有する異常検出回路。
【0050】
(付記2)
前記昇圧回路の出力電流及び出力電圧の双方に異常がない第1の状態、前記昇圧回路の出力電流に異常がある第2の状態及び前記昇圧回路の出力電圧に異常がある第3の状態が、前記第3の信号において互いに異なる形態で示される
付記1に記載の異常検出回路。
【0051】
(付記3)
前記昇圧回路は、所定の周波数でオンオフするスイッチング素子を含む昇圧チョッパ回路であり、
前記異常検出回路は、前記第1の状態において、前記スイッチング素子のオンオフの周波数と同じ周波数のパルス信号を前記第3の信号として出力し、前記第2の状態において、ローレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力し、前記第3の状態において、ハイレベルを維持する信号を前記第3の信号として出力する
付記2に記載の異常検出回路。
【0052】
(付記4)
前記第1の比較器は、前記スイッチング素子がオン状態のときに前記スイッチング素子に流れる電流に応じた電流検出電圧のレベルと第1の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第1の信号として出力し、
前記第2の比較器は、前記昇圧回路の出力電圧のレベルと第2の閾値電圧のレベルとの比較結果を前記第2の信号として出力する
付記3に記載の異常検出回路。
【0053】
(付記5)
前記第1の信号及び前記第2の信号がワイヤードOR結合されて前記信号出力回路に入力される
付記1から付記4のいずれか1つに記載の異常検出回路。
【0054】
(付記6)
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて単一の前記第3の信号を生成する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の異常検出回路。
【0055】
(付記7)
前記信号出力回路は、前記第1の信号及び前記第2の信号に応じて発光する発光素子を含む
付記1から付記6のいずれか1つに記載の異常検出回路。
【0056】
(付記8)
付記1から付記7のいずれか1つに記載の異常検出回路と、
前記昇圧回路と、
前記第3の信号に基づいて、前記昇圧回路の出力電圧及び出力電流について異常の有無を判定し、異常有りと判定した場合、異常を示す情報を報知する制御を行う制御回路と、
を含む制御装置。
【0057】
(付記9)
前記制御回路は、前記昇圧回路の出力電圧の異常及び前記昇圧回路の出力電流の異常を、識別可能に示す情報を報知する制御を行う
付記8に記載の制御装置。
【0058】
(付記10)
付記8又は付記9に記載の制御装置と、
モーターにより駆動される可動部と、
前記昇圧回路から供給される電力によって前記可動部に作用する制動力を解除するブレーキ装置と、
を含むアクチュエーターシステム。
【符号の説明】
【0059】
10 異常検出回路
11 第1の比較器
12 第2の比較器
16 信号出力回路
20 昇圧回路
28 電力供給線
30 制御装置
31 制御回路
32 ドライバー
33 表示部
34 OR回路
35 スイッチ
40 アクチュエーター
41 ブレーキ装置
42 可動部
43 モーター
100 アクチュエーターシステム
図1
図2
図3
図4
図5