(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082157
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】スリット塗布ノズル
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240612BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240612BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195915
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 直大
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041CA03
4F041CA16
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042BA27
4F042CB02
4F042DF09
(57)【要約】
【課題】スリット塗布ノズルにおいて、塗布液の無駄を減らしつつ、吐出口での塗布液の流速分布を、当該吐出口の長手方向における位置に対して均一な状態に近づけることを可能にする。
【解決手段】スリット塗布ノズルは、ノズル本体と、マニホールド部と、を備える。ノズル本体は、塗布液の流入口及び吐出口を有し、当該吐出口がスリット状に形成されている。マニホールド部は、ノズル本体内に形成されており、流入口から吐出口まで塗布液を導く。具体的には、マニホールド部は、吐出口の長手方向に拡がった2つの内壁面によって形成されている。そして、ノズル本体を吐出口が鉛直下方へ向くように配置したときに流入口を通ることになる仮想鉛直線を基準線として、マニホールド部は、当該基準線の片側又は両側の位置に、上記2つの内壁面の隙間幅が基準線上の位置での当該隙間幅よりも大きくなった拡幅部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液の流入口及び吐出口を有し、当該吐出口がスリット状に形成されているノズル本体と、
前記ノズル本体内に形成されており、前記流入口から前記吐出口まで前記塗布液を導くマニホールド部と、
を備え、
前記マニホールド部は、前記吐出口の長手方向に拡がった2つの内壁面によって形成されており、
前記ノズル本体を前記吐出口が鉛直下方へ向くように配置したときに前記流入口を通ることになる仮想鉛直線を基準線として、前記マニホールド部は、当該基準線の片側又は両側の位置に、前記2つの内壁面の隙間幅が前記基準線上の位置での当該隙間幅よりも大きくなった拡幅部を有する、スリット塗布ノズル。
【請求項2】
前記流入口から前記ノズル本体内に流入した前記塗布液は、前記ノズル本体内で貯留されることなく、前記マニホールド部を通って前記吐出口に導かれる、請求項1に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項3】
前記マニホールド部は、少なくともその一部において、前記流入口から前記吐出口に近づくにつれて前記長手方向についての当該マニホールド部の全幅が大きくなるように形成されており、
前記拡幅部は、前記流入口から連続的に形成されており、且つ、前記長手方向についての当該拡幅部の幅が、前記流入口から前記吐出口に近づくにつれて、前記マニホールド部の前記全幅と共に大きくなるように形成されている、請求項1又は2に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項4】
前記拡幅部は、前記長手方向についての前記マニホールド部のエッジに沿って形成されている、請求項3に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項5】
前記2つの内壁面の少なくとも何れか一方には、前記拡幅部の隙間幅を徐々に大きくするための曲面が形成されている、請求項3に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項6】
前記2つの内壁面の少なくとも何れか一方には、前記拡幅部の隙間幅を徐々に大きくするための段差が形成されている、請求項3に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項7】
前記拡幅部は、前記流入口から前記吐出口までの途中に部分的に形成されている、請求項1又は2に記載のスリット塗布ノズル。
【請求項8】
塗布液の流入口及び吐出口を有し、当該吐出口がスリット状に形成されているノズル本体と、
前記ノズル本体内に形成されており、前記流入口から前記吐出口まで前記塗布液を導くマニホールド部と、
を備え、
前記マニホールド部は、前記吐出口の長手方向に拡がった2つの内壁面によって形成されており、
前記ノズル本体を前記吐出口が鉛直下方へ向くように配置したときに前記流入口を通ることになる仮想鉛直線を基準線として、前記マニホールド部は、当該基準線上の位置に、前記2つの内壁面の隙間幅が最も小さくなった縮幅部を有する、スリット塗布ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット状の吐出口を備えたスリット塗布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスリット塗布ノズルにおいては、流入口から吐出口までの流路の途中に、塗布液を一旦貯留する貯留部(通常「マニホールド」と呼ばれる部分)が設けられることが多い(例えば、特許文献1参照)。このようなスリット塗布ノズルによれば、流入口から流入した塗布液がスリット内を吐出口へ向けて放射状に流れる過程で、塗布液の拡がりに伴って当該塗布液の流速分布が不均一な状態になった場合でも、貯留部に塗布液を一旦貯留させることにより、塗布液の流速分布を均一な状態に近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のスリット塗布ノズルには、次のような問題がある。塗布の開始前においては、貯留部全体を塗布液で満たすための液出し作業が必要であり、その作業には多量の塗布液が必要になると共に大部分が廃液となる。また、塗布の終了後においては、少なくとも貯留部の容積分の塗布液が廃液となる。このように、貯留部が設けられた従来のスリット塗布ノズルでは、多量の塗布液が無駄になってしまう。また、貯留部において塗布液の流速分布を均一な状態に近づけることができたとしても、貯留部から吐出口までの間に塗布液はスリットの壁面の影響を受け、その影響により、塗布液が吐出口に到達したときには、塗布液の流速分布が不均一な状態へ逆戻りしてしまうといったことが起こり得る。
【0005】
更に、貯留部を設けた場合、当該貯留部では、塗布液が停滞することになって当該塗布液が凝集しやすくなり、それによって生じた凝集物がそのまま吐出口から吐出されるおそれがある。そのような凝集物は、塗布膜の平滑性や特性に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
そこで本発明の目的は、スリット塗布ノズルにおいて、塗布液の無駄を減らしつつ、吐出口での塗布液の流速分布を、当該吐出口の長手方向における位置に対して均一な状態に近づけることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスリット塗布ノズルは、ノズル本体と、マニホールド部と、を備える。ノズル本体は、塗布液の流入口及び吐出口を有し、当該吐出口がスリット状に形成されている。マニホールド部は、ノズル本体内に形成されており、流入口から吐出口まで塗布液を導く。具体的には、マニホールド部は、吐出口の長手方向に拡がった2つの内壁面によって形成されている。そして、ノズル本体を吐出口が鉛直下方へ向くように配置したときに流入口を通ることになる仮想鉛直線を基準線として、マニホールド部は、当該基準線の片側又は両側の位置に、上記2つの内壁面の隙間幅が基準線上の位置での当該隙間幅よりも大きくなった拡幅部を有する。
【0008】
上記スリット塗布ノズルによれば、マニホールド部において、拡幅部の隙間幅を、当該拡幅部以外の部分の隙間幅(基準線上の位置での隙間幅を含む)よりも大きくすることにより、拡幅部内を流れる塗布液に対して2つの内壁面が及ぼす影響(塗布液と2つの内壁面との間に生じる摩擦が当該塗布液に及ぼす影響)を、拡幅部以外の部分内を流れる塗布液に対して2つの内壁面が及ぼす影響よりも小さくすることができる。従って、拡幅部内では、塗布液の流速を速めることができる。
【0009】
ここで、流入口からマニホールド部内に流れ込んだ塗布液は、流入口から吐出口へ向けて放射状に拡がる。このため、マニホールド部に拡幅部を設けなかったとすると(即ち、マニホールド部の隙間幅が均一であったとすると)、塗布液の流れは次のようになる。塗布液のうちの基準線の両側へ拡がる部分の流速については、基準線に沿う基準方向の成分が、塗布液のうちの基準線上を流れる部分の流速(この部分の流速は、その殆どが基準方向の成分になっている)よりも小さくなってしまう。このため、吐出口では塗布液の流速分布が不均一な状態になってしまう。具体的に、吐出口が鉛直下方に向けられている場合には、流入口の真下の位置で流速(基準方向の成分)が最も大きくなり、長手方向において当該真下の位置から離れると流速(基準方向の成分)が小さくなる、といった不均一な流速分布が生じてしまう。
【0010】
一方、本発明に係るスリット塗布ノズルでは、拡幅部内において塗布液の流速を速めることができるため、当該拡幅部を基準線の両側の位置に配置することにより、塗布液のうちの基準線の両側へ拡がる部分の流速について、基準方向の成分を、塗布液のうちの基準線上を流れる部分の流速に近づけることができ、その結果として、吐出口での塗布液の流速分布を、長手方向における位置に対して均一な状態に近づけることが可能になる。
【0011】
しかも、マニホールド部には、従来から提案されているような塗布液を一旦貯留する貯留部を設ける必要がないため、塗布の開始前の液出し作業で必要となる塗布液の量が著しく少なくなり、また、塗布の終了後においても、マニホールド部内に残る塗布液の量が著しく少なくなる。よって、本発明に係るスリット塗布ノズルによれば、塗布の開始前及び終了後に生じる塗布液の無駄(即ち、廃液の量)を著しく減らすことが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スリット塗布ノズルにおいて、塗布液の無駄を減らしつつ、吐出口での塗布液の流速分布を、当該吐出口の長手方向における位置に対して均一な状態に近づけることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】スリット塗布ノズルを備える塗布装置を例示した概念図である。
【
図2】実施形態に係るスリット塗布ノズルの分解斜視図である。
【
図3】(A)ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図、及び(B)ノズル本体を吐出口側から見て示した平面図である。
【
図4】
図3(A)に示されるIV-IV線でのノズル本体の断面を示した概念図である。
【
図5】(A)マニホールド部に拡幅部を設けなかった場合について、流入口からの塗布液の流れをシミュレートし、その流れを可視化した図、及び(B)その場合についての吐出口での塗布液の流速分布を示した図である。
【
図6】(A)マニホールド部に拡幅部を設けた場合について、流入口からの塗布液の流れをシミュレートし、その流れを可視化した図、及び(B)その場合についての吐出口での塗布液の流速分布を示した図である。
【
図7】(A)第1変形例に係るスリット塗布ノズルについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体の断面を示した概念図、及び(B)
図7(A)に示されるVIIB領域の拡大図である。
【
図8】第2変形例に係るスリット塗布ノズルについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体の断面を示した概念図である。
【
図9】第3変形例に係るスリット塗布ノズルについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体の断面を示した概念図である。
【
図10】第4変形例に係るスリット塗布ノズルについて、ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図である。
【
図11】(A)第5変形例に係るスリット塗布ノズルについて、ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図、及び(B)
図11(A)のスリット塗布ノズルについての更なる変形例を示した図である。
【
図12】第6変形例に係るスリット塗布ノズルについて、ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図である。
【
図13】(A)第7変形例に係るスリット塗布ノズルについて、ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図、及び(B)
図13(A)のスリット塗布ノズルについての更なる変形例を示した図である。
【
図14】(A)第8変形例に係るスリット塗布ノズルについて、ノズル本体を構成する第1本体構成部及びシム部を、第2本体構成部側から見て示した平面図、及び(B)
図14(A)のスリット塗布ノズルについての更なる変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1]実施形態
[1-1]塗布装置の構成
図1は、スリット塗布ノズルKを備える塗布装置を例示した概念図である。
図1の例では、塗布装置は、チャック部1と、塗布液供給部2と、制御部3と、を備えている。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0015】
<チャック部>
チャック部1は、ステージ11と、ステージ駆動部12と、を含む。
【0016】
ステージ11は、載置面11aへの塗布対象T(塗布膜が形成される対象)のチャックが可能となるように構成されている。具体的には、チャックに必要な引力(真空吸引力や静電気引力など)を発生させる手段(不図示)が、ステージ11に設けられている。
【0017】
ステージ駆動部12は、塗布時のステージ11の移動を可能にする機構であり、制御部3からの指令に従ってステージ11の動作(移動方向や移動速度など)を制御する。
図1の例では、載置面11aに平行な所定方向D1においてステージ11の移動が可能になっている。
【0018】
<塗布液供給部>
塗布液供給部2は、スリット塗布ノズルKと、ノズル駆動部21と、送液ポンプ22と、を含む。
【0019】
スリット塗布ノズルKは、送液ポンプ22から供給された塗布液が流れ込む流入口50aと、当該塗布液を吐出するための出口であってスリット状に形成された吐出口50bとを有している。そして、スリット塗布ノズルKは、吐出口50bをステージ11の載置面11aへ向けた状態で設置される。このときのスリット塗布ノズルKの設置状態は、特に限定されるものではないが、通常は、吐出口50bを鉛直下方へ向けた状態になることが多い。また、
図1の例のようにステージ11の移動が所定方向D1において可能である場合には、スリット塗布ノズルKは、吐出口50bの長手方向D2(吐出口50bがスリット状に延びている方向。
図1の例では、紙面に垂直な方向)が載置面11aと平行で且つ所定方向D1と垂直になるように配置される。
【0020】
ノズル駆動部21は、載置面11aからの高さ方向D3についてのスリット塗布ノズルKの移動を可能にする機構であり、制御部3からの指令に従って、高さ方向D3についてのスリット塗布ノズルKの位置を制御する。
【0021】
送液ポンプ22は、制御部3からの指令に従って塗布液をスリット塗布ノズルKに供給する。具体的には、送液ポンプ22は、制御部3からの指令に従ってスリット塗布ノズルKへの塗布液の供給量を制御することにより、スリット塗布ノズルKからの塗布液の吐出量を制御する。
【0022】
<制御部>
制御部3は、CPUやMPUなどの処理装置で構成されており、塗布装置が備える様々な動作部(チャック部1や塗布液供給部2を含む)を制御する。
【0023】
尚、塗布装置は、上述した構成に限らず、ステージ11が固定されたものに適宜変更されてもよい。この場合、ステージ11の載置面11aに平行な所定方向D1においてスリット塗布ノズルKの移動が可能となるように、チャック部1や塗布液供給部2の構成を適宜変更することができる。
【0024】
[1-2]スリット塗布ノズルの構成
スリット塗布ノズルKの構成について具体的に説明する。
図2は、スリット塗布ノズルKの分解斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、スリット塗布ノズルKは、ノズル本体50と、マニホールド部51と、を備える。以下、各部の構成について説明する。
【0025】
<ノズル本体>
ノズル本体50は、第1本体構成部501と、第2本体構成部502と、これらの間に介在するシム部503と、から構成される(
図2参照)。
【0026】
第1本体構成部501及び第2本体構成部502は、互いに対向する内壁面501a及び502aをそれぞれ有している。そして本実施形態では、上述した塗布液の流入口50aが、第1本体構成部501に形成されている。具体的には、流入口50aは、第1本体構成部501を、外壁面501bから内壁面501aまで貫通する貫通孔によって形成されている。また、シム部503は、所定の厚さを持った平板で構成されており、流入口50aから吐出口50bまでの塗布液の流路となる部分に切欠き503cが形成されている。
【0027】
図3(A)は、第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。また、
図3(B)は、ノズル本体50を吐出口50b側から見て示した平面図である。
図3(A)に示されるように、本実施形態では、流路の形状(
図3(A)のように平面視したときの形状。即ち、所定方向D1(
図1参照)から見たときの形状)が、流入口50aを頂部とする二等辺三角形と、当該二等辺三角形の底辺(
図3(A)にて二点鎖線で示した辺)と吐出口50bとを繋ぐ長方形と、を組み合わせた形状となるように、切欠き503cが形成されている。
【0028】
そして、2つの内壁面501a及び502aの間にシム部503が介在することにより、
図3(B)に示されるように、シム部503の端縁のうちの切欠き503cが開口した部分において、内壁面501a及び502aの端縁501c及び502c(直線的且つ平行に延びた端縁)がシム部503の厚さ分だけ離間し、それによって形成されたスリット状の隙間が吐出口50bとなっている。このように2つの内壁面501a及び502aが切欠き503cを介して対向することによってスリット状の吐出口50bが形成されることに鑑みれば、当該2つの内壁面501a及び502aを規定する表現として、吐出口50bの長手方向D2に拡がった2つの内壁面、と言い換えることができる。
【0029】
また、2つの内壁面501a及び502aが切欠き503cを介して対向することによって形成されるノズル本体50内の隙間(流入口50aから吐出口50bまでの隙間)が、塗布液の流路となり、その流路に沿って流入口50aから吐出口50bまで塗布液が導かれることになる。そして本実施形態では、この流路(流入口50aから吐出口50bまで塗布液を導く流路)によってマニホールド部51が構成されている(後述する
図4も参照)。以下、マニホールド部51の構成について具体的に説明する。
【0030】
<マニホールド部>
先ず、
図1に示されるようにノズル本体50を吐出口50bが鉛直下方へ向くように配置したときを考え、そのときに流入口50aを通ることになる仮想鉛直線を基準線Qt(
図3(A)参照)とする。そして、マニホールド部51の構成は、この基準線Qtを用いて以下のように表現される。
【0031】
図4は、
図3(A)に示されるIV-IV線でのノズル本体50の断面を示した概念図である。
図3(A)及び
図4に示されるように、マニホールド部51は、基準線Qtの両側の位置に拡幅部51Eを有している。ここで、拡幅部51Eは、2つの内壁面501a及び502aの隙間幅Wgが基準線Qt上の位置(以下、「基準位置Pt」と称す)での当該隙間幅Wgよりも大きくなった部分である。換言すれば、マニホールド部51は、吐出口50bを鉛直下方へ向けた場合に拡幅部51Eの位置が流入口50aの真下以外の位置となるように構成されている(
図3(A)参照)。
【0032】
そして、
図3(A)及び
図4の例では、基準線Qt(又は基準位置Pt)に対して左側の拡幅部51Eaと、基準線Qtに対して右側の拡幅部51Ebとが、基準線Qt(又は基準位置Pt)に対して左右対称になるように形成されている。
【0033】
また本実施形態では、第1本体構成部501の内壁面501aが、拡幅部51E(
図3(A)及び
図4の例では、拡幅部51Ea及び51Eb)を形成する平坦領域Reと、拡幅部51E以外の部分(流入口50aの真下の部分を含む)を形成する平坦領域Rfとを有し、それらの間に、平坦領域Rfより平坦領域Reのほうを深くする段差50sが設けられている。一方、第2本体構成部502の内壁面502aは、全体に亘って段差のない1つの平坦面である。従って、2つの内壁面501a及び502aの間にシム部503を介在させてマニホールド部51を形成した場合、拡幅部51Eが、内壁面501aのうちの平坦領域Reの部分と内壁面502aとによって形成され、拡幅部51E以外の部分が、内壁面501aのうちの平坦領域Rfの部分と内壁面502aとによって形成されることになる。そして、拡幅部51Eの隙間幅Wgは、拡幅部51E以外の部分の隙間幅Wg(基準位置Ptでの隙間幅Wgを含む)よりも、上記段差50sの深さ分だけ大きくなる。
【0034】
より具体的には、マニホールド部51は、流入口50aからの一部分において、流入口50aから吐出口50bに近づくにつれて全幅Lt(長手方向D2についての当該マニホールド部51の全幅。
図3(A)参照)が大きくなるように形成されている。本実施形態では、所定方向D1(
図1参照)から見たときのマニホールド部51の形状(
図3(A)参照)が、流入口50aを頂部とする二等辺三角形と、当該二等辺三角形の底辺と吐出口50bとを繋ぐ長方形と、を組み合わせた形状になっている。従って、本実施形態においては、マニホールド部51は、流入口50aを頂部とする二等辺三角形の部分において、流入口50aから吐出口50bに近づくにつれて全幅Ltが徐々に大きくなるように形成されている。
【0035】
そして、拡幅部51Ea及び51Ebは、マニホールド部51のうちの全幅Ltが徐々に大きくなる部分(流入口50aを頂部とする二等辺三角形の部分)において、長手方向D2についてのマニホールド部51のエッジ51a及び51bにそれぞれ沿って、流入口50aから連続的に形成されている。
図3(A)及び
図4の例では、拡幅部51Ea及び51Ebは、それらのエッジがそれぞれマニホールド部51のエッジ51a及び51bと一致するように構成されている。
【0036】
また、拡幅部51Ea及び51Ebは何れも、長手方向D2についてのそれぞれの幅Leが、流入口50aから吐出口50bに近づくにつれて、マニホールド部51の全幅Ltと共に大きくなるように形成されている。
【0037】
マニホールド部51が上記の構成を備える一方で、当該マニホールド部51には、従来から提案されているような塗布液を一旦貯留する貯留部は設けられていない。従って、流入口50aからノズル本体50内に流入した塗布液は、ノズル本体50内で貯留されることなく、マニホールド部51を通って吐出口50bに導かれる。
【0038】
このようなスリット塗布ノズルKによれば、マニホールド部51において、拡幅部51E(
図3(A)及び
図4の例では、拡幅部51Ea及び51Eb)の隙間幅Wgを、当該拡幅部51E以外の部分の隙間幅Wg(基準位置Ptでの隙間幅Wgを含む)よりも大きくすることにより、拡幅部51E内を流れる塗布液に対して2つの内壁面501a及び502aが及ぼす影響(塗布液と内壁面501a及び501bとの間に生じる摩擦が当該塗布液に及ぼす影響)を、拡幅部51E以外の部分内を流れる塗布液に対して2つの内壁面501a及び502aが及ぼす影響よりも小さくすることができる。従って、拡幅部51E内では、塗布液の流速を速めることができる。
【0039】
ここで、流入口50aからマニホールド部51内に流れ込んだ塗布液は、流入口50aから吐出口50bへ向けて放射状に拡がる。このため、マニホールド部51に拡幅部51Eを設けなかったとすると(即ち、マニホールド部51の隙間幅Wgが均一であったとすると)、塗布液の流れは以下のようになる。
【0040】
図5(A)は、マニホールド部51に拡幅部51Eを設けなかった場合について、流入口50aからの塗布液の流れをシミュレートし、その流れを可視化した図である。また、
図5(B)は、その場合についての吐出口50bでの塗布液の流速分布を示した図である。
図5(A)に見られるように、塗布液のうちの基準線Qtの両側へ拡がる部分の流速については、基準線Qtに沿う基準方向Dtの成分が、塗布液のうちの基準線Qt上を流れる部分の流速(この部分の流速は、その殆どが基準方向Dtの成分になっている)よりも小さくなってしまう。このため、
図5(B)に見られるように、吐出口50bでは塗布液の流速分布が不均一な状態になってしまう。具体的に、吐出口50bが鉛直下方に向けられている場合には、流入口50aの真下の位置で流速(基準方向Dtの成分)が最も大きくなり、長手方向D2において当該真下の位置から離れると流速(基準方向Dtの成分)が小さくなる、といった不均一な流速分布が生じてしまう。
【0041】
一方、本実施形態では、拡幅部51E内において塗布液の流速を速めることができるため、当該拡幅部51Eを基準線Qtの両側の位置に配置することにより、塗布液のうちの基準線Qtの両側へ拡がる部分の流速について、基準方向Dtの成分を、塗布液のうちの基準線Qt上を流れる部分の流速に近づけることができ、その結果として、吐出口50bでの塗布液の流速分布を、長手方向D2における位置に対して均一な状態に近づけることが可能になる。
【0042】
そして、吐出口50bでの塗布液の流速分布を、長手方向D2における位置に対して均一な状態に近づけるために、所定方向D1から見たときのマニホールド部51の形状に応じて、マニホールド部51内における拡幅部51Eの形成位置、拡幅部51Eの隙間幅Wg、及び拡幅部51Eの幅Leなどを適宜調整することができる。
【0043】
図6(A)は、
図3(A)及び
図4の例のようにマニホールド部51に拡幅部51Eを設けた場合について、流入口50aからの塗布液の流れをシミュレートし、その流れを可視化した図である。また、
図6(B)は、その場合についての吐出口50bでの塗布液の流速分布を示した図である。
図6(A)に見られるように、拡幅部51Eを設けることにより、
図5(A)に比べて塗布液の液面を均一な状態へ近づけることができている。換言すれば、
図6(A)の結果は、拡幅部51Eを設けることにより、塗布液のうちの基準線Qtの両側へ拡がる部分の流速について、基準方向Dtの成分を、塗布液のうちの基準線Qt上を流れる部分の流速に近づけることができる、ということを示している。そして、その結果として、吐出口50bでの塗布液の流速分布が、長手方向D2における位置に対して均一な状態に近づく、ということを
図6(B)は示している。
【0044】
しかも、マニホールド部51には貯留部が設けられていないため、塗布の開始前の液出し作業で必要となる塗布液の量が著しく少なくなり、また、塗布の流量後においても、マニホールド部51内に残る塗布液の量が著しく少なくなる。よって、上述したスリット塗布ノズルKによれば、塗布の開始前及び終了後に生じる塗布液の無駄(即ち、廃液の量)を著しく減らすことが可能になる。
【0045】
このように、本実施形態のスリット塗布ノズルKによれば、塗布液の無駄を減らしつつ、吐出口50bでの塗布液の流速分布を、長手方向D2における位置に対して均一な状態に近づけることができる。
【0046】
また、マニホールド部51には貯留部が設けられていないため、マニホールド部51内での塗布液の停滞や、当該停滞に起因した塗布液の凝集などが生じにくくなる。
【0047】
[2]変形例
上述したマニホールド部51の構成は、吐出口50bでの塗布液の流速分布を最適化するために、以下のように変形することができる。また、以下に説明する変形例の幾つかを組み合わせて最適化することができる。
【0048】
[2-1]第1変形例
図7(A)は、第1変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体50の断面を示した概念図である。また、
図7(B)は、
図7(A)に示されるVIIB領域の拡大図である。これらの図に示されるように、第1本体構成部501の内壁面501aには、拡幅部51Eの隙間幅Wgを徐々に大きくするための複数の段差50tが形成されていてもよい。
【0049】
このような構成によれば、拡幅部51Eと、当該拡幅部51E以外の部分と、の境界部分において、塗布液の流速についての基準方向Dtの成分を緩やかに変化させることができ、その結果として、吐出口50bでの塗布液の流速分布においても滑らかに変化した分布が得られやすくなる。
【0050】
尚、拡幅部51Eは、実施形態で説明した段差50s又は本変形例で説明した複数の段差50tが第1本体構成部501の内壁面501aに設けられることで形成されたものに限らず、第2本体構成部502の内壁面502aに段差50s又は50tが設けられることで形成されたものや、内壁面501a及び502aの両方に段差50s又は50tが設けられることで形成されたものに適宜変更されてもよい。換言すれば、拡幅部51Eを形成するための段差50s又は50tは、2つの内壁面501a及び502aの少なくとも何れか一方に設けることができる。
【0051】
[2-2]第2変形例
図8は、第2変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体50の断面を示した概念図である。
図8に示されるように、第1本体構成部501の内壁面501aには、拡幅部51Eの隙間幅Wgを徐々に大きくするための曲面50uが形成されていてもよい。
【0052】
このような構成によれば、拡幅部51Eと、当該拡幅部51E以外の部分と、の境界部分において、塗布液の流速についての基準方向Dtの成分を、複数の段差50tよりも更に緩やかに変化させることができ、その結果として、吐出口50bでの塗布液の流速分布においても、より滑らかに変化した分布が得られやすくなる。
【0053】
また、内壁面501aが角のない滑らかな面になるため、当該角での塗布液の停滞や、当該停滞によって生じ得る塗布液の凝集などを防ぐことが可能になる。また、塗布液に含まれてしまった空気が角に巻き込まれて空気抜きができないといった事態を防ぐこともできる。
【0054】
尚、拡幅部51Eは、第1本体構成部501の内壁面501aに曲面50uが設けられることで形成されたものに限らず、第2本体構成部502の内壁面502aに曲面50uが設けられることで形成されたものや、内壁面501a及び502aの両方に曲面50uが設けられることで形成されたものに適宜変更されてもよい。換言すれば、拡幅部51Eを形成するための曲面50uは、2つの内壁面501a及び502aの少なくとも何れか一方に設けることができる。
【0055】
[2-3]第3変形例
図9は、第3変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、
図4と同じ位置(
図3(A)に示されるIV-IV線)でのノズル本体50の断面を示した概念図である。
図9に示されるように、第1本体構成部501の内壁面501aにおいて、拡幅部51Eを形成する領域と、拡幅部51E以外の部分を形成する領域、の両方が曲面で形成され、それらが滑らかに繋がっていてもよい。
【0056】
尚、拡幅部51Eは、第1本体構成部501の内壁面501aを曲面にすることで形成されたものに限らず、第2本体構成部502の内壁面502aを曲面にすることで形成されたものや、内壁面501a及び502aの両方を曲面にすることで形成されたものに適宜変更されてもよい。換言すれば、2つの内壁面501a及び502aの少なくとも何れか一方を曲面にして拡幅部51Eを形成することができる。
【0057】
このようにマニホールド部51を曲面で形成することにより、マニホールド部51の設計自由度が向上させることができる。
【0058】
[2-4]第4変形例
図10は、第4変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、ノズル本体50を構成する第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。
図10に示されるように、拡幅部51Ea及び51Ebは、マニホールド部51のエッジ51a及び51bから離れた位置に形成されてもよい。
【0059】
[2-5]第5変形例
図11(A)は、第5変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、ノズル本体50を構成する第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。
図11(A)に示されるように、拡幅部51Ea及び51Ebは、流入口50aから吐出口50bまでの途中に部分的に形成されてもよい。換言すれば、拡幅部51Ea及び51Ebは、流入口50aから連続的に形成されたものに限らず、流入口50aから離れた位置に形成されたものに適宜変更されてもよい。
【0060】
図11(B)は、
図11(A)のスリット塗布ノズルKについての更なる変形例を示した図である。
図11(B)に示されるように、拡幅部51Ea及び51Ebは、両側に1つずつ部分的に形成されたものに限らず、両側に複数ずつ且つそれぞれが分断された状態で形成されたものであってもよい。
【0061】
[2-6]第6変形例
図12は、第6変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、ノズル本体50を構成する第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。
図12に示されるように、拡幅部51Ea及び51Ebは、それぞれが途中で分岐したものであってもよい。
【0062】
[2-7]第7変形例
図13(A)は、第7変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、ノズル本体50を構成する第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。
図13(A)に示されるように、スリット塗布ノズルKには、流入口50aが2つ設けられていてもよい。この場合、流入口50aごとに、当該流入口50aを通る基準線Qtを考え、その基準線Qtの両側の位置に拡幅部51Eが配置されるように、マニホールド部51の構成を適宜変更することができる。
【0063】
図13(A)の例では、所定方向D1(
図1参照)から見たときのマニホールド部51の形状が、2つの流入口50aをそれぞれ頂部とする2つの二等辺三角形と、それら2つの二等辺三角形の底辺(
図13(A)にて二点鎖線で示した辺)と吐出口50bとを繋ぐ1つの長方形と、を組み合わせた形状になっている。そして、上記2つの二等辺三角形のそれぞれにおいて、拡幅部51E(拡幅部51Ea及び51Eb)が上記実施形態と同様に形成されている。
【0064】
図13(B)は、
図13(A)のスリット塗布ノズルKについての更なる変形例を示した図である。
図13(B)に示されるように、マニホールド部51は、長手方向D2において隣接する拡幅部51Eどうしが互いに繋がった状態となるように構成されてもよい。
図13(B)の例では、右側の流入口50aから左斜め下へ延びた拡幅部51Eaと、左側の流入口50aから右斜め下へ延びた拡幅部51Ebとが、吐出口50bに近い位置で互いに繋げられている。
【0065】
尚、スリット塗布ノズルKにおいて、流入口50aは、3つ以上設けられていてもよく、その数や位置に応じて、マニホールド部51内に拡幅部51Eを適宜設けることができる。
【0066】
[2-8]第8変形例
図14(A)は、第8変形例に係るスリット塗布ノズルKについて、ノズル本体50を構成する第1本体構成部501及びシム部503を、第2本体構成部502側から見て示した平面図である。
図14(A)に示されるように、所定方向D1(
図1参照)から見たときのマニホールド部51の形状は、4辺のうちの1辺が吐出口50bと一致する長方形(正方形を含む)であってもよい。そして、その長方形の上辺(吐出口50bと反対側の辺)に近い中央位置に流入口50aが設けられてもよい。この場合、このようなマニホールド部51の形状であっても吐出口50bでの塗布液の流速分布を最適化することが可能となるように、流入口50aを通る基準線Qtの両側の位置に配置する拡幅部51Ea及び51Ebにおいて、長手方向D2についてのそれぞれの幅Leを、流入口50aと吐出口50bとの間で適宜変化させてもよい。
図14(A)の例では、拡幅部51Ea及び51Ebは何れも、流入口50aの位置から幅Leが徐々に大きくなり、途中から徐々に小さくなるように形成されている。
【0067】
図14(B)は、
図14(A)のスリット塗布ノズルKについての更なる変形例を示した図である。
図14(B)に示されるように、長方形の上辺の近い左右の位置に1つずつ流入口50aが設けられてもよい。そして、流入口50aごとに、拡幅部51E(拡幅部51Ea及び51Eb)が、上記
図14(A)の例と同様に形成されてもよい。
【0068】
尚、本変形例においても、流入口50aは、3つ以上設けられていてもよく、その数や位置に応じて、マニホールド部51内に拡幅部51Eを適宜設けることができる。
【0069】
また、第1変形例や第2変形例と同様、複数の段差50t(
図7(A)参照)や曲面50u(
図8参照)によって拡幅部51Eの隙間幅Wgを徐々に大きくすることができる。これにより、拡幅部51Eと、当該拡幅部51E以外の部分と、の境界部分において、塗布液の流速についての基準方向Dtの成分を緩やかに変化させることが可能になる。
【0070】
[2-9]他の変形例
上述したスリット塗布ノズルKにおいて、マニホールド部51は、基準線Qtの両側の位置に拡幅部51Eを1つずつ有したものに限らず、基準線Qtの両側の位置に拡幅部51Eを複数ずつ有したものや、基準線Qtの片側にのみ拡幅部51Eを有したもの、更には、左右で拡幅部51Eの数が異なるものなどに適宜変更されてもよい。
【0071】
また、所定方向D1(
図1参照)から見たときのマニホールド部51の形状は、上述したものに限らず、全体が三角形であるものや、長手方向D2についてのエッジが湾曲したもの、更には複数の形状を組み合わせたものなど、様々な形状に適宜変更することができる。そして、そのようなマニホールド部51の形状に応じて、吐出口50bでの塗布液の流速分布を最適化するべく、拡幅部51Eの構成を適宜変更することができる。
【0072】
上述したスリット塗布ノズルKにおいて、マニホールド部51の構成を、次のように別の観点から捉えることができる。マニホールド部51は、基準線Qt上の位置(基準位置Pt)に、2つの内壁面501a及び502aの隙間幅Wgが最も小さくなった縮幅部を有する、と捉えることができる。
【0073】
また、上述したスリット塗布ノズルKの構成は、塗布液として、内壁面501a及び501bからの影響を受けやすい流体(粘性が大きい流体や非ニュートン流体など)を用いる場合に、特に適している。
【0074】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0075】
そして、本発明の対象であるスリット塗布ノズルには、塗布装置に装着して用いられるものに限らず、手塗りで塗布膜を形成する場合などに用いられるものも含まれる。手塗りで塗布膜を形成する場合として、例えば、ハチミツやクリームなどの流動性の食材を用いて手塗りで塗布膜を形成する場合や、最終的には塗布装置で塗布膜を形成するであっても、開発や研究段階においては、導電性や界面の状態等を調べるために手塗りで塗布膜を形成する場合などが挙げられる。このように、本発明の対象であるスリット塗布ノズルは、様々な分野及び用途で使うことが期待できる。
【0076】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、スリット塗布ノズルKに限らず、スリット塗布ノズルKを構成する各部や、当該スリット塗布ノズルKを備えた塗布装置などが個々に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 チャック部
2 塗布液供給部
3 制御部
K スリット塗布ノズル
T 塗布対象
11 ステージ
11a 載置面
12 ステージ駆動部
21 ノズル駆動部
22 送液ポンプ
50 ノズル本体
50a 流入口
50b 吐出口
50s、50t 段差
50u 曲面
51 マニホールド部
51E、51Ea、51Eb 拡幅部
51a、51b エッジ
D1 所定方向
D2 長手方向
D3 高さ方向
Dt 基準方向
Le 幅
Lt 全幅
Pt 基準位置
Qt 基準線
Re、Rf 平坦領域
Wg 隙間幅
501 第1本体構成部
501a 内壁面
501b 外壁面
501c 端縁
502 第2本体構成部
502a 内壁面
502c 端縁
503 シム部
503c 切欠き