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特開2024-82162菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082162
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 18/30 20180101AFI20240612BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A01G18/30
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195924
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】522477584
【氏名又は名称】株式会社K&Kマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太郎
【テーマコード(参考)】
2B011
4C058
【Fターム(参考)】
2B011AA01
2B011AA02
2B011AA07
2B011DA01
2B011EA01
2B011PA01
4C058AA30
4C058BB05
4C058CC05
(57)【要約】
【課題】短時間で効率的に菌床を殺菌処理又は冷却処理を行える菌床処理装置を提供する。
【解決手段】菌床処理装置1は、容器CTに充填された菌床FBに挿入される挿入部21を有し、前記挿入部21を介して該菌床FBを内部から加熱する挿入処理手段2と、前記菌床FBと前記挿入部21を相対的に移動させて前記挿入部21を前記菌床FBに挿入・離脱させる駆動装置3と、を備える。また、前記挿入処理手段3は、前記挿入部21を前記菌床FBに挿入した状態で前記菌床内部に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構22を有することとしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された菌床に挿入される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱又は冷却する挿入処理手段と、
前記菌床と前記挿入部を相対的に移動させて前記挿入部を前記菌床に挿入・離脱させる駆動装置と、を備えたことを特徴とする菌床処理装置。
【請求項2】
前記挿入処理手段は、前記挿入部を前記菌床に挿入した状態で前記菌床内部に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構を有することを特徴とする請求項1記載の菌床処理装置。
【請求項3】
前記挿入部は、内部に加熱蒸気を通流しつつ、複数の蒸気噴射孔から蒸気を噴射するノズル部を有することを特徴とする請求項2記載の菌床処理装置。
【請求項4】
前記挿入処理手段は、前記挿入部を冷却させる冷却機構を有することを特徴とする請求項1記載の菌床処理装置。
【請求項5】
前記挿入部は、棒状体からなり、
前記駆動装置は、前記挿入部の長手方向に沿って前記挿入部を直線状に移動させる直動機構を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の菌床処理装置。
【請求項6】
前記菌床を収容する密閉状の収容空間が形成される密閉ブースをさらに備え、
前記密閉ブースの内部に前記挿入部が設置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の菌床処理装置。
【請求項7】
前記密閉ブースの内部には、前記挿入部に対応した位置に前記菌床を保持する菌床保持手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の菌床処理装置。
【請求項8】
前記菌床保持手段は、前記菌床の外面にあてがわれる冷却部材を有することを特徴とする請求項7記載の菌床処理装置。
【請求項9】
前記挿入部には、前記菌床の温度を計測する測温手段が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の菌床処理装置。
【請求項10】
容器に充填された菌床に駆動装置を介して挿入・離脱される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱殺菌する挿入処理手段を備えた菌床殺菌装置と、
前記菌床に第2の駆動装置を介して挿入・離脱される第2の挿入部を有し、前記第2の挿入部を介して該菌床を内部から冷却する第2の挿入処理手段を備えた菌床冷却装置と、
前記菌床殺菌装置から前記菌床冷却装置へ前記菌床を搬送する搬送装置と、を備えたことを特徴とする菌床殺菌システム。
【請求項11】
容器に充填された菌床に、加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構を備えた挿入処理手段の挿入部を挿入し、
前記挿入部を介して加熱蒸気を前記菌床内部に所定時間噴射することにより、前記菌床を殺菌する蒸気殺菌工程を含むことを特徴とする菌床殺菌方法。
【請求項12】
前記蒸気殺菌工程の後に、前記菌床に冷却手段により冷却された第2の挿入部を所定時間挿入することにより前記菌床を冷却する冷却工程をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の菌床殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコを人工栽培するために用いられる菌床を効率的に殺菌・冷却等の処理を行うのに好適な菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、シイタケやマイタケ等のキノコを人工栽培する際には、プラスチックフィルムからなる菌床栽培用袋が利用されている。
【0003】
この種の菌床栽培用袋を用いてキノコを人工栽培するに際しては、まず、オガクズ等の木質基材に米糠等の栄養源を混ぜて水分を調整した人工の培地(菌床)を当該菌床栽培用袋に充填して、高圧蒸気等により殺菌し、その後、前記菌床にキノコ種菌を接種して培養を行う。
【0004】
従来、菌床を殺菌する工程では、作業者が多数の菌床を殺菌棚等に縦横配列した状態で加熱殺菌釜内に収容して密閉状態とし、該蒸気釜内にボイラで発生させた100~120度程度の高温の蒸気を投入し、所定時間蒸気により菌床を加熱殺菌処理している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、加熱殺菌処理後には、キノコ菌を接種できる温度まで菌床を冷却する必要があるので、加熱殺菌釜から作業者が菌床を取り出し、常温又は低温環境で菌床を冷却する冷却施設に移送して冷却処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-207456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の加熱殺菌釜による菌床の殺菌方法では、蒸気による加熱殺菌処理時間が4~10時間程度と長時間かかっていた。さらに、冷却施設での冷却時間にも8~12時間程度かかっている。よって、菌床を栽培用袋に充填した後の殺菌・冷却処理に半日~2日程度かかる場合も多いことから、効率が悪いいとともに燃料コストも高くつき経済性が悪い問題があった。
【0008】
また、加熱殺菌釜や冷却施設は、一度に複数の菌床を処理した方が時間・燃料等も効率的であるため、比較的大きく広い設置スペースをとるとともに、装置や設備にかかるコストも高くなっていた。
【0009】
さらに、加熱殺菌釜や冷却施設に、多数の菌床を作業者が搬入出する必要があるので、煩雑で作業労力及び時間、人件費がかかる問題もある。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、短時間で効率的に菌床を殺菌処理又は冷却処理を行える菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る菌床処理装置は、容器に充填された菌床に挿入される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱又は冷却する挿入処理手段と、前記菌床と前記挿入部を相対的に移動させて前記挿入部を前記菌床に挿入・離脱させる駆動装置と、を備える。駆動装置は、挿入部を移動させて菌床に挿入させる構成としてもよいし、菌床側を挿入部に移動させて菌床に挿入させる構成としてもよい。
【0012】
また、前記挿入処理手段は、前記挿入部を前記菌床に挿入した状態で前記菌床内部に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構を有することとしてもよい。
【0013】
また、前記挿入部は、内部に加熱蒸気を通流しつつ、複数の蒸気噴射孔から蒸気を噴射するノズル部を有することとしてもよい。
【0014】
また、前記挿入処理手段は、前記挿入部を冷却させる冷却機構を有することとしてもよい。
【0015】
また、前記挿入部は、棒状体からなり、前記駆動装置は、前記挿入部の長手方向に沿って前記挿入部を直線状に移動させる直動機構を有することとしてもよい。直動機構は、例えば、ピストンロッドを有するシリンダ等のアクチュエータ等で構成してもよい。
【0016】
また、前記菌床を収容する密閉状の収容空間が形成される密閉ブースをさらに備え、前記密閉ブースの内部に前記挿入部が設置されたこととしてもよい。
【0017】
また、前記密閉ブースの内部には、前記挿入部に対応した位置に前記菌床を保持する菌床保持手段をさらに備えたこととしてもよい。
【0018】
また、前記菌床保持手段は、前記菌床の外面にあてがわれる冷却部材を有することとしてもよい。
【0019】
また、前記挿入部には、前記菌床の温度を計測する測温手段が設けられたこととしてもよい。
【0020】
さらに、本発明の菌床殺菌システムは、容器に充填された菌床に駆動装置を介して挿入・離脱される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱殺菌する挿入処理手段を備えた菌床殺菌装置と、前記菌床に第2の駆動装置を介して挿入・離脱される第2の挿入部を有し、前記第2の挿入部を介して該菌床を内部から冷却する第2の挿入処理手段を備えた菌床冷却装置と、前記菌床殺菌装置から前記菌床冷却装置へ前記菌床を搬送する搬送装置と、を備える。
【0021】
さらに、本発明の菌床殺菌方法は、容器に充填された菌床に、加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構を備えた挿入処理手段の挿入部を挿入し、前記挿入部を介して加熱蒸気を前記菌床内部に所定時間噴射することにより、前記菌床を殺菌する蒸気殺菌工程を含む。
【0022】
また、前記蒸気殺菌工程の後に、前記菌床に冷却手段により冷却された第2の挿入部を所定時間挿入することにより前記菌床を冷却する冷却工程をさらに含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の菌床処理装置によれば、容器に充填された菌床に挿入される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱又は冷却する挿入処理手段と、前記菌床と前記挿入部を相対的に移動させて前記挿入部を前記菌床に挿入・離脱させる駆動装置と、を備えたことから、菌床を内部から加熱又は冷却することで、短時間で高効率に菌床を加熱殺菌処理又は冷却処理することができる。さらに、装置を小型化で省スペース化できるとともに、低コストで製造することができる。
【0024】
また、本発明の菌床殺菌システムは、容器に充填された菌床に駆動装置を介して挿入・離脱される挿入部を有し、前記挿入部を介して該菌床を内部から加熱殺菌する挿入処理手段を備えた菌床殺菌装置と、前記菌床に第2の駆動装置を介して挿入・離脱される第2の挿入部を有し、前記第2の挿入部を介して該菌床を内部から冷却する第2の挿入処理手段を備えた菌床冷却装置と、前記菌床殺菌装置から前記菌床冷却装置へ前記菌床を搬送する搬送装置と、を備えたことから、作業者の労力を大幅に軽減し、極めて短時間で効率よく菌床を殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態における菌床殺菌装置の概要説明図である。
図2図2の菌床処理装置の作用説明図である。
図3】本発明の第2の実施形態における菌床殺菌装置の概要説明図である。
図4】本発明の一実施形態における菌床殺菌システムを示す概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明の菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法は、例えば、キノコを人工栽培する菌床を袋や瓶状の容器に充填した状態で殺菌等の処理を行う際に利用できるものである。
【0028】
図1図2は、本発明の菌床処理装置の第1の実施形態を示している。本実施形態に係る菌床処理装置1は、図1図2に示すように、菌床FBへの挿入部21を有する挿入処理手段2と、駆動装置3と、を備えている。
【0029】
本実施形態では、処理対象の菌床FBは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチックフィルムからなる菌床栽培用袋を容器CTとして該容器CT内に充填された状態で処理される。
【0030】
菌床FBは、オガクズ等の木質基材に米糠等の栄養源を混ぜて水分を調整され、従来の充填機を介して該容器CTに機械的に充填され、ブロック上に成型される。なお、菌床FBは比較的硬さがある瓶状の容器等その他の容器に充填してブロック状に成型されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、菌床処理装置1を、菌床を加熱殺菌処理する菌床殺菌装置11として実施した例を説明する。
【0032】
図1に示すように、菌床処理装置1は、菌床FBを収容する密閉ブース4を有している。密閉ブース4は、菌床FBを下面上に配置させて、密閉状に収容する収容空間41を形成する。収容空間41は、例えば、複数の菌床FBを列状に並べて配置させることができるような広さと、菌床FBの上方に挿入部21を設置できるような高さで設けられている。密閉ブース4内での複数の菌床FBの配置は、一列状に配置したり、行列状に配置したりその他任意に配置することとしてもよい。
【0033】
密閉ブース4は、挿入処理手段2と駆動装置3等の構成要素が組付けられている。密閉ブース4の菌床FBが配置される床面は、後述の搬送装置5で構成されている。密閉ブース4の対向する一対の側壁には、入口シャッタ42と出口シャッタ43が設けられており、開閉可能となっている。
【0034】
入口シャッタ42と出口シャッタ43は、例えば、制御部6等からの制御により上下に移動して開閉するシャッタからなる。入口シャッタ42と出口シャッタ43は、例えば、モータやシリンダ等を利用した従来周知の昇降機構で上下に移動して密閉ブース4の側壁を開閉する。
【0035】
搬送装置5は、菌床FBを載置した状態で一方向Dに搬送するとともに、密閉ブース4等の所定の位置に停止させる菌床搬送手段である。搬送装置5は、例えば、金属製のベルトコンベアからなり、制御部6により制御されて菌床FBを間欠ピッチ送りする。
【0036】
挿入処理手段2は、挿入部21を介して菌床FBを内部から加熱殺菌処理する殺菌手段である。
【0037】
挿入処理手段2は、菌床FBに挿入される挿入部21と、挿入部21を菌床FBに挿入した状態で菌床内部に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射機構22と、を有する。
【0038】
挿入部21は、例えば、内部に蒸気を流すように中空に設けられたステンレス製の中空棒状体からなる。挿入部21は、一端が菌床FBに突き刺し状に挿入するようにテーパ状に設けられているとともに、菌床FBに挿入される部分に蒸気噴出用の蒸気噴射孔が複数穿孔され、ノズル部21aを形成している。
【0039】
挿入部21は、密閉ブース4の収容空間41内の上方側に、長手方向を上下に向けて垂下状に設置され、上端を駆動装置3に接続されて支持されている。すなわち、本実施形態では、挿入部21は、菌床FBの上方から突き刺し状に挿入するように設けられ、下端側に菌床FBに挿入されるノズル部21aが形成されている。
【0040】
挿入部21は、一つの菌床FBに対して複数本が挿入されるように並べて配列され駆動装置3に組付けられている。なお、本実施形態では、一つの密閉ブース4の収容空間41内には複数の菌床FBが収容されるので、それぞれの菌床FBに対して複数の挿入部21の組が配置される構成となっている。
【0041】
挿入部21には、菌床FBに挿入された際に菌床の温度を計測する測温手段7が設けられている。測温手段7は、例えば、素線の先端に素子が取り付けられた温度センサからなる。測温手段7は、制御部6に電気的に接続されており、温度データを制御部6に渡す。
【0042】
蒸気噴射機構22は、例えば、蒸気発生用のボイラ221と、ボイラ221で発生した加熱蒸気を挿入部21に送る送気管222と、前述の挿入部21のノズル部21aと、を含む。
【0043】
ボイラ221は、従来周知のボイラを利用でき、水を加熱して高圧又は常圧の水蒸気を発生させ、送気管222を介して蒸気を挿入部21に送る。
【0044】
送気管222は、ボイラ221と挿入部21とを接続しており、制御部6により開閉制御される開閉弁を介して蒸気を挿入部21に送り制御又は停止制御する。送気管222は、挿入部21の上下移動に対応するように可撓管等で形成されていてもよい。
【0045】
駆動装置3は、菌床FBと挿入部21を相対的に移動させて挿入部21を菌床に挿入または離脱させる駆動手段である。
【0046】
本実施形態では、駆動装置3は、搬送装置5上に載置された菌床FBに対して挿入部21を上下移動させることにより挿入・離脱する。なお、駆動装置3は、菌床側を移動させて挿入部21に挿入させる構成としてもよい。
【0047】
駆動装置3は、例えば、電動又は油圧駆動等のシリンダ31等のアクチュエータを有し、密閉ブース4の上壁上に取り付けられている。駆動装置3は、シリンダの可動ピストンロッドを密閉ブース4内に配置される挿入部21の上端に組付けられている。
【0048】
駆動装置3は、シリンダ31の可動ピストンロッド32を上下に直線往復動させることにより、挿入部21を上下方向に沿って上下移動させ、該挿入部21の下端のノズル部21aを菌床FBの上方から挿入・離脱させる。すなわちすなわち、駆動装置3は、挿入部21の長手方向に沿って該挿入部21を直線状に移動させる直動機構を有する。
【0049】
図2に示すように、駆動装置3は、例えば、挿入部21の先端が菌床FBの下端より10mm程度上方の位置で止まるような挿入深さとなるように設定される。
【0050】
さらに、本実施形態では、密閉ブース4には、菌床FBを充填した容器CTを保持する保持手段8が設けられている。これにより、挿入部21の菌床FBへの挿入時の衝撃や離脱時に菌床FBが不意にずれたりするのを防止でき、挿入・離脱操作を確実かつスムーズに行うことができる。
【0051】
保持手段8は、例えば、容器CTに外部又は内部にあてがわれて、菌床FBが挿入部21の真下位置に位置保持させる保持部81を有している。保持部81は、例えば、菌床栽培用袋を開口した状態の上部部分の内面に装着されて、栽培用袋を保形しながら位置保持する。保持手段8の保持部81は、例えば、入口シャッタ42又は出口シャッタ43の上下に連動して上下移動するようになっている。
【0052】
制御部6は、例えば、タイマ等の計時手段や各種センサを備えているとともに測温手段7にも接続され、プログラムやシーケンスによって予め設定された条件で、前記した挿入処理手段2、駆動装置3、密閉ブース4、搬送装置5、保持手段8等を制御する制御手段である。
【0053】
制御部6は、タイマやセンサからのデータに基づいて、搬送装置5による間欠ピッチ送り動作や、密閉ブース4の入口シャッタ42,出口シャッタ43の開閉動作の制御を行う。
【0054】
制御部6は、タイマや測温手段7等のセンサからのデータに基づいて、駆動装置3による挿入部21の菌床への挿入・離脱制御、蒸気噴射手段の蒸気の噴射・停止制御等を制御する。
【0055】
次に本実施形態の菌床処理装置1を菌床殺菌装置11として菌床を殺菌処理する菌床殺菌方法について説明する。
【0056】
まず菌床処理装置1の前に菌床成型機により、調整されたおがくず等の原料を菌床栽培袋等の容器CTに充填して、菌床FBをブロック状に成型する。菌床FBは、搬送装置5上に載置され、菌床処理装置1へ自動搬送される。なお、殺菌処理の際には、菌床FBが充填されている容器CTである袋は、上部を広げて開口された状態で処理される。
【0057】
菌床処理装置1では、密閉ブース4内に菌床FBを収容するために、入口シャッタ42が開放され、搬送装置5の送り動作により、菌床FBが搬入され、挿入部21に対応した所定の位置に停止される。菌床FBが密閉ブース4内に収容されると、入口シャッタ42は閉鎖される。また、菌床FBが充填されている容器CTは前記所定の位置で保持手段8により容器の上部を保持される。
【0058】
駆動装置3を介して挿入部21を下降し、その下端側のノズル部21aを菌床FBの上部から所定の深さまで挿入させる。この挿入した状態で、蒸気噴射機構22を介して挿入部21のノズル部21aから加熱蒸気を30~40秒程度噴射させる。これにより、菌床FBは内部からの加熱蒸気により殺菌される。なお、測温手段7からの温度データをもとに、加熱蒸気の噴射時間すなわち殺菌時間を調整することとしてもよい。
【0059】
駆動装置3を介して挿入部21を上昇し、挿入部21を菌床FBから離脱させる。
【0060】
密閉ブース4の出口シャッタ43が開放され、搬送装置5の送り動作により、菌床FBが搬出される。なお、入口シャッタ42と出口シャッタ43は同時に開閉制御され、搬送装置5により、殺菌処理済みの菌床FBの搬出と、処理前の菌床FBの搬入が同期して行われる。この動作を繰り返しながら、連続的に菌床FBを殺菌処理することができる。
【0061】
次、図3を参照しつつ、菌床処理装置1の第2の実施形態について説明する。上記実施形態と同一部材には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0062】
本実施形態では、菌床処理装置1を、前記実施形態で加熱殺菌処理した後の菌床を冷却処理するための菌床冷却装置12として実施した例を説明する。
【0063】
本実施形態でも、前記実施形態同様に、菌床処理装置1は、図3に示すように、挿入部21を有する挿入処理手段2と、駆動装置3と、密閉ブース4と、搬送装置5と、保持手段8と、測温手段7と、を備える。
【0064】
本実施形態では、挿入処理手段2の構成が冷却するための構成となっている。すなわち、挿入処理手段2は、挿入部21を介して菌床FBを内部から冷却する冷却手段であり、挿入部21と、該挿入部21を冷却する冷却機構23と、を含む。
【0065】
本実施形態では、挿入部21は、例えば、銅等の熱伝導性が高い金属製の棒状体からなる。挿入部21の下端はテーパ状に形成されている。挿入部21を菌床FBに挿入することにより主として熱伝導により菌床FBを冷却する。
【0066】
なお、挿入処理手段2は、例えば、挿入部21にガスを噴射しうるようにノズル部を設け、冷却ガスを噴射することにより、菌床を内部から冷却する構成としてもよい。その場合、前記実施形態の蒸気噴射機構に変えて、冷却ガス噴射機構を設けた構成とすることとしてもよい。
【0067】
冷却機構23は、例えば、ペルチェ素子やチラー、ヒートポンプ等の従来周知の冷却装置を利用できる。冷却機構23により挿入部21を冷却する。
【0068】
さらに、本実施形態では、冷却機構23は、密閉ブース4の収容空間41内の空気を冷却する。
【0069】
本実施形態では、保持手段8は、例えば、菌床FBの外面にあてがわれる冷却部材82を有する。冷却部材82も容器上部の開口側を保持する保持部81と同期して、上下移動するように設けられる。冷却部材82は冷却機構23により冷却される。
【0070】
本実施形態の菌床処理装置1によって菌床を冷却処理する場合について説明する。なお本実施形態でも、冷却処理の際には、菌床FBが充填されている容器CTである袋は、上部を広げて開口された状態で処理される。また、本実施形態の菌床冷却装置12としての菌床処理装置1は、例えば、前述の実施形態のような菌床殺菌装置11の後方に並設されており、加熱殺菌処理された後の菌床FBを冷却処理する。
【0071】
菌床処理装置1では、密閉ブース4内に菌床FBを収容するために、入口シャッタ42が開放され、搬送装置5の送り動作により、菌床FBが搬入され、挿入部21に対応した所定の位置に停止される。菌床FBが密閉ブース4内に収容されると、入口シャッタ42は閉鎖される。また、菌床FBが充填されている容器CTは前記所定の位置で保持手段8により容器の上部を保持されるとともに、冷却部材82が容器の外面からあてがわれる。
【0072】
駆動装置3を介して挿入部21を下降し、その下端側を菌床FBの上部から所定の深さまで挿入させる。この挿入した状態で、30~40秒程度保持させる。これにより、菌床FBは内部から冷却される。なお、測温手段7からの温度データをもとに、冷却時間を調整することとしてもよい。
【0073】
駆動装置3を介して挿入部21を上昇し、挿入部21を菌床FBから離脱させる。
【0074】
密閉ブース4の出口シャッタ43が開放され、搬送装置5の送り動作により、菌床FBが搬出される。なお、入口シャッタ42と出口シャッタ43は同時に開閉制御され、搬送装置5により、冷却処理済みの菌床FBの搬出と、処理前の菌床FBの搬入が同期して行われる。この動作を繰り返しながら、連続的に菌床FBを冷却処理することができる。
【0075】
すなわち、前記実施形態の菌床殺菌装置11による加熱蒸気を利用した殺菌処理工程の後に、菌床冷却装置12により冷却する冷却工程を備えることで、殺菌処理全体の工程を大幅に短縮化でき、後の工程となる菌床にキノコ種菌を接種する作業をスムーズに行うことができる。
【0076】
次に、図4を参照しつつ本発明の菌床殺菌システム10について説明する。上記実施形態と同一部材には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施形態の菌床殺菌システム10は、前記した菌床殺菌装置11としての第1の菌床処理装置1と、前記した菌床冷却装置12としての第2の菌床処理装置1と、搬送装置5と、を備えている。
【0078】
本実施形態の菌床殺菌システム10では、説明のために菌床殺菌装置11の各要素について、第1の挿入部21、第1の挿入処理手段2、第1の駆動装置3・・・とする。
【0079】
菌床冷却装置12の各要素については菌床殺菌装置11の各要素と区別するために、第2の挿入部21、第2の挿入処理手段2、第2の駆動装置3・・・とする。
【0080】
本実施形態では、菌床殺菌装置11と菌床冷却装置12との間には、予備冷却ブース45が設けられている。予備冷却ブース45は、加熱殺菌処理された高温の菌床FBを菌床冷却装置12の前に常温空間である程度冷却しうる。
【0081】
予備冷却ブースは、菌床殺菌装置11の出口シャッタ43が入口となるとともに、菌床冷却装置12の入口シャッタ42が出口となり、それらのシャッタに連動して開閉して、菌床FBを搬入、搬出する。
【0082】
なお、菌床殺菌装置11の密閉ブースの出口シャッタと菌床冷却装置12の密閉ブース入口シャッタを共通にして、直接互いの密閉ブースを接続することとしてもよい。
【0083】
搬送装置5は、一つの搬送装置5により菌床FBを菌床殺菌装置11、予備冷却ブース45、菌床冷却装置12の順に搬送する。
【0084】
このように菌床殺菌装置11と菌床冷却装置12を並設し、搬送装置5で菌床FBを連続的に搬送しながら、加熱殺菌処理と冷却処理を連続して行える結果、作業者の労力を大幅に軽減し、極めて短時間に高効率的に菌床を殺菌することができる。
【0085】
また、菌床殺菌システム10の搬送装置5の搬送方向(D)の上流側には、調整されたおがくずBS等の原料を菌床栽培袋等の容器CTに充填して菌床FBをブロック状に成型する菌床成型機FEが設置される。
【0086】
一方、菌床殺菌システム10の搬送装置5の搬送方向(D)の下流側には、菌床冷却装置12から搬出された菌床FBにキノコ種菌SDを接種する接種機DEが設定される。
【0087】
一つの搬送装置5の一方向Dへの搬送により、成型、菌床殺菌及び冷却、種菌接種を連続して行うことができる。なお、成型機FE、菌床殺菌システム10、接種機DEは、例えば、クリーンルーム内に設置し、クリーンな環境で前記作業を行うこととするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の菌床処理装置、菌床殺菌システム及び菌床殺菌方法は、キノコを人工栽培する菌床を殺菌処理するのに良好に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 菌床処理装置
10 菌床殺菌システム
11 菌床殺菌装置
12 菌床冷却装置
2 挿入処理手段
21 挿入部
21a ノズル部
22 蒸気噴射機構
23 冷却機構
3 駆動装置
4 密閉ブース
41 収容空間
5 搬送装置
7 測温手段
8 保持手段
82 冷却板
FB 菌床
CT 容器
図1
図2
図3
図4