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特開2024-82171ジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法
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  • 特開-ジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082171
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20240612BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240612BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240612BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20240612BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B18/14 A
C04B22/08 A
C04B22/10
C04B18/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195936
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB02
4G112MB06
4G112PA27
4G112PA29
4G112PD01
(57)【要約】
【課題】可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れるジオポリマー組成物を提供すること。
【解決手段】ジオポリマー組成物は、SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含むアルカリシリカ溶液とを含み、要件(1)を満足する。要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8;M(SiO)は、活性フィラーに含まれるSiOとアルカリシリカ溶液に含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、M(Na)は、アルカリシリカ溶液に含まれるNaの物質量(mol)であり、M(HO)は、アルカリシリカ溶液に含まれる水の物質量(mol)であり、M(CaO)は、活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含むアルカリシリカ溶液とを含み、
下記の要件(1)を満足する、
ジオポリマー組成物。
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、前記活性フィラーに含まれるSiOと前記アルカリシリカ溶液に含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、前記アルカリシリカ溶液に含まれるNaの物質量(mol)であり、
M(HO)は、前記アルカリシリカ溶液に含まれる水の物質量(mol)であり、
M(CaO)は、前記活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
【請求項2】
前記活性フィラーのCaO含有量が10質量%~40質量%である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
前記活性フィラー100質量部に対して水を50質量部以下含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
前記活性フィラーが高炉スラグ粉体及びフライアッシュを含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項5】
さらに骨材を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のジオポリマー組成物の硬化物であるジオポリマー硬化体。
【請求項7】
SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラスと、炭酸ナトリウムと、水とを、下記の要件(1)を満足するように混合することを含む、
ジオポリマー組成物の調合方法。
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、前記活性フィラーに含まれるSiOと前記ナトリウム水ガラスに含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、前記ナトリウム水ガラスに含まれるNaと前記炭酸ナトリウムに含まれるNaとの合計物質量(mol)であり、
M(HO)は、前記ナトリウム水ガラスに含まれる水と前記水との合計物質量(mol)であり、
M(CaO)は、前記活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
【請求項8】
請求項7に記載のジオポリマー組成物の調合方法によりジオポリマー組成物を調合することと、
前記ジオポリマー組成物を硬化することと、を含む、
ジオポリマー硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥、カオリンのうちの少なくとも1種類を含む活性フィラーに対して、不活性フィラーであるカルシウム系粉体からなる第1の混和材、アルカリ刺激を高めるための水酸化物粉体からなる第2の混和材、糖類、酸、アルカリ性溶液中で作用するキレート剤の少なくとも1種類からなる第3の混和材のうちの少なくとも1つの混和材を混和することにより、凝結時間を調整して、凝結時間の異なるジオポリマー組成物を作製することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、水酸基価250~1500mgKOH/g且つ酸価250~950mgKOH/gである1種以上の脂肪族オキシカルボン酸塩を含む組成物からなるジオポリマー用添加剤であって、脂肪族オキシカルボン酸の水酸基価/酸価の質量加重平均値が0.40以上5.00未満であるジオポリマー用添加剤と、CaO含有量10~60質量%のアルミノシリケート源と、アルカリ源と、骨材とを含むジオポリマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-28726号公報
【特許文献2】特開2016-79046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジオポリマー組成物は、活性フィラーとアルカリ活性剤との反応によって縮重合し硬化する。ジオポリマー組成物は一般的に、アルカリ活性剤の活性度が高いほど硬化後の圧縮強度に優れるが、アルカリ活性剤の活性度が高いほど凝結時間が短い傾向がある。すわなち、ジオポリマー組成物は一般的に、可使時間の長さと硬化後の圧縮強度とを両立することが難しい。
【0006】
本開示は、上記状況のもとになされた。
本開示は、可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れるジオポリマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0008】
<1>
SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含むアルカリシリカ溶液とを含み、
下記の要件(1)を満足する、
ジオポリマー組成物。
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、前記活性フィラーに含まれるSiOと前記アルカリシリカ溶液に含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、前記アルカリシリカ溶液に含まれるNaの物質量(mol)であり、
M(HO)は、前記アルカリシリカ溶液に含まれる水の物質量(mol)であり、
M(CaO)は、前記活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
<2>
前記活性フィラーのCaO含有量が10質量%~40質量%である、<1>に記載のジオポリマー組成物。
<3>
前記活性フィラー100質量部に対して水を50質量部以下含む、<1>又は<2>に記載のジオポリマー組成物。
ここで水の量は、ジオポリマー組成物に含まれるすべての水の量である。
<4>
前記活性フィラーが高炉スラグ粉体及びフライアッシュを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
<5>
さらに骨材を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物。
<6>
<1>~<5>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物の硬化物であるジオポリマー硬化体。
【0009】
<7-1>
SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラスと、炭酸ナトリウムと、水とを、下記の要件(1)を満足するように混合することを含む、
ジオポリマー組成物の調合方法。
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、前記活性フィラーに含まれるSiOと前記ナトリウム水ガラスに含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、前記ナトリウム水ガラスに含まれるNaと前記炭酸ナトリウムに含まれるNaとの合計物質量(mol)であり、
M(HO)は、前記ナトリウム水ガラスに含まれる水と前記水との合計物質量(mol)であり、
M(CaO)は、前記活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
<7-2>
前記活性フィラーのCaO含有量が10質量%~40質量%である、<7-1>に記載のジオポリマー組成物の調合方法。
<7-3>
前記ジオポリマー組成物が前記活性フィラー100質量部に対して水を50質量部以下含む、<7-1>又は<7-2>に記載のジオポリマー組成物の調合方法。
ここで水の量は、ジオポリマー組成物に含まれるすべての水の量である。
<7-4>
前記活性フィラーが高炉スラグ粉体及びフライアッシュを含む、<7-1>~<7-3>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物の調合方法。
<7-5>
さらに骨材を混合する、<7-1>~<7-4>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物の調合方法。
<8-1>
<7-1>~<7-5>のいずれか1つに記載のジオポリマー組成物の調合方法によりジオポリマー組成物を調合することと、
前記ジオポリマー組成物を硬化することと、を含む、
ジオポリマー硬化体の製造方法。
<8-2>
前記ジオポリマー組成物を硬化することが、常温養生することを含む、<8-1>に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れるジオポリマー組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例及び比較例について、M(SiO)/M(Na)とM(HO)/M(CaO)との関係を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0016】
<ジオポリマー組成物>
本開示のジオポリマー組成物は、SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含むアルカリシリカ溶液と、を含み、下記の要件(1)を満足する。
【0017】
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、活性フィラーに含まれるSiOとアルカリシリカ溶液に含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、アルカリシリカ溶液に含まれるNaの物質量(mol)であり、
M(HO)は、アルカリシリカ溶液に含まれる水の物質量(mol)であり、
M(CaO)は、活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
【0018】
図1は、後述する実施例1~15及び比較例9~14について、M(SiO)/M(Na)とM(HO)/M(CaO)との関係を示す散布図である。図1において、実施例をマル印(○)でプロットし、比較例をバツ印(×)でプロットしている。直線:y=-0.4x+8の下に実施例1~15があり、上に比較例9~14がある。すなわち、実施例1~15は要件(1)を満足しており、比較例9~14は要件(1)を満足していない。
【0019】
図1及び表1に明らかなとおり、要件(1)を満足するジオポリマー組成物、すなわち本開示のジオポリマー組成物は、可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れる。
【0020】
以下、本開示のジオポリマー組成物を構成する材料を詳細に説明する。
【0021】
[活性フィラー]
本開示のジオポリマー組成物を構成する活性フィラーは、少なくともSiO及びCaOを含む。活性フィラーの実施形態の一例は、Al、SiO及びCaOを含む。
【0022】
活性フィラーとして例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、メタカオリン、シリカフューム、ゼオライト微粉末、ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末、下水汚泥溶融スラグ微粉末、火山灰、もみ殻灰、流動床石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、これらの少なくとも2種の混合物などが挙げられる。
【0023】
活性フィラーの実施形態の一例として、高炉スラグ微粉末(BFS)とフライアッシュ(FA)の混合物が挙げられる。BFSを含むジオポリマー組成物は、硬化体の圧縮強度が高い傾向がある。FAを含むジオポリマー組成物は、流動性及び作業性に優れる傾向がある。BFSとFAとを混合することにより、流動性、作業性及び力学的強度のバランスのよいジオポリマー組成物及びジオポリマー硬化体が得られる。
【0024】
BFSの品質(例えば、密度、粉末度)及びFAの品質(例えば、密度、粉末度)は、制限されるものではなく、目標とする、流動性、作業性、可使時間、凝結時間、細孔構造、力学的強度などに応じて選択すればよい。
BFSとして例えば、JIS A6206:2013に規定される高炉スラグ微粉末3000、4000、6000及び8000が挙げられる。
FAとして例えば、JIS A6201:2015に規定されるI種、II種、III種及びIV種が挙げられる。
【0025】
BFSとFAの混合比は、制限されるものではなく、目標とする、流動性、作業性、可使時間、凝結時間、細孔構造、力学的強度などに応じて選択すればよい。
【0026】
活性フィラーの実施形態の一例は、好ましいCaO含有量及びSiO含有量を実現する観点から、BFSとFAのみを含み、BFSとFAの質量比(BFS:FA)が、20:80~80:20であることが好ましく、25:75~75:25であることがより好ましく、30:70~70:30であることが更に好ましい。
【0027】
活性フィラーのCaO含有量は、ジオポリマー組成物の可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れる観点から、10質量%~40質量%であることが好ましく、12質量%~38質量%であることがより好ましく、15質量%~35質量%であることが更に好ましい。
【0028】
活性フィラーのSiO含有量は、ジオポリマー組成物の可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れる観点から、35質量%~60質量%であることが好ましく、38質量%~58質量%であることがより好ましく、40質量%~55質量%であることが更に好ましい。
【0029】
活性フィラーのAl含有量は、10質量%~30質量%であることが好ましく、12質量%~28質量%であることがより好ましく、15質量%~25質量%であることが更に好ましい。
【0030】
[アルカリシリカ溶液]
本開示のジオポリマー組成物を構成するアルカリシリカ溶液は、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含む。すなわち本開示のジオポリマー組成物は、アルカリ活性剤としてナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムを含む。
【0031】
アルカリシリカ溶液は、例えば、ナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウムと水との混合物;ナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウム水溶液との混合物;ナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウム水溶液と水との混合物;さらにこれらの混合物;などである。
【0032】
ナトリウム水ガラスとして例えば、工業用の珪酸ソーダが使用可能である。
炭酸ナトリウムとして、固体の炭酸ナトリウムを用いてもよく、炭酸ナトリウム水溶液を用いてもよい。
水は、例えば、蒸留水、上水、工業用水、井水などである。
【0033】
アルカリシリカ溶液を構成するナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムの各濃度及び両者の混合比は、制限されるものではなく、要件(1)を満足するように選択すればよい。
【0034】
アルカリシリカ溶液は、本開示のジオポリマー組成物の効果が奏される範囲において、ナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウム以外のアルカリ活性剤(例えば、カリウム系のアルカリ活性剤)を含んでいてもよい。
アルカリシリカ溶液の実施形態の一例として、アルカリ活性剤としてはナトリウム水ガラス及び炭酸ナトリウムのみを含むアルカリシリカ溶液が挙げられる。アルカリシリカ溶液の実施形態の一例として、ナトリウム水ガラス、炭酸ナトリウム及び水からなるアルカリシリカ溶液が挙げられる。
【0035】
[骨材]
本開示のジオポリマー組成物は骨材を含んでいてもよい。骨材としては、ジオポリマーモルタル、ジオポリマーコンクリート、セメントモルタル又はセメントコンクリートにおいて従来用いられる各種の細骨材及び粗骨材が挙げられる。
【0036】
細骨材として例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、石灰砕砂、高炉スラグ細骨材、コンクリート廃材由来の再生細骨材などが挙げられる。
粗骨材として例えば、安山岩、流紋岩、硬質砂岩、石灰石等を破砕した砕石;川砂利、山砂利、陸砂利;高炉スラグ粗骨材、コンクリート廃材由来の再生粗骨材などが挙げられる。
【0037】
骨材の種類とジオポリマー組成物中の含有量は、ジオポリマー硬化体の目標とする力学的強度に応じて選択すればよい。
【0038】
[その他の材料]
本開示のジオポリマー組成物は、化学混和剤を含有していてもよい。化学混和剤としては、ジオポリマーモルタル、ジオポリマーコンクリート、セメントモルタル又はセメントコンクリートにおいて従来用いられる各種の化学混和剤が挙げられる。
本開示のジオポリマー組成物は、後述する実施例1~15によって実証されているとおり、化学混和剤を含有せずとも可使時間が長い。
【0039】
本開示のジオポリマー組成物は、補強材を含有していてもよい。補強材として例えば、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などが挙げられる。
【0040】
本開示のジオポリマー組成物は、可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れる観点から、活性フィラー100質量部に対して、水を50質量部以下含むことが好ましく、30質量部~50質量部含むことがより好ましく、32質量部~48質量部含むことが更に好ましい。ここで水の量は、ジオポリマー組成物に含まれるすべての水の量である。
【0041】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法は、制限されるものではないが、以下に説明する調合方法が好適である。
【0042】
<ジオポリマー組成物の調合方法>
本開示のジオポリマー組成物の調合方法は、SiO及びCaOを含む活性フィラーと、ナトリウム水ガラスと、炭酸ナトリウムと、水とを、下記の要件(1)を満足するように混合することを含む。
【0043】
要件(1):M(SiO)/M(Na)≦-0.4×[M(HO)/M(CaO)]+8
M(SiO)は、活性フィラーに含まれるSiOとナトリウム水ガラスに含まれるSiOとの合計物質量(mol)であり、
M(Na)は、ナトリウム水ガラスに含まれるNaと炭酸ナトリウムに含まれるNaとの合計物質量(mol)であり、
M(HO)は、ナトリウム水ガラスに含まれる水と水との合計物質量(mol)であり、
M(CaO)は、活性フィラーに含まれるCaOの物質量(mol)である。
【0044】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法における要件(1)の技術的意義は、本開示のジオポリマー組成物における要件(1)の技術的意義と同じである。
【0045】
活性フィラーとナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウムと水とを混合する際の、混合に供する材料の形態及び混合順は制限されない。活性フィラーとナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウムと水とを混合することには、下記の形態(a)及び形態(b)のいずれもが含まれる。
【0046】
形態(a):ナトリウム水ガラスと炭酸ナトリウムと水とを混合してアルカリシリカ溶液を調製し、アルカリシリカ溶液と活性フィラーとを混合する。予め、炭酸ナトリウムの一部又は全部と水の一部又は全部とを混合して炭酸ナトリウム水溶液を調製し、炭酸ナトリウム水溶液をアルカリシリカ溶液の調製に供してもよい。
【0047】
形態(b):活性フィラーと、ナトリウム水ガラスと、炭酸ナトリウムと、水とを、任意の順に混合する。予め、炭酸ナトリウムの一部又は全部と水の一部又は全部とを混合して炭酸ナトリウム水溶液を調製し、炭酸ナトリウム水溶液を混合に供してもよい。
【0048】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法は、調合する際の作業性の観点から、形態(a)であることが好ましい。
【0049】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法に使用する、活性フィラー、ナトリウム水ガラス、炭酸ナトリウム、水及びアルカリシリカ溶液は、本開示のジオポリマー組成物について先述した物質と同義であり、具体的な形態及び好ましい形態も同じである。
【0050】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法の実施形態の一例は、さらに骨材も混合する。ここで骨材は、本開示のジオポリマー組成物について先述した骨材と同義であり、具体的な形態及び好ましい形態も同じである。
【0051】
本開示のジオポリマー組成物の調合方法は、例えば、ミキサーを用いた練り混ぜによって行う。各材料を練り混ぜる際の混合順は制限されない。
本開示のジオポリマー組成物の調合方法の実施形態の一例は、まず活性フィラーと骨材とをミキサーでかき混ぜ、次いでミキサーにアルカリシリカ溶液を投入して練り混ぜる。さらに、必要に応じて化学混和剤をミキサーに投入して練り混ぜてもよい。
【0052】
<ジオポリマー硬化体、ジオポリマー硬化体の製造方法>
本開示のジオポリマー硬化体は、本開示のジオポリマー組成物を硬化させることで得られる。ジオポリマー組成物は、一般的には、脱水をともなう縮重合反応によって硬化して硬化体を形成する。
【0053】
本開示のジオポリマー硬化体の製造方法は、本開示のジオポリマー組成物の調合方法によりジオポリマー組成物を調合することと、ジオポリマー組成物を硬化することと、を含む。
【0054】
本開示のジオポリマー硬化体の製造方法の実施形態の一例は、ジオポリマー組成物を型枠内に投入して成形体を得ることと、成形体を硬化させることとを含む。型枠内に投入されたジオポリマー組成物に対して、常法に従い脱泡などの処理を行ってもよい。成形体を硬化させる前又は途中に、成形体を型枠から脱型してもよい。
【0055】
本開示のジオポリマー硬化体の製造方法において、ジオポリマー組成物を硬化させるための養生温度及び養生時間は、制限されない。ジオポリマー硬化体の目標とする力学的強度に応じて、常温養生、加熱養生、蒸気養生、オートクレーブ養生、水中養生、気中養生、封緘養生、又はこれらの組み合わせを施してよい。
【0056】
本開示のジオポリマー硬化体の製造方法の実施形態の一例は、常温養生によってジオポリマー組成物を硬化させる。常温養生の実施形態の一例として、好ましくは10℃~40℃で、より好ましくは15~30℃で、封緘養生又は気中養生する形態が挙げられる。
本開示のジオポリマー組成物は、後述する実施例1~15によって実証されているとおり、常温養生によっても硬化後の圧縮強度に優れる。
【実施例0057】
以下、本開示のジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法を、実施例を挙げて具体的に説明する。本開示のジオポリマー組成物、ジオポリマー硬化体、ジオポリマー組成物の調合方法及びジオポリマー硬化体の製造方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
<材料>
ジオポリマー組成物の材料として下記(1)、(2)及び(3)を用意した。
【0059】
(1)活性フィラー
・BFS(高炉スラグ微粉末):CaO 40質量%、SiO36質量%、Al 14.8質量%、密度2.91g/cm、粉末度4240cm/g
・FA(フライアッシュ)CaO 4.43質量%、SiO58.63質量%、Al 25.15質量%、密度2.32g/cm、粉末度3680cm/g
【0060】
(2)アルカリシリカ溶液
・WG(ナトリウム水ガラス):NaO 12.32質量%、SiO 31.36質量%、水 56.32質量%、ボーメ度48.1、日本化学工業株式会社
・W(水):水道水
・NH(アルカリ)
・・濃度30質量%の水酸化ナトリウム水溶液。比較例1~8において使用した。
・・固体の炭酸ナトリウム、又は、濃度9.35質量%の炭酸ナトリウム水溶液。すべての実施例及び比較例11~14において固体の炭酸ナトリウムを使用し、比較例9~10において炭酸ナトリウム水溶液を使用した。
【0061】
(3)細骨材
・標準砂:絶乾密度2.64g/cm、吸水率0.42%
【0062】
<ジオポリマー組成物の調合>
ジオポリマー組成物としてジオポリマーモルタルを調合した。モルタル組成は表1に記載のとおりである。標準砂は、すべての実施例及び比較例において、標準砂とジオポリマーペーストの容積比(標準砂/ジオポリマーペースト)が約1.2となる量配合した。
【0063】
表1中の「AS/P」は、活性フィラー(P=BFS+FA)に対するアルカリシリカ溶液(AS=WG+W+NH)の質量比である。
【0064】
アルカリとして水酸化ナトリウム水溶液を使用した比較例1~8において「NH/AS」は、アルカリシリカ溶液(AS=WG+W+NH)に対する水酸化ナトリウム水溶液(NH)の質量比である。
アルカリとして水酸化ナトリウム水溶液を使用した比較例1~8において「Vw」は、アルカリシリカ溶液(AS=WG+W+NH)の全容積に占める、調合に使用した水(W)の容積割合(%)である。
【0065】
アルカリとして炭酸ナトリウム(固体又は水溶液)を使用した実施例1~15及び比較例9~14において、「NH/AS」及び「Vw」は設計の目標値である。
例えば、NH/AS=0.3且つVw=25と記載されている実施例においては、NH/AS=0.3且つVw=25である比較例2のアルカリシリカ溶液に含まれるSiとNaのモル比Na/Siを実現するように、水(W)と炭酸ナトリウム(NH)の配合量を調整した。
【0066】
モルタルの調合の具体的な操作は、下記のとおりである。
予めナトリウム水ガラスと水とアルカリとを混合し、アルカリシリカ溶液を調製した。
ジオポリマーモルタルの調合は、JIS R5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠する練混ぜ機を使用し、機械練りによって行った。練り鉢に活性フィラーと標準砂を入れ、低速(自転速度:毎分140±5回転、公転速度:毎分62±5回転)で30秒間かき混ぜた。次いで練り鉢にアルカリシリカ溶液を入れ、低速で90秒間練り混ぜ、休止した。休止の30秒間に適切なさじ又はへらで、練り鉢及びパドルに付着したモルタルを練り鉢の中心部に集めるようにしてかき落とした。30秒間の休止に次いで、高速(自転速度:毎分285±10回転、公転速度:毎分125±10回転)で90秒間練り混ぜた。練混ぜ時間は、活性フィラーと砂のかき混ぜ時間及び休止時間も含めて4分間とした。練混ぜが終わったら練り鉢を練混ぜ機から取り外し、適切なさじで10回かき混ぜた。
【0067】
<可使時間の評価>
モルタルの調合終了から10分後、30分後、60分後、以下30分毎に、「可使」との判断ができなくなるまで、JIS R5201:2015「セメントの物理試験方法」(12 フロー試験)に準じてフロー値を測定した。フローコーンを垂直方向に取り去った直後と(0打フロー)、15秒間に15回の落下運動を与え、モルタルが広がった後(15打フロー)の径の測定を行った。測定方法は最大と認める方向と、これに直角な方向とで1mmの単位まで測定した。硬練りの場合は0打フローから15打フローを行った際に15mm以上フローが伸びた試料を、軟練りの場合は15打フローが130mm以上の試料を、「可使」と判断した。表1に結果を示す。可使時間は120分以上あることが望ましい。
【0068】
<圧縮強度の評価>
試験体の成形はモルタルの調合終了後すぐに行った。成形用型に直径50mm×100mmの円柱試験体の型枠を用いた。モルタルを成形用型高さの約1/2までさじで詰め、その直後にテーブルバイブレータを用いて30秒間振動を与え、試料表面を均した。次いで、残りの成形用型高さの約1/2の試料をさじで詰め、再度テーブルバイブレータを用いて30秒間振動を与え試料を均した。均した後、モルタルの盛り上げを削り取り、上面を平滑にした。その後、不透水性のキャップ又はラッピングフィルムで試料を封緘し、材令7日まで温度20℃環境の湿気箱に入れ封緘養生を行った。所定の材令に達した後、脱型し、円柱試験体の両方の底面(圧縮試験時の圧縮面)に磨き仕上げを行い、高さ95mm~100mm以内に調製した。JIS A1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて圧縮強度(N/mm)を測定した。表1に結果を示す。圧縮強度は40N/mm以上あることが望ましい。
【0069】
比較例6は、可使時間が短すぎて、試験体を成形できなかった。
比較例13は、24時間後にも硬化せず、試験体を得られなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1~15及び比較例9~14について、M(SiO)/M(Na)とM(HO)/M(CaO)との関係を示す散布図を図1に示す。図1において、実施例をマル印(○)でプロットし、比較例をバツ印(×)でプロットしている。直線:y=-0.4x+8の下に実施例1~15があり、上に比較例9~14がある。すなわち、実施例1~15は要件(1)を満足しており、比較例9~14は要件(1)を満足していない。
実施例1~15、すなわち要件(1)を満足するジオポリマー組成物は、表1に示すとおり、可使時間が長く且つ硬化後の圧縮強度に優れる。
図1