(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082182
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】固定子、及び固定子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20240612BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20240612BHJP
H02K 15/095 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H02K3/28 J
H02K15/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195953
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】杉島 一志
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC05
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD21
5H603CE01
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP08
5H615PP12
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】3ティース2相巻線となるティース群を複数有する巻線構造において、導線巻回時における作業性を良好なものとする。
【解決手段】固定子は、周方向に所定間隔で設けられた複数のティースを有する固定子コアと、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線と、を含む。各相巻線は、ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有している。複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線C1が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線C2が巻回されることで固定子巻線が構成されている。第1導線C1及び第2導線C2はそれぞれ、周方向に隣り合う2つのティース群において連続して巻回されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に所定間隔で設けられた複数のティース(34)を有する固定子コア(31)と、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線(32)と、を含む固定子(30)であって、
前記各相巻線は、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有しており、
前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線(C1)が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線(C2)が巻回されることで前記固定子巻線が構成されており、
前記第1導線及び前記第2導線はそれぞれ、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において連続して巻回されている、固定子。
【請求項2】
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記各ティースを周方向に順に1番目~6番目とし、前記第1導線を先巻きの導線、前記第2導線を後巻きの導線とし、
1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で前記第1導線が巻回されているとともに、
6番目、5番目、3番目、2番目となる順序、又は5番目、6番目、2番目、3番目となる順序で前記第2導線が巻回されている、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
軸方向一端側を第1コイルエンド、軸方向他端側を第2コイルエンドとし、
前記第1導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部(72)が設けられており、
前記第2導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部(82)が設けられている、請求項1に記載の固定子。
【請求項4】
前記第1導線及び前記第2導線のうち第1導線が先巻きの導線、第2導線が後巻きの導線であり、
前記固定子コアの軸方向端部には、前記ティースと前記部分巻線とを絶縁する絶縁部材(63,64)が設けられており、
前記第1導線において前記各ティースの間となる渡り部(71~73)が、前記絶縁部材により、前記ティースに対して径方向に離された位置に案内されている、請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
前記固定子巻線は、各相の相巻線が中性点で接続されるものであり、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、一方のティース群から他方のティース群に繋がる渡り部(72,82)に、中性点接続部材(91,92,101,102)が接続されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項6】
前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線が1つの中性点で接続されており、
前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記1つの中性点の接続がなされている、請求項5に記載の固定子。
【請求項7】
前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線の一方どうし及び他方どうしにより2つの中性点での接続がなされており、
前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、
前記固定子巻線において周方向に隣り合う2つの前記ティース群の組み合わせのうち、一部の組み合わせでは前記渡り部による接続部分が分断されており、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部と、周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間において前記渡り部が分断されている導線端部とからなる2組の中性点接続箇所に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記2つの中性点の接続がそれぞれなされている、請求項5に記載の固定子。
【請求項8】
周方向に所定間隔で設けられた複数のティース(34)を有する固定子コア(31)と、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線(32)と、を含み、前記各相巻線が、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有する固定子(30)の製造方法であって、
前記固定子巻線は、前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線(C1)が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線(C2)が巻回されることで構成されるものであり、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回する第1巻回工程と、
その後、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回する第2巻回工程と、
前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つのティース群に連続して巻回されている状態とする切断工程と、
を有する、固定子の製造方法。
【請求項9】
前記固定子コアは、(6×n)個の前記ティースを有し、
前記固定子巻線は、{(6×n)/3}個の前記ティース群を有し、
前記第1巻回工程では、周方向に全ての前記ティース群において、前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記第2巻回工程では、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に全ての前記ティース群において、前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記切断工程では、前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つずつの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つずつのティース群に連続して巻回されている状態とする、請求項8に記載の固定子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、及び固定子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定子と回転子とを具備する回転電機において、固定子に設けられた固定子巻線におけるリプル電流の低減等を図るべく、周方向に3連続となる各ティースにおいて、互いに異相となる2つの相巻線を巻回することが考えられる。例えば特許文献1には、U相、V相、W相からなる3相の固定子巻線を有する回転電機において、第1ティースに、第1固定子巻線におけるU相、V相、W相の各コイル体Ua,Va,Waが巻回され、第2ティースに、第2固定子巻線におけるU相、V相、W相の各コイル体Ub,Vb,Wbが巻回され、第3ティースに、第1,第2固定子巻線のいずれか1相ずつのコイル体Uc,Vc,Wcが巻回されている回転電機において、相間の各コイル体における起磁力の位相差が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1等においては、周方向に連続する3つのティースからなる各ティース群において2相分の相巻線を巻回させる具体的な構成について記載がなされていない。そのため、周方向に3連続となる各ティースに2相分の相巻線を巻回させる技術の提案が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、3ティース2相巻線となるティース群を複数有する巻線構造において、導線巻回時における作業性を良好なものとすることができる固定子、及び固定子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0007】
手段1は、
周方向に所定間隔で設けられた複数のティースを有する固定子コアと、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線と、を含む固定子であって、
前記各相巻線は、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有しており、
前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線が巻回されることで前記固定子巻線が構成されており、
前記第1導線及び前記第2導線はそれぞれ、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において連続して巻回されていることを特徴とする。
【0008】
例えば、固定子におけるリプル電流の低減等を図るべく、周方向に3連続となる各ティースにおいて、互いに異相となる2つの相巻線を巻回することが考えられる。この場合、周方向に3連続のティースからなるティース群において、周方向に並ぶ第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線が巻回される。そしてかかる構成において、第1導線及び第2導線がそれぞれ、周方向に隣り合う2つのティース群において連続して巻回されるようにした。この場合、周方向に隣り合う2つのティース群に跨がるようにして、2つの導線(第1導線及び第2導線)が6つのティースに対して巻回される。この構成では、3ティース2相巻線となるティース群を複数有する巻線構造において、周方向に並ぶ6ティース分の固定子巻線を、第1導線及び第2導線によりまとめて巻回させることにより、導線巻回時における作業性を良好なものとすることができる。
【0009】
手段2では、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記各ティースを周方向に順に1番目~6番目とし、前記第1導線を先巻きの導線、前記第2導線を後巻きの導線とし、1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で前記第1導線が巻回されているとともに、6番目、5番目、3番目、2番目となる順序、又は5番目、6番目、2番目、3番目となる順序で前記第2導線が巻回されている。
【0010】
上記の順序で、周方向に隣り合う2つのティース群(すなわち周方向に6連続の各ティース)に第1導線及び第2導線が巻回されていることにより、3ティース2相巻線となるティース群を複数有する固定子において適正な巻線構造を実現できる。
【0011】
手段3では、軸方向一端側を第1コイルエンド、軸方向他端側を第2コイルエンドとし、前記第1導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部が設けられており、前記第2導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部が設けられている。
【0012】
上記構成によれば、固定子の第1コイルエンド側に、各導線(第1導線及び第2導線)の巻き始め端部と巻き終わり端部とが設けられるとともに、第2コイルエンド側に、各導線の渡り部が設けられている。この場合、各導線の巻き始め端部及び巻き終わり端部と渡り部とが軸方向両側に分散配置されることにより、導線どうしの干渉が生じにくくなり、導線の巻回作業が容易となる。
【0013】
手段4では、前記第1導線及び前記第2導線のうち第1導線が先巻きの導線、第2導線が後巻きの導線であり、前記固定子コアの軸方向端部には、前記ティースと前記部分巻線とを絶縁する絶縁部材が設けられており、前記第1導線において前記各ティースの間となる渡り部が、前記絶縁部材により、前記ティースに対して径方向に離された位置に案内されている。
【0014】
上記のごとく一部が重複する2つの導線(第1導線、第2導線)が各ティースにそれぞれ巻回される構成では、先巻き導線(第1導線)におけるティース間の渡り部が、後巻き導線(第2導線)が巻回される際の支障となることが懸念される。この点、固定子コアの軸方向端部に設けられた絶縁部材を用い、第1導線の渡り部を、ティースに対して径方向に離された位置に案内するようにした。これにより、先巻きである第1導線の渡り部が、後巻きである第2導線の巻回時に支障となるといった不都合を抑制することができる。
【0015】
手段5では、前記固定子巻線は、各相の相巻線が中性点で接続されるものであり、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、一方のティース群から他方のティース群に繋がる渡り部に、中性点接続部材が接続されている。
【0016】
上記構成によれば、周方向に隣り合う2つのティース群において、第1導線及び第2導線はそれぞれ、2相ずつの相巻線を連続して巻回するものとなっており、その2相の相巻線の間である中間部分に対して中性点接続部材が接続されている。この場合、例えば1ティース群ごとに2相の相巻線に対して中性点接続部材をそれぞれ接続する構成と比べて、中性点接続の箇所を減らすことができる。これにより、3ティース2相巻線となる複数のティース群を有する巻線構造において、導線巻回の作業性を良好化しつつ、中性点接続についても簡易構成を実現することができる。
【0017】
手段6では、前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線が1つの中性点で接続されており、前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記1つの中性点の接続がなされている。
【0018】
上記構成では、例えば3相の固定子巻線において、各相2並列となる相巻線が共通1つの中性点接続部材によって星形結線されている。これにより、中性点接続部材に対する接続の数を減らすことができ、ひいては構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
手段7では、前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線の一方どうし及び他方どうしにより2つの中性点での接続がなされており、前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、前記固定子巻線において周方向に隣り合う2つの前記ティース群の組み合わせのうち、一部の組み合わせでは前記渡り部による接続部分が分断されており、周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部と、周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間において前記渡り部が分断されている導線端部とからなる2組の中性点接続箇所に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記2つの中性点の接続がそれぞれなされている。
【0020】
上記構成では、例えば3相の固定子巻線において、各相2並列となる相巻線が、2つの中性点接続部材によってそれぞれに星形結線されている。これにより、周方向において各中性点接続部材の長さを短縮することが可能となっている。
【0021】
手段8は、
周方向に所定間隔で設けられた複数のティースを有する固定子コアと、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線と、を含み、前記各相巻線が、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有する固定子の製造方法であって、
前記固定子巻線は、前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線が巻回されることで構成されるものであり、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回する第1巻回工程と、
その後、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回する第2巻回工程と、
前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つのティース群に連続して巻回されている状態とする切断工程と、
を有することを特徴とする。
【0022】
上記構成の製造方法によれば、3ティース2相巻線となるティース群を複数備える固定子において、周方向に隣り合う2つのティース群(すなわち6連続のティース)を1単位としつつ、導線材を効率良く行わせることができる。この場合、周方向に隣り合う2つのティース群に跨がるようにしつつ、2つの導線(第1導線及び第2導線)を6つのティースに対して好適に巻回させることができる。その結果、導線巻回時における作業性を良好なものとすることができる。
【0023】
手段9では、
前記固定子コアは、(6×n)個の前記ティースを有し、
前記固定子巻線は、{(6×n)/3}個の前記ティース群を有し、
前記第1巻回工程では、周方向に全ての前記ティース群において、前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記第2巻回工程では、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に全ての前記ティース群において、前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記切断工程では、前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つずつの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つずつのティース群に連続して巻回されている状態とする。
【0024】
上記構成の製造方法によれば、周方向の全てのティースについて、1本の連続線である導線材を用いつつ、3ティース2相巻線となるティース群に対する巻回を適正に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図7】固定子巻線の各部分巻線について各ティースとの対応関係を示す図。
【
図8】ティース群における巻線構造を説明するための図。
【
図9】ティースに対する導線材の巻回順序を示す図。
【
図10】各固定子巻線における中性点接続の構成を示す図。
【
図11】ティースに対する導線材の巻回順序を示す図。
【
図12】第2実施形態においてティースに対する導線材の巻回順序を示す図。
【
図13】第2実施形態においてティースに対する導線材の巻回順序を示す図。
【
図14】第3実施形態においてティースに対する導線材の巻回順序を示す図。
【
図16】他の実施形態において各固定子巻線における中性点接続の構成を示す図。
【
図17】他の実施形態における固定子巻線の巻線構成図。
【
図18】他の実施形態において各固定子巻線における中性点接続の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。第1実施形態では、回転電機としてのモータ10を例示して説明する。
【0027】
図1に示すモータ10は、永久磁石界磁型のものであり、具体的には3相巻線を有する永久磁石界磁型同期機である。つまり、モータ10は、ブラシレスモータである。この3相巻線は2系統有していてもよい。モータ10は、ハウジング20と、ハウジング20に固定される固定子30と、固定子30に対して回転する回転子40と、回転子40が固定される回転軸11と、を備える。以下、本実施形態において、軸方向とは回転軸11の軸方向のことを示し、径方向とは回転軸11の径方向のことを示し、周方向とは回転軸11の周方向のことを示す。
【0028】
ハウジング20は円筒形状に形成されており、ハウジング20内には、固定子30及び回転子40等が収容されている。ハウジング20には、軸受23,24が設けられており、この軸受23,24により回転軸11が回転自在に支持されている。ハウジング20の内周面の軸心は回転軸11と同軸となっている。回転軸11の先端側には、角度センサ12が設けられている。角度センサ12は、磁気センサでもレゾルバでもよい。
【0029】
固定子30は、ハウジング20の軸方向略中央において、ハウジング20の内周に沿って円筒状に設けられている。そして、固定子30は、回転軸11の軸心Oを中心にして、ハウジング20の内周面に固定されている。固定子30は、磁気回路の一部を構成するものであり、円環状をなし回転子40の外周側において径方向に対向して配置される固定子コア31と、固定子コア31に巻回された固定子巻線32とを有している。
【0030】
図2に示すように、固定子コア31は、円環状のバックヨーク33と、バックヨーク33から径方向内側に向けて突出し、周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース34とを有し、隣り合うティース34の間にスロット35が形成されている。固定子コア31においてティース34は周方向に等間隔に設けられ、そのティース34に固定子巻線32が巻回されている。これにより、各スロット35内に固定子巻線32の導体が収容されている。本実施形態では、ティース34の数、スロット35の数をそれぞれ「18」としている。説明の都合上、各ティース34には、周方向の配列順で時計回りに符号T1~18を付しており、ティース番号を示す必要のある場合には、ティース34をティースT1,T2,T3・・・としても記載する。固定子巻線32は、スロット35に収容された状態で保持されており、電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。
【0031】
固定子コア31は、薄板状の磁性体である複数の鋼板(コアシート)を用い、その複数の鋼板が固定子コア31の軸方向に積層されることで形成されている。鋼板は、例えば帯状の電磁鋼板材をプレス打ち抜きすることで形成されているとよい。
【0032】
回転子40は、磁気回路の一部を構成するものであり、周方向に複数の磁極を有し、固定子30に対して径方向に対向するように配置されている。本実施形態において、回転子40は、14個の磁極(すなわち7個の磁極対)を有する。回転子40は、磁性体からなる回転子コア41と、回転子コア41に固定される複数の永久磁石42と、を備える。具体的には、
図2に示すように、回転子40は、周方向に極性が交互となるように磁極ごとに磁石部としての永久磁石42を備えており、回転子コア41に軸方向に沿って設けられた収容孔に永久磁石42が埋め込まれている。
【0033】
回転子40は、周知の構成でよく、例えば、IPM型(Interior Permanent Magnet:埋め込み磁石型)の回転子であっても、SPM型(Surface Permanent Magnet:表面磁石側)の回転子であってもよい。また、回転子40として、界磁巻線側の回転子を採用してもよい。本実施形態では、IPM型の回転子を採用している。回転子40には、回転軸11が挿通され、回転軸11を中心にして回転軸11と一体回転するように回転軸11に固定されている。
【0034】
モータ10には、制御装置50が接続されている。制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0035】
制御装置50が備える機能としては、例えば、外部(例えばバッテリ)からの電力を変換し、モータ10に供給して駆動力を発生させる機能を有する。また、例えば、制御装置50は、角度センサ12から入力された回転角度に関する情報を利用して、モータ10の制御(電流制御など)を行う機能を備える。
【0036】
図3は、本実施形態における制御装置50の電気的構成を示す図である。
【0037】
本実施形態では、固定子巻線32が第1固定子巻線32aと第2固定子巻線32bとから構成されており、制御装置50には、固定子巻線32a,32bごとに第1インバータ回路51及び第2インバータ回路52が設けられている。各インバータ回路51,52は、それぞれ3相の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されている。制御装置50は、各アームに設けられたスイッチング素子のオンオフにより、各相における電流を制御する。
【0038】
詳しく説明すると、第1インバータ回路51は、U相、V相及びW相からなる3相において、スイッチング素子としての上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。本実施形態では、各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、具体的にはIGBTを用いている。なお、スイッチング素子としてMOSFETを用いてもよい。各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnには、それぞれフリーホイールダイオード(還流ダイオード)Dp,Dnが逆並列に接続されている。
【0039】
各相の上アームスイッチSpの高電位側端子(コレクタ)は、バッテリの正極端子に接続されている。また、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子(エミッタ)は、バッテリの負極端子(グランド)に接続されている。各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点は、それぞれ第1固定子巻線32aにおける各相の相巻線の一端に接続されている。第1固定子巻線32aはU相、V相、W相の相巻線を有しており、第1インバータ回路51では、それら各相の相巻線の一端がそれぞれ上下アームのスイッチSp,Snの中間接続点に接続されている。
【0040】
第2インバータ回路52は、第1インバータ回路51と同様の構成を有するものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。第2固定子巻線32bは、X相、Y相、Z相の相巻線を有しており、第2インバータ回路52では、それら各相の相巻線の一端がそれぞれ上下アームのスイッチSp,Snの中間接続点に接続されている。
【0041】
第1インバータ回路51から供給される3相の電流と、第2インバータ回路52から供給される3相の電流とは、互いに所定の電流位相差を有するものとなっている。
【0042】
以下には、固定子30の具体的な構成を説明する。
図4は、固定子30の平面図であり、
図5(a),(b)は、固定子コア31の構成を説明するための斜視図である。
図4に示す固定子30は、
図2に示す固定子30に相当する。
【0043】
固定子30において、固定子コア31は複数の分割コア61により構成されており、各分割コア61が周方向に並べて配置されることで固定子コア31が円筒状に形成されている。分割コア61はそれぞれ、鋼板積層体であるコア本体62と、絶縁性の樹脂材料等により構成された絶縁部材63,64とを有している。
図5(a)は、固定子コア31において絶縁部材63,64を取り付けた状態を示し、
図5(b)は、固定子コア31において絶縁部材63,64を取り外した状態を示している。
【0044】
コア本体62は、固定子コア31の径方向に延びるティース34と、その一端側に設けられたヨーク部62aと、他端側に設けられた鍔部62bとを有している。ヨーク部62aは、
図2に示す固定子コア31のバックヨーク33に相当する部位である。隣り合う分割コア61ではヨーク部62aどうしが接着等により接合されているとよい。絶縁部材63,64は、ティース34の軸方向一端側及び他端側に装着されている。絶縁部材63,64は、ティース34よりも径方向外側(バックヨーク33側)で軸方向に延びる起立部63a,64aを有している。起立部63a,64aには、固定子巻線32の導線材を挿通可能な溝部63b,64bが周方向2箇所にそれぞれ設けられている。
【0045】
各分割コア61が周方向に並ぶことにより、
図2に示すとおりティース34とスロット35とが周方向に交互に配置されるようになっている。本実施形態では、18個の分割コア61により固定子コア31が構成されている。固定子巻線32は、各ティース34に導線材が集中巻により巻回されることで構成されている。
【0046】
固定子巻線32の電気的な構成について一例を
図6に示す。
図6(a)は、第1固定子巻線32aにおいてU相、V相、W相の相巻線の構成を示し、
図6(b)は、第2固定子巻線32bにおいてX相、Y相、Z相の相巻線の構成を示している。これら各固定子巻線32a,32bでは、星形結線(Y結線)により各相の相巻線が互いに接続されている。
【0047】
図6(a)に示すように、第1固定子巻線32aは、U相の相巻線として部分巻線U1,U2,U3,U4を有し、V相の相巻線として部分巻線V1,V2,V3,V4を有し、W相の相巻線として部分巻線W1,W2,W3,W4を有している。そして、相巻線ごとの4つの部分巻線が2並列に接続されるとともに、各相2並列の相巻線が星形結線されている。つまり、各相の相巻線は中性点N1にて互いに接続されている。
【0048】
また、
図6(b)に示すように、第2固定子巻線32bは、X相の相巻線として部分巻線X1,X2,X3,X4を有し、Y相の相巻線として部分巻線Y1,Y2,Y3,Y4を有し、Z相の相巻線として部分巻線Z1,Z2,Z3,Z4を有している。そして、相巻線ごとの4つの部分巻線が2並列に接続されるとともに、各相2並列の相巻線が星形結線されている。つまり、各相の相巻線は中性点N2にて互いに接続されている。
【0049】
第1固定子巻線32aにおける各相の部分巻線U1~U4,V1~V4,W1~W4と、第2固定子巻線32bにおける各相の部分巻線X1~X4,Y1~Y4,Z1~Z4は、それぞれ固定子コア31のティース34に集中巻により巻回されている。本実施形態では、第1固定子巻線32aの12個の部分巻線と第2固定子巻線32bの12個の部分巻線とが、固定子コア31の18個のティース34に対して振り分けられて巻回されている。この点について以下に詳しく説明する。
【0050】
固定子コア31では、全18個のティース34が3つずつのティース群に分けられ、各ティース群における3つずつのティース34に、互いに異相となる2つの相巻線の部分巻線がそれぞれ巻回されている。つまり、固定子30では、
図4に示すように、固定子コア31の全てのティース34(T1~T18)が6つのティース群G1~G6に分けられており、各ティース群G1~G6に、第1固定子巻線32aの部分巻線U1~U4,V1~V4,W1~W4のうち2つの部分巻線と、第2固定子巻線32bの部分巻線X1~X4,Y1~Y4,Z1~Z4のうち2つの部分巻線とが振り分けられた状態で巻回されている。この場合、各ティース群G1~G6において、各3つのティースのうち周方向の両側となる各ティース34の一方には、第1固定子巻線32aの部分巻線が巻回されるとともに、同じ各ティース34の他方には、第2固定子巻線32bの部分巻線が巻回されている。また、各ティース群G1~G6の中央となるティース34には、第1,第2固定子巻線32a,32bにおける両方の部分巻線が巻回されている。
【0051】
ここで、各ティース群G1~G6において、周方向に3連続となるティース34を、周方向の並び順で第1ティース、第2ティース及び第3ティースとすると、それら第1~第3ティースのうち、第1,第2ティースに、複数の相巻線のうち第1相巻線の部分巻線が連続して巻回されるとともに、第2,第3ティースに、複数の相巻線のうち第2相巻線の部分巻線が連続して巻回されている。3連続となるティース34のうち中央となる第2ティースは、第1,第2相巻線が共に巻回される共通ティースとなっている。この場合、「第1相巻線」は、第1,第2固定子巻線32a,32bにおける6相の相巻線のうちいずれかの相巻線であり、「第2相巻線」は、同じく6相の相巻線のうち第1相巻線とは異なる相巻線である。
【0052】
図7は、固定子巻線32a,32bの各部分巻線について各ティースT1~T18との対応関係を示す図である。
図7では、例えばティース群G1において、
・第1ティースとしてのティースT1には、第2固定子巻線32bの部分巻線Y3が巻回され、
・第2ティースとしてのティースT2には、第2固定子巻線32bの部分巻線Y4と第1固定子巻線32aの部分巻線U4とが巻回され、
・第3ティースとしてのティースT3には、第1固定子巻線32aの部分巻線U3が巻回されている。その他のティース群G2~G6については説明を省くが、同様の態様で各部分巻線が巻回されており、各ティース群G2~G6の第1~第3ティースにおいて図示のごとく各部分巻線が巻回されている。
【0053】
本実施形態では、周方向に隣り合う2つのティース群Gにおいて、それら2つのティース群Gに跨がるようにして第1導線C1と第2導線C2とが巻回される巻線構造となっている。各導線C1,C2は、例えば丸線等の被覆導線である。この場合、周方向に隣り合う2つのティース群Gにおいて、第1導線C1は、第1~第3ティースのうち第1ティース及び第2ティースに巻回され、第2導線C2は、第1~第3ティースのうち第2ティース及び第3ティースに巻回されている。
図4で言えば、全6つのティース群G1~G6が3つに分けられ、ティース群G1,G2、ティース群G3,G4、ティース群G5,G6において、それぞれ2つの導線C1,C2が巻回されている。
【0054】
図8を用い、周方向に隣り合う2つのティース群G(すなわち周方向6つのティース)における巻線構造を以下に説明する。
図8(a)は、ティース群G1,G2における周方向6つのティースT1~T6において、第1導線C1のみが巻回された状態を示す平面図であり、
図8(b)は、同じくティースT1~T6において第1導線C1及び第2導線C2が巻回された状態を示す平面図である。第1導線C1は先に巻回される先巻きの導線であり、第2導線C2は後から巻回される後巻きの導線であり、これら各導線C1,C2のうち第2導線C2にドットを付している。
【0055】
図8(a)に示すように、第1導線C1は、ティースT1を巻き始めのティースとして、ティースT1,T2,T4,T5にそれぞれ巻回されている。ティースT1,T2では互いに逆となる向きで第1導線C1が巻回され、ティースT4,T5では互いに逆となる向きで第1導線C1が巻回されている。これら各ティースでは、第1導線C1が積層状態で多重に巻回され、巻き始め及び巻き終わりがいずれも径方向外側寄りになっているとよい。
【0056】
ティースT1の部分巻線とティースT2の部分巻線との間はこれら各ティースT1-T2間で架け渡される渡り部71であり、ティースT2の部分巻線とティースT4の部分巻線との間はこれら各ティースT2-T4間で架け渡される渡り部72であり、ティースT4の部分巻線とティースT5の部分巻線との間はこれら各ティースT4-T5間で架け渡される渡り部73である。各渡り部71~73は、それぞれ絶縁部材63の溝部63bを介して起立部63aの外側、すなわち起立部63aを挟んで反ティース側に案内されている。換言すれば、第1導線C1の渡り部71~73は、各ティースに対して径方向に離された位置に案内されている。なお、
図8では便宜上、渡り部72を起立部63aよりも径方向外側に離して示すが、起立部63aに沿って設けられていればよく、渡り部71に軸方向に重ねて配置されているとよい。各渡り部71~73が起立部63aの外側に案内されることで、第1導線C1の各渡り部71~73が、後巻きである第2導線C2の巻回の邪魔にならないようになっている。第1導線C1において、74が巻き始め側の導線端部であり、75が巻き終わり側の導線端部である。
【0057】
また、
図8(b)に示すように、第2導線C2は、ティースT6を巻き始めのティースとして、ティースT6,T5,T3,T2にそれぞれ巻回されている。ティースT6,T5では互いに逆となる向きで第2導線C2が巻回され、ティースT3,T2では互いに逆となる向きで第2導線C2が巻回されている。これら各ティースでは、第2導線C2が積層状態で多重に巻回され、巻き始め及び巻き終わりがいずれも径方向外側寄りになっているとよい。
【0058】
ティースT6の部分巻線とティースT5の部分巻線との間はこれら各ティースT6-T5間で架け渡される渡り部81であり、ティースT5の部分巻線とティースT3の部分巻線との間はこれら各ティースT5-T3間で架け渡される渡り部82であり、ティースT3の部分巻線とティースT2の部分巻線との間はこれら各ティースT3-T2間で架け渡される渡り部83である。各渡り部81~83は、渡り部71~73とは異なり、起立部63aの外側に案内されることなく、各ティース間で直引き渡されている。第2導線C2において、84が巻き始め側の導線端部であり、85が巻き終わり側の導線端部である。
【0059】
要するに、周方向に隣り合う2つのティース群G1,G2において、各ティースを周方向に順に1番目~6番目とすると、1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で第1導線C1が巻回されるとともに、6番目、5番目、3番目、2番目となる順序で第2導線C2が巻回されている。
【0060】
以下に、固定子30の製造方法として、導線巻回作業時における導線材の巻回手順を説明する。
図9は、ティースT1~T6に対する導線材の巻回順序を示す図である。
図9では、第1導線C1を実線で示し、第2導線C2を破線で示しており、図中の丸数字は巻回順序である。
【0061】
図9では、導線材が、T1→T2→T4→T5の順でこれら各ティースに巻回される。これら各ティース間において、導線材は渡り部71~73により連続している。これにより、部分巻線Y3,Y4,Z3,Z4がこの順序で連続的に巻回される。また、同じ導線材を引き続き用い、導線材が、T6→T5→T3→T2の順でこれら各ティースに巻回される。これら各ティース間において、導線材は渡り部81~83により連続している。これにより、部分巻線V3,V4,U3,U4がこの順序で連続的に巻回される。この場合、ティースT1,T2,T4,T5の巻回順序(T1→T2→T4→T5)と、ティースT6,T5,T3,T2の巻回順序(T6→T5→T3→T2)とは、周方向に見て互いに逆向きとなっている。
【0062】
本実施形態では、導線巻回作業時において、1本の導線材を用いて
図9の巻回作業を行うこととしている。つまり、周方向一方に向く順序で各ティースT1,T2,T4,T5に対して導線材が巻回された後、周方向に折り返し、周方向他方に向く順序で各ティースT6,T5,T3,T2に導線材が巻回されるようになっている。そして、周方向6つの各ティースT1~T6巻回作業が終わった後に、導線材の後切り部分(図のXC部分)を切断することで、第1導線C1及び第2導線C2に分離される。
【0063】
周方向に隣り合う2つのティース群に対する導線材の巻回手順を工程ごとに分けると以下の通りとなっている。
【0064】
第1巻回工程では、周方向に隣り合う2つのティース群において、それら各ティース群の第1ティース及び第2ティースである4ティース(図のT1,T2,T4,T5)に導線材を連続的に巻回する。その後、第2巻回工程では、第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に隣り合う2つのティース群において、それら各ティース群の第2ティース及び第3ティースである4ティース(図のT2,T3,T5,T6)に導線材を連続的に巻回する。例えば、自動巻回装置を用いて各ティースに対する導線材の巻回を行う場合には、自動巻回装置から繰り出される1本の導線材により、ティースT1→T2→T4→T5の巻回と、ティースT6→T5→T3→T2の巻回とが連続して行われる。そして、切断工程では、第1巻回工程及び第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つのティース群において、第1導線C1及び第2導線C2がそれぞれ2つのティース群に連続して巻回されている状態とする。この手順によれば、周方向に6連続となる各ティースを1組として容易に巻線完結させることができる。
【0065】
また、第1巻回工程と第2巻回工程とでは、巻回対象となるティースの順序が互いに逆なっている。そのため、第2巻回工程において、第1巻回工程と順序を同じにする場合に比べて、渡り部の長さの短縮化を図りつつ、導線材どうしの重なりを少なくすることができる。
【0066】
図6の巻線構造図で言えば、第1導線C1の連続巻回により、第2固定子巻線32bにおいて、例えばY相の部分巻線Y3,Y4とZ相の部分巻線Z3,Z4との直列接続部分が形成される。また、第2導線C2の連続巻回により、第1固定子巻線32aにおいて、例えばV相の部分巻線V3,V4とU相の部分巻線U3,U4との直列接続部分が形成される。
【0067】
図8及び
図9では、ティース群G1,G2における各ティースT1~T6の導線巻回構造について説明したが、他のティース群についても同様の導線巻回構造となっている。具縦気には、ティース群G3,G4における各ティースT7~T12では、周方向に1番目、2番目、4番目、5番目となる順序(すなわち、ティースT7→T8→T10→T11の順序)で第1導線C1が巻回されるとともに、周方向に6番目、5番目、3番目、2番目となる順序(ティースT12→T11→T9→T8の順序)で第2導線C2が巻回されている。
【0068】
同様に、ティース群G5,G6における各ティースT13~T18では、周方向に1番目、2番目、4番目、5番目となる順序(すなわち、ティースT13→T14→T16→T17の順序)で第1導線C1が巻回されるとともに、周方向に6番目、5番目、3番目、2番目となる順序(ティースT18→T17→T5→T4の順序)で第2導線C2が巻回されている。
【0069】
周方向に隣り合う2つずつのティース群Gでは、それらティース群Gどうしの間が、第1導線C1の渡り部72及び第2導線C2の渡り部82により相互に接続されており、その渡り部72,82では、中性点接続が行われている。
図6で言えば、第1固定子巻線32aにおいて、部分巻線U2-W3の間、部分巻線W2-V1の間、部分巻線V4-U3の間がそれぞれ渡り部82に相当する。また、第2固定子巻線32bにおいて、部分巻線X4-Y1の間、部分巻線Y4-Z3の間、部分巻線Z2-X1の間がそれぞれ渡り部72に相当する。
【0070】
図10は、各固定子巻線32a,32bにおける中性点接続の構成を示す図である。
図10(a)には、中性点接続用のバスバとして、第1固定子巻線32aの中性点N1を構成する中性点バスバ91と、第2固定子巻線32bの中性点N2を構成する中性点バスバ92とが示されている。これら各中性点バスバ91,92は、全体として円弧状をなしており、その長手方向の複数箇所(本実施形態では3箇所)に径方向に延びるアーム部93,94が設けられている。各アーム部93,94は、バスバ円弧部分から径方向外側に向けて延びるように設けられている。中性点バスバ91,92の各アーム部93,94の先端部は、各固定子巻線32a,32bにおいて各相の相巻線の間となる位置に接続されている。
【0071】
図10(b)は、中性点バスバ91,92を固定子30に組み付けた状態を示す平面図である。
図10(b)では、
図8(b)と同様に、第2導線C2にドットを付している。各中性点バスバ91,92は、各固定子巻線32a,32bのコイルエンド部分に軸方向に対向する位置に設けられている。
【0072】
中性点バスバ91における各アーム部93の先端部は、第2導線C2の渡り部82に対して接続されている。より具体的には、各アーム部93の先端部は、第1固定子巻線32aにおいて部分巻線U2-W3の間、部分巻線W2-V1の間、部分巻線V4-U3の間における各渡り部82に接続されている。また、中性点バスバ92における各アーム部94の先端部は、第1導線C1の渡り部72に対して接続されている。より具体的には、各アーム部94の先端部は、第2固定子巻線32bにおいて部分巻線X4-Y1の間、部分巻線Y4-Z3の間、部分巻線Z2-X1の間における各渡り部72に接続されている。
【0073】
各渡り部72,82では、例えば、導線材の絶縁被覆が部分的に除去され、その被覆除去部分(すなわち導体露出部分)に、中性点バスバ91,92の各アーム部93,94が接続されているとよい。
【0074】
中性点バスバ91,92はそれぞれ、各固定子巻線32a,32bにおいて、各相2並列の相巻線を1つの中性点で共通に接続するものとなっている。例えば、第1固定子巻線32aにおいて、
・中性点バスバ91が部分巻線U2-W3の間の渡り部82に接続されることで、U相巻線及びW相巻線の中性点接続が共通に行われ、
・中性点バスバ91が部分巻線W2-V1の間の渡り部82に接続されることで、W相巻線及びV相巻線の中性点接続が共通に行われ、
・中性点バスバ91が部分巻線V4-U3の間の渡り部82に接続されることで、V相巻線及びU相巻線の中性点接続が共通に行われている。
この場合、各相の相巻線が2並列となっている構成(
図6参照)では各相巻線の中性点側の端部が計6つとなるが、この構成において3つの接続点で中性点バスバ91の接続を完結させることができる。つまり、各相2並列の相巻線ごとに中性点バスバを接続する構成(6つの接続点で中性点バスバを接続する構成)と比べて、中性点バスバの削減や、バスバ接続点の削減が可能になっている。第2固定子巻線32bについても同様である。
【0075】
なお、
図10(a)では、各中性点バスバ91,92が略C字状に形成されているが、これを変更し、各中性点バスバ91,92が円環状に繋がっている構成としてもよい。各中性点バスバ91,92を円環状に形成することで、各相における抵抗差を無くすことができる。
【0076】
また、
図10(a)では、中性点バスバ91,92の各アーム部93,94が、円弧部分から径方向外側に延びる構成となっているが、これを変更することも可能である。中性点バスバ91,92の少なくともいずれかにおいて円弧部分の径を大きくし、それに合わせて、アーム部93,94を径方向内側に向けて延びるように形成してもよい。例えば、中性点バスバ91,92のうち一方のみにおいて円弧部分の径を大きくすることにより、中性点バスバ91,92を互いに離して配置でき、相互の短絡が好適に抑制される。
【0077】
周方向に6連続のティースでは、第1導線C1と第2導線C2とが巻回され、その導線ごとに2つずつの導線端部が軸方向に引き出されている。
図10(b)では、固定子30の軸方向一端の側に、第1導線C1の導線端部74,75と、第2導線C2の導線端部84,85とが設けられている。これら各導線端部には、電力入出力用のバスバが接続されているとよい。電力入出力用のバスバは、同相の部分巻線を互いに接続する導電部材であり、U相バスバ、V相バスバ、W相バスバ、X相バスバ、Y相バスバ、Z相バスバの6つのバスバを含むものであるとよい。この場合、
図10(b)の構成では、導線端部74,75,84,85が各ティースの外径側で、同一の仮想円上に並ぶ構成となっている。そのため、バスバとの接続が簡易になっている。
【0078】
なお、変形例として、導線材の巻回順序を、
図11に示すものとすることも可能である。
図11では、既述の
図9と同様に、第1導線C1を実線で示し、第2導線C2を破線で示しており、図中の丸数字は巻回順序である。
【0079】
図11では、導線材が、T1→T2→T4→T5の順でこれら各ティースに巻回される。これにより、部分巻線Y3,Y4,Z3,Z4がこの順序で連続的に巻回される。また、同じ導線材を引き続き用い、導線材が、T5→T6→T2→T3の順でこれら各ティースに巻回される。これにより、部分巻線V4,V3,U4,U3がこの順序で連続的に巻回される。この場合、導線巻回作業時には、1本の導線材を用いて
図11の巻回作業が行われ、周方向6つの各ティースT1~T6巻回作業が終わった後に、導線材の後切り部分(図のXC部分)を切断することで、第1導線C1及び第2導線C2に分離される。上記の巻回順序では、図の左右2つの各ティース群において、いずれも左から右の順(すなわち互いに同じ方向)で周方向隣のティースへ導線材が架け渡されるものとなっている。
【0080】
図11に示す構成では、周方向に隣り合う2つのティース群Gにおいて、周方向に1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で第1導線C1が巻回されるとともに、周方向に5番目、6番目、2番目、3番目となる順序で第2導線C2が巻回されている。
【0081】
ところで、回転電機では、トルクリプルに基づく騒音や振動が問題となっている。トルクリプルは、主に6次高調波成分又は12次高調波成分が主要成分となるため、これらの抑制することが望ましい。そこで、上記構成のモータ10を用い、制御装置50において以下のような制御が行われるとよい。
【0082】
上記構成のモータ10では、
・各ティース群の第1ティース(T1,T4,T7,T10,T13,T16)に、第2固定子巻線32bにおけるX相、Y相、Z相の各部分巻線(第1コイル体)が巻回され、
・各ティース群の第2ティース(T2,T5,T8,T10,T14,T17)に、第1,第2固定子巻線32a,32bにおけるいずれか1相ずつの部分巻線(第2コイル体)が巻回され、
・各ティース群の第3ティース(T3,T6,T9,T12,T15,T18)に、第1固定子巻線32aにおけるU相、V相、W相の各部分巻線(第3コイル体)が巻回されている。
【0083】
そしてかかる構成において、制御装置50が、各相の第1コイル体の起磁力に対する各相の第2コイル体の起磁力の各位相差と、各相の第2コイル体の起磁力に対する各相の第3コイル体の起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、又は、各相の第1コイル体の起磁力に対する各相の第3コイル体の起磁力の各位相差と、各相の第3コイル体の起磁力に対する各相の第2コイル体の起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、第2ティースに巻回される第1固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と当該第2ティースに巻回される第2固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との合算位相差を設定する。合算位相差は、例えば電気角で72~88度の範囲で設定されるとよい。若しくは、制御装置50は、第2ティースに巻回される第1固定子巻線32aの部分巻線に流れる電流と当該第2ティースに巻回される第2固定子巻線32bの部分巻線に流れる電流との合算位相差を設定する。なお、本制御の詳細は、本願出願人の出願による特許第7103299号公報に詳細に記載されている。
【0084】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0085】
固定子30の構成として、周方向に3連続のティースからなるティース群において、周方向に並ぶ第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線C1が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線C2が巻回されるようにした。そしてかかる構成において、第1導線C1及び第2導線C2がそれぞれ、周方向に隣り合う2つのティース群において連続して巻回されるようにした。この場合、周方向に隣り合う2つのティース群に跨がるようにして、2つの導線(第1導線C1及び第2導線C2)が6つのティースに対して巻回される。この構成では、3ティース2相巻線となるティース群を複数有する巻線構造において、周方向に並ぶ6ティース分の固定子巻線32を、第1導線及び第2導線によりまとめて巻回させることにより、導線巻回時における作業性を良好なものとすることができる。
【0086】
各ティース群では、周方向に3連続となる各ティースに2相の相巻線が巻回されており、かかる構成では、3の倍数である6つの連続ティースを1組として導線材を巻回することで、好適に巻回作業を行わせることができる。また、周方向に隣り合う2つのティース群を1組みとし、これを周方向に3組並べることにより、各固定子巻線32a,32bを容易に円環化できる。
【0087】
周方向に隣り合う2つのティース群において、周方向に並ぶ各ティースに対して、1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で第1導線C1が巻回されているとともに、6番目、5番目、3番目、2番目となる順序、又は5番目、6番目、2番目、3番目となる順序で第2導線C2が巻回されている構成とした。これにより、3ティース2相巻線となるティース群を複数有する固定子30において適正な巻線構造を実現できる。
【0088】
一部が重複する2つの導線(第1導線C1、第2導線C2)が各ティースにそれぞれ巻回される構成では、先巻き導線(第1導線C1)におけるティース間の渡り部71~73が、後巻き導線(第2導線C2)が巻回される際の支障となることが懸念される。この点、固定子コア31の軸方向端部に設けられた絶縁部材63を用い、第1導線C1の渡り部71~73を、ティースに対して径方向に離された位置に案内するようにした。これにより、先巻きである第1導線C1の渡り部71~73が、後巻きである第2導線C2の巻回時に支障となるといった不都合を抑制することができる。
【0089】
周方向に隣り合う2つのティース群において、一方のティース群から他方のティース群に繋がる渡り部72,82に、中性点バスバ91,92を接続する構成とした。つまり、周方向に隣り合う2つのティース群において、第1導線C1及び第2導線C2をそれぞれ、2相ずつの相巻線を連続して巻回するものとし、その2相の相巻線の間である中間部分に対して中性点バスバ91,92を接続する構成とした。この場合、例えば1ティース群ごとに2相の相巻線に対して中性点バスバをそれぞれ接続する構成と比べて、中性点接続の箇所を減らすことができる。これにより、3ティース2相巻線となる複数のティース群を有する巻線構造において、導線巻回の作業性を良好化しつつ、中性点接続についても簡易構成を実現することができる。
【0090】
各固定子巻線32a,32bにおいて、各ティース群では、各相の2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、周方向に隣り合う2つのティース群の間となる渡り部72,82が、それぞれ中性点バスバ91,92が接続されることで、1つの中性点の接続がなされているものとした。この構成では、3相の各固定子巻線32a,32bにおいて、各相2並列となる相巻線が共通1つの中性点バスバ91,92によって星形結線されている。これにより、中性点バスバ91,92に対する接続の数を減らすことができ、ひいては構成の簡素化を図ることができる。
【0091】
固定子30の製造方法を、上記のとおり第1巻回工程と、第2巻回工程と、切断工程とを有するものとした。この製造方法によれば、3ティース2相巻線となるティース群を複数備える固定子30において、周方向に隣り合う2つのティース群(すなわち6連続のティース)を1単位としつつ、導線材を効率良く行わせることができる。この場合、周方向に隣り合う2つのティース群に跨がるようにしつつ、2つの導線(第1導線C1及び第2導線C2)を6つのティースに対して好適に巻回させることができる。その結果、導線巻回時における作業性を良好なものとすることができる。
【0092】
以下に、上記第1実施形態の一部の構成を変更した他の実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0093】
(第2実施形態)
本実施形態では、各導線C1,C2の巻回構造と導線材の巻回手順とを変更している。ここでは、
図12を用い、ティースT1~T6に対する各導線C1,C2の巻回構造と巻回順序とを説明する。
図12では、第1導線C1を実線で示し、第2導線C2を破線で示しており、図中の丸数字は巻回順序である。また、
図12では、軸方向一端側を第1コイルエンドCE1、軸方向他端側を第2コイルエンドCE2としている。
【0094】
図12では、既述の
図9と同様に、導線材が、T1→T2→T4→T5の順でこれら各ティースに巻回されるとともに、同じ導線材を引き続き用い、導線材が、T6→T5→T3→T2の順でこれら各ティースに巻回される構成となっている。そして、周方向6つの各ティースT1~T6巻回作業が終わった後に、導線材の後切り部分(図のXC部分)を切断することで、第1導線C1及び第2導線C2に分離されるようになっている。ただし
図12では、
図9との対比において渡り部72,82の構成が異なっており、その詳細を以下に説明する。
【0095】
図12では、第1導線C1においてティースT2,T4に巻回される導線材の巻き数を、他のティースT1,T5に巻回される導線材の巻き数と比べて、0.5ターン分相違させている。これにより、ティースT1,T5(部分巻線Y3,Z4)では、巻き始め及び巻き終わりがいずれも第1コイルエンドCE1側になる一方、ティースT2,T4(部分巻線Y4,Z3)では、巻き始め及び巻き終わりが第1コイルエンドCE1側、第2コイルエンドCE2側にそれぞれ分けられている。
【0096】
そのため、第1導線C1では、第1コイルエンドCE1側に、周方向に隣り合う2つのティース群における巻き始め及び巻き終わりの導線端部74,75が設けられるとともに、第2コイルエンドCE2側に、ティースT2-T4間の渡り部72が設けられる構成となっている。また、第2導線C2では、第1コイルエンドCE1側に、周方向に隣り合う2つのティース群における巻き始め及び巻き終わりの導線端部84,85が設けられるとともに、第2コイルエンドCE2側に、ティースT3-T5間の渡り部82が設けられる構成となっている。
【0097】
また、
図12では、第1導線C1の渡り部71,73が第1コイルエンドCE1側に設けられ、渡り部72が第2コイルエンドCE2側に設けられている。また、第2導線C2の渡り部81,83が第1コイルエンドCE1側に設けられ、渡り部82が第2コイルエンドCE2側に設けられている。ただし、第1導線C1の渡り部71~73が全て第2コイルエンドCE2側に設けられるとともに、第2導線C2の渡り部81~83が全て第2コイルエンドCE2側に設けられている構成にすることも可能である。
【0098】
図12に示す巻回順序において、各ティースにおける導線材の巻き数は下記の通りであるとよい。
ティースT1では、部分巻線Y3の巻き数をTm[T]とし、
ティースT2では、部分巻線Y4の巻き数をTs-0.5[T]とし、
ティースT4では、部分巻線Z3の巻き数をTm-0.5[T]とし、
ティースT5では、部分巻線Z4の巻き数をTs[T]とし、
ティースT6では、部分巻線V3の巻き数をTm[T]とし、
ティースT5では、部分巻線V4の巻き数をTs-0.5[T]とし、
ティースT3では、部分巻線U3の巻き数をTm-0.5[T]とし、
ティースT2では、部分巻線U4の巻き数をTs[T]としている。
【0099】
図12の巻線構造によれば、固定子30の第1コイルエンドCE1側に、第1導線C1及び第2導線C2の巻き始め端部と巻き終わり端部とが設けられるとともに、第2コイルエンドCE2側に、各導線C1,C2の渡り部72,82が設けられている。この場合、各導線C1,C2の巻き始め端部及び巻き終わり端部と渡り部72,82とが軸方向両側に分散配置されることにより、導線どうしの干渉が生じにくくなり、導線の巻回作業が容易となる。
【0100】
なお、第2実施形態の変形例として、第1導線C1及び第2導線C2の巻回順序を、
図13に示すものとすることも可能である。
図13では、導線材が、T1→T2→T4→T5の順でこれら各ティースに巻回されるとともに、同じ導線材を引き続き用い、導線材が、T5→T6→T2→T3の順でこれら各ティースに巻回される構成となっている。そして、周方向6つの各ティースT1~T6巻回作業が終わった後に、導線材の後切り部分(図のXC部分)を切断することで、第1導線C1及び第2導線C2に分離されるようになっている。
【0101】
また、
図13では、
図12と同様に、第1導線C1においてティースT2,T4に巻回される導線材の巻き数を、他のティースT1,T5に巻回される導線材の巻き数と比べて、0.5ターン分相違させている。これにより、第1導線C1では、第1コイルエンドCE1側に、周方向に隣り合う2つのティース群における巻き始め及び巻き終わりの導線端部74,75が設けられるとともに、第2コイルエンドCE2側に、ティースT2-T4間の渡り部72が設けられる構成となっている。また、第2導線C2では、第1コイルエンドCE1側に、周方向に隣り合う2つのティース群における巻き始め及び巻き終わりの導線端部84,85が設けられるとともに、第2コイルエンドCE2側に、ティースT3-T5間の渡り部82が設けられる構成となっている。
【0102】
(第3の実施形態)
本実施形態では、導線巻回作業時における導線材の巻回手順を変更しており、固定子コア31の全ティースT1~T18に対して1本の導線材を連続的に用いて巻回作業を行うこととしている。
【0103】
ここでは、
図14を用い、各ティースT1~T18に対する各導線C1,C2の巻回構造と導線材の巻回手順とを説明する。
図14では、第1導線C1を実線で示し、第2導線C2を破線で示しており、図中の丸数字は巻回順序である。
【0104】
図14では、周方向一方の側に向けて、導線材がティースT1→T2→T4→T5→T7→T8→T10→T11→T13→T14→T16→T17の順に巻回されるとともに、同じ導線材を用い、周方向他方の側に向けて、導線材がティースT18→T17→T15→T14→T12→T11→T9→T8→T6→T5→T3→T2の順に導線材が巻回される。そして、全ティースT1~T18に対する導線巻回後に、導線材の後切り部分(図のXC1~XC5の部分)を切断することで、周方向に隣り合う2つのティース群ごとに、第1導線C1及び第2導線C2の分離が行われる。
【0105】
その後、第1固定子巻線32aにおいて、部分巻線V4-U3の間、部分巻線U2-W3の間、部分巻線W2-V1の間における各渡り部82に対して、中性点バスバ91が接続される。また、第2固定子巻線32bにおいて、部分巻線Y4-Z3の間、部分巻線X4-Y1の間、部分巻線Z2-X1の間における各渡り部72に対して、中性点バスバ92が接続される。
【0106】
要するに、第1巻回工程では、周方向に全てのティース群において、第1ティース及び第2ティースに導線材を連続的に巻回し、第2巻回工程では、第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に全てのティース群において、第2ティース及び第3ティースに導線材を連続的に巻回する。その後、切断工程では、第1巻回工程及び第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つずつのティース群において、第1導線C1及び第2導線C2がそれぞれ2つずつのティース群に連続して巻回されている状態とする。そして、中性点接続工程では、各固定子巻線32a,32bにおいて、周方向に隣り合う2つずつの2ティース群どうしを接続する各渡り部72,82に対して中性点バスバ91,92を接続する。
【0107】
ちなみに、全ティースT1~T18について周方向に6つずつの単位ごと(周方向に隣り合う2つのティース群ごと)に見れば、それら各単位ではいずれも、周方向に1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で第1導線C1が巻回されるとともに、周方向に6番目、5番目、3番目、2番目となる順序で第2導線C2が巻回される構成となっている。この場合、周方向の6連続ティースを1組として導線材が巻回される場合(
図9の場合)と同様の巻線仕様が実現される。
【0108】
図15は、本実施形態における固定子巻線32a,32bの電気的接続の構成を示す図である。なお、図中の丸数字は、
図14と同様、巻回順序である。
図15に示すように、各固定子巻線32a,32bでは、1つの導線材を用いて全ての部分巻線が連続的に巻回されている。本実施形態では、第1固定子巻線32aについて全ての部分巻線が先に巻回され、それに引き続いて、第2固定子巻線32bについて全ての部分巻線が巻回されるようになっている。
【0109】
上記構成の製造方法によれば、周方向の全てのティースT1~T18について、1本の連続線である導線材を用いつつ、3ティース2相巻線となるティース群に対する巻回を適正に行わせることができる。
【0110】
なお、第2実施形態で説明した巻線構造を用いる固定子30において、全ティースT1~T18に対して1本の導線材を連続的に巻回する構成とすることも可能である。
【0111】
固定子コア31の全ティースT1~T18に対して1本の導線材を連続的に巻回する場合には、上記のとおり、第1巻回工程では、周方向に全てのティース群において、周方向一方の側(例えば
図14の右側)に向けて導線材を連続的に巻回し、かつ第2巻回工程では、同じく周方向に全てのティース群において、周方向他方の側(例えば
図14の左側)に向けて導線材を連続的に巻回するとよい。
【0112】
またこれに代えて、第1巻回工程では、周方向に全てのティース群において、周方向一方の側(例えば
図14の右側)に向けて導線材を連続的に巻回し、かつ第2巻回工程でも同様に、同じく周方向に全てのティース群において、周方向一方の側(例えば
図14の右側)に向けて導線材を連続的に巻回するようにしてもよい。
【0113】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0114】
・各固定子巻線32a,32bにおける中性点接続の構成を以下のように変更してもよい。
図16(a),(b)には、中性点バスバ91,92の変形例を示す。また、
図17(a),(b)には、各固定子巻線32a,32bの電気的接続の構成を示す。
【0115】
図17(a),(b)に示すように、第1固定子巻線32aでは、各相2並列の相巻線において2系統の星形結線がなされている。この場合、部分巻線U3,U4の直列接続体の一端と、部分巻線V3,V4の直列接続体の一端と、部分巻線W3,W4の直列接続体の一端とが中性点N1aにて互いに接続されるとともに、部分巻線U1,U2の直列接続体の一端と、部分巻線V1,V2の直列接続体の一端と、部分巻線W1,W2の直列接続体の一端とが中性点N1bにて互いに接続されている。つまり、第1固定子巻線32aは、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線の一方どうし及び他方どうしにより2つの中性点N1a,N1bでの接続がなされている。
【0116】
第2固定子巻線32bでも同様に、各相2並列の相巻線において2系統の星形結線がなされている。この場合、部分巻線X3,X4の直列接続体の一端と、部分巻線Y3,Y4の直列接続体の一端と、部分巻線Z3,Z4の直列接続体の一端とが中性点N2aにて互いに接続されるとともに、部分巻線X1,X2の直列接続体の一端と、部分巻線Y1,Y2の直列接続体の一端と、部分巻線Z1,Z2の直列接続体の一端とが中性点N2bにて互いに接続されている。つまり、第2固定子巻線32b、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線の一方どうし及び他方どうしにより2つの中性点N2a,N2bでの接続がなされている。
【0117】
本構成では、第1固定子巻線32aの中性点バスバ91として、周方向に分割された2つの中性点バスバ91A,91Bを有している。また、第2固定子巻線32bの中性点バスバ92として、周方向に分割された2つの中性点バスバ92A,92Bを有している。
【0118】
第1固定子巻線32aにおいて、中性点バスバ91Aは、部分巻線U3,V4,W3の間の中性点N1aを構成し、中性点バスバ91Bは、部分巻線U2,V1,W2の間の中性点N1bを構成する(
図17(a)参照)。
図16(a),(b)では、中性点バスバ91Aにより、ティースT3-T5間(部分巻線U3-V4間)の渡り部82と、ティースT9に巻回された部分巻線W3の導線端部とが接続されている。また、中性点バスバ91Bにより、ティースT15-T17間(部分巻線V1-W2間)の渡り部82と、ティースT11に巻回された部分巻線U2の導線端部とが接続されている。なお、本実施形態では、ティースT9-T11間の渡り部82は切断されており、その切断された導線端部がそれぞれ個別に中性点バスバ91A,91Bに接続されている。
【0119】
要するに、第1固定子巻線32aにおいて周方向に隣り合う2つのティース群の組み合わせのうち、一部の組み合わせでは渡り部82による接続部分が分断されている。そして、周方向に隣り合う2つのティース群の間となる渡り部82と、周方向に隣り合う2つのティース群の間において渡り部82が分断されている導線端部とからなる2組の中性点接続箇所に、それぞれ中性点バスバ91A,91Bが接続されることで、2つの中性点N1a,N1bの接続がそれぞれなされている。
【0120】
また、第2固定子巻線32bにおいて、中性点バスバ92Aは、部分巻線X4,Y4,Z3の間の中性点N2aを構成し、中性点バスバ92Bは、部分巻線X1,Y1,Z2の間の中性点N2bを構成する(
図17(b)参照)。
図16(a),(b)では、中性点バスバ92Aにより、ティースT2-T4間(部分巻線Y4-Z3間)の渡り部72と、ティースT8に巻回された部分巻線X4の導線端部とが接続されている。また、中性点バスバ92Bにより、ティースT14-T16間(部分巻線Z2-X1間)の渡り部72と、ティースT10に巻回された部分巻線Y1の導線端部とが接続されている。なお、本実施形態では、ティースT8-T10間の渡り部72は切断されており、その切断された導線端部がそれぞれ個別に中性点バスバ92A,92Bに接続されている。
【0121】
要するに、第2固定子巻線32bにおいて周方向に隣り合う2つのティース群の組み合わせのうち、一部の組み合わせでは渡り部72による接続部分が分断されている。そして、周方向に隣り合う2つのティース群の間となる渡り部72と、周方向に隣り合う2つのティース群の間において渡り部72が分断されている導線端部とからなる2組の中性点接続箇所に、それぞれ中性点バスバ92A,92Bが接続されることで、2つの中性点N2a,N2bの接続がそれぞれなされている。
【0122】
上記構成では、3相の各固定子巻線32a,32bにおいて、各相2並列となる相巻線が、2つの中性点バスバ91A,91B,92A,92Bによってそれぞれに星形結線されている。これにより、周方向において各中性点バスバの長さを短縮することが可能となっている。
【0123】
・
図18には、第1固定子巻線32aの中性点N1a,N1bと、第2固定子巻線32bの中性点N2a,N2bとの構成に関する別例を示す。
図18に示すように、第1固定子巻線32aでは、ティースT3-T5間(部分巻線U3-V4間)の渡り部82と、ティースT9に巻回された部分巻線W3の導線端部とが中性点接続線101Aにて接続されることにより、中性点N1aの結線がなされている。また、ティースT15-T17間(部分巻線V1-W2間)の渡り部82と、ティースT11に巻回された部分巻線U2の導線端部とが中性点接続線101Bにて接続されることにより、中性点N1bの結線がなされている。
【0124】
一方、第2固定子巻線32bでは、ティースT2-T4間(部分巻線Y4-Z3間)の渡り部72と、ティースT8に巻回された部分巻線X4の導線端部とが中性点接続線102Aにて接続されることにより、中性点N2aの結線がなされている。また、ティースT14-T16間(部分巻線Z2-X1間)の渡り部72と、ティースT10に巻回された部分巻線Y1の導線端部とが中性点接続線102Bにて接続されることにより、中性点N2bの結線がなされている。上記の中性点接続線101,102は、バスバでなく丸線等の被覆導線であるとよい。中性点接続線101,102が中性点接続部材に相当する。
【0125】
上記構成では、固定子巻線32a,32bごとに2つの中性点を設ける巻線構造において、3相の導線端部のうち2相を渡り部72,82で接続するとともに、その渡り部72,82と残り1相の導線端部とを中性点接続線により接続するようにした。この場合、バスバを用いなくても好適に中性点接続を行わせることができる。
【0126】
・固定子コア31において、各分割コア61は複数個ずつのティース34を有するものであってもよい。例えば、分割コア61は3つのティース34を有するものであるとよい。また、固定子コア31は、分割コア構造でない構成、すなわち周方向に分割不可な一体の円環状をなす構成であってもよい。
【0127】
・固定子コア31のティース数は18以外であってもよい。ただしこの場合、ティース数は6×n個であるとよい。また、固定子巻線32は、{(6×n)/3}個のティース群を有するものであるとよい。モータ10では、回転子40の磁極数を(18±4)×m、スロット数を18×m(mは整数)とするといよい。
【0128】
・回転電機は、インナロータ式の回転電機に代えて、アウタロータ式の回転電機であってもよい。
【0129】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
周方向に所定間隔で設けられた複数のティース(34)を有する固定子コア(31)と、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線(32)と、を含む固定子(30)であって、
前記各相巻線は、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有しており、
前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線(C1)が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線(C2)が巻回されることで前記固定子巻線が構成されており、
前記第1導線及び前記第2導線はそれぞれ、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において連続して巻回されている、固定子。
[構成2]
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記各ティースを周方向に順に1番目~6番目とし、前記第1導線を先巻きの導線、前記第2導線を後巻きの導線とし、
1番目、2番目、4番目、5番目となる順序で前記第1導線が巻回されているとともに、
6番目、5番目、3番目、2番目となる順序、又は5番目、6番目、2番目、3番目となる順序で前記第2導線が巻回されている、構成1に記載の固定子。
[構成3]
軸方向一端側を第1コイルエンド、軸方向他端側を第2コイルエンドとし、
前記第1導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部(72)が設けられており、
前記第2導線では、前記第1コイルエンド側に、周方向に隣り合う2つの前記ティース群における巻き始め及び巻き終わりの各端部が設けられるとともに、前記第2コイルエンド側に、当該各ティース群の間となる渡り部(82)が設けられている、構成1又は2に記載の固定子。
[構成4]
前記第1導線及び前記第2導線のうち第1導線が先巻きの導線、第2導線が後巻きの導線であり、
前記固定子コアの軸方向端部には、前記ティースと前記部分巻線とを絶縁する絶縁部材(63,64)が設けられており、
前記第1導線において前記各ティースの間となる渡り部(71~73)が、前記絶縁部材により、前記ティースに対して径方向に離された位置に案内されている、構成1~3のいずれか1つに記載の固定子。
[構成5]
前記固定子巻線は、各相の相巻線が中性点で接続されるものであり、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、一方のティース群から他方のティース群に繋がる渡り部(72,82)に、中性点接続部材(91,92,101,102)が接続されている、構成1~4のいずれか1つに記載の固定子。
[構成6]
前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線が1つの中性点で接続されており、
前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記1つの中性点の接続がなされている、構成5に記載の固定子。
[構成7]
前記固定子巻線は、相ごとに2並列となる相巻線を有し、各相2並列の相巻線の一方どうし及び他方どうしにより2つの中性点での接続がなされており、
前記各ティース群では、各相2並列の相巻線が、それぞれ互いに別となる異相の相巻線に接続されており、
前記固定子巻線において周方向に隣り合う2つの前記ティース群の組み合わせのうち、一部の組み合わせでは前記渡り部による接続部分が分断されており、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間となる前記渡り部と、周方向に隣り合う2つの前記ティース群の間において前記渡り部が分断されている導線端部とからなる2組の中性点接続箇所に、それぞれ前記中性点接続部材が接続されることで、前記2つの中性点の接続がそれぞれなされている、構成5に記載の固定子。
[構成8]
周方向に所定間隔で設けられた複数のティース(34)を有する固定子コア(31)と、相ごとに設けられた複数の相巻線を有する固定子巻線(32)と、を含み、前記各相巻線が、前記ティースにそれぞれ集中巻により巻回される複数の部分巻線を有する固定子(30)の製造方法であって、
前記固定子巻線は、前記複数のティースにおいて周方向に連続する3つのティースを1つのティース群とし、そのティース群における第1ティース、第2ティース及び第3ティースのうち、第1ティース及び第2ティースに第1導線(C1)が巻回されるとともに、第2ティース及び第3ティースに第2導線(C2)が巻回されることで構成されるものであり、
周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回する第1巻回工程と、
その後、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、それら各ティース群の前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回する第2巻回工程と、
前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つのティース群に連続して巻回されている状態とする切断工程と、
を有する、固定子の製造方法。
[構成9]
前記固定子コアは、(6×n)個の前記ティースを有し、
前記固定子巻線は、{(6×n)/3}個の前記ティース群を有し、
前記第1巻回工程では、周方向に全ての前記ティース群において、前記第1ティース及び前記第2ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記第2巻回工程では、前記第1巻回工程と同じ導線材を続けて用い、周方向に全ての前記ティース群において、前記第2ティース及び前記第3ティースに導線材を連続的に巻回し、
前記切断工程では、前記第1巻回工程及び前記第2巻回工程で巻回した導線材の中間部分を切断し、周方向に隣り合う2つずつの前記ティース群において、前記第1導線及び前記第2導線がそれぞれ当該2つずつのティース群に連続して巻回されている状態とする、構成8に記載の固定子の製造方法。
【符号の説明】
【0130】
30…固定子、31…固定子コア、32…固定子巻線、34…ティース、C1…第1導線、C2…第2導線。