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  • 特開-車両用ドア構造 図1
  • 特開-車両用ドア構造 図2
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  • 特開-車両用ドア構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082183
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両用ドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20240612BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20240612BHJP
【FI】
B60J5/04 T
B60J5/04 M
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195954
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】津島 邦良
(72)【発明者】
【氏名】山下 力
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA09
3D201BA01
3D201CA23
(57)【要約】
【課題】車両用ドア1のドアサッシュ部40において錆汁の外観面への流出を防止することができる。
【解決手段】ドアサッシュ部40と、ウェザーストリップ部60を保持するサッシュリテーナ部50と、が接触して成す微小空間ISには、サッシュリテーナ部50の車両下方側周囲に、ドアサッシュ部40とサッシュリテーナ部50との間を塞ぐように、車幅方向内側から車両下方部を通り、車幅方向外側まで隙間なく連続してペイントシーラPSが塗布され、ペイントシーラPSの塗布上端部よりも車両下方側において、車幅方向両側および車両下方側をペイントシーラPSに囲まれ、ドアサッシュ部40とサッシュリテーナ部50とが接触して成す微小空間ISのドアサッシュ部40側に水抜き孔WHが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの車両上方部にドアウインドウ部を囲んで設けられるドアサッシュ部と、
車両上下方向に延在し前記ドアサッシュ部に面接触して固定され、前記車両用ドアの車幅方向内側への雨水等の浸入を防ぐウェザーストリップ部を保持するサッシュリテーナ部と、
を備え、
前記サッシュリテーナ部の車両下方側周囲には、前記サッシュリテーナ部と前記ドアサッシュ部との間を塞ぐように、車幅方向内側から車両下方部を通り、車幅方向外側まで隙間なく連続してペイントシーラが塗布され、
前記ペイントシーラの塗布上端部よりも車両下方側において、車幅方向両側および車両下方側を前記ペイントシーラに囲まれ、前記ドアサッシュ部と前記サッシュリテーナ部とが面接触している前記ドアサッシュ部側に水抜き孔が設けられていることを特徴とする車両用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアは、ドアアウタパネルとドアインナパネルとを合わせたドア本体の車両上方部に、ドアガラスを囲むサッシュを取り付けたサッシュ付ドアが広く用いられている。この種のドアでは、ドアが閉じられた際に外部からの雨水等の浸入を防ぐために、サッシュと車両本体との間に、ウェザーストリップ等が装着されている。そして、ウェザーストリップが、サッシュと車両本体との間に密着することにより、外部からの水滴等の浸入等を防いでいる。
また、サッシュは、サッシュアウタとサッシュインナとが接合されて形成され、ドアガラスを摺動案内するガラスランを取り付けるガラスラン取付用チャンネルあるいは、ウェザーストリップを取り付けるウェザーストリップ取付用チャンネル(リテーナ)等が一体形成あるいは接合されている。
【0003】
ところで、サッシュアウタとサッシュインナとが接合されていることにより、サッシュアウタとサッシュインナとに囲まれた内部に形成された中空部に、気温変化等により発生した結露あるいは接続部等から浸入した水滴等が滞留する場合がある。そのため、サッシュ内部に錆が発生すると共に、サッシュ内から錆を含んだ水分浸出して車体等の外観面を汚す虞がある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1においては、サッシュ内部に結露或いは浸入した水等が滞留することなく迅速に排出され、サッシュ内の発錆を抑制するように、前部サッシュと、サッシュアウタパネルとサッシュインナパネルが重合する後部サッシュと、を有し、サッシュアウタとサッシュインナとによって形成される中空断面部S内の下部が連通路を介してドア本体内に連通することによって水分を排出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-108664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、サッシュアウタとサッシュインナあるいはウェザーストリップ取付用チャンネル(リテーナ)等の板間に浸入した水分等については排出路が確保されておらず、車両下方部の接合下端部が開放されている場合には、いわゆる錆汁が浸出して車体等の外観面を汚す虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ドアサッシュ部において錆汁の外観面への流出を防止する車両用ドア構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両用ドアの車両上方部にドアウインドウ部を囲んで設けられるドアサッシュ部と、車両上下方向に延在し前記ドアサッシュ部に面接触して固定され、前記車両用ドアの車幅方向内側への雨水等の浸入を防ぐウェザーストリップ部を保持するサッシュリテーナ部と、を備え、前記サッシュリテーナ部の車両下方側周囲には、前記サッシュリテーナ部と前記ドアサッシュ部との間を塞ぐように、車幅方向内側から車両下方部を通り、車幅方向外側まで隙間なく連続してペイントシーラが塗布され、前記ペイントシーラの塗布上端部よりも車両下方側において、車幅方向両側および車両下方側を前記ペイントシーラに囲まれ、前記ドアサッシュ部と前記サッシュリテーナ部とが面接触している前記ドアサッシュ部側に水抜き孔が設けられている車両用ドア構造を提案している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、ドアサッシュ部において錆汁の外観面への流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアを車幅方向外側から見た概要構成図である。
図2図1に示されたRT部を拡大し車両後方車幅方向内側から見た斜視図である。
図3図2に示されたA-A線での断面図である。
図4図2に示されたRT部に水滴の流れを示した車両後方車幅方向内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図4を用いて、本実施形態に係る車両用ドア1について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両用ドア1が装着される車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両Vの正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0012】
<実施形態>
図1図4を用いて、車両用ドア1の構成について説明する。なお、車両Vの正面視において右方側に装着される車両用ドア1を例示して説明する。
【0013】
<車両用ドア1の構成>
図1に示すように、車両用ドア1は、アウタパネル部10と、インナパネル部20と、ドアウインドウ部30と、ドアサッシュ部40と、サッシュリテーナ部50と、ウェザーストリップ部60と、ガラスランウェザーストリップ部70を含んで構成されている。
【0014】
(アウタパネル部10、インナパネル部20について)
アウタパネル部10は、車両用ドア1の外板を構成する板状の部材である。また、インナパネル部20は、車両用ドア1の内板を構成する板状の部材であり、アウタパネル部10よりも車幅方向内側に配置される。アウタパネル部10およびインナパネル部20は、金属板等をプレスして作成されている。
アウタパネル部10とインナパネル部20とは、相互に組み合わされ、車両前後上下方向端部それぞれにおいて、溶接等により結合されている。
また、アウタパネル部10およびインナパネル部20には、内部に浸入した水滴等を外部に排出する図示しない排水溝あるいは排水孔を備えている。
【0015】
(ドアウインドウ部30について)
ドアウインドウ部30は、車両用ドア1において、昇降可能に装着された板状の強化ガラスである。ドアウインドウ部30が上昇した状態においては、後述するドアサッシュ部40を閉塞する。ドアウインドウ部30は、車両Vの側面視において、その前端縁部および後端縁部がドアサッシュ部40の傾斜に合わせて形成された略台形を成している。
【0016】
(ドアサッシュ部40について)
ドアサッシュ部40は、車両用ドア1の車両上方部にドアウインドウ部30を囲んで設けられている。ドアサッシュ部40は、アウタパネル部10およびインナパネル部20と溶接等により結合している。
ドアサッシュ部40は、アウタドアサッシュ部41と、インナドアサッシュ部42と、を含んで構成されている。アウタドアサッシュ部41およびインナドアサッシュ部42は、例えば、金属板等の長尺の板材を段階的に曲折して所定の断面形状とするロール成型により加工された部材である。そして、ドアサッシュ部40は、アウタドアサッシュ部41とインナドアサッシュ部42とを、ヘミング加工等により接合させることによって構成されている。ドアサッシュ部40には、図示しないガラスガイド、ピラー、意匠形状、溝、補強リブ、クリップ嵌合孔等が形成されている。
また、ドアサッシュ部40は、後方ドアサッシュ部43を形成している。図2に示すように、後方ドアサッシュ部43は、ドアサッシュ部40の車両後方側を車両上下方向に延在して成り、ドアサッシュ部40の車両後部下方側においてアウタパネル部10およびインナパネル部20の車両後部上方側と接合している。
また、ドアサッシュ部40には、図3に示すように、アウタドアサッシュ部41の車幅方向外側面としてのアウタサッシュ外部面OO、およびインナドアサッシュ部42の車幅方向内側面としてのインナサッシュ外部面IOが、人の目に触れる外観面として形成される。また、ドアサッシュ部40には、アウタドアサッシュ部41とインナドアサッシュ部42とが接合して囲われて形成された内部面として、アウタドアサッシュ部41のアウタサッシュ内部面OIおよびインナドアサッシュ部42のインナサッシュ内部面IIが、目に触れない面として形成される。
また、ドアサッシュ部40の内部には、アウタドアサッシュ部41とインナドアサッシュ部42とに囲まれた空間、あるいは、折り曲げ加工等によりインナドアサッシュ部42に囲まれた空間、によって形成された内部空間RSが成されている。内部空間RSは、アウタパネル部10およびインナパネル部20に囲まれて成すドアパネル内部を通して、アウタパネル部10およびインナパネル部20に備えられた排水溝あるいは排水孔から内部空間RSに浸入した水滴TDを外部に排出する。
【0017】
(サッシュリテーナ部50について)
サッシュリテーナ部50は、図2に示すように、車両上下方向に延在しインナドアサッシュ部42aに面に接触して固定され、図2においては図示しない後述するウェザーストリップ部60を保持する。具体的には、サッシュリテーナ部50は、後方ドアサッシュ部43に構成されたインナドアサッシュ部42の車両後方側を向いた面であるインナドアサッシュ部42aに、溶接等により結合されている。サッシュリテーナ部50は、金属板等を加工して形成され、車幅方向両側の辺部には、サッシュリテーナ部50の車両上方端から車両下方端にかけて、ウェザーストリップ部60を保持するための折り返しが設けられている。サッシュリテーナ部50の車両下方端部は、車幅方向外側から、車幅方向内側上方に向かう傾斜が設けられている。
図3に示すように、サッシュリテーナ部50とインナドアサッシュ部42aとの間には、微小な間隔を有する微小空間ISが形成されている。具体的には、微小空間ISは、インナドアサッシュ部42aのインナサッシュ外部面IOとサッシュリテーナ部50とを接触して結合させた際に、それぞれの部材表面が不均一であるために形成される意図しない隙間である。微小空間ISは、人の目に触れる外観面であるインナサッシュ外部面IO面に形成されている。
また、サッシュリテーナ部50の車両下方端部には、水抜き部WS(図2の2点鎖線内に示す)が構成されている。なお、水抜き部WSの構成については後述する。
【0018】
(ウェザーストリップ部60について)
ウェザーストリップ部60は、車両用ドア1の車幅方向内側への雨水等の浸入を防ぐために、インナパネル部20からドアサッシュ部40にかけて、車両用ドア1の車幅方向内側の周囲を囲むように配設されている。ウェザーストリップ部60は、軟質樹脂あるいはゴム材等により成型され、サッシュリテーナ部50においては、サッシュリテーナ部50に設けられた折り返しに嵌合させて固定される。また、ウェザーストリップ部60は、インナドアサッシュ部42およびインナパネル部20においては、図示しないクリップ等により固定されている。
【0019】
(ガラスランウェザーストリップ部70について)
ガラスランウェザーストリップ部70は、軟質樹脂あるいはゴム材等により成型され、ドアウインドウ部30の周囲を囲むように配設されている。ガラスランウェザーストリップ部70は、ドアウインドウ部30を両側から挟み込むようなコの字形状の断面を有している。ガラスランウェザーストリップ部70は、インナドアサッシュ部42に、図示しないクリップ等により固定されている。
また、ガラスランウェザーストリップ部70において、ドアウインドウ部30と接しない外周側には、インナドアサッシュ部42とガラスランウェザーストリップ部70との間に、内部空間RSgが形成されている。
【0020】
<水抜き部WSの構成>
水抜き部WSの構成について、図2および図3を用いて説明する。
【0021】
水抜き部WSは、図2に示すように、ドアサッシュ部40と、サッシュリテーナ部50と、ペイントシーラPSと、水抜き孔WHと、を含んで構成されている。具体的には、水抜き部WSは、インナドアサッシュ部42aと、インナドアサッシュ部42aの車両後方側に溶接等にて結合されたサッシュリテーナ部50と、インナドアサッシュ部42aとサッシュリテーナ部50との隙間を塞ぐペイントシーラPSと、インナドアサッシュ部42aとサッシュリテーナ部50とが面するインナドアサッシュ部42a側に設けられた水抜き孔WHおよびWHgと、を含んで構成されている。
【0022】
(ペイントシーラPSについて)
ペイントシーラPSは、鉄板のつなぎ目や小さな隙間等に塗布あるいは補填する樹脂等である。
ペイントシーラPSは、サッシュリテーナ部50の車両下方側周囲に、サッシュリテーナ部50とインナドアサッシュ部42aとの間を塞ぐように、車幅方向内側から車両下方部を通り、車幅方向外側まで隙間なく連続して塗布されている。具体的には、図2の太実線および太鎖線で示すように、ペイントシーラPSは、サッシュリテーナ部50の車両下方部端において、水抜き孔WHよりも車両上方部の車幅方向外側の辺を下方に向かい、車両下方部端を隙間なく連続して通り、さらに、車幅方向内側の辺を上方に向かい、インナドアサッシュ部42aに設けられた水抜き孔WHよりも車両上方部まで塗布される。
また、図3に示すように、ペイントシーラPSは、インナドアサッシュ部42aのインナサッシュ外部面IOとサッシュリテーナ部50との境界部に、隙間を埋めるように塗布される。
【0023】
(水抜き孔WHおよびWHgについて)
水抜き孔WHは、内部空間RSのインナドアサッシュ部42aの車両下方部に設けられた、例えば、丸孔であり、インナドアサッシュ部42aを車両後方側から車両前方側に向かって貫通している。換言すると、水抜き孔WHは、インナサッシュ内部面IIにより成される内部空間RSに向かって貫通している。
水抜き孔WHgは、水抜き孔WHをさらにインナドアサッシュ部42まで貫通させた形状で形成されている。水抜き孔WHgの車両前方側には、ガラスランウェザーストリップ部70が配設されている。
水抜き孔WHと水抜き孔WHgとは、車両前方部からの正面視において重複した状態で、インナドアサッシュ部42aとインナドアサッシュ部42とを貫通し、ガラスランウェザーストリップ部70に設けられた内部空間RSgに向かって貫通して形成されている。
また、水抜き孔WHの周囲には、車幅方向両側および車両下方側にペイントシーラPSが塗布され、水抜き孔WHは、ペイントシーラPSの塗布上端部よりも車両下方側に設けられている。
【0024】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車両用ドア1のドアサッシュ部40における作用について図3および図4を用いて説明する。
【0025】
ドアサッシュ部40には、雨水、洗車水、温度変化による結露等により、水滴等が発生する。
図3に示すように、水滴TDは、アウタドアサッシュ部41においては、アウタサッシュ外部面OOおよび車幅方向内側のアウタサッシュ内部面OIに浸入する。インナドアサッシュ部42においては、インナサッシュ外部面IOおよびインナサッシュ内部面IIに浸入する。インナドアサッシュ部42が形成する内部空間RSと、インナドアサッシュ部42aとサッシュリテーナ部50との接触面に成される微小空間ISと、には、毛細管現象等により水滴TDが浸入する。
【0026】
内部空間RSに水滴TDが浸入した場合には、水滴TDは、インナドアサッシュ部42に囲われたドアサッシュ部40の内部を車両下方側に向かい、アウタパネル部10とインナパネル部20に囲われた車両用ドア1の内部に移動する。そして、アウタパネル部10およびインナパネル部20に備えられた排水溝あるいは排水孔によって、水滴TDは、車両Vの外部へ排出される。
また、内部空間RSは、インナサッシュ内部面IIが接触している面であり、人の目に触れない面である。そのため、内部空間RSの水滴TDが、錆を含む錆汁であっても、人の目に触れない内部を移動して車両Vの外部に排出されることによって、水滴TDは、外観面を汚さないで外部へ排出される。
【0027】
一方で、微小空間ISに水滴TDが浸入した場合には、図4に示すように、水滴TDは、インナドアサッシュ部42aとサッシュリテーナ部50との間を、矢印BBで示すように、車両下方側に向かい、微小空間ISの下方部に設けられた水抜き部WSに移動する。水抜き部WSは、周囲をペイントシーラPSに囲まれており、水滴TDは、インナドアサッシュ部42aとサッシュリテーナ部50との間の水抜き部WSに貯留される。
貯留された水滴TDは、矢印BCで示すように、ペイントシーラPSの塗布上端部よりも車両下方側のインナドアサッシュ部42aに設けられた水抜き孔WHから、インナドアサッシュ部42a内部の内部空間RSに向けて排水される。内部空間RSは、インナサッシュ内部面IIに囲まれた空間であり、人の目に触れない面である。したがって、内部空間RSの水滴TDが、錆を含む錆汁であっても、人の目に触れない内部を移動して車両Vの外部に排出されることによって、水滴TDは、外観面を汚さないで外部へ排出される。
また、内部空間RSから水滴TDがあふれた場合には、水滴TDは、水抜き孔WHからさらに内部空間RSgに向けて貫通した水抜き孔WHgを通り、ガラスランウェザーストリップ部70に設けられた内部空間RSgに排水される。そして、水滴TDは、内部空間RSgを介してアウタパネル部10およびインナパネル部20に設けられた排水溝あるいは排水孔から車両Vの外部に排出される。
【0028】
以上、本実施形態に係る車両用ドア1は、車両用ドア1の車両上方部にドアウインドウ部30を囲んで設けられるドアサッシュ部40と、車両上下方向に延在しドアサッシュ部40に面接触して固定され、車両用ドア1の車幅方向内側への雨水等の浸入を防ぐウェザーストリップ部60を保持するサッシュリテーナ部50と、を備え、サッシュリテーナ部50の車両下方側周囲には、サッシュリテーナ部50とドアサッシュ部40との間を塞ぐように、車幅方向内側から車両下方部を通り、車幅方向外側まで隙間なく連続してペイントシーラPSが塗布され、ペイントシーラPSの塗布上端部よりも車両下方側において、車幅方向両側および車両下方側をペイントシーラPSに囲まれ、ドアサッシュ部40とサッシュリテーナ部50とが面接触しているドアサッシュ部40側に水抜き孔WHおよび水抜き孔WHgが設けられている。
つまり、ドアサッシュ部40とサッシュリテーナ部50とが面接触して成す微小空間ISに水滴TDが浸入した場合には、水滴TDは、ペイントシーラPSに囲まれた水抜き部WSに貯留される。そして、水滴TDは、水抜き部WSに設けられインナサッシュ内部面IIに向けて貫通した水抜き孔WHあるいは水抜き孔WHgから、目に触れない内部空間RSあるいは内部空間RSgに移動する。そのため、水滴TDが長時間内部に滞留し錆汁になった場合においても、車両用ドア1は、水滴TDを、外観面を汚すことなく目に触れない内部空間RSあるいは内部空間RSgから排出させることができる。
したがって、ドアサッシュ部において錆汁の外観面への流出を防止することができる。
【0029】
なお、本発明の実施形態として、水抜き孔WHを丸孔として例示したが、楕円形状、長孔形状あるいは長方形状のスリットであっても良い。
【0030】
また、サッシュリテーナ部50は、インナドアサッシュ部42に溶接等により結合されるよう例示したが、インナドアサッシュ部42とロール成形等により一体に形成されていてもよい。
【0031】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1;車両用ドア
10;アウタパネル部
20;インナパネル部
30;ドアウインドウ部
40;ドアサッシュ部
41;アウタドアサッシュ部
42;インナドアサッシュ部
42a;インナドアサッシュ部
50;サッシュリテーナ部
60;ウェザーストリップ部
II;インナサッシュ内部面
IO;インナサッシュ外部面
OI;アウタサッシュ内部面
OO;アウタサッシュ外部面
PS;ペイントシーラ
WH;水抜き孔
WS;水抜き部
V;車両
図1
図2
図3
図4