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特開2024-82201ロボットの制御システム、ロボットの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082201
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ロボットの制御システム、ロボットの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240612BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J13/08 Z
B25J15/08 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010484
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022195944
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS27
3C707CS08
3C707CS09
3C707CT04
3C707CT05
3C707DS02
3C707DS03
3C707ES04
3C707ES07
3C707FS01
3C707FS02
3C707FT02
3C707FT11
3C707KS03
3C707KS06
3C707KS07
3C707KS08
3C707KS09
3C707KS10
3C707KS15
3C707KS30
3C707KS36
3C707KT02
3C707KT05
3C707KX08
3C707LV02
3C707LV06
3C707LW11
3C707MS08
3C707NS19
3C707WA16
3C707WK05
3C707WK06
3C707WK08
(57)【要約】
【課題】把持部による対象物の位置の確認、掴み、及び保持の一連の作業を迅速かつ確実に行う。
【解決手段】把持部20に3本の指部22A、22B、22Cを設け、把持部20の掌側20Aと、指22A、22B、22Cに、複数の吸着パッド24をと取り付け、吸着パッド24は、例えば、エアー吸着構造で、荷物100を吸着し、かつ、指部22A、22B、22Cを曲げることにより、荷物100を掴むことができる。掌側20Aには、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26を取り付け、上記の構造の把持部20を人型ロボット1の腕部5、6に装着することにより、吸着面によりモノを確実にピックすることができ、人型ロボット1の動きが早くても荷物100を把持部20から落とさずに運ぶことができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する基盤となる掌部と、掌部から放射状に延長された複数の指部とを備えた把持部を、前記対象物に対峙させて保持することが可能なロボットの制御システムであって、
前記掌部及び指部に設けられ、前記対象物を吸着する吸着パッドと、
前記掌部に設けられ、前記対象物の形状及び位置を含む対象物情報を検出する掌センサ部と、
前記掌センサ部の検出結果に基づいて、前記対象物を保持する機能として、前記吸着パッドで吸着する第1機能、前記掌部で掴む第2機能、前記第1機能及び前記第2機能を併用する第3機能の何れかを選択して、前記対象物を保持する動作を制御する制御部と、
を有するロボットの制御システム。
【請求項2】
前記掌センサ部が、
前記対象物の画像を撮影して当該対象物の種類を識別するカメラと、前記対象物の位置を特定するモーションプロセシングユニットとを備える、請求項1記載のロボットの制御システム。
【請求項3】
前記制御部が、
前記対象物が吸着可能な面が存在する場合は第1機能の選択を許可し、前記対象物の保持力を優先する場合は第2機能の選択を許可する、請求項1記載のロボットの制御システム。
【請求項4】
複数の前記ロボットが、互いに所定の範囲内に存在するとき、互いの移動経路における一致点の有無を判断し、前記移動経路の一致点が存在すると判断された場合に、複数の前記ロボットの中から接触回避対象のロボットを選択し、選択した接触回避対象のロボットに対して、接触回避を実行させる実行部を、さらに有する請求項1記載のロボットの制御システム。
【請求項5】
前記実行部は、前記複数のロボット同士で相互に授受した情報に基づき、前記対象物を把持する負荷の軽いロボットを選択し、前記対象物の把持状態に差異が無い場合は予め定めた識別情報の優先順位に従い選択する、請求項4のロボットの制御システム。
【請求項6】
前記実行部は、
前記接触回避対象のロボットの接触回避行動として、通常の走行ルートから逸脱して迂回する迂回動作と、通常の走行ルートを維持しつつ接触前に減速又は一時停止する減速又は一時停止動作と、を選択して実行する、請求項4記載のロボットの制御システム。
【請求項7】
コンピュータを請求項1~請求項6の何れか1項記載の制御部として動作させる、ロッボットの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御システム、ロボットの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインにおいては作業を自動で行うための人型ロボットが使用されている。特許文献1には、人型ロボットの姿勢制御について記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、弾性体アクチュエータで駆動されて複数の関節を有するロボットアームであって、ロボットアームの手先部に配設され支持面と接触することによりロボットアームを支持する手先支持部材と、手先支持部材と支持面との接触する力を制御すると同時にロボットアームの手先部の位置及び姿勢を制御する制御部により制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-093506号公報
【特許文献2】WO2011/001569公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の人型ロボットによる倉庫内でのピッキング作業において、例えば、荷物が陳列されている棚から当該荷物(シャンプーや、コンディショナー、化粧品、歯磨き粉、カップラーメン、菓子袋等の形状や重さ、硬さ、壊れやすさが違うもの)をピックアップし、所定の包装体(箱等)に収容してパッキングするような場面において、現状では人の手に頼っている。
【0006】
また、ロボットの把持部の構造をフィンガータイプとして対応しようとしても、指や腕の動きが遅いため、生産性が低い。
【0007】
本発明上記事実を考慮し、把持部による荷物の位置の確認、掴み、及び保持の一連の作業を迅速かつ確実に行うことができるロボットの制御システム、ロボットの制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットの制御システムは、対象物を保持する基盤となる掌部と、掌部から放射状に延長された複数の指部とを備えた把持部を、前記対象物に対峙させて保持することが可能なロボットの制御システムであって、前記掌部及び指部に設けられ、前記対象物を吸着する吸着パッドと、前記掌部に設けられ、前記対象物の形状及び位置を含む対象物情報を検出する掌センサ部と、前記掌センサ部の検出結果に基づいて、前記対象物を保持する機能として、前記吸着パッドで吸着する第1機能、前記掌部で掴む第2機能、前記第1機能及び前記第2機能を併用する第3機能の何れかを選択して、前記対象物を保持する動作を制御する制御部と、を有している。
【0009】
本発明によれば、制御部が、掌センサの検出結果に基づいて、対象物を保持する機能として、吸着パッドで吸着する第1機能、掌部で掴む第2機能、第1機能及び前記第2機能を併用する第3機能の何れかを選択して、対象物を保持する動作を制御する。
【0010】
これにより、把持部による対象物(以下、荷物という場合がある。)の位置の確認、掴み、及び保持の一連の作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0011】
本発明において、前記掌センサ部が、前記対象物の画像を撮影して当該対象物の種類を識別するカメラと、前記対象物の位置を特定するモーションプロセシングユニットとを備えることを特徴としている。
【0012】
カメラは、撮影した画像情報に基づき、撮影された対象物を識別する。すなわち、対象物の種類(形状、大きさ、硬さ等)を特定するための情報を取得する役目を有する。
【0013】
モーションプロセシングユニット(MoPU)は、対象物の存在位置を示す点の、所定の座標軸に沿った動きのベクトル情報を動き情報として出力する。すなわち、MoPUから出力される動き情報には、対象物の中心点(又は重心点)の座標軸(x軸、y軸、z軸)上の動き(移動方向と移動速度)を示す情報のみが含まれている。すなわち、把持部が対象物に接近するときの軌跡を精度よく案内することができる。
【0014】
本発明において、前記制御部が、前記対象物が吸着可能な面が存在する場合は第1機能の選択を許可し、前記対象物の保持力を優先する場合は第2機能の選択を許可することを特徴とする。
【0015】
適正な機能(第1機能及び/又は第2機能)で対象物を把持することができる。
【0016】
本発明において、複数の前記ロボットが、互いに所定の範囲内に存在するとき、互いの移動経路における一致点の有無を判断し、前記移動経路の一致点が存在すると判断された場合に、複数の前記ロボットの中から接触回避対象のロボットを選択し、選択した接触回避対象のロボットに対して、接触回避を実行させる実行部を、さらに有することを特徴としている。
【0017】
複数のロボットが、各々の走行プログラムで走行している場合、相互に接触する可能性がある。走行プログラムにおいて、接触回避が考慮されている場合があるが、把持部による対象物の把持状態まで考慮されておらず、回避行動によって、対象物が脱落する可能性がある。
【0018】
そこで、実行部は、複数のロボットが、互いに所定の範囲内に存在するとき、互いの移動経路における一致点の有無を判断し、移動経路の一致点が存在すると判断された場合に、複数のロボットの中から接触回避対象のロボットを選択し、選択した接触回避対象のロボットを対して接触回避を実行させる。
【0019】
これにより、ロボット間の接触を回避することができる。
【0020】
本発明において、前記実行部は、前記複数のロボット同士で相互に授受した情報に基づき、前記対象物を把持する負荷の軽いロボットを選択し、前記対象物の把持状態に差異が無い場合は予め定めた識別情報の優先順位に従い選択することを特徴としている。
【0021】
適正に接触回避対象のロボットを選択することができる。
【0022】
本発明において、前記実行部は、前記接触回避対象のロボットの接触回避行動として、通常の走行ルートから逸脱して迂回する迂回動作と、通常の走行ルートを維持しつつ接触前に減速又は一時停止する減速又は一時停止動作と、を選択して実行することを特徴としている。
【0023】
状況に応じて、回避動作を選択することができる。
【0024】
本発明に係るロボットの制御プログラムは、コンピュータを上記の制御部として動作させる、ロッボットの制御プログラム。
【0025】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、把持部による対象物の位置の確認、掴み、及び保持の一連の作業を迅速かつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施の形態に係る人型ロボットの正面図である。
図2】第1の実施の形態に係る人型ロボットの側面図である。
図3】(A)は第1の実施の形態に係る把持部の掌側の正面図、(B)は把持部に取り付けた吸着パッドの斜視図である。
図4】(A)は第1の実施の形態に係る把持部の斜視図、(B)は変形例に係る把持部の斜視図である。
図5】人型ロボットの機能構成の一例を概略的に示す図である。
図6】情報処理装置によって実行される処理ルーチンの一例を概略的に示す図である。
図7図4の人型ロボットの全体の動作に連動し、把持部によって荷物を把持する際の把持制御の手順を示すフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に係る人型ロボット同士の走行制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9】第2の実施の形態に係る人型ロボット同士の走行制御における、対面接触回避プログラムモードの動作状態を示す遷移図である。
図10】第2の実施の形態に係る人型ロボット同士の走行制御における、コリジョンコース現象接触回避プログラムモードの動作状態を示す遷移図である。
図11】情報処理装置として機能するコンピュータハードウェアの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0029】
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態に係る人型ロボットの正面図である。図1に示すように、第1の実施の形態に係る人型ロボット1は、上半身部2、脚部3、および上半身部2を脚部3に対して回動可能に連結する連結部4を備え、例えば工場の生産ライン等に配置されて、ピッキング対象物である荷物100等が陳列されている棚を含むライン上、又は床上の対象物(落下物等)に対して作業を行うものである。なお、作業は、棚から荷物100を把持するピッキング以外に、把持した荷物100を所定の筐体(ダンボール等)に収容するパッキングを含む。
【0030】
上半身部2は2本の腕部5、6を有する。腕部5、6は上半身部2の左右に回動自在に取り付けられている。また、腕部5、6の先端には荷物100を把持するための把持部20(詳細後述)が取り付けられている。なお、腕部は2本に限定されるものではなく、1本あるいは3本以上であってもよい。
【0031】
脚部2は2つの車輪7、8がその下部に取り付けられており、人型ロボット1が配置される床の上を移動可能とされている。
【0032】
連結部4は、上半身部2と脚部3を回動可能に連結する。このため、上半身部2は、脚部3に対して前傾および後傾が可能となっている。このため、第1の実施の形態に係る人型ロボット1は、図2に示すように、脚部3に対して上半身部2を前傾させて、棚に置かれた荷物100や、床に置かれていたり、作業中に床に落ちたりした荷物100を拾うことが可能である。
【0033】
なお、脚部2は、上半身部2が脚部3に対して前傾または後傾したり、人型ロボット1が移動したりした際に、人型ロボット1が転倒しないようにするためのバランス機能を有する。
【0034】
また、連結部4は、図1に示すように上半身部2と脚部3との距離を変更可能な機能を有する。このため、生産ラインにおける作業台の高さに合うように、脚部3に対する上半身部2の上下方向の位置を矢印Aに示すように調整することができる。
【0035】
また、第1の実施の形態に係る人型ロボット1は、人型ロボット1内に実装された制御システム10によりその駆動が制御される。
【0036】
(把持部20の構造)
【0037】
図3(A)に示される如く、腕部5、6の先端に取り付けられた把持部20は、人間と同様の手の構造とされ、把持部20は、腕部5、6に対して、回転自在に取り付けられている(Intelligent Hand System)。
【0038】
第1の実施の形態に示す把持部20は、各々複数の関節を備えた3本の指部22A、22B、22Cを有している。第1の実施の形態では、この3本指構造は、図4(A)に示される如く、右手及び左手共に同一としているが、図4(B)に示される如く、5本指構造であってもよい。
【0039】
把持部20の掌側20Aには、複数(第1の実施の形態では、3個)の吸盤パッド24が取り付けられている。
【0040】
また、3本の指部22A、22B、22Cには、関節部を境界として、各々、複数(第1の実施の形態では2個)の吸盤パッド24が取り付けられている。
【0041】
さらに、第1の実施の形態の把持部20の掌側20Aには、掌センサ26が取り付けられている。掌センサ26は、荷物100の種類を識別する高解像度カメラ、及び、荷物100の位置を特定するMoPU(Motion Processing Unit)を備えている。
【0042】
図3(B)に示される如く、吸盤パッド24は、荷物100を把持するときに対峙させるゴム製のパッド部24Aと、パッド部24Aと荷物100との密着により形成される密閉空間のエアーを吸引する空気流路を形成するニップル24Bとで構成されている。
【0043】
すなわち、第1の実施の形態の吸盤パッド24は、エアー吸着構造であり、ニップル24Bに設けられた孔24Cから、密閉空間内の空気を吸引して真空(ほぼ真空を含む)することで、吸着力を持つ。なお、吸盤パッド24は、エアー吸着構造に限らず、単純にパッド部24Aの変形による密閉空間の容積を変化させて吸着させる構造であってもよい。
【0044】
第1の実施の形態の掌センサ26を構成する高解像度カメラは、撮影した画像情報に基づき、撮影された荷物100が何であるかシャンプー、コンディショナー、化粧品、歯磨き粉等のケア商品なのか、又は、カップラーメン、菓子袋等の食品なのかを識別する。
【0045】
言い換えると、高解像度カメラは、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)を特定するための情報を取得する役目を有する。
【0046】
一方、高解像度カメラと共に、第1の実施の形態の掌センサ26を構成するMoPUは、1000フレーム/秒以上のフレームレートで撮影された荷物100の画像から、撮影された荷物100の動き(この場合、腕部5、6との間の相対的な動きとなる。)を示す動き情報を、例えば1000フレーム/秒以上のフレームレートで出力する。なお、移動中の荷物100を検知する場合、フレームレートを上げて、固定物(移動しない荷物100)を検知する場合、フレームレートを下げるようにしてもよい。
【0047】
MoPUは、荷物100の存在位置を示す点の、所定の座標軸に沿った動きのベクトル情報を動き情報として出力する。すなわち、MoPUから出力される動き情報には、撮影された荷物100が何であるか(上記ケア商品、食品)を識別するために必要な情報は含まれておらず、当該荷物100の中心点(又は重心点)の座標軸(x軸、y軸、z軸)上の動き(移動方向と移動速度)を示す情報のみが含まれている。
【0048】
すなわち、把持部20が荷物100に接近するときの軌跡を精度よく案内することができる。
【0049】
高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26から出力された情報は、情報処理装置14に供給される。
【0050】
情報処理装置14は、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26からの情報により、高精度に荷物100の位置を特定し、把持するときの指部22A、22B、22Cの広がり度合い、掴むときの強度、及び吸盤パッド24による吸着力等を演算し、腕部5、6及び把持部20の微小な動きを、精度よくコントロールし、様々な荷物100のピッキング作業に対応することができる。
【0051】
図5は、第1の実施の形態に係る人型ロボットの制御システムの一例の概略図である。制御システム10は、人型ロボットに搭載されるセンサ12と、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26と、情報処理装置14とを備えている。
【0052】
センサ12は、人型ロボット1の周辺にある、人型ロボット1が作業する荷物と腕部5、6との距離および角度を少なくとも表す情報を逐次取得する。センサ12としては、最高性能のカメラ、ソリッドステートLiDAR、マルチカラーレーザ同軸変位計、又はその他様々なセンサ群が採用され得る。また他には、センサ12としては、振動計、サーモ
【0053】
カメラ、硬度計、レーダー、LiDAR、高画素・望遠・超広角・360度・高性能カメラ、ビジョン認識、微細音、超音波、振動、赤外線、紫外線、電磁波、温度、湿度、スポットAI天気予報、高精度マルチチャネルGPS、低高度衛星情報、又はロングテールインシデントAI data等が挙げられる。
【0054】
なお、センサ12は、上記の情報のほかに、画像、距離、振動、熱、匂い、色、音、超音波、紫外線、又は赤外線等を検知する。他にセンサ12が検知する情報としては、人型ロボット1の重心移動、人型ロボット1が設置される床の材質の検知、外気温度の検知、外気湿度の検知、床の上下横斜め傾き角度の検知、水分量の検知等が挙げられる。
【0055】
センサ12は、これらの検知を例えばナノ秒毎に実施する。
【0056】
掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)は、腕部5、6の把持部20に設けられるセンサであり、センサ12とは別に、荷物100を撮影するカメラ機能、及び、荷物100位置を特定する位置特定機能を有する。
【0057】
なお、1つのMoPU12を用いた場合には、の荷物100の存在位置を示す点の、三次元直交座標系における2つの座標軸(x軸及びy軸)の各々に沿った動きのベクトル情報を取得することが可能である。ステレオカメラの原理を利用して、2つのMoPU12を用いて、の荷物100の存在位置を示す点の、三次元直交座標系における3つの座標軸(x軸、y軸、z軸)の各々に沿った動きのベクトル情報を出力してもよい。z軸は、奥行方法(車両の走行)に沿った軸である。
【0058】
情報処理装置14は、情報取得部140と、制御部142と、情報蓄積部144とを備えている。
【0059】
情報取得部140は、センサ12及び掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)によって検知された荷物100の情報を取得する。
【0060】
制御部142は、情報取得部140がセンサ12から取得した情報とAI(Artificial intelligence)とを用いて、連結部4の回動動作、上下方向の移動動作および腕部5、6の動作等を制御する。
【0061】
また、制御部142は、情報取得部140が掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)から取得した情報を用いて、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)及び位置を詳細に把握し、当該外形や位置に応じて、掌側20Aを対峙させ、吸着パッド24により吸着し、かつ、3本の指部22A、22B、22Cで掴むように制御する(把持制御)。なお、外形情報に基づいて、物体(荷物100)の種類を把握して把持制御(「吸着」のみ、「掴み」のみ、「吸着」と「掴み」の併用等)を選択してもよい。
【0062】
例えば、制御部142は、全体の動作として、以下の各処理を実行する。
(1)棚及び床にある荷物100を拾い上げることが可能なように連結部4を駆動して、上半身部2を前傾または後傾させる。
(2)荷物100をつかむことが可能なように腕部5、6および把持部を駆動する。
(3)生産ラインの作業台の高さに合うように、上半身部2を脚部3に対して上下に駆動する。
(4)人型ロボット1の転倒を防ぐために、バランスを取る。
(5)人型ロボット1がカート等を押し進めることができるように、車輪7、8の駆動を制御する。
【0063】
情報処理装置14は、例えば、床にある荷物100を拾う場合、図6に示されているフローチャートを繰り返し実行する。
【0064】
ステップS100において、情報取得部140は、センサ12によって検知された荷物100の情報を取得する。
【0065】
ステップS102において、制御部142は、ステップS100で取得された荷物100の情報とAIとを用いて、連結部4および腕部5、6を制御することにより、床にある荷物100を拾い上げる。
【0066】
ステップS104において、制御部142は、拾った荷物100を所定位置へ移動する。
【0067】
第1の実施の形態によれば、人型ロボット1は、上半身部2、脚部3および上半身部2と脚部3とを回動自在に連結する連結部4を備える。また、センサ12が取得した情報に基づいて連結部4の回動を制御するようにした。このため、人型ロボット1と荷物100との距離や角度を判断することができ、これにより、床にある荷物100を拾い上げるような動作を行うことができる。
【0068】
また、連結部4は上半身部2と脚部3との距離を変更可能であるため、生産ラインにおける作業台の高さに合うように、脚部3に対する上半身部2の上下方向の位置を調整することができる。
【0069】
また、脚部2は、上半身部2が脚部3に対して前傾または後継した際に、人型ロボット1が転倒しないようにするためのバランス機能を有する。このため、生産ラインにある荷物100を押したり引いたりする作業を行った際の人型ロボット1の転倒を防止できる。したがって、転倒による人型ロボット1の故障、あるいは人型ロボット1の周囲にいる人物の怪我等を防止することができる。
【0070】
(荷物100の把持制御)
【0071】
図7は、図4の人型ロボット1の全体の動作に連動し、把持部20によって荷物100を把持する際の把持制御の手順を示すフローチャートである。
【0072】
ステップ150では、荷物100の把持の指示があったか否かを判断し、肯定判定されると、ステップ152へ移行して、人型ロボット1を移動させ(例えば、腕部5、6を動作させ)、対象の荷物100に掌側20Aを対峙させ、ステップ154へ移行する。
【0073】
ステップ154では、掌側20Aを対向させて、荷物100の情報を検出する。
【0074】
次のステップ156では、掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)による検出情報を解析して、荷物100の種類(形状、大きさ、硬さ等)及び位置を詳細に把握し、ステップ158へ移行する。
【0075】
ステップ158では、荷物100の把持のための作業を選択する。例えば、「吸着」のみ、「掴み」のみ、「吸着」と「掴み」の併用等から選択し、次いで、ステップ160へ移行して、荷物100の形状に応じた、指部22A、22B、22Cの角度(開き度合い)を設定し、ステップ162へ移行する。
【0076】
ステップ162では、荷物100の把持(「吸着」のみ、「掴み」のみ、「吸着」と「掴み」)を実行する。
【0077】
次のステップ164では、荷物100の把持が成功したか否かを判定し、肯定判定された場合は、把持した荷物100を所定の場所へ運び、ステップ150へ移行して、次の荷物100の把持の指示を待つ。
【0078】
また、ステップ164で否定判定された場合は、ステップ166へ移行して、エラー処理(例えば、リトライ又はキャンセル等)を実行し、ステップ150へ戻る。
【0079】
以上、第1の実施の形態によれば、把持部20に3本の指部22A、22B、22Cを設け、把持部20の掌側20Aと、指22A、22B、22Cに、複数の吸着パッド24をと取り付け、吸着パッド24は、例えば、エアー吸着構造で、荷物100を吸着し、かつ、指部22A、22B、22Cを曲げることにより、荷物100を掴むことができる。
【0080】
掌側20Aには、高解像度カメラ及びMoPUを含む掌センサ26を取り付け、上記の構造の把持部20を人型ロボット1の腕部5、6に装着することにより、吸着面によりモノを確実にピックすることができ、人型ロボット1の動きが早くても荷物100を把持部20から落とさずに運ぶことができる。
【0081】
また、掌センサ26(高解像度カメラ及びMoPU)が掌側20Aに搭載されているので、高精度に荷物100を捉えることができ、微小な動きをする作業にも対応することができる。
【0082】
さらに、非常に柔らかく壊れやすいものは、吸着パッド24を使わずに、指22A、22B、22Cの動きにより掴むこともできるし、掴む力を調整することにより、柔らかい荷物100の破損等を防止することかできる。
【0083】
[第2の実施の形態]
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0084】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0085】
第2の実施の形態の特徴は、前述した第1の実施の形態における、人型ロボット1の把持部20による、荷物100の把持制御及び搬送制御作業に加え、複数の人型ロボット1の搬送経路が交差する場合の回避制御を適用した点にある。すなわち、情報処理装置14の制御部142(図5参照)には、接触回避プログラムが格納されており、必要に応じて(例えば、2体以上の人型ロボット1が所定範囲の一例である所定半径内に存在するとき等)、当該接触回避プログラムが実行される。
【0086】
(回避制御の詳細)
複数の人型ロボット1が、荷物100を把持して所定の位置へ搬送するとき、又は、荷物100を所定の位置へ搬送して戻るとき、互いの走行経路が交差する場合がある。
【0087】
荷物100の搬送タイミングは、人型ロボット1のそれぞれにプログラミングされ、周囲を監視しながら、接触防止の対策はなされているものの、相互の搬送タイミングが、明確に管理されるものではない。
【0088】
例えば、2体の人型ロボット1の走行経路を互いに近づく方向に一直線であり、将来的に接触する可能性がある場合、汎用のプログラミングでは、搬送中の荷物100の情報(荷物100の有無、重さ等)が考慮されておらず、不必要な回避行動によって、荷物100を脱落させる、といった不具合が発生する場合がある。
【0089】
そこで、第2の実施の形態では、複数の人型ロボット1(以下では、2体の人型ロボット1を例示するが、3体以上であってもよい。)において、互いに所定半径内に存在している場合に、(1)相互に情報の授受を行い、(2)互いの接触回避対象判定(どちらが接触回避行動をとるか等)を判定し、(3)接触パターンに応じて、接触回避行動を実行するようにした。
【0090】
(1) 情報の授受
人型ロボット1による授受の実行情報としては、人型ロボット1を特定する識別符号(ID)、荷物100を把持して搬送しているか否か、及び荷物情報(少なくも重さは必須であり、その他、重心位置、外観形状、走行速度等の情報を含む場合がある。)が挙げられる。
【0091】
(2) 接触回避対象判定
接触回避対象判定とは、接触回避行動をとる必要がある側を選択するための判定であり、選択された人型ロボット1は、情報処理部14の制御部142の機能としての1つである実行部(接触回避の動作プログラム)に従って行動する。言い換えれば、選択されなかった人型ロボット1は、通常通りの走行プログラムに基づいて、走行を継続することになる。接触回避対象判定は、複数の人型ロボット1同士で相互に授受した情報に基づき、対象物を把持する負荷の軽いロボットを選択し、対象物の把持状態に差異が無い場合は予め定めた識別情報の優先順位に従い選択することを前提としており、以下に、具体的な接触回避行動選択の事例を示す。
【0092】
(事例1) 荷物100を把持していない方が接触回避対象となる。
(事例2) 互いに荷物100を把持している場合は、荷物100の重量が軽い方が接触回避対象となる。
(事例3) 上記事例1及び事例2で判定できない状況(条件同一)の場合は、IDの若い方が接触回避対象となる。
【0093】
その他、荷物100の重心情報がある場合は、荷物100の重量が重くても、重心が安定している(重心位置が荷物100の中心部に近い)方を接触回避対象としてもよい(重心が安定している方が脱落危険度が低い)。
【0094】
また、荷物100の外観情報がある場合は、荷物100の重量が重い、及び/又は、重心が安定していなくても、小さい外観の荷物を把持している方を接触回避対象としてもよい(小さい荷物100の方が、脱落危険度が低い)。
【0095】
さらに、搬送速度情報が有る場合は、搬送速度が遅い方を接触回避対象としてもよい。
【0096】
また、荷物情報を複合的に考慮する場合、重さ情報、重心情報、外観情報、及び速度情報等をパラメータとする所定の演算式を演算し、数値化して、接触回避対象を判定するようにしてもよい。
【0097】
(3) 接触パターンに応じた接触回避行動)
2体の人型ロボット1の接触パターンとしては、一直線上に互いの走行経路が存在する場合がある。この場合は、対面している2体の人型ロボット1は、徐々に接近し対面接触することになる。
【0098】
そこで、接触回避対象となった人型ロボット1に対して、迂回動作プロブラムを実行させることで(図9参照、詳細後述)、対面接触を防止する。
【0099】
一方、走行方向の将来において、互いの走行経路が交差する点が存在し、かつ、互いの存在位置の角度が一定に維持された状態で走行すると、当該交差する点で接触することになる(コリジョンコース現象)。
【0100】
そこで、接触回避対象となった人型ロボット1に対して、減速(一時停止)動作プログラムを実行させることで(図10参照、詳細後述)、コリジョンコース現象接触を防止する。
【0101】
また、対面接触、コリジョンコース現象接触以外は、例えば、通常の走行プログラムに組み込まれた緊急回避処理として、2体の人型ロボット1に対して、フリー走行による接触回避を実行させる。
【0102】
以下に、第2の実施の形態の作用を、図8のフローチャートに従い説明する。
【0103】
図8は、情報処理装置14の制御部142(図5参照)で実行される、それぞれの人型ロボット1の走行制御における接触回避処理ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0104】
ステップ200では、走行プログラムによる走行制御を開始し、次いでステップ202へ移行して、所定半径内に他の人型ロボット1が存在するか否かを判断する。
【0105】
このステップ202で否定判定された場合は、人型ロボット1同士が接触する可能性が無い(所定の確率未満)であると判断し、ステップ220へ移行する。また、ステップ202で肯定判定されると、人型ロボット1同士が接触する可能性がある(所定の確率以上)と判断し、ステップ204へ移行する。
【0106】
ステップ204では、所定半径内の人型ロボット1が相互に情報の授受を実行する。
【0107】
すなわち、前述した、「(1) 情報の授受」に示すように、ID、荷物搬送の有無、荷物の情報を相互に授受する。
【0108】
次のステップ206では、受領した情報に基づいて接触回避対象の判定処理を実行する。
【0109】
すなわち、前述した、「(2) 接触回避対象判定」に示すように、荷物100の把持状態、荷物100の重さ比較、IDに紐付けた優先設定状態に基づいて、接触回避対象の人型ロボット1を判定する。
【0110】
次のステップ208では、ステップ206での接触回避対象判定処理の結果、自身の人型ロボット1が接触回避対象か否かを判断する。このステップ208で否定判定された場合は、自身の人型ロボット1は、回避することなく、通常の走行プログラムに基づく走行を継続し、ステップ220へ移行する。
【0111】
また、ステップ208で肯定判定されると、自身の人型ロボット1は、接触回避する必要があると判断し、ステップ210へ移行する。
【0112】
ステップ210では、接触パターンを判定する。第2の実施の形態では、対面接触、コリジョンコース現象、及びその他に分類される。
【0113】
ステップ210において、接触パターンが対面接触と判定された場合は、対面接触回避処理を実行するべく、ステップ210からステップ212へ移行して、迂回動作プログラムを実行する(詳細後述)。
【0114】
ステップ210において、接触パターンがコリジョンコース現象と判定された場合は、コリジョンコース現象回避処理を実行するべく、ステップ210からステップ214へ移行して、減速(一時停止)動作プログラムを実行する(詳細後述)。
【0115】
また、ステップ210において、接触パターンが対面接触及びコリジョンコース現象の何れでもないと判定された場合は、緊急回避処理を実行するべく、ステップ210からステップ216へ移行する。
【0116】
すなわち、対面接触、コリジョンコース現象接触以外は、第2の実施の形態では、通常の走行プログラムに組み込まれた緊急回避処理として、2体の人型ロボット1に対して、フリー走行による接触回避を実行させる。この場合、ステップ206で判定した接触回避対象に依存せず、互いが回避行動をとることになるため、接触は回避されるが、時間的なロス(走行中止等を含む)が発生する場合があった。
【0117】
そこで、第2の実施の形態では、接触回避対象の人型ロボット1を選択し、かつ、接触パターンを認識することで、迅速かつ確実な回避処理が可能となる。
【0118】
ステップ212、ステップ214、又はステップ216の処理が終了すると、ステップ218へ移行して、通常走行ルートへの復帰を指示し、次いで、ステップ220へ移行して、走行プログラムは終了したか否かを判断する。
【0119】
ステップ220で否定判定された場合は、ステップ202へ戻り、上記工程を繰り返す。また、ステップ220で肯定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0120】
(ステップ212の動作例)
図9は、ステップ212における迂回動作プログラムの実行例である。
【0121】
図9(A)に示される如く、2体の人型ロボット1は、同一の直線上に沿って、互いに接近するように移動している(図9(A)の点線で示す人型ロボット1参照)。
【0122】
図9(A)の左から右へ移動する人型ロボット1Aが接触回避対象であり、一定距離に達すると、人型ロボット1は、進行方向左側に向きを変え、通常の走行ルートから逸脱する(図9(A)の実線参照)。
【0123】
その後、図9(B)に示される如く、通常のルートで走行する接触回避対象ではない人型ロボット1Bは、図9(B)の点線矢印に示すように直線するが、接触回避対象の人型ロボット1Aは、図9(B)の実線矢印に示すように、通常ルートを迂回するため、相互の接触が回避される。
【0124】
図9(C)に示される如く、相互の接触を回避した人型ロボット1Aは、通常ルートに戻るように進行方向右側に向きを変え、通常の走行ルートに戻る(図9(D)参照)。
【0125】
(ステップ214の動作例)
図10は、ステップ214における減速(一時停止)動作プログラムの実行例である。
【0126】
図10(A)に示される如く、2体の人型ロボット1は、それぞれ別の直線上走行路(図10(A)の実線矢印及び点線矢印参照)に沿って移動しており、将来的に2つの走行路は交差する経路となっている。
【0127】
図10(A)の実線矢印に沿って移動する人型ロボット1Aが接触回避対象であり、時間t1及び時間t2では、接触回避対象ではない人型ロボット1Bとほど同速度で移動しているが、時間t3になると、減速又は一時停止する。
【0128】
一方、人型ロボット1Bは、時間t3で、2つの走行路の交差点に到達する。しかし、人型ロボット1Aが減速又は一時停止しているため、交差点での接触が回避される。
【0129】
その後、図10(B)に示される如く、時間t4になると、人型ロボット1Aは走行路の交差点に到達するが、人型ロボット1Bは、既に、交差点を通過しているため、時間t5では、人型ロボット1A及び人型ロボット1Bは、それぞれ通常の走行ルートに沿って、走行が継続される。
【0130】
以上説明したように、第2の実施の形態における回避制御によれば、荷物100を把持して搬送中の人型ロボット1の各々に対して、把持部による荷物の位置の確認、掴み、及び保持の一連の作業を迅速かつ確実に行うという本発明の目的及び効果を、より強固に発揮することができる。特に、把持した荷物100の搬送中の脱落等を確実に防止することができる。
【0131】
なお、上記第2の実施の形態では、2体の人型ロボット1がすれ違いが可能な領域を想定しているが、すれ違いをするスペースがない場合は、例えば、互いに横向きになってすれ違う、或いは、一方の人型ロボット1が、すれ違いが可能なスペースまでバックする、等を実行すればよい。
【0132】
この回避行動は、図8のステップ216における緊急回避処理の対応パターンとして、予めプログラミングしておけば、容易に実行可能である。
【0133】
図11は、情報処理装置14として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、第1の実施の形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、第1の実施の形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、および/又はコンピュータ1200に、第1の実施の形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつか又は全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0134】
第1の実施の形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、およびグラフィックコントローラ1216を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ、およびICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。DVDドライブは、DVD-ROMドライブおよびDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブおよびソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230およびキーボードのような入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されている。
【0135】
CPU1212は、ROM1230およびRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにする。
【0136】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブは、プログラム又はデータをDVD-ROM等から読み取り、記憶装置1224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/又はプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0137】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、および/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0138】
プログラムは、DVD-ROM又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0139】
例えば、通信がコンピュータ1200および外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0140】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ(DVD-ROM)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0141】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本発明の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0142】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0143】
第1の実施の形態におけるフローチャートおよびブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表してよい。特定の段階および「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、およびプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、および他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0144】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0145】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0146】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。また、人型ロボット1の制御は、個々の人型ロボット1が備える情報処理装置14(図5参照)において、全ての処理プログラムを実行してもよいし、一部又は全部の処理プログラムを、複数の人型ロボット1を一括管理するサーバーで行い、処理結果(命令指示)をそれぞれの人型ロボット1に送信するようにしてもよい。
【0147】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0148】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0149】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0150】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0151】
1 人型ロボット、2 上半身部、3 脚部、4 連結部、5、6 腕部、7、8 車輪、10 制御システム、12 センサ、14 情報処理装置、20 把持部、20A 掌側、22A、22B、22C 指部、24 吸着パッド、24A パッド部、24B ニップル部、26 掌センサ、100 荷物、1200 コンピュータ、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インタフェース、1224 記憶装置、1230 ROM、1240 入出力チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11