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  • 特開-除菌装置および空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082227
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】除菌装置および空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 8/22 20210101AFI20240612BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20240612BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20240612BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240612BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240612BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240612BHJP
   F24F 8/24 20210101ALI20240612BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20240612BHJP
   F24F 1/0071 20190101ALI20240612BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20240612BHJP
【FI】
F24F8/22
A61L9/20
B01D39/14 Z
A61L9/00 C
A61L9/01 B
F24F8/108 310
F24F8/24
F24F8/167
F24F1/0071
F24F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136069
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022195674
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕二
(72)【発明者】
【氏名】舟里 忠益
(72)【発明者】
【氏名】日野原 昌信
(72)【発明者】
【氏名】永田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】松永 壮
【テーマコード(参考)】
3L051
3L053
4C180
4D019
【Fターム(参考)】
3L051BC03
3L053BD05
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180DD03
4C180EA02X
4C180EA07X
4C180EA09X
4C180EA22X
4C180EA27X
4C180EA28X
4C180EA34X
4C180EA38X
4C180EA39X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4C180LL04
4D019AA01
4D019BB01
4D019BD01
4D019CA01
4D019CA02
(57)【要約】
【課題】短波長の紫外光を効率よく利用できる除菌装置を実現する。
【解決手段】筐体10内に空気が流入する空気流入口2と、筐体10から空気が流出する空気流出口3と、を有する筐体10と、空気流出口3の近傍に設けられた光触媒フィルタ5と、筐体10内であって空気の流れ方向において光触媒フィルタ5の上流側に配され、光触媒フィルタ5に向けてUV-Cを照射する発光ダイオード7と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に空気が流入する空気流入口と、前記筐体から空気が流出する空気流出口と、を有する前記筐体と、
前記空気流出口の近傍に設けられた光触媒フィルタと、
前記筐体内であって空気の流れ方向において前記光触媒フィルタの上流側に配され、前記光触媒フィルタに向けてUV-Cを照射する発光ダイオードと、を備えることを特徴とする除菌装置。
【請求項2】
前記空気流入口の近傍に配され、前記筐体内からUV-Cが漏洩することを防止する遮光部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記空気流入口の近傍に配される除塵フィルタを備えることを特徴とする請求項2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記除塵フィルタの厚みは3mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記除塵フィルタが、JIS B 9908:2011に従って測定される0.4μmの粒子に対する初期捕集率が60%以上のフィルタエレメントを含むことを特徴とする請求項4に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記光触媒フィルタが、セラミックフィルタ、アルミナフィルタ、チタンフィルタ、シリカフィルタ、銅フィルタ、ステンレスフィルタ、およびニッケルフィルタ、からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記光触媒フィルタに対してUV-Aを照射する第二の発光ダイオードをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項8】
空調対象室に供給する空気を空調する空調機と、前記空調機に空気が供給される吸気口に接続される除菌装置と、を備える空調システムにおいて、
前記除菌装置は、
筐体内に空気が流入する空気流入口と、前記筐体から空気が流出する空気流出口と、を有する前記筐体と、
前記空気流出口の近傍に設けられた光触媒フィルタと、
前記筐体内であって空気の流れ方向において前記光触媒フィルタの上流側に配され、前記光触媒フィルタに向けてUV-Cを照射する発光ダイオードと、を有することを特徴とする空調システム。
【請求項9】
前記除菌装置は、前記空気流入口の近傍に配され、前記筐体内からUV-Cが漏洩することを防止する遮光部材を有することを特徴とする請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記除菌装置は、前記空気流入口の近傍に配される除塵フィルタを有することを特徴とする請求項8に記載の空調システム。
【請求項11】
前記除塵フィルタの厚みは3mm以上であることを特徴とする請求項10に記載の空調システム。
【請求項12】
前記除塵フィルタが、JIS B 9908:2011に従って測定される0.4μmの粒子に対する初期捕集率が60%以上のフィルタエレメントを含むことを特徴とする請求項11に記載の空調システム。
【請求項13】
前記光触媒フィルタが、セラミックフィルタ、アルミナフィルタ、チタンフィルタ、シリカフィルタ、銅フィルタ、ステンレスフィルタ、およびニッケルフィルタ、からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項8に記載の空調システム。
【請求項14】
前記除菌装置は、前記光触媒フィルタに対してUV-Aを照射する第二の発光ダイオードをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌装置および空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気などの流体を除菌する除菌装置において、紫外線を照射して除菌を行う手法が汎用されている。たとえば特開2004-108685号公報(特許文献1)には、空調装置の筐体内に紫外線灯を設け、筐体内を流通する空気に紫外線を照射して除菌を行う装置が開示されている。また、特開2022-126294号公報(特許文献2)には、紫外線を照射する照射ユニットを有する空気調和機において、吹出口に遮光グリルを設けた発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-108685号公報
【特許文献2】特開2022-126294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2の技術では、空気に対する直接照射による除菌効果のみを紫外光に期待するものであり、除菌能力を向上するためには紫外光の出力を上げるか、または紫外光の中でも殺菌能力の高い短波長の紫外光を用いる必要があった。しかし、前者の方法には消費エネルギーの増大を招くという課題があり、後者の方法には特許文献2に見られるような遮光部材を設ける必要が生じてスペース利用効率の低下を招くという課題があった。
【0005】
そこで、短波長の紫外光を効率よく利用できる除菌装置および空調システムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る除菌装置は、筐体内に空気が流入する空気流入口と、前記筐体から空気が流出する空気流出口と、を有する前記筐体と、前記空気流出口の近傍に設けられた光触媒フィルタと、前記筐体内であって空気の流れ方向において前記光触媒フィルタの上流側に配され、前記光触媒フィルタに向けてUV-Cを照射する発光ダイオードと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る空調システムは、空調対象室に供給する空気を空調する空調機と、前記空調機に空気が供給される吸気口に接続される除菌装置と、を備える空調システムにおいて、前記除菌装置は、筐体内に空気が流入する空気流入口と、前記筐体から空気が流出する空気流出口と、を有する前記筐体と、前記空気流出口の近傍に設けられた光触媒フィルタと、前記筐体内であって空気の流れ方向において前記光触媒フィルタの上流側に配され、前記光触媒フィルタに向けてUV-Cを照射する発光ダイオードと、を有することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、空気に対する紫外光の直接照射による除菌効果に加えて、紫外光によって励起された光触媒による除菌効果も期待できるので、紫外光を効率よく利用できる。
【0009】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の実施形態に係る除菌装置の使用状態を示す図である。
図2】第二の実施形態に係る除菌装置の使用状態を示す図である。
図3】第三の実施形態に係る除菌装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る除菌装置および空調システムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る除菌装置および空調システムを、天井隠蔽型空調機A(以下、単に空調機Aと称する。)に流入する空気をUV-C(波長100nm以上280nm以下の紫外光をいう。)を利用して除菌する空調システムの除菌装置1に適用した例について説明する。
【0012】
〔第一の実施形態〕
本実施形態に係る除菌装置1は、天井裏の空間Cに設置されて空調機Aの吸気口に接続されており、空調機Aに流入する空気を除菌する。従来、空調機Aの吸気口にはフィルタチャンバが設けられることが一般的であるが、本実施形態では、かかるフィルタチャンバに替えて除菌装置1を設けてある。空調機Aは吸気口から取り入れた空気の温度および湿度を調整したのちに、ダクトD1を介して人の居住空間R(空調対象室)に吐出する。以上の構成によって、除菌および空調が施された空気が居住空間R(空調対象室)に供給される。
【0013】
〔除菌装置の構成〕
本実施形態に係る除菌装置1は、筐体10と、天井裏の空間Cの空気が筐体10に流入する空気流入口(第一開口部)2と、除菌された空気が筐体10から流出する空気流出口(第二開口部)3と、空気流入口2から空気流出口3へ向けて空気が流れる流路4と、光触媒フィルタ5と、除塵フィルタ6と、第一光源7と、第二光源8と、を備える(図1)。本実施形態の除菌装置1は、空気流出口(第二開口部)3が空調機Aの吸気口に接続しており、空気流入口(第一開口部)2から流入した空気が除菌装置1において除菌された後に空気流出口(第二開口部)3から空調機Aの吸気口へ供給される。すなわち、本実施形態では、第一開口部2が空気(流体の一例である。)の流入口であり、第二開口部3が空気の流出口である。
【0014】
流路4は、空気流入口(第一開口部)2と空気流出口(第二開口部)3との間に画定される空気の通り道である。筐体10は角筒状に構成されている。筐体10は、亜鉛鋼板、ステンレス鋼板、アルミ合金などの汎用の材料により構成されている。後述するように、筐体10内の空気に対して第一光源7からUV-Cが照射され、筐体10内の空気がUV-Cによって除菌される。すなわち筐体10の内部空間は、空調機Aへ供給される空気を除菌する空間として機能する。なお、装置外にUV-Cが漏洩することを防ぐ観点から、筐体10は遮光性を有することが好ましい。ここで遮光性を有するとは、構造上、材質上などの特徴により、第一光源7が発するUV-Cを、筐体10の外に透過させない性質を有することをいう。たとえば、上記に例示した各材料により構成された筐体10であれば、UV-Cの透過が問題になりにくい。
【0015】
除塵フィルタ6は、空気流入口(第一開口部)2の近傍に設けられたフィルタである。除塵フィルタ6は、粉塵等が筐体10内に流入することを防ぐ。除塵フィルタ6は、空気の流れ方向(図1の左から右に向かう方向)において3mm以上の厚みを有する。
【0016】
本実施形態では、除塵フィルタ6として、プレフィルタ61およびフィルタエレメント62が設けられている。プレフィルタ61およびフィルタエレメント62として、いずれも従来の空調機において吸気口に設置されるものを使用できる。また、フィルタエレメント62が、一般的に「中性能フィルタ」に分類されるもの、すなわち、JIS B 9908:2011に従って測定される0.4μmの粒子に対する初期捕集率が60%以上のフィルタエレメントであると、従来の空調機に設けられるフィルタチャンバの機能を除塵フィルタ6によって代替できるため、好ましい。かかる要件を満たすフィルタエレメント62としては、シート状、プリーツ状、ハニカム状などの形状のフィルタエレメントが例示されるが、これらに限定されない。
【0017】
光触媒フィルタ5は、空気流出口(第二開口部)3の近傍に設けられたフィルタであり、光触媒作用を有する。光触媒フィルタ5は、酸化チタンなどの光触媒作用を有する物質を含んでおり、かかる物質自身によってフィルタが形成されたものであってもよいし、他の物質製のフィルタに光触媒作用を有する物質が担持されたものであってもよい。後者の態様における他の物質製のフィルタとしては、セラミックフィルタ、アルミナフィルタ、チタンフィルタ、シリカフィルタ、銅フィルタ、ステンレスフィルタ、およびニッケルフィルタなどが例示されるが、これらに限定されない。なお、以下では光触媒作用を有する物質として酸化チタンが用いられている場合を例として説明する。
【0018】
光触媒フィルタ5に対して、第一光源7からUV-Cが照射され、また、第二光源8からUV-Aが照射される。これらの紫外光が照射されることによって、光触媒フィルタ5に含まれる酸化チタンの光触媒作用が生じる。この光触媒作用によって、光触媒フィルタ5を通過する空気が除菌される。また、光触媒作用によって、空気に含まれる有機物を分解できるので、脱臭および揮発性有機化合物(VOC)の除去を行うことができる。
【0019】
第一光源7は、発光時にUV-Cを発する発光ダイオードである。第一光源7は、空気の流れ方向において空気流入口(第一開口部)2の下流に配され、空気の流れ方向の下流に向けて、すなわち光触媒フィルタ5に向けて光を照射する姿勢で、一つ設置されている。
【0020】
第一光源7が発するUV-Cは、二つの役割を果たす。第一の役割は、流路4の除菌である。第一光源7が発したUV-Cは、筐体10内の流路4を通過して光触媒フィルタ5に到達する。そのため、筐体10内の空気に対してUV-Cが照射されることになり、筐体10内の空気が除菌される。また、第二の役割は、光触媒フィルタ5に含まれる酸化チタンを励起して光触媒作用を生じさせることである。
【0021】
第二光源8は、発光時にUV-A(波長315nm以上400nm以下の紫外光をいう。)を発する発光ダイオード(第二の発光ダイオードの一例である。)である。第二光源8は、第一光源7と同様に、空気の流れ方向において空気流入口(第一開口部)2の下流に配され、空気の流れ方向の下流に向けて、すなわち光触媒フィルタ5に向けて光を照射する姿勢で、二つ設置されている。
【0022】
第二光源8が発するUV-Aは、光触媒フィルタ5に含まれる酸化チタンを励起して光触媒作用を生じさせる役割を果たす。UV-C仕様の発光ダイオードは、他の波長域の紫外光発光ダイオードに比べて、発光効率が低くかつ高価である。そこで本実施形態では、光触媒フィルタ5に十分な光触媒作用を生じさせるために、第二光源8を併用することによって、UV-C仕様の発光ダイオードの設置数を抑制している。
【0023】
なお、UV-Cの照射による除菌を行う従来の除菌装置では、特許文献2に見られるようにUV-Cが装置の外に漏洩することを防ぐための遮光部材が設けられることが一般的である。しかしながら、本実施形態に係る除菌装置1では、そのような遮光部材は設けられていない。なお、ここでいう遮光部材とは、装置内に設けられた光源から発せられるUV-Cが装置外に漏洩することを防ぐ機能を有し、実質的に他の機能を有さない部材をいう。たとえば流路4を構成する材料は、遮光性を有することが好ましいものであるが、遮光性の他に流路4を画定する機能を有するため、ここでいう遮光部材にあたらない。
【0024】
本実施形態では、UV-Cの光源として指向性が強い発光ダイオードを用いているので、UV-Cが強い強度で照射される範囲を第一光源7の前方側に限定できる。そして、当該前方に配置されている光触媒フィルタ5が耐紫外線性を有するため、別途の遮光部材を設けずとも、光触媒フィルタ5がUV-Cを装置外に漏洩させない役割を果たす。
【0025】
また、発光ダイオードの指向性により、第一光源7の後方側に照射されるUV-Cの強度を抑制できるので、当該後方側に配置される除塵フィルタ6として特別な耐紫外線を有するものに限らず使用でき、たとえば従来の空調機に使用される仕様のフィルタエレメント等を使用できる。加えて、除塵フィルタ6の厚さを3mm以上にしてあるため、第一光源7の後方側に漏洩する比較的強度が弱いUV-Cについても、装置外への漏洩を防ぐことができる。
【0026】
以上のように、第一開口部2および第二開口部3の双方において光触媒フィルタ5および除塵フィルタ6がそれぞれUV-Cの漏洩を防ぐ役割を果たすため、別途の遮光部材を設けなくてもよい。
【0027】
〔除菌装置の使用方法〕
空調機Aの吸気口に除菌装置1を設置した状態で空調機Aを運転すると、空調機Aのファンが形成する陰圧の作用によって、空気が除菌装置1を通過して空調機Aの吸気口に吸引される。この過程で空気は、除塵フィルタ6、筐体10内の流路4、および光触媒フィルタ5を、この順で通過する。
【0028】
第一に、除塵フィルタ6において、空気中に含まれる粉塵等が捕捉される。前述の通り、除塵フィルタ6に含まれるプレフィルタ61およびフィルタエレメント62として従来の空調機において吸気口に設置されるものを使用できるので、除塵フィルタ6による粉塵等の除去は従来の空調機におけるフィルタチャンバの機能と同等である。
【0029】
第二に、筐体10内の流路4において、UV-Cの直接照射による空気の除菌が行われる。なお、筐体10内を流通する空気によって第一光源7の発光ダイオードが冷却されるので、発光ダイオードの冷却手段を省略または簡略化できる。なお、この点は第二光源8の発光ダイオードについても同様である。
【0030】
第三に、光触媒フィルタ5において、光触媒による空気の除菌が行われる。第一光源7から照射されたUV-Cおよび第二光源8から照射されたUV-Aによって光触媒フィルタ5の酸化チタンが光触媒作用を生じ、この光触媒作用によって光触媒フィルタ5を通過する空気が除菌される。また同時に、脱臭およびVOCの除去が行われる。
【0031】
本実施形態では、筐体10内の空気に対してUV-Cの直接照射による除菌が行われるとともに、光触媒フィルタ5において光触媒による空気の除菌が行われる。そのため、UV-Cの照射による除菌を行う従来の除菌装置に比べてUV-C光源の設置数を少なくしたとしても、従来の除菌装置と同等の除菌効果が得られる。
【0032】
また、本実施形態に係る除菌装置1では、UV-Cの照射による除菌を行う従来の除菌装置に通常設けられていた遮光部材が設けられていない。そのため、従来の除菌装置を用いる場合に比べて、空気の流路を単純化して空調機Aの運転効率を高めるとともに、装置寸法およびコストを抑制できる。
【0033】
〔第二の実施形態〕
図2は、第二の実施形態に係る除菌装置の使用状態を示す図である。第二の実施形態は、空気流入口(第一開口部)2の近傍に光触媒フィルタ5を設け、空気流出口(第二開口部)3の近傍に除塵フィルタ6を設ける構成である。ただしこの場合は、筐体10内に粉塵等が流入することを防ぐため、空気の流れ方向において光触媒フィルタ5より上流に追加的な除塵フィルタ9を設けることが好ましい。この場合の除塵フィルタ9は、上記の実施形態におけるプレフィルタ61に相当するものであり、すなわち従来の空調機において吸気口に設置されるプレフィルタと同等の性能のものを使用できる。そして、上記の実施形態においてプレフィルタ61が果たす役割を、本実施形態では除塵フィルタ9が果たすため、空気流出口(第二開口部)3に設置される除塵フィルタ6はフィルタエレメント62のみの構成であってよい。
【0034】
〔第三の実施形態〕
図3は、第三の実施形態に係る除菌装置の使用状態を示す図である。第三の実施形態は、除菌装置1の空気流入口(第一開口部)2にダクトD2が接続されており、人の居住空間R(空調対象室)から吸い込まれた空気がダクトD2を介して除菌装置1に流入する。除菌装置1によって除菌された空気は、天井裏の空間Cに吐出される。空調機Aの吸気口は天井裏の空間Cに開口しており、空調機は除菌された空気を天井裏の空間Cから取り入れて温度および湿度を調整したのちに、ダクトD1を介して人の居住空間R(空調対象室)に吐出する。すなわち、居住空間R、ダクトD2、除菌装置1、天井裏の空間C、空調機A、ダクトD1、居住空間Rという経路で空気が循環する。この空気の循環は、空調機Aのファンによって駆動される。
【0035】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る除菌装置および空調システムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0036】
上記の実施形態では、除菌装置1を用いて空気を除菌する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る除菌装置が除菌する流体は空気に限定されない。また、当該流体は気体にも限定されず、液体の除菌にも本発明に係る除菌装置を使用できる。
【0037】
上記の実施形態では、装置内に設けられた光源から発せられるUV-Cが装置外に漏洩することを防ぐ機能を有し、実質的に他の機能を有さない遮光部材が設けられていない構成を例として説明した。しかし、本発明に係る除菌装置において、遮光部材を併用することは妨げられない。
【0038】
上記の実施形態では、空調機AがダクトD1を介して居住空間Rに空気を吐出する構成を例として説明した。しかし本発明は、居住空間などに直接に空気を吐出する空調機(パッケージエアコンなど)にも使用できる。
【0039】
上記の実施形態では、発光時にUV-Cを発する発光ダイオードである第一光源7が一つ設けられている構成を例として説明したが、本発明において発光ダイオードの数量は限定されない。
【0040】
上記の実施形態では、発光時にUV-Aを発する発光ダイオードである第二光源8が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る除菌装置において、UV-Cを照射する発光ダイオードのみを設けてもよい。また、上記の実施形態における第二光源8のような他の光源を設ける場合、発する光はUV-Aに限定されず、光触媒作用を生じさせうる任意の波長の光でありうる。なお、他の光源の数量は限定されない。
【0041】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0042】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0043】
〔実施例の装置構成〕
第二光源8を省略した他は上記の第一の実施形態に沿って除菌装置を作成した。光触媒フィルタ5として、セラミックフィルタに酸化チタンが担持されているものを用いた。除塵フィルタ6として、一般空調機用のプレフィルタ61および中性能のフィルタエレメント62を用いた。除塵フィルタ6の厚さは300mmだった。第一光源7として、波長280nmのUV-Cを発する発光ダイオードを用いた。
【0044】
〔漏洩光量の測定〕
第一光源7を点灯した状態で、空気流入口2側および空気流出口3側の双方において、漏洩している紫外線の強度を、IEC規格60335-2-40に準拠する測定方法で測定した。空気流入口2側および空気流出口3側の双方において、各開口部の外郭からの距離が0.3mの位置における紫外線の強度が照度0.2μW/cm以下であった。すなわち、空気流入口2側および空気流出口3側の双方において、実用上問題になる水準のUV-Cの漏洩は認められなかった。
【符号の説明】
【0045】
1 :除菌装置
2 :空気流入口(第一開口部)
3 :空気流出口(第二開口部)
4 :流路
5 :光触媒フィルタ
6 :除塵フィルタ
7 :第一光源
8 :第二光源
10 :筐体
図1
図2
図3