(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082249
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】プレス式管継手のゲージ装置及びプレス式管継手の施工状態の判定方法
(51)【国際特許分類】
F16L 13/14 20060101AFI20240612BHJP
G01B 3/30 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F16L13/14
G01B3/30
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198776
(22)【出願日】2023-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022207587
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 大貴
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一美
【テーマコード(参考)】
2F061
3H013
【Fターム(参考)】
2F061AA24
2F061GG01
2F061TT03
3H013FA06
(57)【要約】
【課題】プレス式管継手のゲージ装置において、Oリングそのものの圧縮量により直接的に対応する指標に基づいて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を簡便に判定する判定する。
【解決手段】良好な施工状態における環状膨出部の外径の最小値である目標最小外径に対応する2面幅を有する挟みゲージに挿通することが可能な箇所(割出し角度)が施工後の環状膨出部に存在するか否かに基づいて、Oリングの圧縮量が所定値を満たしているか否か(即ち、施工状態の良否)を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定するためのゲージ装置であって、
対向する一組の腕部が本体部から延出し、
一組の前記腕部の夫々の対向側には互いに平行な溝部が形成されており、
前記溝部の断面は、被測定物である前記プレス式管継手の環状膨出部が嵌合して前記ソケット部の軸方向における前記環状膨出部と前記溝部との位置関係を一意に固定することが可能な形状を有しており、
良好な施工状態における前記環状膨出部の外径の最小値である目標最小外径を有する箇所である目標最小外径部が一組の前記腕部に形成された前記溝部の間に嵌合可能であるように前記溝部が配置されている、
ことを特徴とする、プレス式管継手のゲージ装置。
【請求項2】
前記環状膨出部を前記溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する記録手段を更に備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載されたプレス式管継手のゲージ装置。
【請求項3】
前記記録手段はスタンピング手段である、
ことを特徴とする、請求項2に記載されたプレス式管継手のゲージ装置。
【請求項4】
前記記録手段は、前記環状膨出部が前記溝部の間に挿通されたことを検知し当該検知を表す信号を発する挿通検知手段と、前記挿通検知手段が発する前記信号を記録及び/又は発信する信号記録手段と、を備える、
ことを特徴とする、請求項2に記載されたプレス式管継手のゲージ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1に記載されたプレス式管継手のゲージ装置を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定する判定方法であって、
前記締結作業後の前記環状膨出部において前記溝部の間に挿通させることが可能な箇所である挿通可能箇所が存在するか否かを前記ゲージ装置によって確認し、
前記挿通可能箇所が存在する場合は前記施工状態が良好であると判定し、
前記挿通可能箇所が存在しない場合は前記施工状態が不良であると判定する、
ことを特徴とする、プレス式管継手の施工状態の判定方法。
【請求項6】
請求項2に記載されたプレス式管継手のゲージ装置を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定する判定方法であって、
前記記録手段により、前記環状膨出部を前記溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する、
ことを特徴とする、請求項5に記載されたプレス式管継手の施工状態の判定方法。
【請求項7】
請求項3に記載されたプレス式管継手のゲージ装置を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定する判定方法であって、
前記記録手段はスタンピング手段であり、
前記記録手段により、前記環状膨出部を前記溝部の間に挿通させたときに前記環状膨出部に当該挿通をスタンピングによって自動的に記録する、
ことを特徴とする、請求項6に記載されたプレス式管継手の施工状態の判定方法。
【請求項8】
請求項4に記載されたプレス式管継手のゲージ装置を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定する判定方法であって、
前記記録手段は、前記環状膨出部が前記溝部の間に挿通されたことを検知し当該検知を表す信号を発する挿通検知手段と、前記挿通検知手段が発する前記信号を記録及び/又は発信する信号記録手段と、を備える、
ことを特徴とする、請求項6に記載されたプレス式管継手の施工状態の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス式管継手のゲージ装置及びプレス式管継手の施工状態の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばステンレス鋼を始めとする鉄等の金属からなる薄肉の配管要素を接続することによって構成される配管システムの施工においては、作業の容易性及び安全性の確保等の観点から、火器等の使用を必要としないメカニカル形管継手が使用されることが一般的である。メカニカル形管継手は、ステンレス協会によって定められる規格(SAS322)により、プレス式、拡管式、ナット式、転造ネジ式、差し込み式及びカップリング式等の種々の形式に分類される。
【0003】
メカニカル形管継手によれば、配管要素としての直管の端部を当該管継手(のソケット部)に内挿して環状膨出部を変形させる(カシメ加工する)ことにより、配管要素同士を接続して配管システムを編成することができる。このようなメカニカル形管継手の具体例としては、例えば特許文献1(特許第3436822号公報)に開示されている「プレス式管継手」を挙げることができる。このプレス式管継手においては、ソケット部に形成された環状膨出部の内側(環状溝)に弾性材料からなる環状のシール部材(Oリング)が装着され、配管要素(接続管)の端部(管端)がソケット部及びシール部材の内部に挿入される。そして、この状態が保持されたままソケット部の軸方向において環状膨出部を挟む両側の部分及び環状膨出部がプレスカシメ金型によって縮径加工(カシメ加工)され、径方向における内向き(求心方向)にシール部材が圧縮されて、当該管継手と配管要素とが気密又は液密に接続される。
【0004】
図10は、配管要素31の管端に一体的に形成されたプレス式管継手30に他の配管要素32が接続された様子(施工完了時)を示す模式図である。
図10に示す例においては、配管要素31の管端における一定の範囲に亘ってソケット部36が一体的に形成されている。そして、ソケット部36には環状膨出部33が一体的に形成されており、環状膨出部33の内側には図示しない環状のシール部材であるOリングが内装されている。これらのソケット部36と環状膨出部33とOリングとによってプレス式管継手30が構成されている。
【0005】
他の配管要素32とプレス式管継手30とを接続する際には、プレス式管継手30のソケット部36及び図示しないOリングの内部に配管要素32の管端が挿入される。次に、この状態が保持されたまま、環状膨出部33及びソケット部36の軸方向において環状膨出部30を挟む両側の部分(黒塗りの矢印によって図中に示す)が図示しないプレスカシメ金型によって縮径加工(カシメ加工)されて、配管要素32とプレス式管継手30とが気密又は液密に接続される。また、環状膨出部30の両側に略六角形の横断面を有する被縮径部34及び35(以降、「六角断面縮径部」と称呼される場合がある。)が形成されるので、配管要素32とプレス式管継手30との相対的な移動(例えば、割出し及び/又は抜け等)の発生も低減される。このようなプレスカシメ金型の具体例としては、例えば特許文献2(特許第7015954号公報)に開示されている「プレスカシメ金型」を挙げることができる。
【0006】
六角断面縮径部である被縮径部34及び35は、六角断面縮径部に対応する略六角形の横断面を有する空洞部分を有し且つ周方向において複数個(典型的には2つ又は3つ)の部分的な金型(部分金型)に分割されたプレスカシメ金型を径方向における内向きに動かしてソケット部36(の軸方向において環状膨出部33を挟む両側の部分の両方又は一方)を縮径させることによって形成される。このような有限数の方向(例えば2方向又は3方向)からの径方向における内向き(求心方向)の動きによって環状膨出部を均一且つ環状に縮径させることは不可能である。しかしながら、ソケット部の軸方向において環状膨出部を挟む両側(場合によっては片側)の部分を、その横断面が略六角形となるように縮径させる過程において環状膨出部33を構成する材料が被縮径部34及び35によって引っ張られる。その結果として、環状膨出部を均一且つ環状に縮径させることができる。
【0007】
そして、環状膨出部33を均一且つ環状に縮径させることにより、環状膨出部33に内包された環状の弾性体からなるOリングもまた均一に圧縮されて、配管要素32の直管部とプレス式管継手30とを気密又は液密に接続することができる。このように、ソケット部36に対してプレスカシメ型を用いて被縮径部34及び35並びに環状膨出部33の縮径加工を施す締結作業のことを「施工」と称する。施工の結果、環状膨出部内のOリングが円周状に適正量だけ圧縮されて気密性及び/又は液密性を担保することができる状態となったことを「良施工」と称し、担保することができない状態となったことを「不良施工」又は「施工不良」と称する。
【0008】
現実の施工においては、周方向において複数個(典型的には2つ又は3つ)の部分的な金型(部分金型)に分割されたプレスカシメ金型による縮径加工であるため、六角断面縮径部の横断面の形状が正確な正六角形となるように被縮径部を縮径させたとしても、環状膨出部33の外周(環状膨出部33の最外径を有する環状の稜線)は真円にはならない。一方、Oリング内に挿入されている配管要素32は略真円であるので、Oリングの圧縮量は、周方向において僅かな差が発生することになる。しかしながら、Oリングが全周に亘って所定量だけ確実に圧縮されていれば、周方向において圧縮量に僅かな差が発生したとしてもOリングの気密性又は液密性は担保可能である。
【0009】
そのような施工保証(気密性又は液密性の担保)の考え方に基づいて、現場における各施工の完了時に
図10に示す挟みゲージ37を用いて、施工の正しさを確認している。即ち、挟みゲージ37の2面幅部38に被縮径部34及び35を挿通(摺動させつつ挿入)することができることを確認することで、被縮径部34及び35の各3組の2面幅の正しさを確認し、それによってOリングの所定圧縮量を代用保証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3436822号公報
【特許文献2】特許第7015954号公報
【特許文献3】特許第7165279号公報
【特許文献4】特許第4999019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、被縮径部34及び35との寸法の正しさを2面幅部38によって確認することができたとしても、それは一義的にOリングの所定圧縮量を保証することができるものではなく、あくまで代用保証に過ぎない。施工前のソケット部36やOリング及び/又はカシメ金型等において形状の異常及び/又は何等かの不具合及び/又は異物の噛合等の問題があった場合、被縮径部34及び35の寸法は正しく施工できたとしても、Oリングの全周に亘って所定圧縮量を保証することができるとは限らない。
【0012】
また、誤ってソケット部36とプレスカシメ金型とが軸方向にズレた状態で施工してしまい、被縮径部34又は35の何れか一方のみが形成され、他方はソケット部36の施工前の表面のままという状態(所謂カシメ忘れ)も施工現場では発生する。そして、このようなカシメの不具合が発生した状態において、施工できた側だけ(形成された被縮径部34又は35の何れか一方のみ)にゲージ37を挿通させて良施工と判定するミスも想定される。この場合は当然ながら、被縮径部34又は35の何れか一方は縮径加工されていないため環状膨出部33の縮径量が不十分となり、Oリングの圧縮量が所定値を満たさなくなるので、シール不足による気体及び/又は液体の漏れが懸念される。
【0013】
このような施工及び確認の不具合を防ぐべく、代用確認ではなくOリングそのものの圧縮量を一義的に確認することができるゲージ装置が求められている。このようにOリングそのものの圧縮量を一義的に確認しようとする場合、厳密に言えば、例えば、施工後の環状膨出部33の外径を全周に亘って計測し、その最大値が所期の気密性及び/又は液密性を達成することが可能なOリングの圧縮量に対応する環状膨出部33の外径の最大値(許容最大外径)以下であり且つ周方向における環状膨出部33の外径の差が所定の閾値以下であること等を確認することが好ましいと考えられる。しかしながら、このように環状膨出部33の外径を全周に亘って計測してOリングそのものの圧縮量を一義的且つ厳密に確認する作業を現実の施工現場において簡便且つ確実に行うことは著しく困難又は不可能である。
【0014】
一方、
図10に例示した挟みゲージ37の2面幅部38を上述した許容最大外径に設定し、斯かる2面幅部38に環状膨出部33を挿通することが可能であるか否かによってOリングそのものの圧縮量を一義的に確認することも考えられる。しかしながら、この場合も、環状膨出部33の外径が許容最大外径以下であることを挟みゲージ37を用いて全周に亘って確認することは面倒且つ困難である。かといって、環状膨出部33を2面幅部38に挿通することが可能である(即ち、環状膨出部33の外径が許容最大外径以下である)ことが特定の箇所(割出し角度)において確認されたとしても、他の箇所において環状膨出部33の外径が許容最大外径よりも大きい(即ち、Oリングの圧縮量が所定値を満たさない)可能性を否定することはできない。
【0015】
以上のように、当該技術分野においては、上述したような代用確認ではなく、Oリングそのものの圧縮量により直接的に対応する指標に基づいて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を簡便に判定することができるゲージ装置及び判定方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、前述したように複数個の部分金型に分割されたプレスカシメ金型によって径方向における内向きに押圧して六角断面縮径部を形成する場合、環状膨出部を均一且つ環状に縮径させることは不可能であるものの、施工後の環状膨出部33の外径の最小値が所定値(以降、「目標最小外径」と称呼される場合がある。)以下であれば、施工後の環状膨出部33の周上の他の位置における外径が上述した許容最大外径以下であることを見出した。即ち、本発明者は、施工後の環状膨出部33において目標最小外径に対応する2面幅を有する挟みゲージに挿通することが可能な箇所(割出し角度)が存在するか否かに基づいて、Oリングの圧縮量が所定値を満たしているか否か(即ち、施工状態の良否)を判定することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0017】
具体的には、本発明に係るプレス式管継手のゲージ装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定するためのゲージ装置である。本発明装置においては、対向する一組の腕部が本体部から延出し、一組の腕部の夫々の対向側には互いに平行な溝部が形成されている。更に、前記溝部の断面は、被測定物であるプレス式管継手の環状膨出部が嵌合してソケット部の軸方向における環状膨出部と溝部との位置関係を一意に固定することが可能な形状を有する。加えて、良好な施工状態における環状膨出部の外径の最小値である目標最小外径を有する箇所である目標最小外径部が一組の腕部に形成された溝部の間に嵌合可能であるように溝部が配置されている。斯かる構成を有する本発明装置を用いて後述する方法により、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定することができる。
【0018】
好ましくは、溝部の間に環状膨出部の最小外径部を挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する記録手段を更に備える。記録手段はスタンピング手段であってもよい。或いは、記録手段は、最小外径部が前記溝部の間に挿通されたことを検知する挿通検知手段と、挿通検知手段が発する信号を記録及び/又は発信する信号記録手段を備えていてもよい。
【0019】
また、本発明に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、上述したプレス式管継手のゲージ装置(本発明装置)を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定するための判定である。本発明方法においては、締結作業後の環状膨出部において溝部の間に挿通させることが可能な箇所である挿通可能箇所が存在する場合は施工状態が良好であると判定し、挿通可能箇所が存在しない場合は施工状態が不良であると判定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プレス式管継手のゲージ装置において、Oリングが存在しない被縮径部の代用判定ではなく、Oリングそのものの圧縮量を一義的に確認することができる施工後の環状膨出部の外径を確認する。これにより、Oリングの全周に亘って所定の圧縮量が確保されたことを確実に判定することができるので、カシメ不具合に起因する施工不良を確実に排除することができる。また、施工部位へのスタンピング及び/又は信号記録によって、その部位に良施工が施されたことを確認すると同時に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(第1装置)の模式的な前方斜視図である。
【
図3】第1装置が備える2本の腕部に形成された溝部の間に環状膨出部が挿入された状態を示す模式図である。
【
図4】第1装置が備える腕部の模式的な正面図である。
【
図5】変形例1-1に係る第1装置の構成を例示する模式図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(第2装置)を用いて施工状態が良好であるという判定結果をプレス式管継手自体に直接マーキングしている状態を示す図面代用写真である。
【
図7】第2装置が備える記録手段としてのスタンピング手段によるマーキングを示す図面代用写真である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(第1方法)に含まれる各処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(第2方法)に含まれる各処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図10】従来技術に係るプレス式管継手の挟みゲージによる施工状態の良否についての判定方法を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
〈構成〉
図1及び
図2は、それぞれ、第1装置の模式的な前方斜視図及び後方斜視図である。
図1及び
図2に例示する第1装置1aは、本体部3と、本体部3に連接する把持部4と、本体部から延出する一組の腕部2とを備える。第1装置1aにおいては、別体である本体部3と把持部4とが締結手段8によって強固に接続されているが、両者が一体的に成形されていてもよい。また、本体部3と2本の腕部2とは一体的に成形されているが、別体として形成された両者が接続されていてもよい。
【0024】
把持部4は有底筒状体であり、底部5を有し、反対側の開口(図示せず)は、本体部3に穿設された挿入孔6と連通している。そして、把持部4の周壁には、例えば軽量化及びスタンピング手段10の脱着交換の容易化等を目的として、肉抜き部分であるスリット部7が複数本形成されている。また、対向する一組の腕部2の夫々の対向側には互いに平行な溝部9が形成されている。更に、詳しくは後述するように、溝部9の断面は、被測定物であるプレス式管継手の環状膨出部(図示せず)が嵌合してソケット部(図示せず)の軸方向における環状膨出部と溝部9との位置関係を一意に固定することが可能な形状を有している。更に、良好な施工状態における環状膨出部の外径の最小値である目標最小外径を有する箇所である目標最小外径部が一組の腕部2に形成された溝部9の間に嵌合可能であるように一組の腕部2に形成された溝部9が配置されている。
【0025】
尚、上記「良好な施工状態」とは、前述した「良施工」に該当する状態であり、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の結果として、環状膨出部内のOリングが円周状に適正量だけ圧縮されて気密性及び/又は液密性が担保されている状態を指す。
【0026】
上記のような構成を有する第1装置1aを用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定することができる。この点について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、第1装置1aが備える2本の腕部2に形成された溝部9の間に環状膨出部33が挿入された状態を示す模式図である。
図4は、第1装置1aが備える腕部2の模式的な正面図である。尚、プレス式管継手30そのものは
図10に例示した従来品と同様であるので、プレス式管継手30に関する図示番号(符号)は
図10に例示したものを流用する。
【0027】
施工状態の良否の判定に当たっては、先ず第1装置1aが備える2本の腕部2の先端を環状膨出部33に当接させる。この状態のままで2本の腕部2に形成された溝部9の間に環状膨出部33を挿通させることが可能である場合は、少なくとも当該箇所(割出し角度)における環状膨出部33の外径は前述した目標最小外径以下である。従って、当該外径よりも小さい外径を有する箇所が他に存在したとしても、環状膨出部33の最小外径部の外径が目標最小外径以下であると判断することができる。即ち、環状膨出部33に内包されたOリングの圧縮量が全周に亘って所定値を満たしていると判断することができるので、施工状態が良好であると判定することができる。
【0028】
また、上記状態のままでは2本の腕部2に形成された溝部9の間に環状膨出部33を挿通させることが不可能である場合は、第1装置1aを周方向に動かす割出し動作(ソケット部の軸周りにおける回転動作)を行って、上記箇所以外の何れかの箇所において環状膨出部33を2本の腕部2の溝部9の間に挿通することができるか否かを確認する。その結果、環状膨出部33を溝部9の間に挿通させることが可能な箇所が見付かった場合は、上記と同様に、少なくとも当該箇所における環状膨出部33の外径は目標最小外径以下である。従って、上記と同様に、環状膨出部33に内包されたOリングの圧縮量が全周に亘って所定値を満たしていると判断することができるので、施工状態が良好であると判定することができる。
【0029】
一方、第1装置1を周方向に動かす割出し動作を行っても環状膨出部33を溝部9の間に挿通させることが可能な箇所が見付らなかった場合は、環状膨出部33に内包されたOリングの圧縮量が全周に亘って所定値を満たしていると判断することはできないので、施工状態が不良であると判定することができる。尚、ここで言う「挿通」とは、
図3に例示するように、環状膨出部33が溝部9の間に嵌合して溝部9の内部を溝部9の延在方向に移動可能な状態を指す。また、
図3において、イは環状膨出部33の外径(山部の稜線)を、ロは環状膨出部33に隣接するソケット部36の外径を、ハはロの内径を、それぞれ表す。
【0030】
図3における環状膨出部33の外径(環状膨出部33の軸を挟んで対向する山部の稜線の間の距離)イが、
図4において互いに対向する溝部9の底部ニの間の距離β以下である場合に、上述した挿通が可能となる。前述したように複数に分割された部分金型による縮径加工は厳密には周方向全体に亘って均一ではないため、施工後の環状膨出部33の外径(山部の稜線)イもまた不均一となり、周方向において最大外径部と最小外径部とが存在する。このように不均一な環状膨出部33の外径イのうち前述した目標最小外径以下となる箇所(割出し角度)が存在することを挿通によって確認するのである。
図3においては、外径イのうち目標最小外径以下となる箇所の外径が図面における上下方向に延在しており、当該箇所を溝部9が挟持している状態、即ち、良施工がなされたと判定される状態が例示されている。
【0031】
上記のように環状膨出部33の外径イが目標最小外径以下である箇所が存在するということは、プレスカシメ金型が備える複数の部分金型が閉じきって所期の縮径加工が適正に実行され、施工後の環状膨出部33の外径が全周に亘って前述した許容最大外径以下となっていることを意味する。従って、一義的にその内部のOリングも所定量だけ圧縮されたことになるので、施工状態が良好であると判定することができる。一方、何れの箇所(割出し角度)においても環状膨出部33を溝部9の間に挿通することができない場合(即ち、環状膨出部33の外径イが目標最小外径以下である箇所が存在しない場合)は、不適正な縮径加工の結果として、施工後の環状膨出部33の外径が許容最大外径以下となっていない箇所が存在する虞がある。従って、環状膨出部33に内包されたOリングも所定量だけ圧縮されたと判断することはできないので、施工状態が不良であると判定する。
【0032】
尚、第1装置1aにおいては、前述したように、被測定物であるプレス式管継手の環状膨出部33が嵌合してソケット部の軸方向における環状膨出部33と溝部9との位置関係を一意に固定することが可能な形状を溝部9の断面が有する。溝部9の断面形状は、環状膨出部33が嵌合してソケット部の軸方向における環状膨出部33と溝部9との位置関係を一意に固定することが可能な限り特に限定されない。溝部9の断面は、例えば、施工後の環状膨出部33の外形に沿った形状を有していてもよく、或いは、
図4に例示するように、所定の角度αにて開口するV字状の形状を有していてもよい。
【0033】
溝部9が上記のような構成を有することにより、第1装置1aにおいては、環状膨出部33の外径(山部の稜線)イの大きさのみならず、環状膨出部33の断面形状をも確認することができる。
図4は2本の腕部2の正面図であり、上述したように、角度αにて開口し互いに対向する溝部9が2本の腕部2に形成された状態を表している。この溝部9は、環状膨出部33が嵌合して環状膨出部33と溝部9との位置関係を一意に固定することが可能な形状を有する。従って、例えばカシメ加工の不良等に起因して環状膨出部33の断面が歪んでいた場合は環状膨出部33を溝部9に正しく嵌装することができないので、不良施工を検知することができる。
【0034】
〈効果〉
以上のように、本発明の第1実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(第1装置)においては、対向する一組の腕部が本体部から延出し、一組の腕部の夫々の対向側には互いに平行な溝部が形成されている。更に、溝部の断面は、被測定物であるプレス式管継手の環状膨出部が嵌合してソケット部の軸方向における環状膨出部と溝部との位置関係を一意に固定することが可能な形状を有する。加えて、良好な施工状態における環状膨出部の外径の最小値である目標最小外径を有する箇所である目標最小外径部が一組の腕部に形成された溝部の間に嵌合可能であるように溝部が配置されている。
【0035】
従って、第1装置によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業後(施工後)の環状膨出部において溝部の間に挿通させることが可能な箇所(割出し角度)である挿通可能箇所が存在するか否かに基づいて、外径が目標最小外径以下である箇所が環状膨出部に存在するか否かを判定することができる。
【0036】
挿通可能箇所が環状膨出部に存在する場合、上述したように、外径が目標最小外径以下である箇所が環状膨出部に存在する。従って、この場合は、プレスカシメ金型が備える複数の部分金型が閉じきって所期の縮径加工が適正に実行され、施工後の環状膨出部の外径が全周に亘って前述した許容最大外径以下となっていると判断することができる。即ち、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態が良好であると判断することができる。
【0037】
逆に、挿通可能箇所が環状膨出部に存在しない場合は、外径が目標最小外径以下である箇所が環状膨出部に存在しない。従って、この場合は、プレスカシメ金型が備える複数の部分金型が閉じきらずに所期の縮径加工が適正に実行されておらず、施工後の環状膨出部の外径において前述した許容最大外径以下となっていない箇所が存在すると判断することができる。即ち、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態が不良であると判断することができる。
【0038】
以上のように、第1装置によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を簡便に判定することができる。
【0039】
〈変形例1-1〉
第1装置に関する上記説明においては1つの外径に対応する1つのゲージのみを備える第1装置を例示したが、例えば両口のレンチ等のように、異なる複数の外径に対応する複数のゲージを第1装置が備えることもできる。
図5は変形例1-1に係る第1装置の構成を例示する模式図であり、(a)は模式的な側面図であり、(b)は内部構造が破線によって描かれている模式的な側面図である。
図5に例示する第1装置1a’においては、
図1から
図3に例示した第1装置1aに相当する小径側(
図5における下側)のゲージと、当該ゲージよりも大きい外径に対応するように、より広い間隔を空けて対向する一組の腕部2を備えるもう1つの大径側(
図5における上側)のゲージとが、底部5を介して接合されて、1つの工具を構成している。
【0040】
上記のような構成を有する第1装置1a’によれば、異なる2つの外径を有する2種類のプレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を1つの工具によって判定することができる。従って、例えば異なる2つの外径を有する2種類のプレス式管継手を用いて構成される配管システムの施工時における工具の交換の必要性を低減して、作業効率を高めることができる。尚、当然のことながら、1つの工具として構成されるゲージの種類は2つに限定されるものではなく、3種類以上のゲージを1つの工具として統合してもよい。
【0041】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
上述したように、第1装置によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を簡便に判定することができる。例えば配管システムの施工において施工状態の品質を保証する観点等からは、施工状態の良否についての判定結果を記録することが好ましく、斯かる記録が自動的になされることがより好ましい。
【0043】
〈構成〉
そこで、第2装置は、上述した第1装置であって、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する記録手段を更に備える、ことを特徴とする、プレス式管継手のゲージ装置である。
【0044】
記録手段の具体的な構成は、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録することが可能である限り、特に限定されない。例えば、第1装置に関する説明において参照した
図1から
図3に例示した第1装置1aは、上記記録手段として、スタンピング手段を備えている。従って、以下の説明においては、
図1から
図3を参照しつつ、
図1から
図3に例示した第1装置1aを「第2装置1b」と称呼する。
【0045】
第2装置1bにおいては、本体部3に穿設された挿入孔6及び把持部4の内部に記録手段としてのスタンピング手段10が収納され、スタンピング時の反力によって移動しない程度に嵌合固定されている。スタンピング手段10は本体部分と、本体部に出入自在のストローク部11とからなり、本体部分が把持部4の内部に嵌合固定されている。そしてストローク部11は、挿入孔6を貫通して、腕部2の溝部9と平行にストロークすることができるようになっている。ストローク部11の先端には、図示しないプレス式管継手に当接して例えばインク又はペンキ等の塗料を付着させるための印面12が設けられている。
【0046】
上記のような構成を有する第2装置1bによれば、施工状態が良好であるという判定結果を目視確認することができるようにプレス式管継手30自体に直接マーキングすることができる。斯かるマーキングの詳細につき、
図3、
図6及び
図7を参照しながら以下に詳しく説明する。尚、
図6は、施工状態が良好であるという判定結果を、第2装置1bを用いてプレス式管継手30自体に直接マーキングしている状態を示す図面代用写真である。また、
図7は、第2装置1bが備える記録手段としてのスタンピング手段10によるマーキングを示す図面代用写真である。
【0047】
図3に例示する状態においては、環状膨出部33が2本の腕部2に形成された溝部(図示せず)の間に挿通されてスタンピング手段10の印面12と当接している。その結果、挿通に伴う環状膨出部33の印面12への圧着により、例えばインク又はペンキ等の塗料が圧着部に自動的に塗布(付着)されている。この状態においては、印面12を保持するストローク部がスタンピング手段10の内部へ弾性的に収納(ストローク)されて、ストローク反力によって印面12が図の左方に向かって押されている。
【0048】
図3及び
図6における挿通状態から環状膨出部33を図の左方へと移動させて2本の腕部2の間から引き抜くと、プレス式管継手30が上述した挿通状態及び記録状態から解放される。そして、プレス式管継手30の環状膨出部33の一部には、
図7に示すように、例えばペンキ又はインク等の塗料によるマーキング39が塗布されている。即ち、マーキング39の存在がプレス式管継手30への良施工(適正な縮径加工)の証明・記録となる。
【0049】
上記説明においては付着させるインクが乾燥しないように非スタンピング時に印面を収納することができる所謂「反転式印判」をスタンピング手段10として使用する例について述べたが、スタンピング手段は反転式印判に限られず、インク又はペンキ等を付着させることが可能な手段であれば、例えば市販の製品等から任意に選択することができる。もちろん、本体部に対して印面がストロークしない固定型のスタンピング手段を採用することもできるが、例えば挿通時の環状膨出部との当接に伴う衝撃を緩和したり、環状膨出部への印面の確実に圧着させたりする観点からは、ストロークにより弾性的な押付力を発生することができるストローク型が好ましい。また、把持部4内にカートリッジ式のスタンピング手段を内装したが、これに限られず、スタンピング機能を把持部4自体が備えていてもよい。
【0050】
また、上記説明においては単にインク又はペンキを点状又は面状に環状膨出部に付着させる例を示したが、スタンピングの形態はこれに限られず、例えば模様、数字及び/又は文字等をスタンピングするようにしてもよく、インク又はペンキに磁性体を混入させて電磁気情報を付加してもよい。更に、スタンピングには、刻印(転写)も含まれる。加えて、例えばスプレー缶のようにインクを含む気体及び/又は液体を噴射することが可能な噴射手段をスタンピング手段に代えて第2装置に装備しておき、噴射手段が備える所定の部材を環状膨出部が押圧すると上記気体及び/又は液体が噴射されるようにしてもよい。
【0051】
〈効果〉
以上のように、本発明の第2実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(第2装置)には、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する記録手段を更に備える。従って、第2装置によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否についての判定結果を自動的に記録することができるので、例えば配管システムの施工において施工状態の品質を確実且つ簡便に保証することができる。
【0052】
〈変形例2-1〉
第2装置が備える記録手段は、上述したように例えばインク又はペンキ等の塗料を環状膨出部に付着させるタイプに限定されるものではない。変形例2-1に係る第2装置において、環状膨出部が溝部の間に挿通されたことを検知し当該検知を表す信号を発する挿通検知手段と、挿通検知手段が発する信号を記録及び/又は発信する信号記録手段と、を記録手段が備える。
【0053】
例えば、変形例2-1に係る第2装置は、スタンピング手段に代えて、例えばリミットスイッチ、近接センサ又は光学センサ等のデバイスを挿通検知手段として設け、環状膨出部が溝部の間に挿通されたこと(挿通状態)を当該デバイスによって電磁気的に検知して、検知結果に対応する信号である検知信号(例えば、挿通結果としての良施工信号)を第2装置が備える信号記録手段としてのメモリ等のデータ記憶手段に格納するように構成されていてもよい。或いは、変形例2-1に係る第2装置が備える記録手段は、第2装置が備える通信装置を介して挿通検知手段から別体の信号記録手段へと検知信号を配信してデータとして記録・蓄積するように構成されていてもよい。
【0054】
上記の場合、例えばプレス式管継手のソケット部への配管要素の適正な挿入代を表示する印をマーキングするための治具をマーキングの良否を示す信号を発するように構成し、変形例2-1に係る第2装置によって取得されるカシメ加工の良否についての判定結果と併せて、配管システムの施工状態の良否を判断するようにしてもよい。また、特許文献3(特許第7165279号公報)に記載されているように個々の配管要素の識別情報(例えば、ID番号等)及び/又は当該配管要素によって構成される配管システムの設置場所等の各種情報を画像認識及び/又はRFID(Radio Frequency Identification)システム等を用いて取得し、変形例2-1に係る第2装置によって取得されるカシメ加工の良否についての判定結果と併せて、データとして記録するようにしてもよい。
【0055】
更に、例えば特許文献4(特許第4999019号公報)に記載された発明のようにカシメ加工時におけるカシメ工具の負荷(例えば、電流、電圧、反力及びストローク等)に対応する信号を検出し、変形例2-1に係る第2装置によって取得される検知信号と併せて、データとして記録するようにしてもよい。このようにして記録・蓄積された、より多くのデータを利用することにより、例えば構成要素の識別情報、施工履歴及び/又は施工状態の良否等を総合的に判断し、これらの判断結果に基づいたアクションを採ることが可能となる。
【0056】
加えて、上記のようにして取得した各種データを、変形例2-1に係る第2装置が備えるデータ記憶装置(例えばメモリ及び/又はICタグ(RFID)等)に格納したり、変形例2-1に係る第2装置が備える有線又は無線による通信装置によってリアルタイム又はバッチ式にて外部(例えば、他のコンピュータ及び/又は配管システムに付与されたRFID)へ発信したりしてもよい。更には、カシメ加工を行うロボットとの連携に、これらのデータを利用してもよい。
【0057】
〈変形例2-2〉
ところで、前述した変形例1-1に係る第1装置1a’のように異なる複数の外径に対応する複数のゲージを第2装置が備える場合、例えば
図5に例示した第1装置1a’の大径側(
図5における上側)のゲージをプレス式管継手の小径側の環状膨出部に誤って適用してしまうと、施工状態の如何に拘わらず環状膨出部を溝部の間に挿通することが可能な箇所(挿通可能箇所)が存在する場合がある。即ち、この場合は、たとえ施工状態が不良であっても、施工状態が良好であると判定され、その旨の記録が残されてしまう。
【0058】
そこで、変形例2-2に係る第2装置においては、異なる複数の外径に対応する複数のゲージを備え、それぞれのゲージにおける前記挿通を区別可能に自動的に記録するように前記記録手段が構成されている。
【0059】
例えば、変形例2-2に係る第2装置が
図1から
図3に例示した第2装置1bのようにスタンピング手段を記録手段として備える場合は、環状膨出部に付着させるインク又はペンキ等の塗料の色を各ゲージが備える腕部の間隔に応じて使い分けたり、スタンピングする模様、数字及び/又は文字等を各ゲージが備える腕部の間隔に応じて使い分けたりすることができる。或いは、磁性体を塗料に混入させることによって付加する電磁気情報を各ゲージが備える腕部の間隔に応じて使い分けてもよい。更に、前述したように噴射手段によって噴射されるインクを含む気体及び/又は液体を各ゲージが備える腕部の間隔に応じて使い分けてもよい。
【0060】
また、上述した変形例2-1に係る第2装置のように挿通検知手段によって電磁気的に検知された挿通状態に対応する検知信号を信号記録手段にデータとして記録する場合は、例えば当該検知信号及び/又はデータの形式等を各ゲージが備える腕部の間隔に応じて使い分けてもよい。
【0061】
変形例2-2に係る第2装置によれば、異なる複数の外径に対応する複数のゲージを第2装置が備える場合において施工状態を確認しようとする環状膨出部の外径に適合しない間隔を有する腕部を備えるゲージを誤って使用した結果として、実際には施工状態が不良であっても施工状態が良好であると誤判定されて当該記録が残されてしまっても、当該記録の形式(例えば、塗料の色、スタンピングの形状、電磁気情報又はデータ形式等)が環状膨出部の外径に対応しないので、当該記録が誤判定に基づくものであることを認知することができる。
【0062】
尚、変形例2-2に係る第2装置に関する上記説明においては異なる複数の外径に対応する複数のゲージを第2装置が備える場合について述べたが、1つの外径に対応する1つのゲージを備える第2装置においても上記のように各第2装置が備える腕部の間隔に応じて挿通記録の様式を使い分けてもよい。これによれば、施工状態を確認しようとする環状膨出部の外径に適合しない間隔を有する腕部を備える第2装置を誤って使用した結果として、実際には施工状態が不良であっても施工状態が良好であると誤判定されて当該記録が残されてしまっても、当該記録の形式が環状膨出部の外径に対応しないので、当該記録が第2装置の誤用に基づくものであることを認知することができる。
【0063】
《第3実施形態》
ところで、本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、プレス式管継手のゲージ装置のみならず、プレス式管継手の施工状態の判定方法にも関する。以下、本発明の第3実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について、図面を参照しながら説明する。
【0064】
〈構成〉
第1方法は、上述した第1装置及び第2装置を始めとする本発明に係るプレス式管継手のゲージ装置(本発明装置)を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定するための判定である。本発明装置の構成については、第1装置及び第2装置に関する説明において既に詳細に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0065】
図8は、第1方法に含まれる各処理の流れを例示するフローチャートである。
図8に例示するように、第1方法の実行に先立って、ステップS01において、プレス式管継手のソケット部にカシメ加工によって配管要素を接続する締結作業が行われる。
【0066】
その後、ステップS02において、締結作業後の環状膨出部において溝部の間に挿通させることが可能な箇所である挿通可能箇所が存在するか否かを本発明装置によって確認する。締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在するか否かを本発明装置によって確認する方法についても、第1装置及び第2装置に関する説明において既に詳細に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0067】
ステップS02における確認の結果、締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在する場合(ステップS03:Yes)は、次のステップS04において施工状態が良好であると判定する。一方、締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在しない場合(ステップS03:No)は、次のステップS05において施工状態が不良であると判定する。
【0068】
〈効果〉
以上のように、本発明の第3実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(第1方法)においては、本発明装置を用いて締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在するか否かを確認する。そして、締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在する場合は施工状態が良好であると判定し、締結作業後の環状膨出部に挿通可能箇所が存在しない場合は施工状態が不良であると判定する。
【0069】
従って、第1方法によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を簡便に判定することができる。
【0070】
尚、変形例1-1に係る第1装置1a’に関する説明において
図5を参照しながら述べたように、異なる複数の外径に対応する複数のゲージを本発明装置が備えることもできる。第1方法は、このように異なる複数の外径に対応する複数のゲージを備える本発明装置を使用する場合にも適用可能である。
【0071】
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について、図面を参照しながら説明する。
【0072】
本発明の第2実施形態に係るプレス式管継手のゲージ装置(第2装置)に関する説明において述べたように、例えば配管システムの施工において施工状態の品質を保証する観点等からは、施工状態の良否についての判定結果を記録することが好ましく、斯かる記録が自動的になされることがより好ましい。
【0073】
〈構成〉
そこで、第2方法は、上述した第2装置を用いて、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否を判定する判定方法である。第2装置の構成については、第2装置に関する説明において既に詳細に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0074】
第2方法においては、第2装置が備える記録手段により、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する。環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録する方法についても、第2装置に関する説明において既に詳細に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0075】
図9は、第2方法に含まれる各処理の流れを例示するフローチャートである。
図9に例示するフローチャートは、施工状態が良好であると判定するステップS04の次に、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を記録手段によって自動的に記録するステップS06が追加されている点を除き、
図8に例示したフローチャートと同様である。
【0076】
〈効果〉
以上のように、本発明の第4実施形態に係るプレス式管継手の施工状態の判定方法(第2方法)においては、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通が記録手段によって自動的に記録される。従って、第2方法によれば、プレス式管継手のソケット部に配管要素を接続する締結作業の施工状態の良否についての判定結果を自動的に記録することができるので、例えば配管システムの施工において施工状態の品質を確実且つ簡便に保証することができる。
【0077】
尚、第2装置に関する説明において述べたように、記録手段の具体的な構成は、環状膨出部を溝部の間に挿通させたときに当該挿通を自動的に記録することが可能である限り、特に限定されない。記録手段は、前述したように、例えばインク又はペンキ等の塗料を環状膨出部に付着させるスタンピング手段であってもよく、或いはスプレー缶等の噴射装置であってもよい。更に、変形例2-1に係る第2装置に関する説明において述べたように、環状膨出部が溝部の間に挿通されたことを検知し当該検知を表す信号を発する挿通検知手段と、挿通検知手段が発する信号を記録及び/又は発信する信号記録手段と、を記録手段が備えていてもよい。
【0078】
加えて、変形例2-2に係る第2装置に関する説明において述べたように、異なる複数の外径に対応する複数のゲージを第2装置が備える場合、各ゲージが備える腕部の間隔に応じて挿通記録の様式を使い分けてもよい。これによれば、施工状態を確認しようとする環状膨出部の外径に適合しない間隔を有する腕部を備えるゲージを誤って使用した結果として、実際には施工状態が不良であっても施工状態が良好であると誤判定されて当該記録が残されてしまっても、当該記録の形式が環状膨出部の外径に対応しないので、当該記録がゲージの誤用に基づくものであることを認知することができる。
【0079】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。例えば、本明細書においてはプレス式管継手の例示として環状膨出部33の両側に六角断面縮径部である被縮径部34及び35を形成する所謂ダブルプレス式管継手を採用したが、これに限らず、被縮径部が片側にしかない所謂シングルプレス式管継手にも、多数条の被縮径部を有するようなプレス式管継手にも、本発明を適用することができる。また、一組の腕部2を平行に維持したまま両者の間隔を可変として、異なる外径を有するプレス式管継手に本発明を適用することができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 ゲージ装置
2 腕部
3 本体部
4 把持部
5 底部
6 挿入孔
7 スリット部
8 締結部材
9 溝部
10 スタンピング手段
11 ストローク部
12 印面
30 プレス式管継手
31,32 配管要素
33 環状膨出部
34,35 被縮径部
36 ソケット部
37 挟みゲージ
38 2面幅部
39 マーキング