(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082266
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】密閉断熱タンク
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240612BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20240612BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20240612BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F17C13/00 302E
F17C3/04 A
B65D90/02 B
B63B25/16 F
B63B25/16 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205865
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】2212928
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ グルムラン
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170DA02
3E170LA06
3E172AA03
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BD01
3E172CA07
3E172CA32
3E172DA02
3E172EB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクに関する。
【解決手段】タンク壁(1)は断熱バリア(6)と密閉メンブレンを備え、前記断熱バリア(6)は、第1溝(13)と第2溝(14)を備え、熱保護ストリップ(21)が、前記第1溝(13)及び前記第2溝(14)内に配置され、密閉メンブレンは、4枚の波形金属プレートで構成され、前記タンク壁(1)は、金属封止プレート(22)を備え、前記金属封止プレートの下面は、溝こぶの1つに接着されており、前記波形金属プレートのコーナ領域が、前記金属封止プレートの上面に溶接され、前記金属封止プレートの上面は、前記波形金属プレートの下に位置する被覆部を備え、非被覆部は、液化ガスと接触するように設計されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス貯蔵用の密閉断熱タンク(71)のタンク壁(1)に密閉メンブレン(8)を取り付ける方法であって、前記密閉断熱タンク(71)は支持構造体(2)に組み込まれており、
前記取り付ける方法は、
-前記支持構造体(2)上に固定された断熱バリア(6)を備えるタンク壁(1)を提供するステップであって、前記断熱バリア(6)は、互いに並置された断熱パネルを備え、カバープレート(10)を備え、前記断熱バリア(6)は、前記断熱パネルの前記カバープレート(10)に設けられた第1溝(13)及び第2溝(14)を備え、前記第1溝(13)は第1方向に互いに平行に延在し、前記第2溝(14)は第2方向に互いに平行に延在し、前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、いわゆる第1溝(13)は、溝こぶ(15)においていわゆる第2溝(14)と交差し、第1及び第2熱保護ストリップ(21)は、それぞれ前記第1溝(13)及び前記第2溝(14)内に配置されている、ステップと、
-前記溝こぶ(15)で前記第1及び第2熱保護ストリップ(21)を切断するステップと、
-上面と下面とを備える金属封止プレート(22)を提供するステップと、
-前記金属封止プレート(22)の下面を前記カバープレート(10)上の前記溝こぶ(15)に接着するステップと、
-前記タンク壁(1)の前記密閉メンブレン(8)を形成するように設計された4枚の波形金属プレート(16)を提供するステップであって、各金属プレートは長方形の形状を有し、第1縁部(17)と第2縁部(18)を備え、前記第1縁部(17)はコーナ領域(19)で前記第2縁部(18)と結合するステップと、
-各第1縁部(17)が前記第1溝(13)の1つと揃うように配置されるように、前記4枚の波形金属プレート(16)を位置決めして溶接するステップであって、各第2縁部(18)は、前記第2溝(14)の1つと揃うように配置され、前記波形金属プレート(16)の前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接され、前記波形金属プレート(16)の前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接され、前記波形金属プレート(16)の前記コーナ領域(19)が前記金属封止プレート(22)の前記上面に溶接されており、前記金属封止プレート(22)の前記上面は、被覆部(42)と、前記被覆部(42)と相補的な非被覆部(43)と、を備え、前記被覆部は、前記4枚の波形金属プレート(16)の下に位置し、前記非被覆部(43)は、前記液化ガスと接触するように設計されている、ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属封止プレート(22)を接着する工程の前に、前記溝こぶ(15)内にテンプレート(23)を配置するステップを含み、前記テンプレート(23)は、レセプタクル(25)を少なくとも部分的に取り囲む境界(24)を備え、前記レセプタクル(25)は、前記金属封止プレート(22)と少なくとも部分的に相補的な形状を有し、
前記金属封止プレート(22)を接着するステップは、前記金属封止プレート(22)を前記テンプレート(23)の前記レセプタクル(25)に配置することによって実行され、
前記テンプレート(23)は、前記金属封止プレート(22)を接着するステップの後に取り出されることが好ましい
ことを特徴とする請求項1に記載の密閉メンブレン(8)を取り付ける方法。
【請求項3】
前記波形金属プレート(16)を配置及び溶接するステップの前に、位置決めマークによって前記金属封止プレート(22)にマーキングするステップを含み、
前記位置決めマークは、位置決めされる前記波形金属プレート(16)の前記コーナ領域の位置を示すように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉メンブレン(8)を取り付ける方法。
【請求項4】
液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンク(71)であって、前記密閉断熱タンク(71)は支持構造体(2)に組み込まれるように設計されており、前記タンクは少なくとも1つのタンク壁(1)を備え、
前記タンク壁(1)は、前記支持構造体(2)上に直接的又は間接的に固定された断熱バリア(6)と、前記断熱バリア(6)によって支持される密閉メンブレン(8)と、を備え、前記液化ガスと接触するように設計されており、
前記断熱バリア(6)は、互いに並置された断熱パネル(7、12)を備え、前記断熱パネルは、カバープレート(10)を備え、前記断熱バリア(6)は、前記断熱パネルのカバープレート(10)に設けられた第1溝(13)及び第2溝(14)を備え、
前記第1溝(13)は第1方向に互いに平行に延在し、
前記第2溝(14)は第2方向に互いに平行に延在し、
前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、
いわゆる第1溝(13)は、溝こぶ(15)においていわゆる第2溝(14)と交差し、
前記タンク壁(1)は、金属封止プレート(22)を備え、前記金属封止プレート(22)は、上面と下面とを備え、
前記金属封止プレート(22)の前記下面が、接着性樹脂によって前記溝こぶ(15)で前記断熱バリア(6)に接着されており、
第1及び第2熱保護ストリップ(21)が、前記溝こぶ(15)の外側の前記第1溝(13)及び前記第2溝(14)内に配置されており、
前記密閉メンブレン(8)は、前記金属封止プレート(22)に隣接する少なくとも3枚の波形金属プレート(16)を備え、
各波形金属プレート(16)は、長方形の形状を有し、前記第1方向に延びる第1縁部(17)と、前記第2方向に延びる第2縁部(18)と、を備え、
前記波形金属プレート(16)の前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレート(16)の前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレート(16)の少なくとも2枚は、前記金属封止プレート(22)の前記上面に溶接されるコーナ領域(19)を備え、前記コーナ領域(19)は、前記第1縁部(17)と前記第2縁部(18)とを接続し、
前記波形金属プレート(16)の前記少なくとも2枚は、前記第1熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第1縁部(17)と、前記第2熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第2縁部(18)と、を有し、
前記金属封止プレート(22)の前記上面は、被覆部(42)と、前記被覆部(42)と相補的な非被覆部(43)と、を備え、
前記被覆部(42)は、前記少なくとも3枚の波形金属プレート(16)の下に位置し、前記非被覆部(43)は、前記液化ガスと接触するように設計されている
ことを特徴とする密閉断熱タンク(71)。
【請求項5】
前記金属封止プレート(22)の前記下面が、接着性樹脂によって前記溝こぶ(15)で前記断熱バリア(6)に接着されており、
前記接着性樹脂は、前記密閉断熱タンク(71)の製造時における常温における前記金属封止プレート(22)の重量以上の荷重に耐えられるように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項6】
液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンク(71)であって、前記密閉断熱タンク(71)は支持構造体(2)に組み込まれるように設計されており、前記タンクは少なくとも1つのタンク壁(1)を備え、
前記タンク壁(1)は、前記支持構造体(2)上に直接的又は間接的に固定された断熱バリア(6)と、前記断熱バリア(6)によって支持される密閉メンブレン(8)と、を備え、前記液化ガスと接触するように設計されており、
前記断熱バリア(6)は、互いに並置された断熱パネル(7、12)を備え、前記断熱パネルは、カバープレート(10)を備え、前記断熱バリア(6)は、前記断熱パネルのカバープレート(10)に設けられた第1溝(13)及び第2溝(14)を備え、
前記第1溝(13)は第1方向に互いに平行に延在し、
前記第2溝(14)は第2方向に互いに平行に延在し、
前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、
いわゆる第1溝(13)は、溝こぶ(15)においていわゆる第2溝(14)と交差し、
前記タンク壁(1)は、金属封止プレート(22)を備え、前記金属封止プレート(22)は、上面と下面とを備え、
前記金属封止プレート(22)の前記下面が、前記溝こぶ(15)で前記断熱バリア(6)に対して自由とされており、
第1及び第2熱保護ストリップ(21)が、前記溝こぶ(15)の外側の前記第1溝(13)及び前記第2溝(14)内に配置されており、
前記密閉メンブレン(8)は、前記金属封止プレート(22)に隣接する少なくとも3枚の波形金属プレート(16)を備え、
各波形金属プレート(16)は、長方形の形状を有し、前記第1方向に延びる第1縁部(17)と、前記第2方向に延びる第2縁部(18)と、を備え、
前記波形金属プレート(16)の前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレート(16)の前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレート(16)の少なくとも2枚は、前記金属封止プレート(22)の前記上面に溶接されるコーナ領域(19)を備え、前記コーナ領域(19)は、前記第1縁部(17)と前記第2縁部(18)とを接続し、
前記波形金属プレート(16)の前記少なくとも2枚は、前記第1熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第1縁部(17)と、前記第2熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第2縁部(18)と、を有し、
前記金属封止プレート(22)の前記上面は、被覆部(42)と、前記被覆部(42)と相補的な非被覆部(43)と、を備え、
前記被覆部(42)は、前記少なくとも3枚の波形金属プレート(16)の下に位置し、前記非被覆部(43)は、前記液化ガスと接触するように設計されている
ことを特徴とする密閉断熱タンク(71)。
【請求項7】
前記密閉メンブレン(8)は、前記金属封止プレート(22)に隣接する3枚の波形金属プレート(16)を備え、
前記波形金属プレート(16)の2枚は、前記金属封止プレート(22)の前記上面に溶接されるコーナ領域(19)を備え、
前記波形金属プレート(16)の前記2枚は、前記第1熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第1縁部(17)と、前記第2熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第2縁部(18)と、を備え、
前記波形金属プレートの3枚目の前記第1縁部(71)は、前記金属封止プレート(22)の前記上面を通過し、前記被覆部(42)は、前記3枚の波形金属プレート(16)の下に位置する
ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項8】
前記密閉メンブレン(8)は、前記金属封止プレート(22)に隣接する4枚の波形金属プレート(16)を備え、
各波形金属プレート(16)は、前記金属封止プレート(22)の前記上面に溶接されるコーナ領域(19)を備え、
各波形金属プレート(16)は、前記第1熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第1縁部(17)と、前記第2熱保護ストリップ(21)と揃うように配置された前記第2縁部(18)と、を備え、
前記被覆部(42)は、前記4枚の波形金属プレート(16)の下に位置する
ことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項9】
前記タンク壁(1)と前記支持構造体(2)は、それらを通過するダクトを備え、
前記密閉メンブレン(8)は、前記ダクトの周囲全体に配置された封止プレート(30)を備え、
前記封止プレート(30)には、前記ダクトが通過するオリフィス(31)が設けられており、
前記波形金属プレート(16)の少なくとも1つは、前記封止プレート(30)に封止された態様で接続される縁部を有する
ことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項10】
前記第1溝(13)及び前記第2溝(14)は、それぞれ、溝ベースと、溝の幅だけ離れた2つの対向する縁部と、を備え、
前記第1及び第2熱保護ストリップ(21)は、前記溝ベースに対して支持されており、
前記金属封止プレート(22)は、前記第1溝(13)の前記縁部及び前記第2溝(14)の前記縁部から間隔をあけて、前記溝こぶ(15)内に配置されており、
ことを特徴とする請求項4~9のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項11】
前記金属封止プレート(22)は、長方形の形状を有し、
前記金属封止プレート(22)の2つの第1辺は、前記第1方向に延在し、
前記金属封止プレート(22)の2つの第2辺(27)は、前記第2方向に延在し、
前記第1辺(26)は、角において前記第2辺(27)と結合し、
前記角が面取りされている
ことを特徴とする請求項4~10のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項12】
前記波形金属プレート(16)のコーナ領域(19)は、面取りされている
ことを特徴とする請求項4~11のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項13】
前記タンク壁(1)は、天井壁であり、
前記密閉断熱タンク(71)は、
前記天井壁と、
高さ方向において前記天井壁とは反対側の底壁と、
前記底壁を前記天井壁に接続する1つ又は複数の側壁と、
を備える
ことを特徴とする請求項4~12のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項14】
前記断熱バリア(6)は、一次断熱バリアであり、
前記密閉メンブレン(8)は、一次密閉メンブレンであり、
前記タンク壁(1)は、
前記一次断熱バリアと前記支持構造体(2)との間に配置された二次断熱バリアと、
前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとの間に配置された二次密閉メンブレンと、
を含む
ことを特徴とする請求項4~13のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項15】
前記熱保護ストリップ(21)は、グラスウールストリップ又はロックウールストリップでできている
ことを特徴とする請求項4~14のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)。
【請求項16】
低温液体製品を輸送するための船(70)であって、
二重船体(72)と、
前記二重船体内に配置された、請求項4~15のいずれか1項に記載の密閉断熱タンク(71)と、
を備えることを特徴とする船(70)。
【請求項17】
低温液体製品の搬送システムであって、
請求項16に記載の船(70)と、
前記船の前記密閉断熱タンク(71)を浮体式若しくは陸上の貯蔵施設(77)に接続するように配置された断熱配管(73、79、76、81)と、
前記断熱配管を通じて、前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設から前記船の前記密閉断熱タンク(71)へ、又は、前記船の前記密閉断熱タンク(71)から前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設へ、低温液体製品の流れを駆動するポンプと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
船(70)の積み下ろし方法であって、
断熱配管(73、79、76、81)を通じて、浮体式若しくは陸上の貯蔵施設(77)から請求項16に記載の船(70)の前記密閉断熱タンク(71)へ、又は、請求項16に記載の船(70)の前記密閉断熱タンク(71)から前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設(77)へ、低温液体製品が輸送される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉メンブレンを備えた密閉断熱タンクの分野、及びそのような密閉メンブレンを取り付ける方法に関する。特に、本発明は、例えば-50℃~0℃の温度を有する液化石油ガス(LPGとしても知られる)の輸送用、又は大気圧で約-162℃の液化天然ガス(LNG)の輸送用タンクなど、低温液化ガスの貯蔵及び/又は輸送用の密閉断熱タンクの分野に関する。これらのタンクは陸上又は浮体構造体に設置できる。浮体構造体の場合、タンクは、液化ガスの輸送用、又は浮体構造体の推進用の燃料として機能する液化ガスを受け入れるように設計できる。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクであって、タンク壁のそれぞれに、二次断熱バリア、二次密閉メンブレン、一次断熱バリア、及び液化ガスと接触するように設計された一次密閉メンブレンからなる多層構造を備える密閉断熱タンクは、米国特許第4021982号明細書から知られている。一次密閉メンブレンは、複数の波形金属プレートを溶接してなる波形密閉メンブレンである。
【0003】
タンク壁のランニング部分では、波形金属プレートが固定ストリップ又は固定プレート上に溶接され、固定ストリップ自体が断熱バリアの断熱パネルに固定される。
【0004】
この明細書では、特に波形金属プレートを固定プレートに取り付ける方法について説明する。実際、米国特許第4021982号明細書では、波形金属プレートが固定システム上に溶接されており、固定システム自体が主断熱バリア上に一体的に固定されている。固定システムは、隣り合う4枚の波形金属プレートの角が溶接された正方形の金属プレートと、正方形の金属プレートが溶接され、ボスホルダによってザグリ内の断熱パネルに固定される固定ボスと、を備える。
【0005】
このタイプの固定は、波形金属プレートの取り付けを容易にし、正方形の金属プレートがシール機能も有するため、波形金属プレートの一定の位置公差を可能にする。
【0006】
しかしながら、封止されたメンブレンがより自由に変位又は変形できるようにするため、タンクの特別な領域、特にダクトの通過のための開口部の近傍では、断熱バリア上での密閉メンブレンの固定を制限することが有利である。ただし、この場合、メンブレンが、特にコーナ領域で確実に封止される必要がある。
【0007】
米国特許第4021982号明細書による密閉メンブレンの固定では、密閉メンブレンが十分に自由に変位又は変形することはできない。
【0008】
従って、国際公開第2019/002076号は、金属プレートが互いに異なるデザインのコーナ領域を有し、金属プレートの交点に確実にシールが提供されるように特定の順序で互いに組み立てられる取り付け方法に関する。
【0009】
このタイプの製造方法は、金属プレートの交差部のシールを確保するために、波形金属プレート以外に追加の部品を必要としないという利点を有する。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、この方法は完全に満足できるものではない。特に、この方法では形状の異なる金属プレート大量を必要とし、取り付けミスが発生する危険性が高くなる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の基礎となる概念は、断熱バリア上、特にタンクの特別な領域への密閉メンブレンの固定を制限することを可能にする密閉メンブレンを提供することからなる。
【0011】
本発明の基礎となる別の概念は、密閉メンブレンの取り付けを容易にすることからなる。
【0012】
一実施形態によれば、本発明は、液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクであって、前記密閉断熱タンクは支持構造体に組み込まれるように設計されており、前記タンクは少なくとも1つのタンク壁を備え、
前記タンク壁は、前記支持構造体上に直接的又は間接的に固定された断熱バリアと、前記断熱バリアによって支持される密閉メンブレンと、を備え、前記液化ガスと接触するように設計されており、
前記断熱バリアは、互いに並置された断熱パネルを備え、前記断熱パネルは、カバープレートを備え、前記断熱バリアは、前記断熱パネルのカバープレートに設けられた第1溝及び第2溝を備え、
前記第1溝は第1方向に互いに平行に延在し、
前記第2溝は第2方向に互いに平行に延在し、
前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、
いわゆる第1溝は、溝こぶにおいていわゆる第2溝と交差し、
前記タンク壁は、金属封止プレートを備え、前記金属封止プレートは、上面と下面とを備え、
前記金属封止プレートの前記下面が、接着性樹脂によって前記溝こぶ(15)内の前記断熱バリア(6)に接着されており、
第1及び第2熱保護ストリップが、前記溝こぶの外側の前記第1溝及び前記第2溝内に配置されており、
前記密閉メンブレンは、前記金属封止プレートに隣接する少なくとも3枚の波形金属プレートを備え、
各波形金属プレートは、長方形の形状を有し、前記第1方向に延びる第1縁部と、前記第2方向に延びる第2縁部と、を備え、
前記波形金属プレートの前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレートの前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接されており、
前記波形金属プレートの少なくとも2枚は、前記金属封止プレートの前記上面に溶接されるコーナ領域を備え、前記コーナ領域は、前記第1縁部と前記第2縁部とを接続し、
前記波形金属プレートの前記少なくとも2枚は、前記第1熱保護ストリップと揃うように配置された前記第1縁部と、前記第2熱保護ストリップと揃うように配置された前記第2縁部と、を有し、
前記金属封止プレートの前記上面は、被覆部と、前記被覆部と相補的な非被覆部と、を備え、
前記被覆部は、前記少なくとも3枚の波形金属プレートの下に位置し、前記非被覆部は、前記液化ガスと接触するように設計されている
ことを特徴とする密閉断熱タンクを提供する。
【0013】
一実施形態によれば、本発明は、液化ガス貯蔵用の密閉断熱タンクのタンク壁に密閉メンブレンを取り付ける方法であって、前記密閉断熱タンクは支持構造体に組み込まれており、
前記取り付ける方法は、
-前記支持構造体上に固定された断熱バリアを備えるタンク壁を提供するステップであって、前記断熱バリアは、互いに並置された断熱パネルを備え、カバープレートを備え、前記断熱バリアは、前記断熱パネルの前記カバープレートに設けられた第1溝及び第2溝を備え、前記第1溝は第1方向に互いに平行に延在し、前記第2溝は第2方向に互いに平行に延在し、前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、いわゆる第1溝は、溝こぶにおいていわゆる第2溝と交差し、第1及び第2熱保護ストリップは、それぞれ前記第1溝及び前記第2溝内に配置される、ステップと、
-前記溝こぶで前記第1及び第2熱保護ストリップを切断するステップと、
-上面と下面とを備える金属封止プレートを提供するステップと、
-前記金属封止プレートの下面を前記カバープレート上の前記溝こぶに接着するステップと、
-前記タンク壁の前記密閉メンブレンを形成するように設計された4枚の波形金属プレートを提供するステップであって、各金属プレートは長方形の形状を有し、第1縁部と第2縁部を備え、前記第1縁部はコーナ領域で前記第2縁部と結合する、ステップと、
-各第1縁部が前記第1溝の1つと揃うように配置されるように、前記4枚の波形金属プレートを位置決めして溶接するステップであって、各第2縁部は、前記第2溝の1つと揃うように配置され、前記波形金属プレートの前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接され、前記波形金属プレートの前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと揃うように重ね合わせることによって対で溶接され、前記波形金属プレートの前記コーナ領域が前記金属封止プレートの前記上面に溶接されており、前記金属封止プレートの前記上面は、被覆部と、前記被覆部と相補的な非被覆部と、を備え、前記被覆部は、前記4枚の波形金属プレートの下に位置し、前記非被覆部は、前記液化ガスと接触するように設計されている、ステップと、
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0014】
こうした特性のおかげで、封止プレートは、波形金属プレートのより柔軟な配置を可能にするシールの役割を有することによって、第一に、取り付けを容易にすることを可能にする。また、封止プレートの設計がシンプルであり、断熱バリアへの仮固定も接着するだけなので容易である。最後に、接着はタンクの使用中に持続するように設計されておらず、封止プレートを事前に固定する機能のみを備えており、これによって、封止プレート上に波形金属プレートを溶接した後、封止プレートを分離した後、密閉メンブレンは、封止プレートの断熱バリアに対して自由に移動又は変形することができる。
【0015】
一実施形態によれば、本発明は、液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクであって、前記密閉断熱タンクは支持構造体に統合されるように設計されており、前記タンクは少なくとも1つのタンク壁を備え、
前記タンク壁は、前記支持構造体上に直接的又は間接的に固定された断熱バリアと、前記断熱バリアによって支持される密閉メンブレンと、を備え、前記液化ガスと接触するように意図されており、
前記断熱バリアは、互いに並置された断熱パネルを備え、前記断熱パネルは、カバーシートを備え、前記断熱バリアは、前記断熱パネルのカバーシートに形成された第1溝及び第2溝を備え、
前記第1溝は第1方向に互いに平行に延在し、
前記第2溝は第2方向に互いに平行に延在し、
前記第2方向は前記第1方向に対して垂直であり、
いわゆる第1溝は、溝こぶにおいていわゆる第2溝と交差し、
前記タンク壁は、金属封止シートを備え、前記金属封止シートは、上面と下面とを備え、
前記金属封止シートの前記下面が、前記溝こぶで前記断熱バリアに対して自由とされており、
第1及び第2熱保護ストリップが、前記溝こぶの外側の前記第1溝及び前記第2溝内に配置されており、
前記密閉メンブレンは、前記金属封止シートに隣接する少なくとも3枚の波形金属シートを備え、
各波形金属シートは、長方形の形状であり、前記第1方向に延びる第1縁部と、前記第2方向に延びる第2縁部と、を備え、
前記波形金属シートの前記第1縁部は、前記第1熱保護ストリップと重なる対として溶接されており、
前記波形金属シートの前記第2縁部は、前記第2熱保護ストリップと重なる対として溶接されており、
前記波形金属シートの少なくとも2枚は、前記金属封止シートの前記上面に溶接されるコーナ領域を備え、前記コーナ領域は、前記第1縁部と前記第2縁部とを接続し、
前記波形金属シートの前記少なくとも2枚は、前記第1熱保護ストリップと配置された前記第1縁部と、前記第2熱保護ストリップと配置された前記第2縁部と、を有し、
前記金属封止シートの前記上面は、被覆部と、前記被覆部と相補的な非被覆部と、を備え、
前記被覆部は、前記少なくとも3枚の波形金属シートの下に位置し、前記非被覆部は、前記液化ガスと接触するように意図されている
ことを特徴とする密閉断熱タンクを提供する。
【0016】
こうした特性のおかげで、金属封止プレートが取り外されると、密閉メンブレンは封止プレートの領域の断熱バリアに対して自由に移動又は変形することができる。また、封止プレートは複数の金属プレートの接続部分にシール機能を持たせているため、波形金属プレートの配置の自由度が高まる。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、このタイプのタンク又はこのタイプの方法は、以下の特徴の1つ又は複数を備えることができる。
【0018】
一実施形態によれば、密閉メンブレンは、金属封止プレートの下側を断熱バリアから剥がして、前述の組立方法を使用して取り付けられる。
【0019】
一実施形態によれば、前記密閉メンブレンは、前記金属封止プレートに隣接する3枚の波形金属プレートを備え、
前記波形金属プレートの2枚は、前記金属封止プレートの前記上面に溶接されるコーナ領域を備え、
前記波形金属プレートの前記2枚は、前記第1熱保護ストリップと揃うように配置された前記第1縁部と、前記第2熱保護ストリップと揃うように配置された前記第2縁部と、を備え、
前記波形金属プレートの3枚目の前記第1縁部は、前記金属封止プレートの前記上面を通過し、前記被覆部は、前記3枚の波形金属プレートの下に位置する。
【0020】
一実施形態によれば、前記密閉メンブレンは、前記金属封止プレートに隣接する4枚の波形金属プレートを備え、
各波形金属プレートは、前記金属封止プレートの前記上面に溶接されるコーナ領域を備え、
各波形金属プレートは、前記第1熱保護ストリップと揃うように配置された前記第1縁部と、前記第2熱保護ストリップと揃うように配置された前記第2縁部と、を備え
前記被覆部は、前記4枚の波形金属プレートの下に位置する。
【0021】
一実施形態によれば、
前記タンク壁と前記支持構造体は、それらを通過するダクトを備え、
前記密閉メンブレンは、前記ダクトの周囲全体に配置された封止プレートを備え、
前記封止プレートには、前記ダクトが通過するオリフィスが設けられており、
前記波形金属プレートの少なくとも1つは、封止プレートに封止された態様で接続される縁部を有する。
【0022】
一実施形態によれば、封止プレートは、単一の部品として、又は複数のプレートを組み立てることによって作成することができる。
【0023】
一実施形態によれば、タンク壁及び支持構造体は、ダクトが通過するように設計された開口を画定するように局所的に中断され、前記断熱パネルは、開口に隣接する開口断熱パネルである。
【0024】
実際、この領域では、密閉メンブレンが特別な方法で設計されており、更に、タンクの製造時にダクトに溶接されるように設計されており、これによって、タンク壁のランニング部分と比較して、タンクの角と同様に、密閉メンブレンが自由に移動できない特別な領域が作成される。従って、波形金属プレートを金属封止プレート上に固定することにより、断熱バリア上への密閉メンブレンの固定を制限することができる。
【0025】
一実施形態によれば、
前記第1溝及び前記第2溝は、それぞれ、溝ベースと、溝の幅だけ離れた2つの対向する縁部と、を備え、
前記第1及び第2熱保護ストリップは、前記溝ベースに対して支持されており、
前記金属封止プレートは、前記第1溝の前記縁部及び前記第2溝の前記縁部から間隔をあけて、前記溝こぶ内に配置される。
【0026】
従って、溝の縁部と封止プレートとの間に空間が存在し、これによって、密閉メンブレンの平面上の断熱バリアに対する密閉メンブレンの相対的な変位が可能になる。
【0027】
一実施形態によれば、第1溝の溝幅は第2溝の溝幅と等しい。
【0028】
一実施形態によれば、金属封止プレートは、第2溝の溝幅以下の第1方向の寸法を有し、金属封止プレートは、第1溝の溝幅以下の第2方向の寸法を有する。
【0029】
従って、金属封止プレートの寸法は比較的小さく、事実上、断熱バリア上での密閉メンブレンの固定が制限される。
【0030】
一実施形態によれば、金属封止プレートは、第2溝の溝幅よりも厳密に小さい第1方向の寸法を有し、金属封止プレートは、第1溝の溝幅よりも厳密に小さい第2方向の寸法を有する。
【0031】
一実施形態によれば、
前記金属封止プレートは、長方形の形状を有し、
前記金属封止プレートの2つの第1辺は、第1方向に延在し、
前記金属封止プレートの2つの第2辺は、第2方向に延在し、
前記第1辺は、角において前記第2辺と結合し、
前記角が面取りされている。
【0032】
従って、溝の寸法よりも厳密に小さい金属封止プレートの面取りされた角及び/又は寸法は、密閉メンブレンの平面上の断熱バリアに対する密閉メンブレンの相対的な変位を可能にするための、溝の縁部と封止プレートとの間における空間の生成に関与する。
【0033】
一実施形態によれば、前記波形金属プレートのコーナ領域は、面取りされている。
【0034】
一実施形態によれば、
前記タンク壁は、天井壁であり、
前記密閉断熱タンクは、
前記天井壁と、
高さ方向において前記天井壁とは反対側の底壁と、
前記底壁を前記天井壁に接続する1つ又は複数の側壁と、
を備える。
【0035】
一実施形態によれば、
前記タンク壁は、底壁であり、
前記密閉断熱タンクは、
前記底壁と、
高さ方向において前記底壁とは反対側の天井壁と、
前記べース壁を前記天井壁に接続する1つ又は複数の側壁と、
を備える。
【0036】
一実施形態によれば、
断熱バリアは、一次断熱バリアであり、
前記密閉メンブレンは、一次密閉メンブレンであり、
前記タンク壁は、
前記一次断熱バリアと前記支持構造体との間に配置された二次断熱バリアと、
前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとの間に配置された二次密閉メンブレンと、
を含む。
【0037】
一実施形態によれば、
前記方法は、前記金属封止プレートを接着する工程の前に、前記溝こぶ内にテンプレートを配置するステップを含み、前記テンプレートは、レセプタクルを少なくとも部分的に取り囲む境界を備え、前記レセプタクルは、前記金属封止プレートと少なくとも部分的に相補的な形状を有し、
前記金属封止プレートを接着するステップは、前記金属封止プレートを前記テンプレートの前記レセプタクルに配置することによって実行され、前記テンプレートは、前記金属封止プレートを接着するステップの後に取り出されることが好ましい
【0038】
従って、テンプレートは、溝こぶ内での封止プレートの正確な位置決めを支援することを可能にし、好ましくは、封止プレートが溝の縁部に近づきすぎることを防止することを可能にする。
【0039】
一実施形態によれば、前記方法は、前記波形金属プレートを配置及び溶接するステップの前に、位置決めマークによって前記金属封止プレートにマーキングするステップを含み、
前記位置決めマークは、位置決めされる前記波形金属プレートの前記コーナ領域の位置を示すように構成されている。
【0040】
従って、コーナ領域が配置されなければならない金属要素、この場合は金属シールプレートの存在により、密閉メンブレンの取り付けを容易にするマーキングステップが可能になる。
【0041】
一実施形態によれば、各金属プレートは、第1方向に延びる少なくとも1つの第1波形と、第2方向に延びる少なくとも1つの第2波形とを備える。
【0042】
一実施形態によれば、第1及び第2熱保護ストリップは、アルミニウムシートとガラス繊維を含む複合材料で作られている。
【0043】
従って、熱保護ストリップは、その熱特性により溶接の熱からカバープレートを保護することができる材料を有する。ただし、このタイプの材料では、マーキングの位置決めが困難で不正確になる。
【0044】
一実施形態によれば、波形金属プレート及び/又は金属封止プレートはステンレス鋼で作られている。
【0045】
一実施形態によれば、カバープレートは合板又は複合材料で作られている。
【0046】
一実施形態によれば、タンク壁は、金属封止プレートと、カバープレートとの間に接着性樹脂の層と、を備える。
【0047】
一実施形態によれば、タンク壁は接着性樹脂の層で構成されており、金属封止プレートの下面を溝こぶで前記断熱バリア上に接着するために、接着性樹脂の層が金属封止プレートと断熱バリアとの間に配置され、接着性樹脂は、密閉断熱タンクの製造時における常温における前記金属封止プレートの重量以上の荷重に耐えられるように構成されている。
【0048】
従って、これらの接着特性により、金属密閉メンブレンの取り付けにおいて最も不利な場合であっても、すなわち天井壁であっても、金属封止プレートを所定の位置に保持できるように、接着性樹脂は選択される。ただし、この接着性樹脂は、金属密閉メンブレンを貼り付けた後も金属封止プレートを保持し続ける必要はない。従って、この接着性樹脂は、密閉断熱タンクの使用中に極低温で金属封止プレートを所定の位置に保持するのに十分な接着特性を有していない。
【0049】
一実施形態によれば、接着性樹脂は、極低温で金属封止プレートの重量よりも厳密に低い荷重に所定の時間耐えるように構成されている。
【0050】
このタイプのタンクは、例えばLNGを貯蔵するために、陸上の貯蔵施設の一部を形成することができ、又は、浮体構造体、沿岸構造体、若しくは深海構造体、特にLNG船、浮体式貯蔵再ガス化施設(Floating Storage and Regasification Unit(FSRU))、浮体式生産貯蔵積出(Floating Production Storage and Offloading(FPSO))などに設置することもできる。このタイプのタンクは、あらゆる種類の船舶の燃料タンクとしても機能する。
【0051】
一実施形態によれば、低温液体製品を輸送するための船は、二重船体と、二重船体内に配置された上述のタンクと、を備える。
【0052】
一実施形態によれば、本発明は、低温液体製品の搬送システムであって、
上述の船と、
前記船の前記密閉断熱タンクを浮体式若しくは陸上の貯蔵施設に接続するように配置された断熱配管と、
前記断熱配管を通じて、前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設から前記船の前記密閉断熱タンクへ、又は、前記船の前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設へ、低温液体製品の流れを駆動するポンプと、
を備えることを特徴とするシステムも提供する。
【0053】
一実施形態によれば、本発明は、船の積み下ろし方法であって、
前記断熱配管を通じて、浮体式若しくは陸上の貯蔵施設から上述の船の前記密閉断熱タンクへ、又は、上述の船の前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは陸上の貯蔵施設へ、低温液体製品が輸送される
ことを特徴とする方法も提供する。
【0054】
添付の図面を参照して単に非限定的な例示として提供される、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明において、本発明はよりよく理解され、他の目的、詳細、特徴及び利点がより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】
図2は、一次密閉メンブレンを固定する前の、一実施形態によるタンクの天井壁の部分正面図である。
【
図3】
図3は、熱保護ストリップを所定の位置に配置した後の溝こぶを示す
図2のIIIの詳細図である。
【
図4】
図4は、熱保護ストリップの切断後の溝こぶを示す
図2のIIIの詳細図である。
【
図5】
図5は、テンプレートの配置後の溝こぶを表す
図2のIIIの詳細斜視図である。
【
図6】
図6は、テンプレートを除去する前において、カバープレート上に金属封止プレートを接着した後の溝こぶを表す、
図2のIIIの詳細斜視図である。
【
図7】
図7は、テンプレートを除去した後において、カバープレート上に金属封止プレートを接着した後の溝こぶを表す、
図2のIIIの詳細斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態による、一次密閉メンブレンの固定前において、波形金属プレートの位置決めのためのマーキング工程中のタンクの天井壁の部分正面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態による、一次密閉メンブレンを固定した後のタンクの天井壁の部分正面図である。
【
図10】
図10は、波形金属プレートの溶接ステップ後の溝ナブを表す
図2のIIIの詳細図であり、波形金属プレートは透明で示されている。
【
図11】
図11は、船のタンクを備えたLNG船とこのタンクの積み下ろしを行うターミナルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、液化ガスを貯蔵できる、メンブレンを備える密閉断熱タンク71について図を参照して説明する。タンク71は、互いに接続され支持構造体2に固定された複数のタンク壁1を備える。タンク71は、例えば、多面体形状、又は円形底部を有する円筒形状を有することができる。
【0057】
【0058】
各タンク壁1は、外側から内側に向かって、二次断熱パネル4を備え、支持構造体2に対して支持されている二次断熱バリア3と、二次断熱バリア3に対して支持される二次密閉メンブレン5、一次断熱パネル7、12を備え、二次密閉メンブレン5に対して支持されている一次断熱バリア6と、一次断熱バリア6に対して支持されており、タンク1内に含まれる液化ガスと接触するように設計されている一次密閉メンブレン8と、を備える。一次密閉メンブレン8は、液化ガスを受け入れるように設計された内部空間を画定する。例として、このタイプのメンブレンを備えたタンクは、特に国際公開第2019/239048号、国際公開第2014/057221号、及び仏国特許出願公開第2691520号明細書に記載されている。
【0059】
各一次断熱パネル7、12は、カバープレート10、断熱フォームブロックなどの断熱ライニング11、及びオプションとして、ベースプレート(図示せず)を備える。
【0060】
タンク71に貯蔵されるように設計された液化ガスは、特に液化天然ガス(LNG)、すなわち主にメタンと1つ以上の他の炭化水素を含むガス状混合物であってよい。液化ガスは、エタン又は液化石油ガス(LPG)、すなわち実質的にプロパンとブタンを含む、石油の精製から得られる炭化水素の混合物であってもよい。
【0061】
図2は、タンク71の天井壁1の一部を示す。この図では、二次断熱バリア3、二次密閉メンブレン5、及び一次断熱バリア6が既に支持構造体2に取り付けられており、一次断熱バリア6のみが区別できるようにする。この場合、天井壁1及び支持構造体2は、3つの開口部9を画定するなど、幾つかの場所で局所的に中断される。開口部9は、充填ダクトや排出ダクトなどのダクト(図示せず)が通過するように設計されている。一次断熱バリア6は、互いに並置された複数の一次断熱パネル7、12を備える。
【0062】
一次断熱パネル7、12は、開口部9に隣接して配置される、ランニング一次断熱パネル7と、開口一次断熱パネル12と、を備える。
【0063】
一次断熱バリア6は、一次断熱パネル7、12のカバープレート10に設けられた第1溝13と第2溝14とを備える。第1溝13は、第1方向に互いに平行に延在し、第2溝14は、第1方向に対して垂直である、第2方向に互いに平行に延在する。第1溝13は、溝こぶ15において第2溝14と交差する。
【0064】
図9により具体的に示される一次密閉メンブレン7は、長方形の波形金属プレート16を備える。各波形金属プレート16は、互いに平行であり、第1方向に延在する2つの第1縁部17と、互いに平行であり、第2方向に延在する2つの第2縁部18と、を備え、各第1縁部はコーナ領域19で第2縁部と結合する。
【0065】
波形金属プレート16の取り付け中に、第1縁部17は、第1溝13と揃うように配置され、第2縁部は、第2溝14と揃うように配置される。コーナ領域19の部分は、溝こぶ15と揃うように配置される。各波形金属プレートは、第1方向に延びる少なくとも1つの第1波形(図示せず)と、第2方向に延びる少なくとも1つの第2波形(図示せず)と、を含む。第1波形及び第2波形は、異なる波形金属プレートの相互の組み立てをより容易に区別するために、
図9には意図的に示されていない。
【0066】
もう一度
図2を参照すると、稼働する一次断熱パネル7には、第1溝13及び第2溝14の内部において、特に溝こぶ15において、カバープレート10上に固定された金属固定ストリップ20が装備されている。これらの金属固定ストリップ20上で波形金属プレート16が溶接され、一次断熱バリア6上に固定される。
【0067】
開口一次断熱パネル12には、第1溝13及び第2溝14内に配置された熱保護ストリップ21が装備されている。
【0068】
変形の自由を維持するために、一次密閉メンブレン8は、開口部9の近傍、つまり開口一次断熱パネル12に、金属固定ストリップ20によって固定されない。
【0069】
従って、開口一次断熱パネル12の上方において、波形金属プレート16の第1縁部17及び第2縁部18を、一次断熱バリア6に固定せずに、隣り合う波形金属プレート16の第1縁部17及び第2縁部18にそれぞれ重ね合わせて溶接する。コーナ領域19の一部は、溝こぶ15において金属封止プレート22の上面に溶接される。金属封止プレート22及びその機能については、以下でより詳細に説明する。
【0070】
図3から
図7は、溝こぶ15内に金属封止プレート22を位置決めすることを可能にする様々なステップをより詳細に示している。
【0071】
図3は、第1溝13と第2溝14の熱保護ストリップ21が溝こぶ15で交差する初期状態を表す。次に、
図4に示すように、溝こぶ15の溝底部が見えるように、熱保護ストリップ21を溝こぶ15と揃うように切断する。
【0072】
次に、
図5に示すように、テンプレート23が溝こぶ15に配置される。このテンプレート23は、レセプタクル25を部分的に取り囲む境界24を備える。境界24は、互いに接続された複数のブランチを有し、溝こぶ15を構成する異なる溝13、14内に位置し、これにより、溝こぶ15上でレセプタクル25の中心合わせが可能となる。レセプタクル25は、溝こぶ15上での位置決め及び中心合わせを助けるために、金属封止プレート22と部分的に相補的な形状を有するように製造される。
【0073】
図6に示すように、金属封止プレート22はレセプタクル25内に配置され、溝ナブ15に接着される。金属封止プレート22が接着されると、
図7に示すように、テンプレートが取り外される。接着は、溝こぶ15又は金属封止プレート22の下面に接着剤の層を配置することによって、又は金属封止プレート22の内面に両面接着ストリップを接着することによって行うことができる。
【0074】
図7に示すように、金属封止プレート22は、長方形、好ましくは正方形であり、接着後に第1方向に延在する2つの第1辺26と、接着後に第2方向に延在する2つの第2辺27と、を有する。第1辺26は、図示の例では面取りされている角28で第2辺27と結合する。
【0075】
金属封止プレート22は、第2溝14の第1方向の寸法よりも小さい第1方向の寸法を有し、第1溝13の第2方向の寸法よりも小さい第2方向の寸法を有する。従って、
図7に示すように、これらの寸法とその形状、及びテンプレートによって実行される中心合わせのおかげで、金属封止プレート22は、溝こぶ15を形成する、第1溝13の縁部及び第2溝14の縁部から間隔をあけて配置される。
【0076】
従って、金属封止プレート22は、カバープレート10に接着される下面と、波形金属プレート16に溶接されるように設計された上面と、を備える。
【0077】
金属封止プレートを接着した後、波形金属プレート16の位置決めを補助するために、
図8に概略的に示すように、マーキングステップが提供される。実際、このステップ中に、異なる波形金属プレートがどこに配置されるかを測定し、示すために、位置決めマーク29が金属封止プレート22上に正確に描かれる。
【0078】
図9は、一次密閉メンブレン8を形成するための波形金属プレート16の溶接後の天井壁1を表しており、この図を読みやすくするために、第1波形及び第2波形を省略している。
【0079】
これにより、第1縁部17が第1溝13の1つと揃うように位置し、第2縁部18が第2溝14の1つと揃うように位置するように、波形金属プレート16が位置決めされる。これらを一次断熱バリア6の上に置くと、開口一次断熱パネル12が関与する場合、金属プレートを重ね合わせて溶接し、そのコーナ領域19で金属封止プレート21の一方に溶接する。これにより、波形金属プレート16の第1縁部17及び第2縁部18が、隣り合う波形金属プレート16の第1縁部16及び第2縁部17にそれぞれ重ね合わされて溶接される。
【0080】
開口部9の全周囲には、平坦な封止プレート30が各開口部9に配置されている。封止プレート30は、対応する開口部9と同じ形状のオリフィス31を有する。封止プレート30は、例えばフランジを介して対応するダクトに溶接されるように設計されている。封止プレート30の周囲全体に位置する波形金属プレート16は、封止プレート30上に溶接される。封止プレート30によって遮断されるこれらの波形金属プレート16の波形は、波形キャップ32によって閉じられ、これも封止プレート30に溶接される。
【0081】
図示されていない別の実施形態によれば、波形を閉じるための波形キャップを設ける必要がないように、封止プレート30を波形にすることができる。
【0082】
一次密閉メンブレン8のある程度の柔軟性を維持するために、特定の波形は、封止プレート30によって妨げられないように、2枚の波形金属プレート16の間の接合部に溶接された迂回システム33によって、元の方向からそらされている。波形は示されていないが、特定の波形の位置を推測できるように、迂回システム33及び波形キャップ32が
図9に示されている。
【0083】
上述したように、一次密閉メンブレン9の取り付けは、波形金属プレート16の配置と、この波形金属プレートと隣接する波形金属プレート16及び金属封止プレート22との溶接とを繰り返すことにより行われる。
【0084】
このタイプのシーケンスは、特に、金属封止プレート22における4枚の波形金属プレート16間の接合部、つまり開口断熱パネル12の上において、
図10によって概略的に示されている。この図では、金属封止プレート22、第1溝13、第2溝14、溝こぶ15、及びカバープレート10を区別するために、波形金属プレートを透過して示しており、波形金属プレートのうち、第1プレート34、第2プレート35、第3プレート36、及び第4プレート37の4枚がある。
【0085】
この図示の例では、第1プレート34は、まず、第1縁部17の1つは、第1溝13と揃うように位置し、第2縁部18の1つは、第2溝14と揃うように位置し、コーナ領域19の1つは、溝こぶ15及び金属封止プレート22と揃うように位置するように、位置決めされる。次に、コーナ領域19が金属封止プレート22上の第1溶接ビード38によって溶接される。
【0086】
第2プレート35の第1縁部17は、第1プレート34の第1縁部17に重ね合わせて溶接され、第3プレート36の第2縁部18は、第1プレート34の第2縁部に重ね合わせて溶接されるように、第2プレート35及び第3プレート36は、第1プレート34に隣接して配置される。第2プレート35のコーナ領域19は、第2溶接ビード39によって部分的に金属封止プレート22上に溶接され、部分的に第1プレート34のコーナ領域19上に溶接される。第3プレートのコーナ領域19は、第3溶接ビード40によって部分的に金属封止プレート22上に溶接され、部分的に第1プレート34のコーナ領域19上に溶接される。
【0087】
第4プレート37の第1縁部17は、第3プレート36の第1縁部17に重ね合わせて溶接され、第4プレート37の第2縁部18は、第2プレート35の第2縁部に重ね合わせて溶接されるように、第4プレート37は、最終的に第2プレート35及び第3プレート36に隣接して配置される。第4プレート37のコーナ領域19は、第4溶接ビード41によって、部分的に金属封止プレート22上、部分的に第2プレート35のコーナ領域19上、部分的に第3プレート36のコーナ領域19上に溶接される。
【0088】
この溶接シーケンスは、米国特許第4021982号明細書に更に詳細に記載されている。これは、溶接シーケンスの一例である。封止された様態で金属封止プレート22上に溶接された波形金属プレート16を得るために、他のシーケンスを実行することもできる。
【0089】
従って、金属封止プレート22は、
図10に示す被覆部42と非被覆部43とを含む上面を有する。従って、被覆部42は、4枚のプレート34、35、36、37の下にある上面の部分に対応する。非被覆部43は、液化ガスと接触するように設計されている。
【0090】
従って、
図10に示すように、非被覆部43は、四角形の溶接ビードによって連続的に囲まれ、これらの辺はそれぞれ、第1、第2、第3、及び第4溶接ビード38、39、40、41によって形成されている。従って、波形金属プレートと金属封止プレート22の非被覆部43との組立体によって一次密閉メンブレン8が形成される。
【0091】
金属プレート34、35、36、37の溶接後、及びタンクの使用後、金属封止プレート22の接着が崩れることが予想される。これは、この接合が金属板を金属封止プレート22に溶接するための仮固定にすぎないからである。液化ガスがタンクに充填されているとき、密閉メンブレン8は高い熱収縮応力にさらされ、これにより接合が破壊される可能性がある。
【0092】
その結果、金属封止プレート22は断熱バリアに対して自由に動くことができる。しかしながら、金属封止プレート22の位置は、溝こぶ15内に留まるか、又は溝こぶ15の外に移動することができる。従って、密閉メンブレン8は、封止プレート22の領域内の断熱バリアに対して自由に移動又は変形することができる。
【0093】
図11を参照すると、LNG船70の断面図は、船70の二重船体72に取り付けられた、略角柱状の密閉断熱タンク71を示している。タンク71の壁は、タンク内のLNGと接触するように設計された一次密閉メンブレンと、一次密閉メンブレンと船70の二重船体72との間に配置された二次密閉メンブレンと、一次密閉メンブレンと二次密閉メンブレンとの間及び二次密閉メンブレンと二重船体72との間それぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備える。
【0094】
既知の方法で、船の上甲板に配置された積み込み/積み下ろし配管73は、タンク71との間でLNGの貨物を移送するために、適切なコネクタを用いて海上又は港湾ターミナルに接続することができる。
【0095】
図11は、積み込み又は積み下ろしステーション75、海中ダクト76、及び陸上施設77を備える海上ターミナルの例を表す。積み込み又は積み下ろしステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78と、を備える固定式海洋施設である。可動アーム74は、積み込み/積み下ろし配管73に接続できる絶縁された可撓性パイプ79の束を支持する。向きを変えることができる可動アーム74は、すべてのタンカーゲージに適合する。図示されていない接続ダクトがタワー78の内部に延びている。積み込み又は積み下ろしステーション75により、陸上施設77からタンカー70への積み込み、タンカー70から陸上施設77への積み下ろしが可能になる。この施設は、液化ガス貯蔵タンク80及び接続ダクト81を備えており、これらは、海中ダクト76によって積み込み又は積み下ろしステーション75に接続される。海中ダクト76により、積み込み又は積み下ろしステーション75と陸上施設77との間で、長距離にわたる、例えば5kmにわたる、液化ガスの移送が可能になり、これにより、積み込み又は積み下ろし作業中にタンカー70を海岸から遠く離れたところに保つことが可能になる。
【0096】
液化ガスの移送に必要な圧力を生成するために、船70上のポンプ、及び/又は、陸上施設77に装備されるポンプ、及び/又は、積み込み又は積み下ろしステーション75に装備されるポンプが使用される。
【0097】
本発明を複数の特定の実施形態に関連して説明してきたが、これに限定されるものではないこと、また、それらが本発明の範囲内にある場合、それは記載された手段の全ての技術的等価物及びそれらの組み合わせを含むことを意味することは明らかである。
【0098】
「包有する」(contain)、「備える」(comprise)、又は「含む」(include)という動詞及びその活用形の使用は、請求項に記載されているもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0099】
特許請求の範囲において、括弧内の参照番号は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【外国語明細書】