(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082270
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】吸収剤組成物、吸湿膜、光学フィルター、撮像装置、および赤外線センサー
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240612BHJP
C09B 57/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B57/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206036
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0169674
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509179087
【氏名又は名称】エルエムエス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LMS Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒキョン
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吸収剤組成部およびその用途を提供する。
【解決手段】化学式1で表される化合物および特定の化学式2で表される化合物を含み、特定の条件を満たす、吸収剤組成物。
[化学式1]
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物を含み、
条件1および条件2のうちいずれか1つを満たし、
条件3および条件4のうちいずれか1つを満たす、吸収剤組成物。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
(前記化学式1中、R
11、R
12、R
51およびR
52は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、
前記化学式2中、R
71およびR
72は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R
61~R
64は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、A
1、B
1、A
2およびB
2は、それぞれ独立して、ベンゼン構造であるか、存在しなり、
前記条件1は、前記化学式1のR
11、R
12、R
51、R
52、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42の炭素数の合計が16個以上であり、
前記条件2は、前記化学式1のR
11、R
12、R
51、R
52、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42の炭素数の合計が14個以上であり、R
11、R
12、R
51、R
52、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、
前記条件3は、前記化学式2中、R
61、R
62、R
63、R
64、R
71およびR
72の炭素数の合計が10個以上であり、
前記条件4は、前記化学式2中、R
61、R
62、R
63、R
64、R
71およびR
72の炭素数の合計が4個以上であり、R
61、R
62、R
63、R
64、R
71およびR
72のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基である。)
【請求項2】
前記化学式1中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R31、R32、R41およびR42が、水素である、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項3】
前記化学式1中、R11およびR12の炭素数の合計C1のR51およびR52の炭素数の合計C5に対する割合C1/C5が0.1~10の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項4】
前記化学式1中、R11およびR12の炭素数の合計C1のR21~R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計C2に対する割合C1/C2が1~10の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項5】
前記化学式1中、R11の炭素数C11のR12の炭素数C12に対する割合が0.1~2の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項6】
前記化学式1中、R51の炭素数C51のR52の炭素数C52に対する割合が0.1~2の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項7】
前記化学式2中、R71およびR72の炭素数の合計C7のR61~R64の炭素数の合計C6に対する割合C7/C6が0.1~10の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項8】
前記化学式2中、R71の炭素数C71のR72の炭素数C72に対する割合C71/C72が0.1~2の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項9】
前記化学式2中、A1およびB1のうちいずれか1つは、ベンゼン構造であり、他の1つは、存在せず、A2およびB2のうちいずれか1つは、ベンゼン構造であり、他の1つは、存在しない、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項10】
前記化学式1のR11およびR12の炭素数の合計C1の化学式2のR71およびR72の炭素数の合計C7に対する割合C1/C7が0.1~10の範囲内にある、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項11】
R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41、R42、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計が30個以上である、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項12】
R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計CAのR61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計CBに対する割合CA/CBが0.5~5の範囲内である、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項13】
前記化学式1で表される化合物100重量部に対して1~500重量部の前記化学式2で表される化合物を含む、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項14】
樹脂成分をさらに含む、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項15】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の吸収剤組成物。
【請求項16】
樹脂成分と、
化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物と、を含む、吸収膜。
[化学式1]
【化3】
[化学式2]
【化4】
前記化学式1中、R
11、R
12、R
51およびR
52は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、
前記化学式2中、R
71およびR
72は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R
61~R
64は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、A
1、B
1、A
2およびB
2は、それぞれ独立して、ベンゼン構造であるか、存在しない。)
【請求項17】
600nm~900nmの波長範囲内でバンド幅が60nm以上の吸収バンドを示す、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項18】
樹脂成分が環状オレフィン(COP、Cycloolefin)系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項19】
T50%Cut on波長が600nm~800nmの範囲内にある、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項20】
T50%Cut off波長が700nm~900nmの範囲内にある、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項21】
樹脂成分100重量部に対して0.5~50重量部の化学式1で表される化合物を含む、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項22】
樹脂成分100重量部に対して0.5~50重量部の化学式2で表される化合物を含む、請求項16に記載の吸収膜。
【請求項23】
基材層と、
前記基材層の一面または両面に形成された請求項16に記載の吸収膜と、を含む、光学フィルター。
【請求項24】
誘電体膜をさらに含み、
前記誘電体膜は、600nm~900nmの波長領域内で50%の反射率を示す最短波長が710nm以上であるか、存在しない、請求項23に記載の光学フィルター。
【請求項25】
請求項23に記載の光学フィルターを含む、撮像装置。
【請求項26】
請求項16に記載の吸収膜を含む、赤外線センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収剤組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収剤、特に赤外線領域の光を吸収できる吸収剤は、多様な用途に適用することができる。例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサーなどを用いた撮像装置や赤外線センサーなどは、近赤外線領域に対して感度を有するシリコンフォトダイオードなどを含むので、上記吸収剤を用いることができる。
【0003】
このような吸収剤を適用する方法は多様に存在するが、通常、溶剤に溶解した吸収剤と樹脂成分とを混合したコーティング液を用いる方法を適用する。したがって、吸収剤は、溶剤および樹脂成分に対して優れた溶解性や相溶性を示すことが必要である。
【0004】
吸収剤の溶剤または樹脂成分に対する溶解性や相溶性が劣ると、吸収剤を適用した吸収膜に対して所望の分光特性を得ることができないか、または吸収膜内で吸収剤が析出する現象などによって光特性の低下が発生する。しかしながら、多様な種類の溶媒および樹脂成分に対して同時に優れた溶解性や相溶性を示す吸収剤を確保することは難しい。
【0005】
また、例えば、吸収帯域幅が広い光特性、または単一の吸収剤により得られにくい光特性を必要とする場合には、2種以上の吸収剤を適用しなければならない。しかしながら、2種以上の吸収剤のすべてが様々な種類の溶媒および樹脂成分について同時に優れた溶解性や相溶性を示すことは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、吸収剤組成物およびその用途を提供することを目的とする。本開示では、2種以上の吸収剤を含む吸収剤組成物として多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた相溶性や溶解性を示す吸収剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本開示は、上記吸収剤組成物を適用し、所望の光特性を確保することを目的とする。
【0008】
また、本開示は、上記吸収剤組成物の用途を提供することを目的とし、例えば、上記吸収剤組成物を用いて形成した吸収膜、光学フィルター、固体撮像素子および/または赤外線センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において言及する物性のうち、測定温度が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常温で測定した結果である。
【0010】
用語「常温」は、加温および減温しない自然そのままの温度であり、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか1つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において、温度の単位は、別段の定めがない限り、摂氏(℃)である。
【0011】
本明細書において言及する物性のうち、測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常圧で測定した結果である。
【0012】
用語「常圧」は、加圧および減圧しない、そのままの圧力であり、通常、大気圧レベルの約740mmHg~780mmHg程度を意味する。
【0013】
本明細書において、測定湿度が結果に影響を及ぼす物性の場合、当該物性は、常温および/または常圧状態で特に調節しない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0014】
本明細書において言及する光学特性(例えば、屈折率)が波長によって変わる場合、別段の定めがない限り、当該光学特性は、520nm波長の光に対する特性である。
【0015】
本明細書において、用語「透過率」、「反射率」または「吸収率」は、別段の定めがない限り、特定波長または所定領域の波長範囲内で確認した実際の透過率(実測透過率)、実際の反射率(実測反射率)または実際の吸収率(実測吸収率)を意味する。
【0016】
本明細書において用語「透過率」、「反射率」または「吸収率」は、別段の定めがない限り、入射角0度を基準とする透過率、反射率または吸収率である。
【0017】
本明細書において、用語「平均透過率」は、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定した後、測定された透過率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均である。
【0018】
本明細書において、用語「最大透過率」は、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定したときの最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0019】
本明細書において、用語「平均反射率」は、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の反射率を測定した後、測定された反射率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均反射率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した反射率の算術平均である。
【0020】
本明細書において、用語「最大反射率」は、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の反射率を測定したときの最大反射率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大反射率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した反射率のうち最も高い反射率である。
【0021】
本明細書において、用語「平均吸収率」は、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の吸収率を測定した後、測定された吸収率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均吸収率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した吸収率の算術平均である。
【0022】
本明細書において、用語「最大吸収率」は、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の吸収率を測定したときの最大吸収率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大吸収率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した吸収率のうち最も高い吸収率である。
【0023】
本明細書において、用語「入射角」は、評価対象表面の法線を基準とする角度である。例えば、光学フィルターの入射角0度における透過率は、光学フィルター表面の法線と実質的に平行な方向に入射した光に対する透過率を意味する。また、例えば、入射角40度は、上記法線と時計または反時計回りの方向に実質的に40度の角度を成す入射光に対する値である。このような入射角の定義は、透過率など他の特性にも同一に適用する。
【0024】
本明細書において、用語「アルキル基」は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルキル基は、任意に1つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0025】
本明細書において、用語「アルコキシ基」は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基を意味する。アルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよい。アルコキシ基は、任意に1つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0026】
本明細書において、用語「ハロアルキル基」は、少なくとも1つ以上のハロゲン元素で置換されたアルキル基を意味し、用語「アルコキシアルキル基」は、少なくとも1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を意味し、この際、アルキル基とアルコキシ基の具体的な種類は、それぞれ前述した通りである。また、ハロアルキル基に置換されることができるハロゲン原子の例としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)および/またはヨウ素(I)などが挙げられる。
【0027】
本開示は、吸収剤組成物に関する。
【0028】
本明細書において、用語「吸収剤組成物」は、互いに化学構造が異なる2種の吸収剤を含む混合物を意味する。
【0029】
吸収剤組成物は、1つの例示において下記化学式1の化合物と下記化学式2の化合物とを含んでもよい。化学式1および化学式2の化合物は、互いに異なる構造を有する。
【0030】
[化学式1]
【化1】
化学式1中、R
11、R
12、R
51およびR
52は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよく、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
31、R
32、R
41およびR
42は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。
【0031】
[化学式2]
【化2】
化学式2中、R
71およびR
72は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R
61~R
64は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、A
1、B
1、A
2およびB
2は、それぞれ独立して、ベンゼン構造であるか、存在しない。
【0032】
本発明者らは、化学式1の骨格を有し、下記の条件1および条件2のうちいずれか1つを満たす化合物と、化学式2の骨格を有し、下記の条件3および条件4のうちいずれか1つを満たす化合物とを混合して構成した吸収剤組成物が多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた溶解性や相溶性を示し、吸収膜に所望の光特性を付与できるという点を確認している。
【0033】
すなわち、化学式1の化合物は、下記の条件1および条件2のうち少なくとも1つを満たす。
条件1:化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計が16個以上。
条件2:化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計が14個以上であり、R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基。
【0034】
なお、化学式2の化合物は、下記の条件3および条件4のうち少なくとも1つを満たす。
条件3:化学式2中、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計が10個以上。
条件4:化学式2中、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計が4個以上であり、R61、R62、R63、R64、R71およびR72のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基。
【0035】
条件1と関連して、化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計は、18個以上、20個以上、22個以上、24個以上、26個以上、28個以上または30個以上であってもよい。
【0036】
条件1と関連して、化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計の上限は、特に限定されない。ただし、炭素数の合計が大き過ぎると、化合物の合成が容易でなく、合成された化合物の結晶性が低下し、精製が難しくなる。したがって、炭素数の合計は、例えば、50個以下、48個以下、46個以下、44個以下、42個以下、40個以下、38個以下、36個以下、34個以下、32個以下、30個以下、28個以下、26個以下、24個以下または22個以下程度であってもよい。
【0037】
条件1を満たす場合にも、R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも1つは、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。このような場合において、特に限定されるものではないが、例えば、少なくともR11、R12、R51およびR52のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。
【0038】
条件2と関連して、化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計は、14個以上、16個以上、18個以上、20個以上、22個以上、24個以上、26個以上、28個以上または30個以上であってもよい。
【0039】
条件2と関連して、化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計の上限は、特に限定されない。ただし、炭素数の合計が大き過ぎると、化合物の合成が容易でなく、合成された化合物の結晶性が低下し、精製が難しくなる。したがって、炭素数の合計は、例えば、50個以下、48個以下、46個以下、44個以下、42個以下、40個以下、38個以下、36個以下、34個以下、32個以下、30個以下、28個以下、26個以下、24個以下、22個以下、20個以下または18個以下程度であってもよい。
【0040】
条件2の場合、R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計が20個未満の場合に、R11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。このような場合において、特に限定されるものではないが、例えば、少なくともR11、R12、R51およびR52のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。
【0041】
条件3と関連して、化学式2中、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計は、10個以上、12個以上、14個以上または16個以上であってもよい。
【0042】
条件3と関連して、化学式2のR61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計の上限は、特に限定されない。ただし、炭素数の合計が大き過ぎると、化合物の合成が容易でなく、合成された化合物の結晶性が低下し、精製が難しくなる。したがって、炭素数の合計は、例えば、40個以下、38個以下、36個以下、34個以下、32個以下、30個以下、28個以下、26個以下、24個以下、22個以下、20個以下、18個以下、16個以下、14個以下、12個以下または10個以下程度であってもよい。
【0043】
条件3を満たす場合にも、R61、R62、R63、R64、R71およびR72のうち少なくとも1つは、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。このような場合において、特に限定されるものではないが、例えば、少なくともR71およびR72のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。
【0044】
条件4と関連して、化学式2中、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計が4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上または16個以上であってもよい。
【0045】
条件4と関連して、化学式2のR61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計の上限は、特に限定されない。ただし、炭素数の合計が大き過ぎると、化合物の合成が容易でなく、合成された化合物の結晶性が低下し、精製が難しくなる。したがって、炭素数の合計は、例えば、40個以下、38個以下、36個以下、34個以下、32個以下、30個以下、28個以下、26個以下、24個以下、22個以下、20個以下、18個以下、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下、8個以下、6個以下または4個以下程度であってもよい。
【0046】
条件4の場合、R61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計が10個未満の場合に、R61、R62、R63、R64、R71およびR72のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。このような場合において、特に限定されるものではないが、例えば、少なくともR71およびR72のうち少なくとも1つがアルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。
【0047】
化学式1中、R11、R12、R51およびR52は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。R11、R12、R51およびR52のアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に存在する炭素数の下限は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個であってもよく、上限は、20個、18個、16個、14個、12個、10個、8個、6個、4個または2個程度であってもよい。R11、R12、R51およびR52のアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に存在する炭素数は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0048】
R11およびR12の炭素数の合計C1のR51およびR52の炭素数の合計C5に対する割合C1/C5は、0.1~10の範囲内にあってもよい。
【0049】
割合C1/C5は、他の例示において0.1以上、0.3以上、0.5以上、1以上、1.5以上、2以上、2.5以上または3以上程度であるか、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下または1以下程度であってもよい。
【0050】
1つの例示において化学式1中、R11の炭素数C11のR12の炭素数C12に対する割合C11/C12の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合C11/C12は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0051】
1つの例示において化学式1中、R51に存在する炭素数C51のR52に存在する炭素数C52に対する割合C51/C52の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合C51/C52は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0052】
化学式1の1つの例示においてR21、R22、R23、R24、R25およびR26は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であり、R31、R32、R41およびR42は、水素であってもよい。このような場合に、R21、R22、R23、R24、R25およびR26のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に含まれる炭素数は、1個~4個、1個~3個、1個~2個または1個程度であってもよい。
【0053】
化学式1中、R11およびR12の炭素数の合計C1のR21~R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計C2に対する割合C1/C2の下限は、1、1.2、1.4、1.6、1.8または2程度であってもよく、上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1.5程度であってもよい。割合C1/C2は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0054】
1つの例示において化学式1中、R21~R23に含まれる炭素数CR2のR24~R26に含まれる炭素数CL2に対する割合CR2/CL2の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合CR2/CL2は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0055】
1つの例示において化学式1中、R31に含まれる炭素数CR3のR32に含まれる炭素数CL3に対する割合CR3/CL3の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合CR3/CL3は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0056】
1つの例示において化学式1中、R41に含まれる炭素数CR4のR42に含まれる炭素数CL4に対する割合CR4/CL4の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合CR4/CL4は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0057】
化学式1に存在するアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
化学式2中、R71およびR72は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。R71およびR72のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に含まれる炭素数の下限は、1個、2個、3個、4個、5個または6個であってもよく、上限は、20個、18個、16個、14個、12個、10個、8個、6個、4個または3個程度であってもよい。R71およびR72のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に存在する炭素数は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0059】
1つの例示において化学式2中、R71の炭素数C71のR72の炭素数C72に対する割合C71/C72の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合C71/C72は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0060】
化学式1の1つの例示においてR61~R64は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基であってもよい。このような場合に、R61~R64のアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基に含まれる炭素数は、1個~4個、1個~3個、1個~2個または1個程度であってもよい。
【0061】
化学式2中、R71およびR72の炭素数の合計C7のR61~R64の炭素数の合計C6に対する割合C7/C6の下限は、0.1、0.5、1.5、2、2.5または3程度であってもよく、上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1.5程度であってもよい。割合C7/C6は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0062】
1つの例示において化学式2中、R61およびR62に含まれる炭素数CR6のR63およびR64に含まれる炭素数CL6に対する割合CR6/CL6の下限は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9または1程度であってもよく、上限は、2、1.8、1.6、1.4、1.2または1程度であってもよい。割合CR6/CL6は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0063】
化学式2に存在するアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシアルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0064】
化学式2中、A1、A2、B1およびB2は、それぞれ独立して、ベンゼン構造であるか、存在しない。ここで、ベンゼン構造というのは、当該部位の点線が実線で表される場合であり、存在しないというのは、当該部位の点線が存在しないことを意味する。例えば、化学式1中、A1およびA2がベンゼン構造であり、B1およびB2が存在しない構造は、下記化学式21で表される。
【0065】
【0066】
1つの例示において化学式2中、A1およびB1のうちいずれか1つは、ベンゼン構造であり、他の1つは、存在せず、A2およびB2のうちいずれか1つは、ベンゼン構造であり、他の1つは、存在しなくてもよい。
【0067】
より適切な効果を得るために、化学式1と化学式2との関係を調節することができる。
【0068】
例えば、化学式1および化学式2のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41、R42、R61、R62、R63、R64、R71およびR72に存在する炭素数の合計の上限および/または下限をさらに調節することができる。例えば、炭素数の合計の下限は、26個、28個、30個、32個、34個、36個、38個、40個、42個、44個または46個程度であってもよい。炭素数の合計の上限は、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、48個、46個、44個、42個、40個、38個、36個、34個または32個、30個、28個程度であってもよい。炭素数の合計は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0069】
化学式1のR11およびR12の炭素数の合計C1の化学式2のR71およびR72の炭素数の合計C7に対する割合C1/C7の上限および/または下限をさらに調節することができる。例えば、炭素数の合計の下限は、0.1、0.3、0.5、1、1.5または2程度であってもよい。割合C1/C7の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1程度であってもよい。割合C1/C7は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0070】
化学式1のR11、R12、R51、R52、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R31、R32、R41およびR42の炭素数の合計CAのR61、R62、R63、R64、R71およびR72の炭素数の合計CBに対する割合CA/CBの上限および/または下限をさらに調節することができる。例えば、炭素数の合計の下限は、0.5、0.7、0.9、1、1.1、1.5、2または2.5程度であってもよい。割合CA/CBの上限は、5、4、3または2程度であってもよい。割合CA/CBは、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0071】
化学式1および化学式2の化合物を含むことによって、目的とする特性を示す吸収剤組成物を提供することができる。
【0072】
吸収剤組成物内で化学式1および化学式2の化合物間の割合は、特に限定されない。すなわち、化合物間の割合は、目的とする光特性を考慮して調節することができる。1つの例示において化学式2の化合物は、化学式1の化合物100重量部に対して1重量部~500重量部の割合で吸収剤組成物に含まれてもよい。
【0073】
化学式2の化合物の化学式1の化合物100重量部に対する割合は、他の例示において5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上または70重量部以上程度であるか、450重量部以下、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、250重量部以下、200重量部以下、150重量部以下または100重量部以下程度であってもよい。上記割合は、上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下であり、かつ上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上の範囲内にあってもよい。
【0074】
目的とする効果を得るために、必要に応じて、吸収剤組成物に含まれるすべての吸収剤に対する化学式1および化学式2の化合物の割合の上限および/または下限を調節することができる。例えば、吸収剤組成物に含まれるすべての吸収剤の重量を基準とする化学式1および化学式2の化合物の合計重量の割合(重量比)の下限は、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよい。重量比の上限は、100重量%、95重量%、90重量%または85重量%程度であってもよい。重量比は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限と上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限の範囲内にあってもよい。
【0075】
吸収剤組成物は、化学式1および化学式2の化合物にさらに必要な他の成分を含むこともできる。
【0076】
例えば、吸収剤組成物は、バインダーの役割をする樹脂成分をさらに含んでもよい。このような場合に適用する樹脂成分の種類は、特に限定されず、吸収膜、例えば、近赤外線吸収膜を形成するのに用いられる公知の樹脂成分を適用することができる。本開示の吸収剤は、公知の多様な樹脂成分に対して適切な相溶性や溶解性を示すことができる。
【0077】
適用可能な樹脂成分の例としては、環状オレフィン(COP、Cycloolefin)系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂またはシリコーン樹脂などやその他多様な有機樹脂または有機・無機ハイブリッド系の樹脂のうち1種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
樹脂成分を適用する場合に、その割合も特に限定されない。例えば、樹脂成分100重量部に対する化学式1および化学式2の化合物の合計重量が0.1~50重量部の範囲となるように樹脂成分が存在してもよい。
【0079】
樹脂成分100重量部に対する化学式1および化学式2の化合物の合計重量は、他の例示において0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上、5重量部以上、5.5重量部以上、6重量部以上、6.5重量部以上または7重量部以上程度であるか、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下または10重量部以下程度であってもよい。上記割合は、上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下であり、かつ上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上の範囲内にあってもよい。
【0080】
樹脂成分を適用する場合に、樹脂成分100重量部にして化学式1の化合物の重量比は、0.5~50重量部の範囲内であってもよい。樹脂成分100重量部に対する化学式1の化合物の重量比は、他の例示において1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上、5重量部以上、5.5重量部以上、6重量部以上、6.5重量部以上または7重量部以上程度であるか、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下または5重量部以下程度であってもよい。上記割合は、上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下であり、かつ上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上の範囲内にあってもよい。
【0081】
樹脂成分を適用する場合に、樹脂成分100重量部に対して化学式2の化合物の重量比は、0.5~50重量部の範囲内であってもよい。樹脂成分100重量部に対する化学式2の化合物の重量比は、他の例示において1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上、5重量部以上、5.5重量部以上、6重量部以上、6.5重量部以上または7重量部以上程度であるか、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下または3重量部以下程度であってもよい。上記割合は、上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下であり、かつ上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上の範囲内にあってもよい。
【0082】
例えば、吸収剤組成物は、化学式1および化学式2の化合物を含む吸収剤および/または樹脂成分が分散している溶媒をさらに含むこともできる。このような場合に適用する溶媒の種類は、特に限定されず、吸収膜、例えば、近赤外線吸収膜を形成するのに用いられる公知の溶媒を適用することができる。本開示の吸収剤は、公知の多様な溶媒に対して適切な相溶性や溶解性を示すことができる。
【0083】
適用可能な溶媒の例としては、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロベンゼンまたはキシレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
溶媒を適用する場合に、その割合にも特別な制限はなく、化学式1および化学式2の化合物などの適切な分散が可能な範囲で割合を調節することができる。
【0085】
吸収剤組成物は、上述した成分にさらに必要な他の成分を含むこともできる。
【0086】
本開示は、また、吸収剤組成物の用途に関する。
【0087】
例えば、本開示は、吸収剤組成物を適用した吸収膜に関する。
【0088】
このような吸収膜は、少なくとも樹脂成分と、吸収剤組成物または化学式1の化合物と化学式2の化合物とを含んでもよい。
【0089】
樹脂成分の具体的な種類および樹脂成分と化学式1および化学式2の化合物間の割合などは、前述した吸収剤組成物で説明した通りである。
【0090】
吸収膜は、所定範囲の波長領域内の光を吸収できる膜であってもよい。1つの例示において吸収膜は、赤外線吸収膜または近赤外線吸収膜であってもよい。このような吸収膜は、例えば、約600nm~900nmの範囲内の波長領域のうち少なくとも一部の波長領域で吸収特性を示すことができる。
【0091】
1つの例示において吸収膜は、前述した吸収剤組成物または化学式1および化学式2の化合物の適用を通じて、上記600nm~900nmの波長領域内で相対的に広いバンド幅を有し、より長波長に対して吸収特性を有していてもよい。
【0092】
このような特性によって、吸収膜は、多様な光学フィルターや赤外線センサーなどの機器に適用し、入射角によるシフト現象を防止することができる。また、光学フィルターや赤外線センサーなどに誘電体膜を適用する場合に、当該誘電体膜の反射特性を調節し、いわゆるペタルフレア(petal flare)などの欠陥を防止することができ、また、誘電体膜の層数を低減することができ、これによって、工程的なメリットをも確保することができる。
【0093】
したがって、一例示において吸収膜は、600nm~900nmの波長範囲内でバンド幅が60nm以上の吸収バンドを示すことができる。
【0094】
吸収バンドは、吸収膜の透過率曲線で略70%以下の透過率を示す領域を意味する。
【0095】
また、バンド幅は、吸収膜の透過率曲線の600nm~900nmの波長領域で20%の透過率を示す最長波長と20%の透過率を示す最短波長間の差を意味する。
【0096】
このような吸収膜の600nm~900nmの波長範囲内でバンド幅は、他の例示において70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上または120nm以上程度であってもよい。バンド幅の上限は、特に制限されず、例えば、バンド幅は、600nm以下、550nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、190nm以下、180nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下または130nm以下程度であってもよい。バンド幅は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上であるか、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下の範囲内にあってもよい。
【0097】
また、吸収膜は、T50%Cut on波長が600nm~800nmの範囲内にあってもよい。T50%Cut on波長の下限は、他の例示において610nm、620nmまたは630nm程度であってもよく、その上限は、他の例示において750nm、700nmまたは650nm程度であってもよい。T50%Cut on波長は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下の範囲内にあってもよい。
【0098】
ここで、T50%Cut on波長は、吸収膜の透過率曲線の600nm~900nmの波長領域で50%の透過率を示す最短波長を意味する。
【0099】
吸収膜は、T50%Cut off波長が700nm~900nmの範囲内にあってもよい。T50%Cut off波長は、T50%Cut on波長に比べて長波長であってもよい。T50%Cut off波長の下限は、他の例示において720nm、740nm、760nm、780nmまたは800nm程度であってもよく、その上限は、他の例示において880nm、860nm、840nm、820nm、810nmまたは800nm程度であってもよい。T50%Cut off波長は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下の範囲内にあってもよい。
【0100】
ここで、T50%Cut off波長は、吸収膜の透過率曲線の600nm~900nmの波長領域で50%の透過率を示す最長波長を意味する。
【0101】
吸収特性を通じて、吸収膜は、多様な光学フィルターや赤外線センサーなどの機器に適用し、目的とする特性を効率的に達成することができる。
【0102】
本開示の吸収膜は、本開示の吸収剤組成物を適用する限り、公知の方法で形成することができる。
【0103】
例えば、吸収剤組成物を適切な方法でコートし、必要に応じて硬化や乾燥工程を行い、吸収膜を形成することができる。
【0104】
吸収膜の厚さには、特に限定されず、厚さは、目的とする特性を考慮して調節することができる。
【0105】
一例示において吸収膜は、略0.1μm~20μm程度の厚さを有していてもよい。
【0106】
本開示は、また、光学フィルターに関する。光学フィルターは、基材層と、基材層の一面または両面に形成される前述した吸収膜と、を含んでもよい。
【0107】
図1は、光学フィルターの1つの例示として、基材層100の一面に吸収膜200が形成された場合を示す図である。
【0108】
このような本開示の光学フィルターは、前述した吸収膜を含むことによって優れた性能を示すことができ、例えば、光学フィルターは、不要な赤外線光を効率よくかつ正確に遮断しつつ、高い透過率の可視光透過バンドを実現することができる。
【0109】
光学フィルターに適用する透明基板の種類は、特に限定されず、公知の光学フィルター用透明基板を用いることができる。
【0110】
1つの例示において基材層は、いわゆる赤外線吸収基板であってもよい。赤外線吸収基板は、赤外線領域のうち少なくとも一部の領域で吸収特性を示す基板である。銅を含ませて上記特性を示すいわゆるブルーガラス(Blue Glass)は、赤外線吸収基板の代表的な例である。このような赤外線吸収基板は、赤外線領域の光を遮断する光学フィルターを構成するに際して有用であるが、吸収特性によって可視光領域で高い透過率を確保する点から不利であり、また、耐久性の点からも不利である。本開示では、赤外線吸収基板を選択し、これを前述した吸収膜と組み合わせることによって、所望の光を効率的に遮断しつつ、可視光領域で高い透過率特性を示し、耐久性に優れた光学フィルターを提供することができる。
【0111】
赤外線吸収基板としては、425nm~560nmの範囲内で75%以上の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例示において77%以上、79%以上、81%以上、83%以上、85%以上、87%以上または89%以上の範囲内および/または98%以下、96%以下、94%以下、92%以下または90%以下の範囲内であってもよい。
【0112】
赤外線吸収基板としては、425nm~560nmの範囲内で80%以上の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例示において82%以上、84%以上、86%以上、88%以上または90%以上の範囲内および/または100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下または90%以下の範囲内であってもよい。
【0113】
赤外線吸収基板としては、350nm~390nmの範囲内で75%以上の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例示において77%以上、79%以上、81%以上または83%以上の範囲内および/または98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、88%以下、86%以下または84%以下の範囲内であってもよい。
【0114】
赤外線吸収基板としては、350nm~390nmの範囲内で80%以上の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例示において82%以上、84%以上、86%以上または87%以上の範囲内および/または100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下または88%以下の範囲内であってもよい。
【0115】
赤外線吸収基板としては、波長700nmにおける透過率が10%~45%の範囲内の基板を用いることができる。透過率は、他の例示において43%以下、41%以下、39%以下、37%以下、35%以下、33%以下、31%以下または29%以下程度であるか、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上または28%以上程度であってもよい。
【0116】
赤外線吸収基板としては、700nm~800nmの範囲内で5%~30%の範囲内の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例示において7%以上、9%以上、11%以上、13%以上、15%以上、15.5%以上、16%以上または16.5%以上の範囲内および/または28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、20%以下、18%以下または17%以下の範囲内であってもよい。
【0117】
赤外線吸収基板としては、700nm~800nmの範囲内で10%~45%の範囲内の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例示において12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上または28%以上の範囲内および/または43%以下、41%以下、39%以下、37%以下、35%以下、33%以下、31%以下または29%以下の範囲内であってもよい。
【0118】
赤外線吸収基板としては、800nm~1000nmの範囲内で3%~20%の範囲の平均透過率を示す基板を用いることができる。平均透過率は、他の例示において5%以上、7%以上、9%以上または11%以上の範囲内および/または18%以下、16%以下、14%以下または12%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0119】
赤外線吸収基板としては、800nm~1000nmの範囲内で5%~30%の範囲の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例示において7%以上、9%以上、11%以上、13%以上または15%以上の範囲内および/または28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、20%以下、18%以下または16%以下の範囲内であってもよい。
【0120】
赤外線吸収基板としては、1000nm~1200nmの範囲内で10%~50%の範囲の平均透過率を示す基板を適用することができる。平均透過率は、他の例示において12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上または25%以上の範囲内および/または48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下、36%以下、34%以下、32%以下、30%以下、28%以下または26%以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0121】
赤外線吸収基板は、1000nm~1200nmの範囲内で10%~70%の範囲の最大透過率を示す基板を用いることができる。最大透過率は、他の例示において12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上またはまたは36%以上の範囲内および/または68%以下、66%以下、64%以下、62%以下、60%以下、58%以下、56%以下、54%以下、52%以下、50%以下、48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下または37%以下の範囲内であってもよい。
【0122】
上記特性の赤外線吸収基板は、本開示の吸収膜と組合わせて目的とする光学フィルターを形成することができる。
【0123】
このような基板としては、いわゆる赤外線吸収ガラスと知られている基板を用いることができる。このようなガラスは、フッ化リン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスなどにCuOなどを添加して製造した吸収型ガラスである。したがって、一例示において本開示では、赤外線吸収基板としては、CuO含有フッ化リン酸塩ガラス基板またはCuO含有リン酸塩ガラス基板を用いてもよい。リン酸塩ガラスには、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成される硅酸リン酸塩ガラスも含まれる。このような吸収型ガラスは、公知となっており、例えば、韓国登録特許第10-2056613号などに開示されたガラスやその他市販の吸収型ガラス(例えば、ホヤ、ショット、PTOT社などの市販製品)を用いることができる。
【0124】
このような赤外線吸収基板は、銅を含む。本開示では、銅含有量が1重量%~7重量%の範囲内の基板を用いることができる。銅含有量は、他の例示において1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、2.6重量%以上、2.7重量%以上または2.8重量%以上程度であるか、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下または2.9重量%以下程度であってもよい。このような銅含有量を有する基板は、前述した光学特性を示しやすく、吸収膜と組合わせて所望の特性の光学フィルターを形成することができる。
【0125】
銅含有量は、X線蛍光分析(WD XRF、Wavelength Dispersive X-Ray Fluorescence Spectrometry)装置を用いて確認することができる。X線蛍光分析装置を用いて試験片(基材層)にX線を照射すると、試験片の各元素から特徴的な二次X線が発生し、装置は、二次X線を各元素別の波長によって検出する。二次X線の強度は、元素含有量に比例し、したがって、元素別の波長によって測定された二次X線の強度を通じて定量分析を行うことができる。
【0126】
赤外線吸収基板の厚さは、例えば、約0.03mm~5mmの範囲内で調節することができるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
本開示の光学フィルターは、基材層と吸収膜にさらに必要な公知の他の構成を含むこともできる。
【0128】
例えば、前述した光学フィルターは、誘電体膜をさらに含んでもよい。光学フィルターは、例えば、基材層の一面または両面にいわゆる誘電体膜をさらに含んでもよい。
【0129】
図2および
図3は、誘電体膜300が追加された光学フィルターの例示であり、基材層100と吸収膜200とを含む積層構造の一面または両面に誘電体膜300が形成された場合を示す。
【0130】
このような誘電体膜は、低屈折率の誘電体材料と高屈折率の誘電体材料を反復積層して構成された膜であり、いわゆるIR反射層およびAR(Anti-reflection)層を形成するために用い、本開示でも、このような公知のIR反射層やAR層の形成のための誘電体膜を適用することができる。
【0131】
したがって、誘電体膜は、それぞれ互いに屈折率が異なる少なくとも2種のサブ層を含む多層構造であってもよく、2種のサブ層が繰り返して積層された多層構造を含んでもよい。
【0132】
誘電体膜を形成する材料、すなわち各サブ層を形成する材料の種類は、特に限定されず、公知の材料を適用することができる。通常、低屈折サブ層の製造には、SiO2またはNa5Al3F14、Na3AlF6またはMgF2などのフッ化物を適用し、高屈折サブ層の製造には、非晶質シリコン、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、ZnSまたはZnSeなどを適用することができるが、本開示において適用する材料は上記に限定されるものではない。
【0133】
誘電体膜を形成する方法は、特に限定されず、例えば、公知の蒸着方法を適用して形成することができる。サブ層の蒸着厚さや層数などを勘案して誘電体膜の反射や透過特性を制御する方法が公知となっており、本開示では、このような公知の方法によって誘電体膜を形成することができる。
【0134】
1つの例示において本開示の光学フィルターに含まれる誘電体膜は、600nm~900nmの波長範囲内で50%の反射率を示す最短波長が710nm以上であるか、あるいは最短波長が存在しなくてもよい。最短波長が存在しない場合、600nm~900nmの波長範囲で誘電体膜の最大反射率は50%未満である。存在する場合に、50%の反射率を示す最短波長は、他の例示において715nm以上、720nm以上、725nm以上、730nm以上、735nm以上、740nm以上、745nm以上、750nm以上または754nm以上であるか、900nm以下、850nm以下、800nm以下、790nm以下、780nm以下、770nm以下または760nm以下程度であってもよい。50%の反射率を示す最短波長は、上述した下限のうちいずれかの1つの下限と上限の範囲内であってもよく、この際、上限は、900nmであってもよい。
【0135】
誘電体膜の反射特性を制御することによって、いわゆるペタルフレア(petal flare)現象を防止することができる。ペタルフレア現象は、発光体などを撮影するとき、目視で観察されなかった赤色線などが写真に撮られる現象を意味し、発光体を基準として赤色線があたかも花びらのように形状を帯びる場合が多く、ペタルフレアと呼ばれる。撮像装置に含まれるセンサーの感度が増加し、より鮮明な写真を得るために光学フィルターなどの透過率を高めることで、上記ペタルフレアの発生頻度が増加している。
【0136】
ペタルフレア現象の原因の1つは、光学フィルターが装着された撮像装置内で近赤外光の反射が繰り返されることが考慮される。通常、光学フィルターに形成される誘電体膜のうち、特にいわゆるIR膜は、近赤外線領域の光を反射により遮断するために形成されるものであるから、誘電体膜が50%の反射率を示す最短波長は、可視光近くに形成され、これは、通常710nm未満である。しかしながら、このような誘電体膜により撮像装置内で近赤外光の反射が加速化し、それによって、ペタルフレア現象が発生する。それでも、誘電体膜が50%の反射率を示す最短波長を710nm以上に調節すると、光学フィルターの赤外光遮断効率が低下する。
【0137】
しかしながら、本開示では、前述した吸収膜の適用を通じて、誘電体膜が50%の反射率を示す最短波長を710nm以上に調節する場合にも、赤外光を効果的に遮断することができ、また、ペタルフレア現象も防止することができる。なお、誘電体膜の反射特性を調節する設計方法は公知となっている。
【0138】
光学フィルターは、前述した吸収膜と区別される吸収膜として紫外線に対して吸収特性を示す吸収膜(以下、紫外線吸収膜)をさらに含んでもよい。ただし、このような紫外線吸収膜は、必須構成ではなく、例えば、後述する紫外線吸収剤を化学式1および化学式2の化合物などと共に1つの吸収膜に導入することもできる。
【0139】
1つの例示において紫外線吸収膜は、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができる。
【0140】
紫外線吸収膜は、紫外線吸収剤のみを含むこともでき、必要に応じて、2種以上の紫外線吸収剤を含むこともできる。
【0141】
例えば、紫外線吸収剤としては、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示す公知の吸収剤を適用することができ、その例としては、Exiton社のABS 407;QCR Solutions Corp社のUV381A、UV381B、UV382A、UV386A、VIS404A;H.W.Sands社のADA1225、ADA3209、ADA3216、ADA3217、ADA3218、ADA3230、ADA5205、ADA3217、ADA2055、ADA6798、ADA3102、ADA3204、ADA3210、ADA2041、ADA3201、ADA3202、ADA3215、ADA3219、ADA3225、ADA3232、ADA4160、ADA5278、ADA5762、ADA6826、ADA7226、ADA4634、ADA3213、ADA3227、ADA5922、ADA5950、ADA6752、ADA7130、ADA8212、ADA2984、ADA2999、ADA3220、ADA3228、ADA3235、ADA3240、ADA3211、ADA3221、ADA5220、ADA7158;CRYSTALYN社のDLS381B、DLS381C、DLS382A、DLS386A、DLS404A、DLS405A、DLS405C、DLS403Aなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
このような紫外線吸収膜を構成する材料および構成方法は、特に限定されず、公知の材料および構成方法を適用することができる。
【0143】
通常、紫外線吸収膜は、目的とする吸収極大を示すことができるよう紫外線吸収剤を透明な樹脂と配合した材料を用いて形成する。この際、透明樹脂としては、吸収剤組成物に適用する樹脂成分を適用することができる。
【0144】
光学フィルターは、上述した層の他にも、必要な多様な層を目的とする効果を損なわない範囲で追加することができる。
【0145】
本開示は、また、前述した光学フィルターを含む撮像装置に関する。この際、撮像装置の構成方法や光学フィルターの適用方法は、特に限定されず、公知の構成と適用方法を適用することができる。
【0146】
また、本開示の光学フィルターの用途が撮像装置に限定されるものではなく、その他、近赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。。
【0147】
本開示は、また、前述した吸収膜を含む赤外線センサーに関する。赤外線センサーの構成は、本開示の吸収膜が含まれる限り、特に限定されず、例えば、公知のモーションセンサー、近接センサーまたはジェスチャーセンサーに本開示の吸収膜を導入して構成することができる。
【0148】
また、本開示の吸収剤組成物または吸収膜の用途が光学フィルター、赤外線センサーおよび/または撮像装置に限定されるものではなく、その他、赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。
【発明の効果】
【0149】
本開示は、吸収剤組成物およびその用途を提供することができる。本開示では、2種以上の吸収剤を含む吸収剤組成物として多様な溶媒および樹脂成分に対して優れた相溶性や溶解性を示す吸収剤組成物を提供することができる。
【0150】
本開示は、吸収剤組成物を適用し、所望の光特性を確保することができる。
【0151】
本開示は、また、吸収剤組成物の用途を提供することを目的とし、例えば、吸収剤組成物を用いて形成した吸収膜、光学フィルター、固体撮像素子および/または赤外線センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【
図1】本開示の光学フィルターの例示的な構造を示す図である。
【
図2】本開示の光学フィルターの例示的な構造を示す図である。
【
図3】本開示の光学フィルターの例示的な構造を示す図である。
【
図4】実施例または比較例で製造された吸収膜の透過率を評価した結果を示す図である。
【
図5】実施例または比較例で製造された吸収膜の透過率を評価した結果を示す図である。
【
図6】実施例または比較例で製造された吸収膜の透過率を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0153】
以下、実施例に基づいて本開示の光学フィルターを具体的に説明するが、本開示の光学フィルターの範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0154】
<1.透過率スペクトルの評価>
透過率スペクトルは、測定対象(例えば、吸収膜)を横および縦がそれぞれ10mmおよび10mmとなるように裁断して得られた試験片に対して分光光度計(製造社:Perkinelmer社、製品名:Lambda750分光光度計)を用いて測定した。透過率スペクトルは、波長別および入射角別に測定した。試験片を分光光度計の測定ビームとディテクターとの間の直線上に配置し、測定ビームの入射角を0度から40度まで変更しながら、透過率スペクトルを測定した。特に明記しない限り、本実施例における透過率スペクトルの結果は、入射角が0度である場合の結果である。入射角0度は、試験片の表面法線方向と実質的に平行な方向である。
【0155】
透過率スペクトルにおいて所定波長領域内における平均透過率は、波長領域における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら各波長の透過率を測定した後、測定された透過率の算術平均を求めた結果であり、最大透過率は、1nmずつ波長を増加させながら測定した透過率のうち最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均であり、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0156】
<2.Mass分析>
合成された化合物に対するMass分析は、液体クロマトグラフ/質量分析機器(Thermo Finnigan社)を用いて行った。
【0157】
(合成例1.化合物(A1)の製造)
下記反応式1の過程を通じて化学式A1の化合物を合成した。
【0158】
【0159】
反応式1の化合物A14.1g、スクアリン酸(Squaric acid)2.24gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)8.7gをn-ブタノール(n-Butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させる。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A1の化合物)(7.4g、51%)を得ることができた。
【0160】
合成された目的化合物(化学式A1の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 739.7[M+H]+
【0161】
(合成例2.化合物(A2)の製造)
下記反応式2の過程を通じて化学式A2の化合物を合成した。
【0162】
【0163】
反応式2の化合物B14.1g、スクアリン酸(Squaric acid)2.24gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)8.7gをn-ブタノール(n-Butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させた。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A2の化合物)(6.1g、39%)を得た。
【0164】
合成された目的化合物(化学式A2の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 795.7[M+H]+
【0165】
(合成例3.化合物A3の製造)
下記反応式3の過程を通じて化学式A3の化合物を合成した。
【0166】
【0167】
反応式3の化合物C17.5g、スクアリン酸(Squaric acid)2.5gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)9.8gをn-ブタノール(n-Butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させた。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A3の化合物)(6.9g、36%)を得た。
【0168】
合成された目的化合物(化学式A3の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 876.1[M+H]+
【0169】
(合成例4.化合物(A4)の製造)
下記反応式4の過程を通じて化学式A4の化合物を合成した。
【0170】
【0171】
反応式4の化合物D14g、スクアリン酸(Squaric acid)2.5 gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)9.3gをn-ブタノール(n-Butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させた。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A4の化合物)(6.8g、45%)を得た。
【0172】
上記合成された目的化合物(化学式A4の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 687.5[M+H]+
【0173】
(合成例5.化合物(A5)の製造)
下記反応式5の過程を通じて化学式A5の化合物を合成した。
【0174】
【0175】
反応式5の化合物E15.3g、スクアリン酸(Squaric acid)2.5gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)9.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させる。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A5化合物)(7.2g、44%)を得ることができる。
【0176】
合成された目的化合物(化学式A5)の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 743.6[M+H]+
【0177】
(合成例6.化合物(A6)の製造)
下記反応式6の過程を通じて化学式A6の化合物を合成した。
【0178】
【0179】
反応式6化合物F10.7g、スクアリン酸(Squaric acid)2.5gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)9.3gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解させ、95℃で4時間程度反応させる。反応完了後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを入れ、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルターし、目的物(化学式A6化合物)(5.7g、48%)を得ることができる。
【0180】
合成された目的化合物(化学式A6の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 543.4[M+H]+
【0181】
(合成例7.化合物(B1)の製造)
下記反応式7の過程を通じて化学式B1の化合物を合成した。
【0182】
【0183】
反応式7の化合物G10.1g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B1の化合物)(6.8g、58%)を得ることができる。
【0184】
合成された目的化合物(化学式B1の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 665.8[M+H]+
【0185】
(合成例8.化合物(B2)の製造)
下記反応式8の過程を通じて化学式B2の化合物を合成した。
【0186】
【0187】
反応式8の化合物H8.9g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.5gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B2の化合物)(5.9g、55%)を得ることができる。
【0188】
合成された目的化合物(化学式B2の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 641.5[M+H]+
【0189】
(合成例9.化合物(B3)の製造)
下記反応式9の過程を通じて化学式B3の化合物を合成した。
【0190】
【0191】
反応式9の化合物I8.8g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B3の化合物)(5.4g、51%)を得ることができる。
【0192】
合成された目的化合物(化学式B3の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 609.2[M+H]+
【0193】
(合成例10.化合物(B4)の製造)
下記反応式10の過程を通じて化学式B4の化合物を合成した。
【0194】
【0195】
反応式10の化合物J10.3g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)8.5gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B4の化合物)(3.6g、31%)を得ることができる。
【0196】
上記合成された目的化合物(化学式B4の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 665.4[M+H]+
【0197】
(合成例11.化合物(B5)の製造)
下記反応式11の過程を通じて化学式B5の化合物を合成した。
【0198】
【0199】
反応式11の化合物K9.3g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B5の化合物)(5.7g、53%)を得ることができる。
【0200】
合成された目的化合物(化学式B5の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 636.4[M+H]+
【0201】
(合成例12.化合物(B6)の製造)
下記反応式12の過程を通じて化学式B6の化合物を合成した。
[反応式12]
【化15】
【0202】
反応式12の化合物L8.9g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B6の化合物)(5.6g、52%)を得ることができる。
【0203】
合成された目的化合物(化学式B6の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 612.3[M+H]+
【0204】
(合成例13.化合物(B7)の製造)
下記反応式13の過程を通じて化学式B7の化合物を合成した。
【0205】
【0206】
反応式13の化合物M7.8g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B7の化合物)(4.5g、49%)を得ることができる。
【0207】
合成された目的化合物(化学式B7の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 525.6[M+H]+
【0208】
(合成例14.化合物(B8)の製造)
下記反応式14の過程を通じて化学式B8の化合物を合成した。
【0209】
【0210】
反応式14の化合物N7.8g、スクアリン酸(Squaric acid)2.0gおよびテトラエチルオルトホルメート(Tetraethyl orthoformate)7.8gをn-ブタノール(n-butanol)100mLに溶解し、95℃で4時間反応させる。反応後、常温(約25℃)に冷却し、エタノール300mLを追加し、6時間以上撹拌した後、沈殿した固体をエタノールを通過させて減圧フィルタリングし、目的物(化学式B8の化合物)(3.9g、42%)を得ることができる。
【0211】
合成された目的化合物(化学式B8の化合物)に対するMass分析結果は、下記の通りである。
<Mass分析結果>
LC-MS m/z 525.5[M+H]+
【0212】
合成された各化合物の溶解性を評価した。溶解性は、常温(約25℃)で各化合物の複数の溶媒(シクロヘキサノン、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)またはメチルエチルケトン(MEK))に対する溶解度を評価し、下記基準によって判断した。
<溶解性の判断基準>
A:溶解度が1質量%以上である場合
B:溶解度が0.5質量%以上、1質量%未満である場合
C:溶解度が0.2質量%以上、0.5質量%未満である場合
D:溶解度が0.2質量%未満である場合
【0213】
溶解性の評価結果を下記表1に整理して記載した。
【0214】
【0215】
(実施例1)
溶媒と樹脂成分を含む混合物に合成例1の化合物(化学式A1)と合成例7の化合物(化学式B1)を約55:40の重量比(A1:B1)で分散させて吸収剤組成物を製造した。上記過程で分散は、上記合成例1の化合物と合成例7の化合物の合計重量が樹脂成分100重量部に対して約7程度の重量部となるようにした。
【0216】
樹脂成分と溶媒の混合物としては、LG化学社のアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))がメチルイソブチルケトン(MIBK)に約15重量%の濃度で分散した混合物(実施例1-1)、シリコーン樹脂(ダウ社)がシクロヘキサノンに約15重量%の濃度で分散した混合物(実施例1-2)または環状オレフィン系樹脂(TOPAS社)がシクロヘキサノンに約15重量%の濃度で分散した混合物(実施例1-3)を適用した。
【0217】
(実施例2)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例2の化合物(化学式A2)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例2-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例2-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例2-3)を適用した。
【0218】
(実施例3)
合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例8の化合物(化学式B2)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例3-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例3-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例3-3)を適用した。
【0219】
(実施例4)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例2の化合物(化学式A2)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例9の化合物(化学式B3)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例4-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例4-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例4-3)を適用した。
【0220】
(実施例5)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例4の化合物(化学式A4)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例10の化合物(化学式B4)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例5-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例5-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例5-3)を適用した。
【0221】
(実施例6)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例5の化合物(化学式A5)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例11の化合物(化学式B5)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例6-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例6-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例6-3)を適用した。
【0222】
(実施例7)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例5の化合物(化学式A5)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例8の化合物(化学式B2)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例7-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例7-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例7-3)を適用した。
【0223】
(実施例8)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例5の化合物(化学式A5)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例12の化合物(化学式B6)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例8-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例8-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例8-3)を適用した。
【0224】
(実施例9)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例5の化合物(化学式A5)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例9の化合物(化学式B3)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(実施例9-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例9-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(実施例9-3)を適用した。
【0225】
(比較例1)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例5の化合物(化学式A5)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例13の化合物(化学式B7)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(比較例1-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例1-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例1-3)を適用した。
【0226】
(比較例2)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例6の化合物(化学式A6)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(比較例2-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例2-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例2-3)を適用した。
【0227】
(比較例3)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例6の化合物(化学式A6)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例8の化合物(化学式B2)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(比較例3-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例3-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例3-3)を適用した。
【0228】
(比較例4)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例6の化合物(化学式A6)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例13の化合物(化学式B7)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(比較例4-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例4-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例4-3)を適用した。
【0229】
(比較例5)
合成例1の化合物(化学式A1)の代わりに合成例6の化合物(化学式A6)を用い、合成例7の化合物(化学式B1)の代わりに合成例14の化合物(化学式B8)を用いたことを除いて、実施例1と同一に吸収剤組成物を製造した。樹脂成分と溶媒の混合物としては、実施例1と同じアクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物(比較例5-1)、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例5-2)または環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物(比較例5-3)を適用した。
【0230】
実施例および比較例の各吸収剤組成物に対する溶解性を評価した。溶解性は、常温(約25℃)でフィルターサイズが約1μm程度のシリンジフィルター(Syringe filter)を用いて各吸収剤組成物を注射しつつ、下記基準によって評価した。
<溶解性の判断基準>
A:シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターに目詰まることなく、良好に通過する場合
B:シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターを通過するが、目詰まり現象により通過速度が顕著に遅くなる場合
C:シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターを通過しない場合
【0231】
評価結果を下記表2に整理して記載した。表2において、条件1は、吸収剤組成物の樹脂成分と溶媒の混合物として、アクリル樹脂(PMMA(polymethylmethacrylate))とメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合物を用いた場合であり、条件2は、シリコーン樹脂とシクロヘキサノンの混合物を用いた場合であり、条件3は、環状オレフィン系樹脂とシクロヘキサノンの混合物を適用した場合である。
【0232】
【0233】
(実施例10)
環状オレフィン樹脂(COP、Cycloolefin polymer)、合成例1の化合物(化学式A1)、合成例7の化合物(B1)および溶媒(cyclohexanone)を1.5:0.055:0.04:10の重量比(COP:A1:B1:cyclohexanone)で混合し、12時間以上撹拌し、吸収剤組成物を製造した。この組成物に対して前述した方法で同様に溶解性を評価した結果、評価結果は、A(シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターに目詰まることなく、良好に通過)であった。
【0234】
吸収剤組成物を光の吸収および反射が実質的にない透明基板(SCHOTT社)上にスピンコートし、約130℃程度の温度で約2時間程度熱処理し、厚さが約3μm程度の吸収膜を形成した。
【0235】
図4は、製造された吸収膜に対して透過率を評価した結果を示す図である。
【0236】
(実施例11)
シリコーン樹脂、合成例2の化合物(化学式A2)、合成例9の化合物(B3)および溶媒(cyclohexanone)を1.5:0.055:0.04:10の重量比(COP:A2:B3:cyclohexanone)で混合し、12時間以上撹拌し、吸収剤組成物を製造した。この組成物に対して前述した方法で同様に溶解性を評価した結果、評価結果は、A(シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターに目詰まることなく、良好に通過)であった。
【0237】
製造された吸収剤組成物を用いて実施例10と同様に吸収膜を形成した。
【0238】
図5は、上記のような吸収膜に対して透過率を評価した結果を示す図である。
【0239】
(比較例6)
シリコーン樹脂、合成例5の化合物(化学式A5)、合成例13の化合物(B7)および溶媒(cyclohexanone)を1.5:0.055:0.04:10の重量比(COP:A4:B7:cyclohexanone)で混合し、12時間以上撹拌し、吸収剤組成物を製造した。この組成物に対して前述した方法で同様に溶解性を評価した結果、評価結果は、B(シリンジフィルターによる注射時に、吸収剤組成物がフィルターを通過するが、目詰まり現象により通過速度が顕著に遅くなる)であった。
【0240】
製造された吸収剤組成物を用いて実施例10と同様に吸収膜を形成した。
【0241】
図6は、製造された吸収膜に対して透過率を評価した結果を示す図である。
【0242】
実施例10および実施例11ならびに比較例6の吸収膜に対して600nm~900nmの波長領域内における吸収特性を評価し、その結果を下記表3に整理した。表3において、T50%cut onは、透過率スペクトルで600nm~900nmの波長領域内で50%の透過率を示す最短波長であり、T50%cut offは、透過率スペクトルで600nm~900nmの波長領域内で50%の透過率を示す最長波長である。表3において、T20%cut onは、透過率スペクトルで600nm~900nmの波長領域内で20%の透過率を示す最短波長であり、T20%cut offは、透過率スペクトルで600nm~900nmの波長領域内で20%の透過率を示す最長波長である。表3において、TMINは、600nm~900nmの波長領域内で確認される最小透過率であり、TAVGは、600nm~900nmの波長領域内の平均透過率である。
【0243】
【符号の説明】
【0244】
100:基材層
200:吸収膜
300:誘電体膜