(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008228
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ブレード用弾性体、およびこの弾性体を用いたクリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240112BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240112BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240112BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/00 553
G03G15/08 227
C08K3/013
C08L75/04
C08K3/22
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109929
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】廣富 賢
【テーマコード(参考)】
2H077
2H134
2H171
4J002
【Fターム(参考)】
2H077AD13
2H077AD23
2H134HD01
2H134HD02
2H134HD06
2H134HD11
2H134HD17
2H134HD19
2H134KD08
2H134KD11
2H134KD14
2H134KE02
2H134KE03
2H134KE06
2H134KH15
2H171FA17
2H171FA26
2H171FA27
2H171FA30
2H171GA08
2H171GA20
2H171PA01
2H171PA14
2H171QB35
2H171QC22
2H171QC25
2H171TA15
2H171UA03
2H171UA07
2H171UA10
2H171UA12
2H171VA02
2H171VA06
2H171XA06
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002DE096
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】摩擦係数の低いクリーニングブレードを提供すること。
【解決手段】少なくともクリーニング側表面が、平均粒子径0.15μm以上2μm以下である無機微粒子が分散している熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記熱硬化性ポリウレタン弾性体が、前記無機微粒子を0.8重量%以上15重量%未満含有するブレード用弾性体、およびこのブレード用弾性体を備える電子写真装置用クリーニングブレード。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともクリーニング側表面が、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下である無機微粒子が分散している熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記熱硬化性ポリウレタン弾性体が、前記無機微粒子を0.8重量%以上15重量%未満含有することを特徴とするブレード用弾性体。
【請求項2】
クリーニング側表面に位置するエッジ層と、該エッジ層の背面側に形成されたベース層とを有し、
前記エッジ層が、前記熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記ベース層が、前記エッジ層とは異なる弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載のブレード用弾性体。
【請求項3】
前記無機微粒子が、シリカ、アルミナからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のブレード用弾性体。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリウレタン弾性体において、厚さ方向でクリーニング側表面ほど前記無機微粒子が多く分布していることを特徴とする請求項1または2に記載のブレード用弾性体。
【請求項5】
請求項1または2に記載のブレード用弾性体が、支持部材に取り付けられていることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置のブレードに用いる当接部が熱硬化性ポリウレタンからなるブレード用弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の電子写真装置では、クリーニングブレード、現像ブレード、導電ブレード、研磨ブレード、塗布ブレード等のブレードが用いられている。ブレードは、弾性体と支持部材とからなり、通常、弾性体は、適度な硬度、弾性を有する熱硬化性ポリウレタンが用いられる。
ブレード用弾性体には、キシミ音や拭きムラ等が発生しないように、感光体ドラムと接触する部分の摩擦係数が小さいことが求められている。また、摩擦係数が小さくなると、ブレード用弾性体や感光体ドラムの長寿命化にも寄与し、感光体ユニットの交換頻度を減らすことができる。
【0003】
低摩擦であるクリーニングブレードとして、例えば、特許文献1にはクリーニング面に潤滑剤を存在させたブレード、特許文献2、3には、クリーニング層とベース層との2層構造を有し、クリーニング層として高硬度で摩擦係数の小さなポリウレタンを用いたクリーニングブレードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-287494号公報
【特許文献2】特開2008-070634号公報
【特許文献3】特開2010-139737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、摩擦係数の低いクリーニングブレードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.少なくともクリーニング側表面が、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下である無機微粒子が分散している熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記熱硬化性ポリウレタン弾性体が、前記無機微粒子を0.8重量%以上15重量%未満含有することを特徴とするブレード用弾性体。
2.クリーニング側表面に位置するエッジ層と、該エッジ層の背面側に形成されたベース層とを有し、
前記エッジ層が、前記熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記ベース層が、前記エッジ層とは異なる弾性体からなることを特徴とする1.に記載のブレード用弾性体。
3.前記無機微粒子が、シリカ、アルミナからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする1.または2.に記載のブレード用弾性体。
4.前記熱硬化性ポリウレタン弾性体において、厚さ方向でクリーニング側表面ほど前記無機微粒子が多く分布していることを特徴とする1.または2.に記載のブレード用弾性体。
5.1.または2.に記載のブレード用弾性体が、支持部材に取り付けられていることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブレード用弾性体は、感光体ドラムと接触するクリーニング側表面が低摩擦であり、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エッジ層とベース層とが異なる弾性体であるブレード用弾性体の概略図。
【
図2】実施例4と比較例1で得られたブレード用弾性体の厚さ方向断面の顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・ブレード用弾性体
本発明のブレード用弾性体(以下、単に「弾性体」ともいう)は、少なくともクリーニング側表面が、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下である無機微粒子が分散している熱硬化性ポリウレタン弾性体からなり、
前記熱硬化性ポリウレタン弾性体が、前記無機微粒子を0.8重量%以上15重量%未満含有することを特徴とする。
ブレード用弾性体は、幅が5mm以上20mm以下、厚さが1mm以上3mm以下程度である。また、弾性体の長さは、接触する感光体ドラムの幅、すなわち、印刷する用紙の幅に応じて適宜選択されるが、A4サイズの紙を使用する場合、220mm程度である。
【0010】
本発明の弾性体は、少なくとも感光体ドラムと接触する側に位置するクリーニング側表面が、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下である無機微粒子が所定濃度で分散している熱硬化性ポリウレタン弾性体から構成されていればよい。本発明の弾性体は、全体をこの特定の熱硬化性ポリウレタン弾性体から構成してもよく、クリーニング側表面が位置するエッジ層をこの特定の熱硬化性ポリウレタン弾性体から構成し、背面側のベース層を異なる弾性体から構成してもよい。
【0011】
図1に、ベース層2とエッジ層3とが異なる弾性体であるブレード用弾性体1の概略図を示す。このように、ベース層2をエッジ層3とは異なる弾性体で構成することが、ベース層2とエッジ層3との物性を異ならせることができ、ブレード用弾性体1に要求される性能を分担して発揮させることができるため好ましい。このブレード用弾性体1において、エッジ層3の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、全体の厚さ(ベース層2とエッジ層3の厚さの和)に対するエッジ層の厚さの割合は、5%以上50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。
【0012】
「熱硬化性ポリウレタン弾性体」
本発明の弾性体の少なくともクリーニング側表面を構成する熱硬化性ポリウレタン弾性体は、少なくともポリオール、ポリイソシアネート、硬化剤、無機微粒子を含む材料組成物を熱硬化させた反応生成物であり、無機微粒子を分散させた状態で熱硬化させることにより得ることができる。
【0013】
・ポリオール
本発明で使用するポリオールは特に制限されず、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。また、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができるものを挙げることができる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0015】
その他のポリエステルポリオールとしては、例えば、ジオールを開始剤として、ラクトンを開環重合して得ることができるものを挙げることができる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、4-オキサヘプタン-1,7-ジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0016】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオールとの反応物が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0017】
ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0018】
・ポリイソシアネート
本発明で使用するポリイソシアネートは、従来からポリウレタンの合成に使用されているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4-TDIの二量体)、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート等のトリイソシアネート、ポリメリックMDI等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0019】
・硬化剤
硬化剤としては、アルコール系硬化剤、アミン系硬化剤の1種または2種以上を用いることができる。
アルコール系硬化剤としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族2価アルコール;シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール)、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等の脂環式2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールテトラメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらの中で、2価アルコールとしては1,4-ブタンジオール、3価アルコールとしてはトリメチロールプロパンが好ましい。
【0020】
アミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチル等のジアミン等が挙げられる。
【0021】
・触媒
さらに、硬化反応を促進するために触媒を用いることができる。触媒としては水酸基とイソシアネート基とのウレタン化、アミノ基とイソシアネート基とのウレア化を促進するものであれば特に限定されず、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン;ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール;エトキシル化アミン;エトキシル化ジアミン;ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミン;トリエチレンジアミン;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体;N-メチルモルホリン、N-(2-ヒドロキシプロピル)-ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体;N,N’-ジエチル-2-メチルピペラジン、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルピペラジン等のピペラジン誘導体等のアミン系化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)等のジアルキル錫化合物;2-エチルカプロン酸第1錫、オレイン酸第1錫等の有機スズ化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのアルカリ金属との塩である飽和脂肪酸アルカリ金属塩;ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びこれらのフェノール樹脂塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の感温性触媒等を使用することができる。
【0022】
・無機微粒子
無機微粒子は、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下である。なお、本明細書において平均粒子径とは、レーザー回折法により測定した体積平均粒子径を意味する。この平均粒子径は、0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましく、また、1.9μm以下であることが好ましく、1.8μm以下であることがより好ましく、1.7μm以下であることがさらに好ましい。
無機微粒子は、平均粒子径0.15μm以上2.0μm以下であればその材質は特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中で、安価であり、所望の平均粒子径のものが入手しやすいことから、シリカ、アルミナが好ましい。
【0023】
無機微粒子は、無機微粒子が分散する熱硬化性ポリウレタン弾性体全体に対して、0.8重量%以上15重量%未満の割合で含まれる。無機微粒子の量が0.8重量%未満では、クリーニング側表面の摩擦力が十分に低くならない場合があり、逆に15重量%以上では摩擦力は飽和してそれ以上は低下せず、また、無機微粒子を固定するポリウレタン樹脂の量が不足して無機微粒子が剥落しやすくなる場合がある。無機微粒子の配合量は、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましく、また、14重量%以下であることが好ましく、12重量%以下であることがより好ましい。
【0024】
無機微粒子は、熱硬化性ポリウレタン弾性体の内部で均一に分布してもよいが、厚さ方向でクリーニング側表面ほど多く分布していることが、無機微粒子が表面に露出して低摩擦となり、また、無機微粒子の配合量を抑えることができるため好ましい。無機微粒子を厚さ方向でクリーニング側表面ほど多く分布させる方法としては、後述する遠心成形法による成形が挙げられる。
【0025】
・その他成分
熱硬化性ポリウレタン弾性体を形成するための材料組成物には、必要に応じて、充填剤、安定剤、反応性促進触媒、軟化剤、加工助剤、離型剤、消泡剤、難燃剤等の添加剤を配合することができる。
【0026】
本発明のブレード用弾性体の少なくともクリーニング側表面を構成する熱硬化性ポリウレタン弾性体において、ポリイソシアネートまたはプレポリマーのイソシアネート基に対する、ポリオール及び硬化剤の有する活性水素基のモル比は、0.8以上1.0以下であることが好ましく、0.85以上0.98以下であることがより好ましく、0.85以上0.95以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明のブレード用弾性体の製造方法は特に制限されないが、厚さ方向でクリーニング側表面ほど無機微粒子を多く分布させることができるため、遠心成形法が好ましい。遠心成形法とは、高速で回転する加熱した円筒形状の成形金型ドラムの内面に、熱硬化性の材料組成物を流し込んで硬化させることにより、厚みが比較的均一な円筒体を形成させる方法である。この際、クリーニング側表面を構成する熱硬化性ポリウレタン弾性体とは共有結合を形成しない成形体を製造した後に、クリーニング側表面を構成する熱硬化性ポリウレタン弾性体となる材料組成物を流し込むことにより、クリーニング側表面に成形金型ドラム表面の凹凸が転写されることなく、非常に平滑な面とすることができる。この熱硬化性ポリウレタン弾性体とは共有結合を形成しない成形体としては、シリコーンゴムの成形体が好ましい。シリコーンゴムの成形体は、離型性に優れているため、離型剤を用いなくても、その上に形成される熱硬化性ポリウレタン弾性体と容易に剥離することができる。
【0028】
硬化前の材料組成物に含まれる各材料のうち、無機微粒子は、他のポリオール等の有機系材料と比較して比重が大きいため、遠心成形時の遠心力により径方向の外側に沈み込む。この径方向外側の面を、クリーニング側表面とすることにより、厚さ方向でクリーニング側表面ほど無機微粒子を多く分布させることができ、このクリーニング側表面を低摩擦とすることができる。また、無機微粒子がクリーニング側表面により多く分布するため、配合する無機微粒子の量を少なくすることができる。
【0029】
熱硬化性ポリウレタン弾性体の成形方法は、ワンショット法、プレポリマー法、擬プレポリマー法のいずれでもよい。
ワンショット法では、無機微粒子を分散させたポリオール、ポリイソシアネート、硬化剤、触媒等を一括して投入し、硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンの成形体を作製する。
プレポリマー法では、無機微粒子を分散させたポリオールと化学量論的に当量または過剰量のポリイソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを予め調製しておき、ここに所定量の硬化剤、触媒等を混合して、プレポリマーを硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンウレアの成形体を作製する。
擬プレポリマー法では、ポリオールの一部とポリイソシアネートによりプレポリマーの調製を行い、残りのポリオールに無機微粒子を分散させておき、硬化剤、触媒等の混合物を用意しておき、これらを混合して硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンの成形体を作製する。
【0030】
本発明のブレード用弾性体は、クリーニング側表面の国際ゴム硬さが、70以上100以下であることが好ましく、70以上85以下であることがより好ましい。
本発明のブレード用弾性体は、クリーニング側表面の静止摩擦係数が、7.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることがよりさらに好ましい。
【0031】
本発明のブレード用弾性体を、金属等からなる支持部材に接合することにより、ブレードを製造することができる。本発明のブレードの用途は特に制限されず、クリーニングブレード、現像ブレード、導電ブレード、研磨ブレード、塗布ブレード等として用いることができる。これらの中で、本発明のブレード用弾性体は、耐久性に優れているため、クリーニングブレードとして好適に使用することができる。
【実施例0032】
・ブレード用弾性体の製造(単層)
遠心成形機の成形金型ドラム(内径:700mm、奥行き:500mm、常温での振れ精度:0.06mm、成形時の回転数:800rpm、粗面状態:Ra=0.30)を40℃に加熱した。
付加硬化型シリコーンゴム組成物(主剤:TSE3032(A)、硬化剤:TSE3032(B)、いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製、配合質量比10:1)を、成形金型ドラム内に流し込み、120分間加熱硬化させ、シリコーンゴム層を形成した。得られたシリコーンゴム層は、空気側面が均一な鏡面状であり、厚さが0.7mmであった。
【0033】
「プレポリマー製造例1」
ポリオールとしてポリカプロラクトンジオール((株)ダイセル製、プラクセル220、数平均分子量2000)を用いた。これを110℃で2時間減圧脱水した。このポリオール100重量部に対し、ポリイソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー(株)製、ミリオネートMT)を83.5重量部加え、80℃で3時間、窒素雰囲気下で反応させ、NCO%=13.0のプレポリマー1を得た。
表1に示す配合により材料組成物を調整した。
なお、材料組成物の調製に際しては、まず、無機微粒子を90℃のポリオール中に表1の比率でホモジナイザーにより分散させた後75℃で脱泡し、無機微粒子含有ポリオールを作製した。
次いで、所定量の無機微粒子含有ポリオールに、75℃で2時間脱泡したプレポリマー、75℃に保持した硬化剤混合物を、所定の比率で順次添加し、往復回転式撹拌機で60秒攪拌し、クリーニング側表面となる熱硬化性ポリウレタン弾性体を製造するための材料組成物とした。
【0034】
【0035】
ついで、165℃に予熱した遠心成形機の成形金型ドラム内のシリコーンゴム層上に、材料組成物を注入し、50分間硬化させた。熱硬化後、成形金型ドラムから円筒状のポリウレタン弾性体を取り出し、2分割してシート状とし、成形金型ドラムの径方向外側の面が熱空気に触れるようにして120℃×12時間の後架橋を実施した。10日間室温で熟成した後、幅12.5mm、長さ324mmの短冊状にカットすることにより、ブレード用弾性体(厚さ1.9mm)を得た。成形金型ドラムの径方向外側の面をクリーニング側表面とした。
実施例4と比較例1で得られたブレード用弾性体の厚さ方向断面の顕微鏡観察画像を
図1に示す。本発明である実施例4で得られたブレード用弾性体は、無機微粒子が厚さ方向でクリーニング側表面ほど多く分布していることが確認できた。
【0036】
<硬さの測定>
得られたブレード用弾性体のクリーニング側表面の硬さを、JISK6253-2:2012のM法により測定した。
<静止摩擦係数の測定>
得られたブレード用弾性体のクリーニング側表面のカット稜線の静止摩擦係数を、ヘイドン表面性測定機(HEIDON-14型、新東科学(株)製)を用い、付属のブレードホルダー治具に弾性体サンプルを保持し、リーディング当接方向に取り付けて測定した。その際、サンプルの接触稜線長さは20mm、自由長は0mm、取付角度は25°、荷重は100g、相手材はPETフィルム(東レ(株)製ルミラーT60)とし、速度10mm毎秒で摺擦を始めた時の最初のピークの摩擦力を荷重100gで除して静止摩擦係数を算出した。
【0037】
<クリーニングブレードの作製>
厚さ2mmの鋼板の金属製支持体にダイマー酸ベースのホットメルト接着剤を使用して、実施例及び比較例のブレード用弾性体を接合してクリーニングブレードを作製した。
<耐久評価>
このクリーニングブレードを富士フイルムビジネスイノベーション(株)製DocuPrint C4000d機に装着し、下記方法により耐久評価を行った。
28℃×85%RHで通紙試験をして、ブレードエッジの欠損、へたりに起因するトナーのすり抜け画像不具合発生までの通紙枚数で耐久性を評価した。
結果を表2に示す
【0038】
【0039】
無機微粒子を含まない比較例1、無機微粒子を0.5重量%含む比較例2で得られたブレード用弾性体は、静止摩擦係数が大きく、不具合発生までの通紙枚数が10万枚であった。
それに対し、本発明である実施例1~7で得られたブレード用弾性体は、比較例1、2で得られたブレード用弾性体と比較して、静止摩擦係数が小さく低摩擦であり、不具合発生までの通紙枚数も15万枚以上であった。特に、静止摩擦係数が1.0~1.1である実施例4~7で得られたブレード用弾性体は不具合発生までの通紙枚数が40万枚であった。
比較例3で得られたブレード用弾性体は、静止摩擦係数は低く低摩擦であるが、不具合発生までの通紙枚数が10万枚であった。これは、比較例3で得られたブレード用弾性体は、当初は低摩擦であったが、経時で無機微粒子が剥落して摩擦が大きくなる、表面に凹凸が生じる等したためであると推測される。
【0040】
・ブレード用弾性体の製造(2層)
表1の材料組成物を、エッジ層として厚みが0.5mmとなるように、165℃に予熱した遠心成形機の成形金型ドラム内のシリコーンゴム層上に注入し、20分間硬化させた。ついで、表3のベース層用材料組成物を、先に注入したエッジ層上に注入し、50分間硬化させた。熱硬化後、成形金型ドラムから円筒状の2層ポリウレタン弾性体を取り出し、2分割してシート状とし、成形金型ドラムの径方向外側の面(エッジ層表面)が熱空気に触れるようにして120℃×12時間の後架橋を実施した。10日間室温で熟成した後、幅12mm、長さ342mmの短冊状にカットすることにより、ブレード用弾性体(総厚さ1.85mm)を得た。成形金型ドラムの径方向外側の面(エッジ層表面)をクリーニング側表面とした。なお、このベース層は、ポリウレタンの弾性率が高く、より強く感光体ドラム等に押し付けることができる。
【0041】
【0042】
上記と同様にして、硬さと静止摩擦係数を測定した。
また、(株)リコー製、RICOH MP C2503機を使用した以外は、上記と同様にして耐久性評価を行った。なお、ここで使用したRICOH MP C2503機種は、単層のブレード用弾性体の評価に用いたDocuPrint C4000d機と比較して、ブレードを感光体ドラムに押し付ける力の設計値が強い機種である。
結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
2層ブレードも、単層ブレードと同様の評価結果となり、本発明である実施例8~14で得られたブレード用弾性体は、比較例4、5で得られたブレード用弾性体と比較して、静止摩擦係数が小さく低摩擦であり、不具合発生までの通紙枚数も15万枚以上であった。特に、クリーニング側表面であるエッジ層の静止摩擦係数が1.0~1.1である実施例11~14で得られたブレード用弾性体は不具合発生までの通紙枚数が40万枚であった。