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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082281
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】太陽電池及び光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0745 20120101AFI20240612BHJP
   H01L 31/0236 20060101ALI20240612BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L31/06 450
H01L31/04 280
H01L31/04 240
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008594
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2023053043の分割
【原出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】202211587601.8
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINKO SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,Jinko Road, Shangrao Economic Development Zone Jiangxi 334100 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】ワウ ショウ
(72)【発明者】
【氏名】楊潔
(72)【発明者】
【氏名】鄭霈霆
(72)【発明者】
【氏名】パー カー
(72)【発明者】
【氏名】陳金金
(72)【発明者】
【氏名】方霊新
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA04
5F251AA05
5F251DA03
5F251DA07
5F251DA20
5F251FA06
5F251FA13
5F251FA15
5F251HA07
(57)【要約】
【課題】本願の実施例は、太陽電池の技術分野に関し、特に太陽電池及び光起電力モジュールに関する。
【解決手段】太陽電池は、第1表面及び前記第1表面に対向して設けられる第2表面を有する基板と、第1表面に覆われた少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造と、を含み、第1表面は金属パターン領域及び非金属パターン領域を含み、ここで、第1表面は、非金属パターン領域における高さが金属パターン領域における高さよりも低く、非金属パターン領域における高さ及び金属パターン領域における高さは、いずれも第2表面に対して使われるものであり、少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は積層されたトンネル層及びドーピング導電層を含む。本願の実施例は、太陽電池の光電変換効率の向上に有利である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第1表面及び前記第1表面に対向して設けられる第2表面を有する基板と、少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造と、を含み、
前記第1表面は、前記第1電極の前記第1表面における投影を含む金属パターン領域及び高さが前記金属パターン領域よりも低い非金属パターン領域を含み、前記金属パターン領域及び前記非金属パターン領域はいずれも平面であり、前記非金属パターン領域の高さ及び前記金属パターン領域の高さは、いずれも前記第2表面に対して使われるものであり、
前記第1表面は、遷移領域をさらに含み、前記遷移領域が前記金属パターン領域の第1表面と前記非金属パターン領域の第1表面との間に位置し、前記遷移領域は前記金属パターン領域の第1表面に接し、かつ前記非金属パターン領域の第1表面に接し、前記金属パターン領域の第1表面、前記非金属パターン領域の第1表面及び前記遷移領域が段差構造を構成し、前記パッシベーションコンタクト構造が前記遷移領域を覆っている、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記非金属パターン領域と前記金属パターン領域との高さの差は0.2μm~10μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1表面は、前記金属パターン領域において第1テクスチャ構造を有し、前記非金属パターン領域において第2テクスチャ構造を有し、前記第1テクスチャ構造の粗さが前記第2テクスチャ構造よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1テクスチャ構造はピラミッド構造を含み、前記第2テクスチャ構造はプラットフォーム突起構造を含み、前記ピラミッド構造の高さ寸法は前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法よりも大きく、かつ、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法よりも小さく、前記ピラミッド構造の高さは前記ピラミッド構造の先端部分から底部表面までの高さであり、前記プラットフォーム突起構造の高さは前記プラットフォーム突起構造の底面から上面までの高さであり、
前記ピラミッド構造は、四面体、近似四面体、五面体または近似五面体の構造であり、
前記プラットフォーム突起構造は、前記ピラミッド構造から先端部分を取り除いた後の底部構造である、

ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記ピラミッド構造の高さ寸法は0.1μm~5μmであり、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は0.01μm~6μmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法は0.002μm~1μmであり、前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法は0.01μm~1000μmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は、前記第1表面に覆われたトンネル層及び前記トンネル層に覆われたドーピング導電層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記遷移領域と前記非金属パターン領域との間に第1挟角があり、前記第1挟角は90°~160°である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1表面は、前記遷移領域において第3テクスチャ構造を備え、前記第3テクスチャ構造の粗さが前記第1テクスチャ構造の粗さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第3テクスチャ構造は、隣接する複数の三角柱状隆起構造を含み、前記遷移領域に垂直な方向における前記三角柱状隆起構造の断面形状が三角形または類似三角形である、
ことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は、
前記金属パターン領域に位置し、かつ、前記基板から離れた方向に沿って積層された第1トンネル層と第1ドーピング導電層とを含む第1パッシベーションコンタクト構造と、
接する第1部分及び第2部分を備える第2パッシベーションコンタクト構造であって、前記第1部分が前記第1パッシベーションコンタクト構造の上面及び側面を覆い、前記第2部分が前記金属パターン領域を除いた残りの前記第1表面を覆い、前記第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れた方向に沿って積層された第2トンネル層及び第2ドーピング導電層を含む第2パッシベーションコンタクト構造と、を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含み、
前記第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含み、
前記複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造及び前記複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れる方向に沿って交互に積層されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1電極は、前記第1ドーピング導電層と電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記第1ドーピング導電層のドーピング元素濃度は前記第2ドーピング導電層のドーピング元素濃度以上である、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記第1ドーピング導電層の厚さは前記第2ドーピング導電層の厚さ以上である、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記第1トンネル層の材料は前記第2トンネル層の材料と異なっている、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる複数の電池ストリングと、
前記複数の電池ストリングの表面を覆うために用いられる封止層と、
前記封止層の前記複数の電池ストリングから離れた表面を覆うために用いられるカバープレートと、を含む、
ことを特徴とする光起電力モジュール。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、太陽電池の技術分野に関し、特に太陽電池及び光起電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は良好な光電変換能力を有し、トンネル酸化層パッシベーションコンタクト電池(TOPCON)において、太陽電池における基板表面のキャリア再結合を抑制しかつ基板に対するパッシベーション性能を高めるために、基板の1つの表面にトンネル酸化層及びドーピング導電層を作製する。そのうち、トンネル酸化層は良好な化学的パッシベーション効果を有し、ドーピング導電層は良好なフィールドパッシベーション効果を有する。トンネル酸化層は、さらにキャリアにトンネル経路を提供し、キャリアはトンネル酸化層を通じて基板までトンネルし、キャリアの選択的な輸送を実現し、太陽電池のバッキングファクターを高めて、太陽電池の良好な光電変換性能を実現する。
【0003】
しかしながら、従来の太陽電池には光電変換効率が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例には、少なくとも太陽電池の光電変換効率を向上させることに有利である太陽電池および光起電力モジュールが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例には、太陽電池が提供され、当該太陽電池は、第1表面及び前記第1表面に対向して設けられる第2表面を有する基板と、前記第1表面に覆われた少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造と、を含み、前記第1表面は金属パターン領域及び非金属パターン領域を含み、ここで、前記第1表面は、前記非金属パターン領域における高さが前記金属パターン領域における高さよりも低く、前記非金属パターン領域における高さ及び前記金属パターン領域における高さは、いずれも前記第2表面に対して使われるものであり、前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は積層されたトンネル層及びドーピング導電層を含む。
【0006】
また、非金属パターン領域と前記金属パターン領域との高さの差は0.2μm~10μmである。
【0007】
また、前記第1表面は、金属パターン領域において第1テクスチャ構造を有し、前記非金属パターン領域において第2テクスチャ構造を有し、前記第1テクスチャ構造の粗さが前記第2テクスチャ構造よりも大きい。
【0008】
また、第1テクスチャ構造はピラミッド構造を含み、前記第2テクスチャ構造はプラットフォーム突起構造を含み、前記ピラミッド構造の高さ寸法は前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法よりも大きく、かつ、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法よりも小さく、前記ピラミッド構造の高さは前記ピラミッド構造の先端部分から底部表面までの高さであり、前記プラットフォーム突起構造の高さは前記プラットフォーム突起構造の底面から上面までの高さである。
【0009】
また、ピラミッド構造の高さ寸法は0.1μm~5μmであり、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は0.01μm~6μmである。
【0010】
また、前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法は0.002μm~1μmであり、前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法は0.01μm~1000μmである。
【0011】
また、第1表面は、遷移領域を含み、前記遷移領域が前記金属パターン領域の第1表面と前記非金属パターン領域の第1表面との間に位置し、前記遷移領域の高さが前記非金属パターン領域の第1表面の高さより低くなく、かつ前記金属パターン領域の第1表面の高さより高くなく、前記パッシベーションコンタクト構造が前記遷移領域を覆っており、前記遷移領域の高さは、前記第2表面に対する前記遷移領域の任意の点の高さである。
【0012】
また、遷移領域と前記非金属パターン領域の第1表面との間に第1挟角があり、前記第1挟角は90°~160°である。
【0013】
また、前記第1表面は、前記遷移領域において第3テクスチャ構造を備え、前記第3テクスチャ構造の粗さが前記第1テクスチャ構造の粗さよりも小さい。
【0014】
また、第3テクスチャ構造は、隣接する複数の三角柱状隆起構造を含み、前記遷移領域に垂直な方向における前記三角柱状隆起構造の断面形状が三角形または類似三角形である。
【0015】
また、前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は、前記金属パターン領域に位置し、かつ、前記基板から離れた方向に沿って積層された第1トンネル層と第1ドーピング導電層とを含む第1パッシベーションコンタクト構造と、接する第1部分及び第2部分を備える第2パッシベーションコンタクト構造であって、前記第1部分が前記第1パッシベーションコンタクト構造の上面及び側面を覆い、前記第2部分が前記金属パターン領域の前記第1表面を除いた残りの前記第1表面を覆い、前記第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れた方向に沿って積層された第2トンネル層及び第2ドーピング導電層を含む第2パッシベーションコンタクト構造と、を備える。
【0016】
また、前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含む。
【0017】
また、第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含む。
【0018】
また、前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含み、前記第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含み、前記複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造及び前記複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れる方向に沿って交互に積層されている。
【0019】
また、前記第1ドーピング導電層と電気的に接続される第1電極をさらに含む。
【0020】
また、前記第1ドーピング導電層のドーピング元素濃度は前記第2ドーピング導電層のドーピング元素濃度以上である。
【0021】
また、第1ドーピング導電層の厚さは前記第2ドーピング導電層の厚さ以上である。
【0022】
また、第1ドーピング導電層の材料は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含み、前記第2ドーピング導電層の材料はアモルファスシリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
また、第1トンネル層の厚さは前記第2トンネル層の厚さ以下である。
【0024】
また、第1トンネル層の材料は前記第2トンネル層の材料と異なっている。
【0025】
また、第1トンネル層の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコン、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンのうちの少なくとも1つを含み、前記第2トンネル層の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコン、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
それに対応して、本願の実施例には、光起電力モジュールがさらに提供され、当該光起電力モジュールは、上記のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる複数の電池ストリングと、複数の電池ストリングの表面を覆うために用いられる封止層と、封止層の複数の電池ストリングから離れた表面を覆うために用いられるカバープレートと、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本願の実施例で提供される技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0028】
本願の実施例で提供される技術案では、非金属パターン領域の第1表面を金属パターン領域の第1表面よりも低いように設定し、即ち、非金属パターン領域の基板表面と金属パターン領域の基板表面がでこぼこしている段差構造を形成している。基板表面が平坦な表面である場合に比べて、段差構造によって、基板の第1表面の表面積を大きくし、パッシベーションコンタクト構造と基板の第1表面との接触面積を大きくし、非金属パターン領域のパッシベーションコンタクト構造を平坦に保つまま、キャリアのトンネル経路を拡大し、キャリアのトンネル効率を高めることができる。また、段差構造が金属パターン領域と非金属パターン領域の境界に位置し、これによって、この境界に覆われたパッシベーションコンタクト構造の面積が大きくなり、この境界が金属パターン領域に近接しているため、この境界でのパッシベーションコンタクト構造におけるキャリアが金属パターン領域のパッシベーションコンタクト構造に輸送される輸送経路が短くなり、キャリアの収集能力の向上に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明され、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、特に断りのない限り、添付の図面における図は比例上の制限を形成しない。
図1図1は、本願の一実施例によって提供された第1の太陽電池の断面構造を示す図である。
図2図2は、図1において1と表記された破線枠における部分拡大図である。
図3図3は、本願の一実施例によって提供された太陽電池の第1表面の部分電子顕微鏡図である。
図4図4は、本願の一実施例によって提供された第2の太陽電池の断面構造を示す図である。
図5図5は、本願の一実施例によって提供された太陽電池の遷移領域の電子顕微鏡図である。
図6図6は、本願の一実施例によって提供された第3の太陽電池の断面構造を示す図である。
図7図7は、本願の一実施例によって提供された第4の太陽電池の断面構造を示す図である。
図8図8は、本願の一実施例によって提供された第5の太陽電池の断面構造を示す図である。
図9図9は、本願の一実施例によって提供された第6の太陽電池の断面構造を示す図である。
図10図10は、本願の別の実施例によって提供される光起電力モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
従来技術からわかるように、従来の太陽電池には光電変換効率が低いという問題がある。
【0031】
分析によると、従来の太陽電池の光電変換効率が低い原因の一つは、基板が金属パターン領域と非金属パターン領域を有しており、金属パターン領域の基板表面にとって、金属電極とドーピング導電層との接触面積を拡大するために、粗さを増やす必要があり、非金属パターン領域の基板表面にとって、パッシベーションコンタクト構造と基板との接触界面の平坦性が高くなるようにし、パッシベーションコンタクト構造のパッシベーション性能の向上に寄与するために、粗さを減らす必要があることにある。基板におけるキャリアはパッシベーションコンタクト構造におけるトンネル層を通じてドーピング導電層にトンネルし、ドーピング導電層で金属電極に輸送され、さらに収集される。トンネル層の面積が大きくなると、キャリアのトンネルに大きなトンネル経路を提供することができ、キャリアのトンネル効率を高めることができる。しかしながら、非金属パターン領域の基板表面を平坦にする必要があるため、非金属パターン領域の基板表面の粗さが小さくなり、非金属パターン領域の基板表面の表面積が小さくなり、非金属パターン領域の基板表面に位置するトンネル層の面積が小さくなり、キャリアの輸送効率をさらに高めることができない。
【0032】
本願の実施例で提供された太陽電池では、非金属パターン領域の第1表面を金属パターン領域の第1表面よりも低いように設定し、即ち、非金属パターン領域の第1表面と金属パターン領域の第1表面がでこぼこしている段差構造を形成しており、基板表面が平坦な表面である場合に比べて、段差構造によって、基板の第1表面の表面積を大きくし、第1表面に覆われるパッシベーションコンタクト構造の表面積を大きくし、非金属パターン領域のパッシベーションコンタクト構造を平坦に保つまま、キャリアのトンネル経路を拡大し、キャリアのトンネル効率を高めることができる。
【0033】
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0034】
図1は、本願の一実施例によって提供された第1の太陽電池の断面構造を示す図である。
【0035】
図1に示すように、太陽電池は、第1表面を有する基板100と、第1表面に覆われたパッシベーションコンタクト構造110と、を含み、第1表面は金属パターン領域10及び非金属パターン領域11を含み、金属パターン領域10と非金属パターン領域11とは間隔をあけて配置されており、ここで、非金属パターン領域11の第1表面の高さが金属パターン領域10の第1表面の高さよりも低く、パッシベーションコンタクト構造110は積層されたトンネル層111及びドーピング導電層112を含む。
【0036】
非金属パターン領域11の第1表面を金属パターン領域10の第1表面よりも低いように設定すると、基板100の表面が平坦な表面である場合に比べて、基板100の第1表面の表面積を増やすことができ、パッシベーションコンタクト構造110と基板100の第1表面との接触面積を増大させ、非金属パターン領域11のパッシベーションコンタクト構造110を平坦に保つまま、キャリアのトンネル経路を拡大し、キャリアのトンネル効率を高めることができる。同時に、非金属パターン領域11のパッシベーションコンタクト構造110が平坦であるため、非金属パターン領域11の第1表面に対するパッシベーション能力が強くなり、短絡電流及び開放電圧を高めることができ、太陽電池の光電変換性能の向上に有利である。
【0037】
また、非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面との高さの差によって、段差構造を形成しており、段差構造が金属パターン領域10と非金属パターン領域11の境界に位置し、これによって、この境界に覆われたパッシベーションコンタクト構造110の面積が大きくなり、この境界が金属パターン領域10に近接しているため、この段差構造の表面に覆われるパッシベーションコンタクト構造110におけるキャリアが金属パターン領域10のパッシベーションコンタクト構造110に輸送される輸送経路が短くなり、キャリアの収集能力の向上に有利である。
【0038】
また、非金属パターン領域11の第1表面を金属パターン領域10の第1表面よりも低いように設定することは、高さ方向において第1表面の表面を増加させることに相当し、基板100の第1表面の断面積を増やさないまま、パッシベーションコンタクト構造110の面積を増やすことを実現し、これによって、太陽電池を組み立てて光起電力モジュールを形成する時に、光起電力モジュールの大きな組み立て密度を維持することができ、高いモジュールパワーを維持するのに有利である。ここでいう高さ方向は、第1表面に垂直な方向であり、ここでいう断面積は、基板100の第1表面に平行な方向における断面積である。
【0039】
なお、ここでいう非金属パターン領域11の第1表面の高さ及び金属パターン領域10の第1表面の高さは、いずれも基板100の第2表面に対して言われるものである。言い換えれば、非金属パターン領域11に位置する基板の厚さは金属パターン領域10に位置する基板の厚さよりも小さい。
【0040】
基板100は入射光を受光して光生成キャリアを生成するために用いられ、いくつかの実施例では、基板100はシリコン基板であってもよく、シリコン基板の材料は単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンまたは微結晶シリコンの少なくとも1種であってもよい。いくつかの実施例では、基板100の材料は、炭化珪素、有機材料または多成分化合物であってもよい。多成分化合物は、ペロブスカイト、ガリウム砒素、テルル化カドミウム、セレン化銅インジウムなどを含むが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの実施例では、太陽電池はTOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化層パッシベーション接触)電池であり、基板100は第1表面に対向して設けられる第2表面を含み、基板100の第1表面と第2表面はいずれも入射光を受光したり光を反射させたりするために用いられる。いくつかの実施例では、基板100内にドーピング元素を備え、ドーピング元素のタイプはN型またはP型であり、N型元素はリン(P)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)などのV族元素であってもよく、P型元素はホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)などのIII族元素であってもよい。例えば、基板100がP型の基板である場合、その内部のドーピング元素の種類は、P型である。あるいは、基板100がN型の基板である場合、その内部のドーピング元素の種類は、N型である。
【0042】
いくつかの実施例では、さらに、ドーピング導電層112と電気的に接続される第1電極130を含む。
【0043】
第1電極130はドーピング導電層112と電気的に接触できる。基板100にて発生した光生成キャリアは基板100からドーピング導電層112に輸送され、さらに第1電極130中に輸送され、第1電極130は光生成キャリアを収集することに用いられる。第1電極130は金属パターン領域10に設けられる。
【0044】
いくつかの実施例では、非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面との高さの差dは0.2μm~10μmであり、例えば、0.2μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μm、2.5μm~3μm、3μm~3.1μm、3.1μm~3.2μm、3.2μm~3.5μm、3.5μm~3.8μm、3.8μm~3.9μm、3.9μm~4μm、4μm~4.5μm、4.5μm~5μm、5μm~5.5μm、5.5μm~6μm、6μm~6.5μm、6.5μm~7μm、7μm~7.5μm、7.5μm~8μm、8μm~8.5μm、8.5μm~9μmまたは9μm~10μmであってもよい。この高さ範囲内において、非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面との高さの差dを大きくし、第1表面の表面積を増やすのに有利であり、さらにパッシベーションコンタクト構造110におけるトンネル層111の面積を増加させ、キャリアにより大きなトンネル経路を提供し、キャリアの輸送を強めることができる。一方、非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面との高さの差dを大きすぎないようにし、実際にこの高さの差を形成する過程で、基板100に過大な損失が生じて基板100の第1表面の欠陥準位密度が増加してしまうという問題を防止し、基板100の第1表面におけるキャリアの再結合が少ないことを確保することができ、太陽電池のバッキングファクターの向上に有利である。
【0045】
図2図3に示すように、いくつかの実施例では、金属パターン領域10の第1表面が第1テクスチャ構造13を有し、非金属パターン領域11の第1表面が第2テクスチャ構造14を有し、第1テクスチャ構造13の粗さが第2テクスチャ構造14よりも大きい。第1テクスチャ構造13の粗さを大きく設定することで、金属パターン領域10の第1表面の表面積を大きくし、さらに金属パターン領域10の第1表面に位置するパッシベーションコンタクト構造110が金属パターン領域10の第1表面の形態を継続して使用できる。つまり、パッシベーションコンタクト構造110の上面も大きな粗さを有し、パッシベーションコンタクト構造110の表面積を増やし、さらにパッシベーションコンタクト構造110に位置する第1電極130とパッシベーションコンタクト構造110の間に大きな接触面積を持たせ、第1電極130の接触抵抗を低減し、キャリアの輸送性能を高める。
【0046】
基板100の第1表面に段差構造を形成しており、高さ方向において基板100の第1表面の表面積を増やしているため、第2テクスチャ構造14の粗さを小さく設定することができ、これによって、非金属パターン領域11の第1表面が平坦になる。このように、堆積工程を用いてパッシベーションコンタクト構造110を製造する過程において、非金属パターン領域11の第1表面に堆積されたトンネル層111及びドーピング導電層112を第1表面を均一に覆うことができ、トンネル層111及びドーピング導電層112の形態が平坦になり、トンネル層111と第1表面との間の界面形態を良化することができ、非金属パターン領域11の第1表面の界面準位密度を低減することができる。これは、非金属パターン領域11の第1表面におけるキャリアの再結合を低減することに有利であるだけでなく、キャリアのトンネル能力を強め、キャリア数を増やし、太陽電池の光電変換性能を改善することもできる。
【0047】
いくつかの実施例では、第1テクスチャ構造13はピラミッド構造を含み、第2テクスチャ構造14はプラットフォーム突起構造を含む。ピラミッド構造の高さ寸法h1はプラットフォーム突起構造の高さ寸法h2よりも大きく、かつ、ピラミッド構造の底面の一次元寸法L1はプラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法L2よりも小さい。
【0048】
ピラミッド構造は大きな比表面積を持つ。第1テクスチャ構造13がピラミッド構造を含むように設置することで、金属パターン領域10に位置するパッシベーションコンタクト構造110の表面積をさらに大きくし、パッシベーションコンタクト構造110と第1電極130との接触面積を増大させ、接触抵抗を低減することができる。
【0049】
いくつかの実施例では、ピラミッド構造は、四面体、近似四面体、五面体または近似五面体などの構造であってもよい。プラットフォーム突起構造はピラミッド構造のベース部分、即ち、ピラミッド構造から先端部分を取り除いた後の底部構造である。いくつかの実施例では、第2テクスチャ構造14は、類似プラットフォーム突起構造であってもよく、類似プラットフォーム突起構造の上面が平面または斜面であってもよく、類似プラットフォーム突起構造の底面が多辺形平面、例えば四辺形平面、五辺形平面であってもよい。
【0050】
いくつかの実施例では、ピラミッド構造の高さ寸法h1は0.1μm~5μmであり、例えば、0.1μm~0.2μm、0.2μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μm、2.5μm~3μm、3μm~3.5μm、3.5μm~4μm、4μm~4.5μmまたは4.5μm~5μmであってもよい。いくつかの実施例では、ピラミッド構造の底面の一次元寸法L1は0.01μm~6μmであり、例えば、0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.08μm、0.08μm~0.1μm、0.1μm~0.2μm、0.2μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μm、2.5μm~3μm、3μm~3.5μm、3.5μm~4μm、4μm~4.5μm、4.5μm~5μm、5μm~5.5μmまたは5.5μm~6μmであってもよい。この範囲内において、ピラミッド構造の高さ寸法を大きくし、ピラミッド構造の底面の一次元寸法を小さくし、さらにピラミッド構造の表面積を大きくし、金属パターン領域10の第1表面に位置するパッシベーションコンタクト構造110が大きな面積を持つことを確保し、第1電極130とパッシベーションコンタクト構造110の間の接触抵抗を減らし、第1電極130のキャリア収集能力を高めることができる。また、この範囲内において、ピラミッド構造の高さ寸法を大きすぎないようにし、かつ、ピラミッド構造の底面の一次元寸法を小さすぎないようにし、第1テクスチャ構造13の粗さが大きすぎることに起因して金属パターン領域10の第1表面に堆積されるパッシベーションコンタクト構造110の平坦性が低くなり、金属パターン領域10のパッシベーションコンタクト構造110の表面パッシベーション能力が低下してしまうという問題を防止する。
【0051】
ピラミッド構造の底面の一次元寸法とは、金属パターン領域10の範囲内で、ある領域を任意に指定し、この領域内における各ピラミッド構造の底面の一次元寸法を検出して得られた平均値を指す。ピラミッド構造の高さ寸法は、金属パターン領域10の範囲内で、ある領域を任意に指定し、この領域内における各ピラミッド構造の高さ寸法を検出して得られた平均値である。
【0052】
いくつかの実施例では、プラットフォーム突起構造の高さ寸法h2は0.002μm~1μmであり、例えば、0.002μm~0.01μm、0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.08μm、0.08μm~0.1μm、0.1μm~0.2μm、0.2μm~0.3μm、0.3μm~0.4μm、0.4μm~0.5μm、0.5μm~0.6μm、0.6μm~0.7μm、0.7μm~0.8μm、0.8μm~0.9μmまたは0.9μm~1μmであってもよい。いくつかの実施例では、プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法L2は0.01μm~1000μmであり、例えば、0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.08μm、0.08μm~0.1μm、0.1μm~0.3μm、0.3μm~0.5μm、0.5μm~0.7μm、0.7μm~0.9μm、0.9μm~1μm、1μm~1.2μm、1.2μm~10μm、10μm~100μm、100μm~150μm、150μm~200μm、200μm~350μm、350μm~500μm、500μm~650μm、650μm~800μm、800μm~900μmまたは900μm~1000μmであってもよい。この範囲内において、プラットフォーム突起構造の高さ寸法が小さく、プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法が大きく、プラットフォーム突起構造の凹凸程度が小さくなり、第2テクスチャ構造14の粗さが小さくなり、さらに非金属パターン領域11の第1表面が平坦になり、非金属パターン領域11に覆われたパッシベーションコンタクト構造110の平坦性を向上させ、パッシベーションコンタクト構造110の非金属パターン領域11の第1表面に対する表面パッシベーションを向上させる。
【0053】
プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法とは、非金属パターン領域11範囲内で、ある領域を任意に指定し、この領域内における各プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法を検出して得られた平均値を指す。プラットフォーム突起構造の高さ寸法は、非金属パターン領域11の範囲内で、ある領域を任意に指定し、この領域内における各プラットフォーム突起構造の高さ寸法を検出して得られた平均値である。
【0054】
図4に示すように、いくつかの実施例では、第1表面は、遷移領域12を含み、遷移領域12が金属パターン領域10と非金属パターン領域11との間に位置し、遷移領域12の高さが非金属パターン領域11の高さより低くなく、かつ金属パターン領域10の高さより高くなく、パッシベーションコンタクト構造110が遷移領域12を覆っている。遷移領域12は金属パターン領域10の第1表面に接し、かつ非金属パターン領域11の第1表面に接し、金属パターン領域10の第1表面、非金属パターン領域11の第1表面及び遷移領域12が段差構造を構成する。遷移領域12の存在により、第1表面の面積が増え、さらに第1表面に位置するパッシベーションコンタクト構造110の面積を増やし、キャリアに大きなトンネル経路と輸送経路を提供し、キャリアの輸送能力を高めることができる。
【0055】
遷移領域12は金属パターン領域10に近接して設置されるため、パッシベーションコンタクト構造110が遷移領域12を覆っている場合、遷移領域12に位置するパッシベーションコンタクト構造110も金属パターン領域10に近接する。したがって、遷移領域12上のパッシベーションコンタクト構造110におけるキャリアを第1電極130に輸送する距離が短くなり、輸送損失を低減し、キャリア数を増加させることができる。
【0056】
いくつかの実施例では、遷移領域12を非金属パターン領域の第1表面に対して傾斜するように設置することで、遷移領域12を覆うパッシベーションコンタクト構造110は非金属パターン領域のパッシベーションコンタクト構造110に対して傾斜する。非金属パターン領域の第1表面の粗さを増大させるように設定することで非金属パターン領域の第1表面の表面積を増加させ、さらにパッシベーションコンタクト構造110の表面積を増加させることと比べて、基板100の第1表面に段差構造を設けてパッシベーションコンタクト構造110の面積を増やす方は、キャリアの輸送効率の向上により有利である。これは、非金属パターン領域の第1表面の粗さを増やすと、パッシベーションコンタクト構造110における面積が増加した部分はやはり非金属パターン領域の第1表面に位置し、パッシベーションコンタクト構造110におけるキャリアと第1電極130との間の輸送距離を短縮しないからである。また、遷移領域12が金属パターン領域に近接して設置されているため、遷移領域12に位置するパッシベーションコンタクト構造110のキャリアを第1電極130に輸送する距離が短くなり、輸送損失を減らすことができ、キャリアの輸送効率の向上により有利である。
【0057】
いくつかの実施例では、遷移領域12は金属パターン領域10の第1表面に垂直であり、かつ非金属パターン領域11の第1表面に垂直であってもよい。
【0058】
いくつかの実施例では、遷移領域12は非金属パターン領域11に対して傾斜し、かつ金属パターン領域10に対して傾斜してもよい。このように、非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面との高さの差が維持されたまま、遷移領域12が金属パターン領域10と非金属パターン領域11の第1表面に垂直である場合と比べて、遷移領域12に位置するパッシベーションコンタクト構造110の面積をより大きくし、キャリアにより大きなトンネル経路と輸送経路を提供する。
【0059】
上記の観点から、いくつかの実施例では、遷移領域12と非金属パターン領域11の第1表面との間に第1挟角があり、第1挟角θは90°~160°であり、例えば、90°~95°、95°~100°、100°~105°、105°~110°、110°~115°、115°~120°、120°~125°、125°~130°、130°~135°、135°~140°、140°~145°、145°~150°、150°~155°または155°~160°であってもよい。この範囲内において、遷移領域12は非金属パターン領域11の第1表面に対して傾斜しており、遷移領域12には大きな表面積を持たせることができ、遷移領域12に位置するパッシベーションコンタクト構造110の面積を増加させ、キャリアにより大きなトンネル経路を提供し、キャリアのトンネル確率を上げる。
【0060】
図5に示すように、いくつかの実施例では、遷移領域12は、粗さが第1テクスチャ構造13の粗さよりも小さい第3テクスチャ構造15を備える。遷移領域12に第3テクスチャ構造15を設けることで、遷移領域12の表面積をさらに増やすことができ、遷移領域12に位置するパッシベーションコンタクト構造110の面積を増大させる。
【0061】
いくつかの実施例では、第3テクスチャ構造は、隣接する複数の三角柱状隆起構造を含み、遷移領域12に垂直な方向における三角柱状隆起構造の断面形状が三角形または類似三角形である。三角柱状隆起構造の側面には3本の筋があり、そのうち2本が遷移領域12に位置し、残りの1本が遷移領域12から突出する。三角柱状隆起構造は、非金属パターン領域11の第1表面が金属パターン領域10の第1表面に向かう方向において、遷移領域12にまたがっており、これによって、第3テクスチャ構造15の表面積を大きくする。明らかになるように、三角柱状隆起構造の側面は遷移領域12を構成しており、三角柱状の側面が平坦であり、かつ遷移領域12にまたがり、遷移領域12に堆積されたパッシベーションコンタクト構造110が平坦になり、キャリアのトンネルに有利である。また、遷移領域12に第3テクスチャ構造15を持たせるように設置することで、さらにパッシベーションコンタクト構造110の面積を増やすこともできる。
【0062】
ドーピング導電層112はフィールドパッシベーション作用を有し、少数キャリアを界面から脱出させ、少数キャリアの濃度を下げ、基板100の界面におけるキャリア再結合の速度を低くし、それによって太陽電池の開放電圧、短絡電流及びバッキングファクターを大きくし、太陽電池の光電変換性能を改善する。
【0063】
トンネル層111は第1表面の界面パッシベーションの実現に用いられ、化学パッシベーションの効果を発揮する。具体的には、第1表面のダングリングボンドを飽和させることで、第1表面の界面欠陥準位密度を下げ、第1表面の再結合中心を減らす。
【0064】
図6に示すように、いくつかの実施例では、トンネル層は、第1トンネル層21と、第2トンネル層31と、を含む。ドーピング導電層は、第1ドーピング導電層22と、第2ドーピング導電層32と、を含む。パッシベーションコンタクト構造は、金属パターン領域10の第1表面に位置し、かつ、基板100から離れた方向に沿って積層された第1トンネル層21と第1ドーピング導電層22とを含む第1パッシベーションコンタクト構造20と、接する第1部分及び第2部分を備える第2パッシベーションコンタクト構造30であって、第1部分が第1パッシベーションコンタクト構造20の上面及び側面を覆い、第2部分が金属パターン領域10の第1表面を除いた残りの第1表面を覆い、第2パッシベーションコンタクト構造30が基板100から離れた方向に沿って積層された第2トンネル層31及び第2ドーピング導電層32を含む第2パッシベーションコンタクト構造30と、を備える。
【0065】
第2パッシベーションコンタクト構造30が非金属パターン領域11の第1表面を覆うだけでなく、遷移領域12を覆うことによって、第2パッシベーションコンタクト構造30は連続した膜層となり、第2パッシベーションコンタクト構造30におけるキャリアの横方向の輸送性能を高めることができ、キャリアの輸送に有利である。
【0066】
いくつかの実施例では、第1電極130は第2パッシベーションコンタクト構造30を貫通して第1ドーピング導電層22と電気的に接触し、第2ドーピング導電層32及び第1ドーピング導電層22を輸送しているキャリアを収集する。
【0067】
金属パターン領域10の第1表面に第1パッシベーションコンタクト構造20と第2パッシベーションコンタクト構造30を同時に設置することで、実際に第1電極130を製造する過程で、第1電極130が第1パッシベーションコンタクト構造20と第2パッシベーションコンタクト構造30を貫通して基板100まで貫通する確率を低減し、キャリア再結合中心の発生を減らすことができる。
【0068】
また、第2パッシベーションコンタクト構造30が第1パッシベーションコンタクト構造20及び残りの第1表面を覆っており、即ち、第1パッシベーションコンタクト構造20が入射光に直接接触しないため、第1パッシベーションコンタクト構造20の入射光に対する寄生吸収を増やさないまま、第1電極130が基板100まで貫通する確率をさらに低減することができる。また、第2ドーピング導電層32の入射光に対する寄生吸収を減らすために、第2ドーピング導電層32の厚さを小さく設定することができ、これによって、基板100の入射光に対する寄生利用率を高めることができる。
【0069】
つまり、積層された第1パッシベーションコンタクト構造20と第2パッシベーションコンタクト構造30を設置し、ここで、第1パッシベーションコンタクト構造20を金属電極が基板100まで貫通する確率を低減するためのものとし、第2パッシベーションコンタクト構造30を入射光に対する寄生吸収の低減とキャリアの横方向輸送の強化の役割を果たすためのものとすることで、太陽電池の光電変換性能を全体的に高める。
【0070】
いくつかの実施例では、第1パッシベーションコンタクト構造20は1層の第1トンネル層21と1層の第1ドーピング導電層22だけを含んでもよく、かつ第1トンネル層21が第1表面に直接接触している。
【0071】
図7に示すように、いくつかの実施例では、第1パッシベーションコンタクト構造20は、基板100から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23を含んでもよく、各サブ第1パッシベーションコンタクト構造23は、基板100から離れた方向に沿って順次積層された第1トンネル層21及び第1ドーピング導電層22を含む。つまり、第1パッシベーションコンタクト構造20においては、複数層の第1トンネル層21と、複数層の第1ドーピング導電層22を含んでもよく、かつ複数層の第1トンネル層21と複数層の第1ドーピング導電層22が交互に積層して設置されている。図7には、サブ第1パッシベーションコンタクト構造23の数は2つであることが示されている。
【0072】
いくつかの実施例では、第2パッシベーションコンタクト構造30は1層の第2トンネル層31と1層の第2ドーピング導電層32だけを含んでもよく、第2トンネル層31が第1パッシベーションコンタクト構造20の上面と非金属パターン領域11の第1表面を覆う。いくつかの実施例では、第2パッシベーションコンタクト構造30は1層の第2トンネル層31と1層の第2ドーピング導電層32だけを含んだ場合、第1パッシベーションコンタクト構造20は複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23を含んでもよいし、1層の第1トンネル層21と1層の第1ドーピング導電層22だけを含んでもよい。
【0073】
図8に示すように、いくつかの実施例では、第2パッシベーションコンタクト構造30は、基板100から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造33を含み、各サブ第2パッシベーションコンタクト構造33は基板100から離れた方向に沿って順次積層された第2トンネル層31及び第2ドーピング導電層32を含む。つまり、第2パッシベーションコンタクト構造30は、複数層の第2トンネル層31及び複数層の第2ドーピング導電層32を含み、かつ複数層の第2トンネル層31と複数層の第2ドーピング導電層32が交互に積層して設置されている。図8には、サブ第2パッシベーションコンタクト構造33の数は2つであることが示されている。
【0074】
図8に示すように、いくつかの実施例では、第2パッシベーションコンタクト構造30が複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造33を含んだ場合、第1パッシベーションコンタクト構造20は複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23を含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施例では、第2パッシベーションコンタクト構造30が複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造33を含んだ場合、第1パッシベーションコンタクト構造20は1層の第1トンネル層21と1層の第1ドーピング導電層22だけを含んでもよく、第2パッシベーションコンタクト構造30が第1パッシベーションコンタクト構造20を被覆することを満たせばよい。
【0076】
いくつかの実施例では、第1パッシベーションコンタクト構造20の数は複数であり、第2パッシベーションコンタクト構造30の数は複数であり、複数の第1パッシベーションコンタクト構造20と複数の第2パッシベーションコンタクト構造30は基板100から離れた方向に沿って交互に積層されている。各第2パッシベーションコンタクト構造30は1つの第1パッシベーションコンタクト構造20の上面と側面を覆い、基板100に近い第2パッシベーションコンタクト構造30は非金属パターン領域11の第1表面を覆い、残りの第2パッシベーションコンタクト構造30は隣接する第2パッシベーションコンタクト構造30の上面を覆う。または、言い換えれば、図9に示されるように、2つのサブ第1パッシベーションコンタクト構造20と2つのサブ第2パッシベーションコンタクト構造30とは、基板100から離れる方向に沿って交互に積層されている。
【0077】
または、言い換えれば、第1パッシベーションコンタクト構造及び第2パッシベーションコンタクト構造に含まれたトンネル層及びドーピング導電層は1層または複数のサブ層を含むことができ、第1パッシベーションコンタクト構造及び第2パッシベーションコンタクト構造を積層してパッシベーションコンタクト構造の厚さを厚くすればよい。具体的な説明は下記の通りである。
【0078】
いくつかの実施例では、図6に示されるように、第1パッシベーションコンタクト構造20は、1層の第1トンネル層21と1層の第1ドーピング導電層22のみを含んでもよく、第2パッシベーションコンタクト構造30は、1層の第2トンネル層31と1層の第2ドーピング導電層32のみを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施例では、第1パッシベーションコンタクト構造20は、複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23を含んでもよく、各サブ第1パッシベーションコンタクト構造23は、基板100から離れる方向に沿って順次積層された1層の第1トンネルサブ層21及び1層の第1ドーピング導電サブ層22を含む。図7には、2つのサブ第1パッシベーションコンタクト構造23が示されている。第2パッシベーションコンタクト構造30は、1層の第2トンネル層31と1層の第2ドーピング導電層32のみを含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施例では、第1パッシベーションコンタクト構造20は、複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23を含んでもよく、各サブ第1パッシベーションコンタクト構造23は、基板100から離れる方向に沿って順次積層された1層の第1トンネルサブ層21及び1層の第1ドーピング導電サブ層22を含む。第2パッシベーションコンタクト構造30は、複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造33を含んでもよく、各サブ第2パッシベーションコンタクト構造33は、基板100から離れる方向に沿って順次積層された1層の第2トンネルサブ層31及び1層の第2ドーピング導電サブ層32を含む。図8には、2つのサブ第1パッシベーションコンタクト構造23及び2つのサブ第2パッシベーションコンタクト構造33が基板100から離れる方向に沿って順次積層されている場合が示されている。図9には、2つのサブ第1パッシベーションコンタクト構造23及び2つのサブ第2パッシベーションコンタクト構造33が基板100から離れる方向に沿って交互に積層されている場合が示されている。
【0081】
複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造23及び/又は複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造33が存在する場合、相応的に、複数の第1トンネルサブ層、複数の第1ドーピング導電サブ層、複数の第2トンネルサブ層及び複数の第2ドーピング導電サブ層がそれぞれ存在する。太陽電池の製造過程では、複数のサブ層を全体として考慮し、下記の各実施例におけるドーピング元素濃度、厚さ、材料の設定も、1層または複数のサブ層を設置した実施例にも適用される。
【0082】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度は第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度以上である。いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度と第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度はいずれも基板100のドーピング元素濃度よりも大きく、これによって、第1ドーピング導電層22及び第2ドーピング導電層32は基板100に比べて高濃度ドーピング領域を形成し、この高濃度ドーピング領域が基板100と高低接合を形成し、キャリアにバリア効果を生じさせ、基板100におけるキャリアの第1ドーピング導電層22及び第2ドーピング導電層32への輸送速度と数量を増やし、第1電極130はキャリアを効果的に収集することができる。
【0083】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度を第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度よりも大きくしてもよい。第1ドーピング導電層22は金属パターン領域10に位置し、かつ第1電極130と電気的に接触しており、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度をより大きく設定することで、キャリアのバリア効果をさらに高めることができ、基板100におけるキャリアのトンネル確率を高め、第1ドーピング導電層22のキャリア濃度を上げ、第1電極130がより多くのキャリアを収集することに有利である。
【0084】
第2ドーピング導電層32は非金属パターン領域11の第1表面に覆われており、第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度をより小さくすることで、非金属パターン領域11の第1表面でのオージェ再結合の発生を低減することができ、さらに非金属パターン領域11の第1表面に位置するキャリアの再結合を減らし、非金属パターン領域11の第1表面に対するパッシベーション効果を向上させ、キャリア数をさらに増やし、開放電圧及び短絡電流を高めることに有利である。
【0085】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度は5×1018atoms/cm~1×1021atoms/cmであり、例えば、5×1018atoms/cm~7×1018atoms/cm、7×1018atoms/cm~9×1018atoms/cm、9×1018atoms/cm~1×1019atoms/cm、1×1019atoms/cm~5×1019atoms/cm、5×1019atoms/cm~1×1020atoms/cm、1×1020atoms/cm~5×1020atoms/cmまたは5×1020atoms/cm~1×1021atoms/cmであってもよい。いくつかの実施例では、第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度は5×1018atoms/cm~9×1020atoms/cmであり、例えば、5×1018atoms/cm~7×1018atoms/cm、7×1018atoms/cm~1×1019atoms/cm、1×1019atoms/cm~5×1019atoms/cm、5×1019atoms/cm~9×1019atoms/cm、9×1019atoms/cm~1×1020atoms/cm、1×1020atoms/cm~5×1020atoms/cmまたは5×1020atoms/cm~9×1020atoms/cmであってもよい。上記の範囲内において、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度を大きくすることで、金属パターン領域10に対応する基板100におけるキャリアのトンネル能力を向上させ、第1電極130のキャリアに対する収集能力を高めることができる。また、第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度をこの範囲内に設定し、第2ドーピング導電層32の濃度を小さくすることで、第2ドーピング導電層32の非金属パターン領域11の第1表面に対する表面パッシベーション能力を確保する。
【0086】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22のドーピング元素濃度は第2ドーピング導電層32のドーピング元素濃度と同じであってもよい。
【0087】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の厚さは第2ドーピング導電層32の厚さ以上である。いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の厚さが第2ドーピング導電層32の厚さよりも大きく、第1ドーピング導電層22の厚さを大きく設定することで、第1電極130が基板100まで貫通する確率を下げることができるだけでなく、第1ドーピング導電層22と第1電極130との接触面積を増やし、接触抵抗を減らし、キャリアを第1電極130へ輸送する時の輸送損失を低減し、第1電極130のキャリアに対する収集能力を高めるのに有利である。第2ドーピング導電層32の厚さを小さく設定することで、第2ドーピング導電層32の入射光に対する寄生吸収を減らし、基板100の入射光に対する吸収利用率を向上させ、さらに光電変換性能を高めることができる。
【0088】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の厚さは、5nm~500nmであり、例えば、5nm~10nm、10nm~50nm、50nm~80nm、80nm~100nm、100nm~150nm、150nm~200nm、200nm~250nm、250nm~300nm、300nm~350nm、350nm~400nm、400nm~450nmまたは450nm~500nmであってもよい。いくつかの実施例では、第2ドーピング導電層32の厚さは1nm~200nmであり、例えば、1nm~5nm、5nm~10nm、10nm~30nm、30nm~50nm、50nm~80nm、80nm~100nm、100nm~130nm、130nm~150nm、150nm~170nm、170nm~185nmまたは185nm~200nmであってもよい。上記の範囲内において、第1ドーピング導電層22の厚さを大きくすることで、第1電極130が第1ドーピング導電層22を貫通する確率を効果的に下げることができ、第2ドーピング導電層32の厚さを小さくすることで、第2ドーピング導電層32の入射光に対する寄生吸収を減らし、基板100の入射光に対する吸収率を高めることができる。
【0089】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の厚さを第2ドーピング導電層32の厚さと等しくしてもよい。
【0090】
いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の材料は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含み、第2ドーピング導電層32の材料はアモルファスシリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の材料は第2ドーピング導電層32の材料と同じであってもよい。いくつかの実施例では、第1ドーピング導電層22の材料は第2ドーピング導電層32の材料と異なっていてもよい。
【0091】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の厚さは第2トンネル層31の厚さ以下である。いくつかの実施例では、第1トンネル層21の厚さは第2トンネル層31の厚さよりも小さくなってもよい。第1トンネル層21は金属パターン領域10の第1表面に直接接触しており、多数キャリアのトンネルを実現し、キャリアの選択的な輸送を実現することができる。第1トンネル層21の厚さを小さく設定することで、金属パターン領域10に対応する基板100のキャリアが第1トンネル層21を通過しやすくなり、キャリアのトンネル確率を向上させ、さらにキャリアの輸送効率を高めることができる。また、第1トンネル層21の厚さを小さく設定することで、実際に第1トンネル層21を堆積させた場合、堆積によって得られた第1トンネル層21の均一度が高くなり、第1トンネル層21と第1表面との接触断面の形態を改善し、キャリアのトンネルに有利である。
【0092】
また、第2トンネル層31の厚さを大きく設定することで、実際に第1電極130を製造する過程において、第1電極130を形成するための導電性ペーストが第2トンネル層31をバーンスルーしにくくなり、これによって、第1電極130が基板100まで貫通する確率をさらに低減し、キャリア再結合中心の発生を減らすことができる。
【0093】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の厚さは0.1nm~5nmであり、例えば、0.1nm~0.5nm、0.5nm~0.8nm、0.8nm~1nm、1nm~1.5nm、1.5nm~2nm、2nm~2.5nm、2.5nm~3nm、3nm~3.5nm、3.5nm~4nm、4nm~4.5nmまたは4.5nm~5nmであってもよい。第2トンネル層31の厚さは0.2nm~10nmであり、例えば、0.2nm~0.5nm、0.5nm~0.8nm、0.8nm~1.2nm、1.2nm~2nm、2nm~2.5nm、2.5nm~3nm、3nm~3.5nm、3.5nm~4nm、4nm~4.5nm、4.5nm~5nm、5nm~6nm、6nm~7nm、7nm~8nm、8nm~9nmまたは9nm~10nmであってもよい。上記の範囲内において、第1トンネル層21の厚さを小さくすることで、金属パターン領域10に対応する基板100のキャリアのトンネルを強めるのに有利である一方、第1トンネル層21の厚さを小さすぎないようにすることで、第1トンネル層21の厚さが小さすぎて堆積プロセスで空洞が形成される問題を防ぐことができる。
【0094】
上記の範囲内において、第2トンネル層31の厚さが大きいため、第2トンネル層31の厚さを大きく調整することで第1電極130が基板100までバーンスルーする確率を下げることができる。
【0095】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の厚さは第2トンネル層31の厚さと同じであってもよい。
【0096】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の材料は第2トンネル層31の材料と異なっている。第1トンネル層21と第2トンネル層31の材料が異なるように制御することで、第1トンネル層21と第2トンネル層31それぞれに持っている機能を強め、例えば、第1トンネル層31のキャリアに対するトンネル効果を強め、第1電極130のバーンスルーに対する第2トンネル層31のバリア作用を強めることができる。
【0097】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコン、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例では、第2トンネル層31の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコン、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンのうちの少なくとも1つを含む。
【0098】
いくつかの実施例では、第1トンネル層21の材料の密度を第2トンネル層31の材料の密度よりも小さくしてもよい。第1トンネル層21の材料の密度を小さく設定することで、キャリアが第1トンネル層21を通過する確率を高めることができる。一方、第2トンネル層31の材料の密度を大きく設定することで、第1電極130を製造するための導電性ペーストのバーンスルー能力を低下させ、第1電極130が第1パッシベーションコンタクト構造20を貫通する確率を下げることができるだけでなく、第2トンネル層31における欠陥準位密度を低減し、第2トンネル層31の非金属パターン領域11の第1表面に対するパッシベーション性能を高めることができる。これに基づいて、いくつかの実施例では、第1トンネル層21の材料は窒化シリコンであってもよく、第2トンネル層31の材料は酸化シリコンであってもよい。
【0099】
いくつかの実施例では、さらに、第2パッシベーションコンタクト構造30の基板100から離れる表面に位置する第1パッシベーション層140を含む。第1パッシベーション層140は、第1表面に対して良好なパッシベーション効果を発揮し、例えば、第1表面のダングリングボンドに対して良好な化学的パッシベーションを行い、第1表面の欠陥準位密度を低減し、第1表面のキャリアの再結合を抑制することができる。
【0100】
いくつかの実施例では、第1パッシベーション層140は単層構造であってもよいが、いくつかの実施例では、第1パッシベーション層140は複数層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第1パッシベーション層140の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、または酸窒化シリコンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0101】
いくつかの実施例では、第1電極130は第1パッシベーション層140、第2パッシベーションコンタクト構造30を貫通して第1ドーピング導電層22と電気的に接触してもよい。
【0102】
いくつかの実施例では、さらにエミッタ150を含み、エミッタ150は基板100の第2表面に位置し、エミッタ150のドーピング元素のタイプが基板100のドーピング元素のタイプと逆であり、エミッタ150は基板100と一緒にPN接合を構成する。いくつかの実施例では、エミッタ150の材料は基板100の材料と同じであってもよい。
【0103】
いくつかの実施例では、さらに、エミッタ150の基板100から離れる表面に位置する第2パッシベーション層160を含む。第2パッシベーション層160は、基板100の第2表面に対して良好なパッシベーション効果を発揮し、第2表面の欠陥準位密度を下げ、基板100の裏面のキャリア再結合を良好に抑制するために用いられる。また、第2パッシベーション層160は良好な反射低減効果を果たすことができ、入射光の反射を低減し、入射光の利用率を高めることに有利である。
【0104】
いくつかの実施例では、第2パッシベーション層160は単層構造であってもよいが、いくつかの実施例では、第2パッシベーション層160は複数層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第2パッシベーション層160の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0105】
いくつかの実施例では、さらに、基板100の第2表面に位置し、かつ、第2パッシベーション層160を貫通してエミッタ150と電気的に接触する第2電極170を含む。
【0106】
上記の実施例で提供された太陽電池では、非金属パターン領域11の第1表面を金属パターン領域10の第1表面よりも低く設定し、即ち非金属パターン領域11の第1表面と金属パターン領域10の第1表面とはでこぼこしている段差構造を形成しており、基板100の表面が平坦な表面である場合に比べて、段差構造によって、基板100の第1表面の表面積を大きくし、第1表面に覆われるパッシベーションコンタクト構造110の表面積を大きくし、非金属パターン領域11のパッシベーションコンタクト構造110を平坦に保つまま、キャリアのトンネル経路を拡大し、キャリアのトンネル効率を高めることができる。
【0107】
それに対応して、本願実施例の別の態様では、光起電力モジュールをさらに提供し、図10を参照すると、光起電力モジュールは、前述実施例で提供された太陽電池101を複数接続してなる電池ストリングと、電池ストリングの表面を覆うために用いられる封止層102と、封止層102の電池ストリングから離れた表面を覆うために用いられるカバープレート103と、を含む。太陽電池101は、全体または複数のスライスの形で電気的に接続されて複数の電池ストリングを形成し、複数の電池ストリングは、直列および/または並列に電気的に接続されている。
【0108】
具体的には、いくつかの実施例では、複数の電池ストリングは、伝導バンド104で電気的に接続されることができる。封止層102は、太陽電池101の第1表面及び裏面を覆っており、具体的には、封止層102は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着フィルム、ポリエチレンオクテン-エラストマー(POE)接着フィルム、またはポリエチレンテレフタレート(PET)接着フィルム、又はポリビニルブチラール(PVB)等の有機封止フィルムであってもよい。いくつかの実施例では、カバープレート103はガラスカバープレート、プラスチックカバープレート等光透過性のあるカバープレート103であってもよい。具体的には、カバープレート103の封止層102に向かう表面を凹凸面にしてもよく、これによって、入射光線の利用率を高める。
【0109】
本願は、好適な実施例で上記のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、いずれの当業者であれば、本願の着想から逸脱することなく、若干の可能な変更及び修正を加えることができるため、本願の保護範囲は、本願の請求項によって規定される範囲に従うべきである。
【0110】
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者であれば、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第1表面及び前記第1表面に対向して設けられる第2表面を有する基板と、少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造と、を含み、
前記第1表面は、前記第1電極の前記第1表面における投影を含む金属パターン領域及び高さが前記金属パターン領域よりも低く、かつ前記第1電極の前記第1表面における投影を含まない非金属パターン領域を含み、前記金属パターン領域及び前記非金属パターン領域はいずれも平面であり、前記非金属パターン領域の高さ及び前記金属パターン領域の高さは、いずれも前記第2表面に対して使われるものであり、
前記第1表面は、遷移領域をさらに含み、前記遷移領域が前記金属パターン領域の第1表面と前記非金属パターン領域の第1表面との間に位置し、前記遷移領域は前記金属パターン領域の第1表面に接し、かつ前記非金属パターン領域の第1表面に接し、前記金属パターン領域の第1表面、前記非金属パターン領域の第1表面及び前記遷移領域が段差構造を構成し、前記パッシベーションコンタクト構造が前記遷移領域を覆っており
前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は、前記第1表面全体に覆われたトンネル層及び前記トンネル層全体に覆われたドーピング導電層を含み、
前記非金属パターン領域と前記金属パターン領域との高さの差は0.2μm~10μmである、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第1表面は、前記金属パターン領域において第1テクスチャ構造を有し、前記非金属パターン領域において第2テクスチャ構造を有し、前記第1テクスチャ構造の粗さが前記第2テクスチャ構造よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1テクスチャ構造はピラミッド構造を含み、前記第2テクスチャ構造はプラットフォーム突起構造を含み、前記ピラミッド構造の高さ寸法は前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法よりも大きく、かつ、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法よりも小さく、前記ピラミッド構造の高さは前記ピラミッド構造の先端部分から底部表面までの高さであり、前記プラットフォーム突起構造の高さは前記プラットフォーム突起構造の底面から上面までの高さであり、
前記ピラミッド構造は、四面体、近似四面体、五面体または近似五面体の構造であり、
前記プラットフォーム突起構造は、前記ピラミッド構造から先端部分を取り除いた後の底部構造である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記ピラミッド構造の高さ寸法は0.1μm~5μmであり、前記ピラミッド構造の底面の一次元寸法は0.01μm~6μmである、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法は0.002μm~1μmであり、前記プラットフォーム突起構造の底面の一次元寸法は0.01μm~1000μmである、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記遷移領域と前記非金属パターン領域との間に第1挟角があり、前記第1挟角は90°~160°である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1表面は、前記遷移領域において第3テクスチャ構造を備え、前記第3テクスチャ構造の粗さが前記第1テクスチャ構造の粗さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第3テクスチャ構造は、隣接する複数の三角柱状隆起構造を含み、前記遷移領域に垂直な方向における前記三角柱状隆起構造の断面形状が三角形または類似三角形である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパッシベーションコンタクト構造は、
前記金属パターン領域に位置し、かつ、前記基板から離れた方向に沿って積層された第1トンネル層と第1ドーピング導電層とを含む第1パッシベーションコンタクト構造と、
接する第1部分及び第2部分を備える第2パッシベーションコンタクト構造であって、前記第1部分が前記第1パッシベーションコンタクト構造の上面及び側面を覆い、前記第2部分が前記金属パターン領域を除いた残りの前記第1表面を覆い、前記第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れた方向に沿って積層された第2トンネル層及び第2ドーピング導電層を含む第2パッシベーションコンタクト構造と、を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第1パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第1トンネルサブ層及び1つの第1ドーピング導電サブ層を含み、
前記第2パッシベーションコンタクト構造は、前記基板から離れた方向に沿って順次積層された複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造を含み、各前記サブ第2パッシベーションコンタクト構造は前記基板から離れた方向に沿って順次積層された1つの第2トンネルサブ層及び1つの第2ドーピング導電サブ層を含み、
前記複数のサブ第1パッシベーションコンタクト構造及び前記複数のサブ第2パッシベーションコンタクト構造が前記基板から離れる方向に沿って交互に積層されている、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第1電極は、前記第1ドーピング導電層と電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第1ドーピング導電層のドーピング元素濃度は前記第2ドーピング導電層のドーピング元素濃度以上である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1ドーピング導電層の厚さは前記第2ドーピング導電層の厚さ以上である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記第1トンネル層の材料は前記第2トンネル層の材料と異なっている、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる複数の電池ストリングと、
前記複数の電池ストリングの表面を覆うために用いられる封止層と、
前記封止層の前記複数の電池ストリングから離れた表面を覆うために用いられるカバープレートと、を含む、
ことを特徴とする光起電力モジュール。