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特開2024-82282ダイヤモンド合成用プラズマCVD装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082282
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ダイヤモンド合成用プラズマCVD装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/27 20060101AFI20240612BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20240612BHJP
   C30B 29/04 20060101ALI20240612BHJP
   C01B 32/26 20170101ALI20240612BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240612BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C23C16/27
C23C16/511
C30B29/04 E
C01B32/26
H01L21/205
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024040069
(22)【出願日】2024-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】303034908
【氏名又は名称】村田 正義
(72)【発明者】
【氏名】村田正義
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のマイクロ波プラズマCVDを用いたダイヤモンド合成装置は、空洞共振型と非空洞共振型に大別される。前者は高密度プラズマ生成が可能で、高速成膜が可能であるが、反応容器形状が球形又は特殊な扁平ドーム型であり、製造コストが高いので、製造コストの低減化が課題である。後者は成膜速度が遅いので、高速成膜化が課題である。この課題を解決可能なダイヤモンド合成装置を提供すること。
【解決手段】逆円錐台形状の反応容器7部材の内部に逆円錐形状のアンテナ電極9を収納し、該アンテナ電極の側面をマイクロ波電力の導入路とし、該アンテナ電極の主面をプラズマ生成領域とする構成を有する。これにより、空洞共振型に類似した定在波(ゼロ次のベッセル関数型)を発生させることが可能であり、高密度のプラズマを生成し、高速で大面積のダイヤモンド合成が可能である。反応容器の構造がシンプルであり、装置の製造コストを低減できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを導入する原料ガス導入手段と排気手段と基板が載置される基板載置台とを備えた反応容器と、前記反応容器の中央部に配置されたアンテナ電極と、前記アンテナ電極に中心導体と誘電体と外部導体から成る同軸型電力供給手段を介してマイクロ波電力を供給するマイクロ波電力供給装置と、を備え、前記マイクロ波電力供給装置から前記アンテナ電極へ供給されたマイクロ波電力により前記原料ガス導入手段から導入された前記原料ガスをプラズマ化して前記基板載置台に載置された前記基板の表面にダイヤモンドを形成するダイヤモンド合成用プラズマCVD装置において、
前記アンテナ電極は、前記反応容器の中心軸線に沿って前記中心軸線と同心に配置された主面と側面と頂点部を有する逆円錐の形状を有し、前記主面は鉛直線に対して直交する方向に配置され、前記頂点部と前記同軸型電力供給手段の前記中心導体が接続され、
前記基板載置台は、前記アンテナ電極の前記主面の上に配置されること、を特徴とするダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項2】
前記反応容器は、形状が第1上面と第1側面と第1下面から成る中空の逆円錐台で、且つ前記第1上面及び前記第1下面を開口とした構造を有する第1の反応容器部材と、形状が第2上面と第2側面と第2下面から成る中空の円錐台で、且つ前記第2下面を開口とした構造を有する第2の反応容器部材と、前記第1の反応容器部材の前記第1上面の開口の枠と前記第2の反応容器部材の前記第2下面の開口の枠の間に配置された上側開口と下側開口を有する中空の円筒型の第3の反応容器部材で構成され、前記第1の反応容器部材の前記第1上面の開口の枠と前記第3の反応容器部材の前記下側開口の枠が固着され、且つ前記第3の反応容器部材の前記上側開口の枠と前記第2の反応容器部材の前記第2下面の開口の枠が固着されることにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項3】
前記基板載置台は、材質がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成され、円形の外周を有し、前記アンテナ電極の前記主面の中央に前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項4】
前記基板載置台は、該基板載置台の前記基板と接する主面に電界集中効果を有する複数の溝又は穴又は突起物を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項5】
前記基板載置台の前記複数の溝は、断面形状が矩形を有し、前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項6】
前記基板載置台の前記複数の突起物は、断面形状が三角形又は正弦波形を有し、前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項7】
前記反応容器の前記アンテナ電極の前記主面に対向する内壁は、山と谷からなる突起物を備え、前記山又は前記谷の部分から前記原料ガスを噴出する原料ガス噴出孔を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【請求項8】
前記マイクロ波電力供給装置は、300MHz~3GHZの範囲から選ばれる周波数のマイクロ波電力を発生することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のダイヤモンド合成用プラズマCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド合成用プラズマCVD装置に関する。特に、プラズマ発生電源の周波数がマイクロ波帯域であるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているように、宝飾品や機械加工材料のみならず、ワイドギャップ半導体として知られ、SiやSiC等の半導体より遙かに優れた特性を有することから、究極のパワー半導体材料として注目されている。そして、パワー半導体材料への応用を図るために、4~5インチ級の基板への対応が可能な、大面積のダイヤモンド形成装置に関し、鋭意、研究開発が進められている。
パワー半導体材料としてのダイヤモンドを形成する方法としては、主として、マイクロ波プラズマCVD法が用いられている。また、次のことが知られている。即ち、上記マイクロ波プラズマCVD法において、基板にダイヤモンドを用いる場合には、ホモエピタキシャル成長によりダイヤモンドが形成され、不純物を容易に制御可能で、かつ歪みのない結晶を形成することができる。また、基板がダイヤモンド以外の場合、ヘテロエピタキシャル成長によりダイヤモンドが形成されるので、歪みの発生を伴い、かつ結晶性が低下することがある。
【0003】
マイクロ波プラズマCVD法は、基板の加熱と原料ガスの分解にマイクロ波を用いることを特徴とする。即ち、マイクロ波を用いて原料ガスであるメタン(CH)と水素(H)の混合ガスをプラズマ化することにより、該プラズマ中に生成される電子及びイオン等によってダイヤモンド膜の形成に不可欠の主要ラジカルであるCHラジカルと原子状水素H等を発生させるとともに、前記マイクロ波を用いて基板上でのプラズマ化学反応促進に必要な基板温度を、約700℃~約1,00℃に加熱する。基板上に形成されるダイヤモンドは、CHラジカルを主たる前駆体とし、基板に化学吸着して、基板上で原子状H等によって水素成分やグラファイト成分が排除されて、ダイヤモンド結晶が成長する。ダイヤモンド結晶の成長速度は、一般的に1~10μm/h程度であることが知られている。
【0004】
マイクロ波プラズマCVDによるダイヤモンド合成用装置に関する代表的特許技術として、アンテナ電極を用いたマイクロ波プラズマCVDによるダイヤモンド合成用装置、例えば、特許文献1ないし特許文献4に記載された装置が挙げられる。
特許文献1には、導電性材料で形成された真空室と、該真空室内側の上壁面に固定され、貫通孔を有し、導電性材料で形成された第1アンテナと、該第1アンテナに対向して配置され、基板を搭載可能なステージとを備え、前記貫通孔の一端が前記真空室の外部に接続され、前記貫通孔の他端が、前記第1アンテナの前記ステージに対向する面に位置し、プラズマ用の原料ガスが、前記貫通孔の前記一端から前記他端を通って前記第1アンテナおよび前記ステージの間隙に供給され、前記ステージの外側壁および前記真空室の内側壁の間に形成される第1の空間、または、前記第1アンテナの外側壁および前記真空室の内側壁の間に形成される第2の空間のいずれかを導波路として、マイクロ波が、前記原料ガスとは異なる経路で前記真空室の外部から供給され、前記第1アンテナおよび前記ステージの前記間隙にプラズマを発生させ、前記プラズマが、前記第1アンテナと前記ステージとの間隔が前記マイクロ波の自由空間波長の1/10以下、前記第1アンテナの外径が前記マイクロ波の自由空間の半波長以上である扁平なプラズマであり、前記貫通孔を介して、前記ステージに搭載された基板の表面を観察可能であることを特徴とするマイクロ波プラズマ処理装置、が開示されている。
特許文献2には、少なくとも、マイクロ波を導入するための開口部を持つ真空槽と、該開口部にマイクロ波を誘導するための導波管と、該真空槽内にマイクロ波を導入するための誘電体窓と、該真空槽内にマイクロ波を導入するための先端に電極部が形成されたアンテナ部と、該真空槽内に基材を支持するための基材支持台とを有し、該真空槽内面と電極部とで該誘電体窓を狭持したマイクロ波プラズマCVD装置であって、該誘電体窓が隠蔽されるように該電極部端面が誘電体窓端面よりも幅広く形成されており、且つ、該電極部の真空槽中心側の面の中央部に凹部が形成されており、該凹部の真空槽中心側の面における差し渡し幅は導入されるマイクロ波の1/3~5/3波長の範囲内で、真空槽中心側の面から凹部最深部までの深さは使用するマイクロ波の1/20~3/5波長の範囲内であることを特徴とするマイクロ波プラズマCVD装置、が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ダイヤモンド基板の表面に単結晶ダイヤモンドの薄膜を形成するダイヤモンド合成用CVD装置であって、球状に形成された放電室と、この放電室の内部へマイクロ波を供給する同軸アンテナと、この同軸アンテナの先端に設けられた載置部材とを備え、この載置部材又はこの載置部材上に置かれた前記ダイヤモンド基板が、前記放電室の中心に位置し、前記載置部材から放射されたマイクロ波が前記放電室の内面で反射して前記放電室の中心部に戻るとともに、当該放電室の中心部で前記マイクロ波の振幅が最大になることを特徴とするダイヤモンド合成用CVD装置、が開示されている。
特許文献4には、 基板の表面にダイヤモンド膜を形成するダイヤモンド合成用CVD装置であって、扁平なドーム形状を有する上半球面と扁平なドーム形状を有する下半球面とで構成された放電室と、前記下半球面を貫通して前記放電室の中心軸線に沿って延在し、前記放電室の内部へマイクロ波を供給する同軸アンテナ部材と、前記放電室内で、前記同軸アンテナ部材の先端部に取り付けられ、前記放電室の最大直径面に沿って前記中心軸線と同心に拡がった円盤状の共振アンテナと、円形外周を有し、前記共振アンテナの上面の中央に前記中心軸線と同心に配置された、前記基板が載置される載置台と、を備えることを特徴とする、ダイヤモンド合成用CVD装置、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5071927
【特許文献2】特許5142074
【特許文献3】特許4649153
【特許文献4】特許7304280
【0007】
【非特許文献1】有屋田修、ダイヤモンド合成用CVD装置、真空ジャーナル、2023年1月、24-26
【非特許文献2】山田英明、プラズマ CVD による単結晶ダイヤモンド合成の現状と課題、J. Plasma Fusion Res. Vol.90, No.2 (2014)152‐158
【非特許文献3】高橋秀俊、電磁気学(1963)、裳華房、319-322
【非特許文献4】R.P.Feynman, R.B.Leightion, M.L.Sands著(戸田盛和訳)、ファインマン物理学、四:電磁波と物性(1971)、岩波書店、24-28
【非特許文献5】吉川昇、金属のマイクロ波加熱の基礎と応用、まてりあ、Materia Japan、第48巻、1-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のマイクロ波プラズマCVDを用いたダイヤモンド合成用装置は、供給されたマイクロ波電力が反応容器内部で反射して空洞共振することによって、高密度のプラズマを生成する空洞共振型と、前記空洞共振が発生しない非空洞共振型に大別される。
特許文献1及び特許文献2に記載の装置は、非空洞共振型でありプラズマ密度が低いという短所があるのみならず、供給されるマイクロ波電力を反応容器へ導入するマイクロ波導入伝播路において該マイクロ波電力の伝播方向が一箇所で直角に曲がることに起因すると考えられる電力損失が大きいという問題があることにより、高密度プラズマの生成が困難という問題を抱えている。その結果、ダイヤモンド合成速度の高速化が困難である。
特許文献3及び特許文献4に記載の装置は、空洞共振型であり、マイクロ波電力の導入伝播路での電力損出が抑制された同軸型アンテナ電極が採用され、該マイクロ波導入伝播路での損失が小さいことから、ダイヤモンド合成に好適な装置であると言える。
しかしながら、特許文献3に記載の装置は、球形チャンバーを用いることから、該プラズマ反応室の製造が困難で、且つ製造コストが高くなるという問題を抱えている。特許文献4に記載の装置は、プラズマ反応室の形状が扁平なドーム形状を有する半球形であることから、製造が困難で、且つ製造コストが高くなるという問題を抱えている。
即ち、特許文献1及び特許文献2に記載の装置は、プラズマ密度の向上という課題があり、特許文献3及び特許文献4に記載の装置は製造コストの低減という課題がある。
本発明は、上記従来装置が抱える課題を解決可能なマイクロ波帯域の電源周波数を用いたダイヤモンド合成用プラズマCVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、原料ガスを導入する原料ガス導入手段と排気手段と基板が載置される基板載置台とを備えた反応容器と、前記反応容器の中央部に配置されたアンテナ電極と、前記アンテナ電極に中心導体と誘電体と外部導体から成る同軸型電力供給手段を介してマイクロ波電力を供給するマイクロ波電力供給装置と、を備え、前記マイクロ波電力供給装置から前記アンテナ電極へ供給されたマイクロ波電力により前記原料ガス導入手段から導入された前記原料ガスをプラズマ化して前記基板載置台に載置された前記基板の表面にダイヤモンドを形成するダイヤモンド合成用プラズマCVD装置において、
前記アンテナ電極は、前記反応容器の中心軸線に沿って前記中心軸線と同心に配置された主面と側面と頂点部を有する逆円錐の形状を有し、前記主面は鉛直線に対して直交する方向に配置され、前記頂点部と前記同軸型電力供給手段の前記中心導体が接続され、前記基板載置台は、前記アンテナ電極の前記主面の上に配置されること、を特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記反応容器は、形状が第1上面と第1側面と第1下面から成る中空の逆円錐台で、且つ前記第1上面及び前記第1下面を開口とした構造を有する第1の反応容器部材と、形状が第2上面と第2側面と第2下面から成る中空の円錐台で、且つ前記第2下面を開口とした構造を有する第2の反応容器部材と、前記第1の反応容器部材の前記第1上面の開口の枠と前記第2の反応容器部材の前記第2下面の開口の枠の間に配置された上側開口と下側開口を有する中空の円筒型の第3の反応容器部材で構成され、前記第1の反応容器部材の前記第1上面の開口の枠と前記第3の反応容器部材の前記下側開口の枠が固着され、且つ前記第3の反応容器部材の前記上側開口の枠と前記第2の反応容器部材の前記第2下面の開口の枠が固着されることにより形成される、ことを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記基板載置台は、材質がモリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成され、円形の外周を有し、前記アンテナ電極の前記主面の中央に前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれか一つの発明において、前記基板載置台は、該基板載置台の前記基板と接する主面に電界集中効果を有する複数の溝又は穴又は突起物を備えることを特徴とする。
第5の発明は、第4の発明において、前記基板載置台の前記複数の溝は、断面形状が矩形を有し、前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする。
第6の発明は、第4の発明において、前記基板載置台の前記複数の突起物は、断面形状が三角形又は正弦波形を有し、前記反応容器の中心軸線と同心に配置されることを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、前記反応容器の前記アンテナ電極の前記主面に対向する内壁は、山と谷からなる突起物を備え、前記山又は前記谷の部分から前記原料ガスを噴出する原料ガス噴出孔を有することを特徴とする。
第8の発明は、第1の発明から第7の発明のいずれか一つの発明において、前記マイクロ波電力供給装置は、300MHz~3GHZの範囲から選ばれる周波数のマイクロ波電力を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された本発明のダイヤモンド合成用CVD装置は、反応容器の中心部に頂点部と側面と主面を備えた逆円錐形のアンテナ電極が配置され、該アンテナ電極の頂点部と同軸型電力供給手段の中心導体が接続され、該アンテナ電極の側面をマイクロ波電力導入路とすることから、該マイクロ波電力導入路での電力損失が抑制され、且つ前記アンテナ電極の主面の周辺部から前記主面の中央部へ、前記反応容器の中心軸線を向いて電力波が集中して流入し、該アンテナ電極の主面と接するプラズマ生成領域においてゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生し、高密度プラズマの生成が可能となる。また、反応容器は、従来の空洞共振型に比べて単純な構造を有する。その結果、製造コストの低減化が可能であるとともに、高速で大面積に、且つ高品質のダイヤモンド合成が可能となり、上記課題を解消可能という効果を奏する。
更に、基板載置台に、電界集中効果を有する溝又は穴又は突起物を備えることが可能であり、高密度プラズマの生成が可能という効果を奏する。また、前記反応容器の前記アンテナ電極の前記主面に対向する内壁に、山と谷からなる突起物を備ええることが可能であり、高密度プラズマの生成が可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第1の反応容器部材の、(a)模式的外観図及び(b)模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第2の反応容器部材の、(a)模式的外観図及び(b)模式的断面図である。
図4図4は本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第3の反応容器部材の模式的外観図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である円錐形状のアンテナ電極の模式的外観図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である同軸型電力供給手段の模式的断面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるマイクロ波電力供給装置からプラズマ発生領域へ供給されるマイクロ波の電力伝播の形態を示す模式図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺部におけるマイクロ波の電力伝播の形態を示す模式図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する電界Eと磁界Bの概念図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する定在波の電圧の空間分布を示すゼロ次のベッセル関数のグラフである。
図11図11は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する定在波の電圧の空間分布を示す横軸rのグラフ(ゼロ次のベッセル関数)である。
図12図12は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置における原料ガス(メタンCHと水素Hの混合ガス)のプラズマ化によるダイヤモンド形成を示す原理的模式図である。
図13図13は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。
図14図14は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が三角形の複数の突起物を有する基板載置台の模式的断面図である。
図15図15は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が三角形の複数の突起物を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。
図16図16は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が正弦波形の複数の突起物を有する基板載置台の模式的断面図である。
図17図17は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が正弦波形の複数の突起物を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。
図18図18は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が矩形の複数の溝を有する基板載置台の模式的断面図である。
図19図19は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が矩形の複数の溝を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。
図20図20は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。
図21図21は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である突起物を備えた原料ガス噴出箱の模式的斜視図である。
図22図22は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面に対向する反応容器の内壁に配置された突起物の電界集中効果を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成について、図1図11を参照して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第1の反応容器部材の、(a)模式的外観図及び(b)模式的断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第2の反応容器部材の、(a)模式的外観図及び(b)模式的断面図である。図4は本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である第3の反応容器部材の模式的外観図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である円錐形状のアンテナ電極の模式的外観図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である同軸型電力供給手段の模式的断面図である。図7は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるマイクロ波電力供給装置からプラズマ発生領域へ供給されるマイクロ波の電力伝播の形態を示す模式図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺部におけるマイクロ波の電力伝播の形態を示す模式図である。図9は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する電界Eと磁界Bの概念図である。図10は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する定在波の電圧の空間分布を示すゼロ次のベッセル関数のグラフである。図11は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面の周辺に発生する定在波の電圧の空間分布を示す横軸rのグラフ(ゼロ次のベッセル関数)である。
【0014】
本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、図1に示されるように、マイクロ波電力供給装置1と、導波管3と、同軸導波管変換器2と、図示しないアイソレータと、パワーモニター(進行波、反射波)と、E・Hチューナーと、同軸型電力供給手段10と、逆円錐形状のアンテナ電極9と、反応容器7と、原料ガス供給孔13と、排気口15と、基板載置台12と、を備えている。マイクロ波電力供給装置1は、300MHz~3GHzのマイクロ波帯域から選ばれる周波数の電力を発生可能である。
電源周波数を300MHz~3GHzのUHF波帯域から選ぶ理由は、該周波数帯域では、高周波電力による誘電加熱、磁気加熱および誘導加熱の効果が大きいことにより、プラズマを発生する手段と基板加熱手段を兼用可能であるからである。また、300MHz~500MHzの電源は水晶発信器と電力増幅器を組み合わせることで安価に製作できるメリットがあり、周波数915MHz及び2,450MHzの電源はマグネトロン電源として市販品を利用できるというメリットがある。なお、誘電加熱はε・E(ただし、ε:誘電率、E:電場の強さ)に比例し、磁気加熱は、μ・H(ただし、μ:透磁率、H:磁場の強さ)に比例し、誘導加熱は、σ・E(ただし、σ:導電率、E:電場の強さ)に比例する、ことが知られている。
ここでは、マイクロ波電力供給装置1として、例えば、915MHzのマイクロ波を発生するマグネトロン装置を用いる。
【0015】
即ち、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、図1図6に示されるように、原料ガスを導入する原料ガス導入手段13と排気手段15と基板11が載置される基板載置台12とを備えた反応容器7と、前記反応容器7の中央部に配置されたアンテナ電極9と、前記アンテナ電極9に中心導体10aと誘電体10bと外部導体10cから成る同軸型電力供給手段10を介してマイクロ波電力を供給するマイクロ波電力供給装置1と、を備え、前記マイクロ波電力供給装置1から前記アンテナ電極9へ供給されたマイクロ波電力により前記原料ガス導入手段13から導入された前記原料ガスをプラズマ化して前記基板載置台12に載置された前記基板11の表面にダイヤモンドを形成するダイヤモンド合成用プラズマCVD装置において、前記アンテナ電極9は、前記反応容器7の中心軸線に沿って前記中心軸線と同心に配置された主面9aと側面9bと頂点部9cを有する逆円錐の形状を有し、前記主面9aは鉛直線に対して直交する方向に配置され、前記頂点部9cと前記同軸型電力供給手段10の前記中心導体10aが接続され、前記基板載置台12は、前記アンテナ電極9の前記主面9aの上に配置される、という構成を有することを特徴とする。
【0016】
前記反応容器7は、形状が第1上面5aと第1側面5bと第1下面5cから成る中空の逆円錐台で、且つ前記第1上面5a及び前記第1下面5cを開口5aa、5ccとした構造を有する第1の反応容器部材5と、形状が第2上面6aと第2側面6bと第2下面6cから成る中空の円錐台で、且つ前記第2下面6cを開口6ccとした構造を有する第2の反応容器部材6と、前記第1の反応容器部材5の前記開口5aaの枠5dと前記第2の反応容器部材6の前記開口6ccの枠6dの間に配置された上側開口4aaと下側開口4ccを有する中空の円筒型の第3の反応容器部材4で構成され、前記第1の反応容器部材5の前記第1上面の開口5aaの枠5dと前記第3の反応容器部材4の前記下側開口4ccの枠4dが固着され、且つ前記第3の反応容器部材4の前記上側開口4aaの図示しない枠4ddと前記第2の反応容器部材6の前記開口6ccの図示しない枠6dが固着されることにより形成される。
前記第3の反応容器部材4の一部分に前記基板11の搬入搬出口26aが配置される。基板搬入搬出通路口26aは、基板搬入搬出通路26と基板搬入搬出バルブ27を介して、基板11の搬入搬出に用いられる。なお、基板搬入搬出バルブ27は、例えば、図示しないロードロック室に接続されている。
前記反応容器7の寸法は、対象とする基板11のサイズにより対応して選定されるが、例えば、基板サイズ11が直径5インチの場合、第1の反応容器部材5の第1上面5aの直径及び第1下面5cの直径は、それぞれ、例えば、265mm及び80mm、第1の反応容器部材5の高さは、例えば、120mmである。第2の反応容器部材6の第2上面6aの直径及び第2下面6cの直径は、それぞれ、例えば、180mm及び265mm、第2の反応容器部材6の高さは、例えば、40mmである。第3の反応容器部材4の直径及び高さは、それぞれ、例えば、265mm及び30mmである。
なお、前記反応容器7の寸法は、上記例に限定されず、後述のアンテナ電極9の主面9aと第2の反応容器部材6の第2上面6aの間の距離は、後述のプラズマ生成の条件に従って決められる。
第1の反応容器部材5の開口5aaの枠5dと第3の反応容器部材4の開口4ccの枠4dを固着する際、真空漏れが起きぬように、例えば、メタルシール部材を用いるのが好ましい。
なお、第1、第2及び第3の反応容器部材5、6、4から成る反応容器7の材料は、アルミニウム(Al)あるいはSUSが用いられる。また、前記反応容器7は、該反応容器7の温度が高温化しないように、図示しない冷却管が敷設される。
反応容器7は、該反応容器内部の状態を観察可能で、且つ放射温度計による基板11の表面温度を測定可能な観察窓17を備えている。
原料ガス供給孔13は、該原料ガス供給孔13から噴出される原料ガスを、反応容器7の内部に一様に分散して供給する。なお、図1に示される原料ガス供給孔13を、多数の孔を有する箱型の原料ガス供給手段に代えてもよい。
排気口15は、図示しない真空ポンプと組み合わせて稼働させることにより、反応容器7の内部を所定の圧力に調整し、該圧力を所定の値に保持することが可能である。また、反応容器7の内部を高真空度に真空引きすることが可能である。
なお、排気口15の設置位置は、第1の反応容器部材5の側面5bに限定されず、例えば、同軸型電力供給手段10の外部導体の周辺部に設けてもよい。
【0017】
アンテナ電極9は、反応容器7の中心軸線に沿って前記中心軸線と同心に拡がった主面9aと側面9bと頂点部9cを有する逆円錐の形状を有し、第1の反応容器部材5に収納される。円錐形状のアンテナ電極9の主面9aは、鉛直線に対して直交する方向に、第1の反応容器部材5の第1側面5bの内壁との間隔を一定に保つように、配置される。
アンテナ電極9は、第1の反応容器部材5の第1側面5bの内壁と該アンテナ電極9の側面9bの間に誘電体製アンテナ支持材8が配置され、支持される。誘電体製アンテナ支持材8は、アンテナ電極を支持するとともに、反応容器7の真空を維持する。なお、誘電体製アンテナ支持材8の端部は、真空シールが講じられる。
円錐形状のアンテナ電極9の頂点部9cと同軸型電力供給手段10の中心導体10aは接続され、電気的に導通している。アンテナ電極9は、後述の同軸型電力供給手段10から供給された電力波19を第2の反応容器部材6とアンテナ電極9の主面9aに挟まれる空洞部7aへ伝播させる。
円錐形状のアンテナ電極9はモリブデン(Mo)で形成される。その理由は、高融点で機械的強度に優れているからである。
アンテナ電極9は、同軸型電力供給手段10の中心導体10aの内部に設けられた同軸型電力供給手段10に内蔵の図示しない冷媒供給管を介して冷却してもよい。
円錐形状のアンテナ電極9の寸法は、主面9aの直径及び高さが、それぞれ、例えば、180mm及び100mmである。頂点部9cと同軸型電力供給手段10の中心導体10aとの接合部の直径は、例えば、32mmである。
なお、アンテナ電極9の主面9aと前記主面9aに対向する第2の反応容器6の第2上面6aの内壁との距離は、プラズマ発生条件を決定する重要な要素であるので、予め実験により確認するのが好ましい。
【0018】
同軸型電力供給手段10は、中心導体10aと誘電体10bと外部導体10cとから構成される。同軸型電力供給手段10は、同軸導波管変換器2から供給された電力波を、中心導体10aの軸芯(反応容器7の中心軸線21)に沿ってアンテナ電極9へ伝播させる。同軸型電力供給手段10は、図1及び図7に示されるように、電力波19をマイクロ波電力供給装置1の電力を、アンテナ電極9へ伝播させる。なお、図7の符号19cは電気力線を模式的に示す。
マイクロ波電力供給装置1から同軸型電力供給手段10を介してアンテナ電極9へ供給される電力波19の伝播路は、図7に示されるように、該電力波19の伝播方向を1箇所で90°曲げる壁がない形態を有する。即ち、図7に示される電力波19の導入伝播路では、特許文献1及び特許文献2に記載の装置の場合と異なり、該電力波の伝播方向を1箇所で90°曲げる壁がないので、電力波の反射に起因する電力損失が抑制される。
【0019】
ところで、電力波の電力Pは、電磁気学の知見によると、例えば、非特許文献1に記載されるように、ポインテイングベクトルP=ExB(joule/m・s)で表され、波動として伝播する。ただし、Eは電界(ベクトル表示)、Bは磁界(ベクトル表示)である。図1に示される本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の場合、電力波の電力Pの伝播は、模式的に、図7図9の符号19で示される。
図7において、マイクロ波電力供給装置1で発生されたマイクロ波は、符号19で示されるように、同軸導波管変換器2で伝播方向を90°変換され、同軸型電力供給手段10内部を直進し、アンテナ電極9の頂点部9cで鈍角に曲がり、第2の反応容器部材6とアンテナ電極9の主面9aに挟まれる空洞部7aの入り口で鈍角に曲げられ、符号19a、19bで示されるように、互いに対向する方向へ伝播する。空洞部7aに進行する電力波19の形態が、模式的に図8及び図9に示される。
空洞部7a(ここでは、プラズマ生成領域と呼ぶ)の電界Eは、図9に示されるように、アンテナ電極9の主面9aの法線方向を向き、磁界Bは該アンテナ電極9の主面9aの法線方向に直交する方向、即ち、反応容器7の中心軸21を中心にした円20の接線方向を向いている。なお、磁界Bは、アンペールの法則により、電界E方向に流れる変位電流の方向に対して右ネジを回転する方向に発生することにより、図9に、符号20で表されるように、渦巻き状に発生する。
したがって、ポインテイングベクトルP=ExBは、アンテナ電極9の主面9aの周辺部から中心軸21の方向を向いている。これは、マイクロ波電力供給装置1の出力であるマイクロ波電力Pが、アンテナ電極9の主面9aの周辺部から中心軸21へ集中するように、円筒波状(円柱波状)の形態で流れ込む、ということを意味している。円筒波状(円柱波状)の形態で流れ込むマイクロ波電力は、プラズマ生成領域(空洞部7a)で消費され、プラズマ22を生成する。
プラズマ生成領域(空洞部)7aの空間が、図7及び図8に示されるように、アンテナ電極9の主面9aの周辺部から円筒波状の形態で電力が供給されるという構造を有する場合、プラズマ生成領域7aの電界は、例えば、非特許文献4に記載されているように、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)で表される。
即ち、マイクロ波の波長をλ、反応容器7の中心軸21からの距離をrで表すと、プラズマ生成領域7aに発生する電界Eは、波長λと中心軸からの距離rに依存し、次式で表される。
E=E・J(2πr/λ) ・・・(1)
ただし、Eは定数、J(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。
ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)は、図10に示されるように、2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす場合、J(2πr/λ)=0となる。図10の横軸を2πr/λから中心軸からの距離rへ変数変換すると、図11が得られる。上記中心軸からの距離r=0.383λ、0.875λにおいて、電界E=0となる。
プラズマ生成領域7aに発生する電界Eが、図10及び図11に示されるゼロ次のベッセル関数で表されることは、反応容器7の中心軸21を中心にした直径略0.4λ~0.5λの範囲に一様なプラズマが生成されるとことを意味している。なお、プラズマの強さは電界Eの二乗に比例する。
プラズマ22が、式(1)のゼロ次のベッセル関数に従って生成されるということは、マイクロ波電力供給装置1から供給されたマイクロ波電力の干渉現象により定在波が発生する、ことを意味する。即ち、この定在波の発生は、マイクロ波の空洞共振の一種であると言える。
また、図11に示されるように、一様なプラズマが生成される領域は、反応容器7の中心軸21を中心にした直径略0.4λ~0.5λの範囲であるので、例えば、電源周波数が2.45GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=122mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=36.6mm~45.75mmである。例えば、電源周波数が915MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=326mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=97.8mm~122mmである。例えば、電源周波数が300MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=996mmとして、0.75x0.4λ~0.5λ=298mm~373mmである。
したがって、基板の面積が大きい場合は供給電力の周波数を低く、例えば、300MHz~600MHzの帯域に設定し、該基板の面積が小さい場合は供給電力の周波数を高く、例えば、915MHz又は2.45GHzに設定することにより、一様なプラズマの生成による均一なダイヤモンド合成が可能になる。
基板載置台12は、アンテナ電極9の主面9aの上に配置され、基板11と接し、保持する。
基板支持台12の材料は、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成される。その理由は、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)は常磁性と導電性があり、マイクロ波による加熱効果が高く、電磁波印加により高温に加熱されやすいことと、高融点で機械的強度に優れているからである。
なお、マイクロ波による金属及び誘電体の加熱は、例えば、非特許文献5に記載されているように、誘電加熱はε・E(ただし、ε:誘電率、E:電場の強さ)に比例し、磁気加熱はμ・H(ただし、μ:透磁率、H:磁場の強さ)に比例し、誘導加熱はσ・E(ただし、σ:導電率、E:電場の強さ)に比例する、ことが知られている。即ち、誘電率、透磁率及び導電率の高い物質は加熱効果が大きく、効果的に加熱される。この中で、融点が最も高いモリブデン(Mo)が好ましい。
基板載置台12の断面形状は、基板形状と相似形とする。ここでは、円形とする。そのサイズは、基板11のサイズより一回りおおきいサイズで、例えば、直径5インチの基板の場合、例えば、直径137mmである。なお、基板載置台12は、基板保持の安定性を確保するために、反応容器7の中心軸線21と同心である直径が前記基板のサイズより略0.5mm大きいサイズの凹みを備えてもよい。
ここでは、基板11を、例えば、直径5インチのイリジウム結晶膜が被覆された単結晶Siウエハーとする。なお、基板11は単結晶Siウエハーに限定されない、例えば、高温高圧法で製作された小さいサイズの複数個のダイヤモンド基板を載置してもよい。
基板11は、第3の反応容器部材4の一部分に配置された搬入搬出口26aから、基板搬入搬出通路26と基板搬入搬出バルブ27を介して、搬入搬出される。なお、基板搬入搬出バルブ27は、例えば、図示しないロードロック室に接続されている。
基板11は、マイクロ波電力により基板11自身が加熱されることに加え、 基板載置台12からの熱伝導により加熱される。基板11の温度は、約700~約1,200℃に、例えば、1,000℃に設定される。なお、基板11の温度は、観測窓17を介して放射温度計19を用いて測定される。
【0020】
次に、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の操作手順について、図1図12を参照して説明する。図12は、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置における原料ガス(メタンCHと水素Hの混合ガス)のプラズマ化によるダイヤモンド形成を示す原理的模式図である。
先ず、図示しない真空ポンプにより、排気口15を介して反応容器7の内部を所定の真空度にする。
次に、基板搬入搬出通路口26aから、基板搬入搬出通路口26a及び基板搬入搬出バルブ27を介して、基板11を搬入し、基板載置台12に載置する。なお、基板搬入搬出バルブ27の上流側は、図示しないロードロック室に接続され真空条件が満たされている。
次に、基板11の表面を水素プラズマでクリーニングし、基板の温度を、例えば、1,000℃に設定する。即ち、図示しない原料ガスの供給源から原料ガスとして水素ガスのみを導入し、反応容器7内部の圧力を例えば、例えば、5kPaに設定する。そして、マグネトロン装置1からアンテナ電極9へ、例えば、1kWを供給する。この際、導波管3の付属の図示しないアイソレータ、パワーモニター(進行波、反射波)及びE・Hチューナーによりマイクロ波伝播の整合条件を整える。観察窓17から図示しない放射温度計を用いて基板11の表面温度を測定し、それが、例えば、1,000℃になったら、一旦マイクロ波電力供給装置1の出力をゼロに落とす。なお、基板11及び基板載置台12はマイクロ波の磁気加熱効果(μ・H、ただし、μ:透磁率、H:磁場の強さ)、誘導加熱効果(σ・E、ただし、σ:導電率、E:電場の強さ)及び誘導加熱効果(σ・E、ただし、σ:導電率、E:電場の強さ)により、効果的に加熱される。
次に、図示しない原料ガスの供給源から原料ガスとしてメタンガスと水素を選ぶ。ガス供給条件は、例えば、流量比を水素流量/メタンガス流量=100/1とする。その後、図示しないメタンガス源及び図示しない水素ガス源から、それぞれ図示しないメタンガス及び水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量に制御されたメタンガス及び水素ガスを、原料ガス供給孔13から噴出させる。
次に、排気口15に付属された図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、ドーム型反応容器7の内部圧力を、略1kPa~略10kPaに保つ。ここでは、例えば、5kPaに設定し、維持する。
【0021】
次に、マイクロ波電力供給装置1の出力を、例えば、500W~2KW、ここでは、例えば、1kWに設定する。この際、導波管3の付属の図示しないアイソレータ、パワーモニター(進行波、反射波)及びE・Hチューナーによりマイクロ波伝播の整合条件を整える。観察窓17から図示しない放射温度計を用いて基板11表面温度を測定し、それが、例えば、1,000℃であることを確認する。
そうすると、図1及び図7に示される空洞部(プラズマ生成領域)7aに原料ガスのプラズマ22が生成される。原料ガスのメタン(CH)及び水素(H)がプラズマ化すると、CH、Hが解離し、ダイヤモンド形成の前駆体であるCHラジカル及び原子状H等を発生する。該CHラジカル及び該原子状H等は拡散して、基板11の表面に到達する。
即ち、図12に示されるように、プラズマ生成領域7aで発生した高濃度のCHラジカル及び原子状H等は拡散現象により、基板11の表面に移動する。その一部分は、基板11の表面に化学吸着する。基板表面に化学吸着したCHラジカル等の一部分は、表面化学反応により、C-Cの形で結合する。原子状Hは、膜表面及び膜中のH成分及び結合の弱い炭素成分を引き抜く。引き抜きされたC及びH成分はガスに成って排出される。基板上では、C-C結合が正四面体構造で形成され、ダイヤモンドが成長する。
【0022】
次に、形成されるダイヤモンドの厚みはプラズマ22aの生成持続時間に比例するので、マイクロ波電力供給装置1の出力供給開始から所定の時間が経過した時点で、その出力をゼロにする。ダイヤモンド合成時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、例えば、30分~60分、例えば60分とする。
なお、ダイヤモンド合成の時間の長さは、反応容器7の寸法、円錐形状のアンテナ電極9の寸法及び第2の反応容器部材6aの内壁とアンテナ電極9の主面9aの間隔、基板温度、メタンガスの流量、水素ガスの流量、圧力、マイクロ波電力等の関係に係わるデータを、予め把握し、そのデータを基に決められる。
目的とするダイヤモンドの合成が終了後、上記メタンガス及び水素ガスの供給を停止し、反応容器7の内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。
その後、基板搬入搬出通路口26aから、基板搬入搬出通路26及び基板搬入搬出バルブ27を介して、基板11を搬出する。基板11を搬出した後、新たな基板11を搬入する。そして、上述と同様な手順で、ダイヤモンドを形成する。
【0023】
以上の説明で示されたように、本発明の第1の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、外観が逆円錐形状アンテナ電極9と外観が逆円錐台形状で中空の第1の反応容器部材5を組み合わせて形成されたマイクロ波電力導入路を有することから、該マイクロ波電力導入路での電力損失が抑制されるとともに、プラズマ生成領域においてゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生し、高密度プラズマの生成が可能である。本発明の装置ではゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生することから、マイクロ波の波長をλとすると、一様なプラズマの範囲を略0.4λ~0.5λにできる。
例えば、電源周波数が2.45GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=122mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=36.6mm~45.75mmである。
例えば、電源周波数が915MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=326mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=97.8mm~122mmである。
例えば、電源周波数が300MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=996mmとして、0.75x0.4λ~0.5λ=298mm~373mmである。
したがって、基板の面積が大きい場合は供給電力の周波数を低く、例えば、300MHz~600MHzの帯域に設定し、該基板の面積が小さい場合は供給電力の周波数を高く、例えば、915MHz又は2.45GHzに設定することにより、高速で大面積に、且つ高品質のダイヤモンド成長が可能となる。また、反応容器の構造が単純な形であり、該反応容器の製造が容易であり製造コストが低減化されるという効果を奏する。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成に
ついて、図13図19を参照して、説明する。
図13は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。図14は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が三角形の複数の突起物を有する基板載置台の模式的断面図である。図15は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が三角形の複数の突起物を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。図16は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が正弦波形の複数の突起物を有する基板載置台の模式的断面図である。図17は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が正弦波形の複数の突起物を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。図18は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が矩形の複数の溝を有する基板載置台の模式的断面図である。図19は本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である断面形状が矩形の複数の溝を有する基板載置台の電界集中効果を示す模式的断面図である。
【0025】
本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、図13に示されるように、基板載置台12は、該基板載置台の前記基板と接する主面に電界集中効果を発生する電界集中発生部材12abcを備える。電界集中発生部材12abcは、複数の溝又は穴又は突起物12abcを備える。電界集中発生部材12abcは、例えば、断面形状が三角形、正弦波形又は矩形の形態に形成される。
基板載置台12の断面形状が三角形の場合は、図14に符号12aで示されるように、反応容器7の中心軸線21と同心の円状の山12aaと谷12abと基板保持用枠12acを備える。断面形状が三角形の基板載置台12aは、図15に電気力線12adで示されるように、突起物特有の電界集中12aeを発生する。電界集中12aeが発生すると、該電界集中12ae近傍の領域12afに高密度プラズマが発生する。なお、基板載置台12aの上に基板11が載置される際、該基板の材質が誘電体、例えば、シリコンウエハー及びダイヤモンド基板であれば、電気力線12adの形は図15の場合と同様である。
基板載置台12aの寸法は、反応容器7の中心軸線と同心の円状の山12aaと谷12abの間隔を、例えば0.5mm~10mm、例えば、5mm、前記山12aaと谷12abの高低差を、例えば1mm~10mm、例えば、5mmとする。
なお、基板載置台12aは、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成される。その理由は、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)は常磁性と導電性があり、マイクロ波による加熱効果が高く、電磁波印加により高温に加熱されやすいことと、高融点で機械的強度に優れているからである。
基板載置台12の断面形状が正弦波形の場合は、図16に符号12bで示されるように、反応容器7の中心軸線21と同心の山12baと谷12bbと基板保持用枠12bcを備える。 断面形状が正弦波状の基板載置台12bは、図17に電気力線12bdで示されるように、突起物特有の電界集中12beを発生する。電界集中12beが発生すると、該電界集中12be近傍の領域12bfに高密度プラズマが発生する。なお、基板載置台12bの上に基板11が載置される際、該基板の材質が誘電体、例えば、シリコンウエハー及びダイヤモンド基板であれば、電気力線12bdの形は図17の場合と同様である。
正弦波状の突起物の寸法は、反応容器7の中心軸線と同心の円状の山12baと谷12bbの間隔を、例えば1mm~10mm、例えば、5mm、前記山12baと谷12bの高低差を、例えば1mm~10mm、例えば、5mmとする。
なお、基板載置台12bは、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成される。その理由は、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)は常磁性と導電性があり、マイクロ波による加熱効果が高く、電磁波印加により高温に加熱されやすいことと、高融点で機械的強度に優れているからである。
基板載置台12の断面形状が矩形の場合は、図18に符号12cで示されるように、反応容器7の中心軸線21と同心の山12caと谷(溝)12cbと基板保持用枠12ccを備える。なお、前記谷12cbを溝12cbと呼ぶ。
断面形状が矩形の基板載置台12cは、図19に電気力線12cdで示されるように、エッジを有する溝特有の電界集中12ceを発生する。電界集中12ceが発生すると、該電界集中12ce近傍の領域12cfに高密度プラズマが発生する。なお、基板載置台12cの上に基板11が載置される際、該基板11の材質が誘電体、例えば、シリコンウエハー及びダイヤモンド基板であれば、電気力線12cdの形は、図19の場合と同様である。
矩形の突起物の寸法は、反応容器7の中心軸線21と同心の溝(谷12cb)の幅を、例えば0.5mm~10mm、例えば、5mm、前記溝の深さを、例えば0.5mm~10mm、例えば、5mmとする。
なお、基板載置台12cは、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)で形成される。その理由は、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)又はチタン(Ti)は常磁性と導電性があり、マイクロ波による加熱効果が高く、電磁波印加により高温に加熱されやすいことと、高融点で機械的強度に優れているからである。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の操作手順について、図13を参照して説明する。なお、本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、基板載置台12として、基板載置台12a、12b及び12cの中から選ぶことが出来る。
ここでは、本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材の基板載置台12として断面形状が矩形である基板載置台12cを用いた場合について説明する。なお、基板載置台12cの場合、谷12cbを溝12cbと呼ぶ。
なお、断面形状が三角形又は正弦波形である基板載置台12a、12bを用いた場合でも操作手順は同様である。
先ず、図示しない真空ポンプにより、排気口15を介して反応容器7の内部を所定の真空度にする。
次に、基板搬入搬出通路口26aから、基板搬入搬出通路口26a及び基板搬入搬出バルブ27を介して、基板11を搬入し、基板載置台12cに載置する。なお、基板搬入搬出バルブ27の上流側は、図示しないロードロック室に接続され真空条件が満たされている。
次に、基板11の表面を水素プラズマでクリーニングし、基板の温度を、例えば、1,000℃に設定する。即ち、図示しない原料ガスの供給源から原料ガスとして水素ガスのみを導入し、反応容器7内部の圧力を例えば、例えば、5kPaに設定する。そして、マイクロ波電力供給装置1からアンテナ電極9へ、例えば、1kWを供給する。この際、導波管3の付属の図示しないアイソレータ、パワーモニター(進行波、反射波)及びE・Hチューナーによりマイクロ波伝播の整合条件を整える。観察窓17から図示しない放射温度計を用いて基板11の表面温度を測定し、それが、例えば、1,000℃になったら、一旦マイクロ波電力供給装置1の出力をゼロに落とす。
なお、基板11及び基板載置台12cは、マイクロ波の誘電加熱効果(誘電加熱∝ε・E、ただし、ε:誘電率、E:電場の強さ)、磁気加熱効果(磁気加熱∝μ・H、ただし、μ:透磁率、H:磁場の強さ)及び誘導加熱効果(誘導加熱比例σ・E、ただし、σ:導電率、E:電場の強さ)により、効果的に加熱される。
次に、図示しない原料ガスの供給源から原料ガスとしてメタンガスと水素を選ぶ。ガス供給条件は、例えば、流量比を水素流量/メタンガス流量=100/1とする。その後、図示しないメタンガス源及び図示しない水素ガス源から、それぞれ図示しないメタンガス及び水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御されたメタンガス及び水素ガスを、原料ガス供給孔13から噴出させる。
次に、排気口15に付属された図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、反応容器7の内部圧力を、略1kPa~略10kPaに保つ。ここでは、例えば、5kPaに設定し、維持する。
【0027】
次に、マイクロ波電力供給装置1の出力を、例えば、500W~2KW、ここでは、例えば1kWに設定する。この際、導波管3の付属の図示しないアイソレータ、パワーモニター(進行波、反射波)及びE・Hチューナーによりマイクロ波伝播の整合条件を整える。観察窓17から図示しない放射温度計を用いて基板11表面温度を測定し、それが、例えば、1,000℃に維持する。
そうすると、図13に示されるように、プラズマ生成領域7aに原料ガスのプラズマ22aが生成される。プラズマ22aは、図19に示された基板載置台12cが有する電界集中効果により高密度プラズマとなる。高密度のプラズマ22aの生成により、原料ガスのメタン(CH)及び水素(H)から高濃度のCHラジカル及び原子状H等が発生する。該CHラジカル及び該原子状H等は拡散して、基板11の表面に到達する。
即ち、図12に示されるように、プラズマ22aで発生した高濃度のCHラジカル及び原子状H等は拡散現象により、基板11の表面に移動する。その一部分は、基板11の表面に化学吸着する。基板表面に化学吸着したCHラジカル等の一部分は、表面化学反応により、C-Cの形で結合する。原子状Hは、膜表面及び膜中のH成分及び結合の弱い炭素成分を引き抜く。引き抜きされたC及びH成分はガスに成って排出される。基板上では、C-C結合が正四面体構造で形成され、ダイヤモンドが成長する。
【0028】
次に、形成されるダイヤモンドの厚みはプラズマ22aの生成持続の時間に比例するので、マイクロ波電力供給装置1の出力供給開始から所定の時間が経過した時点で、その出力をゼロにする。ダイヤモンド合成時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、例えば、30分~60分、例えば60分とする。
なお、ダイヤモンド合成時間は、反応容器7の寸法、アンテナ電極9の寸法及び第2の反応容器部材6の第2上面6aとアンテナ電極9の主面9aの間隔、基板温度、メタンガスの流量、水素ガスの流量、圧力、マイクロ波電力等の関係に係わるデータを、予め把握し、そのデータを基に決められる。
目的とするダイヤモンドの合成が終了後、上記メタンガス及び水素ガスの供給を停止し、反応容器7内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。
その後、基板搬入搬出通路口26aから、基板搬入搬出通路口26a及び基板搬入搬出バルブ27を介して、基板11を搬出する。基板11を搬出した後、新たな基板11を搬入する。そして、上述と同様な手順で、ダイヤモンドを形成する。
【0029】
以上の説明で示されたように、本発明の第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、外観が逆円錐形状アンテナ電極9と外観が逆円錐台形状で中空の第1の反応容器部材5を組み合わせて形成されたマイクロ波電力導入路を有することから、該マイクロ波電力導入路での電力損失が抑制されるとともに、プラズマ生成領域においてゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生し、高密度プラズマの生成が可能である。本発明の装置ではゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生することから、マイクロ波の波長をλとすると、略0.4λ~0.5λの範囲に一様なプラズマを形成可能である。
例えば、電源周波数が2.45GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=122mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=36.6mm~45.75mmである。
例えば、電源周波数が915GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=326mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=97.8mm~122mmである。
例えば、電源周波数が300MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=996mmとして、0.75x0.4λ~0.5λ=298mm~373mmである。
更に、基板載置台12abc(12a、12b、12c)が有する電界集中効果による高密度プラズマの生成が可能となり、ダイヤモンド合成速度の向上が可能となる。
したがって、基板の面積が広い場合は供給電力の周波数を低く、例えば、300MHz~600MHzの帯域に設定し、該基板の面積が狭い場合は供給電力の周波数を高く、例えば、600MHz~3GHzの帯域に設定することにより、高速で大面積に、且つ高品質のダイヤモンド成長が可能となる。また、反応容器の構造が単純形であり、該反応容器の製造が容易で製造コストが低減化されるという効果を奏する。
【0030】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成に
ついて、図20及び図21を参照して、説明する。
図20は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成を示す模式的断面図である。図21は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材である突起物を備えた原料ガス噴出箱の模式的斜視図である。図22は本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の構成部材であるアンテナ電極の主面に対向する反応容器の内壁に配置された突起物の電界集中効果を示す模式的断面図である。
【0031】
図20及び図21において、符号13aは原料ガス噴出箱である。原料ガス噴出箱13aは、アンテナ電極9の主面9aに対向して配置される。
原料ガス噴出箱13aは、ガス分散空洞13bと、複数の原料ガス噴出孔13cと、複数の突起物13dから構成される。
複数の突起物13dは、断面形状が三角形、正弦波状又は矩形であり、反応容器7の中心軸線21と同心に配置される。
断面形状が三角形の複数の突起物13dは、図22に電気力線13ddで示されるように、突起物特有の電界集中13deを発生する。電界集中13deが発生すると、該電界集中13de近傍の領域13dfに高密度プラズマ22cが発生する。
ガス分散空洞13bは、原料ガス導入口13から供給される原料ガスを分散して下流側の原料ガス噴出孔13cへ供給する。原料ガス噴出孔13cの孔径は、0.3~1.0mmである。
【0032】
本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の操作手順は、上述の本発明の第1及び第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置の場合と同様である
【0033】
以上の説明で示されたように、本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、アンテナ電極9の主面9aに対向して配置される断面形状が三角形、正弦波形又は矩形の複数の突起物13dが有する電界集中効果により、高密度のプラズマ22cを生成することが可能である。その結果、ダイヤモンドを高速で合成することが可能となる。
本発明の第3の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置は、本発明の第1及び第2の実施形態に係わるダイヤモンド合成用プラズマCVD装置と同様に、外観が逆円錐形状アンテナ電極9と外観が逆円錐台形状で中空の第1の反応容器部材5を組み合わせて形成されたマイクロ波電力導入路を有することから、該マイクロ波電力導入路での電力損失が抑制されるとともに、プラズマ生成領域においてゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生し、高密度プラズマの生成が可能である。本発明の装置ではゼロ次のベッセル関数型の定在波が発生することから、マイクロ波の波長をλとすると、略0.4λ~0.5λの範囲に一様なプラズマを形成可能である。
例えば、電源周波数が2.45GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短
縮率を0.75、λ=122mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=36.6mm~45.75mmである。
例えば、電源周波数が915GHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=326mmとして、0.75x0.4λ~0.75x0.5λ=97.8mm~122mmである。
例えば、電源周波数が300MHzの場合、一様なプラズマは、プラズマ中の波長短縮率を0.75、λ=996mmとして、0.75x0.4λ~0.5λ=298mm~373mmである。
更に、アンテナ電極9の主面9aに対向して配置される断面形状が三角形、正弦波形又は矩形の複数の突起物13dが有する電界集中効果による高密度プラズマの生成が可能となり、ダイヤモンド合成速度の向上が可能となる。
したがって、基板の面積が広い場合は供給電力の周波数を低く、例えば、300MHz~600MHzの帯域に設定し、該基板の面積が狭い場合は供給電力の周波数を高く、例えば、600MHz~3GHzの帯域に設定することにより、高速で大面積に、且つ高品質のダイヤモンド成長が可能となる。また、反応容器の構造が単純形であり、該反応容器の製造が容易で製造コストが低減化されるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
1・・・マイクロ波電力供給装置、
2・・・同軸導波管変換器、
3・・・導波管、
4・・・第3の反応容器部材、
5・・・第1の反応容器部材、
6・・・第2の反応容器部材、
7・・・反応容器、
8・・・誘電体製アンテナ支持材、
9・・・逆円錐形状のアンテナ電極、
10・・・同軸型電力供給手段、
10a・・・中心導体、
10b・・・誘電体、
10c・・・外部導体、
11・・・基板、
12・・・基板載置台、
12a・・・断面形状が三角形の基板載置台、
12b・・・ 断面形状が正弦波状の基板載置台、
12c・・・ 断面形状が矩形の基板載置台、
13・・・原料ガス供給孔、
13a・・・原料ガス噴出箱、
13c・・・原料ガス噴出孔13c、
13d・・・突起物、
15・・・排気口、
17・・・観察窓、
22、22a、22c・・・プラズマ、
26a・・・基板搬入搬出口、
27・・・基板搬入搬出バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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