(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082285
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】発泡体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240612BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20240612BHJP
C08F 4/6592 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08F210/16
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024042750
(22)【出願日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 修平
(72)【発明者】
【氏名】関谷 慶子
(72)【発明者】
【氏名】志水 博貴
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
(72)【発明者】
【氏名】田村 直也
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 孝
(57)【要約】
【課題】従来公知のエチレン系重合体からなる発泡体と比較して機械的強度および耐熱性のバランスに優れた発泡体を提供すること。
【解決手段】発泡体であって、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であり、特定の要件(1)~(4)、および下記の要件(5)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(A)または前記共重合体(A)の架橋物を含む、発泡体;(5)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在し、かつ、測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が10mJ以上200mJ以下の範囲にある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体であって、
エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であり、下記要件(1)~(5)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(A)または前記共重合体(A)の架橋物を含む、
発泡体。
(1)密度が900kg/m3以上935kg/m3以下の範囲にある。
(2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上10.0g/10分以下の範囲にある。
(3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上4.00×10-4以下の範囲にある。
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)が、下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1)
(5)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在し、かつ、測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が10mJ以上200mJ以下の範囲にある。
【請求項2】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)が、さらに下記要件(6)~(7)を満たす、請求項1に記載の発泡体。
(6)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-2)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776 ≦ [η]≦ 1.65×10-4×Mw0.776 ・・・(Eq-2)
(7)1H-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および3置換内部オレフィンの合計(個/1000C)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
【請求項3】
さらに前記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を含む、請求項1または2に記載の発泡体。
【請求項4】
前記発泡体が架橋発泡体である、請求項1または2に記載の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-α-オレフィン共重合体または前記共重合体の架橋物を含む発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系発泡体は、軽量性、耐水性、断熱性、遮音性、ヒートシール性等の特性から、建材用途の断熱材、自動車内装用緩衝材、食品包装材などの分野で広く利用されている。
エチレン系重合体を使用した発泡体は、押出発泡成形などによる無架橋発泡体と、電子線架橋や過酸化物架橋などによりポリエチレン成分に架橋構造を導入した架橋発泡体に大別される。
【0003】
高圧法低密度ポリエチレンは長鎖分岐構造を有し、伸長粘度のひずみ硬化性を有することから、発泡過程における破泡が抑制されるため、ポリエチレン系発泡体によく使用される。しかしながら、高圧法低密度ポリエチレンからなる架橋発泡体は、高発泡倍率化しやすいが、引張強度など機械的特性や耐熱性が低いという課題を有する。
【0004】
一方、直鎖状低密度ポリエチレンは機械強度には優れるものの、伸長粘度のひずみ硬化性を有しないため、高発泡倍率の発泡体を製造することが困難である。
【0005】
これらの課題を解決するために、例えば、特許文献1~6には、特定の触媒を用いて重合することで長鎖分岐構造を導入したエチレン系重合体や、当該エチレン系重合体を含む組成物からなる発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-282991号公報
【特許文献2】特開2008-001792号公報
【特許文献3】特開2009-132903号公報
【特許文献4】特開2010-126641号公報
【特許文献5】特開2011-001545号公報
【特許文献6】特開2012-136595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~6に記載のエチレン系重合体や、当該エチレン系重合体を含む組成物からなる発泡体では、特に高い耐熱性・機械強度が求められる一部の緩衝保護材や断熱材等の用途においては、要求される物性を十分に満たすことは困難であると予想される。
本発明は、従来公知のエチレン系重合体からなる発泡体と比較して機械的強度および耐熱性のバランスに優れた発泡体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような状況に鑑み鋭意研究した結果、特定の溶融特性と分子構造をもつエチレン系重合体または前記エチレン系重合体の架橋物を含む発泡体が、機械強度と耐熱性とのバランスに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、たとえば以下の<1>~<4>に関する。
【0009】
<1> 発泡体であって、
エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であり、下記要件(1)~(5)を満たすエチレン-α-オレフィン共重合体(A)または前記共重合体(A)の架橋物を含む、
発泡体。
(1)密度が900kg/m3以上935kg/m3以下の範囲にある。
(2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上10.0g/10分以下の範囲にある。
(3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上4.00×10-4以下の範囲にある。
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)が、下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1)
(5)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在し、かつ、測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が10mJ以上200mJ以下の範囲にある。
【0010】
<2> 前記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)が、さらに下記要件(6)~(7)を満たす、<1>に記載の発泡体。
(6)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-2)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776 ≦ [η]≦ 1.65×10-4×Mw0.776 ・・・(Eq-2)
(7)1H-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および3置換内部オレフィンの合計(個/1000C)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
【0011】
<3> さらに前記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を含む、<1>または<2>に記載の発泡体。
【0012】
<4> 前記発泡体が架橋発泡体である、<1>~<3>のいずれかに記載の発泡体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、従来公知のエチレン系重合体からなる発泡体と比較して機械的強度および耐熱性のバランスに優れた発泡体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
発泡体
本発明の発泡体は、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または前記共重合体(A)の架橋物を含む。
<エチレン-α-オレフィン共重合体(A)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であり、好ましくはエチレンと炭素数6~10のα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンは1種でもよく、2種以上でもよい。
エチレンとの共重合に用いられる上記炭素数4~10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、下記要件(1)~(5)に示すような特性を有している。
【0016】
≪要件(1)≫
(1)密度が900kg/m3以上935kg/m3以下であり、好ましくは910kg/m3以上930kg/m3以下、より好ましくは912kg/m3以上925kg/m3以下の範囲にある。
【0017】
密度が900kg/m3以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の耐熱性が良好であり、密度が935kg/m3以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の機械的強度が良好である。
【0018】
密度は、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることから(例えば、Walter Kaminsky, Macromol.Chem. 193, p.606(1992))、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体(A)を製造することができる。
【0019】
密度の測定は以下のように行われる。
MFR測定時に得られるストランドを100℃で30分間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定する。
【0020】
≪要件(2)≫
(2)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上10.0g/10分以下であり、好ましくは0.05g/10分以上5.0g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上5.0g/10分以下である。
【0021】
MFRが0.01g/10分以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)のせん断粘度が高すぎず、押出負荷が良好である。MFRが10.0g/10分以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の機械的強度が良好である。
【0022】
メルトフローレート(MFR)は、分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
【0023】
≪要件(3)≫
(3)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕(PはPoiseである。)との比〔MT/η*(g/P)〕が1.20×10-4以上4.00×10-4以下の範囲にあり、好ましくは1.30×10-4以上3.80×10-4以下、より好ましくは1.20×10-4以上3.50×10-4以下の範囲にある。
【0024】
MT/η*が1.20×10-4以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は分子量の割に溶融張力が高いため、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は成形性に優れる。MT/η*が4.00×10-4以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は機械的強度に優れる。
【0025】
MT/η*は、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の長鎖分岐含量に依存しており、長鎖分岐含量が多いほどMT/η*は大きく、長鎖分岐含量が少ないほどMT/η*は小さくなる。長鎖分岐とは、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。
MT/η*は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(T)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を上げることによって、MT/η*を下げることができる。後述する実施例に記載の製造例4の製造条件によって1.20×10-4付近のMT/η*を、製造例7の製造条件によって4.00×10-4付近のMT/η*を得ることができる。
【0026】
溶融張力〔MT(g)〕は以下のように測定する。
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の190℃における溶融張力(MT)(単位;g)は、一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定する。測定にはキャピラリーレオメーターを用いる(たとえば、後述する実施例では(株)東洋精機製作所製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Dを用いた)。
測定条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmとする。
【0027】
200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕は、以下のように測定する。せん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定には、粘弾性測定装置を用い(たとえば、後述する実施例ではアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いた。)、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)のサンプル厚さを約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択する。
【0028】
せん断粘度測定に用いるサンプルは、成形機を用い(たとえば、後述する実施例では(株)神藤金属工業所製プレス成形機を用いた。)、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製する。
【0029】
≪要件(4)≫
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とは下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.01×10-13×Mw3.4≦η0≦2.5×10―13×Mw3.4・・・(Eq-1)
【0030】
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕および重量平均分子量(Mw)は、好ましくは以下関係式(Eq-1’)を満たす。
0.05×10-13×Mw3.4≦η0≦2.2×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1’)
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕および重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは以下s関係式(Eq-1”)を満たす。
0.10×10-13×Mw3.4≦η0≦2.0×10-13×Mw3.4・・・(Eq-1”)
【0031】
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン系重合体のように伸長粘度がひずみ硬化性を示さない樹脂は、傾きが3.4のべき乗則に則るのに対し、高圧法低密度ポリエチレンのように伸長粘度がひずみ速度硬化性を示す樹脂は、べき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η0(P)〕を示すことが知られている(C Gabriel, H.Munstedt, J.Rheol., 47(3), 619(2003))。
【0032】
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が上限2.5×10-13×Mw3.4以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、引取サージングが発生しない。
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)中の長鎖分岐の含量および長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほどη0/Mw3.4は小さい値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また、長鎖分岐の長さが長いほどη0/Mw3.4は大きい値を示すと考えられる。
【0033】
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(T)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能である。
例えば、エチレン分圧を上げることによって、ゼロせん断粘度〔η0(P)〕を上げることができる。後述する実施例に記載の製造例6の製造条件によって下限0.01×10-13付近のη0/Mw3.4を、製造例4の製造条件によって上限2.5×10-13付近のη0/Mw3.4を得ることができる。
【0034】
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のように測定する。
測定温度200℃にて、せん断粘度(η*)の角速度ω(rad/秒)分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定には粘弾性測定装置(たとえば、後述する実施例では、アントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301)を用いて、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)のサンプル厚さを約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択する。
せん断粘度測定に用いるエチレン-α-オレフィン共重合体(A)のサンプルは、成形機を用い(たとえば、後述する実施例では、(株)神藤金属工業所製プレス成形機を用いた。)、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製する。
【0035】
ゼロせん断粘度(η0)は、下記式のCarreauモデルを非線形最小自乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
η*=η0〔1+(λω)a〕(n-1)/a
〔λは時間の次元を持つパラメーター、aはフィッティングパラメータ、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。〕
なお、非線形最小自乗法によるフィッティングは、下記式におけるdが最小となるように行う。
【0036】
【0037】
〔ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。〕
【0038】
重量平均分子量(Mw)等は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のように測定する。
検出器には示差屈折計およびキャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としてはo-ジクロロベンゼンを用い、流量を1.0mL/分とし、試料濃度は0.1質量%とし、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いる。
なお、後述する実施例では、測定装置としてAgilent社製GPC-粘度検出器(GPC-VISCO)PL-GPC220を用い、分析カラムにはAgilent PLgel Olexisを2本用い、標準ポリスチレンには、東ソー(株)製のものを用いた。分子量計算は、粘度計および屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn、および、Mz/Mw)を求める。
【0039】
≪要件(5)≫
(5)示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在し、かつ、測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が10mJ以上200mJ以下の範囲にあり、好ましくは55mJ以上200mJ以下、より好ましくは80mJ以上200mJ以下、さらに好ましくは120mJ以上200mJ以下の範囲にある。
示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在する場合、比較的低密度のポリエチレンであっても高融点の成分を有する。また、115℃以上の融解熱量は、115℃付近の温度条件下における未溶融の成分量に対応している。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が10mJ以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の耐熱性が良好であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が200mJ以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の機械的強度が良好である。
【0040】
示差走査熱量測定(DSC)は、示差走査熱量計を用い(たとえば、後述する実施例ではパーキンエルマー社製Diamond DSCを用いた。)、下記のように行う。
試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、10℃/分で-30℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温する際の吸熱曲線を得る。この吸熱曲線が2つ以上のピークを持つことが、示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線に複数個のピークが存在することを意味する。
また、115℃以上の融解熱量の算出は、上記吸熱曲線上の100℃と160℃の2点を通るベースラインを引き、115℃以上の温度領域におけるベースラインと吸熱曲線から得られる積分値をもとに計算する。
【0041】
DSCにおける融解曲線のピーク数および115℃以上の融解熱量は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(T)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比を増減させることによって調整可能である。
【0042】
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、好ましくは、さらに下記要件(6)および(7)に示すような特性を有している。
【0043】
≪要件(6)≫
(6)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-2)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776・・・(Eq-2)
上記極限粘度〔[η](dl/g)〕と重量平均分子量(Mw)とは、好ましくは、以下関係式(Eq-2’)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.40×10-4×Mw0.776・・・(Eq-2’)
上記極限粘度〔[η](dl/g)〕と重量平均分子量(Mw)とは、より好ましくは、以下関係式(Eq-2”)を満たす。
0.70×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.30×10-4×Mw0.776・・・(Eq-2”)
【0044】
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度〔[η](dl/g)〕が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。そのため、極限粘度〔[η](dl/g)〕が1.65×10-4×Mw0.776以下の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、多数の長鎖分岐を有しており、成形性、流動性に優れる。
【0045】
極限粘度〔[η](dl/g)〕は、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(T)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を上げることによって、極限粘度〔[η](dl/g)〕を上げることができる。後述する実施例に記載の製造例6の製造条件によって下限0.70×10-4×Mw0.776付近の極限粘度〔[η](dl/g)〕を、製造例7の製造条件によって上限1.65×10-4×Mw0.776付近の極限粘度〔[η](dl/g)〕を得ることができる。
極限粘度〔[η](dl/g)〕はデカリン溶媒を用い、以下のように測定する。
【0046】
測定サンプル約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求める。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
重量平均分子量(Mw)は、上述の要件(4)に記載の方法で測定する。
【0047】
≪要件(7)≫
(7)1H-NMRにより測定されたビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数(以下、単に「ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数」ともいう。)が0.1以上1.0以下の範囲にある。
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、好ましくは下記関係式(Eq-3’)を満たす。
0.2≦ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数≦1.0・・・(Eq-3’)
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、より好ましくは、下記関係式(Eq-3”)を満たす。
0.3≦ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数≦1.0・・・(Eq-3”)
【0048】
ポリマー中のビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの個数は1H-NMR法によって測定される、ポリマー中に含まれる1000個の炭素数あたりの個数である。ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの生成量比ならびに個数は、用いる遷移金属化合物によって増減することが知られている(H.SAIKI, S.MAKOTO, T.MASAO, S.MORIHIKO, Y.AKIHIRO, J. Polym. Sci., A: Polym. Chem., 38, 4641 (2000))。これらは、後述のオレフィン重合用触媒(X)の成分(T)または固体状担体(S)の種類によって調整可能である。また、同じオレフィン重合用触媒(X)を使用する場合であっても重合条件または重合プロセスによって調整可能であり、例えばエチレン分圧を増減させることによっても、増減させることが可能である。
【0049】
ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数が0.1以上の場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)において長鎖分岐が生成しやすく、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物は、成形性に優れる。また、ビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数が1.0以下の場合は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物は、成形時の溶融膜が酸化されにくくなり、ヒートシール性に優れ、また発泡体の透明性や機械的強度に優れる。
【0050】
1H-NMR(500MHz)により測定されたビニル、ビニリデン、2置換内部オレフィン、および、3置換内部オレフィンの合計個数は、核磁気共鳴装置(たとえば、後述する実施例では、Bruker社製AVANCE III(クライオプローブ)型核磁気共鳴装置)を用いて、以下のように測定する。
測定モードはシングルパルス、パルス幅45°とする。ポイント数は32k、観測範囲は20ppm(-6~14ppm)、繰り返し時間は7秒で積算回数は64回とする。試料は20mgをオルトジクロロベンゼン-d 40.6mLに溶解させた後、120℃にて測定する。
1H-NMRスペクトルにおいて、4.5ppm~5.8ppmにおける各種二重結合(ビニル、ビニリデン、内部オレフィン)由来のシグナル積分値より算出した二重結合数および全1Hシグナルの総積分値より算出した全炭素数の相対値を求め、ポリマー炭素1000個当たりの各種二重結合数を算出する。
【0051】
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、バイオマス由来モノマー(エチレン、α-オレフィン)を含んでいてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーが、バイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。
上記バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、14C同位体を1×10-12~1×10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなるエチレン-α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0052】
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、ケミカルリサイクル由来モノマー(例えば、エチレン、α-オレフィンなど)を含んでいてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーが、ケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと、化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーと、を含んでもよい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)がケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるため、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の原料モノマーとしてケミカルリサイクル由来モノマーが含まれていても、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるエチレン-α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0053】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造方法>
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造方法としては、効率的に重合が行えるという観点から、好ましくは、下記成分からなるオレフィン重合用触媒(X)の存在下、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとを重合する方法である。以下、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造方法に用いられるオレフィン重合用触媒(X)の詳細について説明する。
【0054】
≪オレフィン重合用触媒(X)≫
オレフィン重合用触媒(X)は、以下の成分(T)および固体状担体(S)を含んでなる。
【0055】
〔成分(T)〕
成分(T)は、下記式(1)で表される遷移金属化合物(以下「遷移金属化合物(1)」ともいう。)である。オレフィン重合用触媒(X)は、遷移金属化合物(1)を少なくとも1種含む。すなわち、成分(T)として、遷移金属化合物(1)を1種用いてもよく、複数種用いてもよい。
【0056】
【0057】
上記式(1)において、Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
【0058】
上記式(1)において、nは遷移金属化合物(1)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、好ましくは2である。
上記式(1)において、Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または共役ジエン系誘導体基であり、好ましくはハロゲン原子または炭素数1~20の炭化水素基である。
【0059】
上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素である。
【0060】
上記炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)などの芳香族を含有する直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter-フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基である。
【0061】
上記炭素数1~20の炭化水素基は、上記炭素数1~20の炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された、ハロゲン置換炭化水素基であってもよく、その例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、が挙げられ、好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
【0062】
上記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられ、好ましくはトリメチルシリルメチル基である。
【0063】
上記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基である。
【0064】
上記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基などが挙げられる。
【0065】
上記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基などが挙げられ、好ましくは1,3-ブタジエニル基、1,3-ペンタジエニル基である。
上記式(1)において、Qは炭素原子またはケイ素原子であり、好ましくはケイ素原子である。
【0066】
上記式(1)において、R1~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基または炭素数1~20の窒素含有基であり、好ましくは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有基である。
【0067】
R1~R14としての炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、ペンタフルオロフェニルメチル基などの芳香族を含有する直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter-フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基;
フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基などの、上記炭素数1~20の炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された、ハロゲン置換炭化水素基;
が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、アリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、tert-フェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基、ペンタフルオロフェニル基である。
【0068】
R1~R14としての炭素数1~20のケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基が挙げられる。
【0069】
R1~R14としての炭素数1~20の酸素含有基は、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基である。
【0070】
R1~R14としての炭素数1~20の窒素含有基は、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ジメチルアミノメチル基、ベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられ、好ましくはアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基である。
【0071】
上記式(1)において、R1~R6のうちの隣接した置換基同士(例:R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、およびR5とR6)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(上記インデニル環部分の炭化水素を除く)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、上記環は、より好ましくは5又は6員環であり、この場合、上記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環、シクロペンタテトラヒドロナフタレン環が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環が好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0072】
上記式(1)において、R7~R12のうちの隣接した置換基同士(例:R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、およびR11とR12)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(上記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、上記環は、より好ましくは5又は6員環であり、この場合、上記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環、シクロペンタテトラヒドロナフタレン環、テトラヒドロフルオレン環、フルオレン環が挙げられ、ベンゾインデニル環、テトラヒドロインダセン環が好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0073】
上記式(1)において、R13とR14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、これらの環は置換基を有していてもよい。この場合に形成される環は、置換基を有していてもよい3~8員環の飽和または不飽和環を形成することが好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは4~6員環であり、この場合、Qと併せた構造として、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、フルオレン環、シラシクロブタン(シレタン)環、シラシクロペンタン(シロラン)環、シラシクロヘキサン(シリナン)環、シラフルオレン環が挙げられ、シクロペンタン環、シラシクロブタン環、シラシクロペンタン環であることが好ましい。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0074】
以下に遷移金属化合物(1)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
便宜上、上記遷移金属化合物(1)のMXn(金属部分)で表される部分を除いたリガンド構造を、2-インデニル環部分、1-インデニル環部分、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基、インデニル環部分R2、R5、R9およびR12置換基、インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基、1-インデニル環部分R7置換基、架橋部分の構造の7つに分ける。2-インデニル環部分の略称をα、1-インデニル環部分の略称をβ、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基の略称をγ、インデニル環部分R2、R5、R9およびR12置換基の略称をδ、インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基の略称をε、1-インデニル環部分R7置換基の略称をζ、架橋部分の構造の略称をηとし、各置換基の略称を[表1]~[表7]に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
なお、上記[表1]~[表2]中の波線は架橋部分との結合部位を示す。
【0078】
【0079】
上記[表3]中のR1、R6およびR8置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0080】
【0081】
上記[表4]中のR2、R5、R9およびR12置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0082】
【0083】
上記[表5]中のR3、R4、R10およびR11置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0084】
【0085】
【0086】
金属部分MXnの具体的な例示としては、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2-tBu)2、Zr(1,3-ブタジエニル)、Zr(1,3-ペンタジエニル)、Zr(2,4-ヘキサジエニル)、Zr(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Zr(CH2-Si(Me)3)2、Zr(ОMe)2、Zr(ОiPr)2、Zr(NMe2)2、Zr(ОMs)2、Zr(ОTs)2、Zr(ОTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、HfI2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2-tBu)2、Hf(1,3-ブタジエニル)、Hf(1,3-ペンタジエニル)、Hf(2,4-ヘキサジエニル)、Hf(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Hf(CH2-Si(Me)3)2、Hf(ОMe)2、Hf(ОiPr)2、Hf(NMe2)2、Hf(ОMs)2、Hf(ОTs)2、Hf(ОTf)2などが挙げられる。Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert-ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、ОMeはメトキシ基、ОiPrはiso-プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、ОMsはメタンスルホナート基、ОTsはp-トルエンスルホナート基、ОTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
【0087】
上記の表記に従えば、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-5、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-1、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-30、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-38、1-インデニル環部分R12置換基が[表4]中のδ-3、架橋部分が[表7]中のη-20の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZrCl2の場合は、下記式[6]で表される化合物を例示している。
【0088】
【0089】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-2、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-2、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、架橋部分が[表7]中のη-4の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZr(NMe2)2の場合は、下記式[7]で表される化合物を例示している。
【0090】
【0091】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-2、インデニル環部分R2、R5およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-12、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-1、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-42、1-インデニル環部分R10置換基が[表5]中のε-3、1-インデニル環部分R11置換基が[表5]中のε-12、架橋部分が[表7]中のη-31の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがHfMe2の場合は、下記式[8]で表される化合物を例示している。
【0092】
【0093】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2置換基が[表4]中のδ-7、2-インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基がいずれも[表5]中のε-1、2-インデニル環部分R5置換基が[表4]中のδ-2、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-9、1-インデニル環部分R9およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、架橋部分が[表7]中のη-29の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZr(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[9]で表される化合物を例示している。
【0094】
【0095】
上記遷移金属化合物(1)は、従来公知の方法を利用して製造することができ、特に製造方法が限定されるわけではない。
出発物質である置換インデン化合物は、公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば、「Оrganometallics 1994,13,954.」、「Оrganometallics 2006,25,1217.」、特表2006-509059号公報、「Bioorg.Med.Chem. 2008,16,7399.」、WО2009/080216号公報、「Оrganometallics 2011,30,5744.」、特表2011-500800号公報、「Оrganometallics 2012,31,4962.」、「Chem.Eur.J. 2012,18,4174.」、特開2012-012307号公報、特開2012-121882号公報、特開2014-196319号公報、特表2014-513735号公報、特開2015-063495号公報、特開2016-501952号公報、特開2019-059933号公報などに開示された製造方法が挙げられる。
【0096】
遷移金属化合物(1)および前駆体化合物(配位子)の公知の製造方法としては、例えば、「Macromolecules 2001,34,2072.」、「Macromolecules 2003,36,9325.」、「Organometallics 2004,23,5332.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2005,1003.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2009,1759.」などが挙げられる。
また、上記遷移金属化合物(1)は、架橋部分を挟んで中心金属と結合するインデニル環部分の面が2方向存在する(表面と裏面)。故に、2-インデニル環部分に対称面が存在しない場合、一例として下記一般式[10a]あるいは[10b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0097】
【0098】
同様に、架橋部分の置換基R13とR14が同一でない場合にも、一例として下記一般式[11a]あるいは[11b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0099】
【0100】
これら構造異性体混合物の精製、分取、あるいは構造異性体の選択的な製造は、公知の方法によって可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法としては、上記遷移金属化合物(1)の製造方法として挙げたものの他に、特開平10-109996号公報、「Оrganometallics 1999,18,5347.」、「Оrganometallics 2012,31,4340.」、特表2011-502192号公報などに開示された製造方法が挙げられる。
【0101】
なお、上記遷移金属化合物(1)の範囲内で、遷移金属化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、構造異性体混合物を用いてもよく、構造異性体を1種単独で用いてもよく、2種以上の構造異性体混合物を用いてもよい。オレフィン重合用触媒を構成する遷移金属化合物として上記遷移金属化合物(1)を使用した場合、長鎖分岐が多く導入されたエチレン系重合体を高い触媒活性で製造することができる。また、この効果が損なわれない範囲で、上記遷移金属化合物として上記遷移金属化合物(1)とは別の1種以上の遷移金属化合物を併用してもよい。この際、遷移金属化合物(1)は上記のいずれの態様であってもよい。
【0102】
〔固体状担体(S)〕
オレフィン重合用触媒(X)に含まれる固体状担体(S)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0103】
上記固体状担体(S)として用いられる無機化合物としては、多孔質酸化物、固体状アルミノキサン化合物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられる。
【0104】
上記多孔質酸化物としては、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3およびSiO2-TiO2-MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
なお、上記多孔質酸化物には、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0105】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、固体状担体(S)としては、粒径が通常0.2~300μm、好ましくは1~200μmであって、比表面積が通常50~1200m2/g、好ましくは100~1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3~30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して用いられる。
上記固体状アルミノキサン化合物としては、下記一般式(S-a)で表される構造のアルミノキサン、下記一般式(S-b)で表される構造のアルミノキサン、および下記一般式(S-c)で表される繰り返し単位と下記一般式(S-d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンなどが挙げられる。
【0106】
【0107】
上記式(S-a)~(S-d)において、Reは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができ、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、Reの一部が塩素や臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率がReを基準として40重量%以下であってもよい。上記式(S-c)および(S-d)中の、片方が原子と繋がっていない直線は、図示していない別の原子との結合を示す。
【0108】
上記式(S-a)および(S-b)中、rは2~500、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の整数を示す。上記式(S-c)および(S-d)中、sおよびtはそれぞれ1以上の整数を示す。r、sおよびtは、上記アルミノキサンが、用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持できるように、選択される。
【0109】
上記固体状アルミノキサン化合物は、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分、および、ポリエチレンやポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものである。「固体状」とは、アルミノキサン成分が、用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、後述のように上記成分(T)とアルミノキサン成分とを接触させてオレフィン重合用触媒(例:エチレン重合用触媒)を調製する際、および調製されたオレフィン重合用触媒を用いてオレフィン(例:エチレン)の重合(たとえば懸濁重合)を行う際に、アルミノキサン成分が実質的に固体状態を維持することである。
【0110】
上記アルミノキサン成分が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において上記アルミノキサン成分の一部が多少溶出したとしてもよい。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、嵩密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマー嵩密度が好ましい。上記嵩密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0111】
上記固体状アルミノキサン化合物の、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対する溶解割合は、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲にある。
【0112】
上記溶解割合は、25℃に保持された50mLのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン化合物担体2gを加えてから2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フイルターを用いて溶液部を分離し、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求められる。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する上記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定される。
【0113】
上記固体状アルミノキサン化合物としては、公知の固体状アルミノキサンを制限なく用いることができ、たとえば国際公開第2014/123212号に記載された固体状ポリアルミノキサン組成物を用いることもできる。公知の製造方法としては、例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開第2010/55652号などに記載された製造方法が挙げられる。
【0114】
上記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、一般に0.01~50,000μm、好ましくは0.1~1,000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。まず、各粒子の粒径dは、粒子像を水平方向、垂直方向それぞれに2本の平行線ではさんで長さを測り、下式により求められる。
粒径d=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)2)0.5
【0115】
次に、固体状アルミノキサン化合物の重量平均粒子径は、上記で求めた粒径dと粒子個数nとを用いて下式により求められる。
平均粒子径=Σnd4/Σnd3
上記固体状アルミノキサン化合物は、比表面積が50~1,000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
【0116】
上記無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2などが挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0117】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0118】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
【0119】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
【0120】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3~5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~3×104Åの範囲について測定される。半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0121】
粘土および粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、いずれも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理や有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0122】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これら化合物は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。また、これら化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
【0123】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
上記固体状担体(S)として用いられる有機化合物としては、例えば、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。上記有機化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素原子数が2~14のオレフィンを主成分として生成される重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主成分として生成される重合体や反応体、およびそれらの変成体からなる顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。
上記固体状担体(S)としては、成形時の異物防止の観点から、多孔質酸化物が好ましい。
【0125】
〔成分(C)〕
オレフィン重合用触媒(X)は、好ましくは、さらに成分(C)を含んでよく、成分(C)は下記一般式(3)~(5)で表される有機金属化合物(c-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)、ならびに、成分(T)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0126】
Ra
mAl(ORb)nHpXq ・・・(3)
式(3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0127】
MaAlRa
4 ・・・(4)
式(4)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示す。
【0128】
Ra
rMbRb
sXt ・・・(5)
式(5)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示し、MbはMg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。
【0129】
上記有機金属化合物(c-1)の中では、上記式(3)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;
ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジヒドロフェニルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ヘプチルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ノニルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド;
ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイドなどのジアルキルアルミニウムアルコキサイド
などが挙げられる。
【0130】
上記式(4)の例としては、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられ、上記式(5)の例としては、特開2003-171412号公報などに記載されたジアルキル亜鉛化合物などが挙げられ、フェノール化合物などと組合せて用いることもできる。
【0131】
上記有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサン、例えばメチルアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0132】
上記成分(T)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物などを用いることができる。
【0133】
オレフィン重合用触媒(X)では、助触媒成分としてメチルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示すだけでなく、固体状担体中の活性水素と反応し助触媒成分を含有した固体担体成分を容易に調製できるため、成分(C)は、少なくとも有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)を含むことが好ましい。
【0134】
〔各成分の使用方法および添加順序〕
オレフィン重合用触媒(X)は、成分(T)および成分(S)、ならびに任意に成分(C)を不活性炭化水素中で混合し接触させることにより、調製することができる。
各成分を接触させる方法としては、接触の順序に着目すると、例えば、
(i) 成分(S)に成分(T)を接触させる方法
(ii) 成分(S)に成分(C)を接触させ、次いで成分(T)を接触させる方法
(iii) 成分(T)に成分(C)を接触させ、次いで成分(S)を接触させる方法
(iv) 成分(S)に成分(C)を接触させ、次いで成分(T)と成分(C)との混合物を接触させる方法、
(v) 成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させ、次いで成分(T)と成分(C)との混合物を接触させる方法
などが挙げられる。成分(C)が複数種用いられる場合は、その成分(C)同士が同一であっても異なっていてもよい。上記の方法のうち(i)、(ii)および(iii)が好ましい。
【0135】
上記接触順序形態を示した各方法において、成分(S)と成分(C)との接触を含む工程、および成分(S)と成分(T)との接触を含む工程においては、成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングが抑制されたり、生成重合体の粒子性状が改善されたりする。成分(G)としては、極性官能基を有する化合物を用いることができ、非イオン性(ノニオン)界面活性剤が好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロック、高級脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸がより好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
オレフィン重合用触媒(X)の調製に用いる溶媒としては、不活性炭化水素溶媒が挙げられ、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0137】
成分(C)と成分(S)との接触においては、成分(C)中の反応部位と成分(S)中の反応部位との反応により化学的に結合され、成分(C)と成分(S)との接触物が形成される。成分(C)と成分(S)との接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは30分~10時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-20~120℃で行われる。成分(C)と成分(S)との初期接触を急激に行うと、その反応発熱や反応エネルギーにより成分(S)が崩壊し、得られる固体触媒成分のモルフォロジーが悪化し、これを重合に用いた場合、ポリマーモルフォロジー不良により連続運転が困難になることが多い。そのため、成分(C)と成分(S)との接触初期は、反応発熱を抑制する目的で、より低温で接触させる、または、反応発熱を制御し、初期接触温度を維持可能な速度で反応させることが好ましい。また、成分(C)と成分(S)を接触させ、さらに成分(C)を接触させる場合においても同様である。成分(C)と成分(S)との接触質量比(成分(C)の質量/成分(S)の質量)は、任意に選択できるが、接触質量比が高いほうが、より多くの成分(T)を接触させることができ、固体触媒成分の質量当たりの触媒活性を向上させることができる。
【0138】
成分(C)と成分(S)の接触質量比[=成分(C)の質量/成分(S)の質量]は、好ましくは0.05~3.0、特に好ましくは、0.1~2.0である。
成分(C)と成分(S)との接触物と、成分(T)とを接触させる際には、接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは1分~10時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-50~100℃の範囲内である。
【0139】
成分(C-1)は、成分(C-1)と成分(T)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-1)/M]が、通常0.01~100,000、好ましくは0.05~50,000となるような量で用いられる。
【0140】
成分(C-2)は、成分(C-2)(アルミニウム原子換算)と成分(T)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-2)/M]が、通常10~500,000、好ましくは20~100,000となるような量で用いられる。
【0141】
成分(C-3)は、成分(C-3)と成分(T)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(C-3)/M]が、通常1~10、好ましくは1~5となるような量で用いられる。
【0142】
なお、成分(C)と成分(T)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP分析法)により求めることができる。エチレン重合には、オレフィン重合用触媒(X)をそのまま用いることができるが、このオレフィン重合用触媒にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒(XP)を形成してから用いることもできる。
【0143】
予備重合触媒(XP)は、オレフィン重合用触媒(X)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、エチレン等を予備重合させることにより調製することができ、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても実施することができ、また減圧、常圧あるいは加圧下、いずれでも行うことができる。さらに、予備重合によって、固体触媒成分1g当り0.01~1000g、好ましくは0.1~800g、さらに好ましくは0.2~500gの量で予備重合触媒(XP)を生成することが望ましい。
【0144】
不活性炭化水素溶媒中で生成した予備重合触媒(XP)を懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にエチレンを導入してもよく、また、乾燥させた後エチレンを導入してもよい。
【0145】
予備重合温度は、-20~80℃、好ましくは0~60℃であり、また予備重合時間は、0.5~100時間、好ましくは1~50時間程度である。予備重合には、好ましくはエチレンを主成分とするオレフィンが用いられる。
【0146】
予備重合に使用する固体触媒成分の形態としては、既に述べたものを制限無く利用できる。また、必要に応じて成分(C)が用いられ、上記式(3)で示される有機金属化合物(c-1)が好ましく使用される。成分(C)が用いられる場合は、成分(C)は、成分(C)中のアルミニウム原子(Al)と成分(T)中の遷移金属原子(M)とのモル比(Al/M)が、0.1~10000、好ましくは0.5~5000となる量で用いられる。
【0147】
予備重合系におけるオレフィン重合用触媒(X)の濃度は、オレフィン重合用触媒/重合容積比で、通常1~1000グラム/リットル、さらには10~500グラム/リットルであることが望ましい。予備重合時には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、上記の成分(G)を共存させてもよい。
【0148】
また、予備重合触媒(XP)の流動性改善や重合時のヒートスポット・シーティングやポリマー塊の発生抑制を目的に、予備重合によって一旦生成させた予備重合触媒(XP)に成分(G)を接触させてもよい。
【0149】
上記成分(G)を接触させる際の温度は、通常-50~50℃、好ましくは-20~50℃であり、接触時間は、通常1分~20時間、好ましくは5分~10時間である。
オレフィン重合用触媒(X)と成分(G)とを接触させるに際して、成分(G)は、オレフィン重合用触媒(X)100質量部に対して、0.1~20質量部、好ましくは0.3~10質量部、より好ましくは0.4~5質量部の量で用いられる。
【0150】
オレフィン重合用触媒(X)と成分(G)との混合接触は、不活性炭化水素溶媒中で行うことができ、不活性炭化水素溶媒としては、上記と同様のものが挙げられる。
後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造方法において、オレフィン重合用触媒(X)として、予備重合触媒(XP)を乾燥させたもの(以下「乾燥予備重合触媒」ともいう。)を用いることができる。予備重合触媒(XP)の乾燥は、通常、得られた予備重合触媒の懸濁液から濾過などにより分散媒である炭化水素を除去した後に行われる。
【0151】
予備重合触媒(XP)の乾燥は、予備重合触媒(XP)を不活性ガスの流通下、70℃以下、好ましくは20~50℃の範囲の温度に保持することにより行われる。得られた乾燥予備重合触媒の揮発成分量は2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下であることが望ましい。乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、少ないほどよく、特に下限はないが、実用的には0.001質量%である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが通常1~48時間である。
【0152】
上記乾燥予備重合触媒は、流動性に優れているので、重合反応器へ安定的に供給することができる。また、上記乾燥予備重合触媒を使用すると、気相重合系内に懸濁に用いた溶媒を同伴させずに済むため安定的に重合を行うことができる。
【0153】
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造方法としては、上述したオレフィン重合用触媒(X)の存在下、エチレンを重合(単独重合または共重合)することによりエチレン-α-オレフィン共重合体(A)を得ることが好ましい。オレフィン重合用触媒(X)を用いることで、高い重合活性を持って、成形加工性および機械的強度に優れ、数多くの長鎖分岐を有する低密度のエチレン系重合体を効率的に製造できる。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)は、重合体中のエチレン含量が好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上である。
【0154】
エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の重合方法としては、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、懸濁重合法および気相重合法においては上記予備重合触媒(XP)を用いることが好ましい。
【0155】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素溶媒の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素およびこれらの混合物等が挙げられる。また、液相重合法においては、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0156】
上記オレフィン重合用触媒を用いて、エチレンの重合を行うに際して、オレフィン重合用触媒(X)の成分(T)は、反応容積1リットル当たり、通常1×10-12~1×10-1モル、好ましくは1×10-8~1×10-2モルになるような量で用いられる。また、オレフィン重合用触媒(X)は成分(C)を含むことが好ましく、特に(c-1)中の式(3)に示される有機アルミニウム化合物を含むことがより好ましい。
【0157】
また、上記予備重合触媒(XP)を用いたエチレンの重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~170℃、特に好ましくは60~170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧~100kgf/cm2、好ましくは常圧~50kgf/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られる重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。一般的に低分子量成分が多くなるほど、重合反応器壁や撹拌翼への付着も多くなり、清掃工程への負荷がかかることにより生産性の低下を招くことがある。重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目的として、オレフィン重合用触媒(X)中に成分(G)を共存させることができる。
【0158】
また、共重合反応にエチレンと共に供給されるα-オレフィンモノマーは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、好ましくは炭素数6~10のα-オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーである。炭素数が4~10のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲でエチレンおよび炭素数4~10のα-オレフィン以外のモノマーを供給してもよく、供給しなくてもよい。
【0159】
<その他の熱可塑性樹脂>
本発明の発泡体は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂(以下「その他の熱可塑性樹脂」と記載する。)を含んでいてもよい。
その他の熱可塑性樹脂としては、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外のポリオレフィン(以下、「その他のポリオレフィン」ともいう。)、エチレン-不飽和エステル系共重合体、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタール等の結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレート等の非結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリ塩化ビニルも好ましく挙げられる。また、その他の熱可塑性樹脂は、バイオマス由来モノマーまたはケミカルリサイクル由来モノマーを含む、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸またはポリカーボネートであってもよい。
【0160】
上記その他のポリオレフィンとしては、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外のエチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン系重合体、高密度ポリエチレン、非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体、等が挙げられ、中でも非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外のエチレン-α-オレフィン共重合体、および高密度ポリエチレンが好ましい。
上記非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも特に、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、およびエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。
【0161】
上記非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
非晶性または低結晶性α-オレフィン系共重合体の市販品としては、三井化学(株)製のタフマー(登録商標)Pシリーズ、タフマーAシリーズ、タフマーDFシリーズ、タフマーPNシリーズ、タフマーBLシリーズ等が挙げられる。
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外のエチレン-α-オレフィン共重合体は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)以外のエチレン-α-オレフィン共重合体の市販品としては、(株)プライムポリマー製のエボリュー(登録商標)シリーズ、ウルトゼックス(登録商標)シリーズ、ネオゼックス(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
上記高密度ポリエチレンは合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
高密度ポリエチレンの市販品としては、(株)プライムポリマー製のハイゼックス(登録商標)シリーズ、エボリュー(登録商標)Hシリーズ等が挙げられる。
【0162】
上記その他のポリオレフィンは、それぞれ、バイオマス由来モノマーを含むポリオレフィンであってもよい。上記その他のポリオレフィンを構成するモノマーが、バイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。
上記その他のポリオレフィンは、それぞれ、ケミカルリサイクル由来モノマーを含むポリオレフィンであってもよい。上記その他のポリオレフィンを構成するモノマーが、ケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと、化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーと、を含んでもよい。
【0163】
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)とその他の熱可塑性樹脂とのブレンド比率は特に限定されないが、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の質量分率(WA)と上記その他の熱可塑性樹脂の質量分率(WB)の合計を100質量%として、好ましくはWAが50~99質量%の範囲内であり、より好ましくはWAが70~99質量%の範囲内である。エチレン-α-オレフィン共重合体(A)とその他の熱可塑性樹脂のブレンド比率が該範囲内の場合、本発明の発泡体は、機械的強度と耐熱性のバランスが良好である。
【0164】
<添加剤>
本発明の発泡体は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0165】
上記添加剤の総配合量は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、一般的には20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0166】
本発明の発泡体は、必要に応じて、架橋剤を含んでもよい。
架橋剤としては、例えば、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノン又はその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、硫黄系化合物、有機過酸化物、およびフェノール樹脂が好ましい。
【0167】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、その例としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0168】
本発明の発泡体は、必要に応じて、架橋助剤を含んでもよい。
架橋助剤とは、エチレン系共重合体を加熱により架橋する際に、架橋剤とともに配合することで架橋反応触媒として作用する化合物である。
【0169】
架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;その他マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼンが挙げられる。これらのなかでも、アリル系架橋助剤が好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
【0170】
上記発泡剤の具体例としては、後述する発泡体の製造方法に記載の発泡剤が挙げられる。
【0171】
本発明の発泡体は、必要に応じて、発泡剤とともに発泡助剤を含んでもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用を有する。
発泡助剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0172】
[発泡体]
本発明の発泡体は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物を発泡させることで製造することができる。
上記発泡体は、非架橋発泡体であってもよく、架橋発泡体であってもよいが、架橋発泡体であることが好ましい。
【0173】
<発泡体の製造方法>
上記発泡体の製造方法としては、発泡体が得られる限り、いかなる方法を用いてもよいが、例えば以下の製造方法が挙げられる。
【0174】
(1)押出発泡法
押出機のホッパーに上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物を入れ、これらの融点付近の温度で押し出す際に、押出機の途中に設けられた圧入孔から物理的発泡剤を圧入して、所望の形状の口金から押し出すことにより発泡体を連続的に得ることができる。物理的発泡剤としては、例えば、フロン、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびシクロヘキサンなどの揮発性発泡剤、窒素、空気、水および炭酸ガスなどの無機ガス系発泡剤が用いられる。また、押出発泡に際し、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよび酸化マグネシウムなどの気泡核形成剤を添加してもよい。
【0175】
物理的発泡剤の配合割合は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物100質量部に対し、通常0.5~60質量部、好ましくは0.5~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。物理的発泡剤の配合割合が上記範囲を下回ると、発泡体の発泡倍率が低下する傾向にあり、上記範囲を超えると発泡体の強度が低下する傾向にある。
気泡核形成剤の配合割合は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物100質量部に対し、通常0.5~60質量部、好ましくは0.5~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。気泡核形成剤の配合割合が上記範囲を下回ると、発泡体の発泡倍率が低下する傾向にあり、上記範囲を超えると発泡体の強度が低下する傾向にある。
【0176】
(2)熱分解型発泡剤を用いた発泡法
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物、熱分解型発泡剤、および必要に応じてその他の添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサーおよびロールなどの混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練した後、一般的にはこれをシート状に成形する。
【0177】
次いで、該シートを発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させると発泡体を得ることができる。熱分解型発泡剤は、樹脂の加熱溶融時に分解してガスを発生するものであれば特に制限はなく、一般の有機系または無機系の化学発泡剤が使用できる。
【0178】
具体的には、アゾジカルボンアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリルおよびジアゾアミノベンゼンなどのアゾ系化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびp-トルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびN,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミドなどのニトロソ化合物、テレフタルアジドおよびp-t-ブチルベンズアジドなどのアジド化合物、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムなどの炭酸化合物が挙げられ、これらの少なくとも一種が用いられる。この中でもアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)および炭酸化合物が好ましい。
【0179】
熱分解型発泡剤の配合割合は、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物100質量部に対し、通常1~50質量部、好ましくは2~25質量部である。熱分解型発泡剤の配合割合が上記範囲を下回ると、発泡体の発泡倍率が低下する傾向にあり、上記範囲を超えると発泡体の強度が低下する傾向にある。
【0180】
(3)圧力容器中での発泡法
上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物をプレス機や押出機によりシート状またはブロック状などの形状に成形する。次いで、該成形体を圧力容器内に投入し、物理的発泡剤を十分に成形体中に溶解させた後、減圧することにより発泡体を製造する。また、該成形体を投入した圧力容器内に、常温で物理的発泡剤を充満させてから加圧し、減圧後、取り出して、オイルバスやオーブンなどで加熱して発泡させることも可能である。
【0181】
(4)架橋剤を用いた発泡法
本発明では、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)または該共重合体(A)を含む樹脂組成物を予め架橋しておけば、架橋発泡体を得ることができる。一般的な架橋方法としては、樹脂中での有機ペルオキシドなどの架橋剤の加熱分解による架橋、電離性放射線の照射による架橋、多官能モノマー存在下での電離性放射線照射による架橋、およびシラン架橋などが挙げられる。
架橋発泡体の製造方法については特に制限はないが、たとえば以下のような方法により製造することができる。
【0182】
まず、上記エチレン-α-オレフィン共重合体(A)、発泡剤および有機ペルオキシドなどの架橋剤からなる樹脂組成物を、カレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いてシート成形する。このシート成形時においては、発泡剤および有機ペルオキシドなどの架橋剤の分解温度以下でシート成形することが好ましく、具体的には、例えば100~130℃の、樹脂成分が溶融状態となる温度条件に設定してシート成形することが好ましい。
【0183】
上記方法によって得られた樹脂組成物のシートを、130~200℃に保持された金型に、金型の容積に対して1.0~1.2体積%の範囲に裁断して、金型内に挿入し、金型の型締め圧力を30~300kgf/cm2とし、保持時間10~90分の条件下で、一次発泡体(架橋発泡体)を作製する。なお保持時間は、金型の厚さに依存するため、この範囲を超えて、適宜増減され得る。
【0184】
上記架橋発泡体用金型は、その形状は特に制限はされないが、通常シートが得られるような形状を有している金型が用いられる。この金型は、溶融樹脂および発泡剤分解時に発生するガスが抜けないように、完全に密閉された構造とすることが好ましい。また、型枠としては、内面にテーパーが付いている型枠が樹脂の離型性の面から好ましい。
【0185】
また上記方法以外にも、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物を押出し機から押出し、大気中に解放すると同時に発泡させる押出し発泡法により、本発明の一実施形態に係る架橋発泡体を製造することもできる。
【0186】
また、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物を、発泡剤および架橋剤の分解温度以下で金型内に射出して、金型内で例えば130℃~200℃程度の温度に保って架橋発泡させる方法(射出発泡法)も挙げることができる。
【0187】
また、電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得るには、たとえば、有機系熱分解型発泡剤である発泡剤、およびエチレン-α-オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物を、有機系熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物を、たとえばシート状に成形し、未架橋のシート状の発泡体を得る。次いで、得られた未架橋のシート状の発泡体に電離性放射線を所定量照射してシート状の発泡体を架橋させた後、得られたシート状の架橋発泡体を必要に応じてさらに有機系熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、シート状の架橋発泡体を得ることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。
【0188】
発泡体の製品形状としては、たとえばシート状、厚物ボード状、ネット状、型物などが挙げられる。上記のようにして得られた架橋発泡体について、圧縮成形により所定の形状の付与を行うことにより二次発泡体を製造することができる。このときの圧縮成形条件は、たとえば、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0の範囲である。
【0189】
上記のような製造法のなかでも、本発明の発泡体は、架橋発泡体であることが好ましい。
【0190】
本発明の発泡体は、床材、建装材、包装梱包材、自動車内装材、日用雑貨品、マット、
シートおよびスポーツ用品などに好適に用いられる。
【実施例0191】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0192】
[原料の物性測定および評価]
以下の実施例等において、エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の各種物性は、[発明を実施するための形態]に記載の方法で測定した。
【0193】
[発泡体の測定]
<発泡倍率>
JIS K7222に従って発泡体の比重を測定し、該発泡体に使用したエチレン-α-オレフィン共重合体(A)の比重を発泡体の比重で除することで、各発泡体の発泡倍率を算出した。サンプルは、後述する架橋発泡体については、最大面積の平面の四辺からそれぞれ20mm以上内部、また該平行平面の表面からスキンを残した状態でサンプリングした。また、押出発泡法によりシート状に成形した発泡体(非架橋発泡体)については、該シートの両端から20mm以上内部からサンプリングした。
【0194】
<引裂強度>
JIS K6252に従い、23℃環境下、試験速度500mm/minで、引裂強度を測定した。なお、押出発泡法によりシート状に成形した発泡体(非架橋発泡体)については、引取方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて引裂強度を測定した。
【0195】
<引張破壊応力>
JIS K6301に従い、23℃環境下、試験速度200mm/minで引張破壊応力を測定した。なお、押出発泡法によりシート状に成形した発泡体(非架橋発泡体)については、引取方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて引張破壊応力を測定した。
【0196】
<加熱収縮率(110℃×22h)>
成形後の発泡体(架橋発泡体)を110℃環境にて22時間熱処理し、23℃環境下に取り出し30分後に測定した。また、熱収縮率(Sh)(%)は、以下の式により算出した。
Sh=s1/s0×100
s0:熱処理前のサンプル縦長さ(mm)
s1:熱処理後のサンプル縦長さ(mm)
【0197】
<加熱収縮率(110℃×30min)>
押出発泡法によりシート状に成形した発泡体(非架橋発泡体)を幅10mm×長さ100mmの短冊状にカットして、MD試験片およびTD試験片を得た。各試験片を110℃のエアオーブンに入れ、30分間加熱し、試験片の長さを確認した。以下の式に基づき、MD方向およびTD方向について加熱収縮率を算出した。
MD方向の加熱収縮率(%)={加熱前のMD試験片の長さ(100mm)-加熱後のMD試験片の長さ(mm)}/100mm×100
TD方向の加熱収縮率(%)={加熱前のTD試験片の長さ(100mm)-加熱後のTD試験片の長さ(mm)}/100mm×100
【0198】
[使用原料]
実施例等で使用した遷移金属化合物(T)、および成分(G)は以下の通りである。
遷移金属化合物(T-1):ジメチルシリレン(2-インデニル)(4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド[特開2019-059933号公報記載の方法によって合成した。]
成分(G-1):ラウリルジエタノールアミン(花王(株)製)
【0199】
<予備重合触媒(XP-1)の合成>
内容積270Lの撹拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、固体状担体(S)として、富士シリシア(株)製シリカ(平均粒子径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃焼成)10kgを77Lのトルエンに懸濁させた後、0~5℃に冷却した。この懸濁液に成分(C)として、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)20.4Lを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95~100℃まで昇温して、引き続き95~100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量58.0Lのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:248.0g/L、Al濃度:1.21mol/Lであった。
【0200】
次いで、充分に窒素置換した内容積114Lの撹拌機付き反応器に、上記で得られたトルエンスラリーを6.1Lおよびトルエン21.9Lを装入し、遷移金属化合物(T-1)の8mMトルエン溶液を5.4L加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量30.9Lのスラリーを調製した。得られたスラリーを10~15℃に調整しながら、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.92Mヘキサン溶液を3.1L添加し、エチレンガスを0.74kg/hの流量で供給を開始し、1-ヘキセンを34.3mL添加した後昇温を開始し、系内温度を32~38℃に調整しながら、1時間ごとに計5回、1-ヘキセンを34.3mL添加し、エチレン供給を開始してから6時間後にエチレン供給量が4.5kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、系内を充分に窒素置換し、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、全量21.9Lのスラリーを調製した。得られたスラリーを35~40℃で維持しながら、成分(G-1)の10g/Lヘキサン溶液を6.1L添加し、2時間接触させた。得られたスラリーを全量、内容積43Lの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下で挿入した後、乾燥機内を約60分かけて-68kPaGまで減圧し、-68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。
さらに-100kPaGまで減圧し、-100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合触媒(XP-1)6.2kgを得た。得られた予備重合触媒(XP-1)の一部を採取し、組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たりZr原子が0.56mg含まれていた。
【0201】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(A)の製造>
[製造例1]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(A-1)の製造)
流動層型気相重合反応器を用いた気相重合プロセスによりエチレン系重合体((エチレン-α-オレフィン共重合体(A-1))の製造を行った。反応器に予め平均粒子径900μmの球状のエチレン重合体粒子24kgを導入し、窒素を供給して、流動床を形成させた後、表8に示す重合条件にて定常状態になるようにエチレン、水素、1-ヘキセン、予備重合触媒(XP-1)、およびエレクトロストリッパー(登録商標)EA(花王(株)製)などを連続的に供給した。重合反応物は反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-1)のパウダーを得た。
得られた共重合体(A-1)のパウダーに、これを基準として、耐熱安定剤としてスミライザーGP(住友化学(株)製)850ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)製)210ppmを加え、(株)池貝製の二軸同方向46mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを作製した。
【0202】
[製造例2~6]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(A-2)~(A-6)の製造)
重合条件を表8に記載のとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-2)~(A-6)のパウダーを得た。
得られた共重合体(A-2)~(A-6)のパウダーをそれぞれ用い、製造例1に記載の方法と同様にして、ペレットを作製した。
なお、表8には、製造例1では使用しなかった成分としてケミスタット(登録商標)2500(三洋化成工業(株)製)が記載されている。
【0203】
[製造例7~8]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)~(A-8)の製造)
重合条件を表8に記載のとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)~(A-8)のパウダーを得た。
得られた共重合体(A-7)のパウダーについて、(株)神戸製鋼所製の二軸異方向100mmφ押出機を用い、押出量364kg/h、スクリュー回転数351rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてペレットを作製した。
共重合体(A-8)のパウダーについても、上記と同様の方法により、ペレットを作製した。
【0204】
[製造例9~10]
(エチレン-α-オレフィン共重合体(A-9)~(A-10)の製造)
重合条件を表8に記載のとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-9)~(A-10)のパウダーを得た。
得られた共重合体(A-9)~(A-10)のパウダーをそれぞれ用い、製造例1に記載の方法と同様にして、ペレットを作製した。
【0205】
【0206】
<重合体の物性測定>
[エチレン-α-オレフィン共重合体(A-1)~(A-10)]
上記で作製したペレットを用いて、物性測定を行った。測定結果を表9に示す。
【0207】
[エチレン系重合体(a-11)]
エチレン系重合体(a-11)として高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製の「サンテックM1820」)を用いた。エチレン系重合体(a-11)の測定結果を表9に示す。
【0208】
【0209】
上記表9において、融解ピークの全融解熱量を「融解熱量_全体」、115℃以上の融解熱量を「融解熱量≧115℃」として示す。
【0210】
<発泡体評価>
架橋発泡体
[実施例1]
上記で作製したエチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部に対し、架橋剤としてジクミルペルオキシド(DCP)を1.05質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]を0.1質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を2.5質量部、酸化チタン(TiO2)を3質量部、酸化亜鉛(ZnO)を3質量部、およびステアリン酸(St)を1質量部配合して得た樹脂組成物を、ロールにより、ロール表面温度120℃で、10分間混練し、シート状に成形した。
【0211】
得られたシートをプレス金型(金型サイズ:縦140mm、横65mm、厚み10mm)に充填し、180kgf/cm2、170℃の条件で、15分間加圧および加熱することで、架橋発泡体を得た。なお、架橋発泡体は脱圧時に発泡し、厚みは15mm以上となった。
【0212】
得られた架橋発泡体の、発泡倍率、加熱収縮率(110℃×22h)、引裂強度および引張破壊応力を上記方法に従って測定した。結果を表10に示す。
【0213】
[実施例2]
アゾジカルボンアミド(ADCA)を5.0質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0214】
[実施例3]
エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部の代わりに、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-8)ペレット100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0215】
[実施例4]
エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部の代わりに、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-8)ペレット100質量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0216】
[実施例5]
エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部の代わりに、エチレン-α-オレフィン共重合体(A-10)ペレット100質量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0217】
[比較例1]
エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部の代わりに、エチレン系重合体(a-11)ペレット100質量部を用い、ジクミルペルオキシド(DCP)を0.75質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0218】
[比較例2]
アゾジカルボンアミド(ADCA)を5.0質量部用いたこと以外は、比較例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表10に示す。
【0219】
【0220】
非架橋発泡体
[実施例6]
上記で作製したエチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部に対し、気泡核形成剤として炭酸カルシウムマスターバッチ[商品名 MFP-CLLAR(炭酸カルシウム含有量80%)、三福工業(株)製]を20質量部、発泡剤として無機ガス系発泡剤マスターバッチ[商品名 ポリスレンEE205、永和化成工業(株)製]を2質量部配合し、ドライブレンドすることで、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、
図1に示す装置および下記の条件で、押出発泡法によりシート状の非架橋発泡体を作製した。得られた非架橋発泡体の、発泡倍率、加熱収縮率(110℃×30min)、引裂強度および引張破壊応力を上記方法に従って測定した。結果を表11に示す。
(条件)
押出機:芝浦機械(株)製二軸押出機 TEM-41SS(商品名)
ダイス部形状:環状ダイス
ダイス部寸法:65mm
押出量:40kg/h
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー設定温度:160℃
ダイ部設定温度:160℃
炭酸ガス供給量: 150g/h
【0221】
[実施例7]
炭酸ガス供給量を200g/hとしたこと以外は、実施例6と同様にして非架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表11に示す。
【0222】
[実施例8]
炭酸ガス供給量を250g/hとしたこと以外は、実施例6と同様にして非架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表11に示す。
【0223】
[比較例3]
エチレン-α-オレフィン共重合体(A-7)ペレット100質量部の代わりに、エチレン系重合体(a-11)ペレット100質量部を用い、シリンダー設定温度およびダイス部設定温度を130℃としたこと以外は、実施例8と同様にして非架橋発泡体の製造ならびに物性測定を行った。結果を表11に示す。
【0224】
【0225】
比較例1~3に用いたエチレン系重合体(a-11)は、高圧法低密度ポリエチレンである。重合体(a-11)の、示差走査熱量測定(DSC)により得られた融解曲線は単一のピークであり、測定試料5mgあたりの115℃以上の融解熱量が、要件(5)で規定する「10mJ以上200mJ以下」の範囲外であった。
【0226】
表10に示されるとおり、実施例1~5のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む架橋発泡体は、比較例1および2のエチレン系重合体(a-11)を含む架橋発泡体よりも機械的強度・耐熱性のバランスに優れることが分かる。
また、表11に示されるとおり、実施例6~8のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む非架橋発泡体は、比較例3のエチレン系重合体(a-11)を含む非架橋発泡体よりも機械的強度・耐熱性が優れることが分かる。