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特開2024-82287車両整備用リフトのアーム装置及びそれを用いた受具の位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082287
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両整備用リフトのアーム装置及びそれを用いた受具の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/28 20060101AFI20240613BHJP
   B66F 7/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B66F7/28 D
B66F7/28 B
B66F7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196001
(22)【出願日】2022-12-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テレスコ
(71)【出願人】
【識別番号】390018326
【氏名又は名称】株式会社スギヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 敬知
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(57)【要約】
【課題】装置の体格を大型化することなく受具の昇降範囲を拡大し、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範に対応可能な車両整備用リフトのアーム装置及びそれを用いた受具の位置決め方法を提供する。
【解決手段】車両整備用リフトのアーム装置1は、アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアーム2と、アーム2のアーム先端部2aで車体を受けるための受具5と、を備えるものであって、受具5が上端に設けられ且つ受具5を垂直に昇降する受金装置としての受金アタッチメント4と、アーム2のアーム先端部2aと受金アタッチメント4との間に設けられ、受金アタッチメント4をアーム2に対して水平姿勢で昇降する平行リンク機構としてのリンク機構3と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアームと、前記アームの先端部で車体を受けるための受具と、を備える車両整備用リフトのアーム装置であって、
前記受具が上端に設けられ且つ前記受具を垂直に昇降する受金装置と、
前記アームの前記先端部と前記受金装置との間に設けられ、前記受金装置を前記アームに対して水平姿勢で昇降する平行リンク機構と、
を備える、車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項2】
前記受金装置の昇降ストロークは、前記平行リンク機構の昇降ストローク以上に設定される、請求項1に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項3】
前記受金装置は、筒状のベースと、前記ベース内で上下移動可能であり且つ上端に前記受具が取付けられる柱状の調整ラックと、前記調整ラックを所定の上下位置で前記ベースに対して解除可能に係止する係止部材と、を備える、請求項1又は2に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項4】
前記平行リンク機構は、前記アームの前記先端部に固定される固定リンクと、前記固定リンクに対して一端が回動自在に軸支される第1揺動リンクと、前記第1揺動リンクに対して前記アーム長手方向先端側に間隔を隔てて平行に配置されて前記固定リンクに対して一端が回動自在に軸支される第2揺動リンクと、前記固定リンクに対して平行に配置されて前記第1、第2揺動リンクの各々の他端が回動自在に軸支される中間リンクと、を備えて構成され、
前記受金装置は、前記中間リンクに対して固定される、請求項1又は2に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項5】
前記中間リンクと一体的に設けられる台座部材を、さらに備え、
前記受金装置は、前記台座部材に対して着脱自在に装着される、請求項4に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項6】
前記平行リンク機構を所定の起立姿勢で解除可能にロックするロック機構を、さらに備え、
前記平行リンク機構は、前記所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とのいずれかのみに切り替え可能に構成される、請求項4に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項7】
前記ロック機構は、前記第1揺動リンクと前記中間リンクとを軸支する一のシャフトと同軸に回動自在に軸支される一端と、開放端である他端とを有し、前記他端に爪部が設けられるロック片を備え、
前記平行リンク機構が前記所定の起立姿勢のとき、前記ロック片の前記爪部は、前記第2揺動リンクと前記固定リンクとを軸支する他のシャフトの外周に係合され、
前記平行リンク機構が前記所定の倒伏姿勢のとき、前記ロック片の前記爪部は、前記他のシャフトの外周に非係合とされる、請求項6に記載の車両整備用リフトのアーム装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両整備用リフトのアーム装置を用いて前記受具を車体下部のジャッキポイントへ位置決めする方法であって、
前記ジャッキポイントの高さに応じて、前記平行リンク機構を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定する姿勢設定工程、及び前記アームにより前記受具を前記ジャッキポイントの真下へ水平移動させる移動工程を任意の順番で行う第1工程と、
前記第1工程の後、前記受具が前記ジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように前記受金装置を高さ調整する第2工程と、
前記第2工程の後、前記アームを上昇させて前記受具を前記ジャッキポイントの下面に当接させる第3工程と、
を有する、受具の位置決め方法。
【請求項9】
前記第1工程では、前記姿勢設定工程を行った後、前記移動工程を行う、請求項8に記載の受具の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両整備用リフトのアーム装置及びそれを用いた受具の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両整備用リフトにおいては、車体の4つのジャッキポイントをアーム先端の受具で支持して自動車を持ち上げる。これらのジャッキポイントは、タイヤ交換等に際しジャッキを当てる箇所であるが、ジャッキポイントまでの高さは車種により異なるため、受具の高さを調整する必要があるという課題がある。
【0003】
このような課題に鑑みて、従来、アームと、アームの先端部で車体を受ける受具と、受具を水平な姿勢でアームに対し昇降可能に支持する平行クランク機構と、受具の高さを調整するカムとからなるアーム装置が提案されている(特許文献1参照。)。この従来技術によれば、アームの先端部に平行クランク機構を介し受具を支持し、この受具の高さをカムで調整することにより、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範囲に適用できるとともに、受具の高さを簡単な操作で短時間に調整できる。
【0004】
また、アームの先端に筒体を設け、受具の下面に設けた支柱を筒体に上下動自在に嵌挿し、支柱の外周に鋸歯を形成し、ばね力により支柱の鋸歯のいずれかの凹部に先端が係止する係止爪を筒体に設けた受金装置が提案されている(特許文献2参照。)。この従来技術によれば、アームの先端の筒体に嵌挿してある受具を車体のジャッキポイントの下に位置付け、受具の支柱を筒体内の収納位置から引き出して受台の上面溝をジャッキポイントに係合させた後、リフトテーブルを上昇させて車両をリフトアップすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3759848号公報
【特許文献2】特開2009-208961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、乗り込みし易い低床車からオフロード走行可能なSUV等の高床車まで車両のバリエーションが広がっており、車両整備用リフトにおいても、車体のジャッキポイントが低い車両から高い車両まで一層広範囲に対応可能であることが要求されるようになっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される平行クランク機構を用いた従来技術のアーム装置では、要求される仕様に対して受具の昇降ストロークが不足している。一方、昇降ストロークを拡大するためには平行クランク機構をアーム長手方向へ従来よりも長くする必要があり、装置全体の体格の大型化を招くことになる。
【0008】
一方、特許文献2に開示される受具の下面に設けた支柱を筒体に上下動自在に嵌挿する構造では、昇降ストロークを拡大するために筒体の高さを大きくする必要があるが、筒体の高さが大きくなると受具の下限高さが上昇してしまい、ジャッキポイントの低い車両に適用できなくなる恐れがある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、装置の体格を大型化することなく受具の昇降範囲を拡大し、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範に対応可能な車両整備用リフトのアーム装置及びそれを用いた受具の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両整備用リフトのアーム装置は、アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアームと、前記アームの先端部で車体を受けるための受具と、を備える車両整備用リフトのアーム装置であって、前記受具が上端に設けられ且つ前記受具を垂直に昇降する受金装置と、前記アームの前記先端部と前記受金装置との間に設けられ、前記受金装置を前記アームに対して水平姿勢で昇降する平行リンク機構と、を備える。
【0011】
この構成によれば、互いに昇降原理の異なる平行リンク機構及び垂直昇降可能な受金装置の2種類の昇降機構を併用し、平行リンク機構による昇降及び受金装置による昇降の全体で大きな昇降ストロークを実現することができると共に、平行リンク機構のアーム長手方向のサイズ抑制と、受金装置の高さ方向のサイズ抑制とを図ることができる。よって、装置の体格を大型化することなく受具の昇降範囲を拡大し、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範に対応可能な車両整備用リフトのアーム装置を提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、前記受金装置の昇降ストロークは、前記平行リンク機構の昇降ストローク以上に設定される。
【0013】
この構成によれば、受金装置の昇降ストロークが平行リンク機構の昇降ストローク以上に設定されるので、平行リンク機構が所定の倒伏姿勢にあるときの受金装置による昇降範囲と、平行リンク機構が所定の起立姿勢にあるときの受金装置による昇降範囲とが切れ目無く連続しており、受具の昇降範囲における下限位置から上限位置までの全範囲を網羅することができる。
【0014】
また、前記受金装置は、筒状のベースと、前記ベース内で上下移動可能であり且つ上端に前記受具が取付けられる柱状の調整ラックと、前記調整ラックを所定の上下位置で前記ベースに対して解除可能に係止する係止部材と、を備える。
【0015】
この構成によれば、上端に受具が取付けられる柱状の調整ラックが、筒状のベース内で上下方向に移動することで、受具を垂直に昇降することができると共に、係止部材によって調整ラックを所定の上下位置でベースに対して解除可能に係止することで受具を所望の高さに設定することができる。
【0016】
また、前記平行リンク機構は、前記アームの前記先端部に固定される固定リンクと、前記固定リンクに対して一端が回動自在に軸支される第1揺動リンクと、前記第1揺動リンクに対して前記アーム長手方向先端側に間隔を隔てて平行に配置されて前記固定リンクに対して一端が回動自在に軸支される第2揺動リンクと、前記固定リンクに対して平行に配置されて前記第1、第2揺動リンクの各々の他端が回動自在に軸支される中間リンクと、を備えて構成され、前記受金装置は、前記中間リンクに対して固定される。
【0017】
この構成によれば、平行リンク機構は、固定リンクに対して各々の一端が回動自在に軸支された第1、第2揺動リンクを略水平に倒伏させることで所定の倒伏姿勢となって、第1、第2揺動リンクの各々の他端が回動自在に軸支された中間リンクが低位置に設定されると共に、中間リンクに固定される受金装置が低位置に設定される。一方、平行リンク機構は、第1、第2揺動リンクを倒伏姿勢から所定角度起立させることで所定の起立姿勢となって、中間リンクに固定される受金装置が高位置に設定される。
【0018】
また、前記中間リンクと一体的に設けられる台座部材を、さらに備え、前記受金装置は、前記台座部材に対して着脱自在に装着される。
【0019】
この構成によれば、受金装置を着脱するための台座部材を中間リンクと一体的に設けたので、受金装置を中間リンクに対して着脱自在としつつ、受金装置の装着時における装置の高さ抑制を図ることができる。
【0020】
また、前記平行リンク機構を所定の起立姿勢で解除可能にロックするロック機構を備え、前記平行リンク機構は、前記ロック機構により前記所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とにのみ切り替え可能である。
【0021】
また、前記平行リンク機構を所定の起立姿勢で解除可能にロックするロック機構を、さらに備え、前記平行リンク機構は、前記所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とのいずれかのみに切り替え可能に構成される。
【0022】
この構成によれば、ロック機構により平行リンク機構を所定の起立姿勢で解除可能にロックすることができると共に、平行リンク機構が所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とのいずれかのみに切り替え可能とすることで構造の簡単化を図りつつ、受金装置による昇降を併用することで受具の高さ位置の正確な調整が可能となる。
【0023】
また、前記ロック機構は、前記第1揺動リンクと前記中間リンクとを軸支する一のシャフトと同軸に回動自在に軸支される一端と、開放端である他端とを有し、前記他端に爪部が設けられるロック片を備え、前記平行リンク機構が前記所定の起立姿勢のとき、前記ロック片の前記爪部は、前記第2揺動リンクと前記固定リンクとを軸支する他のシャフトの外周に係合され、前記平行リンク機構が前記所定の倒伏姿勢のとき、前記ロック片の前記爪部は、前記他のシャフトの外周に非係合とされる。
【0024】
この構成によれば、ロック機構を平行リンク機構内に収容可能なコンパクトな構造としつつ、ロック片により平行リンク機構における所定の起立姿勢のロックと解除とを確実に行うことができる。
【0025】
本発明に係る受具の位置決め方法は、上述した車両整備用リフトのアーム装置を用いて前記受具を車体下部のジャッキポイントへ位置決めする方法であって、前記ジャッキポイントの高さに応じて、前記平行リンク機構を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定する姿勢設定工程、及び前記アームにより前記受具を前記ジャッキポイントの真下へ水平移動させる移動工程を任意の順番で行う第1工程と、前記第1工程の後、前記受具が前記ジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように前記受金装置を高さ調整する第2工程と、前記第2工程の後、前記アームを上昇させて前記受具を前記ジャッキポイントの下面に当接させる第3工程と、を有する。
【0026】
この方法によれば、第1工程では、姿勢設定工程で平行リンク機構を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定すると共に、移動工程でアームにより受具をジャッキポイントの真下へ水平移動させることで、ジャッキポイントに対する位置決めの準備を迅速に行うことができる。次に、第2工程で、受具がジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように受金装置を正確に高さ調整することができる。このとき、第1工程で平行リンク機構が所定の起立姿勢に設定されている場合、受具の高さが既に嵩上げされているので、受金装置による高さ調整が容易となる。最後に、第3工程で、アームを上昇させて受具をジャッキポイントの下面に当接させることにより、受具の位置決めが完了する。従って、受具のジャッキポイントへの位置決めを迅速且つ正確に行うことができるという効果を奏する。
【0027】
また、前記第1工程では、前記姿勢設定工程を行った後、前記移動工程を行う。
【0028】
この方法によれば、平行リンク機構を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定した後、アームにより受具をジャッキポイントの真下へ水平移動させるので、ジャッキポイントの真下で平行リンク機構の姿勢設定をやり直すことなく効率的に位置決め作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構起立、調整ラック上限)の全体構成を示す斜視図である。
図2図1においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図3図1においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図4図1において受金アタッチメントを取り外した状態のアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図5】受金アタッチメント(調整ラック上限)を示す側面図である。
図6図5の受金アタッチメントにおける断面図である。
図7】受金アタッチメント(調整ラック下限)を示す側面図である。
図8図7の受金アタッチメントにおける断面図である。
図9】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構倒伏、調整ラック下限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図10図9においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図11】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構倒伏、調整ラック上限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図12図11においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図13】車両整備用リフトのアーム装置(リンク機構起立、調整ラック下限)においてアーム先端部周辺を示す斜視図である。
図14図13においてアーム先端部周辺を示す側面図である。
図15】アーム先端部周辺(リンク機構倒伏)を示す断面図である。
図16】アーム先端部周辺(リンク機構起立、ロック状態)を示す断面図である。
図17】アーム先端部周辺(リンク機構起立、ロック解除)を示す断面図である。
図18】受具の位置決め方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る車両整備用リフトのアーム装置を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0031】
<車両整備用リフトのアーム装置1の構成>
最初に、本発明の実施形態に車両整備用リフトのアーム装置1の構成について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。図1は車両整備用リフトのアーム装置1(リンク機構3起立、調整ラック42上限)の全体構成を示す斜視図、図2はアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図3はその側面図、図4は受金アタッチメント4を取り外した状態のアーム先端部2a周辺を示す斜視図である。図5は受金アタッチメント4(調整ラック42上限)を示す側面図、図6はその断面図である。図7は受金アタッチメント4(調整ラック42下限)を示す側面図、図8はその断面図である。
【0032】
車両整備用リフトのアーム装置1は、整備対象である車両の昇降を行う車両整備用リフトに設けられるスイングアーム等と称される装置である。車両整備用リフトには、1柱式、2柱式又はXリンク式等の各種があり、これらの車両整備用リフトには、アーム装置1が図示しない昇降台の4カ所に装備され、4つのジャッキポイントで車体を支持するようになっている。
【0033】
車両整備用リフトのアーム装置1(以下、単にアーム装置1とも称する)は、図1乃至図8に示すように、アーム2と、リンク機構3と、受金アタッチメント4と、を備えて構成される。
【0034】
アーム2は、アーム長手方向に延在して基端側が垂直な回動軸回りに昇降台に取付けられて水平方向に旋回可能である。また、アーム2は、複数のアーム部材がテレスコ式に重ねて配置されてアーム長手方向に伸縮可能に構成されている。また、アーム2は、長手方向先端から所定長さに亘って、長手方向と直交する幅方向の長さが他の部位よりも幅狭に形成されたアーム先端部2aを備える。
【0035】
リンク機構3は、一対の固定リンク30,30と、一対の第1揺動リンク31,31と、一対の第2揺動リンク32,32と、一対の中間リンク33,33と、ロック機構34と、アタッチメント用台座39と、を備えて構成される。尚、一対の固定リンク30,30と、一対の第1揺動リンク31,31と、一対の第2揺動リンク32,32と、一対の中間リンク33,33とは、一対の中間リンク33,33を固定リンク30,30に対して昇降可能に連結するものであって、本発明の平行リンク機構を構成している。リンク機構3において、第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32が平行リンク機構の駆動リンク又は従動リンクとして、一対の固定リンク30,30が同じく固定リンクとして、一対の中間リンク33,33が同じく中間リンクとしてそれぞれ作用する。
【0036】
一対の固定リンク30,30は、アーム先端部2aにおいて幅方向の外側両側面にそれぞれ固定されるリンク部材であって、アーム長手方向先端側に向かって水平に延設されている。
【0037】
一対の第1揺動リンク31,31は、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを連結するリンク部材である。一対の第1揺動リンク31,31は、基端が一対の固定リンク30,30のアーム長手方向中央上部で幅方向内側の両側面に、幅方向に沿って配置されるシャフト31aを介して連結され、先端が一対の中間リンク33,33の基端側端部で、幅方向に沿って配置されるシャフト31bを介して連結される。
【0038】
一対の第2揺動リンク32,32は、一対の第1揺動リンク31,31よりもアーム長手方向先端側へ所定間隔離れた位置で、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを連結するリンク部材であって、支点間距離は一対の第1揺動リンク31,31と同一に設定されている。一対の第2揺動リンク32,32は、基端が一対の固定リンク30,30のアーム長手方向先端近傍の下部で幅方向外側の両側面に、幅方向に沿って配置されるシャフト32aを介して連結され、先端が一対の中間リンク33,33の先端側端部でシャフト32b,32bを介して連結される。
【0039】
一対の中間リンク33,33は、一対の第1揺動リンク31,31と一対の第2揺動リンク32,32とを連結するリンク部材である。一対の中間リンク33,33は、アーム長手方向基端側でシャフト31bを介して一対の第1揺動リンク31,31の先端に連結され、アーム長手方向先端側でシャフト32b,32bを介して一対の第2揺動リンク32,32の先端に連結されている。一対の中間リンク33,33間には、アタッチメント用台座39が固定されている。
【0040】
そして、4つのシャフト31a,31b,32a,32bは、平行四辺形を形成し、一対の固定リンク30,30と一対の中間リンク33,33とを常に平行関係に保持する。これにより、一対の中間リンク33,33間に設けられるアタッチメント用台座39並びに、これに装着される受金アタッチメント4及び受具5が、アーム2の水平状態で第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32の揺動に伴い水平な姿勢で昇降するようになっている。
【0041】
ロック機構34は、リンク機構3を所定の起立姿勢に保持したり解除したりするための機構であって、ロック片35と、ねじりバネ36と、解除レバー37とを備えて構成される。
【0042】
ロック片35は、アーム長手方向に延在する略角柱片であって、一端がシャフト31bと同軸に回動自在に取付けられ、他端が開放端となっている。開放端には、シャフト32aの外周面に整合する湾曲状の端面を有する爪部35aが形成されている。
【0043】
ねじりバネ36は、シャフト31bに同軸に取付けられてロック片35の開放端側を下回りにアーム長手方向先端側へ付勢する。
【0044】
解除レバー37は、側面視クランク状の部材であって、ピン37aを介して中間リンク33に回動可能に軸支されている。解除レバー37において一方の中間リンク33の上方に位置するアーム長手方向先端側の一端を押し下げるとピン37aを中心に回動し、他端がロック片35をねじりバネ36の付勢力に抗してアーム長手方向基端側へ押圧することで爪部35aとシャフト32a外周面との係合を解消し、リンク機構3における起立姿勢のロック状態を解除する作用をする。
【0045】
リンク機構3が所定の起立姿勢のとき、爪部35aが設けられる開放端側が斜め下向きとなってシャフト32aの外周面に爪部35aが係合することで、リンク機構3が所定の起立姿勢に保持、すなわちロックされる。一方、リンク機構3が倒伏姿勢のとき、ロック片35は略水平となって一対の第1揺動リンク31,31間に形成された空間内に収容される。
【0046】
アタッチメント用台座39は、受金アタッチメント4を着脱自在に装着するための台座部材であって、平面視で四隅が丸みを帯びた長方形状を呈するブロック体からなる。アタッチメント用台座39は、装着穴39aが平面視中央に形成されている。装着穴39aは、上下方向に貫通する円筒状の穴であって、受金アタッチメント4のベース41における小径の下半部が上方から挿入される。そして、ベース41の大径の上半部において、下半部より径外方向に張り出した部分の下面がアタッチメント用台座39の上面に載置されることで、受金アタッチメント4が着脱自在に装着される。アタッチメント用台座39は、一対の中間リンク33,33間に配置され、幅方向外側の両側面において一対の中間リンク33,33の幅方向内側の両側面に固定される。
【0047】
受金アタッチメント4は、受具5を垂直方向に(すなわち垂直軸に沿って)昇降させるテレスコ式の受金装置であって、アタッチメント用台座39に着脱自在に装着される。受金アタッチメント4は、ベース41と、調整ラック42と、ガイド部材43と、係止爪レバー44と、を備えて構成される。
【0048】
ベース41は、アタッチメント用台座39に対して取付け可能な筒状体である。ベース41は、第1開口部41aと、第1開口部41aより内径の狭い第2開口部41bとが設けられており、これらの間に段部41cが形成されている。第2開口部41bの上端側には、レバー用溝41dがアーム長手方向に設けられている。このレバー用溝41d 内には、後述する係止爪レバー44を回動自在に軸支する軸41eが設けられている。
【0049】
調整ラック42は、ベース41内で上下移動する部材であって、上端に受具5を備える。調整ラック42は、軸部分の外径がベース41の第2開口部41bの内径とほぼ同じ大きさで、外周に多条の鋸歯42aが形成されており、内側には中空部42bが形成された筒状の部材である。
【0050】
この調整ラック42の先端部42cには、ボルト45が螺合するネジ孔42dを設けた凹部が形成されており、この先端部42cを受具用台座46の孔46aに差し込んだ状態で固着され、受具用台座46と一体になっている。
【0051】
ガイド部材43は、軸部分の外径が調整ラック42の中空部42bの内径とほぼ同じ大きさの筒状の部材で、軸部分の内部には、ボルト45の軸部が、ガイド部材43の軸心を貫通するように保持され、他端である頭部が係止する係止部43aが設けられている。
【0052】
また、係止爪レバー44は、鋸歯42aに係止する係止爪44aと、軸41eを挿入する軸孔44bとで構成され、軸41eに取り付けられる巻きバネ44cの一方を係止爪レバー44に係止し、他方をベース41のレバー用溝41dに係止することで、係止爪レバー44を押し上げる力が常に付勢される。
【0053】
受具用台座46は、受具5を固定する板材である。受具用台座46は、受具5を取り付けた後、四隅の孔51,51・・に対応する位置に図示しないネジ孔が設けられており、図示しないネジが螺合される。
【0054】
ここで、受金アタッチメント4(具体的には調整ラック42)の昇降ストロークをA、リンク機構3の昇降ストロークをBとしたとき、AはB以上(A≧B)に設定される。このように設定されることで、リンク機構3が所定の倒伏姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲と、リンク機構3が所定の起立姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲とが切れ目無く連続することになる。尚、A=Bの場合は、リンク機構3が所定の倒伏姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲と、リンク機構3が所定の起立姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲とが重複無く連続し、A>Bの場合は、AとBとの差分(A-B)だけ重複部分を挟んで連続することになる。
【0055】
<受具5の位置決め方法>
次に、車両整備用リフトのアーム装置1における受具5の位置決め方法について、図1図8に加え、図9図17をさらに参照しつつ説明する。図9は車両整備用リフトのアーム装置1(リンク機構3倒伏姿勢、調整ラック42下限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図10はその側面図である。図11はアーム装置1(リンク機構3倒伏姿勢、調整ラック42上限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図12はその側面図である。図13はアーム装置1(リンク機構3起立姿勢、調整ラック42下限)においてアーム先端部2a周辺を示す斜視図、図14はその側面図である。図15はアーム先端部2a周辺のリンク機構3倒伏姿勢を示す断面図、図16は同じくリンク機構3起立姿勢且つロック状態を示す断面図、図17は同じくリンク機構3起立姿勢且つロック解除を示す断面図である。図18は受具5の位置決め方法の流れを示すフローチャートである。尚、図15図17では、受金アタッチメント4の図示を省略している。
【0056】
最初に、受具5の位置決め方法の流れについて、図18のフローチャートを参照しつつ説明する。初期状態において、リンク機構3が倒伏姿勢であり且つ受金アタッチメント4の調整ラック42が下限位置であるとする(図9図10参照)。ベース41内では、鍔部43bが第1開口部41a内壁に当接する一方、第2開口部41b内壁には鋸歯42aが当接している。調整ラック42内の中空部42b内壁には、ガイド部材43の軸部分が当接している。これらによって、調整ラック42(受具5)が、ベース41内で保持された状態となっている。
【0057】
まず、第1工程S1(Sはステップを表す。他のステップも同様。)では、車体のジャッキポイントの高さに応じて、リンク機構3を所定の倒伏姿勢及び所定の起立姿勢のいずれかに設定する(姿勢設定工程)。すなわち、作業者の目視で、リンク機構3起立姿勢且つ調整ラック42下限時における受具5の高さよりもジャッキポイントの高さの方が高いと判断される場合は、リンク機構3を所定の起立姿勢に設定する。尚、上記の場合に該当する車両を、以下の説明では「高床車両」と称することとする。
【0058】
一方、受具5の高さとジャッキポイントの高さとが同等又はジャッキポイントの高さの方が低いと判断される場合は、リンク機構3を所定の倒伏姿勢に設定(つまり、初期状態を維持)する。尚、上記の場合に該当する車両を、以下の説明では「低床車両」と称することとする。
【0059】
さらに、第1工程S1では、アーム2の水平回動及び伸縮の両方又は一方を行うことにより受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させる(移動工程)。ここで、移動工程は、アーム2を所定の待機位置から受具5がジャッキポイントの真下位置まで一度に大きく移動させる場合だけでなく、受具5がジャッキポイントの真下以外の周辺(真下から数cm程度離れた位置)にある状態からジャッキポイントの真下へ僅かな距離を移動させる場合をも含む。
【0060】
尚、姿勢設定工程及び移動工程を行う順番は任意であって何れを先に行ってもよく、両工程を同時に行っても構わない。好ましくは、第1工程S1では、姿勢設定工程を行った後、移動工程を行う。この場合、リンク機構3を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定した後、アーム2により受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させるので、ジャッキポイントの真下でリンク機構3の姿勢設定をやり直すことなく効率的に位置決め作業をすることができる。
【0061】
続いて、第2工程S2では、受具5がジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように受金アタッチメント4を高さ調整する。
【0062】
最後に、第3工程S3では、アーム2を上昇させて受具5をジャッキポイントの下面に当接させる。以上により、受具5のジャッキポイントへの位置決めが完了する。
【0063】
以下、低床車両の場合と高床車両の場合とに分けて、各工程における具体的な作業と各部の作用について説明する。低車両の場合、第3工程S3において、リンク機構3が倒伏姿勢の状態で(図9図10)、受具5をジャッキポイントの高さまで引き出す(図11図12)。
【0064】
この時、受具5の昇降を規制する係止爪44aが鋸歯42aに接触するものの、鋸歯42aの歯の方向が調整ラック42の上昇方向に傾斜していることから、引き出し時に係止爪44aが鋸歯42aに係止することはなく、受具5をそのまま引き出すことが可能となっている。そして、所定の高さまで受具5を引き出したところで反対に押し下げると、係止爪44aが鋸歯42aの溝部分に係止して調整ラック42が固定され、図11及び図12に示す状態となる。この状態で、第4工程S4で、アーム2を上昇させると、受具5がジャッキポイントに当接して車両のリフトアップが行われる。
【0065】
ここで、ベース41内では、ボルト45の軸部が係止部43aに保持されており、軸部の先端はネジ孔42dに螺合され、さらにネジ孔42dから突出した部分には、ナット42eが螺合して抜け止め固定されていることから、調整ラック42がベース41内を上方に移動すると、それに従ってボルト45も係止部43a内を移動することとなる。
【0066】
そして、さらに受具5を引き出すと、ボルト45の頭部が係止部43aに当接し、ガイド部材43が連動して引き上げられることから、第1開口部41a内を移動することとなる。この時、図6に示すように、鍔部43bの段部41cに当接する位置が、受具5を引き出せる高さの上限であり、ベース41からのガイド部材43の上方への脱却を防止する。
【0067】
一方、受具5を降下させる場合には、まずアーム2を下降(車両をリフトダウン)させて受具5がジャッキポイントから離れた状態にする。そして、受具5を僅かに上昇させて、係止爪レバー44が鋸歯42aから離れた状態にした後、係止爪レバー44を押し下げる。すると、係止爪レバー44が軸41eを中心に回転し、係止爪44aがレバー用溝41d内を上方側に移動することとなる。これにより、係止爪レバー44と鋸歯42aとの係止が解除され、調整ラック42を下方へ移動させても、係止爪44aが鋸歯42aに係止することなく、受具5の降下が可能となる。
【0068】
次に、受具5を降下させると、ベース41内では、図6に示す状態から、鋸歯42aが第2開口部41b内壁とガイド部材43外周との間を下方へ移動し、この鋸歯42aの下端がガイド部材43の鍔部43bに当接すると、ガイド部材43も鍔部43bが第1開口部41a内壁に沿って下方へ移動することとなる。
【0069】
そして、図8に示すように、受具5が最も下降した位置では、受具用台座46がガイド部材43の上端縁に当接するが、この時には、第1開口部41aの内壁側下端に抜け止めリング41rが取り付けられており、ガイド部材43が第1開口部41aの外に出ることはない。
【0070】
係止爪レバー44の押し下げを解除すると、巻きバネ44cによって係止爪レバー44を押し上げる力が常に付勢されていることから、係止爪レバー44が鋸歯42aに再度係止し、調整ラック42がベース41内に固定され、図7に示す状態となる。
【0071】
一方、高床車両の場合、まず、受金アタッチメント4の調整ラック42を下限位置とした状態で、第2工程S2でリンク機構3を倒伏姿勢(図9図10)から起立姿勢(図13図14)へ変化させる。
【0072】
具体的には、中間リンク33,33に固定されたアタッチメント用台座39を手で持ち上げると、第1揺動リンク31と第2揺動リンク32とが平行な位置関係を保ちながら、それぞれシャフト31b、シャフト32bが設けられるアーム長手方向の先端側が上回りに回動して起立していく。そして、第1揺動リンク31及び第2揺動リンク32が水平姿勢から30度を超える角度まで回動すると、ロック片35がねじりバネ36の付勢力で下回りにアーム長手方向先端側へ回動して、先端の爪部35aがシャフト32a外周面に係合する。このようにして、リンク機構3が所定の起立姿勢で自動的にロックされ、作業者が手を離してもアタッチメント用台座39が高位置に保持される(図13図14)。
【0073】
続いて、第3工程S3で、受具5をジャッキポイントの高さまで引き出す(図2図3)。受具5を引き出す際の手順や各部の作用は、上記低床車両の場合で述べたとおりであるので、詳細な説明の繰り返しを省略する。同様に、受具5を降下させる際の手順や各部の作用も、上記低床車両の場合で述べたとおりであるので、詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0074】
一方、リンク機構3を起立姿勢(図13図14)から倒伏姿勢(図9図10)へ変化させる場合には、まずアーム2を下降(車両をリフトダウン)させて、受具5がジャッキポイントから離れた状態とする。そして、リンク機構3が所定の起立姿勢でロックされた状態(図16)からアタッチメント用台座39を手でさらに上方へ持ち上げる。すると、突起部31cがアーム先端部2aに設けられたブロック状の規制片2bに当接し(図17参照)、第1揺動リンク31の回動が規制されることによりリンク機構3がそれ以上に起立できない状態となる。この時、爪部35aは、シャフト32a外周面から上方へ離れて、シャフト32aとの係合が解消される。
【0075】
この状態で、解除レバー37のアーム長手方向先端側の一端を押し下げると、解除レバー37はピン37aを中心に下回りに回動し、他端がロック片35をねじりバネ36の付勢力に抗してアーム長手方向基端側へ押圧する。これにより、ロック片35の爪部35aがシャフト32aよりもアーム長手方向基端側に位置してロック状態が解除される(図17)。このため、アタッチメント用台座39を手で下方へ押し下げることによりリンク機構3が倒伏姿勢に変化する(図15)。
【0076】
<実施形態のまとめ>
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態に係る車両整備用リフトのアーム装置1は、アーム長手方向に延在し且つ昇降移動可能なアーム2と、アーム2のアーム先端部2aで車体を受けるための受具5と、を備えるものであって、受具5が上端に設けられ且つ受具5を垂直に昇降する受金装置としての受金アタッチメント4と、アーム2のアーム先端部2aと受金アタッチメント4との間に設けられ、受金アタッチメント4をアーム2に対して水平姿勢で昇降する平行リンク機構としてのリンク機構3と、を備える。
【0077】
この構成によれば、互いに昇降原理の異なるリンク機構3及び垂直昇降可能な受金アタッチメント4の2種類の昇降機構を併用し、リンク機構3による昇降及び受金アタッチメント4による昇降の全体で大きな昇降ストロークを実現することができると共に、リンク機構3のアーム長手方向のサイズ抑制と、受金アタッチメント4の高さ方向のサイズ抑制とを図ることができる。よって、装置の体格を大型化することなく受具5の昇降範囲を拡大し、ジャッキポイントが低い車両から高い車両まで広範に対応可能な車両整備用リフトのアーム装置1を提供することができるという効果を奏する。
【0078】
また、受金アタッチメント4の昇降ストロークは、リンク機構3の昇降ストローク以上に設定される。
【0079】
この構成によれば、受金アタッチメント4の昇降ストロークがリンク機構3の昇降ストローク以上に設定されるので、リンク機構3が所定の倒伏姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲と、リンク機構3が所定の起立姿勢にあるときの受金アタッチメント4による昇降範囲とが切れ目無く連続しており、受具5の昇降範囲における下限位置から上限位置までの全範囲を網羅することができる。
【0080】
また、受金アタッチメント4は、筒状のベース41と、ベース41内で上下移動可能であり且つ上端に受具5が取付けられる柱状の調整ラック42と、調整ラック42を所定の上下位置でベース41に対して解除可能に係止する係止部材としての係止爪レバー44、を備える。
【0081】
この構成によれば、上端に受具5が取付けられる柱状の調整ラック42が、筒状のベース41内で上下方向に移動することで、受具5を垂直に昇降することができると共に、係止爪レバー44及び鋸歯42aによって調整ラック42を所定の上下位置でベース41に対して解除可能に係止することで受具5を所望の高さに設定することができる。
【0082】
また、リンク機構3は、アーム2のアーム長手方向におけるアーム先端部2aに固定される固定リンク30と、固定リンク30に対して一端が回動自在に連結される第1揺動リンク31と、第1揺動リンクに対してアーム長手方向先端側に間隔を隔てて平行に配置されて固定リンク30に対して一端が回動自在に連結される第2揺動リンク32と、固定リンク30に対して平行に配置されて第1、第2揺動リンク31,32の各々の他端が回動自在に連結される中間リンク33と、を備えて構成され、受金アタッチメント4は、中間リンク33に固定される。
【0083】
また、リンク機構3は、アーム2のアーム先端部2aに固定される固定リンク30と、固定リンク30に対して一端が回動自在に軸支される第1揺動リンク31と、第1揺動リンク31に対してアーム長手方向先端側に間隔を隔てて平行に配置されて固定リンク30に対して一端が回動自在に軸支される第2揺動リンク32と、固定リンク30に対して平行に配置されて第1、第2揺動リンク31,32の各々の他端が回動自在に軸支される中間リンク33と、を備えて構成され、受金アタッチメント4は、中間リンク33に対して固定される。
【0084】
この構成によれば、リンク機構3は、固定リンク30に対して各々の一端が回動自在に軸支された第1、第2揺動リンク31,32を略水平に倒伏させることで所定の倒伏姿勢となって、第1、第2揺動リンク31,32の各々の他端が回動自在に軸支された中間リンク33が低位置に設定されると共に、中間リンク33に固定される受金アタッチメント4が低位置に設定される。一方、リンク機構3は、第1、第2揺動リンク31,32を倒伏姿勢から所定角度起立させることで所定の起立姿勢となって、中間リンク33に固定される受金アタッチメント4が高位置に設定される。
【0085】
また、中間リンク33と一体的に設けられる台座部材としてのアタッチメント用台座39を、さらに備え、受金アタッチメント4は、アタッチメント用台座39に対して着脱自在に装着される。
【0086】
この構成によれば、受金アタッチメント4を着脱するためのアタッチメント用台座39を中間リンクと一体的に設けたので、受金アタッチメント4を中間リンク33,33に対して着脱自在としつつ、受金アタッチメント4の装着時における装置の高さ抑制を図ることができる。
【0087】
また、リンク機構3を所定の起立姿勢で解除可能にロックするロック機構34を、さらに備え、リンク機構3は、所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とのいずれかのみに切り替え可能に構成される。
【0088】
この構成によれば、ロック機構34によりリンク機構3を所定の起立姿勢で解除可能にロックすることができると共に、リンク機構3が所定の起立姿勢と所定の倒伏姿勢とのいずれかのみに切り替え可能とすることで構造の簡単化を図りつつ、受金アタッチメント4による昇降を併用することで受具5の高さ位置の正確な調整が可能となる。
【0089】
また、ロック機構34は、第1揺動リンク31と中間リンク33とを連結するシャフト31bと同軸に回動自在に一端が取付けられ且つ開放端である他端に爪部35aが設けられるロック片35を有し、リンク機構3が所定の起立姿勢であるとき、ロック片35は、第2揺動リンク32と固定リンク30とを連結するシャフト32aの外周面に爪部35aが係合する。
【0090】
また、ロック機構34は、第1揺動リンク31と中間リンク33とを軸支する一のシャフト31bと同軸に回動自在に軸支される一端と、開放端である他端とを有し、他端に爪部35aが設けられるロック片35を備え、リンク機構3が所定の起立姿勢のとき、ロック片35の爪部35aは、第2揺動リンク32と固定リンク30とを軸支する他のシャフト32aの外周に係合され、リンク機構3が所定の倒伏姿勢のとき、ロック片35の爪部35aは、他のシャフト32aの外周に非係合とされる。
【0091】
この構成によれば、ロック機構34をリンク機構3内に収容可能なコンパクトな構造としつつ、ロック片35によりリンク機構3における所定の起立姿勢のロックと解除とを確実に行うことができる。
【0092】
本実施形態に係る受具5の位置決め方法は、上述した車両整備用リフトのアーム装置1を用いて受具5を車体下部のジャッキポイントへ位置決めする方法であって、ジャッキポイントの高さに応じて、リンク機構3を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定する姿勢設定工程、及びアーム2により受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させる移動工程を任意の順番で行う第1工程S1と、第1工程S1の後、受具5がジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように受金アタッチメント4を高さ調整する第2工程S2と、第2工程S2の後、アーム2を上昇させて受具5をジャッキポイントの下面に当接させる第3工程S3と、を有する。
【0093】
この方法によれば、第1工程S1では、姿勢設定工程でリンク機構3を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定すると共に、移動工程でアーム2により受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させることで、ジャッキポイントに対する位置決めの準備を迅速に行うことができる。次に、第2工程S2で、受具5がジャッキポイントの下面に近接する高さとなるように受金アタッチメント4を正確に高さ調整することができる。このとき、第1工程S1でリンク機構3が所定の起立姿勢に設定されている場合、受具5の高さが既に嵩上げされているので、受金アタッチメント4による高さ調整が容易となる。最後に、第3工程S3で、アーム2を上昇させて受具5をジャッキポイントの下面に当接させることにより、受具5の位置決めが完了する。従って、受具5のジャッキポイントへの位置決めを迅速且つ正確に行うことができるという効果を奏する。
【0094】
また、第1工程S1では、姿勢設定工程を行った後、移動工程を行う。
【0095】
この方法によれば、リンク機構3を所定の倒伏姿勢又は所定の起立姿勢のいずれかに設定した後、アーム2により受具5をジャッキポイントの真下へ水平移動させるので、ジャッキポイントの真下でリンク機構3の姿勢設定をやり直すことなく効率的に位置決め作業をすることができる。
【0096】
<その他の変形例>
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、ロック片35の一端をシャフト31bと同軸に回動自在に軸支し、爪部35aを有する他端をシャフト32aの外周に係合することでリンク機構3における所定の起立姿勢をロックする構成を示したが、これには限られない。例えば、ロック片35の一端を中間リンク33の他の部位に軸支し、他端を固定リンク30の他の部位に係止する構成としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、受金アタッチメント4がリンク機構3の中間リンク33,33(アタッチメント用台座39)に対して着脱自在に装着される例を示したが、これには限られない。例えば、受金アタッチメント4が中間リンク33,33に対して常時固定(取り外し不能)で設けられる構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、アーム2を水平回動自在且つアーム長手方向に伸縮自在な構成としたが、これには限られない。例えば、アーム2は、産業用ロボット等で広く用いられる多関節アームによって構成されるものであってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、受具5を垂直方向に昇降させる受金装置として、テレスコ式の受金装置である受金アタッチメント4を用いた例を示したが、これには限られない。例えば、内周に雌ネジ部が形成された筒状部材と、筒状部材内周の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が外周に形成され且つ上端に受具5が取付けられる支柱部材とを備えて構成される、ネジ式の受金装置を用いる構成としてもよい。この構成によれば、支柱部材を垂直軸回りに回転させることで受具5を垂直方向に昇降させることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 車両整備用リフトのアーム装置
2 アーム
3 リンク機構(平行リンク機構)
4 受金アタッチメント(受金装置)
5 受具
30 固定リンク
31 第1揺動リンク
31b シャフト
32 第2揺動リンク
32a シャフト
33 中間リンク
34 ロック機構
35 ロック片
35a 爪部
39 アタッチメント用台座(台座部材)
41 ベース
42 調整ラック
44 係止爪レバー(係止部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18