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特開2024-82310導電膜の製造方法、タッチパネル、ディスプレイパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082310
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】導電膜の製造方法、タッチパネル、ディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/12 20060101AFI20240613BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240613BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240613BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B05D5/12 B
H01B13/00 503B
B05D3/10 H
B32B38/18 Z
B32B27/18 J
G06F3/041 660
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196056
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 龍蔵
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
5G323
【Fターム(参考)】
4D075BB63Z
4D075CA22
4D075DA06
4D075DB13
4D075DB31
4D075DC21
4D075EB39
4D075EC01
4D075EC31
4F100AD11C
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ15
4F100GB41
4F100JG01C
5G323BA05
5G323BB06
5G323BC03
(57)【要約】
【課題】導電性を有する炭素材料を導電膜形成領域全体にわたって満遍なく定着させることができる有機樹脂材料を提供するとともに、有機樹脂材料を用いた導電膜の製造方法、及び当該製造方法で製造された導電膜を備えるタッチパネル、ディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】基材上に、酸無水物と複素環構造を含有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体を含む有機樹脂材料を塗布し、有機樹脂層を形成する工程(A)と、工程(A)の実施後、有機樹脂層上に分散剤と、カーボンナノチューブとを含む分散液を塗布し、塗布膜を形成する工程(B)と、工程(B)の実施後、塗布膜を乾燥させる工程(C)と、工程(C)の実施後、分散剤抽出液を付着させて塗布膜から分散剤を除去する工程(D)とを含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、酸無水物と複素環構造を含有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体を含む有機樹脂材料を塗布し、有機樹脂層を形成する工程(A)と、
前記工程(A)の実施後、前記有機樹脂層上に分散剤と、カーボンナノチューブとを含む分散液を塗布し、塗布膜を形成する工程(B)と、
前記工程(B)の実施後、前記塗布膜を乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)の実施後、分散剤抽出液を付着させて前記塗布膜から前記分散剤を除去する工程(D)とを含む導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程(D)は、前記基材を前記分散剤抽出液に浸漬させることによって前記塗布膜から前記分散剤を除去する工程である請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(D)は、アルカリ水溶液からなる前記分散剤抽出液に浸漬させる請求項2に記載の導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記重合体が、下記式(1)、(2)、(3)から選ばれる少なくとも1つの複素環構造を有する芳香族ジアミン由来の部位を有する請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【化1】
式(1)から(3)におけるXはO、S、Nの何れかを表し、XがO又はSのときnは0であり、XがNのときにnは1であり、Yは任意の有機基である。Rは一価の有機基であり、環を形成してもしなくても良く、mは1から4の数である。p、q、rは0又は1以上の数であり、p、q、rの数は同じでも異なっていても良い。
【請求項5】
前記工程(B)は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基からなる群から選択された一種の官能基を有するアルカリ可溶性重合体を含む前記分散剤を塗布する請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)は、前記有機樹脂層上に、ポリアミック酸構造を有する重合体を含む前記分散剤と、有機溶剤とを含む前記分散液を塗布する請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項7】
前記工程(B)は、前記有機樹脂層上に、前記カーボンナノチューブに対する前記分散剤の含有量が1,000質量%から100,000質量%の範囲内である前記分散液を塗布する請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の製造方法により作製された導電膜を備えるタッチパネル。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の製造方法により作製された導電膜を備えるディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜の製造方法に関する。また、本発明は、タッチパネル及びディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノカーボン材料の導電膜による電極や配線が形成された半導体デバイスが開発されている。従来、半導体デバイスの電極や配線は、銅やアルミニウム等の金属で形成することが多かった。しかしながら、ナノカーボン材料、特にカーボンナノチューブ(以下「CNT」と略記させる場合がある。)は、金属や金属酸化膜よりも非常に薄く構成でき、かつ、高い導電性を示すため、半導体デバイスの材料として高い注目を集めている。また、ナノカーボン材料によって形成された導電膜は、可視光に対して高い透過性を示す膜を形成することができるため、半導体光学素子に積極的に採用される動きが見られる。
【0003】
上述の背景より、特にCNTによる導電膜については、材料や製造方法に関して様々な提案がなされており、例えば、下記特許文献1には、CNTの分散性を高めた組成物として、溶媒及びCNTを含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-214837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記組成物によって作製させる導電膜は、乾燥工程等において凝集が生じやすく、均質性が損なわれやすいという課題があった。CNT透明導電膜は、繊維状のCNTが不織布のように折り重なることによって、電流が流れる回路が形成され導電性を発現する。このため、金属膜や金属酸化膜とは異なり、特性が安定するように構成することが困難であり、安定した電気特性を発現させることが困難であった。
【0006】
特に、微細化が進むLSI等の半導体デバイスにおいては、配線幅が非常に狭小であることから、CNTの導電膜による配線を形成すると、部分的に高抵抗な配線が形成される場合や、断線が発生しやすいという課題があった。
【0007】
また、発光素子やタッチパネル等に採用される場合は、可視光に対する透過性を高めるべく、できる限り薄く導電膜を形成することが求められるとともに、高い導電性と、均質な導電膜の形成が要求される。このような場合においても、上述したようなLSI等の半導体デバイスと同様に、導電膜の断線が発生しやすいという課題が発生する。より具体的には、例えば、タッチパネルを構成する配線としては、50μm幅以下で配線を構成する場合や、ディスプレイパネルの画素電極を作成する際に50μm幅以下のコンタクトホールからの引き出し線を作成した場合において、特に断線が発生しやすい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、導電性を有する炭素材料を導電膜形成領域全体にわたって満遍なく定着させることができる有機樹脂材料を提供するとともに、有機樹脂材料を用いた導電膜の製造方法、及び当該製造方法で製造された導電膜を備えるタッチパネル、ディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の導電膜の製造方法は、
基材上に、酸無水物と複素環構造を含有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体を含む有機樹脂材料を塗布し、有機樹脂層を形成する工程(A)と、
前記工程(A)の実施後、前記有機樹脂層上に分散剤と、カーボンナノチューブとを含む分散液を塗布し、塗布膜を形成する工程(B)と、
前記工程(B)の実施後、前記塗布膜を乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)の実施後、分散剤抽出液を付着させて前記塗布膜から前記分散剤を除去する工程(D)とを含む。
【0010】
上記製造方法において、
前記工程(D)は、前記基材を分散剤抽出液に浸漬させることによって前記塗布膜から分散剤を除去する工程であっても構わない。
【0011】
上記製造方法において、
前記工程(D)は、アルカリ水溶液からなる前記分散剤抽出液に浸漬させる工程であっても構わない。
【0012】
上記製造方法は、
前記重合体が、下記式(1)、(2)、(3)から選ばれる少なくとも1つの複素環構造を有する芳香族ジアミン由来の部位を有する重合体であっても構わない。
【0013】
【化1】
式(1)から(3)におけるXはO、S、Nの何れかを表し、XがO又はSのときnは0であり、XがNのときにnは1であり、Yは任意の有機基である。Rは一価の有機基であり、環を形成してもしなくても良く、mは1から4の数である。p、q、rは0又は1以上の数であり、p、q、rの数は同じでも異なっていても良い。
【0014】
上記製造方法において、
前記工程(B)は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基からなる群から選択された一種の官能基を有するアルカリ可溶性重合体を含む前記分散剤を塗布する工程であっても構わない。
【0015】
上記製造方法において
前記工程(B)は、前記有機樹脂層上に、ポリアミック酸構造を有する重合体を含む前記分散剤と、有機溶剤とを含む前記分散液を塗布する工程であっても構わない。
【0016】
上記製造方法において、
前記工程(B)は、前記有機樹脂層上に、前記カーボンナノチューブに対する前記分散剤の含有量が1,000質量%から100,000質量%の範囲内である前記分散液を塗布する工程であっても構わない。
【0017】
本発明にタッチパネルは、
上記製造方法により作製された導電膜を備える。
【0018】
本発明のディスプレイパネルは、
上記製造方法により作製された導電膜を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導電性を有する炭素材料を導電膜形成領域全体にわたって満遍なく定着させることができる有機樹脂材料を提供するとともに、有機樹脂材料を用いた導電膜の製造方法、及び当該製造方法で製造された導電膜を備えるタッチパネル、ディスプレイパネルが実現される。さらに、本発明によれば、アルカリ現像のような強アルカリ水による処理によっても基板から導電膜の剥がれが少ないため、電気的な欠損が少ない、優れた導電膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ディスプレイパネルの一実施形態の全体構成を示す概略図である。
図2】導電膜を形成する工程を模式的に示す図面である。
図3】導電膜を形成する工程を模式的に示す図面である。
図4】導電膜を形成する工程を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、最初に一実施形態としてのディスプレイパネル1の構成が説明されて、その後に、ディスプレイパネル1が備える導電膜の製造方法の一実施形態の詳細が説明される。そして、本発明の導電膜の製造方法にかかる一実施例によって、本発明の効果を確認する検証評価実験を行ったので、最後に当該検証評価実験の詳細が説明される。
【0022】
[ディスプレイパネル]
ディスプレイパネル1の一実施形態の全体構成を説明する。図1は、ディスプレイパネル1の一実施形態の全体構成を示す概略図である。ディスプレイパネル1は、基材2を有し、基材2の一表面には、素子領域2aと、周辺領域2bとが設けられている。
【0023】
基材2は、透光性を有する材料で形成されており、具体的には、例えば、ガラス基板、石英基板、又は有機樹脂基板等が挙げられる。有機樹脂基板の材料としては、例えばポリイミド等が挙げられる。有機樹脂基板は、板厚を数μmから数十μmにすることができ、可撓性を有するシートディスプレイを実現することが可能となる。
【0024】
素子領域2aは、画像を表示するための素子が形成されている領域である。素子領域2aは、下層電極が設けられ、当該下層電極上には絶縁層が設けられている。当該絶縁層の上には、有機樹脂層が設けられ、当該有機樹脂層上には導電膜が設けられる。
【0025】
酸無水物と複素環構造を有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体を含む有機樹脂材料について、本発明に用いる有機樹脂材料は、酸無水物と複素環構造を有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体であり、分子内に芳香族環や複素環構造を有するため得られる重合体は、π-π結合を有する構造が豊富な重合体となる。そのため、同じくπ-π結合を有する構造が豊富なカーボンナノチューブ(CNT)のような炭素材料と高い相互作用が期待される。
【0026】
CNTのような炭素材料が溶剤に可溶化(分散)する仕組みの一つとして、CNTとベンゼン環とのπ-π相互作用による物理的な吸着が挙げられている。このような物理吸着能を有する高分子がCNT鎖の周りに巻き付く形で可溶化(分散)を促進すると考えられている。これはCNTと物理吸着する面積を最大化しようとするものと考えられる。本発明の有機樹脂層において、芳香族環由来のπ-π結合が豊富であるため、CNT固着性が高い傾向がみられる。そのため、上述の物理吸着の大小が影響していると考えられる。
【0027】
また、複素環構造を有することでCNT固着性が向上する理由は定かではないが、CNTと高分子が物理吸着する面積をより大きくする効果を有すると考えられる。
【0028】
前記酸無水物と複素環構造を有する芳香族ジアミンを反応させて得られる重合体は、下記式(4)される構成部位を有する重合体である。
【0029】
【化2】
(式(4)中、A、テトラカルボン酸を構成する4価の有機基であり、B、ジアミンを構成する2価の有機基であり、a正の整数を示す。)
【0030】
式(4)中のBは、下記式(1)から(3)の少なくとも一つの複素環構造を含有することが望ましい。
【0031】
【化3】
式(1)から(2)におけるXはO、S、Nの何れかを表し、XがO又はSのときnは0であり、XがNのときにnは1であり、Yは任意の有機基である。Rは一価の有機基であり、環を形成してもしなくても良く、mは1から4の数である。p、q、rは0又は1以上の数であり、p、q、rの数は同じでも異なっていても良い。
【0032】
酸二無水物を重合させてなる上記式(4)中のAの構造は特に限定されないが、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0033】
炭素材料をより多量に定着させたい場合には、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0034】
上記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物、4,9-ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン-3,5,8,10-テトラオン、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、4,4’-ビフタル酸二無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,6-テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3-プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等を;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0035】
有機樹脂層の材料は、上記の酸無水物と複素環構造を有するジアミンを、既存のポリアミック酸と同様な手法によって合成することができる。このような重合体を含む有機材料から形成された導電膜の材料は、CNTである。CNTの種類としては、単層カーボンナノチューブ、又は2層以上の多層カーボンナノチューブを採用することができ、好ましくは、単層カーボンナノチューブである。
【0036】
カーボンナノチューブを材料とする導電膜は、膜厚に応じて透過率が変動するが、可視光に対して透過性を示す透明導電膜となる。
【0037】
塗布膜は、カーボンナノチューブと、分散剤とを含む分散液を塗布することにより、形成される。分散剤は特に限定されないが、式(5)で示される構造部位を有するポリアミック酸を用いることがカーボンナノチューブの分散性を向上させる点において好ましい。
【0038】
【化4】
(式(5)中、Dはテトラカルボン酸を構成する4価の有機基であり、Eはジアミンを構成する2価の有機基であり、bは正の整数を示す。)
【0039】
Dで示されるテトラカルボン酸を構成する4価の有機基の具体例としいては、ピロメリット酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3',4-ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3'4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5-ピリジンテトラカルボン酸、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸の二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸などの脂環構造を有するテトラカルボン酸の二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸の二無水物などが挙げられる。これらの酸二無水物は単一の化合物を使用してもよく、複数の化合物を併用することもできる。
【0040】
Eで示されるジアミンを構成する2価の有機基の具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2'-ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル等の脂環式ジアミン及び1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサンなどの脂肪族ジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどのシリコンジアミンなどが挙げられる。これらのジアミンは単一の化合物を使用してもよく、複数の化合物を併用することもできる。
【0041】
さらに、上記式(5)のDがシクロブタン環であることが好ましい、シクロブタン環は、光照射、又は加熱することにより環構造が分解し、ポリアミック酸の構造変化を生じることで、分散剤を除去しやすくなる点において好ましい。また、上記分散液は、分散媒として有機溶剤を含んでいても構わない。
【0042】
[製造方法]
導電膜の製造方法について、図2図4を参照しながら説明する。図2図4は、導電膜を形成する工程を模式的に示す図面である。なお、本実施形態の導電膜の製造方法は、基板上に形成された絶縁層上に導電膜が作製される。
【0043】
図2に示すように、絶縁層10を形成された状態の基材2上に、炭化水素基を有する重合体を含む有機樹脂材料を塗布し、有機樹脂層20を形成する(工程(A)に対応)。
【0044】
図3に示すように、有機樹脂層20上に、CNTを含む分散液が塗布されて、塗布膜30のパターンが形成される(工程(B)に対応)。なお、図3においては、便宜のために、有機樹脂層20の全面にわたって塗布膜30が形成されているように図示されている。
【0045】
この工程では、キャスト、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷技術を用いて、有機樹脂層20上にCNTを含む分散液の塗布膜によるパターンが形成される。パターンの形成後、図4に示すように、塗布膜に含まれる溶媒が乾燥によって除去され、有機樹脂層20上にCNTが定着して導電膜40が形成される(工程(C)に対応)。
【0046】
図4においては、便宜のために、有機樹脂層20の全面にわたって導電膜40が形成されているように図示されているが、導電膜40のパターンは、適宜調整される。
【0047】
溶媒が乾燥によって除去された後は、基板上に形成されている導電膜上に分散剤抽出液が塗布されて、塗布膜によるパターンから分散剤が除去される(工程(D)に対応)。また、当該工程では、導電膜のパターン形成において、印刷によってパターン形成を行う上記の方法に加えて、一旦基板上に形成されている有機樹脂層上全体に分散液を塗布し、乾燥、洗浄を行った後に、導電膜の上に別途パターニング用の感光性レジスト層を形成する方法をとることもできる。この場合は、感光性レジスト層を形成したのちにエッチングにより導電層を除去し、残存する感光性レジスト層を除去する。
【0048】
なお、分散剤及び分散剤抽出液の組み合わせは任意であるが、分散剤は、アルカリ水溶液への溶解性を向上させる官能基を有するアルカリ可溶性重合体、分散剤抽出液は、アルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液を分散剤抽出液として用いることで、アルカリ水溶液中には分散しづらいCNTを選択的に有機樹脂層上に残すことが可能となる。
【0049】
また、このようなアルカリ可溶性重合体を用いた工程とすることで、同様に現像にアルカリ水溶液を用いるその他の感光性レジスト層を用いる工程と材料を共用化することができ、生産性が大きく高まる。
【0050】
また、アルカリ水溶液としては、例えば、KOH(水酸化カリウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、炭酸ナトリウム、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液等を好適に用いることができる。
【0051】
さらに、これらの分散剤は、材料中に、光、又は熱に反応し、分解、又は構造変化を起こすことでアルカリ水溶液に対する溶解性を向上させることのできる分子構造を含んでいてもよい。このような分散剤を用い、導電膜の形成後に光、又は熱を加えることで溶解性を向上させ、その後分散剤抽出液が塗布されることで、更に塗布膜によるパターンから分散剤が除去される効率を向上させることが可能となる。
【0052】
このような機能を示す分子構造としては、例えば、分散剤のポリアミック酸構造にシクロブタン等の光、又は熱で分解し、ポリアミック酸の構造全体を変化させることができる部位を含んでいてもよい。また、分散剤は、酸解離性基を含んでいてもよい。酸解離性基は、酸の作用によりカルボキシル基やフェノール性水酸基等の酸性基を発生する基である。
【0053】
酸解離性基としては、t-ブトキシ構造を有する基、アセタール構造を有する基等が挙げられる。酸解離性基に作用する酸は、光又は熱の作用により酸を発生する酸発生剤から発生する酸による。そのため分散液中に酸解離性基を有する分散剤とともに酸発生剤を含有する。
【0054】
有機材料層上に形成される導電膜は、以下に示す工程を経て、形成することができる。
【0055】
CNTを含む組成物の塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリットコート法)、バー塗布法(バーコート法)、溶液浸漬法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。導電膜は、所定の方法により一定の厚みで形成される。
【0056】
有機材料層上に塗布されるCNTを含む組成物は、CNTに対する分散剤の含有量が1,000質量%から100,000質量%の範囲内であることが好ましい。CNTに対する分散剤の含有量が当該範囲内にあることにより、乾燥工程での溶媒の不均一が防止され、また乾燥に伴ってCNTが凝集し、局在化してしまうことが抑制される。
【0057】
なお、導電膜は、純度を向上させるために、ベーク工程により溶媒を除去する工程や、分散剤除去のための溶液浸漬工程が実施されることが好ましい。上述した塗布方法の中では、塗膜の膜厚均一性及び、省液性の観点からスリットダイ塗布法、又はインクジェット法が好ましい。また、塗布のみによって電極のパターニングを行うことができるという観点からは、インクジェット法がより好ましい。
【0058】
上述した導電膜の形成方法を採用することで、有機樹脂層上に形成される導電膜は、特異な電気的特性を示すとともに、有機樹脂層への密着性に優れ、耐薬品性及び平坦性も良好となる。
【0059】
また、塗布膜に含まれるCNTは、有機樹脂層に対して高い密着性を示すことから、乾燥工程において溶媒の凝集に伴って、局在化してしまうことが抑制される。さらに、分散剤除去のための溶液浸漬工程においても、CNTの剥離、凝集などが発生せず、CNTが局在化してしまうことが抑制される。したがって、パターンの幅が非常に細い配線を形成した場合であっても、局所的に高抵抗な部分や断線が発生しにくい。
【0060】
本実施形態の導電膜の製造方法は、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層を形成した後に、有機樹脂層を形成し、当該有機樹脂層上に、CNTによる導電膜を形成することを含む。
【0061】
また、分散液に含まれるCNTは、単層ナノチューブ、又はマルチウォールナノチューブの少なくとも一方を含むことが好ましい。このような導電膜の製造方法によれば、有機樹脂層と導電膜との密着性が更に良好な半導体デバイスを形成することができる。また、製造歩留まりが更に良好になる。
【0062】
また、上述の導電膜の製造方法は、ディスプレイパネル1の製造のみならず、タッチパネルに用いられる透明な導電膜の製造においても適用できる。
【0063】
なお、有機樹脂層は、有機樹脂層形成用の感放射線性組組成物を以下に示す工程を経て、形成することができる。当該形成方法によって形成される有機樹脂層は、特異な電気的特性を示すとともにCNTとの密着性に優れ、耐薬品性及び平坦性も良好である。また、当該形成方法によれば、140℃以下で加熱を行うため、基板や基板に備わる素子の熱劣化が抑制される。以下、各工程について詳述する。
【0064】
[工程(1)]
本工程では、当該感放射線性組成物を用いて、絶縁層上に塗膜が形成される。具体的には、当該感放射線性組成物を絶縁層表面に塗布することで、感放射線性組成物の塗膜が形成される。なお、塗膜に含まれる溶媒を除去するために、ここの工程において、プレベーク処理が行われることが好ましい。
【0065】
感放射性組成物の塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。これらの中で、塗布方法としては、インクジェット法が好ましい。プレベークの条件としては、各成分の種類、使用割合等によっても異なるが、例えば60℃~130℃で30秒間~10分間程度とすることができる。形成される塗膜の膜厚は、プレベーク後の値として、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~1μmがより好ましく、0.2μm~0.4μmがさらに好ましい。
【0066】
[工程(2)]
本工程では、塗膜の一部に放射線が照射(露光)される。具体的には、工程(1)で形成した塗膜に所定のパターンを有するマスクを介して放射線が照射される。使用するマスクのパターンによっては、コンタクト孔形成、ラインアンドスペース形成等のパターンを形成することが可能となる。
【0067】
このとき用いられる放射線としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。また、用いられるマスクは、ハーフトーンマスクやグレイトーンマスク等の多階調マスクであってもよい。
【0068】
紫外線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等が挙げられる。X線としては、例えばシンクロトロン放射線等が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば、電子線等が挙げられる。これらの放射線のうち、紫外線が好ましく、波長200nm以上380nm以下の紫外線がより好ましい。放射線の露光量としては、1,000J/m~20,000J/mが好ましい。
【0069】
また、場合によっては、露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うこともできる。
【0070】
[工程(3)]
本工程では、放射線が照射された塗膜を現像する。具体的には、工程(2)で放射線が照射された塗膜に対し、現像液により現像を行って放射線の照射部分を除去する。現像液としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等が水に溶解したアルカリ水溶液、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶剤を使用することができる。
【0071】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間としては、当該感放射線性組成物の組成によって異なるが、例えば30秒~120秒とすることができる。
【0072】
[工程(4)]
本工程では、上記工程(3)後の塗膜を加熱することができる。当該塗膜は、ホットプレート、オーブン等の加熱装置によって、加熱処理(ポストベーク)されて硬化する。
【0073】
本工程における加熱温度の上限は140℃であり、加熱温度は、130℃であってもよく、125℃であってもよく、115℃であってもよい。当該形成方法によれば、このように比較的低温の加熱によっても塗膜を良好な形状とすることができる。
【0074】
[合成例]
本発明による酸無水物と複素環構造を有するジアミンからなる重合体を含有する有機樹脂膜を用いることで、基板上に塗布されるCNTが導電膜形成領域に満遍なく強固に固着するかを確認する検証評価実験を行ったので、以下で説明する。
【0075】
酸無水物と複素環構造を有するジアミンからなる重合体を含有する有機樹脂膜
<ジアミンの合成>
DA-5はJournal of the American Chemical Society 2020,142,9752-9762記載の方法で合成した。
【0076】
DA-1は東京化成工業製B2169、DA-2は東京化成工業製A3300、DA-3はシグマアルドリッチ製732079、DA-4は東京化成工業製A2759を用いた。
<重合体の合成>
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
【化5】
【0077】
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(TA-1)100モル部、ジアミン化合物として2,5-ビス(4-アミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール100モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。更にNMPとブチルセロソルブの割合が8対2になるように希釈することでポリアミック酸の5質量%溶液を得た(これを重合体(PA-1)とする)。
【0078】
[合成例2~10、比較合成例1~4]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類を表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液(重合体(PA-2)~(PA-14))を得た。比較合成例1から比較合成例4で得られたPA-11、PA-12,PA-13、PA-14は複素環構造を有しないポリアミック酸である。
【0079】
【表1】
【0080】
合成重合体PA-1とPA-1の10wt%量に相当するN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを混合しNMPで希釈することで全固形分濃度2wt%の溶液(SL-1)を調製した。PA-2からPA-14に対しても同様に行い、SL-2からSL-14を調製した。
【0081】
1.重合体の合成
[合成例1:ポリアミック酸の合成]
上記特許文献2に記載の合成方法により、炭化水素基を側鎖に有するポリアミック酸(以下「重合体(paa―1)」とする)を得た。
【0082】
2.CNT含有分散組成物の作製及び評価
(1)分散組成物の調製
【0083】
シングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)10質量部、及び分散剤として合成例1で得た重合体(paa-1)1,000質量部が入った容器に、溶媒としてNMP100,000質量部を加えた。次いで、60分間、超音波分散を行い、分散組成物(S-1)を調製した。
【0084】
(2)導電膜基板の形成
スピンコート(設定条件1500回転/分、回転時間20秒)により、ガラス基板上にSL-1を塗布した。次にホットプレート(100℃×1min)で加熱後に続けてオーブン(200℃×30min)で加熱乾燥することで有機樹脂膜を形成した。
【0085】
有機樹脂膜を有するガラス基板にCNT分散液S-1をスピンコート(設定条件500回転/分、回転時間30秒)で塗布し、80℃のホットプレートで10分間乾燥することにより、有機樹脂膜とCNTと分散材の混合膜からなる積層塗膜を形成した。この積層塗膜の膜厚は、ガラス基板中央において0.1μmであった。
【0086】
5wt%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で満たされたシャーレにガラス基板を1分間浸漬し、積層塗膜から分散材を抽出除去した。引き上げたガラス基板をエアブローすることで基板上に残存する液体分を吹き飛ばし、110℃のホットプレートで1分乾燥することで、有機樹脂膜上にCNTのみが存在する導電膜基板を得た。
【0087】
(3)CNT均一性の評価
上記(1)で得た分散組成物(S-1)を、有機樹脂膜溶液(SL-1)から(SL-14)から形成された有機樹脂層上にスピンコートにより塗布し、80℃のホットプレートで10分間乾燥することにより、基板中央の膜厚が0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜を倍率50倍の顕微鏡で観察し、CNTが凝集している領域の有無を調べた。評価は、塗膜内にCNTが凝集している領域が全く観察されなかった場合を「最優良(A)」、CNTが凝集している領域がわずかに観察された場合を「良好(B)」とした。CNTが凝集している領域が明確に観察された場合を「不良(C)」とした。結果を下記表2に示す。
【0088】
(4)有機樹脂膜上でのCNT固着性評価
得られたCNT膜の表面抵抗率(Ω/□)をロレスタ-GP(三菱化学アナリティック製)を用いて測定した。
【0089】
有機樹脂膜上にCNT固着量が多い場合は表面抵抗率の値が小さくなり、105Ω/□以下の値を示した場合を「〇」、106Ω/□から107Ω/□の値を示した場合を「△」、ロレスタ-GPの測定可能領域を外れて値が出なかった場合(108Ω/□以上の高抵抗値)を「×」とした。結果を下記表2に示す。
【0090】
(5)総合判定
総合判定は、CNT均一性が「不良(C)」、又はCNT固着性が「×」であればNGと判定し、その他の場合はOKと判定した。
【0091】
【表2】
【0092】
比較例1から比較例4には、PA-11、PA-12,PA-13、PA-14は複素環構造を有しないポリアミック酸を用いた。実施例1から実施例10は、複素環構造を有するポリアミック酸を用いた。比較例1から比較例4に比較して、CNT均一性が良好であり、CNT固着性も良好であることが判明した。
【符号の説明】
【0093】
1:ディスプレイパネル
2:基材
2a:素子領域
2b:周辺領域
10:絶縁層
20:有機樹脂層
30:塗布膜
40:導電膜
図1
図2
図3
図4