(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082324
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】検査器具及び判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196093
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 優
(72)【発明者】
【氏名】宮田 健一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 徳樹
(57)【要約】
【課題】検体を供給部に直接供給しても検体が判定部にかかってしまうことを抑制でき、かつ、判定部の視認性を良好に確保できる検査器具を提供する。
【解決手段】検査器具1は、ケース3と、ケース3の内部に設けられた試験紙2と、を備える。試験紙2は、検査対象者の検体が供給される供給部21、及び、検体との反応結果を示す判定部22を有する。ケース3は、供給部21をケース3の外側に露出させる第一開口31、及び、判定部22をケース3の外側に露出させる第二開口32を有する。第一開口31と第二開口32とは、互いに反対側に向いている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの内部に設けられた試験紙と、を備え、
前記試験紙は、検査対象者の検体が供給される供給部、及び、前記検体との反応結果を示す判定部を有し、
前記ケースは、前記供給部を前記ケースの外側に露出させる第一開口、及び、前記判定部を前記ケースの外側に露出させる第二開口を有し、
前記第一開口と前記第二開口とは、互いに反対側に向いている検査器具。
【請求項2】
前記ケースの内部には、前記供給部に隣接する位置に、前記検査対象者から供給された前記検体を保持する保持空間が設けられている請求項1に記載の検査器具。
【請求項3】
前記ケースは、前記第一開口を介さずに前記保持空間を前記ケースの外側につなぐ排水口を有する請求項2に記載の検査器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査器具を用いた判定方法であって、
前記検査対象者の前記検体を前記ケースの第一開口を通して前記供給部に供給する供給工程と、
前記ケースの第二開口を通して前記判定部の画像を取得し画像取得工程と、
取得した前記画像を解析することで、前記判定部に現れる反応結果を判定する判定工程と、を有する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査器具、及び、検査器具を用いた判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不妊治療に対する保険適用の範囲が拡大するなど、妊娠を望む人への手厚い補償が増えてきている。しかしながら、不妊治療に臨む場合、通院等により多くの時間を取られるなどの時間的な制限に加え、身体への負担等も大きく、未だ自然妊娠を望む人が多くいる。自然妊娠のための活動として、基礎体温や月経周期等の管理による排卵日の予測が主に行われている。しかしながら、基礎体温や月経周期等の管理だけから排卵日を正確に予測することは難しいとされている。そこで、より正確に排卵日を予測するための方法として、排卵検査薬(「排卵日予測検査薬」とも称される)の利用がある。
【0003】
排卵検査薬では、イムノクロマトグラフィー法(「イムノクロマト法」とも称される)が採用されており、検体との反応結果を示すラインの有無を確認することで検体に検査対象物(例えば黄体形成ホルモン(LH))が含まれるか否かを判定でき、ラインの濃淡を確認することで検査対象物の濃度を判定することができる。
【0004】
特許文献1には、排卵検査薬などに利用可能な検査器具(尿検査具)が開示されている。特許文献1の検査器具は、ケース(容器)と、ケースの内部に設けられた試験紙(検査シート)とを有する。試験紙は、尿などの検体が供給される供給部(尿吸収体)と、検体との反応結果をラインの有無で示す判定部(反応部材)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の検査器具では、試験紙の供給部を露出させるケースの第一開口(採尿部)と、試験紙の判定部を露出させるケースの第二開口(判定表示窓)と、が同じ方向に向いている。この場合、尿などの検体を供給部に供給する際に、検体が判定部にもかかってしまい、正しい判定結果を得られない、という問題がある。
【0007】
特許文献1の検査器具では、検体が判定部にかかってしまうことを防ぐために、ケースの第二開口を透明なカバー(樹脂膜)によって塞ぐことも考えられている。しかしながら、この場合には、透明なカバーにおける光の反射によって、判定部の視認性が低く、判定部におけるラインの濃淡を確認し難い、という問題がある。特に、近年では、判定部の画像を取得し当該画像を解析することで、判定部に現れるラインの濃淡(すなわち検査対象物の濃度)を定量的に判定することが考えられている。このため、透明なカバーにおける光の反射は、判定部の適切な画像の取得を妨げてしまう、という問題がある。なお、試験紙全体もしくは判定部周辺に透明なフィルムを貼付している場合も、透明なカバーと同様に、画像取得の際に光を反射し、画像の解析において正確な測定ができない、という問題がある。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、検体を供給部に供給しても検体が判定部にかかってしまうことを抑制でき、かつ、判定部の視認性を良好に確保できる検査器具及び検査器具を用いた判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ケースと、前記ケースの内部に設けられた試験紙と、を備える検査器具である。前記試験紙は、検査対象者の検体が供給される供給部、及び、前記検体との反応結果を示す判定部を有する。前記ケースは、前記供給部を前記ケースの外側に露出させる第一開口、及び、前記判定部を前記ケースの外側に露出させる第二開口を有する。前記第一開口と前記第二開口とは、互いに反対側に向いている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検体を供給部に供給しても検体が判定部にかかってしまうことを抑制でき、かつ、判定部の視認性を良好に確保できる検査器具及び判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査器具をケースの第二外面側から見た平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る検査器具をケースの第一外面側から見た平面図である。
【
図3】
図1、
図2に示すIII-III線矢印方向に見た断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る検査器具を示す断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る検査器具の要部を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る検査器具の要部を示す拡大断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る検査器具を示す断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る検査器具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図3を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の検査器具1は、試験紙2と、ケース3と、を備える。
【0013】
試験紙2は、検査対象者の検体が供給される供給部21と、検体との反応結果を示す判定部22と、を有する。試験紙2は、細長い帯状に形成されている。供給部21と判定部22とは、試験紙2の長手方向に並ぶ。
【0014】
判定部22は、検体に検査対象物が含まれている場合に当該検査対象物と反応した結果を示す判定ライン211を有する。判定ライン211は、検体中に検査対象物が存在する場合に線が現れる領域である。判定部22では、検体に含まれる検査対象物の濃度に応じて、判定ライン211に現れる線の濃淡が変化する。
図1において、判定部22は、2つの異なる検査対象物を検出する2つの判定ライン211を有するが、判定ライン211の数はこれに限られない。
【0015】
本実施形態における検体は、尿、血液(全血、血清、血漿)、唾液、間質液などの体液である。検査器具1が排卵検査薬である場合、検体は尿であってよい。また、検体に含まれる検査対象物は、例えば黄体形成ホルモン(LH)やエストラジオール-3-グルクロニド(E3G)であってよい。検体が尿である場合、供給部21は採尿部として機能する。
【0016】
試験紙2では、供給部21において検体である体液が吸収されることで、当該体液が毛細管現象によって供給部21から判定部22に向けて流れる。判定部22に到達した体液に検査対象物が含まれる場合には、判定部22の判定ライン211に線が現れる。
【0017】
ケース3は、上記した試験紙2を内部に設ける。ケース3は、第一開口31と、第二開口32と、を有する。第一開口31は、供給部21をケース3の外側に露出させる。第二開口32は、判定部22をケース3の外側に露出させる。第一開口31と第二開口32とは、互いに反対側に向いている。
【0018】
本実施形態のケース3は、試験紙2の長手方向に延びる棒状の外観を有する。また、ケース3の外面には、試験紙2の厚さ方向において互いに反対側に向く第一外面3aと第二外面3bとがある。第一開口31は、ケース3の第一外面3aに開口する。第二開口32は、ケース3の第二外面3bに開口する。第一開口31と第二開口32とは、ケース3(試験紙2)の長手方向において互いにずれて位置する。また、第一開口31と第二開口32とは、試験紙2の厚さ方向において互いに重ならないように位置する。
【0019】
図3に示すように、ケース3の内部には保持空間33が設けられている。保持空間33は、試験紙2の供給部21に隣接して位置する。保持空間33は、検査対象者から供給された検体を保持(あるいは貯留)する。
本実施形態において、保持空間33は、供給部21に対してケース3の第一開口31と反対側に位置する。すなわち、試験紙2の厚さ方向における供給部21の両側に、第一開口31と保持空間33とが位置する。
【0020】
保持空間33は、ケース3の第一開口31を通して供給部21に向けて供給された体液を保持(あるいは貯留)することができる。すなわち、保持空間33には、その大きさに応じた一定量の体液を保持することができる。保持空間の容積は、例えば100μl以上1000μl以下であることが好ましい。これにより、試験紙の供給部から判定部に向けて流れる体液量を一定に調整することができる。
【0021】
図示しないが、ケース3の内部には、試験紙2の両側に位置する第一開口31と保持空間33とをつなぐ通水路が形成されている。本実施形態において、通水路は、試験紙2の幅方向(
図3において紙面に直交する方向)の両側あるいは片側に位置する。ケース3の内部に通水路が形成されていることで、ケース3の第一開口31を通して供給部21に向けて供給された体液(検体)を、通水路を通してスムーズに保持空間33に流入させることができる。
【0022】
以上のように構成される検査器具1を用いて所定の検査(例えば排卵検査)を行う場合には、検査対象者の体液(尿)をケース3の第一開口31を通して試験紙2の供給部21に供給すればよい。このとき、ケース3の第二開口32は第一開口31と反対側に向くため、第二開口32が透明なカバーなどによって塞がれていなくても、体液がケース3の第二開口32を通して判定部22に到達することを抑制又は防止できる。
【0023】
次に、本実施形態の検査器具1を用いた判定方法の一例について説明する。
検査器具1を用いて所定の検査を判定する際には、はじめに、検査対象者の体液(検体)をケース3の第一開口31を通して試験紙2の供給部21に供給する(供給工程)。体液は、供給部21において吸収され、試験紙2の判定部22に到達する。判定部22に到達した体液に含まれる成分に応じて判定部の判定ライン211に線が現れる。
次いで、ケース3の第二開口32を通して試験紙2の判定部22の画像を取得する(画像取得工程)。画像取得の際には、例えば判定部22を含む検査器具1全体の画像を取得してもよい。画像の取得には、カメラなどの撮像装置を用いてもよいし、撮像機能を有するスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末を用いてもよい。
【0024】
最後に、取得した画像を解析することで、判定部22に現れる反応結果を判定する(判定工程)。本実施形態において、判定部22の反応結果は、判定ライン211の濃淡で示される。このため、反応結果の判定は、画像解析により判定ライン211の濃淡を解析することで行われる。例えば、判定ライン211が所定の閾値よりも濃いか否かを判定する。このような判定は、例えば携帯端末やPC(Personal Computer)を用いることで実現することができる。例えば、判定ライン211の濃淡と検査対象物の濃度との関係を画像解析により判定する場合、判定ライン211の濃淡と検査対象物の濃度との関係を学習した機械学習モデルなどにより推定を行うことができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の検査器具1では、ケース3の第二開口32が透明なカバーによって塞がれていなくても、検体を供給部21に供給する際に、検体が判定部22にかかってしまうことを効果的に抑制できる。したがって、判定部22の視認性を良好に確保しながら、検体を供給部21に供給しても検体が判定部22にかかってしまうことを抑制することができる。これにより、本実施形態の検査器具1を、例えば、画像解析による判定ライン211の濃淡の定量的な判定に活用することができる。
【0026】
また、本実施形態の検査器具1では、ケース3の第一開口31と第二開口32とが互いに反対側に向いていることで、検体が判定部22にかかってしまうことを抑制しながら、これら第一、第二開口31,32を互いに近くに位置させることもできる。これにより、検査器具1の小型化を図ることができる。
【0027】
また、検査器具1の小型化(特にケース3の小型化)を図ることで、画像解析によって判定ライン211の濃淡を高い精度で判定することも可能となる。以下、この点について説明する。
画像解析によって判定ライン211の濃淡を判定する場合には、判定対象となる検査器具1の種類を識別するために、判定部22を含む検査器具1全体の画像を取得することがある。この際、検査器具1全体が小型化されていれば、取得した画像において判定部22が占める領域が大きくなる。これにより、判定部22における判定ライン211の濃淡を高い精度で判定することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態の検査器具1では、検査対象者から供給された一定量の検体を、ケース3の保持空間33に保持することができる。このため、試験紙2の供給部21から判定部22に供給される検体の供給量を適切に調整することができる。したがって、判定部22への検体の供給量に過不足に基づいて検査結果に誤りが生じることを抑制又は防止することができる。
【0029】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0030】
本発明においては、例えば
図4に示すように、試験紙2の長手方向(
図4において左右方向)の端部に、試験紙2の両側に位置する第一開口31と保持空間33とをつなぐ通水路34が形成されてもよい。
【0031】
本発明においては、例えば
図5に示すように、ケース3の挿通部35に、止水用の突起36が設けられてよい。挿通部35には、試験紙2のうち供給部21と判定部22との間の部位が挿通される。突起36は、挿通部35の内面から突出しており、挿通部35に挿通された試験紙2に押し付けられる。この状態では、挿通部35のうち第一開口31側の空間と第二開口32側の空間とが、突起36によって区画される。
これにより、検査対象者の体液が第一開口31からケース3の内部に入ったときに、試験紙2の供給部21において吸収されない体液が挿通部35(特に挿通部35と試験紙2との隙間)を通して試験紙2の判定部22に到達すること抑制又は防止することができる。同様に、保持空間33に貯留された体液が挿通部35を通して試験紙2の判定部22に到達することも抑制又は防止できる。
【0032】
また、本発明においては、例えば
図6に示すように、ケース3の挿通部35に、止水用の吸水体5が設けられてよい。吸水体5は、体液を吸収するように構成されている。吸水体5は、挿通部35の内面と試験紙2との間に挟まれる。この状態では、挿通部35のうち第一開口31側の空間と第二開口32側の空間とが、吸水体5によって区画される。
これにより、検査対象者の体液が第一開口31からケース3の内部に入ったときに、試験紙2の供給部21において吸収されない体液が挿通部35(特に挿通部35と試験紙2との隙間)を通して試験紙2の判定部22側に向かおうとしても、当該体液は吸水体5において吸収される。これにより、試験紙2に吸収されない体液が判定部22に到達すること抑制又は防止することができる。同様に、保持空間33に貯留された体液が挿通部35を通して試験紙2の判定部22に到達することも抑制又は防止できる。
【0033】
本発明においては、例えば
図7に示すように、ケース3が排水口38を有してもよい。排水口38は、第一開口31を介さずに保持空間33をケース3の外側につなぐ。排水口38は、保持空間33に流入する体液の量が保持空間33の容積を超えたときに、体液を保持空間33の外側に排出する。
図7において、排水口38はケース3の長手方向の端部においてケース3の外側に開口しているが、例えばケース3の幅方向の端部においてケース3の外側に開口してもよい。また、排水口38は、例えばケース3の第二外面3bに開口してもよい。
これにより、過剰な量の体液がケース3の第一開口31から保持空間33に供給されても、余剰分の体液はケース3の排水口38から外側に排出される。このため、体液が第一開口31側に溢れることを抑制又は防止できる。したがって、第一開口31に向けて体液を供給しても、体液が第一開口31において跳ね返ることを効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明において、ケース3の保持空間33は、例えば
図8に示すように、試験紙2の厚さ方向において供給部21の両側に設けられてもよい。すなわち、供給部21と第一開口31との間にも、保持空間33が位置してよい。この場合、ケース3には、供給部21の両側に位置する保持空間33をつなぐ通水路(不図示)が形成されてよい。また、ケース3の保持空間33は、例えば供給部21と第一開口31との間にだけ位置してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 検査器具
2 試験紙
3 ケース
3a 第一外面
3b 第二外面
21 供給部
22 判定部
31 第一開口
32 第二開口
33 保持空間
38 排水口
211 判定ライン