(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082326
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】自動拡管装置および自動拡管方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/20 20060101AFI20240613BHJP
B21D 39/10 20060101ALI20240613BHJP
B21D 39/16 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B21D39/20 C
B21D39/10 Z
B21D39/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196097
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 憲二
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩行
(72)【発明者】
【氏名】堀 智章
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏也
(57)【要約】
【課題】一般的なロボットを利用して拡管作業の効率を向上させることができる自動拡管装置および自動拡管方法を提供する。
【解決手段】自動拡管装置1は、拡管装置3と、ロボット2とを備える。拡管装置3は、エキスパンダ4と、回転駆動機6と、クランプ装置7と、クランプ移動装置8と、送り装置5とを備える。エキスパンダ4は、マンドレル41と、カラー前輪453と、筒状のフレーム44と、複数のローラ43とを有する。カラー前輪453は、マンドレル41にスライド自在に支持されている。筒状のフレーム44は、カラー前輪453の内部に回転可能に支持されている。回転駆動機6は、マンドレル41を回転駆動する。クランプ装置7は、カラー前輪453をクランプする。クランプ移動装置8は、クランプ装置7をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。送り装置5は、マンドレル41をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの拡管加工を行う拡管装置と、
前記拡管装置を支持して移動させるロボットと、を備える自動拡管装置であって、
前記拡管装置は、
エキスパンダであって、
マンドレルと、
前記マンドレルにスライド自在に支持されたカラー部材と、
前記カラー部材の内部に回転可能に支持された筒状のフレームと、
前記フレームに回転自在に保持された複数のローラと、
を有するエキスパンダと、
前記マンドレルを回転駆動する回転駆動機と、
前記カラー部材をクランプするクランプ装置と、
前記クランプ装置を前記エキスパンダの軸方向に移動させるクランプ移動装置と、
前記マンドレルを前記エキスパンダの軸方向に移動させる送り装置と、
を備える自動拡管装置。
【請求項2】
前記フレームの外周面にカラー後輪が固定されており、
前記カラー部材は、前記カラー後輪に対して前記エキスパンダの先端側にボールリテーナを介して回転自在に配置される、
請求項1に記載の自動拡管装置。
【請求項3】
前記マンドレルが軸方向外力を受けている間、前記マンドレルを前記軸方向外力の方向に移動させるように前記送り装置を動作させることで前記マンドレルの位置を前記マンドレルの軸方向の動きに追従させる制御装置、を備える、
請求項1または請求項2に記載の自動拡管装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記クランプ移動装置によって前記クランプ装置が前記マンドレルの先端側に移動させられ、かつ前記クランプ装置によって前記カラー部材がクランプされた状態において、前記クランプ装置の軸方向位置についての前記クランプ移動装置による保持力を解除する制御を行う、
請求項3に記載の自動拡管装置。
【請求項5】
前記送り装置は、
圧縮空気によって駆動力を発生させる送りシリンダと、
前記送りシリンダ内に摺動可能に配置されるピストンと、
基端が前記ピストンに固定され、先端が前記送りシリンダから突出して延びるピストンロッドと、
前記ロボットに固定されるベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートは、支持部を有し、
前記ピストンロッドの先端は、前記支持部に接続される、
請求項1または請求項2に記載の自動拡管装置。
【請求項6】
前記クランプ移動装置は、
圧縮空気によって駆動力を発生させるシリンダボディと、
前記シリンダボディ内に摺動可能に配置されるピストンと、
基端が前記ピストンに固定され、先端が前記シリンダボディから突出して延びるピストンロッドと、を備え、
前記ピストンロッドの先端は、前記クランプ装置に接続される、
請求項1または請求項2に記載の自動拡管装置。
【請求項7】
クランプ移動装置が、ローラが回転可能に保持されているフレームを有するフレーム部材を、前記フレーム部材が外嵌されるマンドレルに対して、前記マンドレルの先端側に移動させ、
クランプ装置が前記フレーム部材をクランプし、
ロボットが前記フレーム部材と前記マンドレルとをチューブ内に挿入し、
前記フレーム部材と前記マンドレルとが所定位置に到達するときに、前記ロボットが停止し、
送り装置が、回転駆動機によって一方向に回転している前記マンドレルを先端側に送り、
前記フレームが前記一方向に回転して前記マンドレルが先端方向に自己推進し、
前記ローラが前記チューブを拡管し、
前記回転駆動機の負荷トルクが予め決められた設定トルクに到達するときに、前記回転駆動機が前記マンドレルの回転を一旦停止し、
前記回転駆動機が前記マンドレルを前記一方向の逆方向である他方向に回転し、前記フレームが前記他方向に回転して前記マンドレルが基端方向に自己後退し、
前記送り装置が、前記他方向に回転している前記マンドレルを基端側に引き戻し、
前記ロボットが、前記フレーム部材と前記マンドレルとを前記チューブから引き抜く、
自動拡管方法。
【請求項8】
前記マンドレルが前記一方向に回転して先端方向に自己推進する場合、および前記マンドレルが前記他方向に回転して基端方向に自己後退する場合において、前記マンドレルが軸方向外力を受けるときに、前記送り装置が、前記マンドレルを前記軸方向外力の方向に移動させて、前記マンドレルの位置が前記マンドレルの軸方向の動きに追従させられる、
請求項7に記載の自動拡管方法。
【請求項9】
前記クランプ移動装置によって前記クランプ装置が前記マンドレルの先端側に移動させられ、かつ前記クランプ装置によって前記フレーム部材がクランプされた状態において、前記クランプ装置の軸方向位置についての前記クランプ移動装置による保持力を解除する、
請求項8に記載の自動拡管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動拡管装置および自動拡管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンドレルとフレーム部材を有するエキスパンダと、マンドレルを回転駆動する回転駆動機と、フレーム部材をクランプするクランプ装置と、クランプ装置をエキスパンダの軸方向に移動させる移動装置と、を有する拡管装置と、拡管装置を支持して移動させるロボットを含む自動拡管装置が提案されている(特開2020-138213号公報。以下、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フレーム部材が外嵌されるマンドレルは、回転しながら、フレーム部材に回転可能に保持されるローラのフィードアングル作用によって先端側に移動(自己推進)する。特許文献1に記載のロボットは、エキスパンダが軸方向外力を受けている間、エキスパンダを軸方向外力の方向に移動させるようにロボットを動作させることでロボットによる拡管装置の支持位置をエキスパンダの軸方向の動きに追従させる機能(以下、追従機能。)を持つ。しかし、一般的に、ロボットは追従機能を有していない。特許文献1を実施するためには、ロボットに追従機能を追加する必要がある。
【0004】
本発明は、一般的なロボットを利用して拡管作業を効率よく実行できる自動拡管装置および自動拡管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、
チューブの拡管加工を行う拡管装置と、
前記拡管装置を支持して移動させるロボットと、を備える自動拡管装置であって、
前記拡管装置は、
エキスパンダであって、
マンドレルと、
前記マンドレルにスライド自在に支持されたカラー部材と、
前記カラー部材の内部に回転可能に支持された筒状のフレームと、
前記フレームに回転自在に保持された複数のローラと、
を有するエキスパンダと、
前記マンドレルを回転駆動する回転駆動機と、
前記カラー部材をクランプするクランプ装置と、
前記クランプ装置を前記エキスパンダの軸方向に移動させるクランプ移動装置と、
前記マンドレルを前記エキスパンダの軸方向に移動させる送り装置と、
を含む自動拡管装置である。
【0006】
本発明の第2の観点は、
クランプ移動装置が、ローラが回転可能に保持されているフレームを有するフレーム部材を、前記フレーム部材が外嵌されるマンドレルに対して、前記マンドレルの先端側に移動させ、
クランプ装置が前記フレーム部材をクランプし、
ロボットが前記フレーム部材と前記マンドレルとをチューブ内に挿入し、
前記フレーム部材と前記マンドレルとが所定位置に到達するときに、前記ロボットが停止し、
送り装置が、回転駆動機によって一方向に回転している前記マンドレルを先端側に送り、
前記フレームが前記一方向に回転して前記マンドレルが先端方向に自己推進し、
前記ローラが前記チューブを拡管し、
前記回転駆動機の負荷トルクが予め決められた設定トルクに到達するときに、前記回転駆動機が前記マンドレルの回転を一旦停止し、
前記回転駆動機が前記マンドレルを前記一方向の逆方向である他方向に回転し、前記フレームが前記他方向に回転して前記マンドレルが基端方向に自己後退し、
前記送り装置が、前記他方向に回転している前記マンドレルを基端側に引き戻し、
前記ロボットが、前記フレーム部材と前記マンドレルとを前記チューブから引き抜く、
自動拡管方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一般的なロボットを利用して拡管作業を効率よく実行できる自動拡管装置および自動拡管方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動拡管装置の概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る自動拡管装置の制御構成をエキスパンダの断面図とともに示す概略ブロック図である。
【
図4】自動拡管方法の内容を示すフローチャートである。
【
図5】自動拡管装置の拡管作業時の動作を説明するための概略側面図である。
【
図6】
図5から続く、自動拡管装置の拡管作業時の動作を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る自動拡管装置1について、
図1~
図6を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1、
図2に示すように、本実施形態の自動拡管装置1は、拡管装置3と、ロボット2と、制御装置10とを備える。
【0012】
拡管装置3は、チューブT(
図5(a)等参照、以下同様)の拡管加工を行う。拡管装置3は、熱交換機を構成するチューブTと該チューブTを取付ける管板TB(
図5(a)等参照、以下同様)との接合を、エキスパンダ4によってチューブTの外径を広げて管板TBに形成された取付け孔TBa(
図5(a)等参照、以下同様)の内面に圧接固定することで行う。ロボット2は、例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、直交軸ロボット、パラレルリンクロボットである。ロボット2は、拡管装置3を支持して移動させる。拡管装置3は、ロボット2のアーム21の先端部に固定される。制御装置10は、記憶手段に予め記憶されたプログラムをCPUが実行することで、自動拡管装置1の各部の動作を制御するコンピュータである。
【0013】
拡管装置3は、エキスパンダ4と、回転駆動機6と、クランプ装置7と、クランプ移動装置8と、送り装置5と、カップリング9とを有している。
【0014】
エキスパンダ4は、マンドレル41、筒状のフレーム部材42、および複数のローラ43を有する。マンドレル41には、先端側が小径となるテーパ部411が外周面に形成される。フレーム部材42は、マンドレル41にスライド自在かつ回転自在に外嵌される。複数のローラ43は、フレーム部材42に回転自在に保持される。
【0015】
マンドレル41は、該マンドレル41の先端側(以下、「前側」ともいう)に位置するテーパ部411と、テーパ部411の基端側(以下、「後側」ともいう)に位置する円柱形状の円柱部412とを有する。マンドレル41の先端部には、キャップナット413がねじ締結によって固定される。また、マンドレル41の後端部には、角型シャンク(図示省略)が設けられる。マンドレル41の角型シャンクは、カップリング9を介して、回転駆動機6の回転軸61と接続される。
【0016】
フレーム部材42は、ローラ43を回転自在に保持する円筒状のフレーム44と、フレーム44の外周面に取り付けられた環状のカラー45とを有する。カラー45は、フレーム44の外周面に固定されたカラー後輪451と、カラー後輪451に対して前側(エキスパンダ4の先端側)にボールリテーナ452を介して回転自在に配置されるカラー前輪(カラー部材)453とを有する。すなわち、カラー前輪453は、マンドレル41にスライド自在に支持され、フレーム44は、カラー前輪453の内部に回転可能に支持される。
【0017】
フレーム44の中空部の内径はマンドレル41の円柱部412の外径より僅かに大きい。マンドレル41は、円筒状のフレーム44の中空部を貫通して挿入される。フレーム44の先端側には例えば120度の間隔で周方向均等に長溝であるローラ溝421が複数形成される。各ローラ溝421はフレーム44の長手方向に関し同一位置に配置される。ローラ溝421には裁頭円錐形状のローラ43が係止されて保持される。ローラ43は、ローラ溝421から、フレーム44の径方向の外側および内側に一部露出する。
【0018】
フレーム44の後端側は、一段外径を小さくしてその外周面に雄ねじが形成されており、この雄ねじに、内周面に雌ねじ形成されたカラー後輪451がねじ込まれる。カラー後輪451は、止めナット454によってフレーム44に固定される。なお、カラー後輪451のフレーム44への固定方法は、止めナット454を用いた方法以外に、例えば六角穴付止めねじを用いた方法であってもよい。カラー後輪451の前面にボールリテーナ452が配置され、ボールリテーナ452の前面にカラー前輪453が配置された状態で、これらは止め輪455によって軸方向において一体化されてカラー45を構成する。
【0019】
ローラ43は、フレーム44の径方向内側において、マンドレル41のテーパ部411の外周面に、その長手方向中心軸まわりに回転しながら、その側面が接触する。一方、ローラ43は、フレーム44の径方向外側において、拡管加工時に、拡管されるチューブTの内周面に、その長手方向中心軸まわりに回転しながら、マンドレル41との接触部とはほぼ反対側の側面が接触する。
【0020】
図3に示すように、ローラ43は、その中心軸がフレーム部材42の軸方向(マンドレル41の軸方向と同じ)に対して所定角度θだけ傾斜して配置される。ローラ43は、マンドレル41のテーパ部411のテーパとは方向が逆で傾きが半分のテーパを有する円錐台状である。
【0021】
図2に示すように、キャップナット413の後端側には、後側が小径となるテーパ面416が形成される。この構成では、フレーム部材42が前側に移動させられてツール径が最小となったときに、フレーム44の前端部がテーパ面416に当接する。これにより、フレーム部材42の中心軸とマンドレル41の中心軸とが合致するように求心させられる。したがって、マンドレル41の先端部の自重による垂れ下がりを抑制でき、エキスパンダ4のチューブT内への挿入性が向上する。ここで、ツール径とは、エキスパンダ4による拡管加工の加工径をいい、複数のローラ43に外接する包絡線で形成される外接円の直径を意味する。
【0022】
回転駆動機6は、エキスパンダ4のマンドレル41を、カップリング9を介して回転駆動する。回転駆動機6として、ここではサーボモータが使用される。
【0023】
クランプ装置7は、エキスパンダ4のフレーム部材42、具体的にはフレーム部材42のカラー前輪453(
図2参照)をクランプする。クランプ装置7は、一対の爪71と、エアチャック72と、エアチャック72を支持する支持板73とを有する。一対の爪71は、エキスパンダ4のフレーム部材42を径方向両側から挟んでクランプする。エアチャック72は、エアシリンダを含む。エアチャック72は、エア圧によって、一対の爪71をエキスパンダ4のフレーム部材42に対してそれぞれ進退移動させる。エアチャック72は、支持板73の前面に固定される。支持板73は、矩形板状である(
図1参照)。
【0024】
図2に示すように、爪71は、爪本体部711と、爪本体部711を支持する爪支持部712とを有する。爪71は、L字状断面を有している。爪本体部711は、フレーム部材42のカラー前輪453の外周面に接触する円弧面713を有する。爪支持部712は、通過部714と、当接部715を有する。通過部714は、爪支持部712の後側に配置される。通過部714は、カラー前輪453の外径よりも小さい内径を有する円弧面を持つ。通過部714は、カラー後輪451及び止めナット454を通過させる。当接部715は、爪支持部712の前側の面に配置される。当接部715は、エキスパンダ4の軸方向においてフレーム部材42のカラー前輪453に当接する。
【0025】
クランプ移動装置8は、クランプ装置7をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。クランプ移動装置8は、回転駆動機6のケーシング62に固定される。クランプ移動装置8として、ここではエアシリンダが使用されるが、例えば電動シリンダが使用されてもよい。
【0026】
クランプ移動装置8は、シリンダボディ81と、ピストン821と、ピストンロッド822とを有する。シリンダボディ81は、シリンダボディ81内に供給される圧縮空気によって駆動力を発生させる。ピストン821は、シリンダボディ81内に摺動可能に配置される。ピストンロッド822は、基端がピストン821に固定されており、先端がシリンダボディ81外に突出して延びる。シリンダボディ81内には、ピストン821を間に挟んで、第1室811と第2室812とがそれぞれ形成される。第1室811と第2室812とは、それぞれ絞り35、流路切替弁33を介して、圧縮空気源31に接続される。絞り35によって圧縮空気の流量が調整される。流路切替弁33は、圧縮空気の供給先を切り替える。
【0027】
第1室811に圧縮空気が供給されるとピストンロッド822が進出し、第2室812に圧縮空気が供給されるとピストンロッド822が後退する。ピストンロッド822の先端は、クランプ装置7に接続される。具体的には、ピストンロッド822の先端がクランプ装置7の支持板73に固定される。また、支持板73には、ガイド棒83が配置されてもよい。ガイド棒83は、クランプ移動装置8に設けられたガイドブッシュ84内にスライド自在に挿通される。これにより、クランプ移動装置8は、クランプ装置7をスムーズに移動できる。
【0028】
また、位置センサ85は、シリンダボディ81に配置される。位置センサ85は、ピストン821の位置を検出する。位置センサ85は、例えばリニアスケールである。
【0029】
送り装置5は、エキスパンダ4のマンドレル41をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。本実施形態では、送り装置5は、ロボット2のアーム21の先端部と回転駆動機6との間に配置されており、回転駆動機6およびカップリング9とともにマンドレル41を移動させる。
【0030】
送り装置5は、送りシリンダ51と、ピストン521と、ピストンロッド522と、直動ガイド53と、ベースプレート54とを有する。送りシリンダ51は、送りシリンダ51内に供給される圧縮空気によって駆動力を発生させる。送りシリンダ51は、回転駆動機6のケーシング62に接続される。ピストン521は、送りシリンダ51内に摺動可能に配置される。ピストンロッド522の基端は、ピストン521に固定される。ピストンロッド522の先端は、送りシリンダ51から突出して延びる。送りシリンダ51内には、ピストン521を間に挟んで、第1室511と第2室512とがそれぞれ形成される。第1室511と第2室512とは、それぞれ絞り34、流路切替弁32を介して、圧縮空気源31に接続される。絞り34によって圧縮空気の流量が調整される。流路切替弁32は、圧縮空気の供給先を切り替える。
【0031】
ベースプレート54は、支持部55を有する。ベースプレート54は、ロボット2のアーム21の先端部に固定される。直動ガイド53は、ベースプレート54に配置され、エキスパンダ4の軸方向に沿って延びる。送りシリンダ51は、直動ガイド53に配置される。送りシリンダ51は、直動ガイド53に案内されて、ベースプレート54に対して往復する。ピストンロッド522の先端は、ベースプレート54の端部に設けられた支持部55に接続される。
【0032】
第1室511に圧縮空気が供給されると、ピストンロッド522が伸長することで、送りシリンダ51が前側に移動する。そして、送りシリンダ51の前側への移動にともなって、回転駆動機6およびカップリング9とともにマンドレル41が前側に移動する。一方、第2室512に圧縮空気が供給されると、ピストンロッド522が後退することで、送りシリンダ51が後側に移動する。そして、送りシリンダ51の後側への移動にともなって、回転駆動機6およびカップリング9とともにマンドレル41が後側に移動する。
【0033】
制御装置10は、位置センサ85と接続されており、位置センサ85からの信号が入力される。また、制御装置10は、回転駆動機6、流路切替弁32,33と接続されており、これらの動作の制御を行う。
【0034】
次に、本実施形態の自動拡管装置1の動作について説明する。自動拡管装置1の動作は、制御装置10によって制御される。
図4~
図6を参照して、自動拡管装置1を用いて拡管作業を行う自動拡管方法について説明する。
【0035】
まず、ロボット2が、拡管装置3のエキスパンダ4を拡管対象となるチューブTの端面に対向する位置に移動させる。拡管対象となるチューブTの位置は、管板TBの取付け孔TBaの位置データ(設計データ)を取り込むことや、管板TBの取付け孔TBaの画像を取り込んで画像処理することによって特定できる。
【0036】
図4に示すように、クランプ装置7がフレーム部材42をアンクランプする(S1)。続いて、回転駆動機6が回転動作(正回転)を開始する(S2)。なお、回転駆動機6の回転動作の開始時期は、後記するステップS5以前であれば適宜変更され得る。
【0037】
続いて、クランプ移動装置8がクランプ装置7を軸方向先端側に移動させる。このとき、クランプ移動装置8は、クランプ装置7の当接部715がフレーム部材42のカラー前輪453に当接した状態で、フレーム部材42をマンドレル41の先端側に移動(前進)させる(S3)。したがって、ローラ43は、マンドレル41のテーパ部411の小径側に位置されることになり、ローラ43の径方向外側への突出量が最も小さくなる。つまり、ツール径が最小となる。
【0038】
続いて、クランプ装置7がフレーム部材42のカラー前輪453をクランプする(S4、
図5(a)参照)。そして、クランプ装置7の軸方向位置についてのクランプ移動装置8による保持力が解除される。具体的には、クランプ移動装置8はブレーキ解除状態、つまり外力に倣って動くフローティング状態となる。
【0039】
続いて、ロボット2が、拡管装置3のエキスパンダ4をチューブT内に挿入する(S6)。
【0040】
続いて、フレーム部材42のカラー前輪453の前端面がチューブTの端面に接触、すなわちカラー前輪453のチューブTへの突き当たりを検知したか否かが判断される(S6)。ここで、位置センサ85がピストン821の位置を監視している。ロボット2が拡管装置3を前進させている途中で、カラー前輪453のチューブTへ突き当ったときに、ピストン821の位置がシリンダボディ81に対して相対的に押し戻される。位置センサ85がピストン821の押し戻しを検知したときに、制御装置10はカラー前輪453のチューブTへ突き当ったものと判断する。なお、フレーム部材42とマンドレル41とが予めプログラムされた所定位置に到達したことが検知されてもよい。
【0041】
カラー前輪453のチューブTへの突き当りが検知されていない場合(S6でNo)、ロボット2によるエキスパンダ4のチューブT内への挿入が継続される。
一方、カラー前輪453のチューブTへの突き当りが検知された場合(S6でYes、
図5(b)参照)、ロボット2が停止する(S7)。すなわち、ロボット2のアーム21の先端部の位置が保持される。つまり、ロボット2はサーボオンの状態でベースプレート54の位置を、外力に逆らって保持する。
【0042】
ロボット2の停止と同時または直後に、送り装置5が動作して送りシリンダ51が前進する(S8、
図5(c)参照)。ここで、送りシリンダ51の前進にともなって、回転駆動機6およびカップリング9とともにマンドレル41が前進する。これにより、拡管加工が行われる。
【0043】
拡管加工中、カラー45のカラー前輪453はチューブTの端面に接触し、回転も軸方向の位置移動もしない。しかし、マンドレル41が回転駆動されるので、マンドレル41の回転により、ローラ43はチューブTの内周面上を自転しながらフレーム44とともに公転する。ローラ43は、軸方向には移動しない。フレーム44はローラ43の自転に伴って自己の中心軸線まわりを公転する。フレーム44は、軸方向には移動しない。
他方、マンドレル41の中心軸とローラ43の中心軸とが所定角度θだけ傾斜するフィードアングルが設けられているため、マンドレル41は回転させられると自然と軸方向に送られる作用が働く。このため、マンドレル41は、回転しながら、ローラ43のフィードアングルの作用によって先端側に移動する。つまり、マンドレル41が自己推進する。このマンドレル41の前方移動によって、ローラ43と、マンドレル41との接触位置がテーパ部411の大径側に移動する。そして、ツール径(ローラ43とチューブTとの接触面の径)が増大し、チューブTは拡管加工を受ける。
【0044】
マンドレル41が自己推進させられる軸方向外力を受けている間、圧縮空気源31は、第1室511に圧縮空気を送る。そして第2室512の空気は排気する。すると、送り装置5は、エキスパンダ4を前進させる。つまり、送り装置5は、マンドレル41を軸方向外力の方向に移動させる。空気は圧縮性流体であるため、マンドレル41の位置が当該マンドレル41の自己推進による軸方向の動きに追従する。
【0045】
このように、エキスパンダ4のマンドレル41は、拡管加工時に自ら前進(自己推進)する方向に軸方向外力がかかり、拡管後に抜き出す際にも自ら抜き出る(自己後退)方向に軸方向外力がかかる。この軸方向外力と送り装置5の動力とが互いに押し付け合わないように、送り装置5は、軸方向外力である負荷に倣うように比較的小さい圧力の圧縮空気で駆動される。
【0046】
続いて、制御装置10は、回転駆動機6の負荷トルクが予め決められた設定トルクに到達したか否かを判断する(S9)。負荷トルクは、回転駆動機6に流れる電流値に基づいて得られる。
【0047】
回転駆動機6の負荷トルクが設定トルクに到達していない場合(S9でNo)、拡管加工が継続される。
一方、回転駆動機6の負荷トルクが設定トルクに到達した場合(S9でYes)、回転駆動機6は、回転を停止し逆回転する(S10)。
【0048】
回転駆動機6の逆回転と同時に、送り装置5が動作して送りシリンダ51が後退する(S11)。ここで、送りシリンダ51の後退にともなって、回転駆動機6およびカップリング9とともにマンドレル41が後退する。つまり、送り装置5が、逆回転しているマンドレル41を基端側に引き戻す。マンドレル41は、逆回転しながら、ローラ43のフィードアングルの作用によって基端側に移動、すなわち自己後退する。このマンドレル41の後方移動によってローラ43のマンドレル41との接触位置がテーパ部411の小径側に移動するので、ツール径が減少する。
【0049】
マンドレル41が自己後退させられる軸方向外力を受けている間、圧縮空気源31は、第2室512に圧縮空気を送る。そして第1室511の空気は排気する。送り装置5は、マンドレル41を後退させる。つまり、送り装置5は、マンドレル41を軸方向外力の方向に移動させる。これにより、マンドレル41の位置は、当該マンドレル41の自己後退による軸方向の動きに追従する。送り装置5は、後退端まで、マンドレル41を後退させる。
【0050】
なお、ステップS8やステップS11において、送り装置5から駆動用空気を排気してもよい。具体的には、第1室511及び第2室512が大気解放される。この場合、ピストン521は外力によって自在に動くため、ピストン52はマンドレル41の自己推進や自己後退に伴って前進又は後退する。
【0051】
続いて、ロボット2が拡管装置3のエキスパンダ4をチューブTから抜き出し(S12、
図6(b)参照)、回転駆動機6が回転を停止する。
【0052】
前記したように、本実施形態に係る自動拡管装置1は、チューブTの拡管加工を行う拡管装置3と、拡管装置3を支持して移動させるロボット2とを含む。拡管装置3は、エキスパンダ4と、回転駆動機6と、クランプ装置7と、クランプ移動装置8と、送り装置5とを含む。エキスパンダ4は、マンドレル41と、カラー前輪(カラー部材)453と、筒状のフレーム44と、複数のローラ43とを有する。カラー前輪453は、マンドレル41にスライド自在に支持される。筒状のフレーム44は、カラー前輪453の内部に回転可能に支持される。複数のローラ43は、フレーム44に回転自在に保持される。回転駆動機6は、マンドレル41を回転駆動する。クランプ装置7は、カラー前輪453をクランプする。クランプ移動装置8は、クランプ装置7をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。送り装置5は、マンドレル41をエキスパンダ4の軸方向に移動させる。
【0053】
この構成では、クランプ移動装置8は、クランプ装置7を介してフレーム部材42をマンドレル41の先端側に移動させる。すると、フレーム部材42に保持されたローラ43は、マンドレル41のテーパ部411の小径側に移動する。これによって、クランプ移動装置8は、エキスパンダ4のツール径を小さくすることができる。そのため、ロボット2は、エキスパンダ4を容易にチューブT内に挿入できる。これにより、拡管装置3は、複数のチューブTを連続で自動拡管させることが可能となり、拡管作業の効率が向上する。
また、拡管加工中に、マンドレル41には、自己推進する方向に軸方向外力がかかる。この軸方向外力と送り装置5の動力とが互いに押し付け合わないように、送り装置5は、軸方向外力である負荷に倣うように圧縮空気で駆動される。したがって、ロボット2は、外力に従って動作する必要はない。
したがって、本実施形態によれば、一般的なロボットを利用して拡管作業の効率を向上できる自動拡管装置1を提供できる。
【0054】
また、本実施形態では、フレーム44の外周面にカラー後輪451が固定されており、カラー前輪453は、カラー後輪451に対してエキスパンダ4の先端側にボールリテーナ452を介して回転自在に配置される。この構成では、フレーム44がカラー前輪453の内部に回転可能に支持される構成を容易に実現できる。この場合、拡管加工中にマンドレル41が自己推進するとき、クランプ装置7によってクランプされたカラー前輪453が拡管対象であるチューブTの端面に押し付けられる。したがって、拡管加工中に、拡管対象であるチューブTがローラ43の回転につられて供回りすることを防止できる。
【0055】
また、本実施形態は、マンドレル41が軸方向外力を受けている間、マンドレル41の位置をマンドレル41の軸方向の動きに追従させる制御装置10を含む。制御装置10は、マンドレル41を軸方向外力の方向に移動させるように送り装置5を動作させることで、エキスパンダ4の進退がその自己推進又は自己後退に追従させる。この構成では、ローラ43のフィードアングルの作用によってエキスパンダ4が自己推進、自己後退する速度に応じて、送り装置5がマンドレル41の位置を自動追従させる。これにより、拡管対象であるチューブTに余計な力を与えることを回避できる。これにより、拡管作業の品質の向上が図られる。
【0056】
また、本実施形態では、制御装置10は、クランプ装置7の軸方向位置についてのクランプ移動装置8による保持力を解除する制御を行う。保持力を解除する制御は、クランプ移動装置8によってクランプ装置7がフレーム部材42とともにマンドレル41の先端側に移動させられ(S3)、かつクランプ装置7によってフレーム部材42がクランプ(S4)された状態において行われる。この構成では、クランプ移動装置8は、外力に倣って動くフローティング状態となる。これにより、拡管加工中に、ローラ43のフィードアングルの作用によってマンドレル41が回転しながらチューブT内を進んでいく際に、エキスパンダ4がチューブTの端面に押し付けられた状態を維持できる。
【0057】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0058】
例えば、前記した実施形態では、送り装置5は、ロボット2のアーム21の先端部と回転駆動機6との間に配置されるが、これに限定されるものではない。例えば、カップリング9を軸方向に伸縮可能に構成し、送り装置5がカップリング9を伸縮させるように動作することでマンドレル41を移動させる構成とされてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 自動拡管装置
2 ロボット
3 拡管装置
4 エキスパンダ
41 マンドレル
42 フレーム部材
43 ローラ
44 フレーム
451 カラー後輪
452 ボールリテーナ
453 カラー前輪(カラー部材)
5 送り装置
51 送りシリンダ
521 ピストン
522 ピストンロッド
54 ベースプレート
55 支持部
6 回転駆動機
7 クランプ装置
8 クランプ移動装置
81 シリンダボディ
821 ピストン
822 ピストンロッド
10 制御装置
T チューブ