(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008235
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エステル交換触媒
(51)【国際特許分類】
C08G 64/20 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C08G64/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109939
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】増渕 徹夫
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB04
4J029AB05
4J029AD01
4J029AD03
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE06
4J029AE11
4J029AE13
4J029AE17
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA10
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BD03A
4J029BD04A
4J029BD07A
4J029BD09A
4J029BD09B
4J029BD10
4J029BF03
4J029BF08
4J029BF09
4J029BF17
4J029BF18
4J029BF25
4J029BF30
4J029BH02
4J029DB06
4J029HC04A
4J029HC04C
4J029HC05A
4J029HC05B
4J029JB131
4J029JB17
4J029JC072
4J029JF071
4J029JF121
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF151
4J029JF161
4J029JF511
4J029JF541
4J029JF561
4J029JF571
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】温和な条件で、ポリカーボネートジオール又はポリエステルを効率的に製造することができるエステル交換触媒を提供する。
【解決手段】長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1、及び、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2の、少なくとも2種のエステル交換触媒を含む、エステル交換触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1、及び、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2の、少なくとも2種のエステル交換触媒を含む、エステル交換触媒。
【請求項2】
エステル交換触媒A1が、
下記式(1)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R
1及びR
3の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R
2は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R
2の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M1は、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(1)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。)
【請求項3】
エステル交換触媒A1が、
下記式(2)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)との塩及び/又はそれらの水和物である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【化2】
(式(2)中、R
4は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R
4の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【請求項4】
金属(M1)が、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【請求項5】
金属(M1)が、マンガンである、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【請求項6】
エステル交換触媒A2が、
下記式(3)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【化3】
(式(3)中、R
5及びR
7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R
5及びR
7の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R
6は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R
6の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M2は、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(3)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。)
【請求項7】
エステル交換触媒A2が、
下記式(4)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)との塩及び/又はそれらの水和物である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【化4】
(式(4)中、R
8は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R
8の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【請求項8】
エステル交換触媒A2が、下記式(5)で表される、少なくとも1種のアルコールと、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)とのアルコキシドである、請求項1に記載のエステル交換触媒。
【化5】
(式(5)中、R
9は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R
9の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【請求項9】
金属(M2)が、マグネシウム及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【請求項10】
金属(M2)が、カルシウムである、
請求項1に記載のエステル交換触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂は、合成皮革、人工皮革、接着剤、家具用塗料、自動車塗料等の幅広い領域で使用されている。
前記ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂を製造する際に、イソシアネートと反応させるポリオール成分としてはポリエーテルやポリエステルが用いられている(例えば、特許文献1、及び非特許文献1参照)。
しかしながら、近年、前記ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂に対して、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐黴性、耐油性等、樹脂の耐性への要求が高度化してきている。
【0003】
そうした高度な要求性能に対応するため、耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性等に優れたソフトセグメントとして、各種のポリカーボネートジオールが提案されている(例えば、特許文献2~5参照)。
【0004】
ポリカーボネートジオールやポリエステルの製造には、従来から通常エステル交換触媒が使用されている。
例えば、ジエチルカーボネートと1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールとの共重合ポリカーボネートジオールの製造においては、金属ナトリウムが触媒として用いられており(例えば、特許文献6参照)、ジエチルカーボネートと1,3-プロパンジオールや2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオールのようなジオールとの組み合わせにおいては、ナトリウムエトキシドや酢酸マグネシウムが触媒として用いられている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
また、エチレンカーボネートと1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオール等のジオール類との共重合ポリカーボネートジオールの製造においては、酢酸鉛やテトラ-n-ブチルチタネートが触媒として用いられており、エチレンカーボネートと各種アルキレンジオール類及びジエチレングルコールやジブチレングリコールのようなオキシアルキレンジオール類とのポリカーボネートジオールの製造においてはテトラ-n-ブチルチタネートが触媒として用いられている(例えば、特許文献8参照)。
【0006】
また古くは、エチレンカーボネートと1,6-ヘキサンジオールとの組み合わせにおいて共重合ポリカーボネートジオールを製造する場合には、テトラ-n-ブチルチタネートの他、ジブチルスズジラウレートや酢酸ナトリウム、水酸化リチウム、スズ粉末等が触媒として用いられている(例えば、特許文献9参照)。
【0007】
更に、ジフェニルカーボネートと1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールとの共重合ポリカーボネートジオールを製造する場合には、酢酸マグネシウムが触媒として良好に用いられている(例えば、特許文献10参照)。
【0008】
また、近年、より温和な条件でポリカーボネートジオールの色調を改良する方法として、触媒として亜鉛及び長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のアセチルアセトンとの塩(又はアセチルアセトン誘導体との塩)を存在させることを特徴とする、エステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオールの製造方法が開示されている(例えば、特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-95836号公報
【特許文献2】特開2001-123112号公報
【特許文献3】特開平5-51428号公報
【特許文献4】特開平6-49166号公報
【特許文献5】国際公開第2002/070584号
【特許文献6】特開平2-289616号公報
【特許文献7】特開2012-46659号公報
【特許文献8】国際公開第2006/088152号
【特許文献9】特開昭51-144492号公報
【特許文献10】特開2013-010950号公報
【特許文献11】特開2020-125467号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】‘ポリウレタンの基礎と応用’96頁~106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術では、種々の反応性の異なるジヒドロキシ化合物を重縮合反応させるためには反応温度を高く設定したり、触媒を多く加えたりする必要があり、ポリカーボネートジオールやポリエステルの着色や熱劣化を招くおそれがある、という問題点を有している。そのため、当該分野で公知のエステル交換触媒は、種々のポリカーボネートジオールやポリエステルの製造にあたり、改善の余地がある。
【0012】
例えば、触媒としてアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はそれらのアルコキシド等の強塩基を使用すると、ポリカーボネートジオールやポリエステルの着色が起きやすい。
【0013】
また、チタン化合物を触媒として使用する場合は、触媒の活性が十分ではないため、ポリカーボネートジオールやポリエステルの製造に長時間を要する傾向にある。反応時間が長いと、好ましくないエーテル基やビニル基の形成が促進される。これらの基は、ポリカーボネートジオールやポリエステルをポリウレタン原料として使用する場合、得られるポリウレタンの耐候性や耐熱性を損なう原因となり得るため、ポリウレタン原料として好ましくない。
【0014】
一方、鉛化合物や有機スズ化合物は、近年、人体への有害性や生態系への悪影響が明らかにされてきている。そのためこれらの化合物は、ポリカーボネートジオールやポリエステル中に残存する成分として好ましくない。
【0015】
また、触媒として酢酸マグネシウムやマグネシウムアルコキシドやマグネシウムアセチルアセトンを用いた場合には、チタン化合物に比べると重合活性が高く生産性の改良が見られるが十分ではなく、そのため得られるポリカーボネートジオールやポリエステルの着色や、生産性の向上の点で、改善の余地がある。
【0016】
そこで、本発明においては、効率良く(具体的には、より温和な反応条件下で、かつ短時間に)ポリカーボネートジオールやポリエステルを製造できる、高活性なエステル交換触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、従来技術の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネートジオールやポリエステルを製造する際に、特定の金属を含有する、少なくとも2種のエステル交換触媒を含むエステル交換触媒を用いることにより、ポリカーボネートジオールやポリエステルを効率よく製造することができ、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0018】
〔1〕
長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1、及び、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2の、少なくとも2種のエステル交換触媒を含む、エステル交換触媒。
〔2〕
エステル交換触媒A1が、
下記式(1)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物である、前記〔1〕に記載のエステル交換触媒。
【0019】
【0020】
(式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R1及びR3の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R2は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R2の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M1は、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(1)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。)
【0021】
〔3〕
エステル交換触媒A1が、
下記式(2)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)との塩及び/又はそれらの水和物である、前記〔1〕に記載のエステル交換触媒。
【0022】
【0023】
(式(2)中、R4は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R4の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【0024】
〔4〕
金属(M1)が、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
〔5〕
金属(M1)が、マンガンである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
〔6〕
エステル交換触媒A2が、下記式(3)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
【0025】
【0026】
(式(3)中、R5及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R5及びR7の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R6は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R6の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M2は、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(3)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。)
【0027】
〔7〕
エステル交換触媒A2が、
下記式(4)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)との塩及び/又はそれらの水和物である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
【0028】
【0029】
(式(4)中、R8は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R8の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【0030】
〔8〕
エステル交換触媒A2が、下記式(5)で表される、少なくとも1種のアルコールと、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)とのアルコキシドである、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
【0031】
【0032】
(式(5)中、R9は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R9の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。)
【0033】
〔9〕
金属(M2)が、マグネシウム及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
〔10〕
金属(M2)が、カルシウムである、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載のエステル交換触媒。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、従来技術に対してより温和な条件で、ポリカーボネートジオール又はポリエステルを効率的に製造することができるエステル交換触媒を提供することができる。
また、本発明のエステル交換触媒を使用することにより、色調に優れ、エーテル結合が少なく、かつ末端1級水酸基(OH)純度の高いポリカーボネートジオール又はポリエステル、及び前記ポリカーボネートジオール又はポリエステルを使用した、耐薬品性、耐熱性、耐加水分解性に優れるポリウレタンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0036】
<1.エステル交換触媒>
本実施形態のエステル交換触媒は、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1、及び、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2、の少なくとも2種類のエステル交換触媒から構成される。
【0037】
<1-1.長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1>
長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1の1つの形態としては、下記式(1)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物であることが好ましい。
【0038】
【0039】
式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R1及びR3の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R2は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R2の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M1は、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(1)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。
【0040】
式(1)で表される金属錯体の金属への配位子は、アセチルアセトン類縁体であり、下記式(I)に示すように、陰イオンが非局在化している形式で記載できるが、同様に下記式(II)で示すように、3種の有機アニオンの平衡状態として表すこともできる。
【0041】
【0042】
【0043】
式(I)及び式(II)中、R1及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R1及びR3の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R2は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R2の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。
【0044】
前記式(1)で表されるエステル交換触媒を調製する方法としては、例えば下記式(III)に示すように、塩基の存在下で金属のハロゲン化塩とアセチルアセトン類縁体とを作用させることにより前記式(1)で表されるエステル交換触媒を調製する方法や、下記式(IV)に示すように、金属のアルコキシドとアセチルアセトン類縁体との交換により前記式(1)で表されるエステル交換触媒を調製する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
【0046】
【0047】
式(III)、(IV)中、R1、R2、R3、M1及びnは、前記式(1)における定義と同じであり、Xは任意のハロゲン原子であり、R6は任意の炭化水素基である。
【0048】
また、前記式(1)で表されるエステル交換触媒と共に、補助的に遷移金属化合物や、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
【0049】
前記式(1)中のR1、R3としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。これらのうち、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が好ましい。なお、R1とR3とは同一でも異なるものであってもよい。
【0050】
また、R2としては、以下に限定されないが、例えば、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらのうち、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0051】
長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族からなる群より選ばれる金属(M1)としては、以下に限定されないが、触媒活性の観点から、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅が好ましく、この中で、マンガンがよりに好ましい。
【0052】
また、本実施形態において、エステル交換触媒として使用する、これらアセチルアセトン類縁体との有機金属錯体は、水和物として使用することも可能である。
【0053】
長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1のもう1つの形態としては、下記式(2)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)との塩及び/又はそれらの水和物であることが好ましい。
【0054】
【0055】
式(2)中、R4は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R4の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。
【0056】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これらのうち、酢酸、プロピオン酸、酪酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
【0057】
前記式(2)中の長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族からなる群より選ばれる金属(M1)としては、以下に限定されないが、触媒活性の観点から、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅が好ましく、この中で、マンガンがよりに好ましい。
【0058】
また、本実施形態において、エステル交換触媒として使用する、これらカルボン酸の塩は、水和物として使用することも可能である。
【0059】
<1-2.長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2>
本実施形態のエステル交換触媒は、上述したエステル交換触媒A1と、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2とを併用する。
【0060】
長周期型周期表の第2族の金属としては、以下に限定されないが、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。これらのなかでは、マグネシウム、カルシウムは、触媒活性が高く好ましい。特に活性が高く、また生成するポリカーボネートジオールのエーテル結合量の少ない、カルシウムがよりに好ましい。
【0061】
これら長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2の形態としては、特に限定されないが、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、各種アルコールのアルコキシド、水酸化物が挙げられる。
【0062】
長周期型周期表の第2の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2の1つの形態としては、下記式(3)で表される、少なくとも1種の金属錯体及び/又はそれらの水和物であることが好ましい。
【0063】
【0064】
式(3)中、R5及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R5及びR7の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、R6は、水素、又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表し、R6の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよく、M2は、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、nは、1、2又は3である。また、式(3)で表される金属錯体は複数個の会合体でもよい。
【0065】
前記式(3)中のR5、R7としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。これらのうち、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が好ましい。なお、R5とR7とは同一でも異なるものであってもよい。
【0066】
また、R6としては、以下に限定されないが、例えば、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらのうち、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0067】
前記式(3)中の長周期型周期表の第2族からなる群より選ばれる金属(M2)としては、以下に限定されないが、触媒活性の観点から、マグネシウム及びカルシウムが好ましく、この中で、カルシウムが特に好ましい。
【0068】
長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2のもう1つの形態としては、下記式(4)で表される、少なくとも1種のカルボン酸と、長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)との塩及び/又はそれらの水和物であることが好ましい。
【0069】
【0070】
式(4)中、R8は、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R8の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。
【0071】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等が挙げられ、これらのうち、酢酸、プロピオン酸、酪酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
【0072】
長周期型周期表の第2族からなる群より選ばれる金属(M2)としては、以下に限定されないが、触媒活性の観点から、マグネシウム及びカルシウムが好ましく、この中で、カルシウムがより好ましい。
【0073】
長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2のもう1つの形態としては、下記式(5)で表される、少なくとも1種のアルコールと、長周期型周期表、第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)とのアルコキシドであることが、触媒活性が高く、また着色が少ないため好ましい。
【0074】
【0075】
式(5)中、R9は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R9の炭化水素基にはハロゲン原子が置換していてもよく、また、酸素原子を有していてもよい。
【0076】
前記式(5)で表される、少なくとも1種のアルコールと、長周期型周期表の第2族の金属とのアルコキシドとしては、以下に限定されないが、例えば、ベリリウムアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド、ストロンチウムアルコキシド、バリウムアルコキシド、ラジウムアルコキシド等が挙げられる。これらアルコキシドのなかで、触媒活性が高く、生成するポリカーボネートジオールのエーテル結合量及び着色の少ない、マグネシウムアルコキシド、カルシウムアルコキシドが好ましく、カルシウムアルコキシドがより好ましい。
【0077】
長周期型周期表の第2族の金属とのアルコキシドとしては、以下に限定されないが、例えば、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジメトキシカルシウム、ジエトキシカルシウム、ジプロポキシカルシウム、ジブトキシカルシウム等が挙げられる。これらのうち、ジメトキシカルシウム、ジエトキシカルシウム、ジプロポキシカルシウム、ジブトキシカルシウムがより好ましい。
【0078】
本実施形態のエステル交換触媒は、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1、並びに長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M2)を含有するエステル交換触媒A2、の少なくとも2種類のエステル交換触媒からなるエステル交換触媒である。
【0079】
エステル交換触媒A1又はエステル交換触媒A2を、それぞれ単独で使用するよりも、エステル交換触媒A1とエステル交換触媒A2とを併用することにより、より高い触媒活性が得られ、効率良くポリカーボネートジオールやポリエステルを製造することができる。
【0080】
このような効果を発現するメカニズムは明らかではないが、本発明者は、下記式(V)に示す反応機構によるものと推定している。まず、長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M1)を含有するエステル交換触媒A1は、ルイス酸としてカーボネート基またはエステル基のカルボニル酸素に配位する。その結果カルボニル炭素のカチオン性を高くし、エステル交換反応を活性化させる。一方、長周期型周期表の第1族及び第4族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属M1を含有するエステル交換触媒A2は、アルコールの酸素をアニオン化させ、活性化されたカルボニル炭素との反応を促進させると考えられる。
【0081】
【0082】
式(V)中、M1は長周期型周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族及び第11族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、M2は長周期型周期表の第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を表し、R10、R11、R12は任意の炭化水素、L1、L2は任意の配位子(複数個の場合も有る)を表す。
【0083】
<2.触媒の使用方法>
本実施形態のエステル交換触媒の使用方法としては、例えば、ポリカーボネートジオールの製造に使用する場合、通常、原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとを用い、本実施形態のエステル交換触媒を加えて、エステル交換反応により重縮合させる方法が挙げられる。また、ポリエステルの製造に使用する場合、通常、原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物とアジピン酸やフタル酸等の二塩基酸及び/又はそれらのメチルエステル、エチルエステル化合物とを用い、本実施形態のエステル交換触媒を加えて、エステル交換反応により重縮合させる方法が挙げられる。
本実施形態のエステル交換触媒を使用することにより、ポリカーボネートジオール又はポリエステルを効率良く(例えば、より温和な反応条件下で、かつ短時間に)製造することができる。
以下、ポリカーボネートジオールの製造方法を例として、触媒の具体的な使用方法について述べる。
【0084】
<2-1.原料モノマー>
本実施形態のエステル交換触媒を使用し、ポリカーボネートジオールを製造する場合、通常、ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとを原料モノマーとて使用する。
【0085】
<2-1-1.ジヒドロキシ化合物>
原料モノマーとなるジヒドロキシ化合物としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、及び1,20-エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジヒドロキシ化合物類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のエーテル基を有するジヒドロキシ化合物類;ビスヒドロキシエチルチオエーテル等のチオエーテルジオール類;2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(以下ネオペンチルグリコールと略記することがある)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、及び2-ペンチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等の2,2-ジアルキル置換1,3-プロパンジオール類(以下、2,2-ジアルキル-1,3-プロパンジオール類と記載することがある。);2,2,4,4-テトラメチル-1,5-ペンタンジオール、及び2,2,9,9-テトラメチル-1,10-デカンジオール等のテトラアルキル置換アルキレンジオール類、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含むジヒドロキシ化合物類;2,2-ジフェニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジビニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメトキシ-1,3-プロパンジオール、ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)エーテル、ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)チオエーテル並びに2,2,4,4-テトラメチル-3-シアノ-1,5-ペンタンジオール、等の分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、スピログリコール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール及び4,4’-イソプロピリデンビス(2,2’-ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジヒドロキシ化合物類;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン、等の芳香環を有するジヒドロキシ化合物、ジエタノールアミン及びN-メチルージエタノールアミン等の含窒素ジヒドロキシ化合物類;並びにビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジヒドロキシ化合物類;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類、等を挙げることができる。
【0086】
中でも、本実施形態のエステル交換触媒を用いて製造したポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタンの耐候性の観点からは、ジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0087】
このようなジヒドロキシ化合物のうち、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0088】
<2-1-2.炭酸エステル>
本実施形態エステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオールの製造において、原料モノマーとして使用可能な炭酸エステルとしては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0089】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造に用いることができる炭酸エステルのうち、ジアルキルカーボネートとしては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられる。
【0090】
ジアリールカーボネートとしては、以下に限定されないが、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジm-クレジルカーボネート等が挙げられる。
【0091】
アルキレンカーボネートとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、1,5-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、2,4-ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられる。
【0092】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
これら炭酸エステルのなかでも、工業原料として安価に入手可能であり、反応性が良く、副生するアルコールの量が少ない、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0094】
<2-1-3.原料モノマーの使用割合>
本実施形態エステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオールの製造において、炭酸エステルの使用量は、ポリカーボネートジオールの目的分子量により適宜変更する必要があり、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物類の合計1モルに対するモル比で下限が好ましくは0.5、より好ましくは0.7、さらに好ましくは0.8であり、上限は通常1.5、好ましくは1.3、より好ましくは1.2である。炭酸ジエステルの使用量が上記上限以下であると、得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合を抑制することができ、又は、分子量が所定の範囲にあるポリカーボネートジオールを製造できる傾向にあり、前記下限以上であると、所定の分子量まで重合が進行する傾向にある。
【0095】
<2-2.エステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオールの製造方法>
本実施形態のエステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオールの製造方法においては、前述のジヒドロキシ化合物の1種又は複数種と前述の炭酸エステルの1種又は2種以上を、前述の少なくとも2種のエステル交換触媒A1、及びA2の存在下にエステル交換させることにより、ポリカーボネートジオールを製造する。
【0096】
<2-2-1.触媒の使用量>
前記ポリカーボネートジオールの製造における本実施形態のエステル交換触媒の使用量としては、エステル交換触媒A1の量が、前記金属(M1)としての合計量として、全ジヒドロキシ化合物と炭酸エステル又は二塩基酸との合計量に対し、好ましくは0.5ppm以上20ppm以下、より好ましくは1ppm以上10ppm以下、さらに好ましくは2ppm以上7ppm以下であり、エステル交換触媒A2の量が、前記金属(M2)としての合計量として、全ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとの合計量に対し、好ましくは0.25ppm以上10ppm以下、より好ましくは0.5ppm以上5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以上3ppm以下である。
【0097】
エステル交換触媒A1の量が、金属(M1)としての合計量で0.5ppm以上であると、エステル交換の反応速度が速くなる傾向にある。また、エステル交換触媒の量が、金属(M1)としての合計量で20ppm以下であると、得られるポリカーボネートジオール又はポリエステルの着色を抑制でき、ウレタン原料として使用する場合、ウレタン化反応が安定する傾向にあり、得られるウレタンの色調が良好となり、また耐熱性が向上する傾向にある。
【0098】
エステル交換触媒A2の量が、金属(M2)としての合計量で0.25ppm以上であると、エステル交換の反応速度が速くなる傾向にある。また、エステル交換触媒の量が、金属(M2)としての合計量で10ppm以下であると、得られるポリカーボネートジオール及びポリエステルの着色を抑制でき、エーテル結合が少なくなり、またウレタン原料として使用する場合、ウレタン化反応が安定する傾向にあり、得られるウレタンの色調が良好となり、また耐熱性が向上する傾向にある。
【0099】
<2-2-2.反応条件等>
反応原料の仕込み方法は、特に制限はなく、例えば、1種又は複数種のジヒドロキシ化合物と炭酸エステル、又は二塩基酸と、エステル交換触媒との全量を同時に仕込み反応に供する方法や、炭酸エステル、又は二塩基酸が固体の場合、まず、炭酸エステル、又は二塩基酸を仕込んで加温、溶融させておき後からジヒドロキシ化合物及びエステル交換触媒を添加する方法、逆に、ジヒドロキシ化合物が固体の場合、ジヒドロキシ化合物を先に仕込んでおいて溶融させ、ここへ炭酸エステル、又は二塩基酸、及びエステル交換触媒を投入する方法等、自由にその方法は選択できる。
【0100】
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、下限は好ましくは80℃、より好ましくは110℃、さらに好ましくは130℃である。また、反応温度の上限は、好ましくは220℃、より好ましくは200℃、さらに好ましくは180℃、さらにより好ましくは170℃である。反応温度が前記下限以上であると、エステル交換反応が実用的な速度で進行する傾向にある。また、反応温度が前記上限以下であると、得られるポリカーボネートジオールの着色を抑制でき、エーテル結合の生成を抑制したり、濁度が良好となる等の品質が向上する傾向にある。
【0101】
特に、本実施形態のエステル交換触媒を用いることにより、温和な反応条件下で、例えば、160℃以下(好ましくは150℃以下)という低温でも短時間で効率よくポリカーボネートジオール、又はポリエステルを得ることができる。
【0102】
反応は常圧で行うこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成するモノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には減圧条件を採用してモノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物を留去しながら反応することが好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて生成するモノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物を留去しながら反応させていくことも可能である。反応の途中から徐々に圧力を下げていくと、低沸点未反応モノマーの揮発を抑制でき、収率が向上するとともに、所定の分子量のポリカーボネートジオール、又はポリエステルが得られたり、共重合の場合には所定の共重合組成比のポリカーボネートジオール、又はポリエステルが得られたりする傾向にある。
【0103】
反応時の圧力は留出させる炭酸エステル、又は二塩基酸由来のアルコールの種類により適宜選択されるが(二塩基酸の場合は水又はアルコール)、例えば留出させるアルコールがメタノール等の比較的低沸点のアルコールの場合、反応器の好ましい圧力は、5kPa~常圧、より好ましくは7kPa~15kPaである。また、留出させるアルコールがエチレングリコール等の比較的高沸点のアルコールの場合、反応器の好ましい圧力は、1~10kPa、より好ましくは3kPa~7kPaである。
【0104】
さらにこれら反応初期における原料の留去を防ぐ意味で反応器には、理論段数10段以上、好ましくは15段以上、さらに好ましくは20段以上の精留塔をつけて、炭酸エステルから反応により生成した水、モノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物を、共沸する、原料の炭酸エステルやジヒドロキシ化合物を還流、分離させながら、炭酸エステルから反応により生成した水、モノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物を効率良く分離、留去させることも可能である。この場合、仕込んだ原料モノマーが失われず試剤の量比を正確に合わせることができるので好ましい。
【0105】
また、反応の終期においては、通常単蒸留に切り替え、減圧度を高めて反応を行うと、副生したアルコール類及びジオール類、フェノール類、等のモノヒドロキシ化合物又はジヒドロキシ化合物、炭酸エステル等の残存モノマー、さらには濁りの原因となる可能性のある環状カーボネート(環状オリゴマー)等を、効率よく留去することができるので好ましい。
【0106】
この際の反応終了時の反応圧力は、特に限定はされないが、通常上限が好ましくは5kPa、より好ましくは2kPa、さらに好ましくは1kPaである。これら低沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを少量通じながら該反応を行うこともできる。
【0107】
エステル交換反応の際に沸点が低い炭酸エステルやジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期は炭酸エステルやジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応の炭酸エステルやジヒドロキシ化合物の留去を防ぐことができるので好ましい。
【0108】
<2-3.重合反応器>
重合反応(重縮合反応)は、バッチ式でも連続式でも行うことができる。使用する装置は、槽型、管型及び塔型のいずれの形式であってもよく、各種の撹拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧又は減圧下で行われるのが好ましい。
【0109】
<2-4.反応時間>
本実施形態のエステル交換触媒を使用したポリカーボネートジオール、又はポリエステルの製造において、エステル交換反応(重合反応又は重縮合反応)に必要な時間は、使用するジヒドロキシ化合物、炭酸エステル、エステル交換触媒の種類や使用量により大きく異なるので一概に規定することはできないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。
【0110】
<2-5.触媒の不活性化>
前述の如く、エステル交換反応の際に本実施形態のエステル交換触媒を用いた場合、通常得られるポリカーボネートジオール、又はポリエステルには、本実施形態のエステル交換触媒、又はその残渣が残存し、ポリウレタン化反応を行う際に反応の制御ができなくなる場合がある。この残存触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの触媒失活剤、例えば酸性あるいは分解して酸性化合物になるリン系、イオウ系等の化合物を添加してもよい。さらには添加後、後述のように加熱処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。また、不活性化することにより、エステル交換触媒に由来する発色を低減することができ、JIS-K0071-1(1998)に準拠し測定したハーゼン色数が、好ましくは50以下、より好ましくは30以下のポリカーボネートジオールを得ることができる。
【0111】
また触媒失活剤の添加により、得られたポリカーボネートジオール、又はポリエステルの、高温、長時間の貯蔵時や取り扱い時に、残存触媒の末端構造や骨格が変化することによっておこる着色や物性変化を抑制することができる。
【0112】
エステル交換触媒の不活性化に使用される化合物(以下、触媒失活剤と称することがある)としては、以下に限定されないが、例えば、リン酸、亜リン酸等の無機リン酸や、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル等の有機リン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
前記触媒失活剤の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。前記下限以上の量の触媒失活剤を使用した場合は、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分に行われ、得られたポリカーボネートジオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用するとき、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができる傾向にある。また、前記上限以下の量の触媒失活剤を使用すると、得られるポリカーボネートジオール、又はポリエステルの着色を抑制できるとともに、ウレタン原料として使用する場合にウレタンの重合を良好に進行させることができる傾向にある。
【0114】
触媒失活剤を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加温処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは140℃、より好ましくは130℃、さらに好ましくは120℃であり、下限は、好ましくは80℃、より好ましくは100℃、さらに好ましくは110℃である。前記下限以上の温度の場合は、エステル交換触媒の失活に時間が短くなり効率的であり、また失活の程度も十分となる。一方、140℃以下の温度では、失活剤としてリン系化合物を用いる場合、リン系化合物の分解を抑制でき、失活が安定して行われる傾向にある。そのため、得られるポリカーボネートジオールの着色を抑制でき、ウレタン原料として使用する場合、ウレタン化反応が安定する傾向にある。
【0115】
触媒失活剤と反応させる時間は特に限定するものではないが、例えば、1~5時間である。
【0116】
<3.本実施形態のエステル交換触媒を用いて製造されたポリカーボネートジオール又はポリエステルの特徴>
本実施形態のエステル交換触媒を使用し製造されたポリカーボネートジオール又はポリエステルは、機械的特性や耐久性に優れるため、多様な用途に使用することができる。
例えば、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料等に広く用いることができる。特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、医療用材料、床材、コーティング剤等の用途に、本実施形態のエステル交換触媒を用いて製造したポリカーボネートジオールを原料として用いると、耐候性、耐熱性、耐湿熱性、耐摩擦性、に優れるため、着色が少なく、また引っ掻き等による傷がつきにくく、摩擦による劣化の少ないという良好な表面特性を付与することができるため、各種コーティングの原料として好適に使用される。
【実施例0117】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例中の部数は特に断らない限り質量部である。
【0118】
また、以下の実施例及び比較例において得たエステル交換触媒の性能、前記エステル交換触媒を用いて製造したポリカーボネートジオール、及び前記ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンフィルムの諸物性は、下記の試験方法に従って試験を実施した。
【0119】
〔試験方法〕
[エステル交換触媒性能の評価]
ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルからのポリカーボネートジオール(PCD)の製造において、例えば、下記式(9)に示すように、エステル化工程でモノマー原料である炭酸エステル(例えば、エチレンカーボネート(EC))とジヒドロキシ化合物(原料ジオール)とが減少し、ポリカーボネートジオール(PCD)が生成し、炭酸エステル由来のヒドロキシ化合物(原料の炭酸エステルがジアルキルカーボネートにおいてはモノヒドロキシ化合物。原料の炭酸エステルがアルキレンカーボネートにおいてはジヒドロキシ化合物。例えば、エチレングリコール(EG))が副生する。
【0120】
【0121】
(ここでは、炭酸エステルとしてエチレンカーボネート(EC)を使用した例を示した。この場合は反応によりエチレングリコール(EG)が副生する。)
【0122】
触媒性能の評価方法としては、ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとからのポリカーボネートジオール(PCD)の生成反応において、反応開始1時間後、及び2時間後の留出したヒドロキシ化合物(原料の炭酸エステルがジアルキルカーボネートにおいてはモノヒドロキシ化合物。原料の炭酸エステルがアルキレンカーボネートにおいてはジヒドロキシ化合物。例えば、エチレングリコール(EG))の量を、ガスクロマトグラフィーにより求め、カーボネート転化率を下記式(10)、(11)又は(12)により求めた。
【0123】
(アルキレンカーボネート使用時のカーボネート転化率の算出方法)
カーボネート転化率(%)=(留出したジヒドロキシ化合物のモル数)/(仕込み炭酸エステルのモル数)×100 (10)
【0124】
(ジアルキルカーボネート使用時のカーボネート転化率の算出方法)
カーボネート転化率(%)=(留出したヒドロキシ化合物のモル数/2)/(仕込み炭酸エステルのモル数)×100 (11)
【0125】
(ジフェニルカーボネート使用時のカーボネート転化率の算出方法)
カーボネート転化率(%)=(留出したフェノールのモル数/2)/(仕込み炭酸エステルのモル数)×100 (12)
【0126】
ガスクロマトグラフ分析の条件は以下のとおりとした。
カラムとしてDB-WAX(J&W製)をつけたガスクロマトグラフィーGC-14B(島津製作所製)を用い、1,3-プロパンジオールを内標として、検出器をFIDとした。なお、カラムの昇温プロファイルは、100℃で5分保持した後、5℃/minで200℃まで昇温するプロファイルとした。
【0127】
[ポリカーボネートジオールの水酸基(OH)価の測定]
無水酢酸12.5gをピリジン50mLでメスアップしアセチル化試薬を調整した。100mLナスフラスコに、ポリカーボネートジオールのサンプルを2.5~5.0g精秤した。前記ナスフラスコに、アセチル化試薬5mLとトルエン10mLをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、前記ナスフラスコ内の溶液を、100℃で1時間撹拌加熱した。前記ナスフラスコに、蒸留水2.5mLをホールピペットで添加し、前記ナスフラスコ内の溶液を、さらに10分加熱撹拌した。前記ナスフラスコ内の溶液を、2~3分冷却後、エタノールを12.5mL添加した。前記ナスフラスコに、指示薬としてフェノールフタレインを2~3滴入れた後に、前記ナスフラスコ内の溶液を、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
空試験として、アセチル化試薬5mL、トルエン10mL、蒸留水2.5mLを100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、上記と同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記式(13)でOH価を計算した。
OH価(mg-KOH/g)={(b-a)×28.05×f}/e (13)
a:サンプルの滴定量(mL)
b:空試験の滴定量(mL)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
【0128】
[ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)]
ポリカーボネートジオールの数平均分子量を下記式(14)により求めた。
数平均分子量=2/(OH価×10-3/56.11) (14)
【0129】
[ポリカーボネートジオールのAPHA値の測定]
JIS K0071-1に準拠して、比色管に入れた標準液と比較してハーゼン色数(APHA値)を測定した。常温で固体のポリカーボネートジオールについては、70℃に加温、溶解してハーゼン色数(APHA値)を測定した。
【0130】
[ポリカーボネートジオール中のエーテル結合量の分析方法]
100mLのナスフラスコにポリカーボネートジオールを1g取り、メタノール30g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液8gを入れて、100℃で1時間反応した。反応液を室温まで冷却後、指示薬としてフェノールフタレインを2~3滴添加し、塩酸で中和した。中和した反応液を、冷蔵庫で1時間冷却後、濾過した。その後、得られた濾液を、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国、J&W製)を備えたガスクロマトグラフィーGC-14B(日本、島津製作所製)を用い、1,3-プロパンジオールを内部標準として、水素炎イオン化型検出基(FID)を検出器として行い、各成分の定量分析を行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、110℃で5分保持した後、5℃/minで200℃まで昇温するプロファイルとした。
エーテル結合は、水酸基の脱水反応や炭酸エステルの分解(脱炭酸)で生成すると考えられ、例えば、エチレンカーボネートとヘキサンジオールとを原料としてポリカーボネートジオールを製造する場合、エーテル結合を有する化合物として、ジエチレングリコールと6-(2-ヒドロキシエトキシ)ヘキサン-1-オールとが検出される。
【0131】
[ポリカーボネートジオールの末端1級水酸基(OH)比率の分析方法]
70g~100gのポリカーボネートジオールを300mlのナスフラスコに測り取り、留分回収用のトラップ球を接続したロータリーエバポレーターを用いて、0.1kPa以下の圧力下、約180℃の加熱浴で加熱し、攪拌して、トラップ球に該ポリカーボネートジオールの約1~2質量%に相当する留分、即ち約1g(0.7~2g)の留分を得た。これを約100g(95~105g)のエタノールを溶剤として回収した。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下、GC分析と称す。)して、得られるクロマトグラフのピーク面積の値から、下記式(15)によりポリカーボネートジオールの末端1級水酸基(OH)比率(%)を計算した。なお、GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/minで250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとした。
GC分析における各ピークの同定は、下記GC-MS装置を用いて行った。GC装置は、カラムとしてDB-WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/minで220℃まで昇温した。MS装置は、Auto-massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10~500、フォトマルゲイン450Vで行った。
末端1級OH比率(%)=B÷A×100 (15)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
B:両末端が1級OH基であるジオールのピーク面積の総和
【0132】
[ポリカーボネートジオール中の残留触媒量(残留金属量)]
ポリカーボネートジオールを約0.1g測り取り、4mLのアセトニトリルに溶解して溶液を得た。その後、得られた溶液に20mLの純水を加えてポリカーボネートジオールを析出させ、析出したポリカーボネートジオールをろ過にて除去した。そしてろ過後の溶液を純水で所定濃度まで希釈し、希釈溶液を得た。前記希釈溶液における金属イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで分析した。なお、溶媒として使用するアセトニトリルの金属イオン濃度をブランク値として測定し、この溶媒分の金属イオン濃度を上記希釈溶液における金属イオン濃度から差し引いた値をポリカーボネートジオール生成物の金属イオン濃度とした。測定条件は以下に示す通りとした。
予め作成した各種金属の検量線を使用し、ポリカーボネートジオール中に残留する、各種金属(M1、M2)の濃度(ppm)を求め、残留金属(M1,M2)量を得た。
かかる残留金属量を、残留触媒量として評価した。
高速液体クロマトグラフ(HPCL)測定条件
装置:Waters2690
カラム:IonPac CS12A
流量:1.0mL/min
注入量:1.5mL
圧力:950~980psi
カラム温度:35℃
検出器感度:RANGE 200μS
サプレッサー:CSRS 60mA
溶離液:20mmol/L メタンスルホン酸水溶液
【0133】
[ポリウレタンの数平均分子量の測定]
ポリウレタンフィルムの一部を切り取り、ポリウレタンの濃度が0.1質量%になるように、N,N-ジメチルアセトアミド(DMF)溶液を調製した。調製したDMF溶液を用いて、ポリウレタンの数平均分子量を以下のとおり測定した。
測定には、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC-8320」(カラム:Tskgel SuperHM-H・4本)を用いた。
また、溶離液にはリチウムブロマイド2.6gをジメチルアセトアミド1Lに溶解させた溶液を使用した。
得られた測定結果から、標準ポリスチレン換算でのポリウレタンの数平均分子量(Mn)を算出した。
【0134】
[ポリウレタンフィルムの室温引張試験]
JIS K6301(2010)に準じ、ポリウレタンフィルムから、幅10mm、長さ100mm、厚み約0.5mmの短冊状とした試験片を作製した。作製した試験片について、引張試験機(株式会社オリエンテック社製、製品名「テンシロン、モデルRTE-1210」)を用いて、チャック間距離20mm、引張速度100mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)で引張試験を実施した。
前記引張試験において、試験片が100%伸長した時点での応力(100%モジュラス)、及び破断点強度、破断点伸びを測定した。
【0135】
[ポリウレタンの耐オレイン酸性(耐薬品性)の評価]
ポリウレタンフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出した。精密天秤で試験片の質量を測定した。その後、試験溶媒としてオレイン酸50mLを入れた容量250mLのガラス瓶に試験片を投入して、80℃の窒素雰囲気下の恒温槽にて16時間静置して耐薬品試験を行った。
試験後、試験片を取り出して、表裏を紙製ワイパーで軽く拭いた。その後、精密天秤で試験片の質量測定を行った。試験前からの質量変化率(増加率)を下記式より算出した。質量変化率が0%に近いほうが、耐オレイン酸性(耐薬品性)が良好であることを示す。
質量変化率(%)
=(試験後の試験片の質量-試験前の試験片の質量)/試験前の試験片の質量×100
【0136】
[ポリウレタンの耐熱性の評価]
ポリウレタンフィルムから、幅10mm、長さ100mm、厚さ約50μmの短冊状とした試験片を作成した。試験片をギヤオーブンにて温度120℃で1000時間加熱した。加熱後の試験片について、上記[室温引張試験]と同様に、破断強度を測定した。その破断強度保持率(%)を下記式より求めた。
破断強度保持率(%)
=加熱後の試験片の破断強度/試験前の試験片の破断強度×100
【0137】
[ポリウレタンの耐加水分解性の評価]
ポリウレタンフィルムから、幅10mm、長さ100mm、厚さ約50μmの短冊状とした試験片を作成した。試験片を恒温恒湿槽にて温度85℃、相対湿度85%で200時間加熱した。加熱後の試験片について、上記[室温引張試験]と同様に、破断強度を測定した。その破断強度保持率(%)を下記式より求めた。
破断強度保持率(%)
=加熱後の試験片の破断強度/試験前の試験片の破断強度×100
【0138】
〔化合物略号〕
以下の実施例及び比較例における化合物の略号は以下の通りである。
Mn(acac)2・2H2O:マンガン(II)アセチルアセトナート2水和物
Mn(acac)3:マンガン(III)アセチルアセトナート
Mn(OAc)2・4H2O:酢酸マンガン(II)4水和物
Mn(tBuCOCH2COtBu)2・2H2O:2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナトマンガン(II)2水和物
Mn(CF3COCH2COCF3)2・2H2O:ヘキサフルオロアセチルアセトナトマンガン2水和物
[Mo(acac)]2:モリブデン(II)アセチルアセトナートダイマー
Fe(acac)3:鉄(III)アセチルアセトナート
Co(acac)2・2H2O:コバルト(II)アセチルアセトナート2水和物
Ni(acac)2・2H2O:ニッケル(II)アセチルアセトナート2水和物
Cu(acac)2:銅(II)アセチルアセトナート
Ti(OBu)4:テトラ-n-ブチルチタネート
Ti(acac)2(OiPr)2:チタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシド
Li-OMe:リチウムメトキシド
Mg(acac)2・2H2O:マグネシウム(II)アセチルアセトナート2水和物
Mg(OAc)2・4H2O:酢酸マグネシウム4水和物
Ca(acac)2・2H2O:カルシウム(II)アセチルアセトナート2水和物
Ca(OAc)2・H2O:酢酸カルシウム1水和物
Ca(OMe)2:カルシウムジメトキシド
Ba(OAc)2:酢酸バリウム
EC:エチレンカーボネート
EG:エチレングリコール
DMC:ジメチルカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
DPC:ジフェニルカーボネート
13PDO:1,3-プロパンジオール
14BDO:1,4-ブタンジオール
15PDO:1,5-ペンタンジオール
16HDO:1,6-ヘキサンジオール
110DDO:1,10-デカンジオール
3M15PDO:3-メチル-1,5-ペンタンジオール
【0139】
下記実施例及び比較例においては、下記表に示すエステル交換触媒を用いてポリカーボネートジオールを作製した。
【0140】
[実施例1]
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウ(理論段数15段)を備えた1Lセパラブルフラスコに、原料モノマーとして、1,6-ヘキサンジオール355g(3.00mol)、及びエチレンカーボネート264g(3.00mol)を仕込み、触媒としてMn(acac)2・2H2Oを16.3mg、及びCa(OAc)2・H2Oを6.8mg加えた。
フラスコ内の原料を170℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温150℃、真空度4kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら2時間原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。
反応開始から1時間後、及び2時間後のカーボネート転化率をガスクロマトグラフィーにて分析した。また、反応開始から2時間後のエーテル結合量を測定した。
測定結果を表1に示した。
【0141】
[実施例2~15、比較例1~5]
添加する触媒の種類、量を表1に記載する種類、量とした以外は、実施例1と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。実施例1と同様、反応開始から1時間後、及び2時間後のカーボネート転化率をガスクロマトグラフィーにて分析した。
また、反応開始から2時間後のエーテル結合量を測定した。
測定結果を表1に示した。
【0142】
【0143】
[実施例16~26]
添加する触媒の種類、量を、下記表2に記載する種類、量とし、反応温度を下記表2に記載する温度とした以外は、実施例1と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。実施例1と同様、反応開始から1時間後、及び2時間後のカーボネート転化率をガスクロマトグラフィーにて分析した。
また、反応開始から2時間後のエーテル結合量、及びAPHA値を測定した。
測定結果を表2に示した。
【0144】
【0145】
[実施例27~30、比較例6、7]
添加する触媒の種類、量、使用する炭酸エステルの種類を、下記表3に記載するとおりとした以外は、実施例1と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。
実施例1と同様、反応開始から1時間後、及び2時間後のカーボネート転化率をガスクロマトグラフィーにて分析した。
測定結果を表3に示した。
【0146】
【0147】
[実施例31~38]
添加する触媒の種類、量、使用するジヒドロキシ化合物を、下記表4に記載する種類、量、とした以外は、実施例1と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。
実施例1と同様、反応開始から1時間後、及び2時間後のカーボネート転化率をガスクロマトグラフィーにて分析した。
測定結果を表4に示した。
【0148】
【0149】
[実施例39]
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウ(理論段数15段)を備えた1Lセパラブルフラスコに、1,6-ヘキサンジオール355g(3.00mol)、及びエチレンカーボネート264g(3.00mol)を仕込み、触媒としてMn(OAc)2・4H2Oを13.8mg、Ca(OAc)2・H2Oを6.8mg加えた。フラスコ内の原料を170℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温150℃、真空度4kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら2時間、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。この時点(反応開始から2時間後)でのカーボネート転化率を測定した。測定結果を表5に示す。
その後単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、オイルバスの温度を175℃に設定し、フラスコの内温160℃で1時間反応させ、モノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。窒素ガスを導入し常圧にした後、オイルバスの温度を125℃に設定し、フラスコの内温110~120℃とした。触媒の失活剤として、リン酸モノブチルを、仕込み触媒量と等モル量加え、110~120℃の温度で3時間攪拌した。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表5に示す。該ポリカーボネートジオールをPC1と称する。
【0150】
[実施例40~42]
使用するジヒドロキシ化合物を、表5に記載する種類、量、とした以外は、実施例39と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始から2時間後のカーボネート転化率と、得られたポリマーボネートジオールの性状を表5に示した。得られたポリカーボネートジオールを各々、PC2、PC3、PC4と称する。
【0151】
[実施例43]
使用するジヒドロキシ化合物を、表5に記載する種類、量、とし、単蒸留に切り替えた後の反応時間を0.5時間とした以外は、実施例42と同様に、原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始から2時間後のカーボネート転化率と、得られたポリマーボネートジオールの性状を表5に示した。得られたポリカーボネートジオールをPC5と称する。
【0152】
[実施例44]
使用するジヒドロキシ化合物を、表5に記載する種類、量、とし、単蒸留に切り替えた後の反応時間を2時間とした以外は、実施例42と同様に原料モノマーをエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始から2時間後のカーボネート転化率と、得られたポリマーボネートジオールの性状を表5に示した。得られたポリカーボネートジオールをPC6と称する。
【0153】
[比較例8]
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウ(理論段数15段)を備えた1Lセパラブルフラスコに、原料モノマーとして、1,5-ペンタンジオール156g、1,6-ヘキサンジオール177g、及びエチレンカーボネート264g(3.00mol)を仕込み、触媒としてMn(OAc)2・4H2Oを20.4mg加えた。フラスコ内の原料を170℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温150℃、真空度4kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら7時間反応した。(反応開始から2時間後に反応液の一部を抜出し、2時間後のカーボネート転化率を求めた。)その後単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、オイルバスの温度を180℃に設定し、フラスコの内温160~170℃で4時間反応させ、モノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。窒素ガスを導入し常圧にした後、オイルバスの温度を125℃に設定し、フラスコの内温110~120℃とした。触媒の失活剤として、リン酸モノブチルを、仕込み触媒量と等モル量加え、110~120℃の温度で3時間攪拌した。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表5に示す。該ポリカーボネートジオールをPC7と称する。
【0154】
[比較例9]
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウ(理論段数15段)を備えた1Lセパラブルフラスコに、原料モノマーとして、1,5-ペンタンジオール156g、1,6-ヘキサンジオール177g、及びエチレンカーボネート264g(3.00mol)を仕込み、触媒としてCa(OAc)2・H2Oを20.4mg加えた。フラスコ内の原料を170℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温150℃、真空度4kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら7時間反応した。(反応開始から2時間後に反応液の一部を抜出し、2時間後のカーボネート添加率を求めた。)その後単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、オイルバスの温度を180℃に設定し、フラスコの内温160~170℃で4時間反応させ、モノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。窒素ガスを導入し常圧にした後、オイルバスの温度を125℃に設定し、フラスコの内温110~120℃とした。触媒の失活剤として、リン酸モノブチルを、仕込み触媒量と等モル量加え、110~120℃の温度で3時間攪拌した。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表5に示す。該ポリカーボネートジオールをPC8と称する。
【0155】
【0156】
[実施例45]
60℃のオイルバスにて加温し、窒素シールした攪拌翼付き200mLセパラブルフラスコに、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(以下「MDI」とも記す)を15.7g、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」とも記す)を180mL、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.003gを仕込んだ、ここに予め60℃に加温した、ポリカーボネートジオールPC1を42g、DMF60gの溶液を、滴下ロートを使用し、約1時間で滴下して溶液を得た。得られた溶液を、1時間攪拌を続けた後、1,4-ブタンジオール(以下「14BDO」とも記す)を3.2g添加した。60℃でさらに溶液を3時間攪拌した後、1gのエチルアルコールを加え反応を停止させた。得られたポリウレタン溶液を、アプリケーターを用い、ポリプロピレン樹脂シート(幅100mm、長さ1200mm、厚さ1mm)上に、幅80mm、長さ100mmm、厚み0.6mmで塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、表面温度60℃のホットプレート上で2時間乾燥後、続いて100℃のオーブン中で12時間乾燥させた。さらに23℃、55%RHの恒温恒湿下で48時間以上静置しポリウレタンフィルムを得た。得られたポリウレタンフィルムを各種物性の評価に供した。評価結果を表6に示した。
【0157】
[実施例46~50、比較例10及び11]
ポリカーボネートジオールとしてPC2~PC8を用い、MDI、14BDOの量を表6に示した量とした以外は実施例45と同様に、ポリウレタンフォルムを得た。得られたポリウレタンフィルムを各種物性の評価に供した。評価結果を表6に示した。
【0158】
本実施形態のエステル交換触媒は、従来技術に対してより温和な条件でポリカーボネートジオールを製造可能な触媒として産業上の利用可能性を有している。また、本実施形態のエステル交換触媒は、色調に優れ、エーテル結合が少なく、かつ末端1級水酸基比率が高いポリカーボネートジオール製造用の触媒として産業上の利用可能性を有している。