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  • 特開-電気掃除機 図1
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  • 特開-電気掃除機 図4
  • 特開-電気掃除機 図5
  • 特開-電気掃除機 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082350
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/00 20060101AFI20240613BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A47L9/00 103
A47L9/28 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196137
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佑朔
(72)【発明者】
【氏名】山谷 遼
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】横田 雅瑛
(72)【発明者】
【氏名】関 順平
(72)【発明者】
【氏名】原田 秀行
【テーマコード(参考)】
3B006
3B057
【Fターム(参考)】
3B006LA06
3B057DE01
(57)【要約】
【課題】 電動送風機起因のピーク音を抑制することができる電気掃除機を提供することを目的とする。
【解決手段】 外部から吸引した空気流に含まれる塵埃を集塵する集塵室と、該集塵室の下流側に配置され、集塵後の空気流を外部に排気する排気孔を有する電動送風機室と、該電動送風機室に収容され、前記空気流を生成する電動送風機と、を備えた電気掃除機であって、前記電動送風機は、集塵後の空気流を圧力回復させるディフューザを備えており、前記電動送風機室には、前記電動送風機の下流側に、後壁が設けられており、さらに、前記電動送風機の下流側に、流路断面積が異なる少なくとも二つの部位を有し、前記後壁は、前記流路断面積が異なる二つの部位の境界面から距離dの位置に設けられており、前記距離dは、3λ/4、または、5λ/4であることを特徴とする電気掃除機。(但し、λは、可聴域における電動送風機起因のピーク音の波長)
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から吸引した空気流に含まれる塵埃を集塵する集塵室と、
該集塵室の下流側に配置され、集塵後の空気流を外部に排気する排気孔を有する電動送風機室と、
該電動送風機室に収容され、前記空気流を生成する電動送風機と、
を備えた電気掃除機であって、
前記電動送風機は、集塵後の空気流を圧力回復させるディフューザを備えており、
前記電動送風機室には、前記電動送風機の下流側に、後壁が設けられており、さらに、前記電動送風機の下流側に、流路断面積が異なる少なくとも二つの部位を有し、
前記後壁は、前記流路断面積が異なる二つの部位の境界面から距離dの位置に設けられており、
前記距離dは、3λ/4、または、5λ/4であることを特徴とする電気掃除機。
但し、λは、可聴域における電動送風機起因のピーク音の波長
【請求項2】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記波長λは、34~37mmであり、
前記距離dは、25~28mm、または、42~47mmであることを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気掃除機において、
前記後壁は、前記電動送風機の回転軸に対して垂直であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電気掃除機において、
更に、前記電動送風機に電力を供給する電池パックと、
該電池パックを収容した電池パック室と、を備えており、
前記電動送風機室と前記電池パック室を仕切る壁とは別に、前記後壁を設けたことを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に漏洩する騒音を抑制する電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
外部に漏洩する騒音を抑制する従来の電気掃除機として、特許文献1に記載の手持ち型電気掃除機が知られている。この文献の段落0049には「モータ62の側方を除く、上方、後方、下方において、基板66、後壁24及び底壁25と本体2の外壁とは所定の間隔を隔てており、二重壁構造となっている。」と記載されており、段落0050には「電動送風機64における騒音の発生源の一つであるモータ62の周囲を囲む壁部を形成して狭い排気室28を設けることで、モータ62による騒音を低減することができる。」と記載されている。
【0003】
このように、特許文献1の電気掃除機では、モータを収容した排気室の上下後の3面に二重壁を配置することで、電動送風機起因の騒音を遮音し、掃除機外に漏れる騒音を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-97641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気掃除機で用いられる電動送風機のなかは、吸引力を高めるためにディフューザを備えたものがある。この種の電動送風機を備えた電気掃除機では、集塵室から電動送風機に流入した高速空気流は、電動送風機の吐出側に設けられたディフューザで圧力回復された後、電気掃除機外殻の排気孔を介して外部に排気される。この時、ファンの回転に起因して発生する回転騒音(羽音)をはじめとした振動音もディフューザを通過して外部に漏洩する。
【0006】
特許文献1は、二重壁による遮音効果でモータ騒音の漏洩を抑制する構成である。しかし、排気孔を確保しなければならないため、遮音壁を設けても減衰せずに内部で反射を繰り返して、いずれは排気孔から外部に放射されてしまう場合があり、完全に遮音することは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、波の干渉による音波の弱めあいを用いて電動送風機起因のピーク音を減少させ、電気掃除機の外部への漏洩を抑制することができる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電気掃除機は、外部から吸引した空気流に含まれる塵埃を集塵する集塵室と、該集塵室の下流側に配置され、集塵後の空気流を外部に排気する排気孔を有する電動送風機室と、該電動送風機室に収容され、前記空気流を生成する電動送風機と、を備えた電気掃除機であって、前記電動送風機は、集塵後の空気流を圧力回復させるディフューザを備えており、前記電動送風機室には、前記電動送風機の下流側に、後壁が設けられており、さらに、前記電動送風機の下流側に、流路断面積が異なる少なくとも二つの部位を有し、前記後壁は、前記流路断面積が異なる二つの部位の境界面から距離dの位置に設けられており、前記距離dは、3λ/4、または、5λ/4であることを特徴とする電気掃除機。(但し、λは、可聴域における電動送風機起因のピーク音の波長)
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気掃除機よれば、電動送風機起因のピーク音の漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例の電動掃除機の外観斜視図。
図2】一実施例の掃除機本体の断面図。
図3A】一実施例の電動送風機の側面図。
図3B】一実施例の電動送風機の断面図。
図4】一実施例のハウジングの平面図。
図5】一実施例のファンの外観斜視図。
図6】電動送風機室の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例に係る電気掃除機を説明する。
【0012】
<電気掃除機100の全体構造>
図1は、本実施例の電気掃除機100の外観斜視図である。ここに示すように、本実施例の電気掃除機100は、掃除機本体10と、延長管20と、吸口30を備えたスティック型の電気掃除機であり、掃除機本体10単体でハンディ型(手持ち型)の電気掃除機として使用することもできる。以下、掃除機本体10をハンディ型の電気掃除機として使用する状況を例に、本発明の電気掃除機100を説明する。なお、本発明の適用対象はスティック型やハンディ型の電気掃除機に限定されず、キャニスター型の電気掃除機に本発明を採用しても良い。
【0013】
<掃除機本体10の構造>
図2は、掃除機本体10の断面図である。ここに示すように、掃除機本体10は、掃除を行う際に使用者が把持するハンドル11と、外部から吸引した空気流に含まれる塵埃を集塵する集塵室12と、後述する電動送風機40を収容した電動送風機室13と、電動送風機40等を制御する制御基板14と、電動送風機40等に電力を供給する電池パック15aを収容した電池パック室15と、電動送風機40の下流側に、電動送風機40からの排気が通る排気室16を備えている。
【0014】
また、ハンドル11の上面には、電動送風機40の入切、吸込み力の調整等を行う操作スイッチ11aが配置されており、この操作スイッチ11aからの指令に応じて制御基板14が電動送風機40等を制御する。集塵室12の上部は、開閉可能な集塵蓋12aで覆われており、集塵室12の内部には、紙パック式の集塵フィルタ12bが着脱自在に取り付けられている。なお、集塵室12は、サイクロン式の集塵室であっても良い。
【0015】
<電動送風機40の構造>
次に、図3A図3Bを用いて、電気掃除機100の吸引力発生装置である、電動送風機40の詳細を説明する。図3Aは、電動送風機40の側面図であり、図3Bは、電動送風機40の断面図である。両図に示すように、電動送風機40は、ファンケーシング41と、ハウジング42と、ファン43と、モータ44を備えており、これらが協働することにより、図3Bの破線矢印で示すような空気流Fが生成される。この空気流Fによる負圧が電気掃除機100の吸引力を生じさせるため、電動送風機40は、ファンケーシング41が上流側(集塵室12側)、モータ44が下流側(電池パック室15側)となる向きで、電動送風機室13内に設置される(図2参照)。
【0016】
ファンケーシング41は、狭い吸込部41aが上流側で開口した樹脂製の筐体であり、ファン43を回転自在に内蔵するものである。
【0017】
ハウジング42は、下流側に吐出部42aが開口した樹脂製の筒状部材であり、上流側のファンケーシング41と連結されるとともに、内部にモータ44を固定したものである。なお、図3A図3Bでは、上流側ハウジングと下流側ハウジングを連結することでハウジング42を構成しているが、ハウジング42は一体成型されたものであっても良い。
【0018】
図4は、図3BのAA断面におけるハウジング42の平面図である。ここに示すように、ハウジング42は、円管状の内壁42bと外壁42cを同心配置したものであり、内壁42bと外壁42cの間には複数のディフューザ翼42dが配置される。図3Bに示す空気流Fは、ディフューザ翼42dに沿って流れる間に圧力回復するので、ハウジング42は電気掃除機100の吸引力を高めるディフューザとして機能することになる。
【0019】
ファン43は、空気流Fを生成するための羽根車であり、図5に示すように、モータ44の回転軸に固定されるハブ43aと、ハブ43aの表面に設けた複数の翼43bを有している。
【0020】
モータ44は、回転軸に固定されたファン43を回転させる回転電機である。このモータ44は、制御基板14の制御により電池パック15aから所望の電力が供給されると、操作スイッチ11aで指定した回転数でファン43を回転させ、図3Bに示す空気流Fを発生させる。これにより、電気掃除機100は、所望の吸引力で塵埃を吸い込むことができる。
【0021】
<電動送風機起因のピーク音の抑制方法>
次に、空気流Fとともにディフューザ吐出部42aから放射されるピーク音の掃除機外への漏洩を抑制するための構成について説明する。
【0022】
図6は、図2の電動送風機室13および排気室16の近傍を拡大した断面図であり、電動送風機40の回転軸が図6中で水平となるように傾きを調整している。なお、図6では、図示のように上下前後の各方向を定義することとし、また、ピーク音の抑制の機序を説明するために不要な構成の図示を適宜省略している。
【0023】
図6に示すように、排気室16の後上部には、複数の排気孔16aを設けている。これらの排気孔16aからは、電動送風機40から吐出した空気流Fが掃除機外に排気されるとともに、電動送風機40起因で発生したピーク音も掃除機外に漏洩する。
【0024】
また、排気室16の後部には、電動送風機40の回転軸と垂直な後壁16bを設けている。この後壁16bを設けると、排気孔16aから漏洩するピーク音には、ディフューザ後方の吐出部42aから直接到達した、実線矢印で示すピーク音(以下、「直接音」と称する)と、後壁16bでの反射を経て到達した、破線矢印で示すピーク音(以下、「反射音」と称する)が含まれることになる。具体的には、吐出部42aから放射されたピーク音は、後方壁16bからなる第1の反射面S1において電動送風機40方向に反射し、その後、第2の反射面S2において再度反射することで、排気口16aに到達する。ここで、電動送風機室13内の電動送風機下流側における流路断面積は、排気室16内の流路断面積よりも小さくなっている。これらの領域の境界面、すなわち、流路断面積が変化する境界面を第2の反射面S2と定義する。このとき第2の反射面S2での反射音は、流路において断面積が変化する個所で生じる反射音である。ここで、吐出部42a(第3の反射面S3)から後壁16b(第1の反射面S1)までの距離d1と、第2の反射面S2と後方壁16b(第1の反射面S1)との距離d2と定義すると、第2の反射面S2における直接音と反射音の経路差は、2d2となる。
【0025】
なお、第2の反射面S2で透過した音に関しても、吐出部42aの下流端面からなる第3の反射面S3までの領域において、物体にぶつかることによる物理的な反射や流路断面積変化による反射が生じるため、主となる反射面を第2の反射面S2から第3の反射面S3までの領域において設定することもできる。
【0026】
上記構成にて、第2の反射面S2において、直接音と反射音が同位相であり、干渉により強め合う場合には、掃除機外に漏洩するピーク音が増幅されてしまうことになる。
【0027】
そこで、本実施例では、第2の反射面S2と後方壁16b(第1の反射面S1)との距離d2を、第2の反射面S2において直接音と反射音が逆位相になるような距離に設定することで、干渉により直接音と反射音が弱め合い、排気孔16aから漏洩するピーク音を抑制できるようにした。
【0028】
具体的には、距離d2を、以下の(式1)または(式2)に基づいて設定した。なお、λは、抑制したいピーク音の波長である。
【0029】
d2=3λ/4 ・・・(式1)
d2=5λ/4 ・・・(式2)
例えば、可聴域(20Hz~20kHz)におけるピーク音の周波数域が9~10kHzであるとき(すなわち、可聴域におけるピーク音の波長域が34~37mmであるとき)、そのピーク音の漏洩を効果的に抑制するには、(式1)によれば、距離d2を約25~28mmに設定すれば良く、(式2)によれば、距離d2を約42~47mmに設定すれば良い。
【0030】
以上で説明したように、(式1)または(式2)に基づいて第2の反射面S2と後方壁16b(第1の反射面S1)との距離d2を設定した本実施例の電気掃除機によれば、ピーク音の直接音と反射音が排気孔に到達するまでに干渉によって弱め合うので、掃除機外に漏洩するディフューザ騒音を効果的に抑制することができる。なお理論的には、抑制したい波長λの四分の一の奇数倍の距離を設けることで同様の効果が期待できるが、電気掃除機に適用する場合、狭すぎると排気流路の妨げとなる恐れがあり、一方で広すぎると電動掃除機本体のサイズが大きくなりすぎる恐れがあるため、本発明では(式1)(式2)とした。
【0031】
なお、本発明における排気室16の後壁16bは、排気室16と電池パック室15を仕切る壁とは別に設けられた壁であっても良い。その場合、排気室の後壁の存在が、電池パック室の形状や、電気掃除機の外観に影響を与えることはないという利益もある。
【符号の説明】
【0032】
100 電気掃除機
10 掃除機本体
11 ハンドル
11a 操作スイッチ
12 集塵室
12a 集塵蓋
12b 集塵フィルタ
13 電動送風機室
14 制御基板
15 電池パック室
15a 電池パック
16 排気室
16a 排気孔
16b 後壁
20 延長管
30 吸口
40 電動送風機
41 ファンケーシング
41a 吸込部
42 ハウジング
42a 吐出部
42b 内壁
42c 外壁
42d ディフューザ翼
43 ファン
43a ハブ
43b 翼
44 モータ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6