(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082357
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ガスセンサ及びガスセンサの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20240613BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G01N27/26 371A
G01N27/416 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196151
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100561
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100219690
【弁理士】
【氏名又は名称】堀坂 純美子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 諄哉
(57)【要約】
【課題】ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定する。
【解決手段】センサ素子101と制御装置90とを含み、被測定ガス中の測定対象ガスを検出するガスセンサであって、センサ素子101は、基体部102と、被測定ガス流通空所15と、空所内酸素ポンプ電極22と空所外酸素ポンプ電極23とを含む酸素ポンプセル21と、基準ガス室48と、基準ガス室48内に配設された基準電極42と、を含み、制御装置90は、酸素ポンプセル21に流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部93と、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素ポンプセル21に流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部94とを含む、ガスセンサ100及びその制御方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、被測定ガス中の測定対象ガスを検出するガスセンサであって、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含む、ガスセンサ。
【請求項2】
前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値が、所定の電流閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電流を流して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧の電圧値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記判定補正部は、前記酸素ポンプ電流の電流値に対する補正値を予め記憶しており、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して、予め記憶された前記補正値を用いて補正を行う、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記判定補正部は、被測定ガス中の酸素濃度が500ppm以下である低酸素濃度の場合に、前記補正を行う、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記センサ素子は、さらに、
前記被測定ガス流通空所内の、前記空所内酸素ポンプ電極よりも前記基体部の長手方向の前記一方の端部から遠い位置に配設された空所内測定電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内測定電極と対応している空所外測定電極とを含むNOx測定用ポンプセルを含み、
前記濃度検出部は、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記濃度検出部は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を検出し、検出された前記酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する空燃比判断部を含む、請求項7に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記濃度検出部は、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリーンであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出し、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリッチであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出する、請求項8に記載のガスセンサ。
【請求項10】
被測定ガス中の測定対象ガスを検出するためのガスセンサの制御方法であって、
前記ガスセンサは、
センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含み、
前記制御方法は、
前記判定補正部が、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正ステップを含む、ガスセンサの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ及びガスセンサの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、自動車の排気ガス等の被測定ガス中の対象とするガス成分(酸素O2、窒素酸化物NOx、アンモニアNH3、炭化水素HC、二酸化炭素CO2等)の検出や濃度の測定に使用されている。例えば、自動車の排気ガス中の対象とするガス成分濃度を測定し、その測定値に基づいて自動車に搭載されている排気ガス浄化システムを最適に制御することが行われている。
【0003】
このようなガスセンサとしては、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたセンサ素子を備えたガスセンサが知られている(例えば、特開2002-276419号公報、特開2014-235107号公報、特開2021-085665号公報)。
【0004】
例えば、特開2002-276419号公報には、排気ガスを浄化するための触媒(三元触媒等)を機関排気通路内に具備する内燃機関における燃料噴射量制御装置が開示されている。燃料噴射量制御装置において、空燃比センサとNOxアンモニアセンサとがその制御に用いられていることが開示されている。
【0005】
また、特開2002-276419号公報には、空燃比センサがリーン空燃比を検出しているときにはNOxアンモニアセンサはNOx濃度を検出しており、空燃比センサがリッチ空燃比を検出しているときにはNOxアンモニアセンサはNH3濃度を検出していることが開示されている(段落[0009])。
【0006】
特開2014-235107号公報及び特開2021-085665号公報には、センサ素子の内部構造に生じたクラックを検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-276419号公報
【特許文献2】特開2014-235107号公報
【特許文献3】特開2021-085665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車の排気ガス規制等の強化に伴い、ディーゼル車のみではなく、ガソリン車においても、排気ガス中の窒素酸化物NOx、アンモニアNH3をそれぞれ検出することが求められている。ガソリン車に搭載されている排気ガス浄化システムからは、通常、排気ガスがリーン雰囲気の場合にはNOxが、リッチ雰囲気の場合にはNH3が排出される。
【0009】
このようなガソリン車からの排気ガス中のNOx及びNH3を精度よく測定するためには、排気ガス中の空燃比がリッチであるか、リーンであるかを正しく判断することが求められる。特に、理論空燃比付近、すなわち、低酸素濃度の領域において、空燃比を正確に判断できることが求められる。
【0010】
しかしながら、ガスセンサの使用により、何らかの要因でガスセンサにより検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度とは異なる値になることが起こり得る。この要因の一例としては、例えば、特開2014-235107号公報及び特開2021-085665号公報に開示されているようなセンサ素子の内部構造に生じるクラックが挙げられる。また、特開2014-235107号公報及び特開2021-085665号公報には、そのクラックを検出する方法が開示されている。
【0011】
そこで、本発明は、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度(空燃比)を精度よく測定することを目的とする。また、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の空燃比を正しく判断することにより、被測定ガス中のNOx及びNH3を精度よく測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ガスセンサにより検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素濃度に応じて酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流に対して補正を行う判定補正部をガスセンサに備えることにより、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定できることを見出した。
【0013】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、被測定ガス中の測定対象ガスを検出するガスセンサであって、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含む、ガスセンサ。
【0014】
(2) 前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値が、所定の電流閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(1)に記載のガスセンサ。
【0015】
(3) 前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(1)に記載のガスセンサ。
【0016】
(4) 前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電流を流して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧の電圧値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(1)に記載のガスセンサ。
【0017】
(5) 前記判定補正部は、前記酸素ポンプ電流の電流値に対する補正値を予め記憶しており、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して、予め記憶された前記補正値を用いて補正を行う、上記(1)~(4)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0018】
(6) 前記判定補正部は、被測定ガス中の酸素濃度が500ppm以下である低酸素濃度の場合に、前記補正を行う、上記(1)~(5)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0019】
(7) 前記センサ素子は、さらに、
前記被測定ガス流通空所内の、前記空所内酸素ポンプ電極よりも前記基体部の長手方向の前記一方の端部から遠い位置に配設された空所内測定電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内測定電極と対応している空所外測定電極とを含むNOx測定用ポンプセルを含み、
前記濃度検出部は、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出する、上記(1)~(6)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0020】
(8) 前記濃度検出部は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を検出し、検出された前記酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する空燃比判断部を含む、上記(7)に記載のガスセンサ。
【0021】
(9) 前記濃度検出部は、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリーンであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出し、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリッチであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出する、上記(8)に記載のガスセンサ。
【0022】
(10) 被測定ガス中の測定対象ガスを検出するためのガスセンサの制御方法であって、
前記ガスセンサは、
センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含み、
前記制御方法は、
前記判定補正部が、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正ステップを含む、ガスセンサの制御方法。
【0023】
(11) 前記判定補正ステップにおいて、前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値が、所定の電流閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(10)に記載のガスセンサの制御方法。
【0024】
(12) 前記判定補正ステップにおいて、前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(10)に記載のガスセンサ。
【0025】
(13) 前記判定補正ステップにおいて、前記判定補正部は、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電流を流して、前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れ、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧の電圧値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(10)に記載のガスセンサ。
【0026】
(14) 前記判定補正ステップにおいて、前記判定補正部は、前記酸素ポンプ電流の電流値に対する補正値を予め記憶しており、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して、予め記憶された前記補正値を用いて補正を行う、上記(10)~(13)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0027】
(15) 前記判定補正部は、被測定ガス中の酸素濃度が500ppm以下である低酸素濃度の場合に、前記補正を行う、上記(10)~(14)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0028】
(16) 前記センサ素子は、さらに、
前記被測定ガス流通空所内の、前記空所内酸素ポンプ電極よりも前記基体部の長手方向の前記一方の端部から遠い位置に配設された空所内測定電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内測定電極と対応している空所外測定電極とを含むNOx測定用ポンプセルを含み、
前記濃度検出部は、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出する、上記(10)~(15)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0029】
(17) 前記濃度検出部は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を検出し、検出された前記酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する空燃比判断部を含む、上記(16)に記載のガスセンサ。
【0030】
(18) 前記濃度検出部は、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリーンであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出し、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリッチであると判断した場合には、前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出する、上記(17)に記載のガスセンサ。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度(空燃比)を精度よく測定することができる。また、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の空燃比を正しく判断することにより、被測定ガス中のNOx及びNH3を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ガスセンサ100の概略構成の一例を示す長手方向の垂直断面模式図である。
【
図2】ガスセンサ100における、制御装置90と、センサ素子101の各ポンプセル21、50、41、84、及び各センサセル80、81、82、83との電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図3】ガスセンサ100における、被測定ガス中の酸素濃度とポンプ電流Ip0との関係の一例を示す模式図である。横軸は酸素濃度[%]を、縦軸はポンプ電流Ip0の値[A]を示す。
【
図4】判定用ポンプセル84における判定用ポンプ電圧Vp3と判定電流Ip3との関係を示す電圧電流曲線の一例を示す模式図である。
図4において、横軸は判定用ポンプ電圧Vp3[V]、縦軸は判定電流Ip3[A]を示す。
【
図5】被測定ガス中の酸素濃度と判定電流Ip3の限界電流値との関係の一例を示す模式図である。
図5において、横軸は酸素濃度[%]、縦軸は判定電流Ip3の限界電流値[A]を示す。
【
図6】判定電流Ip3の電流値に基づいて判定を行う場合の判定補正処理の一例を示す、フローチャートである。
【
図7】判定用ポンプセル84に判定用ポンプ電圧Vp3を設定値Vp3
SETに設定して印加した場合における、判定電流Ip3の時間変化の一例を示す模式図である。
図7において、横軸は時間[秒]、縦軸は判定電流Ip3[A]を示す。
【
図8】判定電流Ip3の変化速度RIpに基づいて判定を行う場合の判定補正処理の例を示す、フローチャートである。
【
図9】基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、判定用ポンプ電流Ip3
SETを流した場合における、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の起電力(判定電圧V0)の時間変化の一例を示す模式図である。
図9において、横軸は時間[秒]、縦軸は判定電圧V0[V]を示す。
【
図10】判定電圧V0の変化速度RVに基づいて判定を行う場合の判定補正処理の例を示す、フローチャートである。
【
図11】変形例のセンサ素子201の長手方向の垂直断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のガスセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置と、を含んでいる。
【0034】
本発明のガスセンサに含まれるセンサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含む。
【0035】
本発明のガスセンサに含まれる制御装置は、
前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含む。
【0036】
以下に、本発明のガスセンサの実施形態の一例を詳しく説明する。
【0037】
[ガスセンサの概略構成]
本発明のガスセンサについて、図面を参照して以下に説明する。
図1は、センサ素子101を含むガスセンサ100の概略構成の一例を示す長手方向の垂直断面模式図である。以下においては、
図1を基準として、上下とは、
図1の上側を上、下側を下とし、
図1の左側を先端側、右側を後端側とする。
【0038】
図1において、ガスセンサ100は、センサ素子101によって被測定ガス中の酸素及びNOxを検知し、それらの濃度を測定するNOxセンサの一例を示している。
【0039】
また、ガスセンサ100は、センサ素子101を制御する制御装置90を含む。
図2は、制御装置90と、センサ素子101との電気的な接続関係を示すブロック図である。
【0040】
(センサ素子)
センサ素子101は、複数の酸素イオン伝導性の固体電解質層が積層された構造を有する基体部102を含む、長尺板状の素子である。長尺板状とは、長板状、あるいは、帯状ともいう。基体部102は、それぞれがジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する。これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。前記6つの層は全て同じ厚みであってもよいし、各層毎に異なる厚みであってもよい。各層の間は、固体電解質からなる接着層を介して接着されており、基体部102には前記接着層を含む。
図1においては、前記6つの層からなる層構成を例示したが、本発明における層構成はこれに限られるものではなく、任意の層の数及び層構成としてよい。
【0041】
係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0042】
センサ素子101の長手方向の一方の端部(以下、先端部という)であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10が形成されている。被測定ガス流通空所15、すなわち被測定ガス流通部は、ガス導入口10から長手方向に、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されている。
【0043】
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40と、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
【0044】
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(
図1において図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、所望の拡散抵抗を付与する形態であればよく、その形態は前記スリットに限定されるものではない。
【0045】
第4拡散律速部60は、1本の横長の(
図1において図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとしてスペーサ層5と、第2固体電解質層6との間に設けられる。第4拡散律速部60は、所望の拡散抵抗を付与する形態であればよく、その形態は前記スリットに限定されるものではない。
【0046】
また、基体部102の内部であって、被測定ガス流通空所15よりも先端側から遠い位置には、被測定ガス流通空所15とは離隔して、基準ガス室が設けられている。基準ガス室は、センサ素子101(基体部102)の他方の端部(以下、後端部という)に開口を有する。あるいは、基準ガス室は、例えば、センサ素子101(基体部102)の長手方向の側面のうちの基準ガスに接する部分に対して開口していてもよい。本実施形態においては、基準ガス室は、多孔体で満たされた基準ガス導入層48として設けられている。
【0047】
基準ガス導入層48は、第3基板層3と第1固体電解質層4との間に配設された、例えばアルミナなどのセラミックスからなる多孔質体の層である。基準ガス導入層48の後端面は、センサ素子101(基体部102)の後端面に露出している。また、基準ガス導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。基準ガス導入層48には、酸素濃度及びNOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。基準ガスは、基準ガス導入層48の後端面を通じて、外部空間からセンサ素子101内に導入されるようになっている。また、基準ガス導入層48は、導入された基準ガスに対して所定の拡散抵抗を付与しつつこれを基準電極42に導入する。
【0048】
基準電極42は、基準ガス室内に配設された電極である。基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入層48が設けられている。すなわち、基準電極42は、多孔質である基準ガス導入層48を介して、基準ガスと接するように配設されている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内、第2内部空所40内、及び第3内部空所61内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極42は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
【0049】
被測定ガス流通空所15において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口しており、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
【0050】
本実施形態においては、被測定ガス流通空所15は、センサ素子101の先端面に開口したガス導入口10から被測定ガスが導入される形態であるが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、被測定ガス流通空所15には、ガス導入口10の凹所が存在しなくてもよい。この場合は、第1拡散律速部11が実質的にガス導入口となる。
【0051】
また、例えば、被測定ガス流通空所15は、基体部102の長手方向に沿う側面に、緩衝空間12あるいは第1内部空所20の緩衝空間12に近い位置と連通する開口を有している形態であってもよい。この場合は、前記開口を通じて、基体部102の長手方向に沿う側面から被測定ガスが導入される。
【0052】
また、例えば、被測定ガス流通空所15は、多孔体を通じて被測定ガスが導入される構成になっていてもよい。
【0053】
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0054】
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
【0055】
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0056】
結果として、第1内部空所20に導入される被測定ガスの量が所定の範囲になっていればよい。すなわち、センサ素子101の先端部から第2拡散律速部13の全体として、所定の拡散抵抗を付与されていればよい。例えば、第1拡散律速部11が直接第1内部空所20と連通する、すなわち、緩衝空間12と、第2拡散律速部13とが存在しない態様としてもよい。
【0057】
緩衝空間12は、被測定ガスの圧力が変動する場合に、その圧力変動が検出値に与える影響を緩和するために設けられた空間である。
【0058】
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの圧力変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空間へ導入される被測定ガスの圧力変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
【0059】
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
【0060】
センサ素子101は、前記被測定ガス流通空所15内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部102の前記被測定ガス流通空所15とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルを含む。空所内酸素ポンプ電極は、内側主ポンプ電極22と、補助ポンプ電極51と、測定電極44とを含む。
【0061】
本実施形態においては、主ポンプセル21が酸素ポンプセルとして機能する。また、内側主ポンプ電極22が空所内酸素ポンプ電極として機能し、外側ポンプ電極23が、空所外酸素ポンプ電極として機能する。
【0062】
主ポンプセル21は、前記被測定ガス流通空所15の内表面に配設された内側主ポンプ電極22と、前記基体部102の前記被測定ガス流通空所15とは異なる位置(
図1においては、前記基体部102の外面)に配設された、前記内側主ポンプ電極22と対応している外側ポンプ電極23とを含む電気化学的ポンプセルである。「前記内側主ポンプ電極22と対応している」とは、前記外側ポンプ電極23が、前記内側主ポンプ電極22と、第2固体電解質層6を介して設けられていることを意味する。
【0063】
すなわち、主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側主ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
【0064】
内側主ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
【0065】
内側主ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(金属成分とセラミックス成分が混在した態様の電極)である。セラミックス成分としては、特に限定されないが、基体部102と同様に、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いることが好ましい。例えば、セラミックス成分として、ZrO2を用いることができる。
【0066】
被測定ガスに接触する内側主ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。内側主ポンプ電極22は、触媒活性を有する貴金属(例えばPt,Rh,Ir,Ru,Pdの少なくとも1つ)と、触媒活性を有する貴金属の測定対象ガス(本実施形態においてはNOx)に対する触媒活性を低下させる貴金属(例えばAu,Ag等)とを含んでいるとよい。本実施形態においては、内側主ポンプ電極22は、Auを1%含むPtとZrO2との多孔質サーメット電極とした。
【0067】
外側ポンプ電極23は、上述の触媒活性を有する貴金属を含んでいればよい。上述した基準電極42についても同様に、上述の触媒活性を有する貴金属を含んでいればよい。本実施形態においては、外側ポンプ電極23は、PtとZrO2との多孔質サーメット電極とした。
【0068】
主ポンプセル21においては、内側主ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を可変電源24により印加して、内側主ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
【0069】
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側主ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
【0070】
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力(電圧V0)を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、電圧V0が一定となるように可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。この時に流れるポンプ電流Ip0の電流値は、被測定ガス中の酸素濃度に応じた電流値となる。
【0071】
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
【0072】
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧をより高精度に調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、補助ポンプセル50が作動することによって調整される。第2内部空所40及び補助ポンプセル50がない構成とすることもできる。酸素分圧の調整の精度の観点からは、第2内部空所40及び補助ポンプセル50があることがより好ましい。
【0073】
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0074】
補助ポンプセル50は、前記被測定ガス流通空所15の内表面の、前記内側主ポンプ電極22よりも前記基体部102の長手方向の先端部から遠い位置に配設された補助ポンプ電極51と、前記基体部102の前記被測定ガス流通空所15とは異なる位置(
図1においては、前記基体部102の外面)に配設された、前記補助ポンプ電極51と対応している外側ポンプ電極23とを含む電気化学的ポンプセルである。「前記補助ポンプ電極51と対応している」とは、前記外側ポンプ電極23が、前記補助ポンプ電極51と、第2固体電解質層6を介して設けられていることを意味する。
【0075】
すなわち、補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、被測定ガス流通空所15とは異なる位置、例えばセンサ素子101の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
【0076】
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側主ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
【0077】
なお、補助ポンプ電極51についても、内側主ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。補助ポンプ電極51は、内側主ポンプ電極22と同様に、触媒活性を有する貴金属(例えばPt,Rh,Ir,Ru,Pdの少なくとも1つ)と、触媒活性を有する貴金属の測定対象ガス(本実施形態においてはNOx)に対する触媒活性を低下させる貴金属(例えばAu,Ag等)とを含んでいるとよい。本実施形態においては、補助ポンプ電極51は、内側主ポンプ電極22と同様に、Auを1%含むPtとZrO2との多孔質サーメット電極とした。
【0078】
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp1を可変電源52により印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
【0079】
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
【0080】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力(電圧V1)に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0081】
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の電圧V0の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その電圧V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0082】
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)がさらに低く制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。
【0083】
第3内部空所61は、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を測定するための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、NOx測定用ポンプセル(本実施形態において測定用ポンプセル41)の動作により行われる。また、後述のようにNOx測定用ポンプセルの動作により、NH3濃度の測定も行ってよい。
【0084】
測定用ポンプセル41は、前記被測定ガス流通空所15内の、空所内酸素ポンプ電極(本実施形態においては、内側主ポンプ電極22)よりも前記基体部102の長手方向の先端部から遠い位置に配設された空所内測定電極(本実施形態においては、測定電極44)と、前記基体部102の前記被測定ガス流通空所15とは異なる位置に配設された、前記空所内測定電極と対応している空所外測定電極を含む電気化学的ポンプセルである。本実施形態においては、前記基体部102の外面に配設された外側ポンプ電極23が、外側測定電極としても機能する。「前記空所内測定電極と対応している」とは、前記外側ポンプ電極23が、前記測定電極44と、第2固体電解質層6、スペーサ層5、及び第1固体電解質層4を介して設けられていることを意味する。なお、本実施形態においては、測定電極44は、補助ポンプ電極51よりも前記基体部102の長手方向の先端部から遠い位置に配設されている。
【0085】
すなわち、測定用ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、被測定ガス流通空所15とは異なる位置、例えばセンサ素子101の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定用ポンプセル41は、第3内部空所61内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。
【0086】
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。測定電極44は、触媒活性を有する貴金属(例えばPt,Rh,Ir,Ru,Pdの少なくとも1つ)を含む電極である。触媒活性を有する貴金属の測定対象ガス(本実施形態においてはNOx)に対する触媒活性を低下させる貴金属(例えばAu,Ag等)を含まないことが好ましい。本実施形態においては、測定電極44は、Pt及びRhとZrO2との多孔質サーメット電極とした。
【0087】
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力(電圧V2)に基づいて可変電源46が制御される。
【0088】
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部60を通じて第3内部空所61内の測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された電圧V2が一定となるように可変電源46のポンプ電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0089】
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0090】
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
【0091】
また、上述のポンプ電流Ip0に基づいて算出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なるか否かの判定を行うために、判定用ポンプセル84が設けられている。判定用ポンプセル84は、内側主ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42とから構成される電気化学的なポンプセルである。
【0092】
判定用ポンプセル84においては、内側主ポンプ電極22と基準電極42との間に所望のポンプ電圧Vp3を可変電源85により印加することにより、基準電極42が配設されている基準ガス室内(基準ガス導入層48内)から、内側主ポンプ電極22が配設されている被測定ガス流通空所15内(第1内部空所20内)に酸素を汲み入れることが可能となっている。
【0093】
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、ヒータリード76と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
【0094】
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源であるヒータ電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
【0095】
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、ヒータ72に接続していて且つセンサ素子101の長手方向後端側に延びているヒータリード76と、スルーホール73とを介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0096】
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第3内部空所61の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。主ポンプセル21、補助ポンプセル50、及び測定用ポンプセル41が作動できるように温度が調整されていればよい。これらの全域が同じ温度に調整される必要はなく、センサ素子101に温度分布があってもよい。
【0097】
本実施形態のセンサ素子101においては、ヒータ72が基体部102に埋設された態様であるが、この態様に限定されるものでない。ヒータ72は、基体部102を加熱するように配設されていればよい。すなわち、ヒータ72は、上述の主ポンプセル21、補助ポンプセル50、及び測定用ポンプセル41が作動できる酸素イオン伝導性を発現させる程度に、センサ素子101を加熱できるものであればよい。例えば、本実施形態のように基体部102に埋設されていてもよい。あるいは、例えば、ヒータ部70が基体部102とは別のヒータ基板として形成され、基体部102の隣接位置に配設されていてもよい。
【0098】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72及びヒータリード76の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72及びヒータリード76との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72及びヒータリード76との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0099】
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、ヒータ絶縁層74と基準ガス導入層48とが連通するように形成されている。圧力放散孔75によって、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇が緩和されうる。なお、圧力放散孔75のない構成としてもよい。
【0100】
上述のセンサ素子101は、センサ素子101の先端部が被測定ガスに接し、センサ素子101の後端部が基準ガスに接するような態様で、ガスセンサ100に組み込まれる。
【0101】
(制御装置)
本実施形態のガスセンサ100は、上述のセンサ素子101と、センサ素子101を制御する制御装置90とを含む。ガスセンサ100において、センサ素子101の各電極22,23,51,44,42は図示しないリード線を介して、制御装置90と電気的に接続されている。
図2は、制御装置90と、センサ素子101の各ポンプセル21、50、41、84、及び各センサセル80、81、82、83との電気的接続関係を示すブロック図である。制御装置90は、上述した可変電源24、52、46、85と、制御部91とを含む。制御部91は、駆動制御部92、濃度検出部93、及び判定補正部94を含む。
【0102】
制御部91は、汎用又は専用のコンピュータにより実現されるものであり、コンピュータに搭載されたCPUやメモリ等により駆動制御部92、濃度検出部93、及び判定補正部94としての機能が実現される。なお、ガスセンサ100が自動車のエンジンからの排気ガス中に含まれる酸素、NOx及びNH3の少なくとも一つを測定対象ガスとし、センサ素子101が排気経路に取り付けられるものである場合、制御装置90(特に制御部91)の一部あるいは全部の機能が、該自動車に搭載されているECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)により実現されてもよい。
【0103】
制御部91は、センサ素子101の各センサセル80、81、82、83における起電力(電圧V0、V1、V2、Vref)、及び各ポンプセル21、50、41、84におけるポンプ電流(Ip0、Ip1、Ip2、Ip3)を取得するように構成されている。また、制御部91は、可変電源24、52、46、85に制御信号を出力するように構成されている。
【0104】
駆動制御部92は、被測定ガス中の測定対象ガス(本実施形態においては酸素、及び、NOx又はNH3)の濃度を測定できるように、主ポンプセル21、補助ポンプセル50、及び測定用ポンプセル41の動作を制御するように構成されている。
【0105】
駆動制御部92は、主ポンプセル21、補助ポンプセル50、及び測定用ポンプセル41を動作させて被測定ガス中の測定対象ガスを検出する通常制御を行う。通常制御が行われている状態を通常測定モードと称する。具体的には、本実施形態において、前記通常制御は以下のように行う。
【0106】
駆動制御部92は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における電圧V0が一定値(設定値V0SETと称する)となるように、主ポンプセル21における可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御する。電圧V0は内側主ポンプ電極22近傍の酸素分圧を示しているので、電圧V0を一定にすることは、内側主ポンプ電極22近傍の酸素分圧を一定にすることを意味する。結果として、主ポンプセル21におけるポンプ電流Ip0は、被測定ガス中の酸素濃度に応じて変化する。
【0107】
被測定ガス中の酸素分圧が、設定値V0SETに相当する酸素分圧より高い場合には、主ポンプセル21において、第1内部空所20から酸素を排出する。一方、被測定ガス中の酸素分圧が、設定値V0SETに相当する酸素分圧より低い場合(例えば、炭化水素HC等が含まれている場合)には、主ポンプセル21において、センサ素子101の外の空間から、第1内部空所20に酸素を汲み入れる。従って、ポンプ電流Ip0は、正負のどちらの値も取り得る。
【0108】
駆動制御部92は、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81における電圧V1が一定値(設定値V1SETと称する)となるように、補助ポンプセル50における可変電源52のポンプ電圧Vp1をフィードバック制御する。電圧V1は補助ポンプ電極51近傍の酸素分圧を示しているので、電圧V1を一定にすることは、補助ポンプ電極51近傍の酸素分圧を一定にすることを意味する。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0109】
また、これとともに、補助ポンプセル50におけるポンプ電流Ip1が一定値(設定値Ip1SETと称する)となるように、ポンプ電流Ip1に基づいて電圧V0の設定値V0SETを設定するフィードバック制御を行う。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その電圧V0がポンプ電流Ip1に基づいて設定された設定値V0SETに制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。すなわち、第4拡散律速部60から第3内部空所61に導入される被測定ガス中の酸素濃度が約0.001ppm程度の一定の値に保たれると考えられる。
【0110】
駆動制御部92は、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される電圧V2が一定値(設定値V2SETと称する)となるように、測定用ポンプセル41における可変電源46のポンプ電圧Vp2をフィードバック制御する。測定電極44において、被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。発生した酸素は、電圧V2が設定値V2SETとなるように、測定用ポンプセル41によりポンプアウトされる。設定値V2SETは、測定電極44においてNOxを実質的に全て分解する値として設定することができる。このように設定値V2SETを設定することにより、測定電極44において被測定ガス中のNOxが実質的に全てポンプ電流Ip2として検出される。従って、ポンプ電流Ip2の電流値は、被測定ガス中のNOx濃度に応じた電流値となる。
【0111】
後述のように、判定補正部94が判定補正処理を行う場合には、駆動制御部92は、各ポンプセル21,50,41の上述の通常制御を停止するとよい。
【0112】
ここで、被測定ガス中の酸素濃度に応じて流れるポンプ電流Ip0について、詳しく説明する。
図3は、ガスセンサ100における、被測定ガス中の酸素濃度とポンプ電流Ip0との関係の一例を示す模式図である。横軸は酸素濃度[%]を、縦軸はポンプ電流Ip0の値[A]を示す。ポンプ電流Ip0は、第1内部空所20から酸素を汲み出す向きを正の向き、第1内部空所20に酸素を汲み入れる向きを負の向きとしている。
図3において、実線は正常ガスセンサを示しており、破線は補正されるべきガスセンサを示している。補正については、後述する。
【0113】
酸素濃度は、空燃比(A/F)あるいはラムダ(λ)として表すこともできる。0%の酸素濃度は、理論空燃比、すなわちλ=1に相当する。酸素濃度が正の領域は、被測定ガス中に酸素が存在する(被測定ガス中の酸素量が可燃性ガス量よりも多い)ことを示しており、リーン、すなわちλ>1の領域に相当する。酸素濃度が負の領域は、被測定ガス中に可燃性ガスが存在する(被測定ガス中の酸素量が可燃性ガス量よりも少ない)ことを示しており、リッチ、すなわちλ<1の領域に相当する。物理量としての酸素濃度は負の値をとらないが、被測定ガス中の空燃比がリッチ(λ<1)の状態を便宜的に酸素濃度が負の領域として表している。
【0114】
酸素濃度が正(リーン、λ>1)の領域においては、第1内部空所20内の被測定ガス中の酸素濃度とポンプ電流Ip0との間には、
図3に例示されるような直線的な関係が存在する。また、酸素濃度が負(リッチ、λ<1)の領域においては、第1内部空所20内の被測定ガス中の可燃性ガスを燃焼させるために第1内部空所20に汲み入れられる酸素量(酸素濃度)とポンプ電流Ip0との間には、
図3に例示されるような直線的な関係が存在する。被測定ガス中の酸素濃度とポンプ電流Ip0との直線的な関係においては、通常、
図3に例示されるように、酸素濃度が正の領域と負の領域とで直線の傾きが異なる。また、
図3においては、酸素濃度0%におけるポンプ電流Ip0が負の電流値である例を示しているが、駆動制御部92による通常制御によっては、0A又は正の電流値であり得る。
【0115】
被測定ガスが自動車のエンジンなどの内燃機関からの排気ガスである場合、被測定ガス中の酸素濃度の値[あるいは空燃比(A/F)又はラムダ(λ)の値]は、内燃機関の燃焼制御に用いられることが多い。また、自動車に搭載されている排気ガス浄化システムの制御にも用いられる。従って、ガスセンサ100は、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定することが求められる。特に、ガソリン車からの排気ガスの場合には、理論空燃比(λ=1)付近の領域において、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定することが求められる。理論空燃比(λ=1)付近の領域とは、例えば、酸素濃度500ppm以下程度の低酸素濃度領域であってよい。酸素濃度が負であるリッチの領域を含んでいてよい。
【0116】
また、ガソリン車に搭載されている排気ガス浄化システムからは、通常、排気ガスがリーン雰囲気の場合にはNOxが、リッチ雰囲気の場合にはNH3が排出される。これは、三元触媒の浄化特性によるものである。この場合、被測定ガスの空燃比から、被測定ガス中にNOxが存在するのか、あるいはNH3が存在するのかを判断することができる。
【0117】
被測定ガスの空燃比がリーンである場合には、被測定ガス中にNOxが存在するため、上述のように、NOx濃度に応じたポンプ電流Ip2が流れる。一方、被測定ガスの空燃比がリッチである場合には、被測定ガス中にはNH3が存在する。被測定ガス中にNH3が存在する場合は、内側主ポンプ電極22及び補助ポンプ電極51の少なくともいずれか一方において、NH3が酸化されてNOに変換される。NH3から変換されたNOは、駆動制御部92によって測定用ポンプセル41を動作させることによって、上述のNOxの場合と同様に、ポンプ電流Ip2として検出される。ポンプ電流Ip2の電流値は、NH3から変換されたNOの量(濃度)に応じた電流値となる。NH3から変換されたNOの量(濃度)は、被測定ガス中のNH3の量(濃度)に対応する。従って、ポンプ電流Ip2の電流値は、被測定ガス中のNH3濃度に応じた電流値となる。
【0118】
このように、ガスセンサ100が、酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度を測定できるように構成されれば、被測定ガスの空燃比に基づいて、被測定ガス中にNOxが存在する場合にはNOx濃度を、また被測定ガス中にNH3が存在する場合にはNH3濃度をそれぞれ精度よく測定し得る。この場合には、特に、理論空燃比(λ=1)付近の領域において、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定することにより、後述するように、被測定ガス中にNOxが存在するのか、あるいはNH3が存在するのかをより正しく判断し得る。
【0119】
濃度検出部93は、酸素ポンプセル(本実施形態においては主ポンプセル21)に流れる酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出するように構成されている。また、本実施形態においては、濃度検出部93は、NOx測定用ポンプセル(本実施形態においては測定用ポンプセル41)に流れる測定用ポンプ電流(ポンプ電流Ip2)に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出するように構成されている。また、濃度検出部93は、NOx測定用ポンプセル(本実施形態においては測定用ポンプセル41)に流れる測定用ポンプ電流(ポンプ電流Ip2)に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出するように構成されている。濃度検出部93は、これらの濃度の検出を、被測定ガス中の測定対象ガスを検出する通常測定モードにおいて行う。すなわち、駆動制御部92が上述の通常制御を行っている状態で行う。
【0120】
濃度検出部93は、駆動制御部92が上述の通常制御を行っている通常測定モードにおいて、主ポンプセル21におけるポンプ電流Ip0を取得し、予め記憶されているポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との換算パラメータ(電流-酸素濃度換算パラメータ)に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を算出し、ガスセンサ100の検出値として出力する。電流-酸素濃度換算パラメータは、
図3に例示されるような直線的な関係を表すデータとして、濃度検出部93として機能する制御部91のメモリに予め記憶されている。電流-酸素濃度換算パラメータは、ガスセンサ100について、予め実験等により当業者が適宜定めることができる。電流-酸素濃度換算パラメータは、例えば、実験により得られた近似式(一次関数等)の係数であってもよいし、ポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との対応を示すマップであってもよい。電流-酸素濃度換算パラメータは、ガスセンサ100の1本1本に固有のパラメータであってもよいし、複数のガスセンサに共通して用いられるパラメータであってもよい。
【0121】
濃度検出部93は、駆動制御部92が上述の通常制御を行っている通常測定モードにおいて、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を取得し、予め記憶されているポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNOx濃度との換算パラメータ(電流-NOx濃度換算パラメータ)に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を算出し、ガスセンサ100の検出値として出力する。電流-NOx濃度換算パラメータは、ポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNOx濃度との間の関係(直線的な関係)を表すデータとして、濃度検出部93として機能する制御部91のメモリに予め記憶されている。電流-NOx濃度換算パラメータは、ガスセンサ100について、予め実験等により当業者が適宜定めることができる。電流-NOx濃度換算パラメータは、例えば、実験により得られた近似式(一次関数等)の係数であってもよいし、ポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNOx濃度との対応を示すマップであってもよい。電流-NOx濃度換算パラメータは、ガスセンサ100の1本1本に固有のパラメータであってもよいし、複数のガスセンサに共通して用いられるパラメータであってもよい。
【0122】
濃度検出部93は、駆動制御部92が上述の通常制御を行っている通常測定モードにおいて、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を取得し、予め記憶されているポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNH3濃度との換算パラメータ(電流-NH3濃度換算パラメータ)に基づいて、被測定ガス中のNH3濃度を算出し、ガスセンサ100の検出値として出力する。電流-NH3濃度換算パラメータは、ポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNH3濃度との間の関係(直線的な関係)を表すデータとして、濃度検出部93として機能する制御部91のメモリに予め記憶されている。電流-NH3濃度換算パラメータは、ガスセンサ100について、予め実験等により当業者が適宜定めることができる。電流-NH3濃度換算パラメータは、例えば、実験により得られた近似式(一次関数等)の係数であってもよいし、ポンプ電流Ip2と被測定ガス中のNH3濃度との対応を示すマップであってもよい。電流-NH3濃度換算パラメータは、ガスセンサ100の1本1本に固有のパラメータであってもよいし、複数のガスセンサに共通して用いられるパラメータであってもよい。
【0123】
濃度検出部93は、被測定ガス中の酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度の全てを検出する必要はないが、少なくとも被測定ガス中の酸素濃度を検出する。また、濃度検出部93は、被測定ガス中の酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度の2つ以上を同時に(並行して)検出してもよいし、1つずつ順次検出してもよい。濃度検出部93は、被測定ガス中の酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度の全てを検出値として出力する必要はなく、少なくとも1つ出力するように構成されていればよい。
【0124】
濃度検出部93は、通常測定モードにおいて主ポンプセル21に流れるポンプ電流Ip0に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を検出し、検出された前記酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する空燃比判断部95を含んでいてもよい。
【0125】
本実施形態においては、濃度検出部93は、空燃比判断部95の判断に従って、ポンプ電流Ip2に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出するか、あるいは、ポンプ電流Ip2に基づいてNH3濃度を検出するかのいずれかを行うように構成されている。
【0126】
空燃比判断部95は、主ポンプセル21におけるポンプ電流Ip0を取得し、予め記憶されているポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との換算パラメータ(電流-酸素濃度換算パラメータ)に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を算出し、算出された酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する。あるいは、濃度検出部93により算出された酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断してもよい。
【0127】
濃度検出部93は、
空燃比判断部95が被測定ガス中の空燃比についてリーンであると判断した場合には、NOx測定用ポンプセル(測定用ポンプセル41)に流れる測定用ポンプ電流(ポンプ電流Ip2)に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出し、
空燃比判断部95が被測定ガス中の空燃比についてリッチであると判断した場合には、NOx測定用ポンプセル(測定用ポンプセル41)に流れる測定用ポンプ電流(ポンプ電流Ip2)に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出するように構成されていてもよい。なお、空燃比判断部95が被測定ガス中の空燃比について理論空燃比であると判断した場合には、NOx濃度を検出するようにしてもよいし、NH3濃度を検出するようにしてもよい。
【0128】
濃度検出部93がこのように構成されていれば、上述のガソリン車に搭載されている排気ガス浄化システムからの排気ガスをより正確に測定することができる。つまり、被測定ガス中にNOxが存在するのか、あるいはNH3が存在するのかを判断することができるため、被測定ガス中にNOxが存在する場合とNH3が存在する場合のいずれにおいても、被測定ガス中のNOx濃度あるいはNH3濃度をそれぞれ正確に測定することができる。その結果、排気ガス浄化システムの制御を最適に行うことができる。
【0129】
判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素ポンプセル(本実施形態においては主ポンプセル21)に流れる酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して補正を行うように構成されている。
【0130】
上述のように、濃度検出部93は、予め記憶された電流-酸素濃度換算パラメータに基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を算出する。電流-酸素濃度換算パラメータは、例えば、
図3において実線で示されている正常ガスセンサにおける、ポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との関係に基づいて設定されている。ガスセンサ100が長期間にわたり使用されると、何らかの要因で、ポンプ電流Ip0と被測定ガス中の酸素濃度との関係が変化してしまう場合がある。例えば、
図3において破線で示されている補正されるべきガスセンサのように、被測定ガス中の酸素濃度に応じて流れるポンプ電流Ip0が、正常時に比べて大きい値にシフトする場合がある。
図3において、このシフト量をΔIp0で示している。このようなポンプ電流Ip0のシフトが起こっている場合であっても、濃度検出部93は、予め記憶された電流-酸素濃度換算パラメータ(正常ガスセンサのパラメータ)に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を算出する。従って、濃度検出部93により、補正されるべきガスセンサにおけるポンプ電流Ip0と、正常ガスセンサにおける電流-酸素濃度換算パラメータとから算出された酸素濃度は、被測定ガス中の実際の酸素濃度よりも大きい値、すなわち、リーン側にずれた値になる。つまり、実際の被測定ガスがリッチであるにもかかわらず、ガスセンサ100の検出値は被測定ガスが理論空燃比あるいはリーンであることを示すようなことが起こり得る。
【0131】
図3に示されるようなポンプ電流Ip0のシフトは、例えば、被測定ガス流通空所15内に、ガス導入口10以外から酸素が侵入するような場合に起こり得る。例えば、被測定ガス流通空所15と基準ガス室としての基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックが発生したような場合が挙げられる。例えば、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の第1固体電解質層4にクラックが発生することにより、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間にガス拡散通路できて、被測定ガス流通空所15内に基準ガスが侵入することが考えられる。あるいは、例えば、被測定ガス流通空所15とヒータ絶縁層74との間の第1固体電解質層4及び第3基板層3にクラックが発生することにより、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間にヒータ絶縁層74と圧力放散孔75とを介するガス拡散通路できて、被測定ガス流通空所15内に基準ガスが侵入することが考えられる。このような場合、被測定ガス流通空所15内には、ガス導入口10から被測定ガスが導入され、さらに、クラックを通じて基準ガスが侵入することになる。
【0132】
図3においては、ポンプ電流Ip0が大きい値にシフトする場合を例示したが、ポンプ電流Ip0が小さい値にシフトする場合も起こり得る。また、
図3においては、被測定ガス中の酸素濃度に係わらず、ポンプ電流Ip0が一定値シフトする場合を例示したが、例えば、酸素濃度によってポンプ電流Ip0の変化量が異なる場合も起こり得る。例えば、酸素濃度に対するポンプ電流Ip0の傾きが変化する場合も起こり得る。例えば、被測定ガスの流通経路上のいずれかにおいて被測定ガス中のオイル成分などが付着して目詰まりが発生した場合には、酸素濃度に対するポンプ電流Ip0の傾きが小さくなり得る。目詰まりは、例えば、センサ素子101において、ガス導入口10、第1拡散律速部11、緩衝空間12、及び第2拡散律速部13の少なくともいずれかで発生し得る。ガスセンサ100は通常、センサ素子101の先端部を保護しつつ被測定ガスを流通させる保護カバーを備えているが、保護カバーの通気孔が目詰まりする場合も起こり得る。
【0133】
上述のような種々の要因により、濃度検出部93により検出された酸素濃度と被測定ガス中の実際の酸素濃度との間のずれが生じた場合には、判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する。実際には、被測定ガス中の酸素濃度は未知であるので、ポンプ電流Ip0の電流値それ自体(あるいは、濃度検出部93によりポンプ電流Ip0の電流値から算出された酸素濃度)から、直接的に、被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なるか否かを判定することは困難である。そこで、判定補正部94は、主ポンプセル21に流れるポンプ電流Ip0以外の電流又は起電力を用いて、判定を行うとよい。例えば、酸素濃度が既知の基準ガスに接する基準電極42とそれ以外の電極との間に流れる電流あるいは発生する起電力を用いて、判定を行うとよい。この判定時には、駆動制御部92は、各ポンプセル21,50,41の上述の通常制御を停止するとよい。すなわち、判定補正部94は、通常測定モードを停止し、判定及び必要な場合には補正を行う判定モードを実行してよい。
【0134】
判定補正部94は、例えば、判定用ポンプセル84に流れる判定電流Ip3を用いて、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定してよい。具体的な判定の方法は後述する。
【0135】
判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素ポンプセル(本実施形態においては主ポンプセル21)に流れる酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して補正を行う。
図3を参照すれば、補正されるべきガスセンサにおけるポンプ電流Ip0の正常ガスセンサにおけるポンプ電流Ip0からのずれ分(シフト量ΔIp0)を、濃度検出部93が取得したポンプ電流Ip0に対して補正する。例えば、判定補正部94は、濃度検出部93が取得したポンプ電流Ip0からシフト量ΔIp0を差し引いて補正後のポンプ電流Ip0を算出し、その後、濃度検出部93は、補正後のポンプ電流Ip0と、正常ガスセンサにおける電流-酸素濃度換算パラメータとから酸素濃度を算出してもよい。
【0136】
あるいは、正常ガスセンサにおける電流-酸素濃度換算パラメータにシフト量ΔIp0を上乗せした新たな電流-酸素濃度換算パラメータを算出し、濃度検出部93が取得したポンプ電流Ip0と、新たな電流-酸素濃度換算パラメータとから酸素濃度を算出してもよい。このようにして、ポンプ電流Ip0の電流値に対して補正を行ってもよい。
【0137】
判定補正部94は、例えば、酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対する補正値を予め記憶しており、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して、予め記憶された前記補正値を用いて補正を行ってよい。補正値は、判定補正部94として機能する制御部91のメモリに予め記憶されている。補正値は、ガスセンサ100について、予め実験等により当業者が適宜定めることができる。補正値は、例えば、
図3における正常ガスセンサと補正されるべきガスセンサとの間のポンプ電流Ip0のシフト量ΔIp0であってよい。
【0138】
図3に示されるようなポンプ電流Ip0のシフトが、被測定ガス流通空所15と基準ガス室としての基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックに起因する場合、ポンプ電流Ip0のシフト量ΔIp0は、クラックの大きさや位置によらず、センサ素子101の構成に応じた値になると考えられる。従って、例えば、正常ガスセンサと、クラックを有するガスセンサとについて、被測定ガス中の酸素濃度とポンプ電流Ip0との関係をそれぞれ予め取得し、それらから導出したポンプ電流Ip0のシフト量ΔIp0を補正値として用いてもよい。
【0139】
また、補正値は、例えば、電流-酸素濃度換算パラメータの変化量(
図3におけるシフト量ΔIp0、あるいは、酸素濃度に対するポンプ電流Ip0の傾きの変化量など)であってもよい。あるいは、補正されるべきガスセンサの電流-酸素濃度換算パラメータであってもよい。この場合、判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、濃度検出部93に予め記憶された電流-酸素濃度換算パラメータを変更(補正)する又は補正されるべきガスセンサの電流-酸素濃度換算パラメータに置き換えることにより、ポンプ電流Ip0の電流値に対して補正を行ってもよい。
【0140】
(判定補正処理)
次に、上述のような構成を有するガスセンサ100が行う判定補正処理について、以下に詳しく説明する。
【0141】
本発明のガスセンサの制御方法は、前記判定補正部が、前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正ステップを含む。
【0142】
判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間(判定用ポンプセル84)に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流Ip3の電流値が、所定の電流閾値(判定閾値)より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定してよい。
【0143】
図4は、判定用ポンプセル84における判定用ポンプ電圧Vp3と判定電流Ip3との関係を示す電圧電流曲線の一例を示す模式図である。
図4において、横軸は判定用ポンプ電圧Vp3[V]、縦軸は判定電流Ip3[A]を示す。判定電流Ip3は、基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15(より詳細には第1内部空所20)に酸素を汲み入れる向きを正としている。
図4における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)は、
図3における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)とそれぞれ対応している。
【0144】
基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15に酸素を汲み入れるように基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に判定用ポンプ電圧Vp3を印加すると、判定用ポンプ電圧Vp3が低いうちは判定用ポンプ電圧Vp3の増加に伴いポンプ電流Ip3が増加する。その後、判定用ポンプ電圧Vp3が高くなると判定用ポンプ電圧Vp3が増加しても判定電流Ip3が増加せずに飽和するようになる。この時の飽和した電流値を限界電流値と称する。判定用ポンプ電圧Vp3に対して判定電流Ip3が限界電流値になるような領域を、限界電流領域と称する。正常ガスセンサにおいて、判定電流Ip3の限界電流値は、基準ガス導入層48を介して、センサ素子101の外部から基準電極42に供給される酸素の量に応じた値である。すなわち、基準ガス導入層48の拡散抵抗に応じた電流値である。
【0145】
図3においてポンプ電流Ip0のシフトが発生している補正されるべきガスセンサについて、判定用ポンプセル84における判定用ポンプ電圧Vp3と判定電流Ip3との関係を示す電圧電流曲線を取得した場合、
図4に破線で示されるように、正常ガスセンサと比較して限界電流値が大きくなると考えられる。
【0146】
補正されるべきガスセンサにおいて、例えば、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の第1固体電解質層4にクラックが発生することにより、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間にガス拡散通路ができて、ポンプ電流Ip0のシフトが発生している場合を例に説明する。正常ガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介してセンサ素子101の外部から供給された基準ガス(酸素濃度は一定)が到達するため、限界電流値は、上述のように基準ガス導入層48の拡散抵抗に応じた電流値である。一方、補正されるべきガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された基準ガス(酸素濃度は一定)に加えて、クラック(ガス拡散通路)を介して被測定ガス流通空所15から侵入した被測定ガス(酸素濃度未知)が到達する。従って、補正されるべきガスセンサにおける限界電流値は、正常ガスセンサにおける限界電流値よりも大きな値となる。クラックによる限界電流値のシフト量は、クラックの大きさや位置によらず、センサ素子101の構成に応じた値になると考えられる。
【0147】
例えば、判定用ポンプセル84における基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、可変電源85の判定用ポンプ電圧Vp3として、所定の電圧(設定値Vp3
SETと称する)を印加して、その時に流れる判定電流Ip3を取得し、取得した判定電流Ip3が所定の電流閾値TIp3より大きい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なる(この場合においては実際の酸素濃度より大きい)と判定してよい。設定値Vp3
SETは、判定電流Ip3が限界電流値になるような電圧範囲、例えば、
図4の限界電流領域の範囲の値に設定してよい。電流閾値TIp3は、正常ガスセンサの判定電流Ip3と補正されるべきガスセンサの判定電流Ip3とを区別できるように、適宜設定してよい。電流閾値TIp3は、例えば、正常ガスセンサにおける限界電流値よりも大きく、補正されるべきガスセンサにおける限界電流値よりも小さい範囲の値に設定してよい。電流閾値TIp3は、正常ガスセンサにおける限界電流値の上限値よりも大きく、補正されるべきガスセンサにおける限界電流値の下限値よりも小さい範囲の値に設定してよい。電流閾値TIp3は、判定補正部94として機能する制御部91のメモリに予め記憶されている。
【0148】
図5は、被測定ガス中の酸素濃度と判定電流Ip3の限界電流値との関係の一例を示す模式図である。
図5において、横軸は酸素濃度[%]、縦軸は判定電流Ip3の限界電流値[A]を示す。
図5における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)は、
図3における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)とそれぞれ対応している。正常ガスセンサにおいては、判定電流Ip3の限界電流値は、上述のように基準ガス導入層48の拡散抵抗に応じた電流値である。従って、判定電流Ip3の限界電流値は、被測定ガス中の酸素濃度によらず、概ね一定の値である。一方、補正されるべきガスセンサにおいては、上述のように、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された酸素に加えて、クラック(ガス拡散通路)を介して被測定ガス流通空所15から侵入した酸素が到達する。従って、補正されるべきガスセンサにおける限界電流値は、
図5に破線で示されるように被測定ガス中の酸素濃度が高いほど大きくなる傾向がある。
【0149】
従って、電流閾値TIp3は、被測定ガス中の酸素濃度によらず一定であってもよいし、被測定ガス中の酸素濃度によって異なる値としてもよい。例えば、電流閾値TIp3は、
図5に一点鎖線で示すように被測定ガス中の酸素濃度との関係が一次関数となるように直線的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。例えば、電流閾値TIp3は、
図5に一点鎖線で示すよう各酸素濃度において補正されるべきガスセンサの限界電流値から電流閾値TIp3を引いた差と電流閾値TIp3から正常ガスセンサの限界電流値を引いた差との比率が略一定となるように変化させてもよい。この場合、電流閾値TIp3は、被測定ガス中の酸素濃度と電流閾値TIp3との関係を示す式又はマップとして、判定補正部94として機能する制御部91のメモリに予め記憶されていてよい。そして、判定補正部94は、判定補正処理の開始時に、被測定ガス中の酸素濃度を取得し、取得した酸素濃度と予め記憶された式又はマップとに基づいて、判定補正処理にて用いる電流閾値TIp3を算出してよい。
【0150】
図6は、判定電流Ip3の電流値に基づいて判定を行う場合の判定補正処理の一例を示す、フローチャートである。判定補正処理においては、通常測定モードを停止(ステップS10)し、判定モードを実行し(ステップS11~S14)、その後、通常測定モードを再開する(ステップS15)。このように、判定モードの後には通常測定モードが行われるとよい。判定補正処理は、任意のタイミングで行ってよい。通常測定モードと判定モードとが繰り返されてもよい。例えば、所定時間毎(50時間毎、100時間毎など)に行ってもよい。また、例えば、オペレーターが判定補正処理の開始指令を入力した時に行ってもよい。また、例えば、ガスセンサ100の起動時等の所定のイベント時に行うようにしてもよい。また、例えば、被測定ガス中の酸素濃度に基づいて、被測定ガスの空燃比が理論空燃比付近である時、すなわち、被測定ガス中の酸素濃度が低濃度である時に行うようにしてもよい。低濃度とは、例えば、酸素濃度が500ppm以下であることを意味する。また、酸素濃度が負のリッチの領域を含む。
【0151】
判定補正処理が開始されると、駆動制御部92は、通常制御を停止する(ステップS10)。具体的には、電圧V0が設定値V0SETとなるように主ポンプセル21のポンプ電圧Vp0をフィードバックする制御、電圧V1が設定値V1SETとなるように補助ポンプセル50のポンプ電圧Vp1をフィードバックする制御、及び電圧V2が設定値V2SETとなるように測定用ポンプセル41のポンプ電圧Vp2をフィードバックする制御などの全てのポンプ制御を停止する。すなわち、ヒータ72によりセンサ素子101の温度が所定の温度に保持されており、それ以外の制御は行われていない状態にする。従って、判定補正処理の実行中は、被測定ガス中の酸素濃度、及び、NOx濃度又はNH3濃度の測定は中断される。
【0152】
次に、判定補正部94は、判定用ポンプセル84における基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に可変電源85の判定用ポンプ電圧Vp3を設定値Vp3SETに設定して印加する(ステップS11)。判定補正部94は、判定用ポンプセル84に流れる判定電流Ip3を取得する(ステップS12)。判定補正部94は、ステップS11の後、所定の待機時間経過後にステップS12を行ってもよい。
【0153】
判定補正部94は、取得した判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きいか否かを判定する(ステップS13)。判定補正部94は、判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きいと判定した場合には、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う(ステップS14)。すなわち、判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定し、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う。具体的には、判定補正部94は、予め記憶されている補正値(例えば
図3におけるシフト量ΔIp0)を濃度検出部93に出力し、通常制御において濃度検出部93が取得したポンプ電流Ip0から補正値を差し引いて補正後のポンプ電流Ip0を得るように設定する。
【0154】
その後、判定補正部94は、駆動制御部92に、通常制御を再開させる(ステップS15)。そして、判定補正処理は終了する。
【0155】
ステップS13において、判定補正部94は、判定電流Ip3が電流閾値TIp3以下であると判定した場合には、ステップS14をスキップして、ステップS15を行う。つまり、ポンプ電流Ip0に対して補正を行うことなく、駆動制御部92に、通常制御を再開させる。
【0156】
上述のように、ステップS13において、判定補正部94は、判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きい場合には、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。ここで、判定時には駆動制御部92は通常制御を停止しているので、濃度検出部93はその時点の酸素濃度を検出していない。従って、より正確には、判定補正部94は、判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きいと判定した場合には、判定時において濃度検出部93が酸素濃度を検出したと仮定した場合に、その検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きくなるであろうことを判定していることになる。あるいは、判定補正部94は、判定電流Ip3が電流閾値TIp3より大きいと判定した場合には、その直前の通常測定モード(の判定モードが実行される直前)において濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きかったことを判定しているということもできるであろう。
【0157】
また、判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流Ip3の電流値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値(判定閾値)より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定してよい。
【0158】
変化速度パラメータは、変化速度の程度を表すパラメータである。変化速度パラメータは、例えば、変化速度の値である。あるいは、変化速度パラメータは、変化速度に対応する、又は、変化速度を導出し得る電流値や時間であってよい。例えば、変化速度パラメータは、所定の電圧を印加してから所定時間経過後の判定電流Ip3の値であってもよいし、所定の電圧を印加してから判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間であってもよい。
【0159】
図7は、判定用ポンプセル84に判定用ポンプ電圧Vp3を設定値Vp3
SETに設定して印加した場合における、判定電流Ip3の時間変化の一例を示す模式図である。
図7において、横軸は時間[秒]、縦軸は判定電流Ip3[A]を示す。判定電流Ip3は、基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15(より詳細には第1内部空所20)に酸素を汲み入れる向きを正としている。
図7における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)は、
図3における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)とそれぞれ対応している。
【0160】
基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15に酸素を汲み入れるように、判定用ポンプセル84における基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、可変電源85の判定用ポンプ電圧Vp3として、所定の電圧(設定値Vp3
SET)を印加すると、判定電流Ip3が瞬間的に大きな電流値(ピーク電流値)で流れ、その後、徐々に電流値が小さくなって収束する。設定値Vp3
SETは、判定電流Ip3が限界電流値になるような電圧範囲、例えば、
図4の限界電流領域の範囲の値に設定してよい。この場合には、判定電流Ip3は限界電流値に収束する。
【0161】
補正されるべきガスセンサにおいて、例えば、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の第1固体電解質層4にクラックが発生することにより、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間にガス拡散通路ができて、ポンプ電流Ip0のシフトが発生している場合を例に説明する。正常ガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された基準ガスが到達する。一方、補正されるべきガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された基準ガスに加えて、クラック(ガス拡散通路)を介して被測定ガス流通空所15から侵入した被測定ガスが到達する。そのため、補正されるべきガスセンサにおいては、正常ガスセンサの場合よりも基準電極42に到達するガスの総量が多くなると考えられる。つまり、補正されるべきガスセンサにおいては、正常ガスセンサの場合よりも基準電極42近傍に供給される酸素量が多くなると考えられる。判定用ポンプ電圧Vp3を印加した直後において、判定電流Ip3は瞬間的に大きな電流値で流れるが、補正されるべきガスセンサにおいては、正常ガスセンサの場合よりもより大きな判定電流Ip3に収束するため、判定電流Ip3の変化速度が小さくなると考えられる。なお、補正されるべきガスセンサと正常ガスセンサとにおいて、それぞれのピーク電流値は概ね同じ値である。
【0162】
例えば、判定補正部94は、判定用ポンプセル84における基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、可変電源85の判定用ポンプ電圧Vp3として、所定の電圧(設定値Vp3SET)を印加して、その時に流れる判定電流Ip3を取得し、取得した判定電流Ip3から算出された判定電流Ip3の変化速度パラメータ(例えば、変化速度RIp)が所定の変化速度閾値TRIpより小さい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なる(この場合においては実際の酸素濃度より大きい)と判定してよい。
【0163】
判定電流Ip3の変化速度RIpは、例えば、
図7の正常ガスセンサを参照して、時間taにおける判定電流Ip3の値(Ip3aN)と時間tbにおける判定電流Ip3の値(Ip3bN)とから求めてもよい。変化速度RIp=|(Ip3bN-Ip3aN)/(tb-ta)|。時間ta及び時間tbは、適宜設定してよい。判定電流Ip3の変化速度閾値TRIpは、正常ガスセンサの判定電流Ip3の変化速度RIpと補正されるべきガスセンサの判定電流Ip3の変化速度RIp(=|(Ip3bC-Ip3aC)/(tb-ta)|)とを区別できるように、適宜設定してよい。変化速度閾値TRIpは、例えば、正常ガスセンサにおける変化速度よりも小さく、補正されるべきガスセンサにおける変化速度よりも大きい範囲の値に設定してよい。変化速度閾値TRIpは、例えば、正常ガスセンサにおける変化速度の下限値よりも小さく、補正されるべきガスセンサにおける変化速度の上限値よりも大きい範囲の値に設定してよい。
【0164】
また、判定電流Ip3の変化速度パラメータは、判定用ポンプセル84に判定用ポンプ電圧Vp3を設定値Vp3
SETに設定して印加してから所定時間経過後の判定電流Ip3の値であってもよい。例えば、
図7において、時間taにおける判定電流Ip3の値であってもよい。上述のように、補正されるべきガスセンサと正常ガスセンサとにおいて、それぞれのピーク電流値は概ね同じ値であるであるので、所定時間経過後の判定電流Ip3の値が小さいほど判定電流Ip3の変化速度が大きく、所定時間経過後の判定電流Ip3の値が大きいほど判定電流Ip3の変化速度が小さいと判定し得る。この場合、例えば、所定時間経過後の判定電流Ip3の値が所定の判定閾値より大きい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。
【0165】
また、あるいは、判定電流Ip3の変化速度パラメータは、判定用ポンプセル84に判定用ポンプ電圧Vp3を設定値Vp3SETに設定して印加してから判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間であってもよい。上述のように、補正されるべきガスセンサと正常ガスセンサとにおいて、それぞれのピーク電流値は概ね同じ値であるであるので、判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間が短いほど判定電流Ip3の変化速度が大きく、判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間が長いほど判定電流Ip3の変化速度が小さいと判定し得る。この場合、例えば、判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間が所定の判定閾値より長い場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。
【0166】
また、例えば、制御装置90の構成上、判定電流Ip3の上限値が設定されており、流れるべきピーク電流値がその上限値よりも大きい場合がある。この場合、判定用ポンプセル84に判定用ポンプ電圧Vp3を印加した後、判定電流Ip3がその上限値を下回るまでの間、判定電流Ip3が上限値に貼り付く。従って、判定電流Ip3が上限値に貼り付いている貼り付き時間を、判定電流Ip3の変化速度パラメータとして用いてもよい。貼り付き時間が短いほど判定電流Ip3の変化速度が大きく、貼り付き時間が長いほど判定電流Ip3の変化速度が小さいと判定し得る。この場合、例えば、貼り付き時間が所定の判定閾値より長い場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。
【0167】
図8は、判定電流Ip3の変化速度RIpに基づいて判定を行う場合の判定補正処理の例を示す、フローチャートである。
図8において、
図6と同じステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0168】
判定補正部94は、ステップS12にて取得した判定電流Ip3を用いて判定電流Ip3の変化速度RIpを算出する(ステップS22a)。例えば、時間taにおける判定電流Ip3及び時間tbにおける判定電流Ip3から判定電流Ip3の変化速度RIpを算出する。判定補正部94は、算出した変化速度RIpが変化速度閾値TRIpより小さいか否かを判定する(ステップS23)。判定補正部94は、判定電流Ip3の変化速度RIpが変化速度閾値TRIpより小さいと判定した場合には、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う(ステップS14)。すなわち、判定電流Ip3の変化速度RIpが変化速度閾値TRIpより小さい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定し、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う。
【0169】
ステップS23において、判定補正部94は、判定電流Ip3の変化速度RIpが変化速度閾値TRIp以上であると判定した場合には、ステップS14をスキップして、ステップS15を行う。つまり、ポンプ電流Ip0に対して補正を行うことなく、駆動制御部92に、通常制御を再開させる。
【0170】
ステップS23において、判定補正部94は、判定電流Ip3の変化速度RIpが変化速度閾値TRIpより小さいと判定した場合には、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。ここで、判定時には駆動制御部92は通常制御を停止しているので、濃度検出部93はその時点の酸素濃度を検出していない。従って、より正確には、判定補正部94は、判定電流Ip3の変化速度RIpが変化速度閾値TRIpより小さいと判定した場合には、判定時において濃度検出部93が酸素濃度を検出したと仮定した場合に、その検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きくなるであろうことを判定していることになる。
【0171】
また、判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間に所定の電流を流して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値(判定閾値)より大きいか又は小さい場合に、前記濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定してよい。判定を行う際には、ガスセンサ100の前述の通常制御を停止する。基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の電圧V0は、通常制御においては主ポンプセル21のポンプ電圧Vp0のフィードバック制御に用いられるが、通常制御を停止して判定を行う際には、判定電圧として用いてよい。以下において、判定を行う際に基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に発生する電圧V0を判定電圧V0として説明する。
【0172】
変化速度パラメータは、変化速度の程度を表すパラメータである。変化速度パラメータは、例えば、変化速度の値である。あるいは、変化速度パラメータは、変化速度に対応する、又は、変化速度を導出し得る電圧値や時間であってよい。例えば、変化速度パラメータは、所定の電流を流してから所定時間経過後の判定電圧V0の値であってもよいし、所定の電流を流してから判定電圧V0が所定の電圧値になるまでの時間であってもよい。
【0173】
図9は、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、所定の電流(判定用ポンプ電流Ip3
SETと称する)を流した場合における、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の起電力(判定電圧V0)の時間変化の一例を示す模式図である。
図9において、横軸は時間[秒]、縦軸は判定電圧V0[V]を示す。判定用ポンプ電流Ip3
SETは、基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15(より詳細には第1内部空所20)に酸素を汲み入れる向きに流される。
図9における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)は、
図3における正常ガスセンサ(実線)及び補正されるべきガスセンサ(破線)とそれぞれ対応している。
【0174】
通常測定モードにおいては、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の起電力は、上述のように、通常制御の主ポンプセル21のポンプ電圧Vp0をフィードバックする制御に用いられており、その電圧V0が設定値V0SETとなるように制御されている。通常制御を停止し、基準ガス導入層48から被測定ガス流通空所15に酸素を汲み入れるように、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、所定の電流(判定用ポンプ電流Ip3SET)を流すと、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の電圧V0(判定電圧V0)は瞬間的に低下し、その後、徐々に電圧値が小さくなって収束する。判定用ポンプ電流Ip3SETは、例えば、基準ガス導入層48の拡散抵抗によって、適宜設定してよい。例えば、正常ガスセンサにおける限界電流値及びその付近の値であってもよい。
【0175】
補正されるべきガスセンサにおいて、例えば、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の第1固体電解質層4にクラックが発生することにより、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間にガス拡散通路ができて、ポンプ電流Ip0のシフトが発生している場合を例に説明する。正常ガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された基準ガスが到達する。一方、補正されるべきガスセンサにおいては、基準電極42には、基準ガス導入層48を介して供給された基準ガスに加えて、クラック(ガス拡散通路)を介して被測定ガス流通空所15から侵入した被測定ガスが到達する。被測定ガス中の酸素濃度は通常、基準ガス中の酸素濃度よりも低い。ため、補正されるべきガスセンサにおける基準電極42の周囲の雰囲気中の酸素濃度は、正常ガスセンサにおける酸素濃度よりも低いと考えられる。そのため、判定用ポンプ電流Ip3SETを流した時の、補正されるべきガスセンサにおける基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の酸素濃度差は、正常ガスセンサにおける酸素濃度差よりも小さいと考えられる。すなわち、補正されるべきガスセンサにおける基準電極42と内側主ポンプ電極22との間の起電力は、正常ガスセンサにおける起電力よりも小さいと考えられる。補正されるべきガスセンサにおいては、正常ガスセンサの場合よりもより小さな判定電圧V0に収束するため、判定電圧V0の変化速度が大きくなると考えられる。
【0176】
例えば、判定補正部94は、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、所定の電流(判定用ポンプ電流Ip3SET)を流して、その時に発生する判定電圧V0を取得し、取得した判定電圧V0から算出された判定電圧V0の変化速度パラメータ(例えば、変化速度RV)が所定の変化速度閾値TRVより大きい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なる(この場合においては実際の酸素濃度より大きい)と判定してよい。
【0177】
判定電圧V0の変化速度RVは、例えば、
図9の正常ガスセンサを参照して、時間taにおける判定電圧V0の値(V0aN)と時間tbにおける判定電圧V0の値(V0bN)とから求めてもよい。時間ta及び時間tbは、適宜設定してよい。変化速度RV=|(V0bN-V0aN)/(tb-ta)|。判定電圧V0の変化速度閾値TRVは、正常ガスセンサの判定電圧V0の変化速度RVと補正されるべきガスセンサの判定電圧V0の変化速度RV(=|(V0bC-V0aC)/(tb-ta)|)とを区別できるように、適宜設定してよい。変化速度閾値TRVは、例えば、正常ガスセンサにおける変化速度よりも大きく、補正されるべきガスセンサにおける変化速度よりも小さい範囲の値に設定してよい。変化速度閾値TRVは、例えば、正常ガスセンサにおける変化速度の上限値よりも大きく、補正されるべきガスセンサにおける変化速度の下限値よりも小さい範囲の値に設定してよい。
【0178】
また、判定電圧V0の変化速度パラメータは、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、判定用ポンプ電流Ip3
SETを流してから所定時間経過後の判定電圧V0の値であってもよい。例えば、
図9において、時間taにおける判定電圧V0の値であってもよい。所定時間経過後の判定電圧V0の値が小さいほど判定電圧V0の変化速度が大きく、所定時間経過後の判定電圧V0の値が大きいほど判定電圧V0の変化速度が小さいと判定し得る。この場合、例えば、所定時間経過後の判定電圧V0の値が所定の判定閾値より小さい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。
【0179】
また、あるいは、判定電圧V0の変化速度パラメータは、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に、判定用ポンプ電流Ip3SETを流してから判定電圧V0が所定の電圧値になるまでの時間であってもよい。判定電圧V0が所定の電圧値になるまでの時間が短いほど判定電圧V0の変化速度が大きく、判定電圧V0が所定の電流値になるまでの時間が長いほど判定電圧V0の変化速度が小さいと判定し得る。この場合、例えば、判定電流Ip3が所定の電流値になるまでの時間が所定の判定閾値より短い場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。
【0180】
図10は、判定電圧V0の変化速度RVに基づいて判定を行う場合の判定補正処理の例を示す、フローチャートである。
図10において、
図6と同じステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0181】
ステップS10で通常制御を停止した後、判定補正部94は、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に可変電源85の判定用ポンプ電流Ip3
SETを流す(ステップS31)。判定補正部94は、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間に発生する起電力(判定電圧V0)を取得する(ステップS32)。例えば、
図9を参照して、時間taにおける判定電圧V0及び時間tbにおける判定電圧V0を取得する。
【0182】
判定補正部94は、ステップS32にて取得した判定電圧V0を用いて判定電圧V0の変化速度RVを算出する(ステップS32a)。例えば、時間taにおける判定電圧V0及び時間tbにおける判定電圧V0から判定電圧V0の変化速度RVを算出する。判定補正部94は、算出した変化速度RVが変化速度閾値TRVより大きいか否かを判定する(ステップS33)。判定補正部94は、判定電圧V0の変化速度RVが変化速度閾値TRVより大きいと判定した場合には、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う(ステップS14)。すなわち、判定電圧V0の変化速度RVが変化速度閾値TRVより大きい場合に、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定し、ポンプ電流Ip0に対して補正を行う。
【0183】
ステップS33において、判定補正部94は、判定電流Ip3の変化速度RVが変化速度閾値TRV以下であると判定した場合には、ステップS14をスキップして、ステップS15を行う。つまり、ポンプ電流Ip0に対して補正を行うことなく、駆動制御部92に、通常制御を再開させる。
【0184】
ステップS33において、判定電圧V0の変化速度RVが変化速度閾値TRVより大きいと判定した場合には、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きいと判定してよい。ここで、判定時には駆動制御部92は通常制御を停止しているので、濃度検出部93はその時点の酸素濃度を検出していない。従って、より正確には、判定補正部94は、判定電圧V0の変化速度RVが変化速度閾値TRVより大きいと判定した場合には、判定時において濃度検出部93が酸素濃度を検出したと仮定した場合に、その検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度より大きくなるであろうことを判定していることになる。
【0185】
上記に、本発明の実施形態の例として、被測定ガス中のNOx濃度を検出するガスセンサ100を示したが、本発明はこの形態に限られない。本発明には、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定するという本発明の目的を達成する範囲であれば、種々の形態のセンサ素子や制御装置の構成を含むガスセンサ含まれ得る。
【0186】
本発明において、判定補正処理は任意のタイミングで行われてよく、例えば、被測定ガス中の酸素濃度に基づいて、被測定ガスの空燃比が理論空燃比付近である時、すなわち、被測定ガス中の酸素濃度が低濃度である時に行うようにしてもよい。この場合には、判定補正処理のステップS10を実行する前に、判定補正部94は、被測定ガス中の酸素濃度を取得する。そして、判定補正部94が被測定ガス中の酸素濃度が所定の濃度以下であるか否かを判断する。所定の濃度としては、被測定ガス中の酸素濃度が、例えば、500ppm以下であってよい。また、1000ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下等であってよい。また、酸素濃度が負(空燃比がリッチ)の領域を含む。
【0187】
また、あるいは判定補正部94が被測定ガス中の酸素濃度が所定の濃度範囲内であるか否かを判断してもよい。この場合の所定の濃度範囲には、理論空燃比である酸素濃度0%を含む。すなわち、被測定ガスの空燃比がリッチである下限値とリーンである上限値の範囲内であるか否かを判断してもよい。所定の濃度範囲としては、例えば、-500ppm~500ppmであってもよい。あるいは、所定の濃度範囲の上限値は、例えば、1000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下等であってよい。また、所定の濃度範囲の下限値は、例えば、-1000ppm以上、-500ppm以上、-300ppm以上、-100ppm以上、-50ppm以上等であってよい。
【0188】
判定補正部94が被測定ガス中の酸素濃度が所定の濃度以下である(あるいは所定の濃度範囲内である)と判断した場合には、ステップS10以降のステップが実行される。一方、判定補正部94が被測定ガス中の酸素濃度が所定の濃度より高い(あるいは所定の濃度範囲から外れている)と判断した場合には、ステップS10以降のステップを行わない。つまり、判定補正処理を開始せず、通常制御が継続される。
【0189】
判定補正部94は、被測定ガス中の酸素濃度として、濃度検出部93により検出された酸素濃度を取得してよい。あるいは、ポンプ電流Ip0の電流値を取得し、ポンプ電流Ip0の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度が所定の濃度以下であるか否かを判断してもよい。また、あるいは、判定補正部94は、被測定ガス中の酸素濃度として、他のガスセンサにより測定された酸素濃度を取得してもよい。この場合、他のガスセンサは、自らと同種のガスセンサ(ここではNOxセンサ)でもよいし、異種のガスセンサでもよい。他のガスセンサは、例えば、限界電流検出型の酸素センサとしてもよいし、電位検出型の酸素センサ(ラムダセンサ)としてもよい。
【0190】
上述の実施形態においては、ガスセンサ100は被測定ガス中の酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度を検出したが、本発明はこれに限られない。例えば、酸素濃度、NOx濃度、及びNH3濃度のうちのいずれか1つを検出してもよいし、酸素濃度とNOx濃度、あるいは、酸素濃度とNH3濃度を検出してもよい。
【0191】
上述の実施形態においては、判定用ポンプセル84は、基準電極42と内側主ポンプ電極22との間のポンプセルとして構成したが、これに限られない。判定用ポンプセル84は、基準電極42と、基準電極42とは固体電解質を介して配設された電極との間のポンプセルであるとよい。基準電極42は酸素濃度既知の基準ガスに接しているため、被測定ガス中の酸素濃度によらず、判定を行い得ると考えられる。例えば、判定用ポンプセルは、基準電極42と被測定ガス流通空所15内の補助ポンプ電極51又は測定電極44との間のポンプセルであってよい。また、例えば、基準電極42と外側ポンプ電極23との間のポンプセルであってよい。
【0192】
上述の実施形態においては、判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、酸素ポンプセル(本実施形態においては主ポンプセル21)に流れる酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して補正を行ったが、これに限られない。判定補正部94は、濃度検出部93により検出された酸素濃度と被測定ガス中の実際の酸素濃度との間のずれの要因となり得る事象(例えば上述のクラック、目詰まりなど)を検出した場合に、酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して補正を行ってもよい。例えば、判定補正部94は、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックが存在することを検出した場合に、酸素ポンプセル(本実施形態においては主ポンプセル21)に流れる酸素ポンプ電流(ポンプ電流Ip0)の電流値に対して補正を行ってもよい。
【0193】
判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間(判定用ポンプセル84)に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流Ip3の電流値が、所定の電流閾値(判定閾値)より大きい場合に、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックが存在すると判定してよい。また、判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間に所定の電圧を印加して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流Ip3の電流値の変化速度が、所定の変化速度閾値(判定閾値)より小さい場合に、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックが存在すると判定してよい。また、判定補正部94は、例えば、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極(本実施形態において内側主ポンプ電極22)との間に所定の電流を流して、前記基準ガス室(本実施形態において基準ガス導入層48)内から前記被測定ガス流通空所15内に酸素を汲み入れ、前記基準電極42と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧V0の変化速度が、所定の変化速度閾値(判定閾値)より大きい場合に、被測定ガス流通空所15と基準ガス導入層48との間の固体電解質層にクラックが存在すると判定してよい。
【0194】
上述の実施形態のガスセンサ100においては、センサ素子101は、
図1に示すように、基準ガス室が、多孔体で満たされた基準ガス導入層48として設けられているが、基準ガス室はこれに限られない。基準ガス室は、空間として形成されていてもよい。
【0195】
例えば、基準ガス室が、
図11に示すセンサ素子201のように、基体部102の後端に開口した空間として形成されていてもよい。センサ素子201において、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4の下面との間に、基準電極42を被覆するように、多孔質体の基準ガス導入層248が設けられている。そして、基準電極42よりも後方には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間243が設けられている。基準ガス導入空間243は、センサ素子201の後端部に開口部を有している。基準ガス導入層248には基準ガス導入空間243を通じて基準ガスが導入されるようになっている。すなわち、基準ガスは、基準ガス導入空間243の開口部から導入され、基準ガス導入空間243及び基準ガス導入層248を通じて基準電極42に到達する。
図11のセンサ素子201においては、また、
図11のセンサ素子201においては、基準ガス導入空間243と基準ガス導入層248とが、基準ガス室に相当する。圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、ヒータ絶縁層74と基準ガス導入空間243とが連通するように形成されている。
図11のセンサ素子201のその他の構成は、
図1において説明したものと概略同じである。
【0196】
上述の実施形態のセンサ素子101、及び上述のセンサ素子201は、
図1に示すように、第1内部空所20、第2内部空所40、及び第3内部空所61の3つの内部空所を備え、各内部空所には、内側主ポンプ電極22、補助ポンプ電極51、及び測定電極44がそれぞれ配置されている構造であったが、これに限られない。例えば、第1内部空所20及び第2内部空所40の2つの内部空所を備え、第1内部空所20には内側主ポンプ電極22が、第2内部空所40には補助ポンプ電極51及び測定電極44がそれぞれ配置されている構造としてもよい。この場合、例えば、補助ポンプ電極51と測定電極44との間の拡散律速部として、測定電極44を覆う多孔体保護層を形成してもよい。
【0197】
上述の実施形態のセンサ素子101、及び上述のセンサ素子201においては、外側ポンプ電極23は、酸素ポンプセル(主ポンプセル21)における空所外酸素ポンプ電極と、補助ポンプセル50における空所外補助ポンプ電極と、NOx測定用ポンプセル(測定用ポンプセル41)における空所外測定電極との3つの電極の機能を兼ねていたが、これに限られない。例えば、空所外酸素ポンプ電極、空所外補助ポンプ電極、及び空所外測定電極はそれぞれ別の電極として形成されていてもよい。例えば、空所外酸素ポンプ電極、空所外補助ポンプ電極、及び空所外測定電極のいずれか1つ以上を外側ポンプ電極23とは別に基体部102の外表面に被測定ガスと接するように設けてもよい。あるいは、空所外酸素ポンプ電極、空所外補助ポンプ電極、及び空所外測定電極のいずれか1つ以上を基準電極42が兼ねてもよい。
【0198】
上述のように、本発明によれば、ガスセンサにより検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なる場合には、酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に対して補正を行うことができるため、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の酸素濃度を精度よく測定することができる。また、その結果として、ガスセンサの長期間の使用にわたり、被測定ガス中の空燃比を正しく判断することにより、被測定ガス中のNOx及びNH3を精度よく測定することができる。
【0199】
また、本発明には以下の実施形態を含む。
【0200】
(101) センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、被測定ガス中の測定対象ガスを検出するガスセンサであって、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
被測定ガス中の測定対象ガスを検出する通常測定モードにおいて、前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記通常測定モードにおいて前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含む、ガスセンサ。
【0201】
(102) 前記判定補正部は、前記通常測定モードを停止し、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れる判定モードを行い、前記判定モードにおいて前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値が、所定の電流閾値より大きいか又は小さい場合に、前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出される酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(101)に記載のガスセンサ。
【0202】
(103) 前記判定補正部は、前記通常測定モードを停止し、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電圧を印加して前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れる判定モードを行い、前記判定モードにおいて前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に流れる判定電流の電流値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(101)に記載のガスセンサ。
【0203】
(104) 前記判定補正部は、前記通常測定モードを停止し、前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に所定の電流を流して前記基準ガス室内から前記被測定ガス流通空所内に酸素を汲み入れる判定モードを行い、前記判定モードにおいて前記基準電極と前記空所内酸素ポンプ電極との間に発生する判定電圧の電圧値の変化速度パラメータが、所定の変化速度閾値より大きいか又は小さい場合に、前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定する、上記(101)に記載のガスセンサ。
【0204】
(105) 前記判定補正部は、前記通常測定モードにおける前記酸素ポンプ電流の電流値に対する補正値を予め記憶しており、前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出される酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記通常測定モードにおける前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して、予め記憶された前記補正値を用いて補正を行う、上記(101)~(104)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0205】
(106) 前記判定補正部は、被測定ガス中の酸素濃度が500ppm以下である低酸素濃度の場合に、前記補正を行う、上記(101)~(105)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0206】
(107) 前記センサ素子は、さらに、
前記被測定ガス流通空所内の、前記空所内酸素ポンプ電極よりも前記基体部の長手方向の前記一方の端部から遠い位置に配設された空所内測定電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内測定電極と対応している空所外測定電極とを含むNOx測定用ポンプセルを含み、
前記濃度検出部は、前記通常測定モードにおいて前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出する、上記(101)~(106)のいずれかに記載のガスセンサ。
【0207】
(108) 前記濃度検出部は、
前記通常測定モードにおいて前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度を検出し、検出された前記酸素濃度に基づいて、被測定ガス中の空燃比が、理論空燃比、リッチ、又はリーンのいずれであるかを判断する空燃比判断部を含む、上記(107)に記載のガスセンサ。
【0208】
(109) 前記濃度検出部は、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリーンであると判断した場合には、前記通常測定モードにおいて前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を検出し、
前記空燃比判断部が被測定ガス中の空燃比についてリッチであると判断した場合には、前記通常測定モードにおいて前記NOx測定用ポンプセルに流れる測定用ポンプ電流に基づいて被測定ガス中のNH3濃度を検出する、上記(108)に記載のガスセンサ。
【0209】
(110) 被測定ガス中の測定対象ガスを検出するためのガスセンサの制御方法であって、
前記ガスセンサは、
センサ素子と、前記センサ素子を制御する制御装置とを含み、
前記センサ素子は、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を含む長尺板状の基体部と、
前記基体部の長手方向の一方の端部から形成された被測定ガス流通空所と、
前記被測定ガス流通空所内に配設された空所内酸素ポンプ電極と、前記基体部の前記被測定ガス流通空所とは異なる位置に配設された、前記空所内酸素ポンプ電極と対応している空所外酸素ポンプ電極とを含む酸素ポンプセルと、
前記基体部の内部に、前記被測定ガス流通空所とは離隔して形成された基準ガス室と、
前記基準ガス室内に配設された基準電極と、
を含み、
前記制御装置は、
被測定ガス中の測定対象ガスを検出する通常測定モードにおいて、前記酸素ポンプセルに流れる酸素ポンプ電流の電流値に基づいて被測定ガス中の酸素濃度を検出する濃度検出部と、
前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出された酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記通常測定モードにおいて前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正部とを含み、
前記制御方法は、
前記判定補正部が、前記通常測定モードにおいて前記濃度検出部により検出される酸素濃度が被測定ガス中の実際の酸素濃度と異なると判定した場合に、前記通常測定モードにおいて前記酸素ポンプセルに流れる前記酸素ポンプ電流の前記電流値に対して補正を行う判定補正ステップを含む、ガスセンサの制御方法。
【符号の説明】
【0210】
1 第1基板層
2 第2基板層
3 第3基板層
4 第1固体電解質層
5 スペーサ層
6 第2固体電解質層
10 ガス導入口
11 第1拡散律速部
12 緩衝空間
13 第2拡散律速部
15 被測定ガス流通空所
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
22 内側主ポンプ電極
22a (内側主ポンプ電極の)天井電極部
22b (内側主ポンプ電極の)底部電極部
23 外側ポンプ電極
24 (主ポンプセルの)可変電源
30 第3拡散律速部
40 第2内部空所
41 測定用ポンプセル
42 基準電極
44 測定電極
46 (測定用ポンプセルの)可変電源
48、248 基準ガス導入層
243 基準ガス導入空間
50 補助ポンプセル
51 補助ポンプ電極
51a (補助ポンプ電極の)天井電極部
51b (補助ポンプ電極の)底部電極部
52 (補助ポンプセルの)可変電源
60 第4拡散律速部
61 第3内部空所
70 ヒータ部
71 ヒータ電極
72 ヒータ
73 スルーホール
74 ヒータ絶縁層
75 圧力放散孔
76 ヒータリード
80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル
81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル
82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル
83 センサセル
84 判定用ポンプセル
85 (判定用ポンプセルの)可変電源
90 制御装置
91 制御部
92 駆動制御部
93 濃度検出部
94 判定補正部
95 空燃比判断部
100 ガスセンサ
101、201 センサ素子
102 基体部