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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082359
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/111 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A01B63/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196153
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】川崎 潤
(72)【発明者】
【氏名】久岡 泰裕
【テーマコード(参考)】
2B304
【Fターム(参考)】
2B304KA13
2B304LA02
2B304LA05
2B304LA09
2B304LA12
2B304LB05
2B304LC05
2B304MA04
2B304MB02
2B304MC02
2B304MC08
2B304MC11
2B304MD08
2B304PB02
2B304PB06
2B304QA12
2B304QB14
2B304QC06
2B304QC12
(57)【要約】
【課題】従来の構成に比べて、走行車体の傾斜の変化が大きい場合でも作業機での作業ムラの発生を抑制すること。
【解決手段】カバー部(18a)の位置に応じて作業機(18)の昇降を制御する制御部(200)であって、カバー部(18a)の変化量が予め定められた閾値よりも大きい場合には変化量が閾値よりも小さい場合に比べて作業機(18)を低速で昇降させる制御部(200)を備えることで、走行車体(1a)の傾斜の変化が大きい場合でも作業機(18)での作業ムラの発生を抑制することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1a)と、
前記走行車体(1a)に昇降可能に支持されて、圃場に対する作業を行う作業機(18)であって、作業の深さに応じて移動するカバー部(18a)を有する前記作業機(18)と、
前記カバー部(18a)の位置を検知するカバーセンサ(SN0)と、
前記カバー部(18a)の位置に応じて前記作業機(18)の昇降を制御する制御部(200)であって、前記カバー部(18a)の変化量が予め定められた閾値よりも大きい場合には、前記変化量が前記閾値よりも小さい場合に比べて、前記作業機(18)を低速で昇降させる前記制御部(200)と、
を備えたことを特徴とする作業車両(1)。
【請求項2】
前記カバー部(18a)の前記変化量が前記閾値よりも大きい場合であり、且つ、エンジン(E)の回転数が予め定められた回転数に達しない場合には、変化量が前記閾値よりも小さい場合の昇降速度で前記作業機(18)を昇降させる前記制御部(200)、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや苗移植機、芝刈り機等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタや苗移植機等の作業車両において、ロータリ耕耘機等の作業機の後部を覆うリアカバーの回動角度を検知するリアカバーセンサを備え、リアカバーの回動角度に応じて、作業機を昇降させることにより、地面の凹凸によって走行車体が前後に傾いても耕耘深さ等の作業機の地面に対する高さを一定に保つように制御する技術が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-289609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来の技術では、リアカバーの回動が検知された後に、作業機の昇降が行われるため、圃場の凹凸に対して作業機の昇降には遅れが生じる。したがって、走行車体の傾斜の変化が大きい場合、作業機やリアカバーの昇降も大きくなるが、圃場の大きな凹凸に対して、作業機が遅れて大きく昇降することとなる。したがって、作業の仕上がりに凹凸(作業ムラ)が発生しやすくなる問題がある。
【0005】
本発明は、従来の構成に比べて、走行車体の傾斜の変化が大きい場合でも作業機での作業ムラの発生を抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体(1a)と、前記走行車体(1a)に昇降可能に支持されて、圃場に対する作業を行う作業機(18)であって、作業の深さに応じて移動するカバー部(18a)を有する前記作業機(18)と、前記カバー部(18a)の位置を検知するカバーセンサ(SN0)と、前記カバー部(18a)の位置に応じて前記作業機(18)の昇降を制御する制御部(200)であって、前記カバー部(18a)の変化量が予め定められた閾値よりも大きい場合には、前記変化量が前記閾値よりも小さい場合に比べて、前記作業機(18)を低速で昇降させる前記制御部(200)と、を備えたことを特徴とする作業車両(1)である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記カバー部(18a)の前記変化量が前記閾値よりも大きい場合であり、且つ、エンジン(E)の回転数が予め定められた回転数に達しない場合には、変化量が前記閾値よりも小さい場合の昇降速度で前記作業機(18)を昇降させる前記制御部(200)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両(1)である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、カバー部の変化量に関わらず作業機を定速で昇降させる従来の構成に比べて、カバー部(18a)の変化量が大きい場合には変化量が小さい場合に比べて作業機(18)を低速で昇降させることで、走行車体(1a)の傾斜の変化が大きい場合でも作業機(18)での作業ムラの発生を抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、カバー部(18a)の変化量が大きくても、エンジン(E)の回転数が予め定められた回転数に達しない場合には、作業機(18)を速やかに昇降させることで、負荷がかかっているエンジン(E)が停止することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が作業を行う高さに下降した状態の説明図である。
図2図2は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が上昇した状態の説明図である。
図3図3は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
図4図4は実施の形態の昇降レバーの位置と作業機の高さとの関係の説明図である。
図5図5は実施の形態の作業機昇降処理のフローチャートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が作業を行う高さに下降した状態の説明図である。
図2は実施の形態の作業車両の一例としてのトラクタの説明図であり、作業機が上昇した状態の説明図である。
図1図2において、本発明の作業車両の一例としての耕耘用のトラクタ1は、走行車体1aの前後部に前輪2,2と後輪3,3とを備え、走行車体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これらを前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、トラクタ1の機体後部には、トラクタ1の後方の地面(圃場)を耕耘する耕耘機18などの作業機を装着し、リアPTO軸141で動力が伝達されて作業機を駆動する構成としている。
なお、本明細書ではトラクタ1の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0011】
走行車体1aの上部には、キャビン7が支持されている。キャビン7の内部では、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、速度メータ(図示せず)等の表示パネルや、操作用の各種スイッチ(図示せず)などが配置されている。運転座席8の前方下部には、ブレーキペダル12や、前進ペダルや後進ペダルを有するアクセルペダル13等の走行操作具が配置されている。
【0012】
図1において、トランスミッションケース5の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機の一例としての耕耘機18が連結されている。
【0013】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ14aに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(耕耘機)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるトランスミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。
【0014】
耕耘機18の後部には、カバー部の一例としてのリアカバー18aが配置されている。リアカバー18aは、耕耘機18のフレーム部(図示せず)に対して回転中心18bを中心として移動可能(回転可能、昇降可能)に支持されている。回転中心18bの近傍には、リアカバー18aの位置を検出するカバーセンサSN0が配置されている。
なお、前記カバーセンサSN0は、ボルト止め等で作業機18のフレーム部に固定することも可能であるが、これに限定されない。例えば、マグネットやはめ込み式等のように工具なしで脱着可能な構成とすることも可能である。センサを容易に脱着可能な構成とすることで、作業機18が損耗等で入れ替わってもセンサは同じものを引き続き使用しやすく、センシングの個体差の発生を抑制できる。また、容易に脱着可能な構成の場合、トラクタ1の洗車時にセンサを取り外しておくこともでき、センサの破損を防止することも可能である。
【0015】
リフトアーム15の基端部には、リフトアーム15の傾斜角、すなわち、作業機18の高さ(上下方向の位置)を検出するためのポジションセンサSN1が配置されている。 なお、走行車体1aの後部に装着される作業機、すなわち、リアPTO軸141から駆動が伝達される作業機としては、農作業用のロータリ耕耘装置に限定されず、プラウや播種機、苗移植機、肥料散布機、薬剤散布機等の作業機がある。
【0016】
(作業車両の制御部の説明)
図3は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
実施の形態のトラクタ1は、各機能を制御する制御部200を有する。制御部200は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部200は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部200は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部200は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部200は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部200は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0017】
制御部200には、カバーセンサSN0やポジションセンサSN1、エンジンの回転数センサSN2、昇降レバー211、オートボタン212その他の図示しない各種センサ等の信号入力要素から信号が入力される。
制御部200は、油圧シリンダ14a、その他の図示しない被制御要素に対して制御信号を出力する。
【0018】
実施の形態の制御部200は、以下の機能手段(プログラムモジュール)を有する。
作業機高さ検出手段201は、ポジションセンサSN1の検出結果に基づいて作業機18の高さを検出する。
カバー位置検出手段202は、カバーセンサSN0の検出結果に基づいてリアカバー18aの位置(回転位置)を検出する。
エンジン回転数検出手段(エンジン負荷検出手段)203は、エンジンの回転数センサSN2に基づいて、エンジンEの回転数を検出する。すなわち、作業機18での作業中のように定回転数駆動時では、エンジンEの回転数を検出することで、エンジンEにかかっているエンジン負荷を検出可能である。
【0019】
変化量判別手段204は、リアカバー18aの変化量が予め定められた第1の閾値(変化量閾値)に達するかを判別する。実施の形態の変化量判別手段204は、予め定められた時間間隔をあけて検出されるリアカバー18aの位置に基づいて、前回検出時の位置と今回検出時の位置との差分を変化量として算出して、変化量が変化量閾値に達するか否かを判別する。
回転数判別手段205は、エンジンEの回転数が予め定められた第2の閾値(回転数閾値)に達するかを判別する。実施の形態の回転数判別手段205は、エンジンが停止する(エンジンストールする)恐れがあるか否かを判別するための第2の閾値に対して、エンジンEの現在の回転数が第2の閾値を下回るか否かを判別する。
【0020】
作業機昇降制御手段206は、リアカバー18aの高さに基づいて、作業機18の高さを制御する。すなわち、圃場の凹凸に応じてリアカバー18aが上下動することに応じて、作業深さ(作業高さ)が一定になるように、油圧シリンダ14aを制御して、作業機18を昇降させて作業機18の高さを制御する。
【0021】
実施の形態のトラクタ1では、キャビン7内に昇降レバー211が設けられており、昇降レバー211が操作されると作業機18を昇降操作可能であると共に、オート作業モード用のオートボタン212が入力されると、一定速度でトラクタ1を走行させながら、一定の作業深さで作業を自動で行うオート作業モードが実行される。そして、オート作業モードが開始されると、作業機昇降制御手段206は、リアカバー18aの高さに応じて作業深さが一定になるように作業機18の高さを制御する。
なお、オート作業モードのオン/オフは、キャビン7内のパネルに表示をすることが望ましい。
【0022】
図4は実施の形態の昇降レバーの位置と作業機の高さとの関係の説明図である。
実施の形態の作業機昇降制御手段206は、耕耘機(作業機)18の高さの下限の位置(最下げ位置)や上限の位置(最上げ位置)だけでなく、作業時の基準となる作業機18の高さを記憶している。図4において、トラクタ1を圃場の平坦な地面上に停車させた状態で、リアカバー18aが接地するまで作業機18を下降させた状態を接地位置(A点)とし、その状態での昇降レバー211の位置を接地操作位置(A′点)として、カバーセンサSN0の検出結果と対応付けて予め記憶させておく。次に、作業機18およびリアカバー18aを上昇させて、作業機18で作業できる最も深い位置(ロータリ耕耘機ではチェーンケース下部よりもやや上)でのリアカバー18aの位置(最深位置、B点)において、その状態での昇降レバー211の位置(最深操作位置、B′点)とカバーセンサSN0の検出結果とを予め記憶させる。なお、最深位置(B点)をオート作業モードでの下限位置に設定可能である。そして、オート作業モードでは、最深位置(B点)を基準として制御を行うことが可能である。
【0023】
なお、リアカバー18aの位置は、従来構成では、リアカバー18aに連結されたケーブルの長さや張りを調整して、位置を調整することも可能であるが、作業機18の損耗や故障等で入れ替え、交換しても、最深位置(B点)や接地位置(A点)が予め記憶、登録されていれば、カバーセンサSN0の検知結果からケーブルの調整をしなくてもオート作業モードの機能が使用可能である。
前記A点、B点、A′点、B′点の登録、設定がされていない場合には、キャビン7内のパネルに、その旨の表示(例えば、点滅表示)等を行うことも可能である。
【0024】
また、実施の形態の作業機昇降制御手段206は、リアカバー18aの変化量が、変化量閾値に達しない場合には、予め定められた第1の昇降速度(通常速度)で作業機18を昇降させる。
さらに、実施の形態の作業機昇降制御手段206は、リアカバー18aの変化量が、変化量閾値に達する場合には、第1の昇降速度(通常速度)よりも低速の第2の昇降速度(低速)で作業機18を昇降させる。
なお、実施の形態の作業機昇降制御手段206は、リアカバー18aの変化量が変化量閾値に達する場合であっても、エンジンEの回転数が回転数閾値に達しない場合には、第1の昇降速度(通常速度)で作業機18を昇降させる。
【0025】
(フローチャートの説明)
次に、実施の形態のトラクタ1の処理を流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
なお、フローチャートで説明する以外のトラクタ1の各種処理については、並行して処理されており、詳細な説明および図示は省略する。
【0026】
(トラクタ1の作業昇降処理の説明)
図5は実施の形態の作業機昇降処理のフローチャートの説明図である。
図5の処理は、トラクタ1が始動された場合に開始される。
図5のST1において、作業実行の入力操作がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、次の処理(1)~(3)を実行し、ST3に進む。
(1)作業機18の高さを検出する。
(2)リアカバー18aの高さを検出する。
(3)エンジンEの回転数を検出する。
【0027】
ST3において、リアカバー18aの変化量を算出する。そして、ST4に進む。
ST4において、リアカバー18aの変化量が変化量閾値に達するか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST5に進み、ノー(N)の場合はST6に進む。
ST5において、エンジン回転数が回転数閾値に達するか否かを判別する。ノー(N)の場合はST6に進み、イエス(Y)の場合はST7に進む。
ST6において、作業機18の昇降速度を第1の昇降速度(通常速度)に設定する。そして、ST8に進む。
【0028】
ST7において、作業機18の昇降速度を第2の昇降速度(低速)に設定する。そして、ST8に進む。
ST8において、リアカバー18aの高さに応じて作業機18を移動させる。そして、ST9に進む。
ST9において、作業が終了したか否かを判別する。ノー(N)の場合はST2に戻り、イエス(Y)の場合はST1に戻る。
【0029】
(実施の形態の作用)
前記構成を備えた実施の形態のトラクタ1では、リアカバー18aの変化量が変化量閾値に達しない場合、すなわち、圃場の表面の凹凸が小さい場合には、作業機18の昇降速度が通常速度に制御される。したがって、圃場の凹凸に応じて作業機18が素早く移動して、作業深さ(耕耘深さ)を一定に保持することが可能である。
一方、リアカバー18aの変化量が変化量閾値に達する場合、すなわち、圃場の表面の凹凸が大きい場合には、作業機18の昇降速度が低速に制御される。すなわち、作業機18の昇降の感度を、凹凸に対して鈍感な状態に制御する。したがって、圃場の大きな凹凸に対して通常速度で作業機18を昇降させる場合に比べて、作業機18の昇降が低速となり、リアカバー18aが圃場の表面に接触して均される際の耕耘跡の凹凸が小さくなりやすい。よって、耕耘跡が滑らかな状態となりやすく、作業ムラの発生が抑制される。
【0030】
なお、実施の形態では、カバーセンサSN0が検出を行う時間間隔を一定として、昇降速度を切り替えて、凹凸に対する敏感、鈍感を切り替える構成を例示したがこれに限定されない。例えば、カバーセンサSN0が検出を行う頻度を高く(時間間隔を短く)することで敏感にし、頻度を低く(時間間隔を長く)することで鈍感に切り替える構成とすることも可能である。他にも、検出を行う頻度は一定にしつつ、変化量の計算を行う際に使用するデータを、例えば、1つおきにする等で低頻度にすることも可能である。
【0031】
また、実施の形態のトラクタ1では、リアカバー18aの変化量が変化量閾値に達する場合であってもエンジンEの回転数が回転数閾値に達しない場合には、作業機18の昇降速度が通常速度に制御される。圃場の大きな凹凸での走行車体1aの姿勢の変化として、例えば、走行車体1aが前上がりの状態となると、作業機18が地面に深く入り込んだ状態となることがある。この場合、作業機18を回転させる負荷が大きくなり、エンジンEにかかる負荷も大きくなり、エンジンEの回転数が低下する。この状態において地面深くの作業機18を低速で上昇させると、上昇中にエンジンEが停止する(エンジンストールする)恐れが高くなる。これに応じて、実施の形態では、エンジンEの回転数が回転数閾値に達しない場合には、作業機18を通常速度で昇降させている。よって、エンジンEの負荷が増大した時は素早く作業機18が上昇することとなり、エンジンストールの発生が抑制される。
【0032】
なお、実施の形態では、エンジンEの負荷が高い状態では、作業機18が上昇時だけでなく下降時も通常速度で制御される構成を例示したが、上昇時のみとすることも可能である。
また、エンジンEの負荷が高い状態では、作業機18の昇降制御中は通常速度で制御する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、作業機18の昇降制御を通常速度で実行中にエンジンEの負荷が低下したら(エンジンEの回転数が回転数閾値を超えたら)、その時期から作業機18の昇降制御を低速に切り替えるように制御することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 トラクタ
1a 走行車体
2 前輪
3 後輪
4 エンジンルーム
5 トランスミッションケース
6 ボンネット
7 キャビン
8 運転座席
10 ステアリングハンドル
12 ブレーキペダル
13 アクセルペダル
14 油圧シリンダケース
14a 油圧シリンダ
15 リフトアーム
16 ロワーリンク
17 リフトロッド
18 作業機、耕耘機
18a リアカバー
18b 回転中心
141 リアPTO軸
200 制御部
201 検出手段
202 カバー位置検出手段
203 エンジン回転数検出手段(エンジン負荷検出手段)
204 変化量判別手段
205 回転数判別手段
206 作業機昇降制御手段
211 昇降レバー
212 オートボタン
E エンジン
SN0 カバーセンサ
SN1 ポジションセンサ
SN2 回転数センサ
図1
図2
図3
図4
図5