(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008236
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240112BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20240112BHJP
F01P 5/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E02F9/00 M
F01P11/10 K
F01P5/02 G
F01P11/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109940
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 開成
(72)【発明者】
【氏名】組谷 賢次郎
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】熱交換装置の圧力損失の抑制、冷却風量の低減抑制及び送風動力の低減を可能とする。
【解決手段】上部旋回体12の後部に配置された機械室15内に、送風によって前記機械室内に空気を流通させる熱交換装置30を備え、熱交換装置は、熱交換器31と、熱交換器よりも空気流通方向の上流側又は下流側に配置された複数の送風装置32a~cと、を有し、少なくとも1つの送風装置は、送風方向が熱交換器の通風面31aに対して傾斜する角度で取り付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体の後部に配置された機械室内に、送風によって前記機械室内に空気を流通させる熱交換装置を備え、
前記熱交換装置は、熱交換器と、前記熱交換器よりも空気流通方向の上流側又は下流側に配置された複数の送風装置と、を有し、
少なくとも1つの前記送風装置は、送風方向が前記熱交換器の通風面に対して傾斜する角度で取り付けられることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記機械室は、後方をカウンタウエイト、前方を車体フレーム、下方を旋回フレーム及び上方をボンネットにより区画され、
前記機械室内に、前記熱交換装置よりも空気流通方向の上流側又は下流側に空気抵抗物を備え、
前記送風装置は、前記カウンタウエイト、前記車体フレーム、前記旋回フレーム又は前記ボンネットのうち少なくとも1つと前記空気抵抗物との間に送風方向を向けて取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記熱交換装置は、前記熱交換器及び前記送風装置を覆うシュラウドを有し、
前記シュラウドは、
前記送風装置の取り付け角度に合わせて前記通風面に対して傾斜し、前記送風装置を取り付ける開口部を有する主壁を有し、
前記通風面に対して角度の異なる複数の前記主壁が連接し、前記通風面の内周側へ向かうほど前記空気抵抗物に近接する山型形状を形成することを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記シュラウドは、前記通風面に対する角度の異なる複数の前記主壁と、前記通風面に対して平行な平行面とが連接し、該平行面が前記山型形状の山頂部を形成することを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記空気抵抗物は、エンジン、バッテリ又は電気モータのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記空気抵抗物は、エンジン又は電気モータであり、
前記平行面は、空気流通方向において前記空気抵抗物の回転軸と重ならない位置に前記送風装置を備えることを特徴とする請求項5に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械には、上部旋回体の旋回フレーム上に、エンジン、油圧ポンプ等が収容される機械室が設けられている。機械室には、各種の冷媒を冷却する熱交換装置が備えられる。熱交換装置は、冷却風を発生させるための送風装置を有する。従来の作業機械の熱交換装置では、送風装置として、エンジン軸動力を利用する直結型の軸流ファンを用いるのが主流である。近年、このような直結型の軸流ファンを複数の電動ファンに置き換え、機械室内の限られた空間で効率良く作動させるための様々な提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の送風手段と、熱交換器内の流体の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段に基づいて送風手段を制御する制御手段と、シュラウド内を仕切る仕切り板を有する熱交換装置が開示されている。この熱交換装置は、複数の熱交換器に対面する複数の送風手段により、燃料消費量及び騒音を低減することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のエンジン直結型の軸流ファンは、ベルト等を介してエンジンの軸動力を受け取れるよう、エンジンの前後の側面に取り付けられる。その場合、軸流ファンの上流側又は下流側の直近にエンジンが存在するため、エンジンが軸流ファンによる空気流路の抵抗物となって圧力損失が発生し、冷却風量の低下や、消費動力の悪化につながるという問題がある。この圧力損失の問題は、直結型の軸流ファンを複数の電動ファンへ単純に置き換えただけでは解決できない。
【0006】
特許文献1では、送風手段としてのファンの下流側直近にエンジンが配置されているため、エンジンが空気抵抗物となり、圧力損失の発生と風量の低下が懸念される。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換装置の圧力損失の抑制、冷却風量の低減抑制及び送風動力の低減を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る作業機械では、機械室内の空気抵抗物を避けるような空気流路を形成できるように送風装置を取り付けた。
【0009】
具体的に、第1の発明は、
上部旋回体の後部に配置された機械室内に、送風によって前記機械室内に空気を流通させる熱交換装置を備え、
前記熱交換装置は、熱交換器と、前記熱交換器よりも空気流通方向の上流側又は下流側に配置された複数の送風装置と、を有し、
少なくとも1つの前記送風装置は、送風方向が前記熱交換器の通風面に対して傾斜する角度で取り付けられることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、熱交換器の通風面に対して角度の異なる複数の空気流路を形成できるため、機械室内の冷却を効率的に行うことが可能となる。また、機械室内に配置されるエンジン等の空気抵抗物を避けるような空気流路を形成することも可能となり、熱交換器の通風面に対して送風方向が直交するように送風装置を取り付けた場合と比較して、圧力損失の抑制、冷却風量の低減抑制及び送風動力の低減が可能となる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記機械室は、後方をカウンタウエイト、前方を車体フレーム、下方を旋回フレーム及び上方をボンネットにより区画され、
前記機械室内に、前記熱交換装置よりも空気流通方向の上流側又は下流側に空気抵抗物を備え、
前記送風装置は、前記カウンタウエイト、前記車体フレーム、前記旋回フレーム又は前記ボンネットのうち少なくとも1つと前記空気抵抗物との間に送風方向を向けて取り付けられることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、送風装置を、機械室を区画するものと空気抵抗物との隙間へ向かって送風するように取り付けることで、より効果的に空気抵抗物を避けるような空気流路を形成することが可能となる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
前記熱交換装置は、前記熱交換器及び前記送風装置を覆うシュラウドを有し、
前記シュラウドは、
前記送風装置の取り付け角度に合わせて前記通風面に対して傾斜し、前記送風装置を取り付ける開口部を有する主壁を有し、
前記通風面に対して角度の異なる複数の前記主壁が連接し、前記通風面の内周側へ向かうほど前記空気抵抗物に近接する山型形状を形成することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、山型形状の裾部分にあたる熱交換器側の通風面周縁部と空気抵抗物との間に空間が形成されるため、熱交換器の内部流体の入口ポートや出口ポートに接続する配管の取り回しの自由度を高めることが可能となる。配管の伸長や形状の複雑化を防ぎ、配管の屈曲部を減らすことや、屈曲角度を緩やかにすることも可能となる。配管製作の容易化や使用材料の低減につながり、コストダウンできるとともに、管路抵抗を低減することも可能である。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、
前記シュラウドは、前記通風面に対する角度の異なる複数の前記主壁と、前記通風面に対して平行な平行面とが連接し、該平行面が前記山型形状の山頂部を形成することを特徴とする。
【0016】
空気抵抗物のサイズが大きくなると、山型形状のシュラウドの山頂部と空気抵抗物とが接近し、空気抵抗物とシュラウドとが干渉するおそれがあるとともに、機械室内のメンテナンススペースを確保し難くなるが、上記の構成によると、シュラウドの山頂部を平行面とすることにより、通風面に対する主壁の角度を広げ、シュラウドを空気抵抗物から離間させることができるため、空気抵抗物の種類や大きさに関わらず圧力損失を低減することが可能となる。
【0017】
第5の発明は、第2から第4の発明のいずれか1つにおいて、
前記空気抵抗物は、エンジン、バッテリ又は電気モータのうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によると、エンジン、バッテリ又は電気モータは、空気流路を妨げる大きな抵抗物となる得るため、これらを避けて送風するよう送風装置を配置することで、より効果的に圧力損失を抑制できる。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、
前記空気抵抗物は、エンジン又は電気モータであり、
前記平行面は、空気流通方向において前記空気抵抗物の回転軸と重ならない位置に前記送風装置を備えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によると、平行面にも送風装置を取り付けることで送風装置の取付け個数を増やし、冷却風量を増大させることが可能となる。また、平行面において送風装置は、空気抵抗物の回転軸と重ならないように取り付けられることで、空気流路が空気抵抗物を直撃しないように送風可能であり、圧力損失を低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、機械室内において空気抵抗物を避けるような空気流路を形成して、熱交換装置の圧力損失の抑制、冷却風量の低減抑制及び送風動力の低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】第1実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略背面図である。
【
図4】第1実施形態に係る熱交換装置を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る熱交換装置と空気抵抗物を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略平面図である。
【
図7】第2実施形態に係る熱交換装置を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る熱交換装置と空気抵抗物を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。なお、いくつかの図面には上下や前後左右の方向を矢印で示しており、特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれらの矢印で示す方向に従って説明する。以下の説明では、旋回フレームの前後方向を「前後方向」とし、旋回フレームの後側から前側を見たときの左右方向を「左右方向」とする。
【0024】
図1は、実施形態に係る作業機械の一例を示す側面図である。
図1に示すように、作業機械10は、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体12とで構成される。上部旋回体12は、旋回フレーム16を備える。
【0025】
旋回フレーム16は、製缶の構造物であり、下部走行体11の上部に旋回可能に設けられ、旋回フレーム16の上面には、アタッチメント13、キャブ14、機械室15、カウンタウエイト17等が設けられる。
【0026】
アタッチメント13は、上部旋回体12の前部に設置され、ブーム13a、アーム13b及びバケット13cを有する。ブーム13a等はそれぞれ油圧制御された油圧シリンダ13dの伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。ブーム13a等の操作は、キャブ14において行われる。キャブ14は、例えば矩形箱形の運転室であり、アタッチメント13に隣接して上部旋回体12の前部に設置される。
【0027】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略平面図であり、
図3は、第1実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略背面図である。
図2及び
図3は説明の便宜のため、熱交換装置及びエンジン以外の機器類や、熱交換装置からエンジン等へ延びる各種配管を省略して示す。
【0028】
図1から
図3に示すように、上部旋回体12の後端部には、カウンタウエイト17が配置される。カウンタウエイト17は左右方向に亘って設けられる。カウンタウエイト17の前方に間隔をあけて、左右方向に延びる車体フレーム18が立設する。車体フレーム18は旋回フレーム16の上部に取り付けられる。
【0029】
機械室15は、上部旋回体12の後部に配置され、後方をカウンタウエイト17、前方を車体フレーム18によって区画される。機械室15は、左右方向に亘って設けられ、左右の端部がそれぞれサイドカバー19,19によって覆われている。サイドカバー19は、機械室15内を作業機械10の側方からメンテナンスできるよう、開閉可能に取り付けられる。機械室15は、下方を旋回フレーム16及び上方をボンネット20により区画される。ボンネット20は、機械室15の上面を覆い、機械室15内を作業機械10の上方からメンテナンスできるよう、開閉可能に取り付けられる。
【0030】
機械室15は、内部に送風によって機械室15内に空気を流通させる熱交換装置30を備える。熱交換装置30は、機械室15の左右一方側の端部寄りの位置に配置される。本実施形態では、熱交換装置30は、機械室15の左側端部寄りに配置されるが、右端端部寄りに配置されても良い。
【0031】
機械室15内には、熱交換装置30よりも空気流通方向の上流側又は下流側に空気抵抗物40を備える。空気抵抗物40とは、熱交換装置30から発生する冷却風の抵抗となる機械室15内の機器類であり、例えば、エンジン、電気モータ等の原動機や、バッテリ、油圧ポンプ、排気ガス後処理装置等を含む機械室内の主要機器である。空気抵抗物40は、好ましくは、エンジン、バッテリ又は電気モータのうち少なくとも1つである。エンジン、バッテリ又は電気モータは、空気流路を妨げる大きな抵抗物となる得るため、これらを避けて送風するよう送風装置を配置することで、より効果的に圧力損失を抑制できるためである。
【0032】
本実施形態では、機械室15の左側が空気流通方向の上流側であり、右側が下流側である。本実施形態では、熱交換装置30よりも下流側に空気抵抗物40を備える。空気抵抗物40はエンジンであり、熱交換装置30の右側に配置される。本実施形態では、エンジン40は、回転軸が左右方向に延びるように横置きで配置される。
【0033】
図4は第1実施形態に係る熱交換装置の斜視図である。
図4にも示すように、熱交換装置30は、熱交換器31と、複数の送風装置32a~cを有する。熱交換装置30は、熱交換器31及び送風装置32a~cを覆うシュラウド33を有し、シュラウド33によって熱交換器31と送風装置32a~cとが一体化されている。
【0034】
熱交換器31は、送風装置32a~cが発生させた冷却風を利用して、冷却対象を冷却する。熱交換器31は、作動油を冷却するオイルクーラでもよい。熱交換器31は、エンジンの冷却水等を冷却するラジエータでもよい。熱交換器31は、エンジンに吸気される圧縮空気を冷却するインタークーラでもよい。熱交換器31は、エンジンの燃料を冷却する燃料クーラーでもよい。熱交換器31は、1つ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
【0035】
本実施形態において、送風装置32a~cによる冷却風は、機械室15内の左右方向に空気流路を形成する。熱交換装置30は、左側から吸気して右側へ排気する。熱交換器31は、空気流路に対して交差する方向に延びる通風面31aを有する。本実施形態では、左右方向に延びる機械室15に対して、略直交するように、前後方向に通風面31aが延びる。通風面31aは送風装置32a~cの冷却風を通す面であり、送風装置32a~cによって吸気された風が通風面31aを通過する。
【0036】
送風装置32a~cは、熱交換器31よりも空気流通方向の上流側又は下流側に配置される。本実施形態では、送風装置32a~cは、熱交換器31よりも空気流通方向の下流側に配置される。熱交換器31は、機械室15の左側端部寄りに配置され、送風装置32a~cは熱交換器31の右側に配置される。
【0037】
送風装置32a~cは、冷却風を発生させる。送風装置32a~cは、例えば、回転軸を有するファンである。送風装置32a~cは、エンジンの駆動軸と連結するものではない。送風装置32a~cは、例えば、電動ファンや油圧駆動ファンである。電動ファンとしては、軸流ファンに限定されるものではなく、貫流ファン(横流ファン)、遠心ファン、斜流ファン等であっても良い。本実施形態では、送風装置32a~cは回転軸Xを有する電動ファンである。
【0038】
少なくとも1つの送風装置32a~cは、送風方向が熱交換器31の通風面31aに対して傾斜する角度で取り付けられる。本実施形態では、送風装置32a~cの回転軸Xが通風面31aと直交しない様々な角度で交差するように送風装置32a~cが取り付けられる。より具体的には、回転軸Xが、通風面31aから離れて送風装置32a~cへ近づくにつれて、通風面31aの内周側から外周側へ傾くように延びる。この送風装置32a~cの取り付け角度は、空気抵抗物40を避けるような空気流路を形成する角度である。
【0039】
熱交換器31及び送風装置32a~cを覆うシュラウド33は、熱交換器31の外周を覆う側壁35と、側壁35から送風装置32a~c側へ延びて送風装置32a~cを覆う主壁36a~cとを有する。
【0040】
側壁35は、前後方向に延びる上面及び底面と上下方向に延びる前面及び後面とで熱交換器31の外周を覆う。主壁36a~cは、送風装置32a~cの取り付け角度に合わせて通風面31aに対して傾斜する。主壁36a~cは、送風装置32a~cを取り付ける開口部34を有する。開口部34は、円形状に開口して送風装置32a~cを露出させる。送風装置32a~cが発生させた冷却風は開口部34を介して機械室15内へ流れる。
【0041】
送風装置32a~cは、カウンタウエイト17、車体フレーム18、旋回フレーム16又はボンネット20のうち少なくとも1つと空気抵抗物40との間に送風方向を向けて取り付けられる。送風装置32a~cを備える主壁36は、通風面31aに対して角度の異なる複数の主壁36が連接して、通風面31aの内周側へ向かうほど空気抵抗物40に近接する山型形状を形成する。
【0042】
具体的に、第1実施形態では、熱交換装置30は5つの送風装置32a~cを備え、送風装置32a~cの送風方向と主壁36a~cは以下のような構成である。
【0043】
第1送風装置32aは、熱交換装置30の前後方向中央部において上部に配置される。第1送風装置32aは、ボンネット20と空気抵抗物40との間である斜め上方へ送風方向を向けている。第1送風装置32aの回転軸Xは、ボンネット20と空気抵抗物40との間へ向けて延び、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて右斜め上方へ延びる。第1送風装置32aが発生させた空気流路は、
図3中の矢印で示すように、ボンネット20と空気抵抗物40との間へ向かって流れた後、ボンネット20に沿って空気抵抗物40の上方を流れる。
【0044】
第1送風装置32aを備える第1主壁36aは、第1送風装置32aの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第1主壁36aは、通風面31aから空気抵抗物40へ向かって、通風面31aの外周側から内周側へ向かうように傾斜する。より具体的には、第1主壁36aは、側壁35の上面から延び、空気抵抗物40へ近づくにつれて先細りながら下方に傾斜する。第1主壁36aは、側壁35側を底辺とし、空気抵抗物40側を頂点とする逆三角形状である。
【0045】
第2及び第3送風装置32b,32bは、熱交換装置30の前後方向後側において、上下に並び、第1送風装置32aの下部に配置される。第2及び第3送風装置32b,32bは、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間である斜め後方へ送風方向を向けている。第2及び第3送風装置32b,32bの回転軸Xは、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間へ向けて延び、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて右斜め後方へ延びる。第2及び第3送風装置32b,32bが発生させた空気流路は、
図2中の矢印で示すように、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間へ向かって流れた後、カウンタウエイト17に沿って空気抵抗物40の後方を流れる。
【0046】
第2及び第3送風装置32b,32bを備える第2主壁36bは、第2及び第3送風装置32b,32bの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第2主壁36bは、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて、通風面31aの外周側から内周側へ向かうように傾斜する。より具体的には、第2主壁36bは、側壁35の後面から延び、空気抵抗物40へ近づくにつれて先細りながら前方に傾斜する。第2主壁36bは、側壁35側の長辺を下底とし、空気抵抗物40側の短辺を上底とする台形状である。
【0047】
第4及び第5送風装置32c,32cは、熱交換装置30の前後方向前側において、上下に並び、第1送風装置32aの下部に配置される。第4及び第5送風装置32c,32cは、車体フレーム18と空気抵抗物40との間である斜め前方へ送風方向を向けている。第4及び第5送風装置32c,32cの回転軸Xは、車体フレーム18と空気抵抗物40との間へ向けて延び、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて右斜め前方へ延びる。第4及び第5送風装置32c,32cが発生させた空気流路は、
図2中の矢印で示すように、車体フレーム18と空気抵抗物40との間へ向かって流れた後、車体フレーム18に沿って空気抵抗物40の前方を流れる。
【0048】
第4及び第5送風装置32c,32cを備える第3主壁36cは、第4及び第5送風装置32c,32cの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第3主壁36cは、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて、通風面31aの外周側から内周側へ向かうように傾斜する。より具体的には、第3主壁36cは、側壁35の前面から延び、空気抵抗物40へ向かうにつれて先細りながら後方に傾斜する。第3主壁36cは、側壁35側の長辺を下底とし、空気抵抗物40側の短辺を上底とする台形状である。
【0049】
通風面31aに対して角度の異なる3つの主壁36a,36b,36cは連接し、通風面31aの内周側へ向かうほど空気抵抗物40に近接する山型形状を形成する。3つの主壁36a,36b,36cによる山型形状は、第1主壁36aの空気抵抗物40に近接する頂点において、第2主壁36b及び第3主壁36cが突き合わされて形成される尾根部分を空気抵抗物40へ向けている。
【0050】
図5は、第1実施形態に係る熱交換装置と空気抵抗物を示す斜視図である。
図5に示すように、角度の異なる複数の主壁36a~cを空気抵抗物40側に突出する山型形状としたことで、山型形状の裾部分にあたる熱交換器31側の通風面31a周縁部と空気抵抗物40との間に空間が生じるため、熱交換器31側に接続する配管50a~dの取り回しの自由度を高めることが可能となる。配管50a~dの伸長や形状の複雑化を防ぎ、コストダウンできるとともに、管路抵抗を低減することができる。
【0051】
<作用効果>
以上のように構成した作業機械10は、機械室15内に配置されるエンジン等の空気抵抗物40を避けるような空気流路を含め、複数の空気流路を形成できるため、機械室15内の冷却を効率的に行うことが可能となる。また、熱交換器31の通風面31aに対して送風方向が直交するように送風装置を取り付けた場合と比較して、圧力損失の抑制、冷却風量の低減抑制及び送風動力の低減が可能となる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る熱交換装置60について説明する。第2実施形態の熱交換装置60は、送風装置の送風方向及び主壁の形態が上記第1実施形態と異なる。なお、
図6から
図8は第1実施形態と同じ部材について同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図6は、第2実施形態に係る機械室内の空気流路を説明するための概略平面図であり、
図7は、第2実施形態に係る熱交換装置を示す斜視図である。なお、
図6は説明の便宜のため、熱交換装置及びエンジン以外の機器類や、熱交換装置からエンジン等へ延びる各種配管を省略して示す。
【0054】
図6及び
図7に示すように、熱交換装置60は、熱交換器31と、5つの送風装置62a~cを有する。熱交換装置60は、熱交換器31及び送風装置62a~cを覆うシュラウドを有し、シュラウドによって熱交換器31と送風装置62a~cとが一体化されている。
【0055】
少なくとも1つの送風装置62a~cは、送風方向が熱交換器31の通風面31aに対して傾斜する角度で取り付けられる。上記実施形態と同様に、送風装置62a~cは回転軸を有する電動ファンである。送風装置62a~cの取り付け角度は、可能な限り空気抵抗物40を避けるような空気流路を形成する角度である。
【0056】
熱交換器31及び送風装置62a~cを覆うシュラウドは、熱交換器31の外周を覆う第1側壁65と、第1側壁65から送風装置62a~c側へ延びて送風装置62a~cを覆う第2側壁67及び主壁66a~cとを有する。第1側壁65は、前後方向に延びる上面及び底面と上下方向に延びる前面及び後面とで熱交換器31の外周を覆う。第2側壁67は送風装置62a~cの上部を覆う。主壁66a~cは、送風装置62a~cの取り付け角度に合わせた角度に形成されて、送風装置62a~cの側部を覆う。
【0057】
第2実施形態では、熱交換装置60は5つの送風装置62a~cを備える。本実形態において、空気抵抗物40は回転軸を有するエンジンまたは電気モータである。空気抵抗物40の回転軸は左右方向に延びる。送風装置62a~cの送風方向と主壁66a~cは以下のような構成である。
【0058】
第1送風装置62aは、熱交換装置60の前後方向中央部において上部に配置される。第1送風装置62aは、空気流通方向において空気抵抗物40の回転軸と重ならない位置に配置されている。具体的には、第1送風装置62aの回転軸Xは、空気抵抗物40の回転軸よりも上方において、左右方向に延び、通風面31aと略直交する。
【0059】
第1送風装置62aは、第1実施形態の送風装置32a~cや後述の第2及び第3送風装置62b,62bのように通風面31aに対して傾斜して取り付けられていないが、冷却風が可能な限り空気抵抗物40を避けられるように、少なくとも回転軸Xの位置を空気抵抗物40の回転軸からずれた位置にすることで、圧力損失抑制の効果が得られる。
【0060】
送風装置62a~cの上部を覆う第2側壁67は、第1側壁65の上面から、空気抵抗物40側へ近づくにつれて先細りながら略水平に延びる。第2側壁67は、第1側壁65側の長辺を下底、空気抵抗物40側の短辺を上底とする台形状である。
【0061】
第1送風装置62aを備える第1主壁66aは、第1送風装置62aの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第1主壁66aは、第2側壁67の空気抵抗物40側の短辺から下方に延びる。第1主壁66aは、通風面31aに対して略平行な長方形状である。第1主壁66aの上方に、第1送風装置62aを取り付ける開口部が形成されている。
【0062】
第2及び第3送風装置62b,62bは、熱交換装置60の前後方向後側において、上下に並ぶ。第2及び第3送風装置62b,62bは、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間である斜め後方へ送風方向を向けている。第2及び第3送風装置62b,62bの回転軸Xは、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間へ向けて延び、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて右斜め後方へ延びる。第2及び第3送風装置62b,62bが発生させた空気流路は、
図6中の矢印で示すように、カウンタウエイト17と空気抵抗物40との間へ向かって流れた後、カウンタウエイト17に沿って空気抵抗物40の後方を流れる。
【0063】
第2及び第3送風装置62b,62bを備える第2主壁66bは、第2及び第3送風装置62b,62bの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第2主壁66bは、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて、通風面31aの外周側から内周側へ向かうように傾斜する。より具体的には、第2主壁66bは、第1側壁65の後面から延び、空気抵抗物40へ近づくにつれて前方に傾斜する。第2主壁66bは、長方形状であり、第2側壁67及び第1主壁66aに連接する。
【0064】
第4及び第5送風装置62c,62cは、熱交換装置60の前後方向前側において、上下に並ぶ。第4及び第5送風装置62c,62cは、車体フレーム18と空気抵抗物40との間である斜め前方へ送風方向を向けている。第4及び第5送風装置62c,62cの回転軸Xは、車体フレーム18と空気抵抗物40との間へ向けて延び、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて右斜め前方へ延びる。第4及び第5送風装置62c,62cが発生させた空気流路は、
図6中の矢印で示すように、車体フレーム18と空気抵抗物40との間へ向かって流れた後、車体フレーム18に沿って空気抵抗物40の前方を流れる。
【0065】
第4及び第5送風装置62c,62cを備える第3主壁66cは、第4及び第5送風装置62c,62cの回転軸Xに対して略直交する角度に形成されている。第3主壁66cは、通風面31aから空気抵抗物40へ近づくにつれて、通風面31aの外周側から内周側へ向かうように傾斜する。より具体的には、第3主壁66cは、第1側壁65の前面から延び、空気抵抗物40へ向かうにつれて後方に傾斜する。第3主壁66cは、長方形状であり、第2側壁67及び第1主壁66aに連接する。
【0066】
本実施形態において、シュラウドは、通風面31aに対して角度の異なる第2主壁66b及び第3主壁66cと、通風面31aに対して平行な平行面である第1主壁66aとが連接し、空気抵抗物40へ向かって突出する山型形状を形成する。第1主壁66aは、この山型形状の山頂部を形成する。空気抵抗物のサイズが大きくなると、主壁の山頂部と空気抵抗物とが接近し、空気抵抗物とシュラウドとが干渉するおそれがあるとともに、機械室15内のメンテナンススペースを確保し難くなるが、シュラウドの山頂部を第1主壁66aのような平行面とすることにより、通風面31aに対する主壁66b,66cの角度を広げ、シュラウドを空気抵抗物40から離間させることができ、圧力損失を抑制することが可能となる。
【0067】
図8は、第2実施形態に係る熱交換装置と空気抵抗物を示す斜視図である。
図8に示すように、角度の異なる複数の主壁66a~cを空気抵抗物40側に突出する山型形状としたことで、山型形状の裾部分にあたる熱交換器31側の通風面31a周縁部と空気抵抗物40との間に空間が生じるため、熱交換器31側に接続する配管50a~dの取り回しの自由度を高めることが可能となる。配管50a~dの伸長や形状の複雑化を防ぎ、コストダウンできるとともに、管路抵抗を低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、5つの送風装置を配置したが、送風装置の数や送風方向は適宜選択することができる。また、送風装置の形態に合わせて、主壁の形態を適宜選択することができる。また、上記実施形態1及び2では、機械室内の空気は上流から下流に向かって、熱交換器、送風装置、空気抵抗物の順に流通するが、上流から空気抵抗物、送風装置、熱交換器の順に流通するように構成しても良い。この場合、ファンの送風方向は上記実施形態1及び2とは逆向きとなる。
【符号の説明】
【0069】
10 作業機械
12 上部旋回体
15 機械室
16 旋回フレーム
17 カウンタウエイト
18 車体フレーム
19 サイドカバー
20 ボンネット
30 熱交換装置(第1実施形態)
31 熱交換器
32a~c 送風装置(第1実施形態)
33 シュラウド
34 開口部
36a~c 主壁(第1実施形態)
40 空気抵抗物(エンジン)
50a~d 配管
60 熱交換装置(第2実施形態)
62a~c 送風装置(第2実施形態)
65 第1側壁
66a~c 主壁(第2実施形態)
67 第2側壁
X 回転軸