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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082364
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
E05B19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196160
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 亮
(57)【要約】
【課題】部品点数を増加させることなく、スライド部を操作する操作者に対し、操作を行った量を直感的に理解することが出来る操作感触が生成されるようにすること。
【解決手段】ロック装置は、収容部を有する第1の筐体と、第2の筐体と、収容部に収容可能な被収容部材と、収容部に収容された被収容部材を係脱可能に係止するロック機構とを備え、第1の筐体は、操作者からの操作力を受付けてスライドし、ロック位置にある時、収容部に収容された被収容部材を係止し、ロック位置からスライドした時、被収容部材の係止を解除するロック部と、ロック部と一体に設けられ、ロック部がロック位置からスライドした時、ロック部に復帰力を与える第1のバネ部と、を有し、第2の筐体は、ロック部がロック位置から第1の所定量より大きくスライドした時、ロック部に復帰力を与える第2のバネ部を有し、ロック機構は、ロック部と第1のバネ部と第2のバネ部とを有する。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有する第1の筐体と、
前記第1の筐体と互いに固定される第2の筐体と、
前記収容部に収容可能な被収容部材と、
前記収容部に収容された前記被収容部材を係脱可能に係止するロック機構と
を備え、
前記第1の筐体は、
操作者からの操作力を受付けてスライドし、ロック位置にある時、前記収容部に収容された前記被収容部材を係止し、前記ロック位置からスライドした時、前記被収容部材の係止を解除するロック部と、
前記ロック部と一体に設けられ、前記ロック部が前記ロック位置からスライドした時、前記ロック部に前記ロック位置への復帰力を与える第1のバネ部と、を有し、
前記第2の筐体は、
前記ロック部が前記ロック位置から第1の所定量より大きくスライドした時、前記ロック部に前記ロック位置への復帰力を与える第2のバネ部を有し、
前記ロック機構は、前記ロック部と前記第1のバネ部と前記第2のバネ部とを有する
ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記第2の筐体と一体に設けられ、前記ロック部が前記ロック位置から前記第1の所定量よりも大きい第2の所定量より大きくスライドした時、前記ロック部に前記ロック位置への復帰力を与える第3のバネ部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ロック部は、
前記ロック位置から前記第2の所定量よりも大きい第3の所定量以上スライドした時、前記被収容部材の係止を解除する
ことを特徴とする請求項2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記第1の筐体と前記第2の筐体とは一体成形される
ことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エマージェンシーキーと、エマージェンシーキーを収容するケースと、ケース内に収容されたエマージェンシーキーを係止するスライド部と、スライド部を復帰させるバネとを備える電子キーが開示されている。また、下記特許文献1には、ユーザが電子キーのスライド部を操作することにより、スライド部とエマージェンシーキーとの係止状態が解除され、エマージェンシーキーがケースから挿脱可能になる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2012/132461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電子キーは、スライド部を復帰させるバネとして単一の金属製のコイルバネを用いているため、この分だけ部品点数が増加している。また、更に、特許文献1の電子キーのコイルバネは、バネ定数が一定であることによって、スライド部材の操作荷重は操作量に対して一次関数的に変化する。そのため、特許文献1の電子キーは、部品点数を増やす事無く操作荷重特性に特徴的な変化点を設けることは困難である。そのため、特許文献1の電子キーのスライド部を操作する操作者は、操作中に、操作感触の変化を情報源として操作を行った量を直感的に理解することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るロック装置は、収容部を有する第1の筐体と、第1の筐体と互いに固定される第2の筐体と、収容部に収容可能な被収容部材と、収容部に収容された被収容部材を係脱可能に係止するロック機構とを備え、第1の筐体は、操作者からの操作力を受付けてスライドし、ロック位置にある時、収容部に収容された被収容部材を係止し、ロック位置からスライドした時、被収容部材の係止を解除するロック部と、ロック部と一体に設けられ、ロック部がロック位置からスライドした時、ロック部にロック位置への復帰力を与える第1のバネ部と、を有し、第2の筐体は、ロック部がロック位置から第1の所定量より大きくスライドした時、ロック部にロック位置への復帰力を与える第2のバネ部を有し、ロック機構は、ロック部と第1のバネ部と第2のバネ部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態に係るロック装置によれば、部品点数を増加させることなく、スライド部を操作する操作者に対し、操作を行った量を直感的に理解することが出来る操作感触が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る電子キーの上面側の外観を示す斜視図
図2】一実施形態に係る電子キーの下面側の外観を示す斜視図
図3A】一実施形態に係る電子キーの構成を示す分解斜視図
図3B】一実施形態に係る電子キーのロック部の配置を示す一部分解斜視図
図4】一実施形態に係る電子キーの右側面図
図5A】一実施形態に係る電子キーを図4に示す切り取り線A-Aで切断した断面図
図5B】一実施形態に係る電子キーを図4に示す切り取り線B-Bで切断した断面図
図6】一実施形態に係る電子キーが備える中間筐体の下面側の外観を示す斜視図
図7A】一実施形態に係る電子キーが備える下側筐体の上面側の外観を示す斜視図
図7B】一実施形態に係る電子キーの下側筐体の上方図
図7C図7Bに示す下側筐体の一部を拡大した拡大図
図8A】一実施形態に係る電子キーのロック部がロック位置に復帰している時の様子を示す断面図
図8B】一実施形態に係る電子キーのロック部がロック位置から第1の所定量離れた位置までスライドした時の様子を示す断面図
図8C】一実施形態に係る電子キーのロック部がロック位置から第2の所定量離れた位置までスライドした時の様子を示す断面図
図9】一実施形態に係る電子キーにおけるロック部の操作荷重特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0009】
(電子キー10の構成)
図1は、一実施形態に係る電子キー10の上面側の外観を示す斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子キー10の下面側の外観を示す斜視図である。図3Aは、一実施形態に係る電子キー10の構成を示す分解斜視図である。図3Bは、一実施形態に係る電子キー10のロック部151の配置を示す一部分解斜視図である。
【0010】
なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸方向(筐体100の厚さ方向)を上下方向とし、図中Y軸方向(筐体100の短手方向)を左右方向とし、図中X軸方向(筐体100の長手方向)を前後方向とする。但し、Z軸正方向を上方とし、X軸正方向を前方とし、Y軸正方向を右方とする。上記方向の記載は、電子キー10内部の相対的な位置関係を規定しているものであって、電子キー10の設置方向や使用時の操作方向等を規定するものでは無い。いずれの方向に設置または操作するものであっても本発明の権利範囲に包含されるものである。
【0011】
図1図3Bに示す電子キー10は、「ロック装置」の一例である。電子キー10は、ユーザによって携帯される携帯型キー装置であって、車両に搭載される車載機(図示省略)とともに、電子キーシステムを構成する装置である。電子キー10は、ユーザ操作に応じて当該車載機と無線通信し、当該車載機を遠隔操作することによって車両のドアを施錠および解錠する機能性を有する。
【0012】
図1図3に示すように、電子キー10は、筐体100、回路基板130、弾性シート140、およびメカニカルキー120を備える。
【0013】
筐体100は、ABS樹脂,PC樹脂等の樹脂素材から形成される、概ね直方体形状を有する容器状の部材である。筐体100は、上側筐体101と、中間筐体102と、下側筐体103とに、3分割可能に構成されている。上側筐体101と中間筐体102と下側筐体103とはスナップイン形状によって係合可能に設けられる。スナップイン形状によって2つの部材を係合することは「互いに固定」の一例である。中間筐体102は「第1の筐体」の一例である。下側筐体103は「第2の筐体」の一例である。
【0014】
本実施形態では、中間筐体102と下側筐体103とが分割可能な構成について説明するが、中間筐体102、および下側筐体103は樹脂成形工程において一体的に成形されても良い。中間筐体102と下側筐体103とが分割された構成とする場合、各部材の成形が容易になる。中間筐体102と下側筐体103とが一体形成された構成とする場合、部品点数が少ないことによるメリットが発生する。
【0015】
上側筐体101には、上下方向に貫通形成された開口部101cが形成されている。開口部101cには、開口部101cを閉塞するようにノブ101a,101bが設けられている。ノブ101a,101bは操作者からの押圧操作を受け付けて上下方向にスライドする部材である。例えば、ノブ101aは、車両ドアのロック機構を施錠する際にユーザによって押下される。また、例えば、ノブ101bは、車両ドアのロック機構を解錠する際にユーザによって押下される。
【0016】
中間筐体102の下面102E側には、メカニカルキー120を収容可能な収容部104(図3B図5、および図6参照)が設けられている。
【0017】
また、下側筐体103の後側(X軸負側)の側面には、メカニカルキー120を挿通可能な、矩形状の開口部103Bが形成されている。
【0018】
また、下側筐体103には、下側筐体103を上下方向に貫通する矩形状の開口部103Aが形成されており、図2に示すように、当該開口部103Aには、中間筐体102の有するロック部151の操作部151Aが配置される。ロック部151の操作部151Aは、操作者からの操作力を受け付ける形状である。下方から見た時、操作部151Aは、開口部103AのY軸方向における真ん中に配置される。操作者は、下側筐体103の下方から開口部103Aに指先を差し入れて操作部151AのY正方向側の面に押圧力を加えて、操作部151AをY軸負方向へスライドさせる操作力を加えることにより、ロック部151をY軸負方向にスライドさせることが出来る。
【0019】
回路基板130は、複数の電子部品が実装される平板状の部材である。回路基板130は、上側筐体101と中間筐体102との間に形成される空間内に配置される。例えば、回路基板130には、ガラスエポキシ等の絶縁性素材からなるPWB(Printed Wiring Board)が用いられる。
【0020】
回路基板130の上面には、スイッチ131a,131bが実装されている。本実施形態において、スイッチ131a,131bにはプッシュスイッチが用いられる。例えば、回路基板130は、ノブ101aを介してスイッチ131aが押下された場合、車両ドアのロック機構を施錠するための操作信号を、通信回路(図示省略)を介して車載器へ無線送信する。また、例えば、回路基板130は、ノブ101bを介してスイッチ131bが押下された場合、車両ドアのロック機構を解錠するための操作信号を、通信回路を介して車載器へ無線送信する。また、回路基板130の下面には、回路基板130へ電力を供給するボタン電池132が設けられている。
【0021】
弾性シート140は、回路基板130の上面の全域を覆い、且つ、弾性を有する、シート状の部材である。弾性シート140は、回路基板130が配置されている空間内に水が浸入した場合であっても、回路基板130の上面が浸水することを防止することができる。例えば、弾性シート140は、ゴム、シリコン等の弾性素材がプレス成型されることによって形成される。
【0022】
メカニカルキー120は、「被収容部材」の一例である。メカニカルキー120は、車両に設けられたキーシリンダーに挿入可能な形状を有し、当該キーシリンダーを機械的に回転させるための金属製且つ平板状の部材である。メカニカルキー120は、電池切れ等の理由により電子キー10の有する電子機能が使用不能となった場合の備えとして用意される非常時用の鍵である。操作者が電子キー10の電子機能を使用する時、メカニカルキー120は入力操作の妨げとなることが無いように筐体100の内部に収容される。メカニカルキー120は、先端部側から、筐体100の後側(X軸負側)の側面に形成された開口部103Bに挿通されることにより、中間筐体102の下面102Eに設けられた収容部104に収容可能である。
【0023】
メカニカルキー120は、キーブレード121と、把持部122とを有して構成されている。キーブレード121は、車両に設けられたキーシリンダー内に挿し込まれる、前後方向(X軸方向)に細長い部分である。把持部122は、キーブレード121の後端部を支持し、ユーザによって把持される部分である。なお、把持部122は、キーブレード121よりも左右方向(Y軸方向)の幅が大きい。
【0024】
なお、メカニカルキー120は、ロック機構150が備えるロック部151によって、収容部104から抜け落ちないようにロックされる。メカニカルキー120は、ロック部151によるロックが解除されることにより、筐体100からX軸負方向へ引き出すことが可能になる。
【0025】
(収容部104の内部構成)
図4は、一実施形態に係る電子キー10の右側面図である。図5Aは、一実施形態に係る電子キー10を図4に示す切り取り線A-Aで切断した断面図である。図5Bは、一実施形態に係る電子キー10を図4に示す切り取り線B-Bで切断した断面図である。図6は、一実施形態に係る電子キー10が備える中間筐体102の下面102E側の外観を示す斜視図である。図7Aは、一実施形態に係る電子キー10が備える下側筐体103の上面103C側の外観を示す斜視図である。図7Bは、一実施形態に係る電子キー10の下側筐体103の上方図である。図7Cは、図7Bに示す下側筐体103のM部を拡大した拡大図である。図8Aは、一実施形態に係る電子キー10のロック部151がロック位置に在る時の様子を示す断面図である。図8Bは、一実施形態に係る電子キー10のロック部151がロック位置から第1の所定量S1離れた位置P1までスライドした時の様子を示す断面図である。図8Cは、一実施形態に係る電子キー10のロック部151がロック位置から第2の所定量S2離れた位置P2までスライドした時の様子を示す断面図である。図9は、一実施形態に係る電子キー10におけるロック部151の操作荷重特性を示す図である。図9に示すグラフにおいて、縦軸は、ロック部151のスライド操作に係る操作荷重を示し、横軸は、ロック部151のスライド操作のストローク量を示す。
【0026】
図5Aに示すように、中間筐体102の下面102Eには、収容部104が設けられている。収容部104には、キーブレード121が前側(X軸正側)となり、把持部122が後側(X軸負側)となるように、下側筐体103の開口部103Bを通じて、メカニカルキー120が収容可能である。
【0027】
また、図6に示すように、中間筐体102の下面102Eには、第1の支持壁102A、102Bが、下面102Eから下方(Z軸負方向)に突出して設けられている。図5に示すように、第1の支持壁102Aは、下側筐体103の収容部104に収容されたメカニカルキー120のキーブレード121のY正方向側の側面部に沿って、前後方向(X軸方向)に延在する。第1の支持壁102Bは、下側筐体103の収容部104に収容されたメカニカルキー120のキーブレード121のY負方向側の側面部に沿って、前後方向(X軸方向)に延在する。
【0028】
図5Bに示すように、第1の支持壁102A、102B は、メカニカルキー120のキーブレード121の左右方向における位置を決める。また、収容部104に収容されたメカニカルキー120のキーブレード121の上方向における位置は、中間筐体102の下面102Eによって決められる。また、収容部104に収容されたメカニカルキー120のキーブレード121の下方向における位置は、下側筐体103の上面103Cによって決められる。メカニカルキー120は、上記の構成により収容部104内の所定の位置で安定的に支持される。
【0029】
なお、中間筐体102は、第1の支持壁102Bの後部(Y軸負側の部分)から、Y負方向に向けて延在する第2の支持壁102Cを有する。また、中間筐体102は、第2の支持壁102Cと対向配置される第2の支持壁102Dを有する。第2の支持壁102C、102Dは、中間筐体102の下面102Eから下方(Z軸負方向)に突出して設けられている。また、中間筐体102は、第2の支持壁102C、102Dの間に配置されるロック部151を有する。第2の支持壁102Cとロック部151は、第1のバネ部152により連結される。第2の支持壁102Dとロック部151は、第1のバネ部152により連結される。ロック部151は、第1のバネ部152によりY軸方向にスライド可能に支持される。
【0030】
また、図7に示すように、下側筐体103の上面103Cには、一対のガイド部155が上方(Z軸正方向)に突出して設けられている。図5に示すように、一対のガイド部155の一方は、第2の支持壁102Cと、ロック部151との間に配置される。ガイド部155のロック部151側には、YZ平面と平行なガイド面155Aが形成される。ガイド面155Aは、ロック部151のY方向へのスライドをガイドする。また、ガイド部155は、ガイド面155AのY正方向側の端部に設けられ、XZ平面と平行なストッパ面155Bを有する。ストッパ面155Bは、ロック部151がロック位置よりもY軸正方向へ移動してしまわないように、ロック部151のY軸正方向への移動を規制する。
【0031】
また、電子キー10における収容部104の近傍には、メカニカルキー120をロックするロック機構150が設けられている。ロック機構150は、ロック部151、第1のバネ部152、第2のバネ部153、および第3のバネ部154を有する。
【0032】
ロック部151は、左右方向(Y軸方向)にスライド可能に設けられるプレート状の部材である。ロック部151は、先端部151Bがメカニカルキー120のキーブレード121のY軸負側の側面に形成されている凹部123に嵌合することにより、収容部104に収容されたメカニカルキー120を係止することができる。
【0033】
ロック部151は、下面から下方に突出した操作部151Aを有する。操作部151Aは、下側筐体103の開口部103A内に配置される(図2参照)。これにより、ロック部151は、操作部151Aにより、筐体100の外側から操作者によるスライド操作が可能である。
【0034】
ロック部151は、図5Aおよび図8Aに示すロック位置にある時(すなわち、操作者によるスライド操作がなされていない時)、先端部151Bによって、収容部104に収容されたメカニカルキー120を係止する。また、ロック部151は、操作者によるスライド操作がなされて、ロック位置からY軸負方向にスライドした時(図8B図8C参照)、スライド操作を継続することで最終的に先端部151Bによるメカニカルキー120の係止状態を解除する。
【0035】
また、ロック部151における先端部151BのX軸負側の角部には、傾斜部151Cが形成されている。これにより、ロック部151は、X軸負側からメカニカルキー120が挿入する際には、メカニカルキー120によって傾斜部151Cが押圧されることによって、操作者によるスライド操作が無くてもY軸負方向にスライドする。そして、スライドしたロック部151は、メカニカルキー120の挿入の妨げとならないような位置まで自動的にY軸負方向に退避する。その後、ロック部151は、下記で詳述する復帰力により、図8Aで示すロック位置に復帰する。
【0036】
また、ロック部151のY軸負側の端部には、XZ平面と平行な押圧部151Dが設けられている。押圧部151Dは、ロック部151がロック位置からY軸負方向にスライドした時に第2のバネ部153または第3のバネ部154と当接して、復帰力を受ける形状である。
【0037】
第1のバネ部152は、弾性を有し、中間筐体102およびロック部151と一体に設けられ、ロック部151がロック位置からスライドした時、ロック部151に復帰力を与える。
【0038】
一対の第1のバネ部152は、ロック部151がY軸負方向にスライドした時、弾性変形し、ロック部151に対してY軸正方向への復帰力を与える。
【0039】
なお、一対の第1のバネ部152は、中間筐体102が形成される際に、中間筐体102が有する一対の第2の支持壁102C、および、ロック部151と一体に形成される。これにより、一対の第1のバネ部152は、筐体100および中間筐体102と一体に設けられたものとなる。
【0040】
第2のバネ部153は、下側筐体103に設けられた弾性を有する形状である。第2のバネ部153は、組立後に中間筐体102のロック部151がロック位置からY軸負方向に第1の所定量S1だけスライドして第1の位置P1へ遷移した時、ロック部151と接する位置に設けられる。第1の所定量S1は「第1の所定量」の一例である。第2のバネ部153は、ロック部151が位置P1よりもY軸負方向にスライドした時、ロック部151に復帰力を与える。
【0041】
第3のバネ部154は、下側筐体103に設けられた弾性を有する形状である。第3のバネ部154は、組立後に中間筐体102のロック部151がロック位置からY軸負方向に第2の所定量S2だけスライドして第2の位置P2へ遷移した時、ロック部151と接する位置に設けられる。第2の所定量S2は「第2の所定量」の一例である。第2の所定量S2は第1の所定量S1より大きい。第3のバネ部154は、ロック部151が位置P2よりもY軸負方向にスライドした時、ロック部151に復帰力を与える。
【0042】
図7A図7Cに示すように、下側筐体103は、上面103CからXZ平面と平行に延設された第3の支持壁103Dを有している。第2のバネ部153および第3のバネ部154は、第3の支持壁103Dから、下側筐体103の内側(Y軸正方向)に突出している。
【0043】
そして、図5Aおよび図8Aに示すように、組立後、第2のバネ部153および第3のバネ部154は、ロック部151と、下側筐体103の第3の支持壁103Dと、の間に配置される。
【0044】
図8A図8Cに示すように、第2のバネ部153および第3のバネ部154は、ロック部151がロック位置にある時、ロック部151の押圧部151DよりもY軸負方向、且つ、ロック部151の押圧部151Dから離間する位置に設けられている。この時、第2のバネ部153と押圧部151Dとの間の距離は第1の所定量S1である。また、この時、第3のバネ部154と押圧部151Dとの間の距離は第2の所定量S2である。ロック部151がスライドした時、第2のバネ部153は、第3のバネ部154よりも先にロック部151の押圧部151Dに当接する。
【0045】
第2のバネ部153および第3のバネ部154は、X軸方向に対して傾斜する方向に延在している。
【0046】
第2のバネ部153の末端部153Bは、下側筐体103の第3の支持壁103Dに固定されている。これにより、第2のバネ部153は、先端部153AがY軸方向に移動するように、弾性変形可能となっている。
【0047】
同様に、第3のバネ部154の末端部154Bは、下側筐体103の第3の支持壁103Dに固定されている。これにより、第3のバネ部154は、先端部154AがY軸方向に移動するように、弾性変形可能となっている。
【0048】
さらに、第2のバネ部153は、先端部153A側が末端部153B側よりもロック部151側(Y軸正側)となるように、X軸に対して傾斜して設けられている。
【0049】
同様に、第3のバネ部154は、先端部154A側が末端部154B側よりもロック部151側(Y軸正側)となるように、X軸に対して傾斜して設けられている。
【0050】
なお、第2のバネ部153および第3のバネ部154は、下側筐体103が形成される際に、下側筐体103の第3の支持壁103Dと一体に形成される。
【0051】
(ロック機構150の動作、操作荷重)
図8および図9を用いて、ロック機構150のスライド動作と操作荷重の関係について説明する。
【0052】
図8Aに示すように、ロック部151がロック位置にある時、第2のバネ部153および第3のバネ部154は、ロック部151の押圧部151Dに当接していない。この時、ロック部151は、第1のバネ部152によって支持されている。このため、ロック部151がロック位置からスライドした量が第1の所定量S1未満である時、ロック部151に対し、第1のバネ部152からのみの復帰力が加わる。
【0053】
図8Bに示すように、ロック部151がロック位置からY軸負方向へ第1の所定量S1だけスライドして位置P1(図9参照)へ遷移した時、ロック部151の押圧部151Dに第2のバネ部153が当接する。この時、ロック部151には第1のバネ部152からの復帰力が加わっているが、ロック部151が位置P1よりもY軸負方向へ遷移した時には、ロック部151に対し、第1のバネ部152および第2のバネ部153からの復帰力が加わる。この時、第1のバネ部152と第2のバネ部153との夫々がロック部151に接して復帰力を加える構成となっている。そのため、ロック部151には、第1のバネ部152のバネ定数と第2のバネ部153のバネ定数とを合算したバネ定数に応じて増加した復帰力が加わる。
【0054】
図8Cに示すように、ロック部151がロック位置からY軸負方向へ第2の所定量S2だけスライドして位置P2(図9参照)へ遷移した時、ロック部151の押圧部151Dに第3のバネ部154が当接する。この時、ロック部151には第1のバネ部152および第2のバネ部153からの復帰力が加わっているが、ロック部151が位置P2よりもY軸負方向へ遷移した時には、ロック部151に対し、第1のバネ部152、第2のバネ部153、および第3のバネ部154からの復帰力が加わる。この時、第1のバネ部152と第2のバネ部153と第3のバネ部154との夫々がロック部151に接して復帰力を加える構成となっている。そのため、ロック部151には、第1のバネ部152のバネ定数と第2のバネ部153のバネ定数と第3のバネ部154のバネ定数とを合算したバネ定数に応じてさらに増加した復帰力が加わる。
【0055】
なお、図8Cに示すように、ロック部151が位置P2まで遷移した時点において、ロック部151の先端部151Bは、メカニカルキー120の凹部123から完全に抜け出していない。つまり、この時点において、ロック機構150によるメカニカルキー120の係止は解除されない。メカニカルキー120のロックを解除するためには、ロック部151をロック位置からY軸負方向に第3の所定量S3離れた位置P3(図9参照)までスライドさせる必要がある。第3の所定量S3は「第3の所定量」の一例である。第3の所定量S3は第2の所定量S2よりも大きく設定される。
【0056】
すなわち、一実施形態に係る電子キー10は、メカニカルキー120のロックを解除するためには、ロック部151に対し、第1のバネ部152、第2のバネ部153、および第3のバネ部154からの復帰力が加わっている状態で、さらに、ロック部151をスライドさせる必要がある。操作者は、操作部151Aをスライド操作する際に必要とされる操作荷重、および、その操作荷重のスライド量に対する変化割合(バネ定数)が、図9に示す傾向を有して、段階的に増加する過程を操作部151Aに掛けた指先から感じ取ることが出来る。このことにより、操作者は、メカニカルキー120の係止状態が解除されるタイミングを直感的に察知することが出来る。
【0057】
なお、ロック部151は、操作部151Aが下側筐体103の開口部103Aを構成する面に接する位置P4(図9参照)までY軸負方向にスライドさせることが出来るようになっている。
【0058】
以上説明したように、一実施形態に係る電子キー10は、収容部104を有する中間筐体102と、中間筐体102と互いに固定される下側筐体103と、収容部104に収容可能なメカニカルキー120と、収容部104に収容されたメカニカルキー120を係脱可能に係止するロック機構150とを備え、中間筐体102は、操作者からの操作力を受付けてスライドし、ロック位置にある時、収容部104に収容されたメカニカルキー120を係止し、ロック位置からスライドした時、メカニカルキー120の係止を解除するロック部151と、ロック部151と一体に設けられ、ロック部151がロック位置からスライドした時、ロック部151にロック位置への復帰力を与える第1のバネ部152と、を有し、下側筐体103は、ロック部151がロック位置から第1の所定量S1より大きくスライドした時、ロック部151にロック位置への復帰力を与える第2のバネ部153を有し、ロック機構150は、ロック部151と第1のバネ部152と第2のバネ部153とを有する。
【0059】
これにより、一実施形態に係る電子キー10は、ロック部151のスライド操作に合わせて増加する操作荷重の増加割合(バネ定数)を、ロック部151のスライド量が、第1の所定量S1以下の時と、第1の所定量S1より大きい時とで、2段階に変化させることができる。そのため、操作者は、操作感触の変化を情報源として操作を行った量を直感的に認識することが出来る。
【0060】
また、一実施形態に係る電子キー10は、中間筐体102に第1のバネ部152を一体的に設け、下側筐体103に第2のバネ部153を一体的に設け、これらを従来の復帰部材の代わりとして用いることによって部品点数を削減できる。
【0061】
また、一実施形態に係る電子キー10において、ロック機構150は、下側筐体103と一体に設けられ、ロック部151がロック位置から第1の所定量S1よりも大きい第2の所定量S2より大きくスライドした時、ロック部151にロック位置への復帰力を与える第3のバネ部154を有する。
【0062】
これにより、一実施形態に係る電子キー10は、ロック部151のスライド操作に合わせて増加する操作荷重の増加割合(バネ定数)を、ロック部151のスライド量が、第1の所定量S1以下の時と、第1の所定量S1より大きい時と、第2の所定量S2より大きい時とで、3段階に変化させることができる。
【0063】
また、一実施形態に係る電子キー10において、ロック部151は、ロック位置から第2の所定量S2よりも大きい第3の所定量S3以上スライドした時、メカニカルキー120の係止を解除する。言い方を変えると、操作者はロック部151をスライド操作して操作荷重の増加割合(バネ定数)が初期速度から2段階増加した後、更にスライド操作を行って、ロック部151を第3の所定量S3までスライドさせた時、初めてメカニカルキー120の係止状態を解除出来る。
【0064】
これにより、一実施形態に係る電子キー10は、メカニカルキー120の係止を解除するために、比較的強い操作力を必要とすることができるため、メカニカルキー120の係止を、操作者の意思に反して落下等の衝撃で容易に解除されてしまわないようにすることができる。また、操作者の意思で解除する際には、操作者が比較的強い操作力を必要とするのは、所定量S2から所定量S3までの短い間だけなので、解除操作が容易となる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0066】
例えば、一実施形態に係る電子キー10は、第2のバネ部153および第3のバネ部154を設ける代わりに、一対の第2のバネ部153を設け、ロック部151のストローク量が第1の所定量に達した時に、ロック部151が一対の第2のバネ部153に当接する構成としてもよい。この場合、一実施形態に係る電子キー10は、ロック部151のスライド操作に合わせて増加する操作荷重の増加割合(バネ定数)を、ロック部151のスライド量が、第1の所定量未満の時と、第1の所定量以上の時とで、2段階に変化させることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 電子キー(ロック装置)
100 筐体
101 上側筐体
101a,101b ノブ
101c 開口部
102 中間筐体(第1の筐体)
102A,102B 第1の支持壁
102C,102D 第2の支持壁
102E 下面
103 下側筐体(第2の筐体)
103A 開口部
103B 開口部
103C 上面
103D 第3の支持壁
104 収容部
120 メカニカルキー
121 キーブレード
122 把持部
130 回路基板
131a,131b スイッチ
132 ボタン電池
140 弾性シート
150 ロック機構
151 ロック部
151A 操作部
151B 先端部
151C 傾斜部
151D 押圧部
152 第1のバネ部
153 第2のバネ部
153A 先端部
153B 末端部
154 第3のバネ部
154A 先端部
154B 末端部
155 ガイド部
155A ガイド面
155B ストッパ面
M 部
P1,P2,P3,P4 位置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9