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  • 特開-プラズマエッチング装置及び製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082367
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】プラズマエッチング装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240613BHJP
   B82B 3/00 20060101ALI20240613BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20240613BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L21/302 104C
B82B3/00
C01B32/194
H05H1/46 L
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196165
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100163876
【弁理士】
【氏名又は名称】上藤 哲嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100187045
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 奈菜
(72)【発明者】
【氏名】松井 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雅博
(72)【発明者】
【氏名】越智 太亮
【テーマコード(参考)】
2G084
4G146
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA13
2G084BB11
2G084CC13
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD38
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC04B
4G146BA01
4G146CA09
4G146CB15
4G146CB16
4G146CB21
5F004AA06
5F004BA03
5F004BA08
5F004DA16
5F004DA24
5F004DB00
(57)【要約】
【課題】グラフェンの水素プラズマエッチングにおいて意図しない場所に発生するナノピットを低減できるプラズマエッチング装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るプラズマエッチング装置301は、加熱領域51と高周波領域52に分かれており、高周波領域52から加熱領域51へ水素ガスを含んだエッチングガスを流す石英管11と、石英管11内において、高周波領域52と加熱領域51との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域53を形成する偏向手段15と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱領域(51)と高周波領域(52)に分かれており、前記高周波領域から前記加熱領域へ水素ガスを含んだエッチングガスを流す石英管(11)と、
前記石英管内において、前記高周波領域と前記加熱領域との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域(53)を形成する偏向手段(15)と、
を備えるプラズマエッチング装置(301)。
【請求項2】
前記偏向手段は、前記偏向領域に磁場を与える永久磁石であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記偏向領域の磁場は、前記石英管の中心で10mT以上であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
加熱領域(51)と高周波領域(52)に分かれている石英管(11)内に、前記高周波領域から前記加熱領域へ水素ガスを含んだエッチングガスを流すこと、
前記石英管内において、前記高周波領域と前記加熱領域との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域(53)を形成すること、及び
前記石英管の前記加熱領域に配置した試料に対して水素プラズマエッチングを行うこと
を特徴とする製造方法。
【請求項5】
永久磁石で前記偏向領域に磁場を与えることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記偏向領域の磁場は、前記石英管の中心で10mT以上であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェン薄膜に対して水素プラズマエッチングを行うプラズマエッチング装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、将来の電子デバイスの材料として期待されている。図1はグラフェンのエッジ構造を説明する図である。グラフェンのエッジ構造は、ジグザグ型(図1(A))、アームチェア型(図1(B))、又はこれらが規則的あるいはランダムに混在した構造である。そして、グラフェンの特性は、このエッジ構造に影響される。特にナノリボンのようにエッジ構造が全体に占める割合が大きくなった場合にこの影響が顕著になる。
【0003】
このため、グラフェンのエッジの構造を制御できる製造方法が重要となる。例えば、非特許文献1は、リソグラフ技術と酸素プラズマエッチングでグラフェン薄膜に120nm幅のグラフェンナノリボン(GNR:Graphene NanoRibbon)を形成し、その後に水素プラズマで異方性エッチングを行い、GNRの幅を20nmまで狭める製造方法を開示している。つまり、非特許文献1は、酸素プラズマでつくったライン状の欠陥を起点とし、異方性エッチングでライン状の欠陥の幅を広げて所望のライン幅のGNRを形成する手法を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Rong Yang, Lianchang Zhang, Yi Wang, Zhiwen Shi, Dongxia Shi, Hongjun Guo, Enge Wang, and Guangyu Zhang, “An Anisotropic Etching Effect in the Graphene Basal Plane”, Advanced Materials 22, 4014 (2010).
【非特許文献2】D. Hug, S. Zihlmann, M. K. Rehmann, Y. B. Kalyoncu, T. N. Camenzind, L. Marot, K. Watanabe, T. Taniguchi, and D. M. Zumbuhl, npj 2D Mater. Appl. 1, 21 (2017).
【非特許文献3】T. Matsui, H. Sato, K. Kita, A. E. B. Amend, and H. Fukuyama, J. Phys. Chem. C 123, 22665 (2019).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GNRを形成する水素プラズマエッチングについては、エッチング条件などが公開されている(例えば、非特許文献2、3を参照。)。前述の通り、水素プラズマエッチングは、グラフェンのエッジ構造を制御するうえで重要な工程となりうる。
一方、水素プラズマエッチングは、グラフェン上にナノピットの核となる欠陥を形成するため、意図しない場所にナノピットが発生し、所望のGNRを形成することが困難であるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、グラフェンの水素プラズマエッチングにおいて意図しない場所に発生するナノピットを低減できるプラズマエッチング装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るプラズマエッチング装置は、エッチング対象である試料に到達する水素プラズマ中の水素イオンの量を低減することとした。
【0008】
具体的には、本発明の請求項1に記載されたプラズマエッチング装置は、
加熱領域(51)と高周波領域(52)に分かれており、前記高周波領域から前記加熱領域へ水素ガスを含んだエッチングガスを流す石英管(11)と、
前記石英管内において、前記高周波領域と前記加熱領域との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域(53)を形成する偏向手段(15)と、
を備える。
なお、「水素ガスを含んだエッチングガス」とは、水素ガスのみの場合(残留ガスや不純物がある場合も含む)と、水素ガスと他のガスが混合している場合の双方を意味する。
【0009】
水素プラズマエッチングには、ナノピットの核になる欠陥を形成する作用と孔(欠陥)を拡げて六角形に整形する作用(面方向にエッチングする作用)がある。前者は水素プラズマ中の水素イオンによる作用、後者は水素プラズマ中の水素ラジカルによる作用である。そこで、本プラズマエッチング装置は、電場や磁場により試料に到達する水素プラズマ中の水素イオンの量を低減し、後者の作用を大きく変えずに前者の作用を選択的に減少させている。
従って、本発明は、グラフェンの水素プラズマエッチングにおいて意図しない場所に発生するナノピットを低減できるプラズマエッチング装置を提供することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載されたプラズマエッチング装置の前記偏向手段は、前記偏向領域に磁場を与える永久磁石であることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載されたプラズマエッチング装置は、前記偏向領域の磁場が、前記石英管の中心で10mT以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載されたグラフェン薄膜の製造方法は、
加熱領域(51)と高周波領域(52)に分かれている石英管(11)内に、前記高周波領域から前記加熱領域へ水素ガスを含んだエッチングガスを流すこと、
前記石英管内において、前記高周波領域と前記加熱領域との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域(53)を形成すること、及び
前記石英管の前記加熱領域に配置した試料に対して水素プラズマエッチングを行うこと
を特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に記載された製造方法は、永久磁石で前記偏向領域に磁場を与えることを特徴とする。
また、本発明の請求項6に記載された製造方法は、前記偏向領域の磁場が、前記石英管の中心で10mT以上であることを特徴とする。
【0013】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、グラフェンの水素プラズマエッチングにおいて意図しない場所に発生するナノピットを低減できるプラズマエッチング装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】グラフェンのエッジ構造を説明する図である。
図2】本発明に係るプラズマエッチング装置を説明する図である。
図3】グラフェン薄膜からGNRを作成する製造方法を説明する図である。
図4】本発明に係るプラズマエッチング装置で製造したグラフェン薄膜を説明する図である。
図5】本発明に係るプラズマエッチング装置でグラフェン薄膜をエッチングした時の効果を説明する図である。
図6】本発明に係るプラズマエッチング装置でグラフェン薄膜をエッチングした時の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
(実施形態1)
図2及び図3は、本実施形態のプラズマエッチング装置301を説明する図である。プラズマエッチング装置301は、
加熱領域51と高周波領域52に分かれており、高周波領域52から加熱領域51へ水素ガスを含んだエッチングガスを流す石英管11と、
石英管11内において、高周波領域52と加熱領域51との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域53を形成する偏向手段15と、
を備える。
【0018】
プラズマエッチング装置301は、水素プラズマエッチング装置であり、
加熱領域51と高周波領域52に分かれている石英管11内に、高周波領域52から加熱領域51へ水素ガスを含んだエッチングガスを流すこと、
石英管11内において、高周波領域52と加熱領域51との間に電場と磁場の少なくとも一方を与える偏向領域53を形成すること、及び
石英管11の加熱領域51に配置した試料12に対して水素プラズマエッチングを行うこと
を特徴とする。
【0019】
高周波領域52で発生する水素プラズマは、水素イオンと水素ラジカルで構成される。そして、試料12であるグラフェン薄膜を水素プラズマでエッチングする場合、水素イオンは孔の核(エッチングの開始点)となる欠陥を形成する作用を持ち、水素ラジカルは当該孔を拡げ、ナノピット(例えば、六角形に整形された孔)を形成する作用(面方向にエッチングする作用)を持つ。
【0020】
図3は、グラフェン薄膜からGNRを作成する製造方法を説明する図である。本GNR製造方法は、
表面に酸化膜11が形成された導電性基板12の上にグラフェン薄膜13を形成すること(ステップ(i))、
所望位置に所望形状の孔14を有するレジストマスク15をグラフェン薄膜13の上に形成すること(ステップ(ii)及び(iii))、
レジストマスク15の孔14を介し、グラフェン薄膜13から酸化膜11までを深さ方向にエッチングすること(ステップ(iv))、
レジストマスク15を剥離すること(ステップ(v))、及び
グラフェン薄膜13を導電性基板12の面方向にエッチングすること(ステップ(vi))
を特徴とする。
【0021】
それぞれの工程について説明する。
[ステップ(i)]
導電性基板12は、シリコンやゲルマニウム等の半導体、あるいは金属である。酸化膜11は、当該半導体や当該金属の酸化膜である。当該酸化膜上に任意の厚みのグラフェン薄膜13を配置する。グラフェン薄膜13は、例えば、へき開グラフェンを利用することができる。
[ステップ(ii)]
グラフェン薄膜13を含む酸化膜11上にレジスト膜15aを塗布する。
[ステップ(iii)]
導電性基板12の、レジスト膜15aが塗布された側の任意の場所に光又は電子ビームを照射してレジスト膜15aを感光させ、孔14を形成する。孔14が形成されたレジスト膜15aがレジストマスク15となる。
[ステップ(iv)]
レジストマスク15の孔14を介してグラフェン薄膜13とともに酸化膜11を深さ方向にエッチングする。このエッチングはCHFプラズマエッチングで行う。エッチング後、酸化膜11に深さ方向に孔16が形成される。孔16の深さは任意である。図2では、孔16の深さは、酸化膜11の厚みの中ほどの深さであるが、導電性基板12に達する深さでもよい。
[ステップ(v)]
レジストマスク15を剥離する。本ステップ後、
表面に酸化膜11が形成された導電性基板12の上にグラフェン薄膜13が形成されたグラフェン薄膜基板であって、所望位置且つ所望形状の、グラフェン薄膜13から酸化膜11までの深さ方向に孔16を有することを特徴とするグラフェン薄膜基板20が製造される。
[ステップ(vi)]
孔16を核としてグラフェン薄膜13を導電性基板12の面方向にエッチング(異方性エッチング)する。このエッチングは水素プラズマエッチングで行う。本エッチングにより、グラフェン薄膜13が孔16を核として六角形状にエッチングされていく。符号17は、グラフェン薄膜13がエッチングされ、下地の酸化膜11が現れている領域である。
エッチングされた六角形間にあるグラフェン薄膜13がGNRとなるので、当該六角形の間隔が所望の幅となったところでエッチングを終了する。
【0022】
図3のようにGNRを製造する場合、ステップ(iv)で所望の位置に形成した孔16を核として水素プラズマエッチングを行う(ステップ(vi))ため、前述のように水素プラズマ中の水素イオンにより孔16以外に核が発生することになる。そして、その核が水素ラジカルでエッチングされて拡がり、所望の位置以外にナノピットが形成され、所望特性のGNR(GNRの幅や電気抵抗など)が得られないことがある。
【0023】
プラズマエッチング装置301は、偏向手段15により偏向領域53に形成される電場と磁場の少なくとも一方で水素プラズマの中の水素イオンを石英管11の内壁方向に曲げ、試料12に到達しないようにすることができる。一方、水素ラジカルは中性なので偏向領域53を直線的に進み、試料12に到達できる。このため、プラズマエッチング装置301は、偏向領域53により水素イオンを排除し、試料12への新たな欠陥形成を抑制しつつ、水素ラジカルを選択的に試料12に到達させ、所望位置に形成された孔16を拡げて六角形のナノピットを形成できる。従って、プラズマエッチング装置301は、所望特性のGNRを製造できる。
【0024】
偏向領域53に磁場を形成する場合、偏向手段15は永久磁石又は電磁石であり、磁場の強さは石英管11の中心で10mT以上であることが好ましい。偏向領域53に電場を形成する場合、偏向手段15は石英管11を挟む電極であり、直流電圧が印可される。
【0025】
エッチング中、加熱領域51により試料12は400℃以上700℃以下に加熱される。グラフェン薄膜に六角形のナノピットを形成する場合、500℃以上が好ましい。
【0026】
(実施例)
プラズマエッチング装置301でグラフェン薄膜を水素プラズマエッチングする際に、磁場の偏向領域53を形成した場合と偏向領域53を形成しない(磁場を与えない)場合でのエッチング結果を比較した。磁場の強さは石英管11の中心で15.7mTである。なお、磁場の強さが石英管11の中心で9.4mT以下の場合、以下で説明する磁場有の効果は生じない。
【0027】
図4はエッチング後のグラフェン薄膜表面を走査トンネル顕微鏡で観察した画像である。図4(A)は磁場無の比較例、図4(B)は磁場有の実施例である。エッチングされたナノピットの深さを色の濃さで表現している。図4(C)はグラフェン薄膜に形成されたナノピットの深さを説明するイメージ図である。グラフェン薄膜は複数の層で構成されている。ナノピットNP1は、エッチング量が多く、1層目の孔が大きく、且つ2層目までエッチングされている(ナノピットが深く、3層目が見えている状態)。一方、ナノピットNP2は、エッチング量が少なく、1層目の孔が小さく、1層目のみエッチングされている(2層目が見えている状態)。
図4より、比較例の方が実施例より孔の数が多く、大きさも大きく、深さも深いことがわかる。
【0028】
図5は、水素プラズマエッチングでグラフェン薄膜に形成されたナノピットのボリュームを説明する図である。当該ボリュームは、ナノピットの孔が形成されたグラフェン薄膜を上(1層目側)から見たときに、確認できる単位面積当たりの各層kの面積Sの比率で表現している。つまり、Sはグラフェン薄膜の1層目における孔以外の面積、Sはグラフェン薄膜の1層目に形成された孔から見える2層目の面積、Sはグラフェン薄膜の2層目に形成された孔から見える3層目の面積、Sn≧4はグラフェン薄膜の3層目に形成された孔から見える4層目以降の面積の合計である。(A)は磁場無の比較例、(B)は磁場有の実施例である。
図5より、比較例ではエッチングが4層目以降まで及ぶが、実施例ではエッチングが2層目までであることがわかる。これは、磁場を与えることにより、水素イオンによるエッチングが減少し、水素ラジカルによるエッチングが主流になっていることが考察される。
【0029】
図6は、水素プラズマエッチングでグラフェン薄膜に形成されたナノピットの大きさを説明する図である。当該大きさは、グラフェン薄膜上の単位面積に形成されたナノピットについて1層目に形成されたそれぞれの六角形の孔における対角線のうち、最大の長さDmaxで表現している。
図6より、比較例はDmaxが約400nm、実施例はDmaxが約300nmであるから、比較例の方が実施例より孔の大きさが大きいことがわかる。
【0030】
図4から図6より、次のことが考察される。
偏向領域53に磁場を与えることにより、磁場無の場合より面積Sが大きくなり、且つ対角線Dmaxがわずかに小さくなった。これは、磁場有の場合は、磁場無の場合より水素イオンによる欠陥形成作用が弱くなり、水素ラジカルによる面方向にエッチングする作用がやや弱くなったことを意味する。すなわち、偏向領域53に磁場を与えることにより、磁場無の場合に対して、試料12に到達する水素イオンが減少し、水素ラジカルが微減したといえる。
【符号の説明】
【0031】
11:石英管
12:試料
15:偏向手段
51:加熱領域
52:高周波領域
53:偏向領域
301:プラズマエッチング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6