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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082372
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G01B11/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196172
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】脇田 賢
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065AA50
2F065BB26
2F065FF44
2F065HH03
2F065HH12
2F065HH18
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065LL04
2F065MM02
2F065MM04
2F065MM13
2F065MM15
2F065PP11
2F065QQ17
2F065QQ23
2F065QQ29
2F065QQ41
(57)【要約】
【課題】従来の評価装置には、改善の余地がある。
【解決手段】評価装置は、所定方向に沿って筋目加工が施された複数の面を有する部品の一つの面に、前記一つの面よりも狭い領域の平行光を発する光源と、前記一つの面に前記平行光を所定の入射角で、且つ前記平行光の光軸を前記所定方向に対して垂直に向けて照射したときに前記一つの面で反射する反射光を、前記入射角に対応する反射角で撮像する撮像デバイスと、前記部品を支持する台座と、撮像デバイスから出力される画像データに演算処理を施すことによって、前記筋目加工の筋目の状態に関する情報を出力する演算処理装置と、前記光源及び前記台座の少なくとも一方の水平に対する傾斜を調整可能な傾斜調整機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って筋目加工が施された複数の面を有する部品の一つの面に、前記一つの面よりも狭い領域の平行光を発する光源と、
前記一つの面に前記平行光を所定の入射角で、且つ前記平行光の光軸を前記所定方向に対して垂直に向けて照射したときに前記一つの面で反射する反射光を、前記入射角に対応する反射角で撮像する撮像デバイスと、
前記部品を支持する台座と、
前記撮像デバイスから出力される画像データに演算処理を施すことによって、前記筋目加工の筋目の状態に関する情報を出力する演算処理装置と、
前記光源及び前記台座の少なくとも一方の水平に対する傾斜を調整可能な傾斜調整機構と、
を備える評価装置。
【請求項2】
前記撮像デバイスと前記台座との間に位置する凸レンズをさらに備え、
前記反射光の少なくとも一部が、前記凸レンズを通して前記撮像デバイスに入射し、
前記撮像デバイスは、前記凸レンズの後側焦点に位置する、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記光源及び前記台座の少なくとも一方を回転可能な回転機構をさらに備える、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項4】
前記光源及び前記台座の少なくとも一方を、所定の平面に対して平行移動及び垂直移動可能な移動機構をさらに備える、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項5】
前記平行光を前記光軸と直交する面に照射したときの前記平行光の径が、0.1mm以上3mm以下である、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項6】
前記演算処理は、前記画像データに基づいて前記反射光の強度分布を取得することと、前記強度分布をガウス関数又は疑似フォークト関数により曲線近似することによって近似関数を算出することと、を含み、
前記筋目の状態に関する情報は、前記近似関数の最大値、半値幅、及び標準偏差の少なくとも1つに基づく情報を含む、
請求項1に記載の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋼板の表面性状を評価する装置を開示する。この評価装置は、鋼板に基準パターンを反射させたときの反射像をCCDカメラで撮影することによって得られた映像に基づいて、表面性状を評価する。反射像におけるパターンのゆらぎ、つまりパターンの不鮮明さの度合いに基づいて、筋目のむら、方向性、凹凸の粗さなどを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-99632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、時計の外装部品など、時計を構成する様々な部品は、平板状の鋼板とは異なり、様々な方向を向く複数の面を組み合わせた形状を有する。様々な方向を向く複数の面を有する部品に対して、鋼板用の基準パターンを適用することは無理がある。つまり、従来の評価装置には、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
評価装置は、所定方向に沿って筋目加工が施された複数の面を有する部品の一つの面に、前記一つの面よりも狭い領域の平行光を発する光源と、前記一つの面に前記平行光を所定の入射角で、且つ前記平行光の光軸を前記所定方向に対して垂直に向けて照射したときに前記一つの面で反射する反射光を、前記入射角に対応する反射角で撮像する撮像デバイスと、前記部品を支持する台座と、前記撮像デバイスから出力される画像データに演算処理を施すことによって、前記筋目加工の筋目の状態に関する情報を出力する演算処理装置と、前記光源及び前記台座の少なくとも一方の水平に対する傾斜を調整可能な傾斜調整機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】評価装置の概略構成を説明する模式図。
図2】部品の一例を示す斜視図。
図3】高品位グレードのサンプルに対応する実施例の画像データ。
図4】中間品位グレードのサンプルに対応する実施例の画像データ。
図5】低品位グレードのサンプルに対応する実施例の画像データ。
図6】高品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを示すグラフ。
図7】中間品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを示すグラフ。
図8】低品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを示すグラフ。
図9】高品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図10】中間品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図11】低品位グレードのサンプルに対応する実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図12】コンピューターにより算出された実施例の近似関数の特性値。
図13】高品位グレードのサンプルに対応する比較例の画像データ。
図14】中間品位グレードのサンプルに対応する比較例の画像データ。
図15】低品位グレードのサンプルに対応する比較例の画像データ。
図16】高品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを示すグラフ。
図17】中間品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを示すグラフ。
図18】低品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを示すグラフ。
図19】高品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図20】中間品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図21】低品位グレードのサンプルに対応する比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線。
図22】コンピューターにより算出された比較例の近似関数の特性値。
【発明を実施するための形態】
【0007】
評価装置1は、図1に示すように、台座2と、移動ステージ機構3と、光源4と、集光光学系5と、撮像デバイス6と、インターフェイスユニット7と、コンピューター8と、を備える。台座2は、評価対象であるサンプル10を支持する。評価装置1では、金属で構成されるサンプル10の表面性状を評価することができる。評価装置1では、サンプル10の表面性状のうち筋目に関する性状を評価することができる。金属で構成される各種部品のうち装飾性が要望される部品では、部品の表面に筋目加工が施されることがある。筋目加工を施すことによって部品の装飾性が高められる。評価装置1では、筋目加工が施されたサンプル10の筋目に関する性状を評価することができる。
【0008】
移動ステージ機構3は、評価装置1のベース部9の上面に固定される。本実施形態では、ベース部9の上面が水平面である。移動ステージ機構3は、台座2を支持する。台座2は、移動ステージ機構3の上部に支持される。サンプル10は、台座2の上部に支持される。移動ステージ機構3は、台座2の位置や姿勢を変化させることができる。移動ステージ機構3は、XYZステージ12と、回転ステージ13と、傾斜ステージ14と、を含む。XYZステージ12と、回転ステージ13と、傾斜ステージ14とによって、台座2の位置や姿勢を変化させることができる。
【0009】
光源4は、サンプル10に向けて平行光15を発する。本実施形態では、平行光15としてレーザー光が適用される。平行光15の光軸15Aは、水平面に対して入射角θ1に設定される。よって、平行光15は、水平面に対して入射角θ1で入射する。集光光学系5は、サンプル10に照射された平行光15がサンプル10で反射したときの反射光16を撮像デバイス6に集光する。集光光学系5は、単一の凸レンズでも、凸レンズと凹レンズとを組み合わせた構成でもよい。集光光学系5は、単一の凸レンズであっても、複数のレンズを組み合わせた構成であっても、光学特性上、1つの凸レンズとして扱うことができる。
【0010】
集光光学系5の光軸5Aは、水平面に対する入射角θ1に対応する反射角θ2で傾斜している。平行光15を水平面に照射したとき、入射角θ1と反射角θ2とは等しい。平行光15を水平面に入射角θ1で照射したとき、集光光学系5の光軸5Aが平行光15の光軸15Aに相対する。つまり、光軸15A及び光軸5Aの双方に直交する方向から見て、光軸15Aと光軸5Aとは、水平面に直交する軸に対して対称である。なお、平行光15の光軸15Aを第1光軸と表現することがある。また、集光光学系5の光軸5Aを第2光軸と表現することがある。
【0011】
撮像デバイス6は、複数の撮像素子が二次元にマトリクス配置されたデバイスである。撮像素子は、イメージセンサーである。イメージセンサーとして、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーを適用することができる。また、イメージセンサーとして、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーを適用することもできる。本実施形態では、撮像素子にCMOSイメージセンサーが適用される。撮像デバイス6は、入射される光の強度に応じた二次元の画像データを出力する。撮像デバイス6は、反射光16の進行方向で集光光学系5の後側に位置する。換言すれば、集光光学系5は、台座2と撮像デバイス6との間に位置する。撮像デバイス6は、集光光学系5の後側焦点に位置する。撮像デバイス6は、平行光15の入射角θ1に対応する反射角θ2で反射光16を撮像する。集光光学系5の焦点距離は、撮像デバイス6の大きさと、必要とされる画角とに基づいて、種々の焦点距離を適用することができる。
【0012】
本実施形態では、入射角θ1と反射角θ2とを合算した角度が一定に維持される。水平面に対する光源4の姿勢を変化させると、光源4の姿勢変化に連動して、集光光学系5及び撮像デバイス6の姿勢が変化する。水平面に対する光源4の姿勢を変化させても、光軸15Aと光軸5Aとの間の角度は、入射角θ1と反射角θ2とを合算した角度に維持される。つまり、光源4の傾きを変化させると、光源4の傾き変化に連動して、集光光学系5及び撮像デバイス6の傾きが変化する。これは、光源4と集光光学系5と撮像デバイス6とを少なくとも2か所で連結することによって実現できる。光源4と集光光学系5と撮像デバイス6とを2か所で連結するというのは、次の3通りの連結が成立する。1つ目は、光源4と集光光学系5とを連結し、光源4と撮像デバイス6とを連結する構成である。2つ目は、光源4と集光光学系5とを連結し、集光光学系5と撮像デバイス6とを連結する構成である。3つ目は、光源4と撮像デバイス6とを連結し、集光光学系5と撮像デバイス6とを連結する構成である。本実施形態では、光源4と集光光学系5と撮像デバイス6との組み合わせを光学ユニット18と呼ばれる。
【0013】
インターフェイスユニット7は、コンピューター8と各種機器とを通信可能に接続する。光源4及び撮像デバイス6は、インターフェイスユニット7に接続される。コンピューター8は、コンピューター8に接続される各種機器を制御する。また、コンピューター8は、撮像デバイス6から入力される画像データを処理したり、各種の演算処理を実施したりする。光源4と撮像デバイス6とは、インターフェイスユニット7を介してコンピューター8に接続される。コンピューター8は、インターフェイスユニット7を介して光源4及び撮像デバイス6を制御する。コンピューター8は、インターフェイスユニット7を介して光源4及び撮像デバイス6に制御信号を送信する。光源4及び撮像デバイス6は、コンピューター8からの制御信号に基づいて動作する。コンピューター8には、汎用コンピューターを適用することができる。コンピューター8は、演算処理装置の一例である。
【0014】
評価装置1では、光源4から射出される平行光15をサンプル10に照射したときにサンプル10で反射する反射光16を撮像デバイス6で検出した結果に基づいて、サンプル10の筋目を評価することができる。つまり、評価装置1は、反射光16の状態に基づいてサンプル10の筋目を評価する。本実施形態では、台座2、移動ステージ機構3、光源4、集光光学系5、及び撮像デバイス6は、遮光箱11に収容される。遮光箱11は、外部環境における光に対して遮光性を有する。遮光箱11によって、評価の精度が高められる。光源4から射出される平行光15のビーム径は、絞り4Aによって0.1mm以上かつ3mm以下に調整される。これにより、微小な面積の平面に対する評価を実施することができる。微小な面積の平面を有する部品として、例えば、時計部品が挙げられる。評価装置1は、時計部品の平面について筋目の状態を評価することができる。
【0015】
平行光15のビーム径は、光軸15Aに直交する面に平行光15を照射したときの光の直径である。ビーム径は、ガウシアンビームのビーム直径に従う。ビーム径が絞り4Aによって0.1mm以上かつ3mm以下に調整されるので、部品の微小な範囲について評価することができる。ビーム径が0.1mmを下回ると撮像デバイス6で反射光16を検出しにくい。ビーム径が3mmを超えると微小な面積の面を有する部品に適用しにくい。よって、ビーム径は、0.1mm以上かつ3mm以下であることが好ましい。なお、平行光15のビーム形状は、円に限定されない。楕円や、多角形、異形状でもよい。平行光15を光軸15Aに直交する面に照射したときにビーム径が直径3mmの円内に納まる大きさであればよい。
【0016】
XYZステージ12は、評価装置1のベース部9の上面に固定される。本実施形態では、ベース部9の上面が水平面である。XYZステージ12は、ベース部9側とは反対側に第1ステージ21を有する。XYZステージ12は、所定の平面内で直交する二軸をX軸及びY軸としたときに、X軸及びY軸のそれぞれに沿って第1ステージ21を変位させることができる。また、XYZステージ12は、X軸及びY軸に直交するZ軸に沿って第1ステージ21を昇降させることができる。本実施形態では、所定の平面が水平面に合わせられている。よって、XYZステージ12は、水平面内で直交する二軸に沿って第1ステージ21を、水平面に対して平行移動することができる。また、XYZステージ12は、水平面に直交する軸に対して第1ステージ21を昇降させることができる。
【0017】
回転ステージ13は、XYZステージ12の第1ステージ21の上面に固定される。回転ステージ13は、XYZステージ12側とは反対側に第2ステージ22を有する。回転ステージ13は、水平面に直交する軸を中心に第2ステージ22を回転させることができる。
【0018】
傾斜ステージ14は、回転ステージ13の第2ステージ22の上面に固定される。傾斜ステージ14は、傾斜調整機構の一例である。傾斜ステージ14は、回転ステージ13側とは反対側に第3ステージ23を有する。第3ステージ23の上面に台座2が固定される。傾斜ステージ14は、所定の平面内で直交する二軸に対して第3ステージ23の傾斜を変化させることができる。所定の平面内で直交する二軸を第1軸及び第2軸としたとき、傾斜ステージ14は、第1軸に対する第3ステージ23の傾斜を変化させることができる。また、傾斜ステージ14は、第2軸に対する第3ステージ23の傾斜を変化させることができる。本実施形態では、所定の平面が水平面に合わせられている。よって、傾斜ステージ14は、水平面内で直交する二軸に対して第3ステージ23の傾斜を変化させることができる。なお、傾斜ステージ14における第1軸及び第2軸は、XYZステージ12におけるX軸及びY軸に一致してもしなくてもよい。上記の構成を有する移動ステージ機構3により、台座2に支持されたサンプル10の水平位置、高さ位置、回転位置、及び傾斜姿勢を調整することができる。なお、傾斜調整機構は、傾斜ステージ14に限定されず、自由雲台も適用することができる。
【0019】
評価装置1の評価対象となる時計部品として、例えば、図2に示すように、ケース31が挙げられる。図2に示される時計は、腕時計である。ケース31は、時計の基幹部品であるムーブメントを収容する。ケース31は、時計の外装部品の1つである。ケース31は、時計の装飾性に大きくかかわる部品である。ケース31には、装飾性を高めるために筋目加工が施されることがある。筋目加工は、所定方向に沿って部品に筋目をつける加工である。サンプル10を構成する金属としては、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム、黄銅など、種々の金属が適合する。
【0020】
ケース31は、複数の面32を有する。複数の面32は、様々な方向を向く。様々な方向を向く複数の面32によって複雑なデザインが構築される。複数の面32のそれぞれに筋目加工が施される。ケース31に施される筋目は、複数の面32の個別に筋目の向きが異なっていてもよいし、複数の面32のすべてにおいて筋目の向きが同じであってもよい。
【0021】
複数の面32のうちの一つの面として、図2に示す第1の面32Aを例に説明する。第1の面32Aは、第1の面32Aに垂直な方向から見て、縦1cm、横2cm程度の略長方形の平面である。時計の視認面33を鉛直上方に向けた状態でケース31を水平面に載置したときに、第1の面32Aは、水平面と交差する方向を向く。よって、時計の視認面33が鉛直上方を向く状態でケース31を、図1に示す台座2に支持したとき、第1の面32Aに対して入射角θ1と反射角θ2とに差異が生じる。この状態では、第1の面32Aについて筋目の状態を正しく評価することができない。第1の面32Aについて筋目の状態を正しく評価するためには、第1の面32Aに対して入射角θ1と反射角θ2とを同等に設定する必要がある。
【0022】
評価装置1では、傾斜ステージ14により、第1の面32Aの傾斜を調整することができる。水平面に対して傾斜する第1の面32Aを傾斜ステージ14により水平にすることができる。これにより、第1の面32Aに対して入射角θ1と反射角θ2とを同等にすることができる。評価装置1では、光軸15Aに対する部品の姿勢を調整できる。よって、様々な方向を向いた面32を有する部品であっても、面32に対する平行光15の入射角θ1を調整することができる。
【0023】
評価装置1では、XYZステージ12により、第1の面32Aの水平位置を調整することができる。これにより、第1の面32Aを平行光15の照射位置に合わせやすい。また、評価装置1では、XYZステージ12により、第1の面32Aの高さ位置を調整することができる。これにより、第1の面32Aを平行光15の照射位置に合わせやすい。評価装置1では、回転ステージ13により、第1の面32Aの回転位置を調整することができる。これにより、平行光15の光軸15Aに対する第1の面32Aの筋目の向きを調整しやすい。
【0024】
図1に示すように、評価装置1は、遮光箱11の内部に、観察カメラ41と、観察照明42と、を備える。観察カメラ41と観察照明42とは、インターフェイスユニット7を介してコンピューター8に接続される。コンピューター8は、インターフェイスユニット7を介して観察カメラ41及び観察照明42と通信することができる。コンピューター8は、インターフェイスユニット7を介して観察カメラ41及び観察照明42を制御する。コンピューター8は、インターフェイスユニット7を介して観察カメラ41及び観察照明42に制御信号を送信する。観察カメラ41及び観察照明42は、コンピューター8からの制御信号に基づいて動作する。
【0025】
台座2に支持されたサンプル10の水平位置、高さ位置、回転位置、及び傾斜姿勢を調整するときに、観察カメラ41及び観察照明42を作動させることによって、サンプル10を観察しながら調整することができる。このため、評価装置1では、サンプル10の水平位置、高さ位置、回転位置、及び傾斜姿勢を効率的に高精度で調整することができる。この結果、評価装置1では、サンプル10の筋目の状態を正確に評価することができる。
【0026】
なお、遮光箱11、観察カメラ41、及び観察照明42は、評価装置1において必須の構成ではない。評価装置1では、遮光箱11、観察カメラ41、及び観察照明42が省略されてもサンプル10の表面性状を評価することができる。しかしながら、評価装置1が遮光箱11、観察カメラ41、及び観察照明42を備えることは、正確かつ効率的にサンプル10の表面性状を評価できる点で好ましい。
【0027】
また、評価装置1では、XYZステージ12及び回転ステージ13は必須の構成ではない。評価装置1では、XYZステージ12及び回転ステージ13が省略されてもサンプル10の表面性状を評価することができる。しかしながら、評価装置1がXYZステージ12及び回転ステージ13を備えることは、効率的にサンプル10の表面性状を評価できる点で好ましい。
【0028】
本実施形態では、移動ステージ機構3が台座2に適用されている。これにより、台座2の水平位置、高さ位置、回転位置、及び傾斜姿勢を調整することができる。しかしながら、移動ステージ機構3の適用は、台座2に限定されない。移動ステージ機構3を光源4に適用することもできる。さらに、移動ステージ機構3を台座2及び光源4の両方に適用することもできる。上述したように、光源4は、光学ユニット18に含まれる。よって、移動ステージ機構3を光源4に適用する構成では、光源4の傾斜姿勢を調整すると、光源4の姿勢変化に連動して集光光学系5及び撮像デバイス6の傾斜姿勢も変化する。光源4の水平位置、高さ位置、及び回転位置についても同様である。光源4の水平位置、高さ位置、及び回転位置を調整すると、光源4の位置変化に連動して集光光学系5及び撮像デバイス6の水平位置、高さ位置、及び回転位置も変化する。
【0029】
本実施形態では、XYZステージ12におけるX軸及びY軸が水平に設定されている。しかしながら、XYZステージ12におけるX軸及びY軸の少なくとも一方が水平面に対して傾斜していてもよい。また、本実施形態では、回転ステージ13は、水平面に直交する軸を中心に第2ステージ22を回転させることができる。しかしながら、第2ステージ22の回転軸が水平面に直交する軸に対して傾斜していてもよい。
【0030】
サンプル10の評価方法を説明する。
まず、台座2にサンプル10を支持させる。このとき、サンプル10の面のうち評価対象となる面を上方に向ける。サンプル10の評価対象となる面を対象面と呼ぶ。次に、サンプル10の位置を調整する。サンプル10の位置は、平行光15の照射位置に対象面が重なる位置に調整される。このとき、観察カメラ41を介してサンプル10と平行光15とを観察しながらサンプル10の位置を調整する。
【0031】
次に、対象面の傾斜を調整する。このとき、傾斜ステージ14により対象面の傾斜が調整される。本実施形態では、対象面に対する平行光15の入射角θ1が45度に設定される。対象面の傾斜は、撮像デバイス6による画像データにおいて反射光16の検出位置が概ね中央に位置するように調整される。次に、対象面の筋目の向きを光軸15Aに対して垂直に調整する。このとき、対象面の筋目の向きは、対象面を鉛直上方から平面視したときに光軸15Aに対して垂直に調整される。
【0032】
上記の通りにサンプル10の位置及び姿勢を調整した後、光源4を作動させることによって、サンプル10の対象面に平行光15を照射する。このとき、観察照明42及び観察カメラ41の作動を停止させた状態で、サンプル10の対象面に平行光15が照射される。次に、コンピューター8により撮像デバイス6を作動させることによって、撮像デバイス6が検出した反射光16の強度に基づく画像データを取得する。次に、コンピューター8により、画像データに各種の演算処理を施すことによって、筋目加工の筋目の状態に関する情報を出力させる。筋目の状態に関する情報は、コンピューター8に接続された表示装置に出力してもよく、図示しない印刷装置により印刷媒体として出力してもよい。作業者は、コンピューター8によって出力された情報に基づいて、サンプル10の対象面の筋目の状態を評価することができる。
【0033】
画像データに施す各種の演算処理は、画像データに基づいて反射光16の強度分布を取得することと、強度分布をガウス関数又は疑似フォークト関数により曲線近似することによって近似関数を算出することと、を含む。また、筋目の状態に関する情報は、近似関数の最大値、半値幅、及び標準偏差の少なくとも1つを含む。作業者は、コンピューター8によって出力された近似関数の最大値、半値幅、及び標準偏差の少なくとも1つに基づいて、筋目の状態を定量的に評価することができる。評価装置1によれば、定量的な数値で客観的に筋目の状態を評価できるので、人間の視覚に依存する主観的な評価に比較して評価のばらつきを軽減することができる。なお、時計部品の場合、装飾性の観点から、ピーク強度が高い方が、筋目に関する品質グレードが高い。同様に、半値幅が小さい方が筋目に関する品質グレードが高い。標準偏差が小さい方が筋目に関する品質グレードが高い。
【0034】
実施例について説明する。
実施例では、金属部品の筋目に関して、3水準の品質グレードのサンプル10を評価装置1で評価した。なお、金属部品の材料として、ステンレスを適用した。3水準の品質グレードは、(1)高品位グレード、(2)中間品位グレード、及び(3)低品位グレードの3水準である。装飾性の観点から、(1)高品位グレードがもっとも装飾性が高い。(1)高品位グレードは、筋目の規則性や大きさ、方向などの均一性が高く、筋目が途切れずに連続性が高い。(3)低品位グレードは、筋目の規則性や大きさが粗く、方向なども不均一であり、筋目の途切れが多い。(2)中間品位グレードは、高品位グレードと低品位グレードとの中間である。
【0035】
サンプル10に平行光15を照射したときに撮像デバイス6から出力された画像データを図3図4、及び図5に示す。図3は、(1)高品位グレードのサンプル10に対応する実施例の画像データである。図4は、(2)中間品位グレードのサンプル10に対応する実施例の画像データである。図5は、(3)低品位グレードのサンプル10に対応する実施例の画像データである。図3図4、及び図5を比較すると、図3に示す(1)高品位グレード、図4に示す(2)中間品位グレード、及び図5に示す(3)低品位グレードの順に光強度の密度が高いことが理解できる。このことを定量的に数値情報にするために、画像データに各種の演算処理が施される。
【0036】
図3に示すように、画像データには、撮像デバイス6の二軸方向であるU方向とV方向との二次元に光強度のデータが分布する。U方向が筋目の方向に対応し、V方向が筋目と垂直な方向に対応する。コンピューター8は、この画像データに画像処理を施すことによって、U方向を行方向とし、V方向を列方向とするN行×M列の二次元マトリクスに区画する。N及びMは、2以上の自然数である。コンピューター8が実施する画像処理では、N行×M列の二次元マトリクスの列ごとに、光強度の算術平均値を演算する。二次元マトリクスの1列目の光強度は、1行目からN行目までの光強度の積算値をNで除算することによって算出される。列ごとの算術平均値の演算がM列目まで反復実施される。この結果、1つの画像データに対してU方向に並ぶM個の光強度分布データが演算される。図4及び図5に示す画像データについても同様の画像処理が施される。
【0037】
図3に示す(1)高品位グレードの実施例の画像データに基づいて演算したM個の光強度分布データをグラフにプロットしたときの曲線は、図6に示すように、正規分布に近いことが理解される。このことは、(2)中間品位グレード及び(3)低品位グレードの光強度データについても同様である。図7に示すように、(2)中間品位グレードの実施例の光強度分布データについても正規分布に近いことが理解される。図8に示すように、(3)低品位グレードの実施例の光強度分布データについても正規分布に近いことが理解される。このことから、M個の光強度分布データに基づいて近似関数を算出することができれば、近似関数の特性値から筋目の状態を定量的に数値情報にすることができる。よって、本実施形態では、コンピューター8が、光強度分布データをガウス関数又は疑似フォークト関数により曲線近似することによって近似関数を算出する。
【0038】
図9は、(1)高品位グレードの実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図10は、(2)中間品位グレードの実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図11は、(3)低品位グレードの実施例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図12は、コンピューター8により算出された実施例の近似関数の特性値を示す。図12では、近似関数の特性値として、疑似フォークト関数におけるガウス関数成分のピーク強度及び標準偏差が示される。なお、ピーク強度及び標準偏差に加えて、半値幅を算出することもできる。半値幅HWHMは、標準偏差をσと表した場合に、HWHM=((2ln2)^1/2)・σで表される数値である。図12に示すように、ピーク強度は、(1)高品位グレード、(2)中間品位グレード、及び(3)低品位グレードの順に高い。また、標準偏差は、(1)高品位グレード、(2)中間品位グレード、及び(3)低品位グレードの順に小さい。このように、評価装置1では、金属部品の筋目の状態に関する情報を定量的に数値化することができる。筋目の状態に関する情報は、近似関数のピーク強度、半値幅、及び標準偏差の少なくとも1つ、またはピーク強度、半値幅、及び標準偏差に基づく情報のうちの少なくとも1つに基づく情報でよい。
【0039】
比較例について説明する。
比較例は、評価装置1から集光光学系5を除去したことを除いて、上記実施例と同様である。比較例におけるサンプル10及び評価方法は、上記実施例と同様である。図13は、(1)高品位グレードのサンプル10に対応する比較例の画像データである。図14は、(2)中間品位グレードのサンプル10に対応する比較例の画像データである。図15は、(3)低品位グレードのサンプル10に対応する比較例の画像データである。
【0040】
図13図14及び図15に示すように、比較例の画像データでは、図3図4及び図5に示す実施例の画像データと比較して、光がU方向に分散している。図16は、(1)高品位グレードの画像データに基づいて演算した比較例の光強度分布データを示す。図17は、(2)中間品位グレードの画像データに基づいて演算した比較例の光強度分布データを示す。図18は、(3)低品位グレードの画像データに基づいて演算した比較例の光強度分布データを示す。
【0041】
図16図17及び図18に示すように、比較例の光強度分布データでは、図6図7及び図8に示す実施例の光強度分布データと比較して、曲線の凹凸が激しい。図19は、(1)高品位グレードの比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図20は、(2)中間品位グレードの比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図21は、(3)低品位グレードの比較例の光強度分布データを疑似フォークト関数により曲線近似したときの近似曲線を示す。図22は、コンピューター8により算出された比較例の近似関数の特性値を示す。
【0042】
図22に示すように、比較例のピーク強度は、(1)高品位グレード、(3)低品位グレード、及び(2)中間品位グレードの順に高い。この結果は、実施例の結果と異なる。比較例では、(2)中間品位グレードと(3)低品位グレードとの順位が、実施例での順位と逆転した。なお、比較例の標準偏差は、(2)中間品位グレード、(1)高品位グレード、及び(3)低品位グレードの順に小さい。この結果は、この結果は、実施例の結果と異なる。比較例では、(1)高品位グレードと(2)中間品位グレードの順位が、実施例での順位と逆転したが、その差は軽微である。
【0043】
比較例のピーク強度の結果が実施例と異なったのは、光強度分布データと近似関数との誤差が実施例よりも大きいためと考えられる。このことは、図示しない残差平方和の値が、実施例よりも比較例の方が大きかったことから考察される。これは、画像データでのU方向の光の分散が、比較例の方が実施例よりも大きいことに起因する。比較例では、評価装置1から集光光学系5が除去されたので、撮像デバイス6の撮像面に正反射光と拡散光とが混在した状態で分散したと考えられる。これに対して、実施例では、集光光学系5により正反射光を集光することができるので、正反射光と拡散光とを分離することができる。これにより、実施例では、筋目の状態に応じた光の反射状態の違いを顕著に検出することができる。標準偏差に関しても同様に比較例では誤差が含まれており、実施例のように集光光学系5を用いることで、筋目の状態に応じた光の反射状態の違いを顕著に検出することができる。
【0044】
上記より、次のことが説明される。
サンプル10の面で反射した反射光16には、正反射光と拡散光とが含まれる。サンプル10の面に近い位置で反射光16を捉えると、正反射光と拡散光とが混在しているため、正反射光と拡散光とを区別することが困難である。正反射光と拡散光とが混在する反射光16を凸レンズの一例である集光光学系5に通すことによって、凸レンズの後側焦点の位置において、正反射光と拡散光とを分離することができる。よって、評価装置1によれば、正確な評価結果を出力することができる。
【0045】
評価装置1から集光光学系5を除去しても、サンプル10の面から十分に遠ざかれば正反射光と拡散光とを十分に分離することができる。しかし、サンプル10の面と撮像デバイス6との間の距離が長くなるため、評価装置1が大型化してしまう。また、サンプル10の面から遠ざかると、反射光16の投影面積が増大してしまう。このような反射光16を捉えるためには、撮像デバイス6の撮像面の面積を大きくしなければならない。よって、サンプル10の面と撮像デバイス6との間の距離を大きくすると、評価装置1が大型化してしまう。
【0046】
本実施形態では、凸レンズの一例である集光光学系5により、サンプル10の面と撮像デバイス6との間の距離を短くすることができる。また、サンプル10の面と撮像デバイス6との間の距離を短くすることができるので、撮像デバイス6を小型化することができる。よって、本実施形態では、評価装置1を小型化することができる。また、本実施形態では、平行光15のビーム径を大きくしても、集光光学系5によって正反射光と拡散光とを十分に分離することができるので、正確な評価結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…評価装置、2…台座、3…移動ステージ機構、4…光源、4A…絞り、5…集光光学系、5A…光軸、6…撮像デバイス、7…インターフェイスユニット、8…コンピューター、9…ベース部、10…サンプル、11…遮光箱、12…XYZステージ、13…回転ステージ、14…傾斜ステージ、15…平行光、15A…光軸、θ1…入射角、16…反射光、θ2…反射角、18…光学ユニット、21…第1ステージ、22…第2ステージ、23…第3ステージ、31…ケース、32…面、33…視認面、32A…第1の面、41…観察カメラ、42…観察照明。
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