(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082375
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】虚像表示装置及び頭部装着型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240613BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240613BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240613BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240613BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240613BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20240613BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02F1/13 505
G09F9/00 313
G09F9/00 359
G02B5/30
G02B5/00 A
G02B3/08
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196175
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】井出 光隆
【テーマコード(参考)】
2H042
2H088
2H149
2H199
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA04
2H042AA15
2H042AA26
2H088EA10
2H088EA42
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA15
2H088HA18
2H149AA01
2H149BA02
2H149FC10
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA63
2H199CA65
2H199CA70
2H199CA74
2H199CA85
2H199CA86
5G435AA18
5G435BB12
5G435CC09
5G435DD13
5G435EE12
5G435FF02
5G435FF07
5G435FF13
5G435GG01
5G435GG02
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】光学系全体が大型化してしまうことを回避しつつ画角を広くする。
【解決手段】虚像表示装置は、画像を表示する画素表示領域PAと、外界を視認可能にする光透過領域22uとを有する画像表示装置22と、画像表示装置22の外界側に配置され、画素表示領域PAへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、画像表示装置22の顔側に配置され、透過光を所定の偏光方向に制限する偏光板23と、偏光板23の顔側に配置され、画素表示領域PAに対応して映像光MLの偏向方向を選択的に変化させる波長板24bを有する画像選択変換部材24と、画像選択変換部材24の顔側に配置され、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子40aとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画素表示領域と、外界を視認可能にする光透過領域とを有する画像表示装置と、
前記画像表示装置の外界側に配置され、前記画素表示領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、
前記画像表示装置の顔側に配置され、透過光を所定の偏光方向に制限する偏光板と、
前記偏光板の顔側に配置され、前記画素表示領域に対応して映像光の偏向方向を選択的に変化させる波長板を有する画像選択変換部材と、
前記画像選択変換部材の顔側に配置され、前記映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子と
を備える、虚像表示装置。
【請求項2】
前記画素表示領域は、画素又はサブ画素に対応する発光領域であり、
前記波長板は、前記発光領域に対応する領域に配置される、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、前記画素表示領域の画素又はサブ画素に対応する領域に配置される、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記偏光板は、前記画像表示装置から前記映像光と、前記遮光部材を通過した外界光とを第1方向の偏光に制限して通過させ、
前記画像選択変換部材は、前記偏光板を通過した前記映像光を前記第1方向に対して直交する第2方向の偏光に変換する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記偏光分離レンズ素子は、前記画像表示装置を構成する複数の画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記偏光分離レンズ素子は、前記画像表示装置を構成する各画素又はサブ画素を個別に結像させる複数の要素レンズを含む偏光分離液晶レンズである、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記偏光分離液晶レンズは、同心に配置された複数の円形の輪帯部分を有する、請求項5及び6のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記偏光分離液晶レンズは、印加電圧に応じて前記輪帯部分の屈折力が変化する、請求項7に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第1装置と、
請求項1~6のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第2装置と、
前記第1装置と前記第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置と
を備える、頭部装着型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする虚像表示装置及び頭部装着型表示装置に関し、特に外界像を視認可能にするシースルー型の虚像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
虚像表示装置として、ティスプレイと、ティスプレイからの光を透過させるビームスプリッターと、ビームスプリッターを透過した光をビームスプリッターを介して装着者に反射する凹面鏡と、ビームスプリッター及び凹面鏡間に配置され画像の焦点を変える調整可能レンズとを備えるものが公知となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、画角を広くしようとすると、ビームスプリッターの厚みが増し、光学系全体が大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における虚像表示装置は、画像を表示する画素表示領域と、外界を視認可能にする光透過領域とを有する画像表示装置と、画像表示装置の外界側に配置され、画素表示領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、画像表示装置の顔側に配置され、透過光を所定の偏光方向に制限する偏光板と、偏光板の顔側に配置され、画素表示領域に対応して映像光の偏向方向を選択的に変化させる波長板を有する画像選択変換部材と、画像選択変換部材の顔側に配置され、映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の虚像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図2】表示光学系の光学的構造を説明する概念的な斜視図である。
【
図3】複合表示部材の繰返単位を説明する概念的な拡大斜視図である。
【
図4A】発光素子の具体的な構造の一例を説明する概念的な斜視図である。
【
図4B】発光素子の別の例を説明する概念的な斜視図である。
【
図5A】
図4Aに対応して画素の配置や隙間を説明する平面図である。
【
図5B】
図4Bに対応して画素の配置や隙間を説明する平面図である。
【
図6】
図5Aに示す場合において、遮光部材の遮光層を重ねて示した図である。
【
図7】各色のセル領域が分離して形成されている場合の遮光層を示す。
【
図8】液晶レンズの構造及び機能を説明する概念的な斜視図である。
【
図9】第1実施形態の虚像表示装置の動作を説明する概念図である。
【
図12】第2実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~9を参照して、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置等について説明する。
【0008】
図1は、ヘッドマウントディスプレイすなわち頭部装着型表示装置200の装着状態を説明する斜視図である。頭部装着型表示装置(以下、HMDとも称する。)200は、双眼型表示装置201であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
HMD200は、右眼用の第1虚像表示装置100Aと、左眼用の第2虚像表示装置100Bと、虚像表示装置100A,100Bを支持する一対のテンプル100Cと、情報端末であるユーザー端末88とを備える。第1虚像表示装置100Aは、第1装置1Aであり、上部に配置される第1表示駆動部102aと、眼前を覆う第1表示光学系103aと、第1表示光学系103aを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104aとで構成される。第2虚像表示装置100Bは、第2装置1Bであり、上部に配置される第2表示駆動部102bと、眼前を覆う第2表示光学系103bと、第2表示光学系103bを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104bとで構成される。第1装置1Aである第1虚像表示装置100Aと、第2装置1Bである第2虚像表示装置100Bとを組み合わせたHMD200は、広義の虚像表示装置でもある。一対のテンプル100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材又は支持装置106であり、外観上一体化されている表示駆動部102a,102bを介して一対の表示光学系103a,103bの上端側と、一対の光透過カバー104a,104bの上端側とを支持している。一対の表示駆動部102a,102bを組み合わせたものを駆動装置102と呼ぶ。一対の光透過カバー104a,104bを組み合わせたものをシェード104と呼ぶ。
【0010】
図2は、第1表示光学系103aの構造を説明する斜視図である。第1表示光学系103aは、2次元的な画像を形成し映像光を射出する板状の複合表示部材20と、映像光に対してレンズとして機能する偏光分離レンズ素子40aである偏光分離液晶レンズ40とを備える。複合表示部材20と偏光分離液晶レンズ40とは、光軸AX方向に離間して配置されている。複合表示部材20は、光軸AXに垂直なXY面に平行に延びる板状の部材であり、遮光部材21と、画像表示装置22と、偏光板23と、画像選択変換部材24とを積層し、不図示の枠体によって一体化した構造を有する。複合表示部材20は、XY面に沿ってマトリクス状に配列された複数の繰返単位20aで構成され、繰返単位20aは、画像表示装置22において、画像を形成する単位である画素PEを含み、各画素PEは、4つのサブ画素PEaで構成される。偏光分離液晶レンズ40は、つまり偏光分離レンズ素子40aは、複合表示部材20の画像選択変換部材24の顔側つまり-Z側に配置されて眼前を覆う。偏光分離液晶レンズ40は、画像表示装置22を構成する複数の画素PEを包括的に結像させる単独レンズである。偏光分離液晶レンズ40は、XY面に平行に延びる板状の部材である。偏光分離液晶レンズ40は、液晶レンズ41であり、屈折率の状態が異なる複数の円形の輪帯部分RAを含む。一群の輪帯部分RAは、光軸AXの周りに対称的に同心で配置されている。一群の輪帯部分RAのうち、光軸AXから離れた周辺の輪帯部分RAは、光軸AXが通る中央の輪帯部分RAよりも、光軸AXを中心とする径方向の幅が狭くなっている。つまり、輪帯部分RAの径方向の幅は、周辺にあるものほど狭くなっている。
【0011】
第2表示光学系103bは、第1表示光学系103aと光学的に同一であり、或いは第1表示光学系103aを左右反転させたものであり、詳細な説明を省略する。
【0012】
図3は、複合表示部材20の繰返単位20aを説明する部分拡大斜視図である。ここで、軸AXaは、
図1に示す光軸AXに平行な軸である。
【0013】
遮光部材21は、光透過性を有する平板21a上に四角形の遮光層21bを設けたものである。図示を省略するが、全体の遮光部材21には、多数の遮光層21bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、遮光部材21を構成する全遮光層21bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各遮光層21bは、各繰返単位20aにおける画素区画に対応する領域に形成されている。遮光部材21のうち遮光層21bが設けられていない光透過領域A1は、外界光OLを透過させるが、遮光層21bは、外界光OLの通過を抑制する。
【0014】
遮光層21bは、吸光性を有する塗料その他の物質で形成され、例えばインクジェット方式で目的の個所に塗布することができる。遮光層21bは、平板21a上において遮光層21bを形成しない位置に事前に離型剤からなる離型パターンを記録し、吸光物質のスプレーを全体に塗布し、離型パターンの箇所で吸光物質を除去することで、残った吸光物質層からなるものであってもよい。遮光層21bは、光吸収作用を有する物質であれば、黒以外の色の塗料を用いてもよい。さらに、遮光層21bは、フォトレジスト技術等を用いて平板21a上において遮光層21bを形成すべき箇所に金属パターンを形成し、金属パターンを酸化して吸収性を高めたものであってもよい。なお、遮光層21bは、平板21aの顔側に形成されるものに限らず、平板21aの外界側に形成されてもよい。
【0015】
画像表示装置22は、遮光部材21の顔側に配置されている。画像表示装置22は、発光型の透明ディスプレイであり、例えば有機ELディスプレイである。画像表示装置22は、光透過性を有する平板22a上に、発光領域EAである発光層22r,22g,22bや、発光層22r,22g,22bを点灯するための駆動素子22dを設けたものである。発光層22rとその右上の駆動素子22dとを組み合わせたもの、発光層22gとその右上の駆動素子22dとを組み合わせたもの、発光層22bとその右上の駆動素子22dとを組み合わせたものをそれぞれ発光素子EDと呼ぶ。赤色の発光層22rは、駆動素子22dからの駆動信号に応じて赤色の映像光を表示に必要なタイミング及び輝度で射出し、一対の緑色の発光層22gは、駆動素子22dからの駆動信号に応じて緑色の映像光を表示に必要なタイミング及び輝度で射出し、青色の発光層22bは、駆動素子22dからの駆動信号に応じて青色の映像光を表示に必要なタイミング及び輝度で射出する。図示を省略するが、全体の画像表示装置22には、4つの発光層22r,22g,22bを一組とする多数の画素PEが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、画像表示装置22を構成する全画素PE、又は全組の発光層22r,22g,22bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各画素PE、つまり一組の発光層22r,22g,22bとこれらに付随する駆動素子22dとは、各繰返単位20aにおける画素区画に対応する領域に形成されている。画像表示装置22のうち発光層22r,22g,22bや駆動素子22dが設けられていない光透過領域A2は、外界光OLを透過させる。駆動素子22dは、外界光OLを遮断し、発光層22r,22g,22bは、少なくとも点灯タイミングで外界光OLを遮断する。
【0016】
図4Aは、発光素子EDの具体的な構造の一例を説明する概念的な斜視図である。図示の発光素子EDは、アクティブマトリクス型の表示セルである。発光素子EDを支持する基板である平板22aは、光透過性を有するガラスやプラスチックで形成されている。平板22a上には、共通電極である第1透明電極31が一様に形成され、第1透明電極31上の表示箇所にサブ画素PEaに対応する発光層22eと、スイッチ素子である駆動素子22dとが形成されている。発光層22eは、
図3に示す発光層22r,22g,22bのいずれかである。発光素子EDは、例えば有機EL発光素子である。この場合、発光層22eは、蛍光物質等を含む有機物質層であり、必要に応じて電子やホールの注入層(不図示)等を含む。発光層22eを覆うように設けられた第2透明電極32には、駆動素子22dの出力が供給される。駆動素子22dの端子(不図示)には、縦のY方向に延び光透過性を有する給電配線33と、横のX方向に延び光透過性を有するスイッチ配線34とが接続されている。外部からスイッチ配線34に駆動信号を供給することにより、発光層22eを選択的に発光させることができる。
【0017】
図4Bは、発光素子EDの別の例を説明する概念的な斜視図である。図示の発光素子EDは、パッシブマトリクス型の表示セルである。発光素子EDを支持する基板である平板22aは、光透過性を有するガラスやプラスチックで形成されている。平板22a上には、横のX方向に延び光透過性を有する第1電極配線35が形成され、第1電極配線35上の表示箇所には、サブ画素PEaに対応する発光層22eが形成されている。発光層22eは、
図3に示す発光層22r,22g,22bのいずれかである。発光素子EDは、例えば有機EL発光素子である。発光層22eを覆って縦のY方向に延び光透過性を有する第2電極配線36が形成されている。外部から第1電極配線35と第2電極配線36とに必要な電力を供給することで、発光層22eを選択的に発光させることができる。
【0018】
図5Aは、画像表示装置22における画素の配置とその周囲の隙間とを説明する平面図である。画像表示装置22は、四角形の輪郭を有する繰返区画22sをX方向とY方向とに配列したものであり、各繰返区画22sは、中央に画素区画22tを有し、画素区画22tの周囲には、枠状の光透過領域22u又は光透過領域A2が形成されている。画素区画22tは、画像を表示する画素表示領域PAである。画素区画22tは、2×2で配列された4つのセル領域22mを含む。各セル領域22mは、
図4Aに示す構造を有する発光素子EDを有し、画素区画22t全体では、ベイヤー配列の発光層22r,22g,22bを含むものとなっている。発光層22r,22g,22bの周囲は、
図4Aに示す駆動素子22d、給電配線33、スイッチ配線34等が設けられた四角枠状の回路領域22qである。
【0019】
図5Bは、
図4Bに示す発光素子EDの場合における画素の配置とその周囲の隙間とを説明する平面図である。この場合、発光素子EDが駆動素子又はスイッチ素子を有しないので、セル領域22mに発光層22r,22g,22bのみが形成されている。
【0020】
図6は、
図5Aに示す画像表示装置22において、
図3に示す遮光部材21の遮光層21bを透視した状態を重ねて示した図である。この場合、遮光層21bは、画素区画22tをカバーし、画素区画22tよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、画素区画22tと一致する領域に形成されてもよい。
【0021】
図7は、画像表示装置22において、各色のセル領域22mが分離して形成されている場合を示す。この場合、個々のセル領域22mが画像を表示する画素表示領域PAである。
図7に示す遮光部材21の遮光層21bは、セル領域22mをカバーし、セル領域22mよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、セル領域22mと一致する領域に形成されてもよい。
【0022】
図3に戻って、複合表示部材20の偏光板23は、画像表示装置22の顔側に配置されている。偏光板23は、光透過性を有する平板23a上に吸収型の偏光膜23bを貼り付けたものである。偏光膜23bは、例えばヨウ素吸着させたPVAを特定方向に延伸した樹脂シートである。図示の例では、偏光膜23bは、上下の±Y方向に平行な偏光面を有する縦偏光のみを透過させ、左右の±X方向に平行な偏光面を有する横偏光を吸収する。つまり、偏光膜23bは、透過光を所定の偏光方向、具体的には第1方向の偏光である縦偏光に制限し、第1方向に直交する第2方向の偏光である横偏光を遮断する。この結果、画像表示装置22の画素区画22t又はセル領域22mから射出される映像光MLが元から偏光でなければ、縦偏光の映像光MLのみが偏光板23を透過する。遮光部材21の光透過領域A1を通過し、かつ、画像表示装置22の光透過領域22u又は光透過領域A2を通過した外界光OLのうち、横偏光は、偏光板23で遮断され、縦偏光は、偏光板23を通過する。
【0023】
画像選択変換部材24は、偏光板23の顔側に配置されている。画像選択変換部材24は、画素表示領域PA(
図5参照)に対応して映像光MLの偏向方向を選択的に変化させる。画像選択変換部材24は、光透過性を有する平板24a上に四角形の波長板24bを設けたものである。図示を省略するが、全体の画像選択変換部材24には、多数の波長板24bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、画像選択変換部材24を構成する全波長板24bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各波長板24bは、各繰返単位20aにおけるセル領域22m又は発光領域EAに対応する領域に形成されている。画像選択変換部材24のうち波長板24bが設けられていない光透過領域A3は、外界光OLを透過させ、波長板24bは、画像表示装置22のセル領域22mから射出され偏光板23を通過した第1方向の縦偏光の映像光MLを、第1方向と直交する第2方向の横偏光の映像光MLに変更する。波長板24bは、映像光MLの偏光方向を変更するため、1/2波長板であり、遅相軸又は光学軸を例えば+X方向と+Yの中間の45°方向に設定することにより、偏光面がY方向に平行な縦偏光の映像光MLを、偏光面がX方向に平行な横偏光の映像光MLに変換する。
【0024】
波長板24bの作成方法として、例えば平板24a上に特定種類の液晶を含む光配向材を一様に塗布し、偏光UV光を照射して配向性を整え、その後配向性を維持しつつ固化させる加熱温度及び加熱時間で処理することで光配向材を固定するといった手法が可能である。また、ナノインプリント等によってベース層を形成し、ベース層上に蒸着膜を繰り返し成膜することで結晶格子を形成することにより、波長板を得ることもできる。
【0025】
以上の説明では、偏光板23が縦偏光の映像光MLのみを透過させ、画像選択変換部材24が縦偏光の映像光MLを横偏光の映像光MLに選択的に変化又は変換するとしたが、偏光板23は、例えば横偏光の映像光MLのみを透過させるものであってもよい。この場合、画像選択変換部材24は、横偏光の映像光MLを縦偏光の映像光MLに選択的に変化又は変換する機能を有するものとする。後述する偏光分離液晶レンズ40については、偏光板23や画像選択変換部材24の機能変更に伴い、レンズとして機能する偏光方向を対応するものに変更する必要がある。
【0026】
図8は、偏光分離レンズ素子40aである偏光分離液晶レンズ40又は液晶レンズ41の構造や機能を説明する図である。
図8中で、上側α1は、液晶レンズ41の概念的な斜視図であり、下側α2は、液晶レンズ41のリタデーションの分布状態を例示するチャートである。液晶レンズ41は、特定偏光成分に対してレンズの役割をするレンズであり、外部からの制御によってレンズ機能すなわちパワーを変化させることができる。つまり、液晶レンズ41は、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有しその屈折力を輪帯部分RAごとに変化させることができる。液晶レンズ41は、縦偏光と横偏光とが入射した場合において、一方向の偏光に対して屈折率の分布により選択的にレンズとして作用し、他方向の偏光に対して略そのまま透過させて作用を及ぼさない。ここで、一方向の偏光は具体的には横偏光の映像光MLであり、他方向の偏光は具体的には縦偏光の外界光OLである。液晶レンズ41の屈折率の分布を全体的に増減させれば、液晶レンズ41の屈折力を増減させることもできる。
【0027】
偏光分離レンズ素子40aとしての液晶レンズ41は、レンズ部材41aと駆動回路41cとを備える。レンズ部材41aは、対向する2つの光透過基板43a,43bと、光透過基板43a,43bの内面側に設けられた2つの電極層44a,44bと、電極層44a,44bに挟まれた液晶層45とを備える。なお、図示を省略しているが、電極層44a,44bと液晶層45との間には、配向膜が配置され、液晶層45の初期配向状態を調整している。第1の電極層44aは、輪帯部分RAにおいて、XY面に沿って同心に配置される多数の電極47を含み、各電極47は、環状の透明電極である。多数の電極47は、互いに離間し、外側に位置する電極47ほど横幅が狭まっている。電極47の横幅は、レンズ部材41aによる屈折作用の精度に影響する。各電極47は、途中経路上では不図示の絶縁層によって絶縁された配線48を介して駆動回路41cに接続されている。第2の電極層44bは、XY面に平行に延びる共通電極であり、光透過基板43bに沿って一様に形成されている。多数の電極47には、異なる印加電圧V1~V7が印可され、複屈折又はリタデーションの分布状態を変化させる。液晶レンズ41に凸レンズの効果を持たせる場合、印加電圧V1を印加電圧V7よりも高くし、印加電圧V2~V6を電圧範囲V1~V7内で徐々に変化させた値に設定する。
【0028】
画像表示装置22から射出された映像光MLが画像選択変換部材24等を介して液晶レンズ41に入射する場合、つまりX方向に平行な偏光面を有する横偏光が液晶レンズ41に入射する場合について考える。横偏光に関しては、周辺部である最も外側に配置される電極47に印可される電圧が高くなってリタデーションが減少し、この領域で屈折率が相対的に低くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、周辺部の電極47を経て液晶レンズ41を通過した光は、波面が相対的に進む。一方、中央部である最も内側の電極47に印可される電圧が低くなってリタデーションが元に近い状態に維持され、この領域で屈折率が相対的に高くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、中央部の電極47を経て液晶レンズ41を通過する光は、波面が相対的に遅れる。よって、所定の焦点面FPに設定された像RIから液晶レンズ41に入射する発散状態の画像光ML0は、横偏光であり、液晶レンズ41を通過することで凸レンズとしての作用を受け、発散角が減少した状態の画像光MLPRとなる。画像光MLPRを逆に辿った仮想的な画像光MLPIは、焦点面FPよりも遠方の虚像位置からのものとなる。液晶レンズ41の焦点距離は、点光源からの光がコリメートされる場合の点光源から液晶レンズ41までの距離である。近似的には、レンズの公式により、焦点面FPから液晶レンズ41までの距離をAとし、液晶レンズ41から像面までの距離をBとし、液晶レンズ41の焦点距離をFとして
1/F=1/A+1/B
なる関係が成り立つ。ここで、焦点面FPから虚像位置までの距離Bは、液晶レンズ41から焦点面FPまでの距離Aの数倍から数10倍の距離に設定される。この距離比は、詳細な説明を省略するが、虚像の拡大率に相当するものとなる。以上において、印加電圧V1~V7の相対的比率を略維持して低電圧とした場合、中心と周辺でリタデーションの差が減少し、液晶レンズ41の正のパワーの絶対値が減少する。つまり、液晶レンズ41に高電圧VHを印可することで、パワーの絶対値を増加させることができ、液晶レンズ41に低電圧VLを印可することで、パワーの絶対値を減少させることができ、駆動回路41cによって液晶レンズ41を外部から調整可能な可変焦点レンズとして機能させることができる。
【0029】
液晶レンズ41を可変焦点レンズとして機能させることにより、焦点距離Fが変化するので、液晶レンズ41から像面位置又は虚像位置までの距離Bを自在に変更することができ、拡大率の調整が可能になる。また、装着者USの視力が近視等で偏っている場合であっても、焦点があった状態で虚像を観察するフォーカス調整が可能になる。つまり、個人の視度能力差(遠視、近視、乱視等)に合わせて像面位置又は虚像位置を微調整することができる。拡大率の調整やフォーカス調整は、装着者USが例えばユーザー端末88を操作することで実現される。つまり、虚像表示装置100A,100Bは、装着者USの操作によって拡大率やフォーカスに関するカスタマイズが可能になっている。
【0030】
液晶レンズ41は、横偏光又は縦偏光の映像光MLに対して結像作用を有するものであり、特定の偏光成分に対してレンズの役割をする液晶レンズということができ、特定の偏光成分に作用してレンズ機能を有する液晶レンズということもできる。液晶レンズ41を眼前に配置することで、液晶レンズ41のサイズに近いアイボックスを確保することができ、アイボックスを大きくでき画像の欠けを生じさせにくくできるだけでなく、小型ながらFOVを大きくした表示光学系103a,103bを実現することができる。さらに、画像表示装置22、偏光板23、画像選択変換部材24等を含む複合表示部材20と、液晶レンズ41とを組み合わせることにより、小型の光学系で大画面を表示することができる。ここで、大画面の表示とは、例えば2.5m前方に70インチ以上の虚像を形成する場合を意味する。
【0031】
液晶レンズ41は、可変焦点で使用する必要はなく、固定焦点で使用することができる。液晶レンズ41は、中心から周辺に向かってリタデーションが徐々に減少するものに限らず、例えば国際公開WO2009/072670号明細書に開示のようにフレネル型のレンズとすることもできる。液晶レンズ41は、超音波で液晶の配向方向を変更するものであってもよい。
【0032】
なお、遮光部材21等を通過した外界光OLについては、縦偏光であり、液晶レンズ41を通過しても、印加電圧V1~V7の値に関わらずリタデーションがXY面内で一様に保たれるので、位相差が与えられず、液晶レンズ41のレンズ作用の影響を受けない。つまり、外界光OLは、複合表示部材20及び偏光分離液晶レンズ40によって実質的な作用を受けることなく直進する。
【0033】
図9を参照して、画像表示装置22の発光素子ED又は発光層22eから射出された映像光MLは、偏光板23を経て縦偏光P1のみとなり、画像選択変換部材24を経て偏光方向が縦から横へと選択的に変化し、横偏光P2として射出される。画像選択変換部材24を通過した映像光MLは、横偏光に対して凸レンズとして機能する偏光分離液晶レンズ40の液晶レンズ41を経て虚像を形成する。装着者の眼EYには、透明ディスプレイである画像表示装置22に形成された画像が、画像表示装置22の後方に所望の拡大率の虚像として観察される。一方、外界光OLは、遮光部材21の光透過領域A1を通過し、画像表示装置22の平行平板状の光透過領域22u又は光透過領域A2を通過し、偏光板23を通過して偏光方向が縦に制限され、さらに、画像選択変換部材24の平行平板状の光透過領域A3を通過する。この際、外界光OLは、遮光部材21、画像表示装置22、偏光板23、及び画像選択変換部材24によってレンズ作用を受けない。装着者の眼EYには、通常の外界像が観察される。つまり、表示光学系103a,103bを介して外界像のシールスルー視が可能になる。
【0034】
図5A等を参照して、繰返区画22sは、光透過領域22uである外光視認画素X1と、画素区画22t又は画素表示領域PAである映像光射出画素X2とを組み合わせたものとして見ることができ、シースルー画像表示画素TXとも呼ぶ。シースルー画像表示画素TXは、外界光OLを局所的に遮断し、遮断した箇所で画素を形成するという観点で、背景を透視させる画素ということができる。遮光部材21によって遮られなかった外界光OLは、画像表示装置22のシースルー画像表示画素TXの一部である光透過領域22uを通過し、偏光板23によって偏光方向が制限され、画像選択変換部材24をそのまま通過し、液晶レンズ41も光線状態を維持して通過する。一方、シースルー画像表示画素TXの一部である画素表示領域PAから射出された映像光MLは、偏光板23によって偏光方向が制限され、画像選択変換部材24によって偏光方向が直交する方向に切り替えられ、液晶レンズ41を集光作用又はレンズ作用を受けつつ通過し、画素表示領域PAの虚像に変換される。
【0035】
図10は、
図3、9等に示す表示光学系103a,103bの変形例を示す。この場合、画像選択変換部材24において、セル領域22mに対応する領域単位ではなく、画素区画22tに対応する領域単位で、波長板24bが形成されている。この場合も、外界光OLは、画像選択変換部材24において波長板24bが存在しない光透過領域A3を通過し、レンズ作用を受けない。
【0036】
図11は、画像選択変換部材24等に関する変形例を説明する平面図である。この場合、偏光板323上に波長板24bを直接形成して、偏光板323と画像選択変換部材24とを一体化したものとなっている。つまり、図示の偏光板323は、
図3に示す偏光板23の機能と波長板24bの機能とを組み合わせた機能を有する。
【0037】
以上で説明した第1実施形態の虚像表示装置100A,100Bは、画像を表示する画素表示領域PAと、外界を視認可能にする光透過領域22uとを有する画像表示装置22と、画像表示装置22の外界側に配置され、画素表示領域PAへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、画像表示装置22の顔側に配置され、透過光を所定の偏光方向に制限する偏光板23と、偏光板23の顔側に配置され、画素表示領域PAに対応して映像光MLの偏向方向を選択的に変化させる波長板24bを有する画像選択変換部材24と、画像選択変換部材24の顔側に配置され、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子40aである偏光分離液晶レンズ40とを備える。
【0038】
上記虚像表示装置100A,100Bでは、外界から遮光部材21を通過した透過光が、偏光板23を経て所定の偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子40aすなわち偏光分離液晶レンズ40を屈折力の作用を受けずに通過し、画像表示装置22の画素表示領域PAから射出された映像光MLが、偏光板23を経て所定の偏光方向に制限され、画像選択変換部材24の波長板24bによって偏向方向を変換され、偏光分離レンズ素子40aすなわち偏光分離液晶レンズ40を屈折力の作用を受けて通過し、虚像を形成する。この場合、画像表示装置22や偏光分離レンズ素子40aを眼EYの近くに配置して虚像を形成することができ、画像表示装置22や偏光分離液晶レンズ40を大きく離すことなく画角を広くすることができる。特に偏光分離レンズ素子40aが単独レンズであることから、アイボックスを広くすることが容易である。
【0039】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第2実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0040】
図12を参照して、第2実施形態の虚像表示装置100A,100B又はHMD200では、複合表示部材20の顔側の近傍に、液晶レンズアレイ241からなる偏光分離レンズ素子240aが配置されている。偏光分離レンズ素子240aは、画像表示装置22を構成する各画素PE又はサブ画素PEaを個別に結像させる複数のレンズ要素49eを含む。個々のレンズ要素49eは、
図8に示す液晶レンズ41又は偏光分離液晶レンズ40と同様の構造を有する。
【0041】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
上記実施形態において、液晶レンズ41は、電極を要素とするものに限らず、フレネルレンズ状の第1基板と平板状の第2基板との間に液晶を充填し、液晶の配向をフレネルレンズ面に揃えることで屈折力を持たせたものであってもよい。
【0043】
液晶レンズ41は、円形に限らず特定方向に若干長い長円状の電極を有するものであってもよい。
【0044】
偏光分離レンズ素子40aとしての液晶レンズ41は、リング状の輪帯部分RAを含むものに限らない。偏光分離レンズ素子40aとして、特定の偏光に対してレンズ作用を持つ様々な構造を採用することができる。
【0045】
偏光板23は、例えば横偏光を透過させるようなものであってもよい。この場合、例えば画像選択変換部材24において、外界光OLが通過する画像表示装置22の光透過領域22uに対向する領域に波長板を形成し、画素区画22t又は画素表示領域PAに対向する領域で映像光MLを単に透過させる。この場合も、横偏光の映像光MLは、液晶レンズ41によってレンズ作用を受け、縦偏光の外界光OLは、液晶レンズ41によってレンズ作用を受けない。偏光板23は、例えばX方向とY方向との中間方向の斜め偏光を透過させるようなものであってもよい。この場合、例えば画像選択変換部材24に形成する波長板は、光軸AXの周りで姿勢を回転させて遅相軸が傾斜した状態とされる。また、液晶レンズ41も、光軸AXの周りで姿勢を同様に回転させて、屈折力が生じる方向を映像光MLの偏向方向と一致させる。
【0046】
遮光部材21の遮光層21bは、画素区画22tに対応する領域単位ではなく、セル領域22mに対応する領域単位で形成されてもよい。
【0047】
図13に示すように、複合表示部材20において、画像表示装置22をその画素配列と同様の発光配列を有するバックライト422に置き換え、偏光板23を除くとともに、バックライト422の発光配列に対応する透明電極を有する例えばTNタイプの液晶パネル52と、横偏光の偏光板51と、縦偏光の偏光板53とを光路上に配置する。この場合、自発光型ではなく光変調型の表示素子を用いることになる。複合表示部材20は、ノーマリオン又はノーマリホワイトで動作し、バックライト422からの照明光が液晶パネル52等で調光されて縦偏光の映像光MLとして射出され、画像選択変換部材24によって横偏光とされ、液晶レンズ41によってレンズ作用を受ける。なお、液晶パネル52の画素電極に大きな電圧が印加されると、横偏光の映像光MLのみとなって偏光板53で遮断され、映像光MLは、液晶レンズ41に入射しない。外界光OLについては、液晶パネル52の画素電極に印加される電圧に関わらず偏光板53をロスなく通過し、縦偏光として液晶レンズ41に入射するのでレンズ作用を受けない。
【0048】
以上では、HMD200が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100A,100Bは、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0049】
具体的な態様における虚像表示装置は、画像を表示する画素表示領域と、外界を視認可能にする光透過領域とを有する画像表示装置と、画像表示装置の外界側に配置され、画素表示領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、画像表示装置の顔側に配置され、透過光を所定の偏光方向に制限する偏光板と、偏光板の顔側に配置され、画素表示領域に対応して映像光の偏向方向を選択的に変化させる波長板を有する画像選択変換部材と、画像選択変換部材の顔側に配置され、映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子とを備える。
【0050】
上記虚像表示装置では、外界から遮光部材を通過した透過光が、偏光板を経て所定の偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けずに通過し、画像表示装置の画素表示領域から射出された映像光が、偏光板を経て所定の偏光方向に制限され、画像選択変換部材の波長板によって偏向方向を変換され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けて通過し虚像を形成する。この場合、画像表示装置や偏光分離レンズ素子を眼の近くに配置して虚像を形成することができ、画像表示装置や偏光分離レンズ素子を大きく離すことなく画角を広くすることができる。
【0051】
具体的な態様における虚像表示装置において、画素表示領域は、画素又はサブ画素に対応する発光領域であり、波長板は、発光領域に対応する領域に配置される。これにより、発光領域から顔側に射出された映像光を虚像の形成に用いつつ発光領域を通過した外界光の遮断を抑えることができる。
【0052】
具体的な態様における虚像表示装置において、遮光部材は、画素表示領域の画素又はサブ画素に対応する領域に配置される。遮光部材により、この位置に入射した外界光が映像光の経路に入り込んで迷光となることを回避できる。
【0053】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光板は、画像表示装置から映像光と、遮光部材を通過した外界光とを第1方向の偏光に制限して通過させ、画像選択変換部材は、偏光板を通過した映像光を第1方向に対して直交する第2方向の偏光に変換する。これにより、映像光と外界光との干渉を抑えることができる。
【0054】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離レンズ素子は、画像表示装置を構成する複数の画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである。単独レンズとすることにより、アイボックスを広くすることが容易になる。
【0055】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離レンズ素子は、画像表示装置を構成する各画素又はサブ画素を個別に結像させる複数の要素レンズを含む偏光分離液晶レンズである。複数の要素レンズは、画像表示装置の近傍に配置されるので、虚像表示装置を薄型にすることが容易になる。
【0056】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離液晶レンズは、同心に配置された複数の円形の輪帯部分を有する。
【0057】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離液晶レンズは、印加電圧に応じて輪帯部分の屈折力が変化する。液晶レンズによって投影距離の調整や視度の調整が可能になり、画像光の偏光成分に対して迅速な焦点調節が可能になる。
【0058】
具体的な態様における頭部装着型表示装置は、上述した虚像表示装置を備える第1装置と、上述した虚像表示装置を備える第2装置と、第1装置と第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置とを備える。
【符号の説明】
【0059】
20…複合表示部材、20a…繰返単位、21…遮光部材、21b…遮光層、22…画像表示装置、22d…駆動素子、22e…発光層、22m…セル領域、22q…回路領域、22r,22g,22b…発光層、22s…繰返区画、22t…画素区画、22u…光透過領域、23…偏光板、23b…偏光膜、24…画像選択変換部材、24b…波長板、40…偏光分離液晶レンズ、40a…偏光分離レンズ素子、41…液晶レンズ、41a…レンズ部材、41c…駆動回路、49e…レンズ要素、51…偏光板、52…液晶パネル、53…偏光板、88…ユーザー端末、100A,100B,200…虚像表示装置、100C…テンプル、102…駆動装置、102a,102b…表示駆動部、103a,103b…表示光学系、106…支持装置、200…頭部装着型表示装置(HMD)、201…双眼型表示装置、240…偏光分離液晶レンズ、A1,A2,A3…光透過領域、AX…光軸、EA…発光領域、ED…発光素子、EY…眼、ML…映像光、OL…外界光、P1…縦偏光、P2…横偏光、PA…画素表示領域、PE…画素、PEa…サブ画素、RA…輪帯部分