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特開2024-82378動作解析システム、動作解析方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082378
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】動作解析システム、動作解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240613BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A63B69/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196179
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 英祐
(72)【発明者】
【氏名】小田島 正
(72)【発明者】
【氏名】中平 祐子
(72)【発明者】
【氏名】西垣 英一
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB14
(57)【要約】
【課題】ユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提供すること。
【解決手段】動作解析システムは、有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて筋肉のみを動作させる筋肉動作部と、有限要素シミュレータ上で、筋肉動作部により筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する位置情報算出部と、位置情報算出部により算出された位置情報に基づいて、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する動作提供部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させる筋肉動作部と、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉動作部により筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部により算出された位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する動作提供部と、
を備える、動作解析システム。
【請求項2】
請求項1記載の動作解析システムであって、
前記動作提供部は、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作をユーザに対し表示する表示部を有する、動作解析システム。
【請求項3】
請求項1記載の動作解析システムであって、
前記動作提供部は、前記各関節の時系列の軌道を再現する動作を行うようにユーザの動作を補助する装具又はティーチングロボットを有する、動作解析システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の動作解析システムであって、
前記有限要素シミュレータは、
目標角度入力部には、前記人体モデルに動作させたい各関節の目標角度が入力される目標角度入力部と、
前記目標角度入力部からの目標角度と、角度計算部からの関節角度と、の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差算出部からの偏差に基づいてPID制御を行い、姿勢制御用の各筋の操作量を算出するPID筋制御部と、
前記PID筋制御部からの各筋の操作量に基づいて、各筋の筋活性度を算出する筋活性度算出部と、
筋ソリッドモデル部の人体モデルからフィードバックされる節点の座標に基づいて、前記人体モデルの各関節の関節角度を算出する前記角度計算部と、
を有する筋コントローラ部と、
前記人体モデルと、前記筋活性度算出部からの各筋の筋活性度に基づいて、前記人体モデルに対して有限要素解析を行い、前記有限要素解析の解析結果に基づいて、前記人体モデルの各筋を動作させるモデル解析部と、を有する筋ソリッドモデル部と、
を備える、
動作解析システム。
【請求項5】
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させるステップと、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出するステップと、
前記位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供するステップと、
を含む、動作解析方法。
【請求項6】
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させる処理と、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する処理と、
前記位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人の動作を解析する動作解析システム、動作解析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体モデルを、骨格データと筋データとに基づいて、一般の人体モデルにユーザのパラメータを反映させて初期ユーザモデルを構築する筋状態推定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6997228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記筋状態推定装置は初期ユーザモデルを構築するだけであり、また、機械学習などを用いる装置も想定されるが、いずれもユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提供するものではない。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提供する動作解析システム、動作解析方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本開示の一態様は、
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させる筋肉動作部と、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉動作部により筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部により算出された位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する動作提供部と、
を備える、動作解析システム
である。
この一態様において、前記動作提供部は、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作をユーザに対し表示する表示部を有していてもよい。
この一態様において、前記動作提供部は、前記各関節の時系列の軌道を再現する動作を行うようにユーザの動作を補助する装具又はティーチングロボットを有していてもよい。
この一態様において、
前記有限要素シミュレータは、
目標角度入力部には、前記人体モデルに動作させたい各関節の目標角度が入力される目標角度入力部と、
前記目標角度入力部からの目標角度と、角度計算部からの関節角度と、の偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差算出部からの偏差に基づいてPID制御を行い、姿勢制御用の各筋の操作量を算出するPID筋制御部と、
前記PID筋制御部からの各筋の操作量に基づいて、各筋の筋活性度を算出する筋活性度算出部と、
筋ソリッドモデル部の人体モデルからフィードバックされる節点の座標に基づいて、前記人体モデルの各関節の関節角度を算出する前記角度計算部と、
を有する筋コントローラ部と、
前記人体モデルと、前記筋活性度算出部からの各筋の筋活性度に基づいて、前記人体モデルに対して有限要素解析を行い、前記有限要素解析の解析結果に基づいて、前記人体モデルの各筋を動作させるモデル解析部と、を有する筋ソリッドモデル部と、
を備えていてもよい。
上記目的を達成するための本開示の一態様は、
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させるステップと、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出するステップと、
前記位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供するステップと、
を含む、動作解析方法
である。
上記目的を達成するための本開示の一態様は、
有限要素シミュレータの人体モデル上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させる処理と、
前記有限要素シミュレータ上で、前記筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する処理と、
前記位置情報に基づいて、前記各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム
である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提供する動作解析システム、動作解析方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る動作解析システムの概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る有限要素シミュレータの概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る動作解析方法のフローを示すフローチャートである。
図4】有限要素シミュレータ上で座位姿勢の人体モデルの腸腰筋のみを収縮させた際の股関節角度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る動作解析システムの概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施形態に係る動作解析システム1は、ユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提示するものである。
【0010】
本実施形態に係る動作解析システム1は、有限要素シミュレータ2と、筋肉動作部3と、位置情報算出部4と、動作提供部5と、を備えている。
【0011】
動作解析システム1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの内部メモリと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージデバイスと、ディスプレイなどの周辺機器を接続するための入出力I/Fと、装置外部の機器と通信を行う通信I/Fと、を備えた通常のコンピュータのハードウェア構成を有する。
【0012】
本実施形態に係る有限要素シミュレータ2は、人体モデルを能動的に動作させるようにしたものである。具体的には、本実施形態に係る有限要素シミュレータ2は、後述の筋コントローラを備えることで、人体モデルを能動的に動作させている。
【0013】
なお、従来の人体モデルに関しては、特許第3760793号などに開示されている。
【0014】
図2は、本実施形態に係る有限要素シミュレータの概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施形態に係る有限要素シミュレータ2は、人体モデル222の筋肉を制御する筋コントロール部21と、筋ソリッドモデル部22と、を備えている。
【0015】
筋コントロール部21は、目標角度入力部211と、偏差算出部212と、PID筋制御部213と、筋活性度算出部214と、角度計算部215と、を有している。
【0016】
目標角度入力部211には、人体モデル222に動作させたい各関節の目標角度の時間変化が入力される。目標角度入力部211には、各関節の動作に応じた各関節の目標角度が時刻歴として入力されてもよい。
【0017】
例えば、目標角度入力部211には、膝関節が0秒時には180度、1秒時には90度、・・・などとして入力される。入力値は、初期角度からの変化角度の時刻歴が入力されてもよい。上記目標角度の時刻歴は、例えば、トレーニング時のユーザの姿勢(各関節の角度変化)などに応じて設定される。目標角度入力部211は、入力された目標角度を偏差算出部212に出力する。
【0018】
偏差算出部212は、目標角度入力部211からの目標角度と、角度計算部215からの関節角度と、の偏差を算出する。偏差算出部212は、算出した偏差をPID筋制御部213に出力する。
【0019】
PID筋制御部213は、偏差算出部212からの偏差に基づいてPID(Proportional-Integral-Differential)制御を行い、姿勢制御用の各筋の操作量を算出する。PID筋制御部213は、算出した各筋の操作量を筋活性度算出部214に出力する。
【0020】
筋活性度算出部214は、PID筋制御部213からの各筋の操作量に基づいて、各筋の筋活性度を算出する。筋活性度算出部214は、算出した筋活性度を、筋ソリッドモデル部22のモデル解析部221に出力する。
【0021】
角度計算部215は、後述の如く筋ソリッドモデル部22の人体モデル222からフィードバックされる節点の座標に基づいて、人体モデル222の各関節の関節角度を算出する。角度計算部215は、算出した各関節の関節角度を偏差算出部212に出力する。
【0022】
筋ソリッドモデル部22は、モデル解析部221と、人体モデル222と、を有している。
【0023】
モデル解析部221は、筋活性度算出部214からの各筋の筋活性度に基づいて、人体モデル222に対して有限要素解析を行う。モデル解析部221は、有限要素解析の解析結果に基づいて、人体モデル222の各筋を動作させる。人体モデル222は、上述の如く、その動作結果である節点の座標を筋コントロール部21の角度計算部215に出力する。
【0024】
節点の座標は、例えば、人体モデル222の頭部、胸部、骨盤部、など各部位の下部の節点、上部の節点、前部の節点の各3点である。具体的な節点位置を下部、上部、前部の順に、以下に示す。
【0025】
・頭部:頭部重心、頭頂点、眉間
・胸部:第12胸椎、第1胸椎、胸骨柄
・骨盤部:尾骨先端、仙骨底、仙骨岬角
・大腿部:大腿骨 顆間窩、大腿骨頭 中心、大腿骨 膝蓋面
・下腿部:脛骨 距腿関節窩、脛骨 顆間隆起、脛骨粗面
・足部:踵骨隆起 内側突起、距骨滑車、第一趾 先端
・肩甲部:肩甲骨 下角、肩甲骨 上角、肩甲骨 上角 前部
・上腕骨:上腕骨滑車、上腕骨頭 中心、上腕骨 小結節
・手部:舟状骨 背側 遠位、舟状骨 背側 近位、舟状骨 掌側 遠位
【0026】
ところで、人間の膝などの関節は骨と骨とが滑るように動くのに対して、従来の人体モデルの関節は計算負荷低減のために単関節ジョイントで構成されている。また、筋のみで靭帯も再現できていない。このため、従来の人体モデルの手先、足先位置軌道は、実際の人の軌道と比較して、全く異なるものになり得る。
【0027】
さらに、人の関節が動作する際に、筋や靭帯などの組織間の摩擦のある中で、筋が収縮し、その断面積も変化する。一方、従来の人体モデルでは、筋の付着部位までは再現されているが、組織内にある複数の筋が短縮するだけで筋断面積は変化せず、組織間の摩擦も発生しない。このため、従来の人体モデルでは、人が関節を動かす際の筋収縮力を正しく見積もれていない。
【0028】
これに対し、本実施形態に係る人体モデル222は、人と同様に、骨格構造を有し骨格構造に筋肉及び靭帯が付着されている。組織のひずみや応力分布が可視化できる。筋同士の接触も再現できる。そして、人体モデル222において、筋肉が収縮した際の筋肉の断面積の変化が再現され、かつ、その変化時の筋、皮膚及び靭帯の組織間の摩擦が反映されるように、人体モデル222は構成されている。
【0029】
筋肉動作部3は、上述した有限要素シミュレータ2の人体モデル222上で、ユーザが動かしたい筋肉(以下、目標筋肉と称す)のみの筋出力を上げて目標筋肉のみを動作させる。なお、筋肉動作部3は、有限要素シミュレータ2の人体モデル222上で、目標筋肉のみを収縮させてもよい。
【0030】
目標筋肉の情報(大腰筋、腸骨筋など)は、例えば、入力装置などを介して、筋肉動作部3に設定される。
【0031】
例えば、筋肉動作部3は、有限要素シミュレータ2の人体モデル222に対し、目標筋肉に100%一定の筋活性度を、その他の筋肉には0%一定の筋活性度を入力することで、目標筋肉のみの筋出力を上げて目標筋肉のみを動作させる。
【0032】
位置情報算出部4は、有限要素シミュレータ2上で目標筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する。位置情報算出部4は、目標筋肉を動作させたときに各関節、手先及び足先が動作した軌道を時系列の位置情報として算出してもよい。位置情報算出部4は、算出した位置情報を動作提供部5に出力する。
【0033】
動作提供部5は、位置情報算出部4からの位置情報に基づいて、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する。
【0034】
動作提供部5は、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作をユーザに対し表示する表示部51を有していてもよい。表示部51は、例えば、関節、手先、足先などの軌道を表示する。ユーザは、表示部51に表示された関節、手先、足先などの軌道を見ながら、動作することで、目標筋肉のみを動作させて、トレーニングを行うことができる。
【0035】
また、動作提供部5は、各関節の時系列の軌道を再現する動作を行うようにユーザの動作を補助する装具52又はティーチングロボット53を有していてもよい。装具52は、ユーザに装着され、その軌道の動作を強制的に行うように構成されている。
【0036】
また、ユーザがティーチングロボット53を装着し、ティーチングロボット53がその軌道の動作を行うことで、ユーザがその動作に従動する。これにより、ユーザは、装具52あるいはティーチングロボット53に従って、各関節の時系列の軌道を再現する動作を行うこととなる。
【0037】
続いて、本実施形態に係る動作解析方法のフローについて詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る動作解析方法のフローを示すフローチャートである。まず、筋肉動作部3に目標筋肉が設定される(ステップS101)。
【0038】
有限要素シミュレータ2の人体モデル222は、目標角度入力部211に入力された各関節の目標角度の時間変化又は目標筋肉の筋活性度に応じて動作する。このとき、筋肉動作部3は、有限要素シミュレータ2の人体モデル222上で、目標筋肉のみの筋出力を上げて目標筋肉を動作させる(ステップS102)。
【0039】
位置情報算出部4は、有限要素シミュレータ2上で目標筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する(ステップS103)。
【0040】
動作提供部5は、位置情報算出部4からの位置情報に基づいて、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する(ステップS104)。
【0041】
次に、有限要素シミュレータ2上で座位姿勢の人体モデル222の腸腰筋(大腰筋及び腸骨筋)のみの筋出力を上げて腸腰筋のみを収縮させるシミュレーションを行った結果について説明する。図4は、上述の如く、有限要素シミュレータ2上で座位姿勢の人体モデル222の腸腰筋のみを収縮させた際の股関節角度の時間変化を示す図である。
【0042】
有限要素シミュレータ2上で人体モデル222の腸腰筋を収縮させると、図4に示す如く、屈曲方向の股関節角度が徐々に大きくなると共に内転方向の股関節角度も徐々に大きくなっている。
【0043】
これにより、股関節がただまっすぐに屈曲するのではなく内側に曲がりながら屈曲することが分かる。したがって、ユーザが股関節をただまっすぐに屈曲させた場合、腸腰筋だけでなく、他の筋肉を動員して動作することになる。
【0044】
本実施形態に係る動作解析システム1によれば、例えば、上述のように腸腰筋などの深部筋を目標筋肉として、筋肉動作部3に設定すれば、筋肉動作部3は、有限要素シミュレータ2の人体モデル222上で、その深部筋のみの筋出力を上げて深部筋を動作させる。位置情報算出部4は、有限要素シミュレータ2上で深部筋を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する。
【0045】
動作提供部5は、位置情報算出部4からの位置情報に基づいて、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する。ユーザは、動作提供部5により提供される動作に単に従うだけで、特に、鍛えにくい深部筋を効率的に鍛えることができる。
【0046】
以上、本実施形態に係る動作解析システム1は、有限要素シミュレータ2の人体モデル222上で、ユーザが動かしたい筋肉のみの筋出力を上げて該筋肉のみを動作させる筋肉動作部3と、有限要素シミュレータ2上で、筋肉動作部3により筋肉を動作させたときに各関節が動作した軌道を時系列の位置情報として算出する位置情報算出部4と、位置情報算出部4により算出された位置情報に基づいて、各関節の時系列の軌道を再現するユーザの動作を提供する動作提供部5と、備える。これにより、ユーザに対し特定の筋肉を鍛える方法を提供することができる。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0048】
本開示は、例えば、図3に示す処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0049】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0050】
プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0051】
上述した各実施形態に係る動作解析システム1を構成する各部は、プログラムにより実現するだけでなく、その一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 動作解析システム、2 有限要素シミュレータ、3 筋肉動作部、4 位置情報算出部、5 動作提供部、21 筋コントロール部、22 筋ソリッドモデル部、51 表示部、52 装具、53 ティーチングロボット、211 目標角度入力部、212 偏差算出部、213 PID筋制御部、214 筋活性度算出部、215 角度計算部、221 モデル解析部、222 人体モデル
図1
図2
図3
図4