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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082379
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】板状部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/04 20060101AFI20240613BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F16B21/04 J
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196180
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 昌倫
【テーマコード(参考)】
3D023
3J037
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE35
3J037AA01
3J037CA06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で取付作業性および解体作業性に優れるとともに、リサイクル性に優れる板状部材の取付構造を提供する。
【解決手段】第1部材20は、棒状の取付部本体22と、取付部本体22から突出するリブ状の被係止部25とを有する取付部21を備え、第2部材30はボード側取付孔33を備え、締結部材40は、締結部材本体41と、締結部材本体41に貫通形成された締結部材側取付孔42とを備え、締結部材側取付孔42の内周面に、内側に向けて延びる係止部45が設けられ、係止部45は係止刃46を有しており、取付部21をボード側取付孔33および締結部材側取付孔42に挿通させ、係止部45を隣り合う被係止部25の間に挿入させた状態で、締結部材40を取付部21の周方向に回転させて係止刃46を被係止部25の側面に食い込ませる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して板状の第2部材を締結部材により取り付ける板状部材の取付構造であって、
前記第1部材はその表面から立ち上がる取付部を備え、前記取付部は、棒状の取付部本体と、前記取付部本体の外面からその径方向に放射状に突出するリブ状の複数の被係止部とを有しており、
前記第2部材は前記取付部を挿通するボード側取付孔を備え、
前記締結部材は、前記第2部材のうち前記第1部材と反対側の反対面に重畳される締結部材本体と、前記締結部材本体に貫通形成され前記ボード側取付孔とともに前記取付部を挿通する締結部材側取付孔と、を備え、
前記締結部材側取付孔の内周面に、当該締結部材側取付孔の内側に向けて延びて隣り合う前記被係止部の間に挿入可能な係止部が設けられ、前記係止部は、前記締結部材側取付孔の周方向に突出する係止刃を有しており、
前記取付部を前記ボード側取付孔および前記締結部材側取付孔に挿通させ、前記係止部を隣り合う前記被係止部の間に挿入させた状態で、前記締結部材を前記取付部の周方向に回転させて前記係止刃を前記被係止部の側面に食い込ませることにより、前記第2部材が前記締結部材を介して前記第1部材に対して取り付けられる板状部材の取付構造。
【請求項2】
前記第2部材のうち前記第1部材と対向する対向面は前記第1部材から離隔した位置に配置され、
前記締結部材は、前記締結部材本体から前記第1部材側に延びるとともに前記第2部材の前記対向面に沿う方向に屈曲する挟持アームを備え、
前記第2部材は、前記挟持アームを挿通可能な挟持アーム用孔部を有し、
前記挟持アームを前記挟持アーム用孔部に挿通させて前記締結部材を前記取付部の周方向に回転させることで、前記第2部材が前記締結部材本体と前記挟持アームとの間に挟持される請求項1に記載の板状部材の取付構造。
【請求項3】
前記係止刃が前記被係止部に食い込んだ締結状態において、前記第2部材の前記対向面のうち前記挟持アームが重畳される部分に、前記対向面から突出する係止突部が設けられ、
前記締結状態の前記挟持アームのうち前記係止突部に対応する位置に、前記係止突部を嵌め入れる係止凹部が形成されている請求項2に記載の板状部材の取付構造。
【請求項4】
前記被係止部は前記取付部の基端側に前記取付部本体の径方向の外側に広がる支持部を備え、前記第2部材は前記支持部により前記第1部材側から離隔した位置に支持される請求項2または請求項3に記載の板状部材の取付構造。
【請求項5】
前記締結部材本体の外周面に、径方向の外側に突出して前記締結部材を回転操作するための操作部が設けられている請求項1または請求項2に記載の板状部材の取付構造。
【請求項6】
前記締結部材の外周面に、径方向の内側に窪んで前記締結部材を回転操作する治具を引っ掛けるための操作凹部が設けられている請求項1または請求項2に記載の板状部材の取付構造。
【請求項7】
前記第1部材および前記第2部材は、乗物用ドアの乗物室内側に設けられるドアトリムを構成するボード部材である、請求項1または請求項2に記載の板状部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、板状部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、板状の部材を他の部材に対して超音波溶着により取り付ける構造が知られている。例えば特許文献1には、自動車用ドアトリムにおいて、ドアトリムロアの裏面に立設した溶着用ボスをドアトリムアッパーの取付孔内に挿入し、溶着用ボスの先端部分を超音波により潰して、ドアトリムロアとドアトリムアッパとを一体化させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-262041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように2つの部材を溶着により一体化させる構成では、溶着治具や溶着設備が必要となり、電力を要して環境負荷が大きくなるとともに、設備費がかかり、コスト高の要因となっていた。また、部品交換や廃棄による解体分別の際、一旦潰したボス部を元の状態に戻すことができず、溶着部分を破壊する必要があるため、リサイクル性の向上が望まれていた。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易な構成で取付作業性および解体作業性に優れるとともに、リサイクル性に優れる板状部材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて完成された本明細書に開示の技術は、第1部材に対して板状の第2部材を締結部材により取り付ける板状部材の取付構造であって、前記第1部材はその表面から立ち上がる取付部を備え、前記取付部は、棒状の取付部本体と、前記取付部本体の外面からその径方向に放射状に突出するリブ状の複数の被係止部とを有しており、前記第2部材は前記取付部を挿通するボード側取付孔を備え、前記締結部材は、前記第2部材のうち前記第1部材と反対側の反対面に重畳される締結部材本体と、前記締結部材本体に貫通形成され前記ボード側取付孔とともに前記取付部を挿通する締結部材側取付孔と、を備え、前記締結部材側取付孔の内周面に、当該締結部材側取付孔の内側に向けて延びて隣り合う前記被係止部の間に挿入可能な係止部が設けられ、前記係止部は、前記締結部材側取付孔の周方向に突出する係止刃を有しており、前記取付部を前記ボード側取付孔および前記締結部材側取付孔に挿通させ、前記係止部を隣り合う前記被係止部の間に挿入させた状態で、前記締結部材を前記取付部の周方向に回転させて前記係止刃を前記被係止部の側面に食い込ませることにより、前記第2部材が前記締結部材を介して前記第1部材に対して取り付けられる。
【0007】
上記構成によれば、締結部材を利用して第1部材に対して第2部材を取り付けることができる。従って、2つの部材を溶着により一体化させる従来の構成と比較して、溶着治具や溶着設備が不要となり、環境負荷が小さくなるとともに、設備費を削減することができる。また、部品交換や廃棄による解体分別の際には、締結部材を締結時の回転方向と反対方向に回転させ、被係止部に食い込んだ係止刃を抜くだけで、簡単に分解することができる。つまり、簡易な構成で取付作業性および解体作業性に優れ、かつ、リサイクル性に優れる板状部材の取付構造を提供することができる。
【0008】
なお、本願で言う板状の第2部材(板状部材)とは、第2部材(板状部材)が全体として板状のものは勿論であるが、全体として板状でない部材であっても少なくともボード側取付孔周辺で板状部が構成されていれば良い。
【0009】
前記第2部材のうち前記第1部材と対向する対向面は前記第1部材から離隔した位置に配置され、前記締結部材は、前記締結部材本体から前記第1部材側に延びるとともに前記第2部材の前記対向面に沿う方向に屈曲する挟持アームを備え、前記第2部材は、前記挟持アームを挿通可能な挟持アーム用孔部を有し、前記挟持アームを前記挟持アーム用孔部に挿通させて前記締結部材を前記取付部の周方向に回転させることで、前記第2部材が前記締結部材本体と前記挟持アームとの間に挟持されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、締結部材を回転操作する際に、挟持アームによって締結部材の第2部材に対する姿勢を正規の姿勢に案内することができる。
【0011】
前記係止刃が前記被係止部に食い込んだ締結状態において、前記第2部材の前記対向面のうち前記挟持アームが重畳される部分に、前記対向面から突出する係止突部が設けられ、前記締結状態の前記挟持アームのうち前記係止突部に対応する位置に、前記係止突部を嵌め入れる係止凹部が形成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、係止刃が被係止部の奥方の正規の位置まで食い込み、締結部材が正規の締結状態に到達した場合に、係止凹部に係止突部が嵌め入れられるとともに、係止突部に乗り上げていた挟持アームが弾性復帰する。これにより、作業者は締結状態に到達した接度感を得ることができる。また、係止突部と係止凹部の嵌合により、締結部材の回り止めを図ることができる。
【0013】
前記被係止部は前記取付部の基端側に前記取付部本体の径方向の外側に広がる支持部を備え、前記第2部材は前記支持部により前記第1部材側から離隔した位置に支持されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、被係止部に支持部を一体に設けることにより、第2部材を第1部材から離隔した位置に支持する支持部を別途設ける必要がなく、全体を簡易な構成とすることができる。
【0015】
前記締結部材本体の外周面に、径方向の外側に突出して前記締結部材を回転操作するための操作部が設けられていてもよい。
【0016】
締結部材に径方向の外側に突出する操作部を設けることにより、締結部材の締結作業が簡単になる。
【0017】
前記締結部材の外周面に、径方向の内側に窪んで前記締結部材を回転操作する治具を引っ掛けるための操作凹部が設けられていてもよい。
【0018】
スペース等の事情により、締結部材に径方向の外側に突出する操作部を設けられない場合がある。上記構成によれば、締結部材に操作凹部を設けることにより、治具を利用して締結作業を簡単に行うことが可能となる。
【0019】
前記第1部材および前記第2部材は、乗物用ドアの乗物室内側に設けられるドアトリムを構成するボード部材であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に開示される技術によれば、簡易な構成で取付作業性および解体作業性に優れるとともに、リサイクル性に優れる板状部材の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係るドアトリムの分解斜視図
図2】取付構造部分を斜め車室外側から視た分解斜視図
図3】取付構造部分を斜め車室内側から視た分解斜視図
図4】取付ボスをアッパーボードのフランジ部に挿通させた状態を示す平面図
図5】締結部材の平面図
図6】締結部材の斜視図
図7】締結部材の一部拡大斜視図
図8】ロアボードにアッパーボードを取り付けた状態(取付ボスに締結部材を締結した状態)の側面図
図9】取付ボスをフランジ部および締結部材に挿通させた状態の斜視図
図10】取付ボスをフランジ部および締結部材に挿通させた状態の平面図
図11】取付ボスをフランジ部および締結部材に挿通させた状態の図8のA-A線に相当する断面図
図12】取付ボスをフランジ部および締結部材に挿通させた状態の図8のB-B線に相当する断面図
図13】取付ボスに締結部材を締結した状態の平面図
図14】取付ボスに締結部材を締結した状態の図8のA-A断面図
図15】取付ボスに締結部材を締結した状態の図8のB-B断面図
図16】他の実施形態の締結部材の斜視図
図17】他の実施形態の締結部材の一部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態を図1から図15によって説明する。本実施形態では、自動車等の車両用のドアトリム10において、複数の板状部材同士を連結させる際の取付構造1について例示する。なお、各図において、IN及びOUTの矢印は車室内(乗物室内)側及び車室外(乗物室外)側をそれぞれ示す。また、便宜上、取付構造1を車室外側から視た図を平面図と称することとする。さらに、複数の同一部材については、一の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
【0023】
図1は、本実施形態のドアトリム10の分解斜視図であって、ドアトリム10の上縁部を構成するアッパーボード30をロアボード20から取り外した状態を図示している。ドアトリム10は、車体を構成するドアインナパネルの車室内側に例えばクリップなどを介して取り付けられるものであって、アームレスト15、インサイドドアハンドル16、ドアポケット17、スピーカ18、などを備えている。
【0024】
ドアトリム10はトリムボード11を主体として構成されており、トリムボード11の上部を構成するアッパーボード30と、アッパーボード30の下部を構成するロアボード20とを備え、その他、ポケットボード12等、複数のボード部材が連結された構成とされている。トリムボード11は、合成樹脂材料、あるいは、合成樹脂材料に天然繊維(ケナフなど)を混合した材料等によって形成されている。
【0025】
このうちアッパーボード30は、ドアトリム10の室内意匠面を構成する本体部31と、本体部31の下端部からフランジ状に延出された複数のフランジ部32と、を備えて構成されている。フランジ部32は、ロアボード20にアッパーボード30を取り付けるための部分を構成している。具体的には、この取付構造1は、フランジ部32に貫通形成されたボード側取付孔33にロアボード20の取付ボス21を車室内側から挿通し、後述する締結部材40を締結することにより互いに固定する構造とされている。
【0026】
次に、取付構造1について詳細に説明する。上述したように、ロアボード(第1部材の一例)20は、その車室外面から立ち上がる複数の取付ボス(取付部の一例)21を備えている。取付ボス21は、例えば図2から図4に示すように、細長い円筒状のボス本体(取付部本体の一例)22と、ボス本体22の外面からその径方向に放射状に突出する複数のリブ(被係止部の一例)25とを有している。本実施形態において、リブ25は、等間隔で6つ設けられている(図4参照)。なお、便宜上、ロアボード20が構成する板面を省略し、板面から突出する取付ボス21のみを図示する場合がある。
【0027】
図2および図3に示すように、複数のリブ25は、取付ボス21の先端側においては、ボス本体22から同寸法で突出している。一方、取付ボス21の基端側(ロアボード20側、先端の反対側)においては、基端側ほどボス本体22の径方向の外側に広がる略台形状とされている。
【0028】
以下、リブ25のうち、取付ボス21の先端側の同寸法に突出した部分をリブ先端側部26とし、基端側の略台形状の部分をリブ基端側部27と称することとする。また取付ボス21のうち、リブ先端側部26が設けられた部分をボス先端側部23とし、リブ基端側部27が設けられた部分をボス基端側部24と称することとする。
【0029】
リブ基端側部27のうち、リブ先端側部26との境界部に形成される段差状の部分は、アッパーボード30をロアボード20側(車室内側)から支持する支持部28とされる。つまりアッパーボード30のフランジ部32の車室内面30B(対向面の一例)は、支持部28により、ロアボード20の車室外面20Aから離隔した位置に配置される(図8参照)。
【0030】
一方、アッパーボード(第2部材の一例)30のフランジ部32には、例えば図2から図4に示すように、上述した取付ボス21のボス先端側部23を挿通するためのボード側取付孔33が設けられている。なお各図において、便宜上、フランジ部32の一部を二点破線の円盤状に示すこととする。ボード側取付孔33は、ボス先端側部23の外径と同等あるいは僅かに大きい寸法に設定されている。アッパーボード30は、車室外側からロアボード20に近づけ、ボード側取付孔33内に取付ボス21のボス先端側部23を挿通させ、ボス先端側部23に締結部材40を締結することにより、ロアボード20に対して一体に取り付けられる。
【0031】
締結部材40は例えば金属製とされ、図5から図7に示すように、アッパーボード30の車室外面(反対面の一例)30Aに重畳される締結部材本体41と、締結部材本体41に貫通形成されボード側取付孔33と連通するとともに取付ボス21のボス先端側部23を挿通する締結部材側取付孔42と、を備えている。締結部材側取付孔42は、ボス先端側部23の外径と同等あるいは僅かに大きい寸法に設定されている。締結部材本体41は、リング状をなしている。
【0032】
また締結部材40は、締結部材側取付孔42の内周面から内側かつロアボード20側に延びる係止部45を備えている。係止部45は等間隔で6つ設けられており、締結部材側取付孔42にボス先端側部23を挿通させる際に、隣り合うリブ先端側部26の間に挿入可能とされている(図10参照)。また、各係止部45は、隣り合うリブ先端側部26のうち一方のリブ先端側部26に向けて突出する係止刃46を備えている。これらの係止刃46は、締結部材側取付孔42の周方向において、同方向に向けて突出している。
【0033】
係止刃46は、リブ先端側部26に食い込み可能な形状とされている。具体的には、係止刃46は、図7に示すように、締結部材側取付孔42の中心から視て、2つの三角形が、それらの頂部が当該係止刃46の突出方向の先端側に向くように締結部材40の軸方向に並んで設けられた構成とされている。
【0034】
また締結部材40は、図6に示すように、締結部材本体41からロアボード20側(車室内側)に延びるとともに、締結部材側取付孔42の周方向に沿う方向に湾曲しつつアッパーボード30の車室内面(対向面の一例)30Bに沿う方向に屈曲する、略L字形状の片持ち状の挟持アーム47を備えている。締結部材40が取付ボス21のボス先端側部23に締結された締結状態(係止刃46がリブ先端側部26に食い込み、係止部45がリブ先端側部26に当接した状態)において、挟持アーム47は、アッパーボード30のフランジ部32を締結部材本体41との間に挟持可能な寸法に設定されている。本実施形態において挟持アーム47は、等間隔に3つ設けられている。各挟持アーム47は、締結部材本体41の周方向において6つの係止部45のうちの3つに近接した位置から延びている(図11参照)。
【0035】
なお、上述したアッパーボード30のフランジ部32には、上述したように、取付ボス21のボス先端側部23を挿通可能なボード側取付孔33と、このボード側取付孔33の孔縁部に連通し、3つの挟持アーム47がそれぞれ挿通可能とされるとともに、締結部材本体41を回転させることで挟持アーム47の少なくとも先端側をフランジ部32の車室内面30Bに重畳可能とする挟持アーム用孔部34と、を備えている(図4参照)。つまり、挟持アーム用孔部34の孔縁部は、ボード側取付孔33の孔縁部から膨出する形で、等間隔に3つ設けられている。これらの挟持アーム用孔部34は、取付ボス21に対して、挟持アーム47を当該挟持アーム用孔部34に挿通させる際に、係止部45が隣り合うリブ先端側部26の間に挿入可能となる位置に配置されるように設定されている。
【0036】
また、上述した6つのリブ基端側部27のうち3つの車室外側の端面(支持部28)には、挟持アーム47を逃がすための切欠部29が設けられている(図2および図3参照)。
【0037】
フランジ部32の車室内面30Bのうち、上述した締結状態において挟持アーム47の先端部付近が重畳される部分に、車室内側に向けて断面半円状に突出する係止突部35が設けられている(図3参照)。一方、締結状態において、挟持アーム47のうちこの係止突部35に対応する位置には、係止突部35を嵌め入れる係止凹部48が形成されている(図6参照)。つまり、上述した締結状態において、当該締結部材40の挟持アーム47は、締結部材本体41との間にフランジ部32を車室内外方向に挟持する形で配され、係止突部35と係止凹部48との嵌合により、アッパーボード30に対する回り止めが図られた状態とされる(図14参照)。
【0038】
さらに、締結部材本体41の外周面には、径方向の外側に突出して締結部材40を回転操作するための操作部49が設けられている。操作部49は等間隔で3つ設けられ、各操作部49は周方向において隣り合う挟持アーム47の間に配されている(図5参照)。締結部材40を取付ボス21に締結する際には、操作部49を利用して締結部材40を回転操作することにより、締結作業を簡単に行うことができる。
【0039】
アッパーボード30とロアボード20とを組み付ける際には、まず、アッパーボード30を車室外側からロアボード20に近づけ、ロアボード20の車室外面20Aに突出している取付ボス21(ボス先端側部23)をアッパーボード30のフランジ部32に設けられたボード側取付孔33に挿通させる。フランジ部32の車室内面30Bはリブ基端側部27の車室外端面(支持部28)に支持され、もって、フランジ部32は、ロアボード20の車室外面20Aから離隔した位置に配置される(図8参照)。
【0040】
次に、図8および図9に示すように、締結部材40の締結部材側取付孔42にアッパーボード30のフランジ部32から突出している取付ボス21(ボス先端側部23)を挿通させる。この時、挟持アーム47を挟持アーム用孔部34に挿通させるべく、締結部材40のフランジ部32に対する周方向の向き、ひいては、取付ボス21に対する周方向の向きを合わせつつ、締結部材側取付孔42にボス先端側部23を挿通させる。このように締結部材40の周方向の向きを合わせることにより、締結部材側取付孔42内に延びている係止部45は、隣り合うリブ先端側部26の間に挿入される(図10から図12参照)。
【0041】
取付ボス21がボード側取付孔33および締結部材側取付孔42に挿通されるとともに挟持アーム47が挟持アーム用孔部34に挿通され、締結部材本体41がフランジ部32の車室外面30Aに重ね合わされた状態とされたら、次に、操作部49を把持して締結部材本体41を取付ボス21の周方向(図10の右回り、図11および図12の左回り)に回転させ、係止部45に設けられた係止刃46をリブ先端側部26に食い込ませる(図13から図15参照)。
【0042】
この回転操作時、3つの挟持アーム用孔部34内に挿通された各挟持アーム47(図11参照)は、フランジ部32の車室内面30Bに重畳されるように移動し(図14参照)、締結部材本体41との間にフランジ部32を挟持した状態とされる。また、このように3つの挟持アーム47がフランジ部32に重畳されるように移動することにより、締結部材40のフランジ部32に対する姿勢が正規の姿勢に案内される。
【0043】
また、挟持アーム47は、移動に伴って係止突部35に乗り上げるように車室内側に弾性変形するが、締結部材本体41が正規の締結位置(係止刃46がリブ先端側部26の奥方まで食い込み、係止部45がリブ先端側部26に当接した状態)まで回転されると、係止突部35が係止凹部48に嵌まり込むことで、弾性復帰する。この弾性復帰により、作業者は接度感が得られ、正規の締結状態に到達したことが認識されるとともに、締結部材40の回り止めがなされるようになっている。
【0044】
このようにして、締結部材40が取付ボス21に対して締結され、もって、アッパーボード30をロアボード20に対して取り付けることができる。
【0045】
本実施形態の板状部材の取付構造1は上述した通りであって、次に、作用効果について説明する。本実施形態のロアボード20に対するアッパーボード30の取付構造1は、ロアボード20はその車室外面20Aから立ち上がる取付ボス21を備え、取付ボス21は、細長い円筒状のボス本体22と、ボス本体22の外面からその径方向に放射状に突出するリブ25とを有しており、アッパーボード30のフランジ部32は取付ボス21を挿通するボード側取付孔33を備え、締結部材40は、フランジ部32の車室外面30Aに重畳される締結部材本体41と、締結部材本体41に貫通形成されボード側取付孔33とともに取付ボス21を挿通する締結部材側取付孔42と、を備え、締結部材側取付孔42の内周面に、当該締結部材側取付孔42の内側に向けて延びて隣り合うリブ25の間に挿入可能な係止部45が設けられ、係止部45は、締結部材側取付孔42の周方向に突出する係止刃46を有しており、取付ボス21をボード側取付孔33および締結部材側取付孔42に挿通させ、係止部45を隣り合うリブ25の間に挿入させた状態で、締結部材40を取付ボス21の周方向に回転させて係止刃46をリブ25の側面に食い込ませることにより、アッパーボード30が締結部材40を介してロアボード20に対して取り付けられる。
【0046】
上記構成によれば、締結部材40を利用してロアボード20に対してアッパーボード30を取り付けることができる。従って、2つの部材を溶着により一体化させる従来の構成と比較して、溶着治具や溶着設備が不要となり、環境負荷が小さくなるとともに、設備費を削減することができる。また、部品交換や廃棄による解体分別の際には、締結部材40を締結時の回転方向と反対方向に回転させ、リブ25に食い込んだ係止刃46を引き抜くだけで、簡単に分解することができる。つまり、簡易な構成で取付作業性および解体作業性に優れ、かつ、リサイクル性に優れる板状部材の取付構造を提供することができる。
【0047】
フランジ部32のうちロアボード20と対向する車室内面30Bはロアボード20から離隔した位置に配置され、締結部材40は、締結部材本体41からロアボード20側に延びるとともにフランジ部32の車室内面30Bに沿う方向に屈曲する挟持アーム47を備え、フランジ部32は、挟持アーム47を挿通可能な挟持アーム用孔部34を有し、挟持アーム47を挟持アーム用孔部34に挿通させて締結部材40を取付ボス21の周方向に回転させることで、フランジ部32が締結部材本体41と挟持アーム47との間に挟持される。
【0048】
上記構成によれば、締結部材40を回転操作する際に、挟持アーム47によって締結部材40のフランジ部32に対する姿勢を正規の姿勢に案内することができる。
【0049】
係止刃46がリブ25に食い込み、係止部45がリブ先端側部26に当接した締結状態において、フランジ部32の車室内面30Bのうち挟持アーム47が重畳される部分に、車室内面30Bから突出する係止突部35が設けられ、締結状態の挟持アーム47のうち係止突部35に対応する位置に、係止突部35を嵌め入れる係止凹部48が形成されている。
【0050】
上記構成によれば、係止刃46がリブ25の奥方の正規の位置まで食い込み、締結部材40が正規の締結状態に到達した場合に、係止凹部48に係止突部35が嵌め入れられるとともに、係止突部35に乗り上げていた挟持アーム47が弾性復帰する。これにより、作業者は締結状態に到達した接度感を得ることができる。また、係止突部35と係止凹部48の嵌合により、締結部材40のアッパーボード30に対する回り止めを図ることができる。
【0051】
リブ25は取付ボス21の基端側にボス本体22の径方向の外側に広がるリブ基端側部27を備え、フランジ部32はリブ基端側部27(支持部28)によりロアボード20から離隔した位置に支持されている。
【0052】
上記構成によれば、リブ25に径方向の外側に広がるリブ基端側部27(支持部28)を一体に設けることにより、フランジ部32をロアボード20から離隔した位置に支持する支持部を別途設ける必要がなく、全体を簡易な構成とすることができる。
【0053】
締結部材本体41の外周面に、径方向の外側に突出して締結部材40を回転操作するための操作部49が設けられている。締結部材40に径方向の外側に突出する操作部49を設けることにより、締結部材40の締結作業が簡単になる。
【0054】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)上記実施形態では、挟持アーム47が、締結部材本体41からロアボード20側(車室内側)に延びるとともに、締結部材側取付孔42の周方向に沿う方向に屈曲する形態を示したが、挟持アームの屈曲方向は上記実施形態に限るものでなく、例えば、径方向の外側に屈曲する形態としてもよい。また、例えば挟持アームの、フランジ部(第2部材)の対向面に重畳される部分を短い爪状に形成し、爪状の部分が孔縁部に係止するだけの構成とすることもできる。
【0056】
(2)また、挟持アーム47が省略された構成も技術的範囲に含まれる。
【0057】
(3)上記実施形態では、挟持アーム用孔部34がボード側取付孔33に連なって設けられる形態を示したが、挟持アーム用孔部がボード側取付孔と別に設けられる構成とすることもできる。
【0058】
(4)上記実施形態では、フランジ部(第2部材)32に係止突部35を設け、挟持アーム47に係止凹部48を設ける形態を示したが、第2部材に係止凹部を設け、挟持アームに係止突部を設ける構成とすることもできる。また、係止突部および係止凹部を省略する形態も技術的範囲に含まれる。
【0059】
(5)上記実施形態では、フランジ部(第2部材)32をロアボード(第1部材)20側から支持する支持部28を取付ボス21に一体に設ける形態を示したが、支持部は取付ボスとは別に設けてもよい。また支持部を取付ボスと一体に設ける場合でも、上記実施形態に限るものでなく、例えば、リブ基端側部を台形状でなく、リブ先端側部から段差部を有さずに連続的に広がる構成とすることもできる。
【0060】
(6)リブ25、係止部45、挟持アーム47、および、操作部49の数は上記実施形態に限るものでなく、適宜変更することができる。
【0061】
(7)上記実施形態では、締結部材本体41の外周に、径方向の外側に向けて延びる操作部49を設ける形態を示したが、スペース等の事情により外側に向けて延びる操作部を設けることができない場合には、図16に示すように、締結部材140の締結部材本体141の外周面に、径方向の内側に窪んで締結部材140を回転操作する治具を引っ掛けるための操作凹部149を設けてもよい。
【0062】
(8)上記実施形態では、係止部45を、締結部材側取付孔42の内周面から内側かつロアボード20側に延びる形態としたが、係止部は上記実施形態に限るものではなく、例えば図17に示すように、係止部245が締結部材240の締結部材側取付孔242の内側にだけ延び、ロアボード側には延びない形態とすることもできる。また係止刃246の構成も上記実施形態に限るものでなく、図17に示すように、リブ25に食い込み可能な構成とされれば良い。
【0063】
(9)上記実施形態では、板状部材の取付構造1としてドアトリム10を例示したが、ドアトリム以外にも本明細書に開示する技術を適用することができる。なお、本明細書に記載の板状の第2部材(板状部材)とは、第2部材(板状部材)が全体として板状のものは勿論であるが、全体として板状でない部材であっても少なくともボード側取付孔周辺で板状部が構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0064】
1:取付構造、10:ドアトリム、20:ロアボード(第1部材)、21:取付ボス(取付部)、22:ボス本体(取付部本体)、23:ボス先端側部、25:リブ(被係止部)、26:リブ先端側部(被係止部)、27:リブ基端側部、28:支持部、30:アッパーボード(第2部材)、30A:車室外面(反対面)、30B:車室内面(対向面)、32:フランジ部(第2部材)、33:ボード側取付孔、34:挟持アーム用孔部、35:係止突部、40、140、240:締結部材、41、141:締結部材本体、42、242:締結部材側取付孔、45、245:係止部、46、246:係止刃、47:挟持アーム、48:係止凹部、49:操作部、149:操作凹部
図1
図2
図3
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図10
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