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特開2024-82390X線CT装置、データ処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082390
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】X線CT装置、データ処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 330Z
A61B6/03 340A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196198
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰男
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA15
4C093CA27
4C093EA07
4C093EB13
4C093EB16
4C093EE01
4C093FA13
4C093FA15
4C093FA16
4C093FA34
4C093FA42
4C093FA59
4C093FC01
4C093FF28
4C093FG04
(57)【要約】
【課題】手技中におけるデータの伝送量を少なくする。
【解決手段】実施形態のX線CT装置は、収集部と、調整部と、切替部と、束ね部と、を持つ。収集部は、X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集する。調整部は、前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整する。切替部は、前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替える。束ね部は、複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集する収集部と、
前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整する調整部と、
前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替える切替部と、
複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる束ね部と、を備える、
X線CT装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記エネルギービンの数または前記エネルギービンに前記データを弁別する際の前記エネルギーに関する数値基準のうち少なくともいずれかを調整する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記条件が前記第1条件であるときに、前記第2条件であるときよりも前記エネルギービンの数を少なく調整する、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記条件が前記第1条件であるときに、前記エネルギービンの数を1つに調整する、
請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記束ね部により束ねられた前記データを出力する出力部と、
前記収集部により収集された前記データが格納されるバッファと、を更に備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記収集部は、前記条件が前記第2条件であるよりも前記エネルギービンの数を少なく調整する前記第1条件であるときに、収集した前記データを前記バッファに格納する、
請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記束ね部により束ねられたデータを出力した後、
前記バッファに記憶された前記データを出力する、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記被検体に照射されるX線のエネルギーを調整するエネルギー調整部を更に備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記エネルギー調整部は、前記条件が第1条件であるときに、前記第2条件であるときよりも、前記X線のスペクトルを狭くなるように調整する、
請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記エネルギー調整部は、前記X線を照射する前記X線管に供給する電気の電流値または電圧値の少なくとも一方を調整する照射条件設定部を含む、
請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記エネルギー調整部は、前記X線管により照射される前記X線のX線量を調整するフィルタを設定するフィルタ設定部を含む、
請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記調整部は、更に、前記被検体をスキャンする際のスキャン状況に応じて、前記束ね部により検出データを束ねる前記エネルギービンを調整する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記スキャン状況は、透視撮影手技に利用される器具または前記透視撮影手技中に前記被検体の流入する造影剤のうち少なくともいずれかを含む、
請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項14】
前記切替部は、前記透視撮影手技中における前記被検体への被曝線量に基づいて、前記条件を切り替える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項15】
透視撮影手技を行う操作者の意思に基づいて操作可能な操作スイッチにより出力され、前記切替部に前記条件を切替させる切替指示情報を受け付ける受付部を更に備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項16】
透視撮影手技を行う操作者の意思に基づいて操作可能とされた操作スイッチにより出力され、前記束ね部に前記検出データを束ねるエネルギービンを調整させるに束ね調整情報を受け付ける受付部を更に備える、
請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項17】
コンピュータが、
X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集し、
前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整し、
前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替え、
複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる、
データ処理方法。
【請求項18】
コンピュータに、
X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集し、
前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整し、
前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替え、
複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる、ことを行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置、データ処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療や穿刺などの手技では、針先の位置を確認するなどの目的で、X線CT(Computed Tomography)装置を用いたリアルタイム再構成(CT透視)が実施されることがある。X線CT装置として、エネルギーごとにX線光子の数をカウントしたデータを収集するいわゆるフォトンカウンティングCT装置が知られており、手技の際に用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-57301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトンカウンティングCT装置では、X線光子の数をカウントする検出器で膨大なデータを処理する。このため、伝送されるデータの量も膨大となるので、リアルタイムでの伝送が困難である。したがって、手技中に術者が要求する画像を生成することが難しくなることがある。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、手技中におけるデータの伝送量を少なくすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CT装置は、収集部と、調整部と、切替部と、束ね部と、を持つ。収集部は、X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集する。調整部は、前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整する。切替部は、前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替える。束ね部は、複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図。
図2】実施形態に係るDAS16の構成の一例を示す図。
図3】実施形態に係る制御装置18の構成の一部の一例を示す図。
図4】実施形態に係る再構成機能53の機能ブロックの一例を示す図。
図5】実施形態に係る制御装置18における処理の一例を示すフローチャート。
図6】実施形態に係る制御装置18における処理の他の一例を示すフローチャート。
図7】実施形態に係る制御装置18における処理のさらに他の一例を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係るX線CT装置1における処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線CT装置、データ処理方法、及びプログラムについて説明する。実施形態のX線CT装置は、フォトンカウンティングCT装置である。フォトンカウンティングCT装置は、例えば直接変換型検出器を用いて、X線が透過した物質を弁別する。
【0009】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0010】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18と、架台駆動装置19とを有する。X線管11、ウェッジ12、コリメータ13、X線高電圧装置14、X線検出器15、DAS16、回転フレーム17、及び制御装置18は、筐体に収容されている。筐体には、操作者が操作するスイッチ類などの入力インターフェースが設けられている。回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、コリメータ13、及びX線検出器15を回転可能に保持する。回転フレーム17は、X線検出器15、DAS16、制御装置18を保持してもよい。
【0011】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0012】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。ウェッジ12は、例えば制御装置18の制御により、フィルタを他の種類のフィルタに交換するフィルタ交換装置を備えている。フィルタは、例えば銀や錫を含んで構成されてよい。
【0013】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13は、例えば制御装置18の制御により、機械的に絞り込み範囲を駆動する絞り込み装置を備えている。
【0014】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置14Aと、X線制御装置14Bとを有する。高電圧発生装置14Aは、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置14Bは、制御装置18の制御により、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置14Aの出力電圧(X線管11に供給する電気の電圧)の電圧値(kV)及びX線管11に供給する電気の電流値(mA)を制御する。高電圧発生装置14Aは、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0015】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、例えばX線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0016】
X線検出器15においては、1単位のX線光子を検出する領域を空間的に狭めておかないと、仮に同時に複数のX線光子が1つのX線検出素子内に入ってくるとエネルギーの大きい1光子と小さな2光子との区別がつかなくなることがある。一方で1サブピクセルでは領域が小さすぎ、検出信号が小さすぎてS/Nの問題で十分な信号値が得られないことがある。このため、X線検出素子は、例えば、複数、例えば、3×3のサブピクセルを束ねて1つのX線検出素子としている。
【0017】
X線検出器15は、例えば、直接変換型の検出器である。X線検出器15としては、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられた半導体ダイオードが適用可能である。半導体に入射したX線光子は、電子・正孔対に変換される。1つのX線光子の入射により生成される電子・正孔対の数は、入射したX線光子のエネルギーに依存する。電子と正孔とは、半導体の両端に形成された一対の電極に各々引き寄せられる。一対の電極は、電子・正孔対の電荷に応じた波高値を有する電気パルスを発生する。一個の電気パルスは、入射したX線光子のエネルギーに応じた波高値を有する。X線光子は、物質の一例である。
【0018】
DAS16は、例えば、制御装置18からの制御信号に従って、X線検出器15により検出されたX線光子のカウント数を示すカウントデータを複数のエネルギービンについて収集する。複数のエネルギービンに関するカウントデータは、X線検出器15の応答特性に応じて変形された、X線検出器15への入射X線に関するエネルギースペクトラムに対応する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データを制御装置18に出力する。検出データは、X線管11により照射されたX線が被検体Pを透過した際のエネルギーに対応するデータである。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたカウントデータのデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0019】
図2は、実施形態に係るDAS16の構成の一例を示す図である。DAS16は、X線検出素子の個数に応じたチャンネル数分の読出しチャンネルを備える。これら複数の読出しチャンネルは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)等の集積回路に並列的に実装されている。図2では、1読出しチャンネル分のDAS16-1の構成のみを示している。
【0020】
DAS16-1は、前置増幅回路61と、波形整形回路63と、複数の波高弁別回路65と、複数の計数回路67と、出力回路69とを有する。前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの検出電気信号DS(電流信号)を増幅する。例えば、前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの電流信号を、当該電流信号の電荷量に比例した電圧値(波高値)を有する電圧信号に変換する。前置増幅回路61には波形整形回路63が接続されている。波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号の波形を成形する。例えば、波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号のパルス幅を縮小する。
【0021】
波形整形回路63にはエネルギー帯域(エネルギービン)の数に対応する複数の計数チャネルが接続されている。n個のエネルギービンが設定されている場合、波形整形回路63には、n個の計数チャネルが設けられる。各計数チャネルは、波高弁別回路65-nと、計数回路67-nとを有する。
【0022】
波高弁別回路65-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値であるX線検出素子により検出されたX線光子(X線フォトン)のエネルギーを弁別する。例えば、波高弁別回路65-nは、比較回路653-nを有する。比較回路653-nの各々の一方の入力端子には、波形整形回路63からの電圧信号が入力される。比較回路653-nの各々の他方の入力端子には、異なる閾値に対応する参照信号TH(参照電圧値)が、制御装置18から供給される。例えば、エネルギービンbin1のための比較回路653-1には、参照信号TH-1が供給され、エネルギービンbin2のための比較回路653-2には、参照信号TH-2が供給され、エネルギービンbinnのための比較回路653-nには、参照信号TH-nが供給される。参照信号THの各々は、上限参照値と下限参照値とを有している。比較回路653-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号が、参照信号THの各々に対応するエネルギービンに対応する波高値を有している場合、電気パルス信号を出力する。例えば、比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値である場合(参照信号TH-1とTH-2との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。一方、エネルギービンbin1のための比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値でない場合、電気パルス信号を出力しない。また、例えば、比較回路653-2は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin2に対応する波高値である場合(参照信号TH-2とTH-3との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。
【0023】
計数回路67-nは、ビューの切替周期に一致する読出し周期で、波高弁別回路65-nからの電気パルス信号を計数する。例えば、計数回路67-nには、制御装置18から、各ビューの切替タイミングにトリガ信号TSが供給される。トリガ信号TSが供給されたことを契機として計数回路67-nは、波高弁別回路65-nから電気パルス信号が入力される毎に、内部メモリに記憶されているカウント数に1を加算する。次のトリガ信号が供給されたことを契機として計数回路67-nは、内部メモリに蓄積されたカウント数のデータ(すなわち、カウントデータ)を読み出し、出力回路69に供給する。また、計数回路67-nは、トリガ信号TSが供給される毎に内部メモリに蓄積されているカウント数を初期値に再設定する。このようにして計数回路67-nは、ビュー毎にカウント数を計数する。
【0024】
出力回路69は、X線検出器15に搭載されている複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nに接続されている。出力回路69は、複数のエネルギービンの各々について、複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nからのカウントデータを統合してビュー毎の複数の読出しチャンネル分のカウントデータを生成する。各エネルギービンのカウントデータは、チャンネルとセグメント(列)とエネルギービンとにより規定されるカウント数のデータの集合である。各エネルギービンのカウントデータは、ビュー単位でコンソール装置40に伝送される。ビュー単位のカウントデータをカウントデータセットCSと呼ぶ。
【0025】
図1に戻り、回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、及びコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0026】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0027】
制御装置18は、例えば、CPU等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースまたはコンソール装置40からの入力信号を受け付けて、架台装置10、寝台装置30、及びDAS16の動作を制御する。例えば、制御装置18は、架台駆動装置19を制御して、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、架台駆動装置19を制御して、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、再構成機能53などに提供する。また、制御装置18は、DAS16のエネルギービン(参照信号TH)を制御する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0028】
制御装置18は、DAS16により出力される検出データを弁別して収集したり、収集した検出データをコンソール装置40に出力したり記憶装置に格納したりする。図3は、実施形態に係る制御装置18の構成の一部の一例を示す図である。図3では、制御装置18のうち、DAS16を制御する機能に関する処理回路70及びメモリ80の構成を示している。
【0029】
処理回路70は、例えば、受付機能71と、収集機能72と、切替機能73と、調整機能74と、束ね機能75と、集計機能76と、出力機能77と、エネルギー調整機能78とを備える。処理回路70は、例えば、これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device;SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device;CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array;FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0030】
受付機能71は、架台装置10に設けられた入力インターフェースまたはコンソール装置40により送信される各種の情報を受け付ける。受付機能71は、受付部の一例である。入力インターフェースまたはコンソール装置40により送信される情報は、例えば、コンソール装置40により送信される切替指示情報及び注視対象情報を含む。切替指示情報及び注視対象情報は、入力インターフェースにより入力されてもよい。
【0031】
切替指示情報は、例えば、画像重視指示情報及び迅速重視指示情報を含む。切替指示情報は、切替機能73に収集モード、実質的には、第1条件と第2条件とを切替させる情報である。注視対象情報は、例えば、器具指定情報、及び造影剤指定情報を含む。注視対象情報は、束ね機能75に検出データを束ねるエネルギービンを調整させる情報である。注視対象情報は、束ね調整情報の一例である。
【0032】
画像重視指示情報は、リアルタイム性よりも詳細なCT画像を表示させることを重視する指示の情報である。迅速重視指示情報は、詳細なCT画像を表示させることよりもリアルタイム性を重視する指示の情報である。器具指定情報は、手技に利用する穿刺針などの器具を指定する情報である。造影剤指定情報は、手技中に被検体に投入される造影剤の種類を指定する情報である。
【0033】
注視対象とは、手技が行われている間、術者等が主に注視する対象物である。透視撮影手技が開始された後、手技の進行に伴い、操作者が要求するCT画像中の注視対象に変化が生じる。注視対象は、例えば、以下の第1注視対象から第4注視対象となる。第1注視対象は、穿刺針の針先であり、例えば、穿刺針を挿入したり、人体組織を含む臓器などのROI(Region Of Interest)に穿刺針を近づけたりする際の注視対象である。穿刺針は、透視撮影手技に利用される器具の一例である。
【0034】
第2注視対象は、穿刺針の針先及び造影剤であり、例えば、穿刺針の針先から造影剤が流出する際の注視対象である。第3注視対象は、ROI及び造影剤であり、例えば、ROIに造影剤が流入する際の注視対象である。第4注視対象は、ROIであり、例えば、造影剤が十分にROIに流入した後の注視対象である。第4注視対象は、例えば、組織採取やアブレーションを行う際の注視対象である。穿刺針の針先には、CT画像とした際にコントラストが付きやすい塗料が塗布されていてもよい。造影剤は、CT画像とした際にコントラストが付きやすい材料を含んでもよい。また、設定される収集モード等に応じて、穿刺針や造影剤の種類を変えてもよい。
【0035】
収集機能72は、物質、例えばX線光子のエネルギーに対応するデータである検出データを収集する。収集機能72は、例えば、DAS16により出力される検出データを検出データとして収集する。収集機能72は、収集した検出データ82をメモリ80に格納する。収集機能72は、収集部の一例である。
【0036】
切替機能73は、コンソール装置40により送信される切替指示情報に基づいて、X線管11により照射されるX線を被検体Pに照射して行われる透視撮影手技中に、検出データを収集する際の検出データに対する条件を第1条件と第2条件の間で切り替える。第1条件は、収集モードが第1モードであるときに設定される条件であり、第2条件は、収集モードが第2モードであるときに設定される条件である。
【0037】
切替機能73は、コンソール装置40により送信された画像重視指示情報を受付機能71が受け付けた場合に、収集モードを第2モードに設定する。切替機能73は、コンソール装置40により送信された迅速重視指示情報を受付機能71が受け付けた場合に、収集モードを第1モードに設定する。
【0038】
収集モードのうち、第1モードは、例えば、手技中に観察対象をよく見る必要性が高くないときに設定されるモードであり、出力機能77によるリアルタイムでのデータの送信量が制限されるモードである。第2モードは、例えば、手技中に観察対象をよく見る必要性が高いときに設定されるモードであり、出力機能77によるリアルタイムでのデータの送信量が制限されないか制限量が少ないモードである。切替機能73は、収集モードを第1モードと第2モードの間で切り替える。これにより、切替機能73は、実質的に、検出データに対する条件を第1条件と第2条件の間で切り替える。
【0039】
なお、リアルタイムとは、時間が完全に一致する場合の他用途に応じて変動する遅れる時間分については、ずれが許容されるものである。収集機能72は、例えば、第2モードのときに検出データ82をメモリ80に格納する。切替機能73は、検出データを収集する際の検出データに対する条件を第1条件と第2条件の間で切り替える。切替機能73は、収集モードを切り替えることにより、切替部の一例である。
【0040】
収集モードの第1モードは、例えば、エネルギービンの数を少なく、例えば単数(1つ)のみ設定し、1つのエネルギービンが広い数値基準(波高値の範囲)のX線光子の数をカウントするモードである。第1モードで設定されるエネルギービンの数は、第2モードで設定されるエネルギービンの数より少なければよく複数でもよい。
【0041】
収集モードの第2モードは、エネルギービンの数を多く設定し、狭い数値基準に細かく切り分けられたエネルギービンでX線光子の数をカウントするモードである。切替機能73は、例えば、入力インターフェースまたはコンソール装置40により送信されるモード設定情報またはスキャン計画に含まれるモード設定情報に基づいて収集モードを切り替えてよい。
【0042】
調整機能74は、切替機能73により切り替えられる収集モードに基づいて、検出データを収集する際の検出データに対する条件を調整する。検出データに対する条件は、例えば、DAS16により検出される検出データを弁別するエネルギービンの数である。調整機能74は、エネルギービンの数を収集モードに応じた数に調整する。調整機能74は、調整部の一例である。
【0043】
DAS16におけるエネルギービンの数は、例えば、検出の対象となるX線のエネルギー帯域及びその弁別性能等に基づいて定められ、例えば、理論上は10以上などの多くの数(以下、第1最大値)に設定することができる。その一方、弁別性能を高めてエネルギービンを細かく設定したとしても、X線検出器15における分解能が担保できない場合もあり、この場合には、細かいエネルギービンの設定の意義は小さくなる。このため、装置として臨床利用できるエネルギービンの数は、例えば、5や6(以下、第2最大値)といった数となることもある。
【0044】
調整機能74は、これらの第1最大値及び第2最大値の考えに基づき、例えば、第2モードにおけるエネルギービンの数を第2最大値に設定した場合に、第1モードでは、エネルギービンの数を第2最大値より少ない数に調整する。調整機能74は、例えば、第2モードにおけるエネルギービンの数を第2最大値に設定した場合に、第1モードでは、エネルギービンの数を第2最大値より少ない数に調整するものでもよい。実施形態の第1モードは、エネルギービンは1つに設定されるので、第2モードで検出できるエネルギー帯域のX線光子の数をすべて1つのエネルギービンで計数するモードとなる。第2モードの際に設定されるビンの数は、予め定められていてもよいし、任意の条件に基づいて定められてもよい。
【0045】
調整機能74は、例えば、検出データを弁別する際のエネルギーに関する数値基準を調整してエネルギービンの数を調整してよい。エネルギーに関する数値基準は、例えば、エネルギービンがデータを弁別する際の波高値の範囲である。数値基準は、第1モード及び第2モードのそれぞれに対して手技が行われる前に予め設定される。数値基準は、入力インターフェースまたはコンソール装置40により送信される情報に基づいて変更(調整)可能であるようにしてもよい。
【0046】
調整機能74は、被検体をスキャンする際のスキャン状況に応じて、束ね機能75により検出データを束ねるエネルギービンを調整する。具体的に、調整機能74は、受付機能71により受け付けられた注視対象情報に基づいて、第2モード中における検出データを束ねるエネルギービンを調整する。実施形態において、注視対象には第1注視対象から第4注視対象が含まれており、注視対象ごとに、注視する際に求められる条件が変化する。調整機能74は、注視対象を見やすくした条件で検出データを束ねるエネルギービンを調整する。注視対象が定められる状況は、被検体をスキャンする際のスキャン状況の一例である。
【0047】
束ね機能75は、複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された検出データを束ねる。どのエネルギービンに弁別された検出データをまとめるかについては、例えば、入力インターフェースまたはコンソール装置40により送信されるモード設定情報またはスキャン計画に含まれるモード設定情報に基づいて定められてよい。束ね機能75は、束ね部の一例である。
【0048】
集計機能76は、束ね機能75により束ねられた検出データを集計する。集計機能76は、束ねられた検出データに応じたカウントデータを加算することにより、検出データを集計する。以下の説明において、束ね機能75により検出データを束ねる処理及び束ね機能75により束ねられた検出データを集計する処理をDAS後束ね処理という。
【0049】
第1モードでエネルギービンが1つに設定されるときには、束ね機能75による検出データの束ねが行われない。この場合、集計機能76は、1つのエネルギービンに含まれるカウントデータをそのまま検出データの集計とする。以下の説明において、1つのエネルギービンに含まれるカウントデータをそのまま検出データの集計とする処理をDAS前束ね処理という。
【0050】
なお、第1モードでエネルギービンが複数設定される場合には、DAS前束ね処理は、DAS後束ね処理と同様に、束ね機能75により検出データを束ねる処理及び束ね機能75により束ねられた検出データを集計する処理を含む。この場合、DAS前束ね処理を行う際のエネルギービンの数は、DAS後束ね処理を行う際のエネルギービンの数よりも少なく調整されている。
【0051】
このため、DAS前束ね処理で集計される検出データの数は、DAS後束ね処理で集計される検出データの数よりも少なくなる。したがって、DAS前束ね処理における制御装置18の負担や制御装置18からコンソール装置40に送信されるデータの伝送量は、DAS後束ね処理よりも少なく(軽く)なる。
【0052】
出力機能77は、集計機能76により集計された検出データをコンソール装置40に伝送することにより出力する。出力機能77は、例えば、集計機能76により集計された検出データを出力した後、メモリ80に記憶された検出データを出力する。出力機能77は、出力部の一例である。
【0053】
エネルギー調整機能78は、切替機能73により切り替えられた収集モード、手技に使用される器具や造影剤の種類等に基づいて、X線管11により照射されるX線のスペクトルを調整するように、ウェッジ12、コリメータ13、及びX線制御装置14Bを制御する。エネルギー調整機能78は、エネルギー調整部の一例である。
【0054】
エネルギー調整機能78は、例えば、照射条件設定機能78Aと、フィルタ設定機能78Bを備える。照射条件設定機能78Aは、例えば、X線管11によりX線を照射する際の照射条件を設定する照射条件設定信号をX線制御装置14Bに送信する。照射条件には、例えば、高電圧発生装置14AによりX線管11に供給される電気の電流値もしくは電圧値(kV)、またはその両方が含まれる。照射条件設定機能78Aは、照射条件設定部の一例である。
【0055】
X線管11に供給される電気の電圧値または電流値を調整することにより被検体Pに照射されるX線のエネルギーを調整できるが、電圧値を調整した場合、スペクトル形状の変動が生じることから、キャリブレーションが必要となる。その一方、電流値を調整する場合には、スペクトル形状の変化はないか極めて小さいので、キャリブレーションを不要とすることができる。
【0056】
フィルタ設定機能78Bは、例えば、フィルタ交換装置にフィルタを交換させるフィルタ交換信号をウェッジ12に送信したり、絞り込み装置を駆動させて絞り込み範囲を調節させる絞り込み信号をコリメータ13に送信したりする。フィルタ設定機能78Bは、フィルタ設定部の一例である。
【0057】
処理回路70に含まれる各機能は、架台装置10内において、架台装置10、寝台装置30、及びDAS16の動作を制御する制御装置18からは独立した回路内に設けられていてもよい。例えば、処理回路70に含まれる各機能は、DAS16に付随して設けられてもよい。
【0058】
メモリ80は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ80は、集計機能76により集計された検出データ82等を記憶する。メモリ80に記憶される検出データ82は、例えば、被検体のスキャンが終了した後、コンソール装置40などの外部装置において画像のさらなる解析などが求められた場合に、外部装置などに送信される。メモリ80は、バッファの一例である。
【0059】
図1に戻り、架台駆動装置19は、例えば、モータやアクチュエータを含む。架台駆動装置19は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台駆動装置19は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)や、後述する補正用データ収集機能57からの回転指示に基づいて、架台装置10の回転フレーム17を回転させる。
【0060】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0061】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0062】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路50とを有する。実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0063】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件、補正用データの収集条件等を記憶する。メモリ41は、例えば、架台装置10から伝送された複数のエネルギービンに関するカウントデータを記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0064】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。操作者は、透視撮影手技が行われる際には、例えば、術者となる。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0065】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。入力インターフェース43は、例えば、透視撮影手技を行う操作者の意思に基づいて操作可能であり、操作者による切替指示情報及び注視対象情報の入力操作を受け付ける。コンソール装置40は、入力インターフェース43が受け付けた切替指示情報及び注視対象情報を制御装置18に送信する。入力インターフェース43は、操作スイッチの一例である。
【0066】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。
【0067】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0068】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、寝台装置30の動作、及び補正用データの収集のためのキャリブレーションの動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成機能53、画像処理機能54等を備える。
【0069】
これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。
【0070】
この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0071】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0072】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0073】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正、散乱線補正、ダークカウント補正等の前処理を施すことにより投影データを生成する。投影データは、カウントデータを含む。
【0074】
再構成機能53は、検出データ(カウントデータ)に基づいて被検体Pに関するフォトンカウンティング型CT画像を再構成する。図4は、実施形態に係る再構成機能53の機能ブロックの一例を示す図である。再構成機能53は、例えば、応答関数生成機能531と、X線吸収量算出機能532と、再構成処理機能533とを有する。応答関数生成機能531は、検出器応答特性を表す応答関数のデータを生成する。例えば、応答関数生成機能531は、複数の入射X線エネルギーを有する複数の単色X線に対する標準検出系の応答(すなわち、検出エネルギーおよび検出強度)を予測計算、実験、及び予測計算と実験との組み合わせにより計測し、検出エネルギーおよび検出強度の計測値に基づいて応答関数を生成する。また、応答関数生成機能531は、キャリブレーション等において収集された実測の計測値に基づいて応答関数のデータを生成してもよい。応答関数は、入射X線ごとの検出エネルギーとシステムの出力応答との関係を規定する。例えば、応答関数は、入射X線ごとの検出エネルギーと検出強度との関係を規定する。生成された応答関数のデータは、メモリ41に記憶される。
【0075】
X線吸収量算出機能532は、複数のエネルギービンに関するカウントデータ、被検体Pへの入射X線のエネルギースペクトラム、およびメモリ41に記憶された応答関数に基づいて、複数の基底物質各々に関するX線吸収量を算出する。X線吸収量算出機能532は、応答関数を利用してカウントデータと被検体Pへの入射X線のエネルギースペクトラムとに基づいてX線吸収量を算出することにより、X線検出器15およびDAS16の応答特性の影響がないX線吸収量を算出することができる。このように基底物質毎にX線吸収量を得る処理は物質弁別とも呼ばれている。基底物質としては、カルシウム、石灰化、骨、脂肪、筋肉、空気、臓器、病変部、硬部組織、軟部組織、造影物質等のあらゆる物質に設定可能である。算出対象の基底物質の種類は、予め入力インターフェース43を介して操作者等により決定されてよい。X線吸収量は、基底物質により吸収されるX線量を示す。例えば、X線吸収量は、X線減弱係数とX線透過経路長との組み合わせにより規定される。
【0076】
再構成処理機能533は、X線吸収量算出機能532により算出された複数の基底物質各々に関するX線吸収量に基づいて、当該複数の基底物質のうちの画像化対象の基底物質の空間分布を表現するフォトンカウンティング型CT画像を再構成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。画像化対象の基底物質は、1種類でも良いし複数種類でもよい。画像化対象の基底物質の種類は、入力インターフェース43を介して操作者等により決定されてよい。
【0077】
フォトンカウンティングCT装置で得られるカウントデータを含む投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能533は、例えば、特定のエネルギー成分のCT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能533は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのCT画像データを再構成することができる。さらに、再構成処理機能533は、例えば、各エネルギー成分のCT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のCT画像データを重畳した画像データを生成することができる。
【0078】
図1に戻り、画像処理機能54は、CT画像データに基づいて、三次元画像データや任意断面の断面像データなどのCT画像を生成する。画像処理機能54は、生成したCT画像をディスプレイ42に表示させる。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0079】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0080】
次に、実施形態に係るX線CT装置1における処理について説明する。図5は、実施形態に係る制御装置18における処理の一例を示すフローチャートである。実施形態のX線CT装置1を用いた透視撮影手技が開始される(ステップS101)と、X線CT装置1における制御装置18は、処理回路70において、収集モードを第1モードに設定して、集計機能76による検出データの集計にあたり、DAS前束ね処理を行うようにする(ステップS103)。
【0081】
透視撮影手技が開始された後、手技の進行に伴い、操作者が要求するCT画像における注視対象に変化が生じる。操作者は、例えば、注視対象が第1注視対象から第3注視対象であるときには、詳細なCT画像よりもリアルタイム性を重視し、注視対象が第4注視対象であるときには、リアルタイム性よりもCT画像が詳細であることを重視することが多い。操作者は、現在の注視対象に応じて画像重視指示情報または迅速重視指示情報の入力操作を入力インターフェースに対して行う。操作者は、例えば、注視対象が第1注視対象から第3注視対象であるときには、迅速重視指示情報の入力操作を行い、注視対象が第4注視対象であるときには、画像重視指示情報の入力操作を行う。
【0082】
制御装置18は、ステップS103の処理を実行した後、コンソール装置40により送信される画像重視指示情報が受付機能71により受け付けられたか否かを判定する(ステップS105)。画像重視指示情報が受付機能71により受け付けられていないと判定した場合、制御装置18は処理をステップS109に進める。
【0083】
画像重視指示情報が受付機能71により受け付けられたと判定した場合、制御装置18は、切替機能73により、収集モードを第1モードから第2モードに切り替える。収集モードが切り替えられることにより、集計機能76による検出データの集計にあたり、DAS後束ね処理を行うようにする(ステップS107)。
【0084】
切替機能73により収集モードが第1モードから第2モードに切り替えられると、エネルギー調整機能78は、注視対象に応じて、例えば被検体に照射されるX線のスペクトルを広くなるように調整する。エネルギー調整機能78は、例えば、照射条件設定機能78Aにより照射条件設定信号をX線制御装置14Bに送信したり、フィルタ設定機能78Bにより、フィルタ交換信号または絞り込み信号をウェッジ12またはコリメータ13に送信したりする。
【0085】
続いて、制御装置18は、コンソール装置40により送信される迅速重視指示情報が受付機能71により受け付けられたか否かを判定する(ステップS109)。迅速重視指示情報が受付機能71により受け付けられていないと判定した場合、制御装置18は処理をステップS111に進める。
【0086】
画像重視指示情報が受付機能71により受け付けられたと判定した場合、制御装置18は、処理をステップS103に戻し、切替機能73により、収集モードを第2モードから第1モードに切り替える。収集モードが切り替えられることにより、集計機能76による検出データの集計にあたり、DAS後束ね処理を行うようにする(ステップS103)。
【0087】
切替機能73により収集モードが第2モードから第1モードに切り替えられると、エネルギー調整機能78は、注視対象に応じて、例えば被検体に照射されるX線のスペクトルを狭くなるように調整する。エネルギー調整機能78は、例えば、照射条件設定機能78Aにより照射条件設定信号をX線制御装置14Bに送信したり、フィルタ設定機能78Bにより、フィルタ交換信号または絞り込み信号をウェッジ12またはコリメータ13に送信したりする。
【0088】
続いて、制御装置18は、透視撮影手技が終了したか否かを判定する(ステップS111)。透視撮影手技が終了していないと判定した場合、制御装置18は、処理をステップS105に戻す。透視撮影手技が終了したと判定した場合、制御装置18は、図5に示す処理を終了する。
【0089】
透視撮影手技中、制御装置18は、エネルギー調整機能78を利用した処理を実行する。続いて、制御装置18におけるエネルギー調整機能78を利用した処理について説明する。図6は、実施形態に係る制御装置18における処理の他の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、図5に示す処理と平行して行われる。
【0090】
制御装置18は、切替機能73により、束ね処理の切り替えが行われているか否かを判定する(ステップS201)。ここでの切替処理には、DAS前束ね処理からDAS後束ね処理への切り替え、DAS後束ね処理からDAS前束ね処理への切り替えの両方が含まれる。
【0091】
束ね処理が行われていないと切替機能73により判定された場合、制御装置18は、そのまま図6に示す処理を終了する。束ね処理が行われていると切替機能73により判定された場合、エネルギー調整機能78は、ラグが発生するか否かを判定する(ステップS203)。
【0092】
エネルギー調整機能78は、被検体に照射されるエネルギーの調整の利用態様によりラグが発生するか否かを判定する。エネルギー調整機能78は、例えば、X線管11に供給する電気の電流値を調整してエネルギーの調整を図る場合には、ラグが発生すると判定する。一方、エネルギー調整機能78は、X線管11に供給する電気の電圧値を調整してエネルギーの調整を図る場合には、ラグは発生しないと判定する。さらに、エネルギー調整機能78は、ウェッジ12のフィルタの交換やコリメータ13の絞り込み範囲を調節する場合にも、ラグは発生しないと判定する。
【0093】
その結果、ラグが発生しないとエネルギー調整機能78により判定された場合、制御装置は、そのまま図6に示す処理を終了する。ラグが発生すると判定した場合、エネルギー調整機能78は、ラグが発生する間のX線の線量を低下させまたは停止させる(ステップS205)。
【0094】
続いて、エネルギー調整機能78は、束ね処理の切り替えが完了したか否かを判定する(ステップS207)。束ね処理の切り替えが完了していないと判定した場合、エネルギー調整機能78は、ステップS207の処理を繰り返す。束ね処理の切り替えが完了したとエネルギー調整機能78により判定された場合、制御装置18は、図6に示す処理を終了する。
【0095】
透視撮影手技中、制御装置18は、注視対象の変化に応じた処理を実行する。続いて、制御装置18における注視対象の変化に応じた処理について説明する。図7は、実施形態に係る制御装置18における処理のさらに他の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、図5及び図6に示す処理と平行して行われる。
【0096】
制御装置18は、現在の収集モードが第2モードであり、DAS後束ね処理中であるか否かを判定する(ステップS301)。DAS後束ね処理中でないと判定した場合、制御装置18は、図7に示す処理を終了する。DAS後束ね処理中であると判定した場合、調整機能74は、受付機能71が注視対象情報を受信し、指定された注視対象(第1注視対象から第4注視対象のいずれかの注視対象)を認識したか否かを判定する(ステップS303)。
【0097】
注視対象を認識していないと調整機能74により判定された場合、制御装置18は、図7に示す処理を終了する。一方、注視対象を認識した判定した場合、調整機能74は、認識した胃注視対象に応じて検出データを束ねるエネルギービンを調整する(ステップS305)。その後、制御装置18は、図7に示す処理を終了する。
【0098】
ここで、束ね機能75により行われるDAS前束ね処理及びDAS後束ね処理において、検出データを束ねる態様について、検出データを収集する収集工程、検出データを束ねる束ね工程、検出データからCT画像を再構成する再構成工程の順で説明する。図8は、束ね処理において検出データを束ねる手順を示す図である。図8では、DAS前束ね処理及びDAS後束ね処理を行う際に計数した検出データのヒストグラムと、再構成処理により生成されるCT画像の色彩の状態を示している。DAS前束ね処理及びDAS後束ね処理は制御装置18で行われ、再構成処理はコンソール装置40で行われる。
【0099】
収集モードが第1モードの時に行われるDAS前束ね処理における収集工程で収集された検出データの分布は、エネルギー帯域を仕切ることなく、エネルギー帯域の全域を対象としたヒストグラムで表される。DAS前束ね処理では、束ね工程においても、収集工程で表されるヒストグラムがそのまま表されることとなる。
【0100】
DAS前束ね処理では、検出データは1つにまとまっているため、コンソール装置40に伝送される検出データの伝送量は少なくて済む。コンソール装置40に伝送される検出データは、エネルギー帯域による区別がなされていない。このため、DAS前束ね処理で生成された検出データを再構成して得られるCT画像は単色となる。
【0101】
一方、収集モードが第2モードのときに行われるDAS後束ねにおける収集工程では、例えば、エネルギービンとして、それぞれのエネルギー帯域が規定された第1エネルギービン♯1~第4エネルギービン♯4が設定される。収集工程では、検出データの分布は、第1エネルギービン♯1~第4エネルギービン♯4のそれぞれのエネルギー帯域に区分されたヒストグラムで表される。
【0102】
続く束ね工程では、設定されたエネルギービンに含まれる検出データが束ねられて検出データの伝送量の削減が図られる。検出データを束ねるエネルギービンは、例えば、注視対象に基づいて定められる。図8では、注視対象が第1注視対象である場合と第2注視対象である場合の検出データを束ねるエネルギービンの定め方を示している。
【0103】
例えば、第1注視対象を視認しやすいエネルギー帯域が第2エネルギービン♯2から第4エネルギービン♯4のエネルギー帯域を束ねたデータである場合に、第2エネルギービン♯2から第4エネルギービン♯4の検出データを束ねる。この場合、コンソール装置40に伝送される検出データの伝送量は、第2エネルギービン♯2から第4エネルギービン♯4の検出データを束ねている分少なくて済む。コンソール装置40に伝送される検出データは、第1エネルギービン♯1に相当する分と、第2エネルギービン♯2から第4エネルギービン♯4に相当する分に分けられているので、再構成により得られる画像は、その分有色と(または他の部分とのコントラストを大きく)することすることができる。有色とする部分は、例えば、第1注視対象、ここでは穿刺針の針先を見やすく写す部分とされる。
【0104】
また、第2注視対象を視認しやすいエネルギー帯域が第1エネルギービン♯1から第3エネルギービン♯3のエネルギー帯域を束ねたデータである場合に、第1エネルギービン♯1から第3エネルギービン♯3の検出データを束ねる。この場合、コンソール装置40に伝送される検出データの伝送量は、第1エネルギービン♯1から第3エネルギービン♯3の検出データを束ねている分少なくて済む。コンソール装置40に伝送される検出データは、第1エネルギービン♯1から第3エネルギービン♯3に相当する分と、第4エネルギービン♯4に相当する分に分けられているので、再構成により得られる画像は、その分有色と(または他の部分とのコントラストを大きく)することができる。有色とする部分は、例えば、第2注視対象、ここでは穿刺針の針先及び造影剤を見やすく写す部分とされる。
【0105】
実施形態のX線CT装置1は、手技中にDAS前束ね処理及びDAS後束ね処理を切り替えることができる。このため、手技中におけるリアルタイム性が要求されるときのデータの伝送量を少なくすることができる。このため、エネルギーごとにX線光子の数をカウントする利点を十分に活用することもできる。
【0106】
また、実施形態のX線CT装置1は、検出データ82をメモリ80に格納することができる。このため、リアルタイム性を要求される状況下において、DAS後束ね処理を行って検出データを送信する際に、収集した検出データをいったんメモリ80に格納しておき、リアルタイム性の要求が少なくなったときに改めて検出データをコンソール装置40やワークステーションなどに送信することができる。したがって、エネルギー情報を用いた解析を事後的に行うことができる。
【0107】
また、実施形態のX線CT装置1は、DAS前束ね処理とDAS後束ね処理を行うことから、エネルギー情報を減らしたりエネルギー分解能を低下させたりしてデータ量を削減させることができる。したがって、実施形態のX線CT装置1は、事後的な分析の自由度を不要するような場合に好適に用いることができる。
【0108】
実施形態においては、第1モードではDAS前束ね処理を行い、第2モードでは、DAS後束ね処理を行うが、第1モードにおけるエネルギービンの数が少なくなれば、第1モードにおいてもDAS後束処理(以下、簡易DAS後束ね処理)を行ってもよい。例えば、エネルギービンとして、第1エネルギービン♯1~第4エネルギービン♯4が設定されているとする。また、リアルタイムでの伝送量の要求から、3ビン分に検出データを束ねる必要があるとする。
【0109】
この場合、第1モードでは、例えば、簡易DAS後束ね処理により、第2エネルギービン♯2と第3エネルギービン♯3に含まれる検出データを束ねてリアルタイム性を要求される処理で伝送するデータ量の削減を図ってよい。事後的な解析を行う際には、例えば、第2エネルギービン♯2と第3エネルギービン♯3の合計分の他、第1エネルギービン♯1及び第4エネルギービン♯4の検出データの合計3ビン分の検出データを伝送する。
【0110】
このとき、事後的に検出データを伝送する場合には、第1モードのときに第1エネルギービン♯1及び第4エネルギービン♯4の検出データをメモリ80に格納しておいてもよい。そして、被検体のスキャンが終了し、リアルタイム性が要求されなくなった後に、DAS後束ね処理を行い、コンソール装置40やワークステーションに伝送してよい。
【0111】
また、DAS後束ね処理により束ねたコンソール装置40に検出データを送信する場合には、すでに、第1エネルギービン♯1及び第4エネルギービン♯4の検出データは伝送済となっている。このため、DAS後束ね処理では、例えば、束ねていない第2エネルギービン♯2と第3エネルギービン♯3を束ねて伝送するのみよく、これらの検出データを伝送することで、解析に用いる検出データをすべて伝送することができる。
【0112】
また、リアルタイムでの伝送量の上限値が例えば、エネルギービンの3ビン分相当であるとすると、第1モードでは、エネルギービンを1ビン分、2ビン分にDAS前束ね処理してもよいし、2ビン分にDAS前束ね処理をしてもよい。この場合、リアルタイムでの伝送量時の上限値を超えないのであれば例えば、あえて1ビン分までDAS前束ね処理を行うことなく、3ビン分にDAS前束ね処理を行ってもよい。
【0113】
その一方、例えば、DAS前束ね処理により検出データを束ねる処理を実行したとしても、検出データの数が増えれば、その後の伝送(通信)や処理に時間を要することが想定される。そこで、X線CT装置1は、DAS前束ね処理によりリアルタイム性を確保できるエネルギービンの数である場合には、全てのデータをリアルタイムで送信できる旨を操作者等の通知するようにしてもよい。また、リアルタイム性を超えるエネルギービンの数である場合には、一部のデータが事後的に送信される旨を操作者に通知してもよい。
【0114】
また、手技を開始する前に、エネルギービンの数が、リアルタイム性を確保できる数未満の数に設定された場合に、追加ビンを設けてもよい。追加ビンを設ける際には、自動的の追加ビンが設けられるようにしてもよいし、追加ビンを設ける要請を操作者に通知してもよい。追加ビンを設ける場合にも、閾値については維持できるようにしてよい。
【0115】
また、手技を行っている間の被検体の被曝線量を計測または推定(算出)し、切替機能73は、計測または推定された被曝線量に基づいて、収集モードを切り替えてもよい。切替機能73は、例えば、収集モードが第2モードであるときに計測または推定された被曝線量が所定の閾値を超えた場合収集モードを第1モードに切り替えてもよい。この場合、エネルギー調整機能78は、合わせてX線管11により照射されるX線のX線量を少なくしてもよい。
【0116】
また、実施形態において、切替機能73は、コンソール装置40により送信された切替指示情報に基づいて、収集モードを切り替えるが、手技の進行状況を測定または推測し、測定または推測した進行状況に基づいて、収集モードを切り替えてもよい。例えば、コンソール装置40により生成されるCT画像を画像処理して、ROIに流入する造影剤の流入状況を測定し、造影剤がROIに規定された範囲に流入したときに収集モードを第1モードから第2モードに切り替えるようにしてもよい。あるいは、切替機能73は、一定または不定の周期で周期的に第1モードと第2モードを切り替えるようにしてもよい。
【0117】
また、収集モードとして、第1モードと第2モードに他のモードを加えてもよい。他の収集モードとしては、例えば、検出データに含まれるX線のエネルギーを積分したデータを生成するモード、例えばエネルギー積分検出モード(Energy Integrating Detector、以下、EIDモード)でもよい。
【0118】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線管により照射されたX線が被検体を透過した際のエネルギーに対応するデータを収集する収集部と、前記データを収集する際の前記データに対する第1条件及び第2条件を含む条件を調整する調整部と、前記X線を前記被検体に照射して行われる透視撮影手技中に、前記条件を第1条件と第2条件の間で切り替える切替部と、複数のエネルギービンのうちのいくつかに弁別された前記データを束ねる束ね部と、を持つことにより、手技中におけるデータの伝送量を少なくすることができる。
【0119】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1…X線CT装置
10…架台装置
11…X線管
12…ウェッジ
13…コリメータ
14…X線高電圧装置
15…X線検出器
16…DAS
17…回転フレーム
18…制御装置
19…架台駆動装置
30…寝台装置
31…基台
32…寝台駆動装置
33…天板
34…支持フレーム
40…コンソール装置
41…メモリ
42…ディスプレイ
43…入力インターフェース
50…処理回路
51…システム制御機能
52…前処理機能
53…再構成機能
54…画像処理機能
57…補正用データ収集機能
61…前置増幅回路
63…波形整形回路
65…波高弁別回路
67…計数回路
69…出力回路
70…処理回路
71…受付機能
72…収集機能
73…切替機能
74…調整機能
75…束ね機能
76…集計機能
77…出力機能
78…エネルギー調整機能
78A…照射条件設定機能
78B…フィルタ設定機能
80…メモリ
82…検出データ
531…応答関数生成機能
532…X線吸収量算出機能
533…再構成処理機能
P…被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8