(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082409
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】受水槽
(51)【国際特許分類】
E03B 11/14 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196237
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】518232478
【氏名又は名称】株式会社バブルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】志手 直敏
(57)【要約】
【課題】狭いスペースで足り、保守・清掃も従来と変わりなくできる受水槽を提供する。
【解決手段】容量が必要給水量の1/4である単槽を3槽備えた単槽群を備える。前記各単槽は受排水装置でそれぞれ独立して受排水できる。制御手段は、通常時は、前記3槽全体で必要給水量の3/4の量の水を保持し、清掃時には前記3槽の内の特定の1槽を空にし、他の2槽で必要給水量の1/2を保持する構成とした。旧来の2槽式の受水槽からの更新は以下のようにして行う。旧来の2槽式の受水槽の内の1槽を潰して、残りの1槽で給水を継続し、前記潰された1槽のスペースに、既設時の給水量に基づいて決定された更新必要給水量の1/4の容量である単槽を2槽設置する。当該2つの単槽で給水し、前記2槽式の残りの1槽を壊し、前記壊されたスペースに前記単槽を更に1槽設置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量が必要給水量の1/4である単槽を3槽備えた単槽群と、
それぞれの前記単槽を独立して受排水できる、受排水装置と、
通常時に、前記3槽全体で必要給水量の3/4の量を保持し、清掃時に、前記3槽の内の特定の1槽を空にして他の2槽で前記必要給水量の1/2の水量を保持する制御手段と、
を備えたことを特徴とする受水槽。
【請求項2】
前記各槽がステンレスで構成される請求項1に記載の受水槽。
【請求項3】
2槽式の受水槽の更新方法であって、
2槽の内の1槽を潰して、残りの1槽で給水を継続し、
前記潰された1槽のスペースに、既設時のデータから割り出された更新必要給水量の1/4の容量である単槽を2槽設置し、
前記2槽式の残りの1槽を空にし、前記2槽の単槽で更新必要給水量の1/2の水量を受水して給水し、
前記2槽式の残りの1槽を壊し、
前記壊されたスペースに前記単槽を更に1槽設置し、
先に設置された2つの単槽とあとから設置された単槽の3つの単槽で更新必要給水量の3/4の量を受水して給水する
ことを特徴とする受水槽の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受水槽に関し、特に、マンション等の受水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションやビル等では地上や建物の屋内の受水槽で水道から受水をし、当該受水槽から更に屋上にある給水槽に水を送って、当該給水槽から各階、各戸に給水する仕組みになっている。もっとも、前記給水槽を設けないで、受水層から直接各階、各戸に給水するシステムもある。
【0003】
前記受水槽の容量は、戸数や、建造物の床面積等から割り出される必要給水量に依拠し、水道局と協議の上で決定し、補修、清掃を考慮して通常はその必要給水量の半分の容量を持つ2つの槽(
図1(b)2a、2b参照)で構成されるようになっている。
【0004】
前記受水槽2a、2bには、受水管と受水弁21a又は21bのいずれかを介して、平常時は2槽全体で、必要給水量になるように受水しておき、給水量に応じて、減った水量を自動的に補充する構成となっている。
【0005】
前記受水槽2a、2bは必要に応じて清掃される。このとき、1槽(例えば槽2a)を、受水弁21aを閉じ、排水弁22aを開いて空にして、当該空にした槽2aの清掃をし、このとき、残りの槽2bより給水する。このときの前記残りの槽の水量は必要給水量の1/2、である。
【0006】
次いで前記清掃が終了した槽2aに水を張って、当該水を張った槽2aから給水する。次いで、受水弁21bを閉じ、排水弁22bを開いて空にして、残りの槽2bを空にして、当該槽2bを清掃するようにしている。
【0007】
すなわち、清掃時には必要給水量の半分の容量が確保されている必要がある。尚、各戸・各階への給水は給水弁23a、23bと給水管を介して行われる。
【0008】
このような構成の従来の受水槽は、FRPで構成されていることが多いが、FRPといえども長年月の間には経年劣化が生じる。経年劣化によって水漏れ等が生じ始めると設備を更新する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
なし
【非特許文献】
【0010】
なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の受水槽の構成では、清掃や保守のときにも給水が継続できるように、半分に仕切られており、全体を構成する前記半分の槽の内の1槽は、必ず必要給水量の半分の容積を必要とする。
【0012】
当該2つの槽は建築物の敷地の相当の面積を必要とし、敷地面積を圧迫する。近年の高層建築物の受水槽は、建造物の地下に設置されることが多く、地下面積をぎりぎりになるまでのスペースを占めている。
【0013】
前記更新時には、前記半分の一方の槽を潰して同じ大きさの槽を新設し、その新設槽を用いて給水を継続し、他方の半分の槽を設置するという方法が採用されている。しかしながら、当該2槽が設置されている面積は狭く、既に周りに壁等の建築物が存在する状態のなかで行う必要があり、更新工事ははなはだ厄介な工事となっていた。
【0014】
また、半分の一方の槽を潰しても更新必要給水量(後述)の半分の容量に対応するに必要なスペースが得られないときには、仮設の受水槽を設けて給水を継続し、更新された受水槽が完成した段階で仮設から新設の受水槽に切り替えることがなされていた。この方法では結局2つの受水槽に対応する費用が必要となり、コストが高くなる問題がある。
【0015】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、従来に比べて狭いスペースで足り、保守・清掃も従来と変わりなくできる受水槽を提供することを目的とする。また、従来の受水槽を更新するときに更新作業がし易い受水槽と更新手順を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、容量が必要給水量の1/4である単槽を3槽備えた単槽群を備える。前記各単槽は受排水装置でそれぞれ独立して受排水できる。制御手段は、通常時は、前記3槽全体で必要給水量の3/4の量の水を保持し、清掃時には前記3槽の内の特定の1槽を空にし、他の2槽で必要給水量の1/2を保持する構成とした。
【0017】
前記各槽はステンレスで構成されるのが、耐久性の観点から望ましい。
【0018】
旧来の2槽式の受水槽から、当該発明の受水槽へ更新するときは以下の手順となる。
【0019】
旧来の2槽の内の1槽を潰して、残りの1槽で給水を継続し、前記潰された1槽のスペースに、既設時の給水量に基づいて決定された更新必要給水量の1/4の容量である単槽を2槽設置する。当該2つの単槽で受水して給水し、前記2槽式の残りの1槽を空にして壊し、前記壊されたスペースに前記単槽を更に1槽設置する。先に設置された2つの単槽とあとから設置された単槽の3つの単槽に合計で必要給水量を受水して給水する。
【発明の効果】
【0020】
受水槽を新設するについて重要なことは、清掃時に必要給水量の1/2を保持しておくことである。上記構成を採用することによって、1の単槽を順番に空にして、当該空の単槽を清掃することによって、必要給水量の1/2を保持して清掃をしながら給水を継続することができる。
【0021】
また、旧来の2槽式の受水槽を更新するに際して重要なことは、更新作業中および清掃時に必要給水量の1/2を保持しておくことである。上記手順を採ることによって、更新必要給水量の1/2を保持した状態で給水を継続し、更新作業(清掃作業)をすることができ、しかも旧来より狭いスペースに受水槽全体が治まることになる。
【0022】
更に、旧来の2槽式の受水槽を当該発明の受水槽に更新するとき、旧来より狭いスペースしか必要としないので作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】新設の本発明の受水槽を従来の受水槽と比較して示したものである。
【
図2】従来の受水槽から本発明の受水槽に更新するときの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、新設時の本発明の受水槽を従来の受水槽と比較して示したものである。
【0025】
前記したように、各市町村の水道局との協議によって、対象建造物の必要給水量Aが決定される。上記に説明したように、従来は当該必要給水量の1/2の容量を持つ槽を2つ、例えば対象建造物の地下に配置するようになっている(
図1(b)、2a、2b)。
【0026】
ここで重要なことは、必要給水量Aそのものではなく、清掃時に必要給水量Aの1/2の量の水を確保することである。必要給水量A自体は清掃時の1/2・Aの水量を割り出すための基準値にすぎない。仮に受水槽全体で必要給水量Aに満たない量C(C>1/2・A)しか確保できない状態であっても、受水管の管径を大きくする、あるいは受水回数を増やす等の対応で十分に対応することができるためである。ところが、貯水量が1/2Aを下回ると前記管径を大きくする、あるいは受水回数を増やしても、給水に追いつかない場合があり、その意味で清掃時の貯水量として必要給水量Aの1/2が要求される。
【0027】
本願発明は、
図1(a)に示すように必要給水容量Aの1/4の大きさの槽(以下単槽という)を3つ(1a、1b、1c)備えた構成とする。
【0028】
各単槽1a、1b、1cには受水管14と受水弁11a、11b、11cを介して市水が受水され、また排水管15と排水弁12a、12b、12cを介して、各単槽1a、1b、1cの水を抜ける構成になっている。更に、給水管16と給水弁13a、13b、13cを介して、各階(各戸)あるいは給水槽への給水をすることができるようになっている。
【0029】
前記受水弁11a、11b、11c、排水弁12a、12b、12cは後に説明するように制御手段30で制御できるようになっている。
【0030】
各単槽1a、1b、1cは、平常時は3つ全体で、必要給水量3/4Aを維持できるように前記制御手段30で制御するとともに、別個に受水、排水ができる制御も可能とする。
【0031】
上記構成において、受水槽の清掃は以下の手順で行う。
【0032】
まず、平常時は単槽1a、1b、1cの3つの槽を使用して必要給水量Aの3/4を確保して給水が継続されている。この状態で清掃作業を開始する場合、特定の単槽(例えば単槽1a)の受水弁11aを閉め、排水弁12aを開いて、単槽1aを空にする。このとき、単槽1b、1cは平常時と同様の水位を保つように、すなわち、必要給水量の1/2の水量を保持するように制御手段30で制御される。
【0033】
上記の状態で前記空にした単槽1aを清掃し、清掃作業が終わったとき、排水弁12aを閉じ、受水弁11bを閉め、受水弁11aを開き、3槽で必要給水量になるまで、単槽1aに受水する。次いで、排水弁12bを開いて、単槽1bを空にして、当該空にした単槽1bを清掃する。当該単槽1bの清掃が終わると、単槽1cを同様の手順で清掃する。
【0034】
上記した単槽3つよりなる受水槽は新築のビルやマンションにももちろん設置することができる。しかしながら、FRPによる旧来の2槽式の受水槽は、紫外線等による劣化がおおきく、経年劣化による水漏れが発生すると、更新する必要がある。当然本発明をこの場合の更新に適用することができる。
【0035】
図2は、従来の2槽式の受水槽を、本発明の3槽式の受水槽に更新するときの様子を示す概念図である。
【0036】
まず、更新必要給水量Bは、既設の2槽式の受水槽(
図2(c))でのデータから割り出されるが、対象建築物の建設時には、必要給水量Aが概ね現実の必要給水量より大きく採られているので、上記データに基づいて現実の更新必要給水量を算出すると、更新必要給水量Bは建設時に見積もった必要給水量Aより小さくなることが多い(
図2(c)→(b))。
【0037】
以上を踏まえて、従来の2槽式の受水槽の一方の槽(例えば2b)を空にして壊す。そのとき、前記一方の槽2bを残す方の槽2aの際まで壊すと、槽2aの槽2bとの境界の仕切り壁24が強度的に不十分であるので、前記仕切り壁24から所定距離αを残しておき、この部分に仕切り壁24に対するリブの役目を担わせる。
【0038】
前記壊した方の槽2bのスペースに、前記更新必要給水量Bの1/4の容量の本願発明の単槽を2つ(例えば1b、1c)設置する。この間各階、各戸への給水は旧来の残りの1槽2aで行う。ついで、新設した2つの単槽1b、1cの受水弁11b、11cを開いて当該単槽1b、1cに受水し、各階、各戸への給水を当該2つの単槽1b、1cに担わせる。尚、この時の受水量は最大で、更新必要給水量Bの1/2となる。
【0039】
その後、旧来の残りの1槽2aを空にして取り壊し、その後のスペースに、更に1の単槽1aを設置する。もちろんこの単槽1aにも受水弁11a、排水弁12aが設けられる。この最後に設けられる単槽1aは、前記最初に壊した槽2bを所定距離αだけ余した関係で、前記先に設置した単槽1bから、少なくとも所定距離α離れた位置に設置される。
【0040】
以後、平常時はこの3槽に更新必要給水量Bの3/4が貯まるように制御手段30で制御し、各階・各戸に給水するようになっている。
【0041】
前記更新工事において、受水槽だけでなく配管も更新する必要が生じる場合が多い。ところが、前記のように旧来の受水槽を1槽残し、当該1槽に給水を担わせながら、2つの単槽を設置するのであるから、この時点では老朽化した旧来の配管(ここでは水道からの受水管)を残しておく必要がある。
【0042】
そこで、前記旧来の槽が1槽残っている段階で、新設した2つの単槽1b、1cには新しい配管を介して受水する。当該新しい配管は、シャフトにスペースがある場合は、当該開いているスペースに通すことになり、シャフトに場所がない場合はシャフト以外の場所に新しい配管を仮設する。これによって、新しく設置された2つの単槽1b、1cへの受水が可能となる。
【0043】
ついで、3つの単槽が設置された時点で、前記新しい配管に切り替える。前記仮設の配管を使用している場合は(シャフト内にスペースが無い場合)、不要になった、旧来の配管を取り去って、新しい配管を当該取り去った後の部分に挿入するとともに、前記仮設の配管を外す。これによって、シャフト内に新しい配管を納めることができることになるとともに、3つの単槽1a、1b、1cへの受水が可能となる。
【0044】
以上説明したように、本発明は、従来必要給水量の容量を持つ2つの槽で構成されていた受水槽を、必要給水量の1/4の容量の3つ単槽に置き換えるようになっているので、従来の受水槽より設置面積が少なくなり、設置費用が安くなるとともに、更新工事も簡単になる。
【符号の説明】
【0045】
1a、1b、1c 単槽
2a、2b 2槽式の1槽
11a、11b、11c 給水弁
12a、12b、12c 排水弁
13a、13b、13c 給水弁
14 受水管
15 排水管
16 給水管
21a、21b 給水弁
22a、22b 排水弁
23a、23b 給水弁