(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008241
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240112BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109946
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大泉 朋久
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】簡易に且つ効率的に水上モビリティへの充電を可能とするワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【解決手段】ワイヤレス給電システムは、地上に設置された電源に接続され、回転体形状の第1ケーシング内に、前記第1ケーシングと同一軸となるように位置決めされた送電コイルと、水上モビリティに設けられた蓄電池に接続され、前記第1ケーシングと係合する回転体形状の第2ケーシング内に、前記第2ケーシングと同一軸となるように位置決めされる受電コイルとを含み、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが係合した場合に、前記送電コイル及び前記受電コイルは同一軸となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された電源に接続され、回転体形状の第1ケーシング内に、前記第1ケーシングと同一軸となるように位置決めされた送電コイルと、
水上モビリティに設けられた蓄電池に接続され、前記第1ケーシングと係合する回転体形状の第2ケーシング内に、前記第2ケーシングと同一軸となるように位置決めされる受電コイルと
を含み、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが係合した場合に、前記送電コイル及び前記受電コイルは同一軸となる
ワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記第1ケーシングは、地上に設置される柱と同軸の扁平柱状であり、
前記第2ケーシングは、前記柱が挿通する中空円柱状である
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記柱の内部は、磁性体である
請求項2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記第1ケーシングは一端が開放された有底円筒状であって、前記第1ケーシングの底部に前記送電コイルが設けられており、
前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングの内周よりも小さい外周を持つ円柱状又は中空円柱状である
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記第1ケーシングは、中空円柱状であり、
前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングに挿通する突出部を立設させた扁平円柱状である
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
前記突出部の内部は磁性体である
請求項5に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項7】
前記第2ケーシングは、前記水上モビリティの係留索に吊り下げられる
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動水上モビリティへのワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会の実現に向け、自動車等の陸上モビリティのみならず、世界の流通を担う船舶のような水上モビリティについても電動化が実現されている(非特許文献1等)。陸上であっても、水上であっても、電動モビリティは大容量の充電が高速にできるか否かが問題となる。特に水上モビリティの場合は、船着き場で、バッテリを内蔵した船体に送電コイルを近づけて充電するため、波による揺れの影響が課題となる。
【0003】
特許文献1には、船体の外壁面に電磁界が透過する材料からなる透過部を設け、その内側に受電コイルを対向させて給電コイルから受電可能とすることが開示されている。特許文献1には、船体の揺れに対し、給電コイル側から船舶の外面に吸着するバキュームカップ等の吸着装置を用い、給電コイルを受電コイル側と共に動くようにして、伝送効率の低下を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ダイヘン,“電気推進船向け大容量ワイヤレス充放電実証実験の実施について”,[online],令和4年2月4日,株式会社ダイヘン ニュースリリース,[令和4年6月10日検索],インターネット<URL: https://www.daihen.co.jp/newinfo_2022/news_220204.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
給電コイルを、水上モビリティと共に揺動可能とする構成では、給電コイル及びそれを制御する給電装置が大規模になる。波による揺れや流れの力は強く、それに抵抗して固定することは困難である。また、水上モビリティの外壁面は、特定の種類の軽量の船体以外は、電磁界を透過させるのが困難な鉄板が大部分であるところ、透過部を設けるにはコストや安全性が課題になる。
【0007】
本発明は、簡易に且つ効率的に水上モビリティへの充電を可能とするワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るワイヤレス給電システムは、地上に設置された電源に接続され、回転体形状の第1ケーシング内に、前記第1ケーシングと同一軸となるように位置決めされた送電コイルと、水上モビリティに設けられた蓄電池に接続され、前記第1ケーシングと係合する回転体形状の第2ケーシング内に、前記第2ケーシングと同一軸となるように位置決めされる受電コイルとを含み、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが係合した場合に、前記送電コイル及び前記受電コイルは同一軸となる。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態に係るワイヤレス給電システムによれば、地上に設けられた送電コイルのケーシングに、水上モビリティの蓄電池と接続された受電コイルのケーシングを係合させるという容易な操作で、送電コイルと受電コイルとを位置決め可能である。係留索に係留されている範囲で水上モビリティが動いても、位置ずれが発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のワイヤレス給電システムの概要図である。
【
図2】第1実施形態の送電コイルと受電コイルを示す模式斜視図である。
【
図3】第2実施形態の送電コイルと受電コイルを示す模式斜視図である。
【
図4】第3実施形態の送電コイルと受電コイルを示す模式斜視図である。
【
図5】第4実施形態の送電コイルと受電コイルを示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のワイヤレス給電システム100の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のワイヤレス給電システム100の概要図である。ワイヤレス給電システム100は、地上に設置された送電装置1と、水上モビリティに設けられた受電装置2とを含む。送電装置1は、送電のために地上に設けられる柱Pと、この柱Pと軸が共通する送電コイル10と、送電コイル10を位置決めするケーシング11と、送電コイル10へ電流を提供する電源12とを有する。柱Pは、係留柱Mと兼用であってもよいが、
図1に示すように、別途、係留柱Mに並べて設置されるとよい。受電装置2は、柱Pに係合する形状のケーシング21と、ケーシング21に位置決めされた受電コイル20に発生する電流を伝送する電力線を内包するケーブル22とを含む。受電装置2は、ケーブル22を介して電力を伝送してバッテリ3へ電力を供給する伝送部23を含む。
【0013】
環状のケーシング21を有する受電コイル20は、水上モビリティのデッキなど、係留索の収納場所近傍に、作業員により取り出し可能に設置されている。係留索が係留柱Mに固定されると、カラビナ等のフックによって受電コイル20をケーシング21ごと係留索に吊り下げ、受電コイル20を係留柱Mに運搬することができる。このとき、ケーブル22は係留索に沿うようにして延びる。陸側の作業員は、受電コイル20のケーシング21のフックを係留索から取り外し、受電コイル20を柱Pに係合させる。ケーブル22は、係留索の長さに対してゆとりを持たせた長さとしてある。自動的に、あるいは作業員の操作によって、送電装置1から受電装置2へ電力が供給されると、伝送部23を介して水上モビリティの駆動用のバッテリ3へ供給され、ワイヤレス給電が実現される。
【0014】
受電コイル20のケーシング21、ケーブル22及び送電装置1を十分に防水加工しておくことにより、端子が露出するようなコネクタで接続される有線充電よりも安全な給電が実現可能となる。以下、送電装置1のケーシング11の形状と、受電装置2の受電コイル20及びケーシング21の形状について詳細に説明する。
【0015】
図2は、第1実施形態の送電コイル10と受電コイル20を示す模式斜視図である。
図2では、送電コイル10と受電コイル20とをそれぞれ位置決めするケーシング11及びケーシング21の詳細を示す。
【0016】
第1実施形態において送電コイル10は、鉛直方向に立設されている柱Pの軸と同軸となるように、柱Pの下方に設置されている。送電コイル10は、
図2に示すように柱Pが立設された扁平柱状のケーシング11内に設置されている。ケーシング11と柱Pとで回転体をなしている。ケーシング11の形状は、
図2においては円柱状であるが、軸を有して送電コイル10を位置決めする形状であればこれに限らない。四角柱、六角柱、八角柱、十二角柱等であってもよい。送電コイル10は、柱Pが立設されている地面より下に埋められて設置されていてもよい。柱Pの軸中心にはコアが設けられてもよい。送電コイル10の下方には、
図2に示すように、電磁界を送電コイル10側へ戻すための磁性体からなるシールド102が設けられている。シールド102は必須ではない。電源からの電流が送電コイル10を流れると、鉛直方向に垂直な円環状に流れる電流に対してポロイダル方向の磁界が発生する。さらに、柱Pの内部にファライト等の磁性体を設けることにより、送電コイル10から受電コイル20への電力の伝達効率を向上させることができる。
【0017】
受電コイル20は、電磁界を透過する性質の中空円柱状のケーシング21内に収容され、防水加工されたケーブル22内の電力線と接続されている。受電コイル20は、中空円柱状のケーシング21が柱Pに挿通されるように載置されると、送電コイル10と同軸になる。送電コイル10に発生する磁界によって、受電コイル20に電流が発生し電力がケーブル22内の電力線へ流れる。
【0018】
柱Pに受電コイル20のケーシング21が係合される形状であることにより、送電コイルと受電コイルとの位置合わせが簡易に実現する。
図2では、ケーシング11及び送電コイル10の軸は鉛直方向に沿うように図示されているが、これに限らず、水平方向に沿う軸を持つように設置されてもよい。水上モビリティが、係留索に係留されている範囲で動いても、受電コイル20と送電コイル10との位置ずれは起こり難く、電力の伝送効率が低下しにくい。また、端子が露出するようなコネクタを使用しないので、水上モビリティのバッテリ3の充電に安全に使用可能である。
【0019】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるワイヤレス給電システム100の構成は、送電コイル10を位置決めするためのケーシング11の形状を除き、第1実施形態のワイヤレス給電システム100と同様である。以下、送電コイル10のケーシング101の形状について説明する。
【0020】
図3は、第2実施形態の送電コイル10と受電コイル20を示す模式斜視図である。送電コイル10は、一端が開放された有底円筒状のケーシング11の底部に、ケーシング11と軸を同一とするようにして設置されている。
図3では、ケーシング11及び送電コイル10の軸は鉛直方向に沿うように図示されているが、これに限らず、水平方向に沿う軸を持つように設置されてもよい。
【0021】
ケーシング11は、電磁界のシールドとして機能してもよい。受電コイル20は、第1実施形態同様に、中空円柱状のケーシング21を有し、ケーシング11の内周は、受電コイル20のケーシング21の外周より少し大きい。ケーシング21は、中空円柱状ではなく扁平な扁平円柱状であってもよい。受電コイル20は、ケーシング21が送電装置1の円筒状のケーシング11内に嵌合するように載置されると、送電コイル10と同軸となる。第2実施形態においても、送電コイル10に発生する磁界によって、受電コイル20に電流が発生し電力がケーブル22内の電力線に流れる。
【0022】
第2実施形態においても、ケーシング11に受電コイル20のケーシング21が係合する形状であることにより、送電コイル10と受電コイル20との位置合わせが簡易に実現する。水上モビリティが、係留索に係留されている範囲で動いても、受電コイル20と送電コイル10との位置ずれは起こりづらく、電力の伝送効率が低下しにくい。また、端子が露出するようなコネクタを使用しないので、水上モビリティのバッテリ3の充電に安全に使用可能である。
【0023】
(第3実施形態)
第3実施形態におけるワイヤレス給電システム100の構成は、送電コイル10のケーシング及び受電コイル20のケーシングの形状を除き、第1実施形態のワイヤレス給電システム100と同様である。以下、送電コイル10及び受電コイル20それぞれのケーシングの形状について説明する。
【0024】
図4は、第3実施形態の送電コイル10と受電コイル20を示す模式斜視図である。第3実施形態の送電コイル10は、中空円柱状のケーシング11内に、ケーシング11と軸を同一とするようにして設置されている。
図4では、ケーシング11及び送電コイル10の軸は鉛直方向に沿うように図示されているが、これに限らず、水平方向に沿う軸を持つように設置されてもよい。
【0025】
受電コイル20は、扁平円柱状のケーシング211内に設けられている。ケーシング211の一方の端面の中央には、同軸となるように立設された円柱状の突出部212が設けられている。ケーシング211及び突出部212とで回転体をなしている。突出部212の大きさは、送電コイル10の中空円柱状のケーシング11の内周よりも少し小さく、受電コイル20のケーシング211の突出部212は、送電コイル10の中空円柱状のケーシング11の内側に嵌合可能である。突出部212がケーシング11の内側に嵌合するように載置されると、受電コイル20は、送電コイル10と同軸となる。第3実施形態においても、送電コイル10に発生する磁界によって、受電コイル20に電流が発生し電力がケーブル22内の電力線に流れる。さらに、突出部212の内部にファライト等の磁性体を設けていれば、送電コイル10から受電コイル20への電力の伝達効率を向上させることができる。
【0026】
第3実施形態においても、ケーシング11に受電コイル20のケーシング211の突出部212が係合する形状であることにより、送電コイル10と受電コイル20との位置合わせが簡易に実現する。水上モビリティが、係留索に係留されている範囲で動いても、受電コイル20と送電コイル10との位置ずれは起こりづらく、電力の伝送効率が低下しにくい。また、端子が露出するようなコネクタを使用しないので、水上モビリティのバッテリ3の充電に安全に使用可能である。
【0027】
送電コイル10のケーシング、及び受電コイル20のケーシングの形状は、第1~第3実施形態で図示した形状に限らず、一部が組み合わせられてもよい。第2実施形態の逆となるように、受電コイル20のケーシング21が有底円筒状となっており、中空円柱状又は扁平円柱状の形状を有する送電コイル10のケーシングに被さるように係合してもよい。第2実施形態の送電コイル10のケーシング11の底の中央部に、受電コイル20の中空円柱状のケーシングの内側に嵌合する突出部が設けられて嵌合してもよい。ケーシング11が地面に埋められていてもよいし、ケーシング11の外周は円筒状でなくてもよい。
【0028】
(第4実施形態)
送電コイル10と受電コイル20とで径は同等とし、対向させる構成としたが、送電コイル10と受電コイル20とが、内外に位置するような構成としてもよい。
図5は、第4実施形態の送電コイル10と受電コイル20を示す模式斜視図である。第4実施形態において送電コイル10は、柱P2の内側内に、柱P2と軸を同一とするようにして設置されている。柱P2の外周は、受電コイル20の中空円柱状のケーシング21の内周よりも少し小さい。
【0029】
図5に示したようなケーシング21及び柱P2(ケーシング)であっても、受電コイル20のケーシング21を柱P2に係合させる、という簡易な操作で受電コイル20及び送電コイル10の位置合わせが成立する。更に、水上モビリティが係留索に係留されている範囲で動いても、受電コイル20は、ケーシング21の内周と柱P2の外周の遊び分しか移動せず、受電コイル20と送電コイル10との位置ずれは起こりづらく、電力の伝送効率が低下しにくい。
【0030】
さらに、第4実施形態においては、
図5の柱P2は、送電コイル10の中心部にファライト等の磁性体を挿入した構造とすることにより、送電コイル10から受電コイル20への電力の伝達効率を向上させることができる。なお、磁性体の位置は送電コイル10の中心部ではなく、送電コイル10と受電コイル20の境界面である柱P2の外周部であってもよく、柱P2に磁性体を設けていればよい。
【0031】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0032】
100 ワイヤレス給電システム
1 送電装置
10 送電コイル
102 シールド
11 ケーシング
12 電源
P,P2 柱
M 係留柱
2 受電装置
20 受電コイル
21,211 ケーシング
212 突出部
22 ケーブル
23 伝送部
3 バッテリ