(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082415
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用内装パネル構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240613BHJP
B60K 35/70 20240101ALI20240613BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20240613BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60K37/00 B
B60K37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196245
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東山 拓実
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅文
(72)【発明者】
【氏名】江村 陽平
(72)【発明者】
【氏名】大森 雄三
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
【Fターム(参考)】
3D023BA07
3D023BB14
3D023BC01
3D023BD11
3D023BD29
3D023BE03
3D023BE24
3D344AA01
3D344AA07
3D344AA11
3D344AB01
3D344AC01
(57)【要約】
【課題】剛性と衝撃吸収性能の両方に優れた車両用内装パネル構造を提供する。
【解決手段】車両用内装パネル構造101は、車両1に設けられる内装パネル2と、車両衝突時に内装パネル2に入力された外部荷重を受ける荷重受け部10と、を備え、荷重受け部10には、介在部12を隔てて互いに隣り合う第1貫通孔13及び第2貫通孔15が設けられており、荷重受け部10が外部荷重を受けたときに介在部12が開裂するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる内装パネルと、車両衝突時に上記内装パネルに入力された外部荷重を受ける荷重受け部と、を備える、車両用内装パネル構造であって、
上記荷重受け部には、介在部を隔てて互いに隣り合う第1貫通孔及び第2貫通孔が設けられており、
上記荷重受け部が上記外部荷重を受けたときに上記介在部が開裂するように構成されている、車両用内装パネル構造。
【請求項2】
上記第1貫通孔と上記第2貫通孔には、上記介在部を隔てて対向する位置に角部が設けられている、請求項1に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項3】
上記介在部は、当該介在部に隣接する隣接部に比べて薄肉となるように構成されている、請求項1または2に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項4】
上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方は、上記外部荷重により生じる応力を利用して上記介在部を一方の貫通孔側から他方の貫通孔側に向けて開裂させるような指向開口形状の孔縁部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項5】
上記指向開口形状は、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方の貫通孔の上記孔縁部が他方の貫通孔に向けて先鋭状に突出した突出形状である、請求項4に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項6】
上記荷重受け部は、互いに異なる平面に沿って延びる2つの壁部を有し、上記2つの壁部のうちの一方に上記第1貫通孔が設けられ他方に上記第2貫通孔が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項7】
上記内装パネルは、上記荷重受け部に取付けられるカバー部材を備え、上記荷重受け部には、上記カバー部材の取付けのための取付孔が設けられており、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方が上記取付孔によって構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両用内装パネル構造。
【請求項8】
上記荷重受け部は、複数の上記取付孔が設けられた第1壁部と、上記第1壁部に隣接して延びており複数の肉抜き孔が設けられた第2壁部と、を有し、上記第1壁部の上記取付孔が上記第1貫通孔であり上記第2壁部の上記肉抜き孔が上記第2貫通孔であり、互いに隣接する2つの上記取付孔の間の中間領域に上記肉抜き孔が設けられている、請求項7に記載の車両用内装パネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる内装パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両インストルメントパネル構造が開示されている。この構造は、ヘッドアップディスプレイ装置と、ヘッドアップディスプレイ装置側のヒートシンクから突出した第一ブラケットと、インパネリーンフォースメントに保持されており第一ブラケットと係合する第二ブラケットと、歩行者が車両に衝突してヘッドアップディスプレイ装置に下向きの外部荷重が入力されたときに第二ブラケットに対して第一ブラケットを下向きに相対変位させる相対変位手段と、を備えている。
【0003】
上記車両インストルメントパネル構造は、ヘッドアップディスプレイ装置の取付剛性が低下するという問題に対して、ヘッドアップディスプレイ装置側の第一ブラケットをインパネリーンフォースメント側の第二ブラケットに係合させることによって取付剛性を高めるように構成されている。また、この構造は、歩行者が車両に衝突したときに歩行者に対する衝撃エネルギーが高くなるという問題に対して、相対変位手段によってヘッドアップディスプレイ装置に下向きに変位させることで衝撃吸収性能を高めるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インストルメントパネルのような内装パネルも、上記ヘッドアップディスプレイ装置の場合と同様の問題を抱えている。内装パネルは、車両衝突時に乗員から外部荷重を受けることが想定されるため、乗員が受ける衝撃を緩和するために衝撃吸収性能を高めることが求められる。このためには、インストルメントパネル側の板厚を薄くしたり孔をあけたりすることによって、インストルメントパネル側を構造的に弱体化させるという対策が考えられる。ところが、このような対策は、衝撃吸収性能を高めるのに有効であるものの、内装パネル自体の剛性を低下させることになり、内装パネルの耐熱性能や建付け品質の低下の要因に成り得る。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、剛性と衝撃吸収性能の両方に優れた車両用内装パネル構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両に設けられる内装パネルと、車両衝突時に上記内装パネルに入力された外部荷重を受ける荷重受け部と、を備える、車両用内装パネル構造であって、
上記荷重受け部には、介在部を隔てて互いに隣り合う第1貫通孔及び第2貫通孔が設けられており、
上記荷重受け部が上記外部荷重を受けたときに上記介在部が開裂するように構成されている、車両用内装パネル構造、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、車両衝突時に内装パネルに入力された外部荷重は荷重受け部に作用する。このとき、第1貫通孔と第2貫通孔の間に介在する介在部が、荷重受け部に作用する外部荷重によって開裂するように構成されている。この車両用内装パネル構造によれば、通常時には、荷重受け部が内装パネルから外部荷重を受けないため、第1貫通孔と第2貫通孔との間の介在部が開裂することがなく、所望のレベルの剛性を確保することができる。これにより、内装パネルの耐熱性能や建付け品質が低下するのを抑制できる。一方で、車両衝突時には、荷重受け部が内装パネルから外部荷重を受けるが、このときの応力を、介在部を開裂させるのに専ら使用することができる。これにより、内装パネルに対して外部荷重が入力された場合にのみ荷重受け部で衝撃吸収を行うことができる。その結果、乗員が内装パネルから受ける衝撃が緩和される。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、剛性と衝撃吸収性能の両方に優れた車両用内装パネル構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の車両用内装パネル構造を車室側からみた斜視図。
【
図2】
図1中の荷重受け部をカバー部材が取り外された状態にて示す斜視図。
【
図4】
図2中の荷重受け部の取付孔の周辺を模式的に示す図。
【
図6】
図4において車両衝突時に介在部が開裂するときの様子を説明するための図。
【
図7】
図3において車両衝突時に介在部が開裂して複数の肉抜き孔が複数の取付孔を介して繋がったときの状態を示す側面図。
【
図8】
図4に対応した図であって取付孔の形状の変更例を模式的に示す図。
【
図9】実施形態2の車両用内装パネル構造について荷重受け部の取付孔及び肉抜き孔の周辺を模式的に示す図。
【
図10】実施形態3の車両用内装パネル構造について荷重受け部の取付孔及び肉抜き孔の周辺を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔には、上記介在部を隔てて対向する位置に角部が設けられているのが好ましい。
【0013】
この車両用内装パネル構造によれば、荷重受け部が外部荷重を受けたときに生じる応力は第1貫通孔と第2貫通孔のそれぞれの角部に集中し易いため、このときの応力によって角部同士の間の介在部を優先的に開裂させて衝撃吸収を行うことができる。
【0014】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記介在部は、当該介在部に隣接する隣接部に比べて薄肉となるように構成されているのが好ましい。
【0015】
この車両用内装パネル構造によれば、第1貫通孔と第2貫通孔との間の介在部の板厚がその隣接部の板厚を下回るように薄肉化することによって、介在部が隣接部と同一の板厚である場合に比べて、応力が介在部に伝播し易くなる。これにより、介在部が開裂して第1貫通孔と第2貫通孔を繋ぐまでに要する時間を短縮できる。
【0016】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方は、上記外部荷重により生じる応力を利用して上記介在部を一方の貫通孔側から他方の貫通孔側に向けて開裂させるような指向開口形状の孔縁部を有するのが好ましい。
【0017】
この車両用内装パネル構造において、孔縁部の指向開口形状は、第1貫通孔と第2貫通孔との間の介在部を外部荷重により生じる応力を利用して一方の貫通孔側から他方の貫通孔側に向けて開裂させるための形状である。この指向開口形状によれば、外部荷重により生じた応力が孔縁部に集中するように方向性を持って伝播する。そして、この応力集中によって介在部が一方の貫通孔側から他方の貫通孔側に向けて方向性を持って開裂する。これにより、第1貫通孔と第2貫通孔を繋げることができる。
【0018】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記指向開口形状は、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方の貫通孔の上記孔縁部が他方の貫通孔に向けて先鋭状に突出した突出形状であるのが好ましい。
【0019】
この車両用内装パネル構造によれば、孔縁部の指向開口形状を先鋭状の突出形状とすることで、孔縁部の構成を簡素化することができる。
【0020】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記荷重受け部は、互いに異なる平面に沿って延びる2つの壁部を有し、上記2つの壁部のうちの一方に上記第1貫通孔が設けられ他方に上記第2貫通孔が設けられているのが好ましい。
【0021】
この車両用内装パネル構造によれば、互いに異なる平面に沿って延びる2つの壁部のそれぞれに第1貫通孔と第2貫通孔のそれぞれを設けることによって、第1貫通孔と第2貫通孔との間の介在部を荷重受け部が外部荷重を受けたときの衝撃吸収に利用できる。
【0022】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記内装パネルは、上記荷重受け部に取付けられるカバー部材を備え、上記荷重受け部には、上記カバー部材の取付けのための取付孔が設けられており、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔の少なくとも一方が上記取付孔によって構成されているのが好ましい。
【0023】
この車両用内装パネル構造によれば、カバー部材の取付けのために荷重受け部に予め設けられる取付孔を、車両衝突時に荷重受け部を弱体化させるのに利用できる。このため、第1貫通孔と第2貫通孔の全てを荷重受け部の弱体化専用に設けるような場合に比べて、製造にかかるコストを低く抑えることができる。
【0024】
上述の態様の車両用内装パネル構造において、上記荷重受け部は、複数の上記取付孔が設けられた第1壁部と、上記第1壁部に隣接して延びており複数の肉抜き孔が設けられた第2壁部と、を有し、上記第1壁部の上記取付孔が上記第1貫通孔であり上記第2壁部の上記肉抜き孔が上記第2貫通孔であり、互いに隣接する2つの上記取付孔の間の中間領域に上記肉抜き孔が設けられているのが好ましい。
【0025】
この車両用内装パネル構造によれば、車両衝突時に取付孔と肉抜き孔との間の介在部が全て開裂することで、第1壁部の複数の取付孔と第2壁部の複数の肉抜き孔の全てを連続的に繋げることができる。これにより、荷重受け部の第1壁部と第2壁部のそれぞれを広範囲にわたって弱体化させることができる。
【0026】
以下、車両に設けられる車両用内装パネル構造(以下、単に「内装パネル構造」という。)の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、この図面において、特に断りのない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示すものとする。また、便宜上、車両前後方向を「前後方向」といい、車両左右方向を「左右方向」といい、車両上下方向を「上下方向」という。
【0027】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の内装パネル構造101は、内装パネル2と荷重受け部10を備えている。本形態の内装パネル2は、車両1の車室前部に車室に対向するように設けられたインストルメントパネルである。この内装パネル2には、空調風が吹き出す複数の吹出口2aが設けられている。車両衝突時に乗員からこの内装パネル2に外部荷重が入力されることがある。
【0028】
本形態では、内装パネル2を構成する助手席側のカバー部材3に外部荷重Fが車両前方に向けて入力される場合について説明する。カバー部材3は、複数の係合爪3aを有し、これら複数の係合爪3aを介して荷重受け部10に取付けられている。このカバー部材3は、荷重受け部10に取付けられた状態で車両の左端の吹出口2aに隣接して配置される。
【0029】
1.荷重受け部10の構造
荷重受け部10は、カバー部材3の車両前方側に配置されており、車両衝突時にカバー部材3に入力された外部荷重Fを受けるように構成されている。
図2及び
図3に示されるように、荷重受け部10は、第1壁部11と第2壁部14とを有する。
【0030】
第1壁部11は、荷重受け部10の各部位のうち概ね前後方向を板厚方向とした部位である。本形態では、第1壁部11が段付き形状をなしている。この第1壁部11には、カバー部材3の取付けのための複数の取付孔13が間隔をあけて設けられている。各取付孔13は、第1壁部11をその板厚方向(前後方向)に貫通した孔部である。カバー部材3は、各係合爪3aが各取付孔13に係合することによって第1壁部11に固定される。
【0031】
第2壁部14は、荷重受け部10の各部位のうち概ね左右方向を板厚方向とした部位である。この第2壁部14は、第1壁部11と直交するように延びている。すなわち、2つの壁部11,14は、互いに異なる平面に沿って延びている。第2壁部14には、複数の肉抜き孔15が間隔をあけて設けられている。各肉抜き孔15は、第2壁部14をその板厚方向(左右方向)に貫通した孔部である。各肉抜き孔15は、第2壁部14の中間領域14aに設けられている。中間領域14aは、第1壁部11側の複数の取付孔13のうち互いに隣接する2つの取付孔13の間の領域に隣接した領域である。
【0032】
2.取付孔13及び肉抜き孔15の構造
図2~
図4に示されるように、取付孔13と肉抜き孔15は、介在部12を隔てて互いに隣り合うように配置されている。取付孔13を第1貫通孔としたとき、肉抜き孔15は、介在部12を隔てて第1貫通孔に隣り合う第2貫通孔となっている。なお、
図4は、取付孔13と肉抜き孔15の関係を説明するために、あくまで取付孔13の周辺を模式的に示すものである。
図4に示される取付孔13及び肉抜き孔15の配置について
図2及び
図4に示されるものと若干の齟齬があるのはそのためである。
【0033】
図4に示されるように、取付孔13の1つの角部である孔縁部13aは、1つの肉抜き孔15に向けて先鋭状に突出した指向開口形状をなしている。同様に、取付孔13の別の角部である孔縁部13bは、別の肉抜き孔15に向けて先鋭状に突出した指向開口形状をなしている。そして、取付孔13の孔縁部13aの突出方向D1の延長線上に1つの肉抜き孔15の一部が位置しており、取付孔13の孔縁部13bの突出方向D2の延長線上に別の肉抜き孔15の一部が位置している。
【0034】
ここでいう「指向開口形状」とは、車両衝突時にカバー部材3に入力された外部荷重F(
図1を参照)により生じる応力を利用して介在部12を取付孔13側から肉抜き孔15側に向けて開裂させるための開口形状をいう。本形態では、取付孔13の孔縁部13a,13bは、介在部12のうちの取付孔13側の領域に応力集中が生じ易くするために、その開口幅が突出先端に向けて漸減するような略V字の突出形状になっている。このような形状を「ノッチ形状」或いは「切り欠き形状」ということもできる。
【0035】
図5に示されるように、取付孔13と肉抜き孔15との間の介在部12は、第1壁部11の一部である。本形態では、介在部12は、当該介在部12に隣接する隣接部である第2壁部14に比べて薄肉となるように構成されている。すなわち、第1壁部11の板厚d1は、第2壁部14の板厚d2を下回るように構成されている。
【0036】
3.介在部12の開裂動作
図6に示されるように、車両衝突時に乗員からカバー部材3に入力された外部荷重Fの一部は、先ず、その前方側に位置に第1壁部11に伝播する。このとき、取付孔13の各開口縁のうち、特に前述のような指向開口形状をなしている2つの孔縁部13a,13b(介在部12のうちの取付孔13側の領域)に応力が集中する。このため、取付孔13の孔縁部13a,13bは、介在部12を開裂線Tに沿って開裂させて取付孔13と肉抜き孔15を繋げる起点となる。そして、2つの孔縁部13a,13bにおける応力集中によって、開裂線Tに沿って方向性を持って開裂する。その後、介在部12が開裂線Tで完全に分断されることによって、取付孔13と肉抜き孔15が繋がることによって、荷重受け部10が弱体化する。
【0037】
図7に示されるように、車両衝突時に各取付孔13と各肉抜き孔15との間の各介在部12が全て開裂することで、第1壁部11の複数の取付孔13と第2壁部14の複数の肉抜き孔15の全てを連続的に繋げることができる。これにより、荷重受け部10の第1壁部11と第2壁部14のそれぞれを広範囲にわたって弱体化させることができる。なお、
図7では、取付孔13と肉抜き孔15それぞれの位置が明確になるように、取付孔13と肉抜き孔15それぞれにハッチングを付している。
【0038】
以下に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0039】
実施形態1の内装パネル構造101において、車両衝突時に内装パネル2のカバー部材3に入力された外部荷重Fは荷重受け部10に作用する。このとき、荷重受け部10の第1壁部11に設けられた取付孔13には、指向開口形状をなす孔縁部13a,13bが設けられている。この指向開口形状は、取付孔13と肉抜き孔15との間の介在部12を外部荷重Fにより生じる応力を利用して取付孔13側から肉抜き孔15側に向けて開裂させるための形状である。この指向開口形状によれば、外部荷重Fにより生じた応力が孔縁部13a,13bに集中するように方向性を持って伝播する。そして、この応力集中によって介在部12が取付孔13側から肉抜き孔15側に向けて方向性を持って開裂する。すなわち、本形態の内装パネル構造101は、取付孔13と肉抜き孔15の間に介在する介在部12が、荷重受け部10に作用する外部荷重Fによって開裂するように構成されている。これにより、取付孔13と肉抜き孔15を繋げることができる。
【0040】
上記構成の内装パネル構造101によれば、通常時には、荷重受け部10がカバー部材3から外部荷重Fを受けないため、取付孔13と肉抜き孔15との間の介在部12が開裂することがなく、所望のレベルの剛性を確保することができる。これにより、内装パネル2の耐熱性能や建付け品質が低下するのを抑制できる。一方で、車両衝突時には、荷重受け部10がカバー部材3から外部荷重Fを受けるが、このときに孔縁部13a,13bで生じる応力を、介在部12を取付孔13側から肉抜き孔15側に向けて開裂させるのに専ら使用することができる。これにより、カバー部材3に対して外部荷重Fが入力された場合にのみ荷重受け部10を弱体化させて衝撃吸収を行うことができる。その結果、乗員がカバー部材3から受ける衝撃が緩和される。
【0041】
上記構成の内装パネル構造101によれば、互いに異なる平面に沿って延びる2つの壁部11,14のそれぞれに取付孔13と肉抜き孔15のそれぞれを設けることによって、取付孔13と肉抜き孔15との間の介在部12を荷重受け部10が外部荷重Fを受けたときの衝撃吸収に利用できる。
【0042】
以上のごとく、実施形態1によれば、剛性と衝撃吸収性能の両方に優れた内装パネル構造101を提供することができる。
【0043】
実施形態1の内装パネル構造101によれば、取付孔13と肉抜き孔15の間の介在部12の板厚d1がその隣接部である第2壁部14の板厚d2を下回るように薄肉化することによって、介在部12が第2壁部14と同一の板厚である場合に比べて、孔縁部13a,13bに局所的に集中した応力が介在部12に伝播し易くなる。これにより、介在部12が開裂して取付孔13と肉抜き孔15を繋ぐまでに要する時間を短縮できる。
【0044】
実施形態1の内装パネル構造101によれば、カバー部材3の取付けのために荷重受け部10に予め設けられる取付孔13を、車両衝突時に荷重受け部10を弱体化させるのに利用できる。本形態では、取付孔13は、カバー部材3の取付けのための機能と荷重受け部10の弱体化のための機能を兼務している。これに対して、肉抜き孔15は、荷重受け部10の弱体化専用に設けられている。このため、取付孔13と肉抜き孔15の全てを荷重受け部10の弱体化専用に設ける場合に比べて、製造にかかるコストを低く抑えることができる。
【0045】
なお、取付孔13の孔縁部13a,13bの指向開口形状は、取付孔13と肉抜き孔15との間の介在部12に応力集中を生じさせる指向性を発揮させることができるものであれば、
図4に示される先鋭状の突出形状のみに限定されるものではない。この突出形状に代えて、例えば、
図8に示されるような突出形状を採用することもできる。
図8に示される突出形状は、孔縁部13a,13bの開口幅が突出先端に向けて段階的に減少する形状である。
【0046】
次に、上述の実施形態1に関連する他の形態について図面を参照しつつ説明する。他の形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0047】
(実施形態2)
図9に示されるように、実施形態2の内装パネル構造102は、第2壁部14の各肉抜き孔15にも、第1壁部11の各取付孔13の孔縁部13a,13bと同様に、指向開口形状をなす孔縁部15a,15bが設けられている点で、実施形態1の内装パネル構造101と相違している。なお、
図9では、説明の便宜上、第2壁部14が第1壁部11の延在面に沿って同一平面上に延びるように示している。本形態では、各肉抜き孔15の孔縁部15aの突出先端(肉抜き孔15の角部)が介在部12を隔てて各取付孔13の孔縁部13aの突出先端(取付孔13の角部)と向かい合い、各肉抜き孔15の孔縁部15bの突出先端(肉抜き孔15の角部)が介在部12を隔てて各取付孔13の孔縁部13bの突出先端(肉抜き孔15の角部)と向かい合うようになっている。
【0048】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0049】
実施形態2の内装パネル構造102によれば、車両衝突時に荷重受け部10のうちの第1壁部11に荷重が優先して入力されたときには、孔縁部13a,13bの指向開口形状によって孔縁部13a,13b側から介在部12に応力を集中させて介在部12を取付孔13側から肉抜き孔15側へと開裂させることができる。これに対して、車両衝突時に荷重受け部10のうちの第2壁部14に荷重が優先して入力されたときには、孔縁部15a,15bの指向開口形状によって孔縁部15a,15b側から介在部12に応力を集中させて介在部12を肉抜き孔15側から取付孔13側へと開裂させることができる。このように、実施形態2の内装パネル構造102は、車両衝突時に第1壁部11と第2壁部14のいずれに荷重が入力された場合でも、介在部12を確実に開裂させることができるという利点がある。なお、本形態において、介在部12の開裂性能を高めるためには、孔縁部13a,13bの突出方向と孔縁部15a,15bの突出方向が同一線上に重なるように構成するのが好ましい。
【0050】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0051】
(実施形態3)
図10に示されるように、実施形態3の内装パネル構造103は、第1壁部11の各取付孔13と第2壁部14の各肉抜き孔15とがいずれも略矩形である点で、実施形態1の内装パネル構造101と相違している。なお、
図10では、説明の便宜上、第2壁部14が第1壁部11の延在面に沿って同一平面上に延びるように示している。本形態では、取付孔13の角部13aと肉抜き孔15の角部15aとが介在部12を隔てて対向しており、取付孔13の角部13bと肉抜き孔15の角部15bとが別の介在部12を隔てて対向している。すなわち、取付孔13と肉抜き孔15には、介在部12を隔てて対向する位置に角部13a,15a及び角部13b,15bが設けられている。
【0052】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0053】
実施形態3の内装パネル構造103によれば、荷重受け部10が外部荷重を受けたときに生じる応力は取付孔13と肉抜き孔15のそれぞれの角部13a,13b,15a,15bに集中し易いため、このときの応力によって角部同士の間の介在部12を優先的に開裂させて衝撃吸収を行うことができる。
【0054】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0055】
本発明は、上述の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0056】
上述の形態では、荷重受け部10の取付孔13と肉抜き孔15のうちの取付孔13のみが、荷重受け部10の弱体化のための機能に加えて別機能を兼務する場合について例示したが、これに代えて肉抜き孔15が別機能を兼務するようにしてもよい。また、取付孔13と肉抜き孔15の両方を荷重受け部10の弱体化専用に設けるようにしてもよい。取付孔13以外の2つの貫通孔を利用する場合、例えば、荷重受け部10が外部荷重Fを受けたときにカバー部材3の係合爪3aが2つの貫通孔のいずれか一方に進入して当該貫通孔の孔縁部に係合するように構成するのが好ましい。本構成によれば、外部荷重Fにより生じた応力を当該貫通孔の周辺に集中的に作用させることができ、介在部12を確実に開裂させるのに効果がある。
【0057】
上述の形態では、介在部12を第2壁部14よりも薄肉にする場合について例示したが、介在部12の所望の開裂性能を得ることができれば、必要に応じて介在部12の板厚が第2壁部14の板厚と同程度か或いはそれを上回るようにしても良い。また、介在部12を薄肉にして弱体化する以外に、介在部12にスリットのような箇所を設けて弱体化するようにしても良い。
【0058】
上述の形態では、第1壁部11と第2壁部14が互いに直交するように延びる場合について例示したが、これに代えて、第1壁部11と第2壁部14は、互いに直交する以外で異なる平面に沿って延びていても良いし、或いは同一平面上に延びていても良い。
【0059】
上述の形態では、内装パネル2としてインストルメントパネルを例示したが、本形態を、インストルメントパネル以外の内装パネルの構造に適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1…車両、 2…内装パネル、 3…カバー部材、 10…荷重受け部、 11…第1壁部、 12…介在部、 13…取付孔(第1貫通孔)、 13a,13b…孔縁部(角部)、 14…第2壁部(隣接部)、 14a…中間領域、 15…肉抜き孔(第2貫通孔)、 15a,15b…孔縁部(角部)、 101,102,103…車両用内装パネル構造(内装パネル構造)、 F…外部荷重