(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082420
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】熱加工システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/10 20060101AFI20240613BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20240613BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B23K9/10 A
B23K10/00 502Z
B23K9/095 515Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196256
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】下菊 秀記
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA01
4E082EA13
(57)【要約】
【課題】省エネモードからの復帰時に、作業者の操作負担を軽減し、かつ、作業開始までの時間をより短縮できる熱加工システムを提供する。
【解決手段】溶接システムA1は、溶接電源装置1と、溶接電源装置1に接続され、かつ、操作者によって移動させられる溶接トーチ3と、を備えている。溶接トーチ3は、動きを検知するセンサ部35を備えている。溶接電源装置1は、電力を供給する電源部12と、電源部12による電力供給を制限しない通常モードと制限する省エネモードとを切り替えるモード切替部131とを備えている。モード切替部131は、センサ部35によって動きが検知された場合、省エネモードから通常モードに切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置と、前記電源装置に接続され、かつ、操作者によって移動させられる移動部と、を備え、
前記移動部は、動きを検知するセンサを備え、
前記電源装置は、
電力を供給する電源部と、
前記電源部による電力供給を制限しない通常モードと制限する省エネモードとを切り替えるモード切替部と、
を備え、
前記モード切替部は、前記センサによって動きが検知された場合、前記省エネモードから前記通常モードに切り替える、
熱加工システム。
【請求項2】
前記モード切替部は、前記センサによって動きが検知されなくなって、所定の冷却期間の経過後、前記通常モードから前記省エネモードに切り替える、
請求項1に記載の熱加工システム。
【請求項3】
前記移動部は、前記電源装置から電力を供給されて溶接を行う溶接トーチである、
請求項1または2に記載の熱加工システム。
【請求項4】
前記電源装置から電力を供給されて溶接を行う溶接トーチと、
前記溶接トーチに溶接ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、
をさらに備え、
前記移動部は、前記ワイヤ送給装置である、
請求項1または2に記載の熱加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーチを用いて熱加工を行う熱加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アークなどの熱を利用して溶接や切断などの熱加工を行うための熱加工システムがある。熱加工システムは、トーチと、トーチに電力を供給する電源装置とを備えている。たとえば溶接システムの場合、作業者は溶接トーチを把持し、トーチスイッチを操作することで、溶接電源装置から溶接トーチに電力を供給させる。これにより、溶接トーチの先端と被加工物との間にアークが発生して、溶接が行われる。
【0003】
近年、エネルギーの安定供給の確保および地球温暖化の防止などの観点から、溶接電源装置においても、省電力化が求められており、待機電力を抑制することが求められている。一般的に、待機電力を抑制する方法として、機器の操作が一定時間行われない場合に、通常モードから省エネモードに切り替わって、電力の供給を制限する方法が知られている。当該方法においては、機器の操作が行われた場合に、省エネモードから通常モードに切り替わる。溶接システムにおいては、溶接電源装置の配置位置と溶接作業を行う位置とが離れている場合がある。省エネモードからの復帰の条件を、溶接電源装置の操作パネルの操作とすると、操作者は、省エネモードからの復帰のために、溶接電源装置まで移動する必要がある。この場合、溶接作業を開始するまでに時間がかかる。特許文献1には、操作ボタンが配置され、当該操作ボタンの操作によって溶接電源装置の操作を行える溶接トーチが開示されている。このような溶接トーチを使用する場合、溶接トーチの操作ボタンの操作を、省エネモードからの復帰の条件とすることで、溶接作業開始までの時間を短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この場合でも、溶接トーチの操作ボタンの操作によって省エネモードから復帰し、その後、溶接可能な状態になるので、溶接作業を開始するまでにある程度の時間が必要になる。なお、この課題は、溶接システムに限られず、切断などのトーチを用いた熱加工システムにおいても同様である。
【0006】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、省エネモードからの復帰時に、作業者の操作負担を軽減し、かつ、作業開始までの時間をより短縮できる熱加工システムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される熱加工システムは、電源装置と、前記電源装置に接続され、かつ、操作者によって移動させられる移動部と、を備え、前記移動部は、動きを検知するセンサを備え、前記電源装置は、電力を供給する電源部と、前記電源部による電力供給を制限しない通常モードと制限する省エネモードとを切り替えるモード切替部と、を備え、前記モード切替部は、前記センサによって動きが検知された場合、前記省エネモードから前記通常モードに切り替える。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記モード切替部は、前記センサによって動きが検知されなくなって、所定の冷却期間の経過後、前記通常モードから前記省エネモードに切り替える。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記移動部は、前記電源装置から電力を供給されてアーク溶接を行う溶接トーチである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電源装置から電力を供給されてアーク溶接を行う溶接トーチと、前記溶接トーチに溶接ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、をさらに備え、前記移動部は、前記ワイヤ送給装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、電源装置のモード切替部は、移動部のセンサによって動きが検知されたときに省エネモードから通常モードに切り替える。したがって、作業者は、移動部を持ち上げるなど移動させることで、電源装置を省エネモードから復帰させることができる。作業者は、省エネモードからの復帰のための操作を行う必要がないので、操作負担を軽減される。また、本発明に係る熱加工システムは、操作ボタンの操作によって省エネモードから復帰する場合と比較して、作業開始までの時間をより短縮できる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る溶接システムを説明するための図であり、(a)は全体構成を示す概要図であり、(b)は機能構成を示すブロック図である。
【
図2】モード切替処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【
図3】モード切替処理を説明するためのタイムチャートの一例である。
【
図4】第2実施形態に係る溶接システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】第3実施形態に係る溶接システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第4実施形態に係る溶接システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、本発明を溶接システムに適用した場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。
図1(a)は、溶接システムA1の全体構成を示す概要図である。
図1(b)は、溶接システムA1の機能構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線5、通信線8、ガスボンベ6、およびガス配管7を備えている。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、溶接トーチ3に接続されている。ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送り出して、溶接ワイヤの先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41と溶接ワイヤとは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出する溶接ワイヤの先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、ワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。溶接電源装置1からワイヤ送給装置2へは、ガス配管7に設けられた電磁弁や、溶接ワイヤを送給するための送給モータなどを駆動させるための電力(例えばDC24V)が、電力伝送線5を介して供給される。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、通信線8を介して通信を行っている。なお、溶接システムA1は、溶接トーチ3に冷却水を循環させてもよい。
【0018】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する。溶接電源装置1は、溶接条件に応じて出力電力を制御する。また、溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される交流電力を、ワイヤ送給装置2の送給モータなどを駆動するための直流電力に変換して、電力伝送線5を介してワイヤ送給装置2に出力する。溶接電源装置1の詳細な説明は後述する。
【0019】
ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤを溶接トーチ3に送り出すものである。溶接ワイヤは、トーチケーブル39および溶接トーチ3の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチ3の先端に導かれる。ワイヤ送給装置2は、電力伝送線5を介して溶接電源装置1から供給される電力で、送給モータなどを駆動させる。また、この電力は、ワイヤ送給装置2からトーチケーブル39内部に設けられている電力伝送線(図示なし)を介して、溶接トーチ3にも供給される。ワイヤ送給装置2は、通信線8を介して、溶接電源装置1と通信を行う。また、ワイヤ送給装置2は、トーチケーブル39内部に設けられている通信線(図示なし)を介して、溶接トーチ3と通信を行う。溶接トーチ3と溶接電源装置1とは、ワイヤ送給装置2を仲介することで、通信を行う。
【0020】
ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39によって接続されている。トーチケーブル39は、溶接トーチ3の基端に接続されたケーブルであり、ケーブル内部にパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および通信線が配置されている。コネクタ21は、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続するための接続用端子である。例えば、コネクタ21は、凹型の接続用端子であり、溶接トーチ3のトーチケーブル39の一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示しない)を差し込まれることで、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続する。このコネクタ21を介して、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線5および通信線8が、それぞれ、トーチケーブル39の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および通信線に接続される。
【0021】
溶接トーチ3は、溶接電源装置1から供給される溶接電力により、被加工物Wの溶接を行う。溶接トーチ3は、機能ブロックとして、通信部31、センサ部35、および制御部36を備えている。なお、溶接トーチ3は、各種表示を行う例えば液晶表示装置を有する表示部、作業者による操作を受け付ける操作手段(例えばトーチスイッチおよび操作ボタンなど)を有する操作部、各種情報を記憶する記憶部などを備えているが、記載および説明を省略する。
【0022】
通信部31は、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部31は、制御部36から入力される信号を、トーチケーブル39内部の通信線を介して、ワイヤ送給装置2に送信する。また、通信部31は、トーチケーブル39内部の通信線を介してワイヤ送給装置2から入力される信号を受信して、制御部36に出力する。通信の規格としては、例えばCAN(Controller Area Network)が使用される。
【0023】
センサ部35は、センサを備えており、各センサの検出値を制御部36に出力する。本実施形態において、センサ部35は、加速度センサを備えている。当該加速度センサは、例えば3軸の加速度センサであり、各軸方向の加速度を検出して、検出値を制御部36に出力する。なお、センサ部35は、その他のセンサを備えていてもよい。
【0024】
制御部36は、溶接トーチ3の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部36は、操作部より入力される操作信号に応じて、所定の処理を行う。また、制御部36は、通信部31による通信や、記憶部の情報の書き込みおよび読出し、表示部での表示を制御する。例えば、制御部36は、トーチスイッチのオン操作(押下)による操作信号が入力された場合、通信部31を介して、溶接電源装置1に当該操作信号を送信する。溶接電源装置1は、当該操作信号に基づいて、溶接電力の出力を開始する。また、制御部36は、トーチスイッチのオン操作の解除による操作信号が入力された場合、通信部31を介して、溶接電源装置1に当該操作信号を送信する。溶接電源装置1は、当該操作信号に基づいて、溶接電力の出力を停止する。
【0025】
また、制御部36は、センサ部35より入力される検出値に基づいて、所定の演算を行い、演算結果を処理に用いる。本実施形態では、制御部36は、センサ部35の加速度センサが検出した検出値に基づいて、溶接トーチ3が動いているか否かを判断する。加速度センサは、自身に設定されている互いに直交する3つの軸の各軸方向の加速度を検出する。制御部36は、これらの加速度に基づいて、重力加速度のみを検出した場合、溶接トーチ3が動いていないと判断し、重力加速度以外の加速度成分を検出した場合、溶接トーチ3が動いていると判断する。なお、加速度センサが検出した検出値に基づいて、溶接トーチ3の動きを検出する方法は限定されない。制御部36は、溶接トーチ3が動いていると判断した場合、通信部31を介して溶接電源装置1に、動き検知信号を送信する。
【0026】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ3に供給する溶接電源装置1は、機能ブロックとして、通信部11、電源部12、および制御部13を備えている。
【0027】
通信部11は、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部11は、制御部13から入力される信号を、通信線8を介して、ワイヤ送給装置2に送信する。また、通信部11は、通信線8を介してワイヤ送給装置2から入力される信号を受信して、制御部13に出力する。通信の規格としては、例えばCAN(Controller Area Network)が使用される。
【0028】
電源部12は、複数の電源を備え、電力系統Pから入力される交流電力を所望の電力に変換して各所に供給する。複数の電源には、溶接トーチ3にアーク溶接のための溶接電力を供給する主電源が含まれている。また、複数の電源には、例えば、ワイヤ送給装置2に送給モータなどを駆動するための直流電力を供給する電源、制御部13に制御電力を供給する電源、および、溶接電源装置1の内部を冷却するための冷却ファンに電力を供給する電源などが含まれている。また、複数の電源には、液晶表示装置などを備える表示部、操作手段を備える操作部、および、操作パネルに配置されたLEDなどにそれぞれ電力を供給する電源も含まれている。なお、電源部12が備える電源は、これらに限定されない。
【0029】
制御部13は、溶接電源装置1の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部13は、主電源の出力を制御する。また、制御部13は、操作部より入力される操作信号に応じて、所定の処理を行う。また、制御部13は、通信部11による通信や、記憶部の情報の書き込みおよび読出し、表示部での表示を制御する。
【0030】
制御部13は、機能構成として、モード切替部131を備えている。モード切替部131は、電源部12による電力供給を制限しない通常モードと制限する省エネモードとを切り替える。省エネモードは、待機電力を抑制して、電力の消費を抑制するモードである。モード切替部131は、省エネモード時には、電源部12の複数の電源のうち、電力を供給する必要がない電源の電力出力を停止させる。モード切替部131は、省エネモード時に、例えば、主電源、ワイヤ送給装置2に電力を供給する電源、および、冷却ファンに電力を供給する電源などの電力出力を停止させる。なお、省エネモード時に停止させる電源は限定されず、機能の必要性および目標とする待機電力などに応じて、適宜設定される。また、省エネモード時に各電源の電力出力を停止させる方法は限定されない。例えば、各電源から各部への電力供給線に半導体スイッチが配置され、モード切替部131が省エネモード時に当該半導体スイッチをオフに切り替えることで、各電源の電力出力を停止させてもよい。なお、半導体スイッチは、各電源の入力側に配置されてもよい。
【0031】
本実施形態では、モード切替部131は、溶接トーチ3の動きに応じて、通常モードと省エネモードとを切り替える。具体的には、モード切替部131は、溶接トーチ3に配置された加速度センサによって動きが検知されたことを示す動き検知信号を溶接トーチ3から受信した場合、省エネモードから通常モードに切り替える。また、モード切替部131は、動き検知信号が受信されなくなって、所定の冷却時間が経過すると、通常モードから省エネモードに切り替える。冷却時間は、溶接電源装置1の内部温度がある程度低下するまで冷却ファンを停止させないために設けられた時間であり、あらかじめ設定されている。
【0032】
図2は、制御部13のモード切替部131が行うモード切替処理を説明するためのフローチャートの一例である。当該処理は、溶接電源装置1が起動したときに開始される。なお、溶接電源装置1が起動したときは、省エネモードであるとする。
【0033】
まず、モード切替部131は、溶接トーチ3に動きがあったか否かを判別する(S1)。具体的には、モード切替部131は、通信部11が溶接トーチ3から動き検知信号を受信したか否かを判別する。動きがなかった場合(S1:NO)、ステップS1に戻って、モード切替部131は、当該判別を繰り返す。動きがあった場合(S1:YES)、モード切替部131は、省エネモードから通常モードに切り替える(S2)。つまり、モード切替部131は、溶接トーチ3に動きがあるまで、省エネモードを継続する。
【0034】
次に、モード切替部131は、溶接トーチ3に動きがあったか否かを判別する(S3)。動きがあった場合(S3:YES)、ステップS3に戻って、モード切替部131は、当該判別を繰り返す。動きがなかった場合(S3:NO)、モード切替部131は、計時時間Tが冷却時間T
0を経過したか否かを判別する(S4)。計時時間Tは、ステップS3での判別が「YES」から「NO」に切り替わった時に、計時が開始される。冷却時間T
0を経過していない場合(S4:NO)、ステップS3に戻って、モード切替部131は、ステップS3およびステップS4の判別を繰り返す。計時時間Tが冷却時間T
0を経過する前に、溶接トーチ3に動きがあった場合(S3:YES)、ステップS3に戻って、モード切替部131は、通常モードを継続する。一方、溶接トーチ3に動きがなく、計時時間Tが冷却時間T
0を経過した場合(S4:YES)、モード切替部131は、通常モードから省エネモードに切り替え(S5)、ステップS1に戻る。なお、
図2のフローチャートに示す処理は一例であって、モード切替部131が行うモード切替処理は上述したものに限定されない。
【0035】
図3は、モード切替処理を説明するためのタイムチャートの一例である。
図3(a)は、溶接トーチ3の溶接状態の時間変化を示している。
図3(b)は、溶接トーチ3の動きの検出状態の時間変化を示している。
図3(c)は、適用モードの時間変化を示している。
【0036】
時刻t3まで溶接が行われており、適用モードは通常モードになっている。時刻t1から時刻t2までの間も溶接中であるが、溶接トーチ3が動いていないので、溶接トーチ3の動きが検出されていない。しかし、この期間は短く、設定されている冷却時間T0が経過する前に溶接トーチ3の動きが検出されているので、省エネモードに切り替えられない。
【0037】
時刻t3において溶接が停止され、その後、時刻t4において溶接トーチ3の動きが検出されなくなっている。その後、冷却時間T0が経過した時刻t5において、通常モードから省エネモードに切り替わっている。
【0038】
時刻t6において、作業者が溶接トーチ3を持ち上げたことで、溶接トーチ3の動きが検出され、省エネモードから通常モードに切り替わっている。動きが検出されるとすぐに通常モードに切り替えられて溶接可能な状態になるので、作業者は溶接トーチ3を持ち上げるとすぐに溶接作業を開始でき、時刻t7において、溶接が開始されている。
【0039】
次に、溶接システムA1の作用効果について説明する。
【0040】
本実施形態によると、溶接トーチ3は、センサ部35を備え、センサ部35が検出した検出値に基づいて、溶接トーチ3が動いているか否かを判断する。溶接トーチ3は、動きを検知した場合、溶接電源装置1に動き検知信号を送信する。モード切替部131は、動き検知信号を受信した場合、省エネモードから通常モードに切り替える。したがって、作業者は、溶接トーチ3を持ち上げるなど移動させることで、溶接電源装置1を省エネモードから復帰させることができる。作業者は、省エネモードからの復帰のための操作を行う必要がないので、操作負担を軽減される。また、溶接システムA1は、操作ボタンの操作によって省エネモードから復帰する場合と比較して、作業開始までの時間をより短縮できる。
【0041】
また、本実施形態によると、モード切替部131は、動き検知信号が受信されなくなったことに基づいて、通常モードから省エネモードに切り替える。したがって、溶接システムA1は、操作ボタンの操作が一定時間行われない場合に省エネモードに切り替わる場合と比較して、省エネモードに切り替わるタイミングを早められる。これにより、溶接システムA1は、省エネモードである時間を最適化できるので、消費電力を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態によると、モード切替部131は、動き検知信号が受信されなくなってもすぐに省エネモードに切り替えず、所定の冷却時間T0が経過するのを待っている。これにより、溶接電源装置1の内部温度が高い状態で冷却ファンを停止させてしまうことを抑制できる。
【0043】
なお、本実施形態においては、制御部36が加速度センサの検出値に基づいて溶接トーチ3が動いているか否かを判断する場合について説明したが、これに限られない。制御部36は、例えばジャイロセンサなどの他のセンサの検出値に基づいて判断を行ってもよい。また、制御部36は加速度センサの検出値を溶接電源装置1に送信し、溶接電源装置1の制御部13が溶接トーチ3が動いているか否かを判断してもよい。この場合、モード切替部131は、当該判断の結果に応じて、通常モードと省エネモードとを切り替えればよい。
【0044】
また、本実施形態においては、モード切替部131は、溶接トーチ3の動きのみに応じて、モードの切り替えを行う場合について説明したが、これに限られない。モード切替部131は、溶接トーチ3の動きと、溶接状態とに応じて、モードの切り替えを行ってもよい。すなわち、モード切替部131は、溶接中は溶接トーチ3の動きに関係なく、モードの切り替えを禁止してもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが通信線8を介して通信を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、パワーケーブル41,42または電力伝送線5に信号を重畳させて通信を行うようにしてもよい。この場合、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する通信線8を必要としない。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが無線通信を行うようにしてもよい。この場合も、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する通信線8を必要としない。また、ワイヤ送給装置2を介さずに、溶接トーチ3と溶接電源装置1とが無線通信を行うようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、溶接システムA1がワイヤ送給装置2を備えている場合について説明したが、これに限られない。溶接システムA1は、ワイヤ送給装置2を備えていない非消耗電極式の溶接システムなどであってもよい。この場合、動き検知信号は、溶接トーチ3から溶接電源装置1に直接、送信される。
【0047】
図4~
図6は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。
【0048】
図4は、第2実施形態に係る溶接システムA2の機能構成を示すブロック図である。
図4に示す溶接システムA2は、溶接トーチ3が通信機能を有していない点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0049】
本実施形態に係る溶接トーチ3は、溶接電源装置1との通信機能を有していない。溶接トーチ3が備えているセンサ部35(例えば加速度センサ)は、検出値を、信号線85を介して、溶接電源装置1に直接出力する。溶接電源装置1の制御部13は、センサ部35から入力される検出値に基づいて、溶接トーチ3が動いているか否かを判断する。モード切替部131は、当該判断結果に応じて、通常モードと省エネモードとを切り替える。
【0050】
本実施形態によると、溶接トーチ3はセンサ部35を備え、溶接電源装置1の制御部13はセンサ部35が検出した検出値に基づいて、溶接トーチ3が動いているか否かを判断する。モード切替部131は、当該判断結果に応じて、通常モードと省エネモードとを切り替える。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、センサ部35は、溶接トーチ3に内蔵されている場合に限定されず、従来の溶接トーチに後付けで取り付けられてもよい。この場合、新たに溶接トーチ3を用意する必要がなく、従来の溶接トーチを利用することができる。
【0051】
図5は、第3実施形態に係る溶接システムA3の機能構成を示すブロック図である。
図5に示す溶接システムA3は、ワイヤ送給装置2の動きに応じて通常モードと省エネモードとが切り替えられる点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0052】
本実施形態に係るワイヤ送給装置2は、センサ部25を備えている。センサ部25は、センサ部35と同様に、加速度センサを備え、検出値を図示しない制御部に出力する。当該制御部は、加速度センサが検出した検出値に基づいて、ワイヤ送給装置2が動いているか否かを判断し、溶接電源装置1に動き検知信号を送信する。
【0053】
本実施形態によると、ワイヤ送給装置2は、センサ部35を備え、センサ部35が検出した検出値に基づいて、ワイヤ送給装置2が動いているか否かを判断する。ワイヤ送給装置2は、動きを検知した場合、溶接電源装置1に動き検知信号を送信する。モード切替部131は、動き検知信号を受信した場合、省エネモードから通常モードに切り替える。作業者は、ワイヤ送給装置2を移動させることで、溶接電源装置1を省エネモードから復帰させることができるので、操作負担を軽減される。また、溶接システムA3は、作業開始までの時間を短縮できる。また、本実施形態によると、モード切替部131は、動き検知信号が受信されなくなったことに基づいて、通常モードから省エネモードに切り替える。したがって、溶接システムA3は、消費電力を抑制できる。
【0054】
図6は、第4実施形態に係る溶接システムA4の機能構成を示すブロック図である。
図6に示す溶接システムA4は、遠隔操作装置9の動きに応じて通常モードと省エネモードとが切り替えられる点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。
【0055】
本実施形態に係る溶接システムA4は、遠隔操作装置9を備えている。遠隔操作装置9は、離れた位置から溶接電源装置1を操作するためのものである。遠隔操作装置9は、溶接電源装置1に設定されている溶接条件を確認および変更を行ったり、インチングを指示したりする。遠隔操作装置9は、溶接電源装置1と通信線で接続されており、溶接電源装置1と通信を行う。なお、遠隔操作装置9は、溶接電源装置1と無線通信を行ってもよい。本実施形態では、遠隔操作装置9は、センサ部95を備えている。センサ部95は、センサ部35と同様に、加速度センサを備え、検出値を図示しない制御部に出力する。当該制御部は、加速度センサが検出した検出値に基づいて、遠隔操作装置9が動いているか否かを判断し、溶接電源装置1に動き検知信号を送信する。
【0056】
本実施形態によると、遠隔操作装置9は、センサ部35を備え、センサ部35が検出した検出値に基づいて、遠隔操作装置9が動いているか否かを判断する。遠隔操作装置9は、動きを検知した場合、溶接電源装置1に動き検知信号を送信する。モード切替部131は、動き検知信号を受信した場合、省エネモードから通常モードに切り替える。作業者は、遠隔操作装置9を持ち上げるなど移動させることで、溶接電源装置1を省エネモードから復帰させることができるので、操作負担を軽減される。また、溶接システムA4は、作業開始までの時間を短縮できる。また、本実施形態によると、モード切替部131は、動き検知信号が受信されなくなったことに基づいて、通常モードから省エネモードに切り替える。したがって、溶接システムA4は、消費電力を抑制できる。
【0057】
上記第1~第4実施形態においては、本発明を溶接システムに適用した場合について説明したが、これに限られない。例えば、先端に発生させたアークによって被加工物Wを切断するアーク切断システムや、被加工物Wに溝彫りを行うアークガウジングシステムなどにおいても、本発明を適用することができる。また、アークによる熱加工に限定されず、ガス溶接や抵抗溶接などの熱加工を行う熱加工システムにおいても、本発明を適用することができる。
【0058】
本発明に係る熱加工システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る熱加工システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0059】
A1,A2,A3,A4:溶接システム、1:溶接電源装置、12:電源部、131:モード切替部、2:ワイヤ送給装置、25:センサ部、3:溶接トーチ、35:センサ部、9:遠隔操作装置、95:センサ部